したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

幼女を崇めるスレ

1名無しのもすけん:2007/10/17(水) 00:01:29
ようじょいいよようじょ

35名無しのもすけん:2008/02/19(火) 02:01:09
ここは名無しモスケンで書き込むのが暗黙のルールか?
なら俺がどんな過激発言しても許されるってことじゃまいか・・・・

さて、どんな過激発言で荒らしてやろうか・・・・

36名無しのもすけん:2008/03/01(土) 15:53:59
にゃーにゃー鍵盤消えてなんか変なのになってるw

37名無しのもすけん:2008/03/01(土) 17:23:05
気付くの早いッスよwww

38名無しのもすけん:2008/03/01(土) 17:34:07
あなたのことは…なんだってわかるんだから…////

39名無しのもすけん:2008/03/01(土) 17:39:44
ば…ばかぁ…////

40名無しのもすけん:2008/03/01(土) 17:40:29
ココロ茶飲みすぎwww
水っ腹になるぞwww

41名無しのもすけん:2008/03/01(土) 22:50:49
ブログ妖精ココロ、なかなか好評みたいですね管理人さん

42名無しのもすけん:2008/03/05(水) 09:51:01
ココロって学生だったのか

43名無しのもすけん:2008/03/08(土) 02:50:02
宣伝欄?の「あなたの声が聞きたくて…」のココロやばすぎだろ
一線越えそうだ

44名無しのもすけん:2008/03/12(水) 22:34:07
>>43
フッ…いまさらw
俺とココロなら既に一線を越えてるぜ?
いや一線を交えているといった方が・・・。

45名無しのもすけん:2008/03/13(木) 06:47:42
>>44
あなたが俺達普通の人と一線を画してるということはわかります。

46いさく:2009/06/23(火) 23:12:28
待ってろ…今考えてるから…

47ケーン:2009/06/23(火) 23:21:19
またルイズのコピペネタだったら殺すぞ

48いさく:2009/06/23(火) 23:26:37
>>47
おしい!!

49名無しのもすけん:2013/11/18(月) 22:02:53
陵丘風見女学院は市にそびえる丘のひとつを切り開いて建築された国内有数のお嬢様校であり、多くの財界人や名家の通学する陵丘市を代表する建造物のひとつだ。
高所に建てられた学校故殆どの生徒は専用の送迎バスで中間地点まで送られ、そこからは備えられたエスカレーターで3分と経たずに正門へと到着する。
正門からは西洋美術風の石柱が道を作るように等間隔に並んでおり、キャンパスの中心にはいかにも数学的な生徒の身の丈以上の三角錐のオブジェが建てられその頂点には天使の輪のような銀色の円が取り付けられている。
学園は中等部と高等部に分かれておりエスカレーター式に進学できることもこの学院の魅力でもある。
しかし、それ故彼女にはある悩みがあった。
少女はそのサラサラとした黄金色のセミロングの髪を風に揺らしながら高等部校舎の屋上からキャンパスを行き交う生徒たちを眺めていた、校舎自体が丘の上に存在するこの場所からは市全体を見回すこともできるのだ。
ある生徒は数人の輪の中で楽しげに語らい、ある生徒はスケッチブックを手に中央のオブジェを写生し、ある生徒はまるで恋人同士のように肩を寄せ合い上品な笑みを向け合っている。
行動こそ人それぞれだか皆共通して笑顔を浮かべていた、最後に自分があんなふうに笑ったのはいつだったろうか…おそらくは6年の間は無邪気に笑えてないだろう。
そんなことを思いながら少女は手に持った缶コーヒーを一口啜った。

「あら、お嬢様…ここは高等部の校舎ですよ?」
不意にそんな声をかけられて少女はそちらに振り返った。
「由梨絵…」
すらっと伸びた黒のロングヘア、その声の主は少女と同じ高等部一年の槇原由梨絵だった、元防衛省事務次官の父を持ち今年になって学院に転入してきた生徒である。
由梨絵はその気さくな性格から少女にも度々声をかけてくるのだが、少女のその小柄な容姿故か毎度このパターンでからかわれていた。
「ふふっ…冗談ですよ、ありす」
毎度のことながらクスリと笑う由梨絵にありすは別段面白みを感じることなく、ただ、こんなことでよく笑えるものだと感心していた。
「またそのコーヒーですか」
由梨絵がありすの手に握られたコーヒーを見つめる。
ありすは校内に設置された自販機のありふれた銘柄のコーヒーを好んで飲んでいた、この学院の生徒はその生活水準の高さからか舌の肥えた人間が多く、あまり自販機の利用は多くなかった。
「美味しいんですか?」
「うん、珍しい飲み物だからね」
「そうでしょうか?」
由梨絵が少し首を傾けながら言った。
「あ、そうです…!」
由梨絵は何かを思い出したような表情でポンと手を合わせた。
「もしよろしければこれから家でお茶でもしませんか?父は結構コーヒーにうるさい人なのでありすの好みに合うものが見つかるかもしれません」
「え、いいの…?」
今まで学校生活の中で他人の家に招かれたことなどなかったありすは思わずきょとんとして聞き返してしまった。
「もちろん、こちらがお誘いしてるんですよぉ?」
二つ返事でそう言われるとありすは突然嬉しくなって表情が明るくなった、そのとき、ふと手首に装着していた時計型の端末の液晶モニターが明滅しているのが目に入り一気にその表情はくぐもってしまう。
眸からの召集だった。

「ご、ごめん…なんか用事入っちゃったみたい」
ありすは溜息まじりで由梨絵に手を合わせる
「あら、それは仕方ありませんね…」
「折角声掛けてもらったのにごめんね、また今度誘ってよ」
「そうさせてもらいます、では、ごきげんよう」
律儀に一礼してからその場を後にする由梨絵の姿を見送った後、溜息を漏らしてありすは眸の元へと赴いた。

50ケーン:2014/03/02(日) 10:59:59
元ネタは4月アニメのブラックブレット

[日名飛鳥]asuka hina
「パズドラやろうぜ〜!」
勾田高校3年生、15歳の活発な少年。
東京エリアを守る民警に憧れを抱いており、過去に命を救われた経験からいつか自分も民警になることを志している。
剣道部に所属しているが試合では殆ど勝てたことがなくドベ助と呼ばれている。
3年前にガストレアに襲われ逃げる際に左足の腱が切れ後遺症を患う。
足の定期健診の際、弾痕だらけで治療室へ搬送されるナノハチの姿を垣間見る。

[ナノハチ]
「78番…わたしはそう呼ばれてたの」
警官に虐待を受けていた「呪われた子供たち」の一人。
あまり記憶がはっきりせず、ただ暗い部屋が怖くなって逃げ出してきたという。

[霧岡神燃守]shinmos kirioka
「お前のハートに天誅天誅ッ!」
巨大武器会社司馬重工の製品テスター。24歳。
普段は穏やかな性格だが『呪われた子供たち』への差別主義者へ大きな反発意識を持つ。
しかし韓国人は許さない。
日曜朝8:30分より毎週放送される戦隊ヒロインアニメ『天誅ガールズ』の大ファンで仕事の匙を投げてイベントに赴くほどである。
試作型外骨格(エクサスケルトン)『バレットストライカー』を自在に操る。

