上の記事についた横山信弘氏のコメント。
※横山信弘
「早く行きたければ一人で進め、遠くまで行きたければ皆で進め (If you want to go fast, go alone. If you want to go far, go together. )」は現在、多くの企業経営者が参考にするアフリカのことわざだ。若い起業家も口にする。なぜか? 多様性の時代だからだ。経営者の独善的な判断で突き進むのではなく、多様な価値観を持つスタッフとともに緊密なコミュニケーションをとりながら組織運営をする。一見遠回りのように見える。が、実のところことわざの通り、多様性を受け止めながら進んだほうがシナジーが発揮され、生産性が高くなることがわかっている。今の時代を象徴することわざであるので、このことわざを耳にして共感したビジネスパーソンは多いのではないかと思うが。
◆青木理氏の言葉に我が国の知性の衰退を感じた後、横山信弘氏のコメントに救われた。マスコミはいい加減縁故採用をやめて本当に頭がいい論客を積極的に起用しないとヤバイぞ。そのうちマスコミは俺たちより馬鹿と国民がマスコミ公論を無視して信じなくなる。トランプ大統領台頭を招いた前触れ現象=アレクシドトクヴィルが予測した「知識人の劣化→国民が劣化」だった。
◆中国排除になりふり構わぬ米国
―米国がそこまでするものでしょうか?
鈴置:ええ、少し前までならしなかったかもしれません。でも今や、米国は中国に勝つためにはなりふりを構わなくなりました。ことに、主戦場に半導体産業を選んで、露骨な囲い込みに動いています。それに韓国が協力しなければ、米国は日本の「輸出規制」を使って、韓国の半導体産業を締め上げる可能性が出てきました。その布石とも見られる事件が起きたばかりです。9月23日、米政府は世界の半導体関連企業に対し、保有技術の水準、顧客別の売上高、在庫などの情報を提出するよう求めました。対象企業はTSMC、サムスン電子、SKハイニックス、アップル、インテルなどに加え、GMやフォードといった自動車メーカーも含まれています。「45日以内」と期限も切っています。 米政府への情報開示は任意の形をとっていますが、事実上の命令です。ブルームバーグの「White House Pushes Companies to Be Transparent on Chips Supply」(9月23日)は米当局者の「応じない企業に対しては強制する方法がある」との発言を伝えています。情報開示を要求した目的は「最近の半導体不足を解消するため」とされていますが、素直に信じる専門家はいない。「米国の同盟国だけで半導体供給網を作る」戦略の第一歩と見るのが普通でしょう。米政府は開示させた情報をもとに「この半導体は米国で作れ」「この半導体は中国に売るな」などと、半導体メーカーに命じることができるのです。9月24日にワシントンで開いた、日米豪印による中国包囲網QUAD(クアッド)の首脳会談で、半導体の供給網構築に合意したことからも、それは明らかです。QUADはこの供給網を中国への半導体供給や技術移転を止めるためにも使う、との意図を隠していません。首脳会談後に公表された「技術利用に関する共同原則」は「技術の設計、開発、ガバナンス、利用に関する方法は民主的な価値や普遍的人権の尊重によって形成されることを確認する」と謳っています。
◆日本も台湾と連携
半導体の供給網構築には日本政府も動きました。TSMCに数千億円規模の補助金を提示し、ロジック(演算用)半導体の工場を誘致したのです。生産開始は2024年の予定で、生産品目は回路の線幅が22〜28ナノメートルの「成熟品」。最先端半導体ではありません。一企業の誘致にこれほど巨額の補助金を支給するのは例がありません。しかしTSMCのように、現時点で3ナノ級の高度な半導体を製造できる日本企業はない。TSMCの誘致は安全保障上、必須と判断したのです。日本もまた、なりふりを構っていられなくなったのです。半導体供給が国家間の武器となった以上、技術力の高い企業の生産拠点を国内に持つことが、平時でも必要となりました。ことに、中国の台湾侵攻の可能性が増した今、TSMCの取り込みは国の死命を制すると日本政府は見たのでしょう。TSMCの日本生産を見る韓国の目は複雑です。韓国には「日本が半導体素材の輸出を規制するなら、日本に対して半導体の供給を絞ればいい」との発想が根強くあります。でも、TSMCと日本の合作で、こうした報復は効かなくなります。韓国が中国側に寝返った場合、日米は躊躇なく素材の輸出規制などによりサムスン電子を叩くことになります。米国に続き日本もTSMCの生産拠点を持った以上、韓国に遠慮する必要はなくなるからです。
◆慰安婦と軍艦島で騙し討ち
―こうなったら、何が何でも韓国は日本を騙して「輸出規制」を撤廃させねばなりませんね。
鈴置:岸田新首相は簡単には騙されないと思います。何せ外相時代、韓国に2度も騙されているのです。1回目は2015年に「明治日本の産業革命遺産」を世界文化遺産として登録した時です。当時の朴槿恵(パク・クネ)政権は「現場の軍艦島(端島)では朝鮮半島出身者が強制労働された」と登録に反対。同年6月21日に韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外交部長官が東京で当時の岸田外相と会って、いったんは登録で合意したものの、7月4日にユネスコで正式決定する場になって突然、異議を唱えたのです。窮地に陥った日本は、朝鮮人労働者が「brought against their will and forced to work(意思に反して連れて来られ、働かされた)」との声明を出すことで収拾しました。その後、韓国はこの文言を証拠に「日本の強制連行」を世界で喧伝するようになったのです。2回目は同年12月の慰安婦合意です。韓国の執拗な要求もあって、日本政府が10億円を拠出し、韓国側が元慰安婦のための財団を作ることで合意しました。同年12月28日にソウルでの会談で合意した岸田外相と尹炳世外交部長官は共同会見で「日韓間の慰安婦問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」と表明しました。しかし、約束したソウルの日本大使館前の「慰安婦像」は撤去されず、釜山の日本総領事館前にも新たに像が立ちました。