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第三汎用スレッド

1「鍵を持つ者」:2012/09/29(土) 00:27:21 ID:???
第三の眼なんて無かった

2105ゲイリー:2017/03/05(日) 16:27:25 ID:FfiuDCM6
>>2104
「…」

終始聞くことだけに徹する男。
無駄話は好かないのだろうか…
そして羊皮紙を見ながら男は尋ねる。

「資材、食料はまあいいとして…この人材募集というのは?
 何処から見つけてくるかという問題もあるが、詳しく教えてくれ」

2106隻脚の騎士/今更ながら乱入歓迎:2017/03/05(日) 17:50:07 ID:/57ZVeBc
>>2105
「そうだね。悩ましい事に憲兵の者達も含め我々は基本的に治安維持や有事の際の防衛などに能力が特化していてね」

「治安維持などは我々でまかなえるが、どうしても効率が悪くてね。避難者たちが立ち直れるまでの当面の施設の・・・スタッフといえる人材が欲しい。」

「まず1つ目は建築技術を持つ人材」

指折り1つ。

「施設の拡充などをしようにも我々の技術では良くて仮設のテントを建てるくらいが関の山さ。」
「幸いこの周辺に比較的新しい廃村があるにはあるが、正直焼け石に水さ。」

「避難民の中から自己申請で名乗り出る者も少なからず居るには居るが、素人の集まりだからね・・・監督者が欲しい所だ。」
建築技術や単純に作業要員としての人材

「そして2つ目。炊き出し等の調理スタッフ」

指折り2つ。

「それに食事だってそうさ。今見えるだけでもかなりの数の避難者たちが居るが、全体に配給する為の効率もそうだが」
「こう言った状況であるからこそちゃんとした味の物を食べないといけない。」
「今の配給の内容がこれなんだが・・・」
どうやら食事をまだ摂っていなかった模様だ。

そこには見るからに硬い小ぶりに切られたパンと茹でた芋に小さい肉の様な物が僅かに添えられただけの粗末なもの。
これらが小さい皿に1つに盛られている。

「恥ずかしながら調理といえる様な物ができる物が1人も居ない。
 このパンだって元々備蓄していた物を無理やり小さく切り分けただけの物さ。」

「これは持論なんだが、窮地であればこそちゃんとした食事を摂るべきだ。」
「大勢の食事を効率的に提供できる、もしくはそう言う経験がある人材が欲しいのさ。」

「大まかに言うとこの2つだ。
 他にも細かい部分を言えばいくらでも挙げれるが今はこの状況の収拾を優先する為、この2つに絞る形になる。
 勿論後々落ち着いてくれば避難者の中から募集をかける。あくまで当面の人材で良い。」

「長々と話してしまって申し訳ないね。もっと手短に終わらせる事もできたかも知れないが、生憎私は生来こういった性質でね。」

2107ゲイリー:2017/03/05(日) 21:28:49 ID:FfiuDCM6
>>2106
「いや、詳細に答えてくれて感謝する。
 問題は何処で探すか、だろう。
 確実なのは国外だろうが……現状を考えると態々此方に出向くモノ好きはいないな。
 そうなると国内の生き残りを探す、という案になるが」

暫し黙る男。

「四の五の言ってられんな。
 当然国外への救援は誰かが行っているのだろう?
 なら矢張り中で探す、それしかない」

2108隻脚の騎士/今更ながら乱入歓迎:2017/03/05(日) 22:23:48 ID:/57ZVeBc
>>2107
「その案には概ね同意するよ。」
騎士は水を一口飲み、続ける。

「あぁ、当然国外への救援申請は使者を派遣しているんだが・・・」
 苦虫を噛み潰した様な表情を一瞬みせ、直ぐに元に戻る。

「今まで2回程、各国に派遣したが、誰一人として帰ってきていない。」

「理由は不明さ。派遣した者たちが職務を放棄し、現地で生活をしているのかもしれない。」
「まぁこの可能性なら一番マシだけどね。」

指折り1本。

「次に、道中で魔物や山賊などに襲撃され命を落とした。
 この可能性だって十分に考えうる。」

指折り2本。

「一番考えたくないし、一番あって欲しくない可能性だが・・・」

右手を左手でぐっと握る。その表情は一周まわって最早無表情に近い。

2109ゲイリー:2017/03/05(日) 22:43:34 ID:FfiuDCM6
>>2108
「…準備ができ次第仕事にかかる」

下手な慰めも、悲観するだけの無意味な行動も必要ない。
やらなければならないことが多いのだ、無駄な事をするのは当分先になる。
兜に覆われ落ち着いた声の男からは何の感情も読み取れないだろう。