[八神翔一]syoichi yagami
「モデルラビットのイニシエーターを知っているか…?」
寡黙で眼光が鋭い、23歳。
偶然司馬未織に目を掛けられて高速戦闘用外骨格『タキオンストライカー』での実践データ収集を行っている。
1年前、民警に恋人を目の前で殺され、以来民警とガストレアを激しい憎悪の対象としている。

[司馬未織]miori shiba
司馬重工の社長令嬢。
新技術を応用した三種類の対ガストレア試作型外骨格『ストライカーシステム』の試験者(プロモーター)を探している。


『ストライカーシステム』
イニシエーターの戦闘力に比べ、大きく遅れをとる人類をイニシエーターのそれに近づける為の試作型外骨格。
効率的に運用できればレベルⅠ〜Ⅲまでのガストレアを単体で排除できる性能を有す。
現在開発されている三種のストライカーシステムにはそれぞれの運用思想や設計モデルとなったイニシエーターが存在する。

ソードストライカー:接近戦型。二本のバラニウムソードと強化樹脂のワイヤーで的確に致命傷を与える。設計モデルはマンティス。

バレットストライカー:中・遠距離型。専用狙撃用ライフルは背中にマウント可能、腰に備えられているのはサブマシンガン二丁、アウトレンジから目標を殲滅する。設計モデルはオウル。

タキオンストライカー:近・中距離型。装備はハンドガンとショートソード各一つ。外骨格の基本性能に重点を置いてそれを突き詰めることによって常識外の運動能力を使用者に付与する。設計モデルはラビット。

三機のシステムには更に試験データを元にした追加装備が検討されている。
・セブンソード
・シェンビット
・オーバードライブ

51ケーン:2014/04/02(水) 18:01:29
深夜1時54分、東京エリア炭鉱採掘場の職員であるチャン・グンソクはその瞬間を固唾を呑みながら待ち構えていた。
彼は、貨物運搬用トラックの運転席に座り100メートル先の検問ゲートを見据えながらハンドルを持つ手に力を握力を与える。
もう少しすれば自分の仲間があのゲートを開門し、クリアランプが緑色に点滅するはずである。
しかし、既に彼の息は尋常ならざるほど荒く、手の平には汗が滲み出ている、その理由は、助手席に横たわる物言わぬ死体の存在であった。
グンソクは今日、殺人を犯した。
助手席で息絶えている彼こそが本来このトラックで貨物を運搬する担当だった人物だ、芳沢正弘とは付き合いも長く仕事現場ではよく声を掛けてくれる温和な性格の持ち主だった……。
グンソクの計画は現在トラックの荷台に詰まれている漆黒の岩石『バラニウム』を炭鉱から密かに持ち去り闇マーケットに流すこと、バラニウムは全人類の天敵として現われ日本の国土を5分の1にまで減少たらしめた『ガストレア』に対抗しうる唯一の存在である。
バラニウムは国防の要として世界各国で超高レートで取引される代物だ、一塊を持ち出すことができれば航空機で他エリアへ渡って一生遊んで暮らすことができる。
バラニウムを持ち出して荷台へ積み上げたところまでは滞りなかった、問題はトラックの整備のために居合わせた芳沢と鉢合わせになってしまったことだ、計画が失敗すればグンソクは日常には戻れない、彼の疑惑の目を潰すにはそうするしかなかった。
荷台にはバラニウムと共に芳沢の鮮血で染まったスコップが放られている。

夜闇の中で数発の銃声が轟く。
グンソクは反射的に身を強張らせる。
少しの間の後に眼前のクリアランプが緑に点灯し、鉄製のゲートが左右に開く。
仲間がうまくやったのだろう、勢いよくペダルを押し込んでトラックは急速発進する。
この時間帯に銃声を聞けば誰かが不審がって確認しに来るだろう、ここからの行動はタイムアタックだった。
100メートル先の検問で仲間の3人が大手を振っている、グンソクは検問の前でトラックを停車させると「早く乗れと」指示を出す。
駆け寄ってきた彼ら3人は武器を携帯している、1はハンドガン、1人はサブマシンガン、一人はコンバットナイフ。
一瞬トラックのライトに照らされた3人の衣類に血痕が付着していたのが見えた。
彼らもこの計画のために一線を越えてきたのだ、この検問ゲートを不正に開門するために。

3人を荷台に回収し、グンソクは神経を尖らせたままに傾斜を疾走する。
炭鉱を出てからどれほど時が過ぎただろうか、警報も追跡者も確認できず遂にトラックは公道に軌道を乗せた。
グンソクはほっと息をついて額から出る汗を腕で拭った。
後はこのトラックを仲間の待つ外周区のアジトに運ぶだけだ、バラニウムを下ろした後に足が着かぬ様トラックは別の外周区で芳沢の死体もろとも爆破しよう、それも忌々しい目をした子供共の目の前で。

52ケーン:2014/04/02(水) 18:02:01
一時間ほど走ったろうか、トラックは驚くほどすんなりと外周区、第37区へと辿り着いた。
ガストレア襲撃の影響で人離れしゴーストタウンの様相と化した外周区の路地を暫く進んだ先に倉庫街が見えてくる、11番倉庫、そこがグンソクたちのアジトになっている。
倉庫の前まで徐行して進むとグンソクはふと異変に気付く。
11番倉庫のシャッターが開いている、仲間が倉庫内で待機しているはずであるが、彼らとの取り決めで生活観を悟られないようにとシャッターは常に閉めておくことになっている。
更に、シャッターは開いているだけで倉庫内は暗闇に包まれている。
「グンソク、様子を見てくる」
荷台の仲間もそれを察したのか、その内の一人、キムが荷台から降りて倉庫へとゆっくり近づいていく。
グンソクは何か嫌な予感を感じつつも彼の動向を車内から伺っていた。
キムが倉庫の中へと入り暗闇に消える、と、次の瞬間、倉庫に閃光が走った、同時にキムの悲鳴が周囲に響く。
グンソクと荷台の二人はその絶叫に反応して倉庫へと駆け走る。
意を決して中の様子をそっと伺うと、入り口から3メートルほどの地点にキムが倒れてうずくまっているのが見えた。
グンソクは思わず駆け寄ってキムの状態を見ると彼の右肩からは血液が溢れ出し、その痛みにもがき苦しんでいた。
ハッと息を呑みグンソクは倉庫内で叫ぶ。
「おい、誰かいないのか!」
己の声が反響してくる以外に返事はなかった。
「おい……グンソク……」
後ろにいたパクに促されてグンソクは周囲に視線を凝らすと、月明かりに照らされて床の所々に血痕と人型のシルエットが浮かびあがっていく、そこでようやく彼は自身の耳に響くノイズの正体に気が付く、倉庫内は横たわる彼らの低いうなり声で満たされていたのだ。
ある者は膝を抱え、ある者は手の平に風穴が開いている、その誰もがグンソクの見知った仲間の姿だった。
パクがその異常事態に気付き、咄嗟に室内の照明を入れようとシャッターの脇に備えられた電源に近づいたときだった。
パァン……!という銃声がどこからか鳴り響き、その発火炎によって一瞬室内が照らされる。
同時にパクの足がもつれて慣性を殺せぬままに前転倒してしまう、絶叫の後、彼は内腿を押さえながら地で悶え転げる。
いったい、なにが起きている……!?
「パクが撃たれたっ!」
グンソクの横で叫んだキムは手に持っていたサブマシンガンを構えて発砲音が起きた方向へと銃口を向ける。
暗闇で満たされたこの倉庫内で何者かに狙われている、今になってようやく一つの考えが
グンソクの脳裏に過ぎった。
射抜かれたような緊張感で硬直してしまった彼の一方で、キムは重圧に耐え切れなくなり無造作にサブマシンガンを乱射、発火炎が5秒間続いて空薬莢が床に零れる音と濃厚な硝煙の臭いが倉庫内を満たす。
一瞬訪れる静寂……。
「や、やったか……!?」
息を荒げたキムがそう言った瞬間だった。

