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【小説】よしけんが死んでいました。

10課長:2009/04/27(月) 05:43:19
 少しの沈黙の後、先導していた仁がとある部屋の前で止まる。
 「では、ここで説明しますね。」
 「はいはい。あ、禁煙ここ?」
 「あ、いえ。」
 「なら、オッケ。」

 答えを聞くまもなく、仁はカードキーを通した。
 カタッと音を確認してドアノブを回す。
 中には誰もいない。ホテルの客室ではなく、ただの8人程度が収まる会議室のようだった。

 そのうちの椅子の一つ先にドカッと座る課長。
 ゆっくりとその対面に仁は腰をおろす。

 「確認だが…」 課長が言う。
 「…実行は避けられないのか?」
 「はい。」 仁は間髪を入れない。
 「相手側もどうやらこちらの行動に感づいてるらしく。これが、相手側上層部での会話を録音したファイルです。後ででもよければ確認してください。」
 「ふーん…。どちらにも内通者はいるってか。嫌だ嫌だ…。」
 「スパイってのも立派な職業ですからね。」
 「まあ、それもわかるけどさ…。あーつか、実行つっても、初っ端から監禁ってワケではないんだろ?そのための施設だろう?」
 「はい。ただ、この施設、つまり監視下にある状態ならば良いです。」
 「それはそれで難しい注文だ事で。1,2日なら簡単だけっどさ。」
 「しばらくは問題ないでしょう。僕と課長がいれば。」
 「そうかもしんねーけどね…。あー外出は?せっかくだから、松島とかも見たいじゃん?」
 「んーそれはどうでしょう…。あとで確認してみます。」
 「おいおい…。ダメって事はないだろう。1時間もかからない距離なんだから。」
 「それに伴って警護もつけないとダメですからね。確認は必要ですよ。」
 「はぁー。そうですかー。あーあー。もう。くだらん計画なんて立てるから、俺の仕事が変な方向に。」
 「いいっこなしですよ、それは。」
 「で、あちらの計画ってのはかなり進んでるんだ?」
 「はい。」

 今までで一番真剣な表情を仁が見せる。
 「今年中には暗に発表されるでしょう。」
 「へー。ずいぶん有能者揃えたもんだ。恐れいったねこりゃ。あはははは」

 乾いた笑いを課長は発する。

 「あ、ここってホテルって事は、あんだろ?露天風呂か何か。」
 「ええ、ありますよ。」
 「んじゃ、風呂いってくるわ。カタい話はあとでまた、な。」
 「…わかりました。」
 「ういーセンキュー。」

 そそくさと部屋を出る課長。
 仁は一人部屋に残って物思いにふける。


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