「やってない」

暗闇の中から確かにそう答が返ってきたのが聞こえた、と同時にマズルフラッシュ、キムの腕に激しい衝撃が襲い握っていたサブマシンガンが破砕される。
散らばったマシンガンの鉄片がキムの皮膚を切り裂き、彼は驚愕の表情を浮かべたままショックで卒倒してしまう。
遂に一人立ちすくむ状況になったグンソクの足は得体の知れない恐怖を感じすくんでいた、しかし、早々に逃げ去らなければこのまま殺される……、理性はそう告げていた。
グンソクはまだ息のある同胞をそのままにパクの手から滑り落ちたハンドガンに飛びつくとそのままシャッターの外へと駆け出した。

53ケーン:2014/04/02(水) 18:02:42
「あーあ、仲間見捨てて逃走かい?やっぱ韓国人ってさいてーだなァ……」
暗闇の中、モノグラスに似た暗視スコープの中から逃げ去ってゆくグンソクの姿を見送って司馬重工兵器開発部門職員兼試験プロモーターの霧岡神燃守(きりおかしんもす)は嘆息した様子で呟いた。
同社で開発中の対ガストレア用試作型外骨格『バレットストライカー』を身に纏いった彼の容姿はさながらサイボーグのように鋭角である。
そのときトラックのエンジン音が倉庫外から聞こえた来た、どうやらグンソクがバラニウムを積んだ車両で逃走を試みたらしい。
神燃守は面倒くさそうに頭をかいてから表情を引き締めてその場で跳躍する、強化外骨格・エクサスケルトンの生み出す推力で身体が打ち出され5メートル上の鉄柱の上で彼は着地する。
そこから更に跳躍、天井にぽっかり空いた穴を通り抜けて倉庫の外へと乗り上げる。
緩やかな風が神燃守の髪を揺らし、月明かりがエメラルドグリーンの外骨格の全容を露にする。
神燃守は握っていたベレッタ-M9カスタムを腰のランチャーへ固定すると、背負うように背部にマウントされたアンチマテリアルライフルXM-109を引き抜く。
眼下を見るとグンソクを乗せた貨物トラックは既に300メートル先まで距離を離している、それを確認すると彼は直立したままにライフルを構える、常識的に精密射を行う場合は反動の誤差と姿勢バランスを考慮しなければならない為、伏射姿勢を取らなければならないが外骨格・バレットストライカーの補佐を受けた神燃守においてはその限りではない。
射撃姿勢を取って隻眼に装備されたターゲットサイトと銃口をリンクさせる、知識の象徴、闇を掃うフクロウの瞳が車両を捕捉する。
瞳を見開きトリガーを引ききる。
外骨格で固定されたライフルによって発火炎と共に正確に打ち出された25mm弾が荷台の継ぎ目を貫通しバランスを欠いた車両は数メートル横転する。


車両の横転によって全身を打ち付けられたグンソクは渾身の力で窓から這い出して歩道に転がり出る。
「ち、畜生……いったい、なんでこんな……!」
この計画の為に3年間炭鉱の労働に耐えてきた、これからの自分には至福の生活が待っていると信じて疑わなかった、それが訳も判らないうちにこんな有様だ。
不意にグンソクは自分へ近づいてくる足音を感じて視線を上げた。
「な、なんだよ……何なんだよニダー!」
彼が見たのは機械の兵士だった、SFの世界にのみ存在を許された半人半機、サイボーグ。
「貴様に名乗る名前は無いッ!」
エメラルドの装甲に身を包んだ青年が険しい形相でグンソクを睨みつけていた、が、その表情が不意に緩んだ。
「……なんてね。まぁ、名乗る名があるとすれば……」
神燃守がその台詞を言い終えるより途中でグンソクは絶叫しながら隠し持っていたハンドガンの銃口を彼に向かってトリガーに力を込める。
刹那、一発の銃声。
放たれたのはベレッタ-M9カスタムのバラニウム弾。
クイックドローで放たれた神燃守の弾丸がグンソクのハンドガンを彼方へと弾き飛ばしていた。

「神算鬼謀の狙撃主……」
そう呟いてから彼はベレッタの銃口をゆっくりとグンソクのこめかみに突きつける。

死の恐怖を間近に感じた状況に耐え切れずにグンソク意識はそこまでで途絶えてしまたった。

54ケーン:2014/05/28(水) 22:29:36
: : :.:.:.:.:./: :/: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :.:.:.:.: : : : : : ` 、
: :.:.:.:.:./: : : : : : : : : : : (__): : : .:.:.:.}: : : : : :ハ:.:.:.:. : : : : : (_) \
:.:.:.:.:./:..:i: : : :.:.:./: : : : : : .:.:.:.:.:.:.:イ : : : / _‘。:.:.:. : : : : : : :\}
:.:.:.:.:i: : :|: : ,,:/: : : : :.:.:.:.:.:.:.:./7: : :/   {_::‘。:.:.:. : : : : : : |
:.:.:.:.:|: : :|/: : |: : : :.:.:.:.,, '" /_:/     `ヽ:.:. : : :{: : :│
.:.:.:.:.|: : : : : :.:.:|: : : :.:/  / ̄        ̄\∨: :.:八 : ,
}:/|: : : : : :.:.:|.:..: :│ .ィ⌒'.         .'⌒:}: : /  }/
″ |: : :i: : :.:.:ゝ/│〃|   |           |   トイ:.|
   |: : :|: :.:.:.:./| : : l 鄯乂.丿           乂.丿鄯1   
   |: : :|: : :.:.:| |: : : ;                 ノ:|  
   |: : :|: :.:.:.:.`|: : : ′       ρ       く:..:|
  ,: : :,:゚ : :.:.:.:.:|: : : : ;.,                ):|
  :′:.′ : :.:.:.:.|: : 0 ′≧=--  ...,,,_______,,,...   イ:八
. /: : / : : :.:.:.:.:.;|: : : : : iニニ{___/ニニ/ヽ:.| .ノ..: : : : :.|
/: : / : :.:.:.:.:.:./ |人/リ、ニム ./ニィ |   i:| {: : : : : :リ
: : / : :.:.:.:.:.:./     { { ー∨  } {  lノ ゝ人: :/

55ケーン:2014/05/28(水) 22:55:10
人間だけが神を持つ、今を越える力、可能性という名の内なる神を。 ― カーディアス・ビスト ―



顔の表面を綿毛が這い回るような感覚を感じて秋月香織は苦しげに表情を歪ませる、思わずベッドの上で寝返りをうって頭を横向きにする。
が、次の瞬間には再びモフモフとした綿の感触が耳をくすぐる。
「アッ……」
耳から伝わるこそばゆさに香織は反射的に艶かしい声を漏らしてしまう、どうやら彼が起こしに来てくれたようだ。
この習慣は殆ど毎朝定刻通りに始まる、彼が人懐こい性格なのは承知しているのだが偶にはゆっくり休ませてもらいたいものだと内心で思う。
耳の近くでキュルキュルと彼が甘く囁くのが聞こえる、その行為に応えるために自分の身体を起こそうと香織が背筋を力ませたときだった。
耳に彼の小さく温かな唇が重なった。
「んっ……だめっ……」
身を固めて襲い来るであろう衝撃に備えようとする、が、刹那、無情にも心の準備も待たぬままに全身を貫かれたような痺れが香織を襲った。
「いっったああああああああああい!!!!」
全身を駆ける激痛で彼女は脊髄反射的にベッドから跳ね起きると、痛みを庇うように耳を手で塞ぐ。
涙の滲む瞳で見ると彼女の顔面に張り付いていた彼、香織のペットであるフェレットのモコミチがベッドの上できょとんとした表情をして寝癖の絡まる彼女のしかめ面を見上げていた。
二年前、都心部の大学校である星葉大学へと晴れて入学を果たし、一人暮らしを始めることになった香織に実家住まいの両親が心細かろうと同居人として差し向けたのがホワイトファーブラックアイという種のフェレットだった。
動物の世話など行ったことがない香織は当初はあまり気乗りしなかったのだが、いざ彼のことを観察しているとたちまちその愛くるしさに胸打たれてしまった。
モコモコとした純白の毛皮が床を這うその姿から『モコ』と名付けようと考えたが、母からこのフェレットはオスだと聞き及んでいたのでわかり易く『モコミチ』と命名した。
存外、例えペットであっても生活観を共有できる存在がいるのは悪くない、しかしモコミチには難点もあった。
「ちょっとモコミチ、起こしてくれるのはいいんだけどもっと優しくできないかなぁ?」
両手を腰に当てて、悪びれた様子も無いモコミチを睨みつける。
彼は決まって朝七時半になると主人である香織の元へとやってきてこうして耳に噛り付いてくるのであった。
この習慣が始まったのは香織が大学に通いはじめてから暫くしてからで、当時七時半に設定されていたデジタル時計の起床アラームが原因だろう、一定リズムで発される甲高いアラームがモコミチには苦痛だったのだ。
いつしか彼はアラームが鳴り始めるより前に香織を起こそうと画策するようになった、手始めに彼女の顔を這ってみたが本人は鬱陶しそうに寝返りをうつだけだった、ならばと編み出した技が耳への噛み付き攻撃だった、効果は覿面、跳ね起きた彼女はすぐさまアラームを止めてくれた。
以来、それが習慣となってアラームはその役割を終えた。
「そのうち私の耳、取れちゃうんじゃないかな、ねぇ、聞いてる?」
眼下のモコミチに問いてみても、彼は「キュル」っという声と共にとぼけたように首を傾げるだけだ。

56ケーン:2014/05/28(水) 22:57:24
そんな一匹と一人のやり取りを少し放れた位置で黙して眺めている瞳があった。
薄暗闇の中でその瞳、暗視モードの光学樹脂義眼は双方の表情をはっきりと認識できるほどに精密である。

香織は嘆息したのち、寝起きの未だ重い足取りで窓辺に移動する、親指を窓ガラスに押し付けてから暫くしてその指を上にスライドさせる。
すると、窓ガラスの内蔵暗幕の明度が指の動きに合わせて徐々に薄くなり日光の透過度が増してゆく、室内に光が満たされると彼女は大きく伸びをして酸素を吐き出した。
部屋が光で満たされると薄闇の中に佇んでいたもう一人のシルエットが浮かび上る、その気配に気が付いて香織はゆっくりと背後を振り返る。
寝室のドアの前に立っていたのは二十代前半の女性、外見だけで判断するなら香織よりも少し年上の印象を受ける、身長は香織と同程度で紺色のセーターにキッチン用の白いエプロンを着用している、なにより特徴的なのは日本人離れした鮮やかなブロンドのショートヘアと光を飲み込むほど深みのある翡翠色の瞳である。
世が世なら、ミスコンでかなり良い順位に食い込める。
しかし、現代においてはそうはならない、なぜなら彼女の要素全てが作り物なのだから。
「あ、おはよう花陽さん」
振り返った香織がそう声を掛けると花陽は入力されているプログラムの通りに複雑なマニュピレーターが積まれた両手を重ねて深々とお辞儀をする、一切の淀みの無い完璧なお辞儀だった。
「おはようございます香織、今日はいいお天気ですね」
『NX-Ⅱ/iw874W』、それが花陽と名付けられた彼女の正式名称である。
機械の外装は人の肌を模倣したシリコン樹脂に覆われ、人間が親しみを持てるように配慮したデザインになっている、花陽の透き通った声質は香織が入念に選定したボイスサンプルでありお気に入りだ。
一見しただけでは生身の美少女と見紛うてしまいそうになるのだが、アンドロイド特有の表情の無機質さ、声の抑揚、不自然に整った身体のパーツ、なにより耳に取り付けられた通信モジュールが人と機械の境界を示している。

57ケーン:2014/05/28(水) 23:04:47
西暦2099年の現代、ここ一世紀の間に世界の科学技術は加速度的に発展した。
電光掲示板は空中に文字を映し、紙の文庫本は骨董品と化し代わりにネットワーク経由で文字をダウンロードする端末に変化し、遊園地は広大なVR空間を展開し客をおとぎの世界へ誘う。
自動車は空こそ飛ばぬものの電磁力を用いてガソリンを不要にし排気ガスを出さなくなった、日本はメタンハイドレートの商業化に成功して資源国家へと昇りつめた。
そんな産業界からの追い風を受けた国内での機械産業の進歩はめざましく、とりわけ自立型作業用アンドロイドを一般家庭にまで普及せしめた大蓮ネクスト社はアンドロイド世界市場の約半数以上のシェアを担っており各国に支店を持つ産業界の重鎮となった。
香織の所有す世代型よりもパフォーマンスに優れ耐久性も格段に高い、なにより人に近い概観が人気を集め、更にはる花陽も大蓮ネクスト社製アンドロイドであり第二世代モデルに属する筐体だ、骨組みの様だった第一大蓮ネクスト社から最新のソフトウェアのアップデートが受けられる機能も備わっており末永く使用できるモデルとしてアンドロイドの爆発的ムーブメントを引き起こした火付け役だ。
花陽が香織の元へやってきたのもモコミチと同じく二年前で、両親が一人暮らしを始める彼女の家事をサポートするために購入した。
セカンドモデル(第二世代型)が発表されてから早10年、生産ラインと需要が軌道に乗っているおかげで現在は一般家庭でもかなり安価でアンドロイドが購入できる。
香織は家事全般を花陽に任せているが炊事だけは譲らなかった、アンドロイドもレシピを入力してやれば料理はできるのだが味覚や触角を持たない彼らのメニューは些か大味なのだ、微妙な火加減や味付けの繊細さを加味する人間の技術には今日日の科学技術を持っても遠く及ばないらしい。
「ねぇ聞いてよ花陽さん、モコミチのせいで左耳がただれてきちゃってるの、どうすればいいかなぁ……」
その問いに花陽は一旦首を傾ける、この動作は彼女の思考ルーチンが作動していることを表している。

58ケーン:2014/05/28(水) 23:21:46
「該当する情報をネットワークサポートライブラリにて照会中です……」

アンドロイドは基本的にインプットされている情報以外にも、大蓮社のネットワークを経由することであらゆる目的に対する情報を引き出すことができる、言うなれば自動的なウィキペディアを内蔵しているようなものだ。
花陽の耳に取り付けられた通信モジュールに通信中を表す緑色のアクセスランプが灯っている。
「もう、花陽さんってば真面目なんだから……、わざわざそんなの調べなくてもいいのに」
香織はしまったと内心で呟いた、勿論アンドロイドは人間には忠実であるしそうであるように根源的にプログラムされている、自我も存在しない為に無垢であるとも言える。
それ故、時々会話の流れから出たような例え話を真に受けてしまって思案している場面に度々遭遇する、融通はあまり利かないようだ。
「動物からの噛み傷を負った場合、感染症のリスクが第一に挙げられます、抗生物質の服飲、または同様の作用がある消毒剤で傷口を洗浄することをお勧めします、必要と感じたならば最寄の病院で検査を受けてみてはいかがでしょうか?尚、最寄の医療機関は星葉大学付属病院となります」
「それくらい知ってるよぉ!私だって一応医学生なんだからさ」
当の星葉大学の医学生が周知の事実を告げられ不貞腐れたような表情を作る。
「これは私に蓄積されたデータからの推測ですが、過去モコミチが279回香織に噛み付きましたが、それによって香織が身体異常に見舞われたことは一度もありません、よって今回もその可能性が高いと考えられます」
「ちょっとひどいよ花陽さん、見てたんならモコミチを止めてよー!ロボットって人間が危害を加えられるの見過ごせないんじゃなかった?」
「以前、私が香織に起床を促した際、香織は全く起きる素振りがありませんでした、いつの間にかモコミチが起床を促すようになって私の役割は果たされました」
「いつの間にか……?もしかして花陽さん私にいじわるしてる?」
記憶機能が存在するアンドロイドがいつの間にかという抽象的な表現を用いたことに香織は訝しげな視線を向けるも、機械である花陽は当然のように毅然とした表情で固まっており「いいえ、ロボットである私に意図して人間を不快にさせることはできません」と断ずる。
「もし香織に粗相を働いてしまったのであれば、大変申し訳ありませんでした」
深々と一礼して付け加える花陽に相変わらずの律儀さを感じて香織は溜息をついた、こんなにも従順な存在が紛いなりにも人の姿をしているのはある意味残酷ではないかと思う瞬間がある。
「別にいいよ、それよりもお腹が空いちゃって……」
空腹で苦しくなったお腹をさすりながらはにかんだ笑みを漏らす。
「食パンであれば焼きあがっていますよ」
「ありがとう、それでいいよ!」
授業のある平日の朝に限っては悠長に自炊する時間が惜しいために花陽に支度を一任している、トーストと目玉焼き程度であればアンドロイドが調理したとてそこまでの差異はない。
香織は花陽の肩をポンと叩いてから、足早に香ばしい匂いのするリビングへと駆けていく、それに続くようにモコミチも朝食を期待してベッドの上から駆け下りて彼女の後に続いて行った。
そんな彼女達の背中を見守ることが花陽にとっての日常だった。

59ケーン:2014/05/28(水) 23:32:30


Chapter.1 【2099】


人は神の領域に踏み込んだ。

動物の命は複製され、加工され、人の趣向の赴くままに商われる。
21世紀も半ばを過ぎた頃にはかつて神が己に似せて人を創造したように、人間が己に似せた存在であるアンドロイドを使役するようになった。
日常面では介助や雑務、ビジネス面では工業や農作業での労力、場合によってはオフィスワークもこなせる便利ツールに惹かれた人々はこぞってこれを欲した。
アンドロイド事業の立役者である大蓮政朱(おおはすまさあき)、そして彼の設立した大蓮ネクスト社の地盤である日本国内でのアンドロイド普及率は人口比8%にも及び約12人に1人がアンドロイドを所有している計算になる。
国内需要の高騰には農作地の人口低下問題、高齢化社会への福祉が起因となっている、前者のような単純労働の場合には作業用の第一世代アンドロイドが宛てられ、後者のような複雑なコミュニケーションを要求される場合にはインターフェースの高い第二世代が用いられる。
第二世代のアンドロイドはその高いインターフェースとパフォーマンス性から10年以来から一般の家庭が所有するまでに人気を博している。
しかし、その間に問題を提起する声も上がった。
このままアンドロイドが普及していけば将来、人間の職はアンドロイドに取って代わられ失業者が溢れてしまうのではないか?という危惧である。

60ケーン:2014/05/28(水) 23:34:04
それは至極当然な意見だった、どんなに過酷な労働でも苦言一つ漏らさずに業務に従事する彼らは疲れも知らず人件費も掛からない。
半ば奴隷のような扱いに思えるが感情論を取り払えば企業にとっては正に究極の労働力だろう。
現にそういった理由からリストラを受けた人物も少なからず出てしまったのだ、居場所の無くなった彼等やアンドロイドの存在を善しとしない者たちが反アンドロイドの徒党を組んで「機械による支配の始まり」とデモを起こしたことさえあった。
だが、その事態は一過性のものであった、アンドロイドには設計段階で意図して組み込まれた『弱点』が備わっていた。
それは、筐体同士では情報のシェアリングを行えないことだ、業務上秘匿しなければいけない情報、所有者のプライバシーを保護するためにいかなる手段を用いてもアンドロイド同士での通信はできない設定になっている。
そのためアンドロイドがオフィスの過半数を占めてしまうと情報伝達が立ち行かなくなり社内連携が取れなくなる、言うなれば無口で融通の利かない社員を多数雇っている非効率な状態に陥る。
アンドロイドを効率的に運用するには必ずパートナーである人間が仲介し支持と情報を与えてやる必要があるのだ。
よって、もしもアンドロイドが自我を持って反乱を画策しようともそれを仲間に伝達する方法は存在しない。
この弱点は人間とアンドロイドの相互助力という大蓮政朱の理念が込められた故のものである。
故に、人間側も全てをアンドロイドに請け負わせて堕落することなく、生活のパートナーとして共存ができるように計られている。

61ケーン:2014/05/28(水) 23:34:49
そんなアンドロイドの性質が理解できずに人間を解雇した企業は倒産を余儀なくされ、ならば七面倒なアンドロイドなど労力にしないという企業も存在し、人間と共に効率的アンドロイドを運用している企業は結果的に事業も上向きになって雇用を増やしている。
この件は「大蓮政朱がブラック企業を炙り出して駆逐した」とにわかに囁かれていたが、当の政朱はそんなつもりは全く無かったと否定していた、いつの時代も道具は使い方によるという必然性を示す結果となった。

アンドロイド産業によって瞬く間に地位を確立した大蓮ネクスト社の本社ビルは今日も30階に及び美しい正三角形を天に伸ばしている。
見上げれば陽光を反射して目が痛いガラス張りのそのビルは既に東京のシンボルである。
ちなみに同社の窓ガラスはディスプレイ機能も兼ね備えており、建物全体がスクリーンとなりCMを流したり時期によっては強大な桜の木へと変貌したりと政朱のユーモアが取り入れられている。
そして午前11時現在、社長、大蓮政朱は自社の二階応接室にて新聞社「トーキョータイムス」記者の石原律子から連載コラム用のインタビューを受けていた。

62ケーン:2014/05/28(水) 23:36:13
「このたびは『ダンディーな著名人アワード2099』にて、見事ベスト4へのランクインおめでとうございます大蓮社長」

一人が腰掛けるにしては幅が余る黒いソファーを向かい合わせ、トーキョータイムス入社4年目になる石原律子27歳と御歳54になる大蓮政朱がガラステーブルを隔てて向き合っている。
白とグレーを貴重とした質素な応接室の隅には観葉植物である桑の葉が鉢から伸び、空間の中心の壁には一枚の額縁が立てかけられている、額縁の中の絵はモニターで一定の時間で切り替わり世界遺産の写真を代わる代わるに表示している。
話題を投げた律子の容姿はやや小顔で髪は後ろでテール状に纏まっている、この時代では珍しい眼鏡を愛用しているようだがファッションなのか何かしらの理由があって掛けているのかは判断できない。
服装は毎度の通りの黒いビジネススーツで、彼女がこのスーツ以外を身に付けている姿を政朱は見たことがない、総じてインテリな雰囲気を醸し出す律子はまるでエージェントのようだと彼は比喩している。
テーブルの上ではICレコーダーが二人の会話を聞き漏らすまいと音も無く秒数を進めている。

「なんだいそれは、そんなことになってるなんて初耳だよ」

政朱は短く生えている白い顎ひげを掻きながら首を傾げる。

「言葉通りですよ、例年行われているダンディーな著名人を決める投票で社長が4位に食い込んだんです」

彼の顔立ちは歳の割りに童顔であり、温和な表情が好印象である、加えて企業家兼工学エンジニアという立場も彼の溢れる才気を窺わせる。
甘いマスクと知的な雰囲気を兼ねる大蓮政朱の風貌は密かに女性ファン(主に中年代の層)の支持を集めていた。
そういえば近頃は写真撮影など本業とは毛色の違ったオファーが来ることが多くなったことに政朱は思い当たった。

63ケーン:2014/05/28(水) 23:38:41
「僕は学生時代は全くといっていいほど女の子にモテなかったし、就職してからも職場には女性が少なかった、それがどうして……、随分遅咲きの春もあったものだね。ちなみにトップ3の面子は誰なんだい?」

「ブルース・ウィリス、ハリソン・フォード、ジョニー・デップです」

恋沙汰に無縁であった人生を振り返って皮肉げな笑みを浮かべていた政朱だったが、名立たる歴史に名優を挙げられて遂に真顔になってしまう。

「なんだよその鉄壁の布陣は……、そのランキングは未来永劫変わらないんじゃないかな」

聞き間違えていなければこのランキングは2099年度の調査のはずだ、しかし彼らトップスリーは一世紀以上も前に活躍していた俳優たちだ。
確かに納得はできる人選だが、もう彼らは殿堂入りとしてランキングから卒業してもいいのではないか、ランキングってなんだろうな。
そう、政朱が内心で毒づいていたときだった。
そんな二人のやり取りの最中にどこからか、微かに笑みを零したような息遣いが聞こえた気がして律子は政朱の背後に控えている少女の容姿をしたアンドロイドに目を向けた。
視線を向けられた彼女はしまったといった様子で口を結んで表情を強張らせた、少なくとも律子にはそう見えた。

「彼女は?」

訝しげに少女を見つめながら彼女が問う。

「あぁ……、彼女は執務用アンドロイドで秘書官兼監視役みたいなものです、僕が仕事をサボらないようにモニタリングしてるんだよ、最近はデスクワークが多くてね、ちょっと外をふらつくと社員にも咎められるんだ、僕、社長なんだけどなぁ」

そう言って政朱がアンドロイドの少女に視線を投げる、すると彼女は機械特有の凝り固まった精密なお辞儀をしてからにっこりと笑みを作る。

64ケーン:2014/05/28(水) 23:40:15
「はじめまして、アイと申します、アンドロイドのアイです」

その一切の曇りもない太陽のような笑みに当てられ律子は一瞬目を眩ませる。
彼女の外見を人の年齢に置き換えれば14歳前後だろうか。
まるで恋人にでも向けるような純粋無垢な笑み、可愛らしく膨らんだ少女の年齢特有の頬の質感、吸い込まれるような深い青をした光学樹脂の瞳、腰の辺りまでスラリと伸びたプラチナブロンドの髪はまるでフランス人形のように美しく少女らしさを引き出している。
そんな浮世離れした彼女の容姿を内包するコスチュームはやはり超俗的で、青いワンピースの上に白いレースのエプロン、胸元には赤い紐リボンがアクセントとして備わっている、これは俗にアリスコスチュームと称される半世紀前の聖衣である。
おとぎの世界の服装をここまで自然に着こなす存在を律子は始めて目の当たりにして、同時に胸の奥が躍動するような妙な高揚感に襲われてしまう。

「大蓮社長……っ!イイ趣味してますねぇ〜!!」

目をぎらつかせ鼻息の荒くなった律子はテーブルに身を乗り出してグッジョブサインを向けるが、その突然の感情起伏に政朱は少したじろいだ。
「ハハハ、社員たちにも散々同じようなことを言われましたよ、しかし、彼女のデザインを考えたのは僕じゃないんだ」

「と、言いますと?」

「アイのモデリングと人格データは父の意見が参考になっているんだよ」
それどころか、アンドロイドの基礎理論を構築した人物こそが政朱の父であり、自分は一世代先を行っていた父の理論を具現化できる環境に生まれただけなのだ。

(続きは月額525円から)

65ケーン:2014/05/29(木) 14:23:21
>>57誤植が多すぎる、訴訟。以下が正本。


西暦2099年の現代、ここ一世紀の間に世界の科学技術は加速度的に発展した。

電光掲示板は空中に文字を映し、紙の文庫本は骨董品と化し代わりにネットワーク経由で文字をダウンロードする端末に変化し、遊園地は広大なVR空間を展開し客をおとぎの世界へ誘う。
自動車は空こそ飛ばぬものの電磁力を用いてガソリンを不要にし排気ガスを出さなくなった、日本はメタンハイドレートの商業化に成功して資源国家へと昇りつめた。
そんな産業界からの追い風を受けた国内での機械産業の進歩はめざましく、とりわけ自立型作業用アンドロイドを一般家庭にまで普及せしめた大蓮ネクスト社はアンドロイド世界市場の約半数以上のシェアを担っており各国に支店を持つ産業界の重鎮となった。
香織の所有する花陽も大蓮ネクスト社製アンドロイドであり第二世代モデルに属する筐体だ、見た目が骨組みの様だった第一世代型よりもパフォーマンスに優れ耐久性も格段に高い、なにより人に近い外観が人気を集め、更には大蓮ネクスト社から最新のソフトウェアのアップデートが受けられる機能も備わっており末永く使用できるモデルとしてアンドロイドの爆発的ムーブメントを引き起こした火付け役だ。
花陽が香織の元へやってきたのもモコミチと同じく二年前で、両親が一人暮らしを始める彼女の家事をサポートするために購入した。

セカンドモデル(第二世代型)が発表されてから早10年、生産ラインと需要が軌道に乗っているおかげで現在は一般家庭でもかなり安価でアンドロイドが購入できる。
香織は家事全般を花陽に任せているが炊事だけは譲らなかった、アンドロイドもレシピを入力してやれば料理はできるのだが味覚や触角を持たない彼らのメニューは些か大味なのだ、微妙な火加減や味付けの繊細さを加味する人間の技術には今日日の科学技術を持っても遠く及ばないらしい。

「ねぇ聞いてよ花陽さん、モコミチのせいで左耳がただれてきちゃってるの、どうすればいいかなぁ……」
その問いに花陽は一旦首を傾ける、この動作は彼女の思考ルーチンが作動していることを表している。

66ケーン:2014/08/20(水) 18:56:13
ぬわああああああああん疲れたもおおおおおおおん

67ケーン:2014/08/20(水) 18:56:45
投下準備よし

68ケーン:2014/08/20(水) 18:57:36
【FILE.01 第三種接近遭遇】

地球人類が異性知的生命体と接触する確率とはいかほどのものであろう?
いつだったか、ネットサイトで見かけた地球外知的生命体と接触する確率を導き出すための方程式、確証も説得力も曖昧と言わざるを得ないその式に適当な数値を当てはめて算出された値、千億分の五十パーセント。
まだゼロと言われたほうがピンとくるし踏ん切りもつくだろう。
どう足掻いても絶望的な結果を示す式なんて使う意味などない気がする。
それでも僕はその結果自体には納得してしまったんだ。
人類の通信技術の普及自体、ここ百年程度で、そんなもの膨大な宇宙の歴史に比べたら刹那にも満たない。
僕らと同等以上の通信技術を持つ文化レベルの星がこの銀河系に発生しているのが前提条件で、さらにその技術が維持されている刹那の間に人類文明とコンタクトできる可能性……。
そんなものはゼロに等しいことは凡庸な高校一年生の頭脳でも十分に理解できる。
そう、理性では理解している、なのに僕はここ一年間、宇宙人というものへの恐怖を感じない日はなかった。


あれは一年前、僕が中学三年の頃の夏休みの日の出来事だった。
その日の夕日はやけに赤黒かったのを覚えている。
当時の仲の良かった友達二人と市民プールを満喫し終えて、まだ鼻の奥に塩素の残り香を感じる帰り道、やがて差し掛かった十字路交差点で僕らは別れを惜しむ挨拶を交わして解散となった。
横断歩道を渡った先には僕がいつも通り道に使っている自然公園があった。
道路沿いを歩いて行ってもいいのだが、帰宅にはこの公園を突っ切った方がいくらか近道になることを知っている僕は木々に覆われた園内へ迷わず足を踏み入れた。
背の高い木々は涼を作って真夏日でもひんやりとした風を送ってくれるのだが、その日は少し様子が違っていた。
普段は心地のよい涼しさが感じられる公園内は震えそうになるほど無機質な冷たさで満ちていた、いつもはうるさいほど鳴き続けているセミの声もなく、まるで普段とは別の世界に迷い込んだような不気味な感覚がした。
なんとなく早く公園を抜け出したい、そんな思いに駆られた僕の足は自然と速まった。
僕は周囲の景色を見ていくうちにその違和感が錯覚ではないことに気が付いた。
先ほどからまったく人とすれ違わない。
いつも屋根付きベンチでバードウォッチングをしているおじさん達や、タバコをふかしている高校生、人気の壁打ちテニスコートにすら人影はなかった。
怖くなった僕の足はいつの間にか速歩きから駆け足に変わっていた。
緊張で動悸が速まるのを感じながら林道を抜けていく、背の高い木々が僕を見下ろす怪物のように見える。
呼吸を荒げながらも、やがて木々に挟まれた細い道から開けた場所に出る、そこには運動場があり様々な人たちがジョギングやキャッチボールなんかをしている、………はずだった。

69ケーン:2014/08/20(水) 18:58:25
僕はその光景を見て愕然とした、毎日のように賑わいを見せる運動場とその周囲は無人だった。
こんな公園の状態は「ありえない」ことだった、だが、その「ありえない」ことはそれだけに止まらなかった。
運動場の中央に鋭角化されたテトラポットのような形状の「何か」が佇んでいた。
全長八メートルはあろうかというそれは一見すると継ぎ目がなく、石炭のように黒ずんだ色をしていた。
今思えばどうしてこの時点で引き返さなかったのだろうと後悔しているが、当時の僕は安っぽい好奇心と怖いもの見たさを武器に、その「何か」へと近づいていったのだ。
運動場を囲うフェンスまで近づいたとき、ふと、それがブゥゥゥンという機械的な駆動音を放っていることに気が付いた。
馬鹿なことに僕は更なる接近を敢行した、フェンスの扉を開けて浅く茂った芝の上へ進入する、額から冷たい汗が滲んでプールバッグを握る手に異様に力が加わる。
なるべく音をたてないように努めゆっくりと歩を進めていく、じりじりとテトラポット型の何かとの距離を縮めてその差が十メートルになろうかというとき、何かに変化が生じた。聞こえてきたのはプシュューという空気が抜けるような音、突然の事態に僕は身をすくませた。
そして、テトラポットの脚にあたる部分に光の線で扉のような空間が描かれ、そこに空洞が生じた。
なにかやばい、直感がそう告げていたが僕の脚はすくんでいて動かなかった。
僕は自然と光の漏れ出す空洞に意識を集中させた、何かが現れる、そんな予感とともに息を飲み込んだ。

やがて「そいつ」は姿を現した。

初めに見えたのは細長い腕、灰色をした、人間のものではない長い腕、全身が総毛立ってしまう。
そしてバランス的に不釣り合いな小柄な胴、頭部が異様に大きく発達していて巨大な瞳は井戸の底のように真っ黒だった。

当時の僕にもあれがなんなのかは容易に見当が付いた、現在宇宙人の容姿とされるものの中で最も浸透している種、グレイだ。

70ケーン:2014/08/20(水) 18:59:11
あまりに現実感のない光景だった。
SFドラマや小説の中の存在だと思っていたものが目の前にいる、だが、この光景が現実であることは夕日の加減、塩素の香り、乾ききらない髪、バクバクと音を立てる心臓、吹き出す汗、そのすべてが証明していた。
叫びたくなるのを必死にこらえて周囲を見回すが、間抜けたことに身を隠せるような場所がないことに気が付く。
再びグレイのいる方向へ視線を戻すと、気のせいだろうか、向こうもこちらを見ている気がする、じっと目を凝らして焦点を合わせると、今度ははっきりとその表情が見えた。
グレイも僕を見ていた。

「うわああああああああああああ!!!!」

僕は絶叫を挙げ、全速力でその場から逃げだした、握っていたプールバッグは反射的に放り投げてしまったがそれを取りに戻る勇気も後悔も僕にはなかった。
ひたすらに走った、あんなやつに捕まったら確実に殺されてしまう、それも思い切り残忍な殺され方だ、奴らは僕のことを実験動物程度にしか扱わないだろう。
魚みたいに身体を切り開かれて内臓をひとつひとつ抜き取られて調べられるに違いない。
肺が悲鳴を挙げ、胃液が込み上げてくるが構わず木々に覆われた道を走り抜けた。
一秒一センチでも早く得体の知れない恐怖から身を遠ざけたかった。
次の瞬間、気が付けば僕は自宅の玄関に佇んでいた、無我夢中だったせいか家に戻るまでの道のりは覚えていなかったが、息切れと全身から滴る汗がすべてが現実であることを物語っていた。


あれから一年たった今でもあの鮮烈な日のことは忘れていない。
ふとした瞬間、僕は「アイツ」の表情を思い出すんだ、異様な頭部に漆黒の瞳。
本当に僕は逃げ切れたのだろうか、どこかで今もアイツはその異様に大きな目で僕を監視しているのではないか。
あの時感じた鮮明な恐怖に今も僕はさいなまれ続けている。

71ケーン:2014/08/20(水) 19:00:13


「まぁたその話かよ裕樹、もう耳にタコができるくらい聞いたぞ……」


あの夏から約一年、僕、佐々原裕樹は地元校である光ヶ谷高校へと入学を果たしていた。
もともと僕は大が付くほどの勉強嫌いだった、それこそ、下手をすれば一般高校に入れるかどうかも危ぶまれるほどの得点を中学時代のテストでは叩き出していた。
そんな僕が変わってしまったのは例の恐怖体験の日からだ、その日以来、僕は外出するのが怖くなって残りの夏休みをすべて自宅で過ごした。
外に出ればまたアイツに遭遇するかもしれないと思ったからだ。
奇異なことに自宅での生活で暇を持て余した僕は勉強に没頭した、他にすることが思いつかなかったからだ、怪我の功名というべきか、その結果、僕は高校模試で余裕のA判定をもらった。
この光ヶ谷高校を選んだのは単にそのA判定という自信と立地が近いという理由からだ。
そして現在、僕の目の前でイスの向きと逆に座って渋い表情を浮かべているのは、一年前のあの日、プールで遊んだ仲間の一人で名前は荒牧健吾。
高校に入ってからの自意識の肥大からか、突如その短髪を金色に染めてきた。

「だから、何度も言うけどあれは本当のことなんだって」

僕はあの体験をいろいろな人に話した、だが、どれほど必死に話しても家族でさえまともにとり合ってはくれなかった、健吾もそのうちの一人だ。

「ならよ、どうしてそんなデカいUFOが飛んでることに誰も気が付かなかったんだよ」

そんなもの光学迷彩かなにかに決まってる、なにせ、遥か遠い移動してくるだけの技術を持ったやつらなんだから。

「それに、現にお前はこうして無事でいるじゃねぇか、連れ去られたわけでもないし物的証拠はどこにもないんだ、プールでの運動疲れと外の熱気にやられてちょっとした幻覚をみただけさ、それを年端もいかない中学生の感性が現実だと錯覚しちまったんだ」

まるで聞き分けのない子供を諭すような口調が妙に鼻について僕は顔をしかめる。
だが、確かに健吾の言い分はもっともらしい、すべては僕の幼稚性が作り出した幻想なのかもしれない、だけど、今でもあの夕日が肌を照らす感触や塩素の香り、アイツの顔は脳内で完璧に再現できるんだ。

「もういいよっ!」

僕は業を煮やし、机を勢いよく叩いて立ち上がる。
お昼休みの最中、昼食をとっていた数人のクラスメイト視線が僕に集まる、少し恥ずかしくなってうつむきながら足早に教室を去る。
後ろから健吾の引き止めるような言葉が聞こえたがあえて無視する、あれが錯覚であるものか。

72ケーン:2014/08/20(水) 19:01:17
一階の廊下に出ると、僕はガラス窓の枠に肘をついてため息を吐き出した。
窓からは中庭が見渡せて、三十度近い気温だというのに楽しげに昼食をとる女子のグループが見受けられた、難儀なことだと思う。
一方で僕は最近憂鬱で仕方がなかった、残り一週間と少しでこの学校にも夏休みが訪れる。
一般的には喜ばれるイベントなのだろうが、僕の場合は否応なく一年前の出来事が想起させられる。
再びアイツが目の前に現れる可能性があるかもしれない、内に溜め込んでいた不安がどっと溢れ出して精神が摩耗していくのを感じる。
ふと、僕は花壇の目の前で脚を抱えて屈みこむ一人の女生徒に何気なく視線を向けた。
陽光を吸収して光を含んだように煌めくアヤメ色のショートカット、パッチリとした快活そうな瞳、目の前の草花に視線を巡らすたびに朗らかな笑顔をつくって、まるで無邪気な子供じみた表情だった。
そのとき、彼女が一層瞳を輝かせて花壇の中に何かを発見した様子なのが見て取れた。
横からなので判断しにくいが、手を花壇の中に差し込んで何かをつついているように見える。
僕はじっと目を凝らして彼女が何をしているのかを観察する。
不意に彼女は何かに驚いた表情を見せ小さく体を震わせて瞼をパチクリと瞬かせる、なんだか小動物のような仕草で可愛さを感じさせられてしまう。
やがて彼女は草花の間から何かを摘み上げた、よく見るとそれは彼女の指先で動いているのがわかった。
カマキリだった。
指先で首元を摘ままれたカマキリが多脚を動かしもがいている。
捉えたカマキリを眼前へと近づけて、物珍しそうにまじまじと観察し始める彼女。
僕もそんな彼女の一挙手一投足を固唾を飲んで観察する。
だが、次の瞬間彼女は予想だにしない行動に出た。
彼女は眼前にカマキリを据えた状態で瞼を閉じ、大口を開けたのだ、なぜ!?
カマキリを掴む指先が口元へと近づいていく、僕の脳裏にはすでに想像に難い光景が過っていた。
どんどんカマキリと開いた口元の距離は縮んでゆく。

おい、やめろよ……。
一瞬、スローモーションのような時が流れる。

ぱくりっ…………。

カマキリの胴から上が彼女の口内へ埋まった。
あまりに衝撃的な光景に僕は叫びだしそうになったが、その叫びはあろうことか腹の中で反響して口から出ることはなかった。
彼女の口元からはみ出しているカマキリの脚がもがき苦しむように暴れていた、しかし彼女の口がもごもごと動くたびにその抵抗力は弱まり、やがて動かなくなった。

ぱくりっ…………。

そして残りの半分の部分も口へ含まれ咀嚼され始める。

73ケーン:2014/08/20(水) 19:02:23
やがてゴクリと喉を鳴らした彼女はさも美味しいものに感激したように満面の笑みを浮かべていた。
一方、それを目撃してしまった僕の表情は能面と化す。
様々な思いが僕の頭を反芻する、気持ち悪くないのか、どうして食べたのか、美味しいのか、そもそも君だれだよ。
混乱の最中、ふと彼女を眺める僕の視線と彼女の視線が交差する。
パッチリとした大きな瞳を向けられて、僕の身体は途端に硬直してしまう。
しかし、それは彼女の怪行動を見ていたことがばれてしまったことでの緊張感ではなかった。
もっと根源的な、本能に近い部分が彼女の視線に恐怖しているかのようだった。

不意に、塩素の香りが鼻孔をかすめる。

かつて僕は同じような状態に陥ったことがなかっただろうか、そう、一年前の夏の日に。

テトラポット型の宇宙船の扉が開いて、現れた「アイツ」が向けてきた視線の恐怖が窓ガラスを隔てた先の彼女の視線と重なった。


原案:遺作  著:ケーン


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板