「虱潰しに内を探索していくしかないのだろうが…何か充てはあるか?」

2110隻脚の騎士/今更ながら乱入歓迎:2017/03/05(日) 23:02:45 ID:/57ZVeBc
>>2110
「あぁ、すまない。また話が長くなるところだった。」
こめかみに指を当て、一瞬考える。

「そうだね・・・この避難所以外にも各地にここと同じような場所があるという情報もいくつか聞き及んでいるね。」

「だが、詳細な場所などは耳に入っていないんだ。すまない。」
軽く頭を下げる。しかしその直後に

「・・・そうだ。川辺には村や集落などができる事が多い。この近くの廃村しかりだ。」
「もしかしたらこの川に沿って歩を進めれば何かしらの進展が得られるかも知れないね。」

騎士はそう言うと机の引き出しから何かを取り出そうと探し始めた。

2111ゲイリー:2017/03/05(日) 23:22:13 ID:FfiuDCM6
>>2110
「成程な…ん?何かあるのか」

出発しようと動くも、足を止める男。
暫し待つ。

2112隻脚の騎士/今更ながら乱入歓迎:2017/03/05(日) 23:42:48 ID:/57ZVeBc
>>2111
「いやなに、もし私と同じような騎士団の生き残りと遭遇した時に話を少しでもスムーズにできるようにね。」

そういうと羊皮紙と羽ペンを取り出し

「サッサッサ・・・ってね。」

紙に記入していく。その内容は自身の現在の身体状況および依頼内容など。

「あくまで簡易的な物だけど正式な依頼証明という形をね。
 騎士団の人間にはプライドが高い人間も多いからね。無駄な争いを避ける為さ。」
しかし、その字はかなり独特の筆跡の為所々読みづらい部分がある。特に立場とか名前とか。

「あぁ、私の字は汚いからね。わかる人は逆にそれでわかってくれると思うよ。」
そう言いながらその証書を3つ折にし、机の上に置き、指先から淡い光を放ち証書にかざす。

「勿論私のことを存じ上げない者も居るはずさ。
 自分で言うのもアレだが、普段はあまり表立って目立つ様な者ではなかったからね。
 だからもし通じなかった時は申し訳ない。」
指先の光が消え、そして差し出す。

「はい。わざと破ろうとしない限りはやぶれないはずだよ。」

2113ゲイリー:2017/03/05(日) 23:51:17 ID:FfiuDCM6
>>2112
「了解した。では今度こそ行く」

ものを受け取り、自身のバックへと詰め込み男が外へと歩き出す。

「2、3日で戻るつもりだ、成果があろうがなかろうが。
 徐々に探索範囲も広げる、短期決戦とはいかんだろうしな」

2114隻脚の騎士/今更ながら乱入歓迎:2017/03/06(月) 00:05:46 ID:1hL3RIe.
>>2113
「あぁ、わかった。その身に難無き事を願うよ。幸運を。」
左手を胸に当て、会釈をしその姿を見送る。

外は仮設テントの下で生気を失った表情で虚空を見上げる者

この世の全てを憎むような眼で地面見続ける者

何かしらのいざこざがあったのか、憲兵に押さえ込まれている者

声も上げずにただただ涙を流し続ける少年少女

散々たる光景が広がる。

『だぁからそっちの薬は痛み止めじゃねぇっつってんだろ!!
 この患者より酷ェ目みせっぞゴルァ!!!』

仮設の診療所から薬剤師の様な者の怒号が聞こえてくるが、この状況だ。些末なことである。

2115ゲイリー:2017/03/07(火) 22:02:22 ID:nE7Z2XSY
>>2114
「…はぁ」

溜息をついて歩みを止める男。

(何なんださっきから、こう彼方此方でギスギスしていると
 俺が帰ってくる頃には此処は無くなってるんじゃないのか?)

内心で毒づく男。
現状、診療所は最も重要な場所の一つだろう。
それがまともに機能していないのでは今後が不安だ。

(ああクソ、仕事でもないってのに)

だが気になったのだから仕方がない。
踵を返し診療所へと向かった。

2116診療所の教師エランド/乱入歓迎:2017/03/08(水) 00:32:58 ID:TNBWu6Co
>>2115

診療所は2棟あり、その内の診察にあたる棟の方からの声だ。

「はぁ・・・何回でも言うけどな。これは傷み止めとして使うには効き目があり過ぎンだよ・・・」

白衣の男が心底面倒そうに解説をしている。どうやら麻酔を求める者が居た様でそれを疎めて居た様だ。

「そんな軽い理由で出せる程たくさんある訳じゃねぇしよ。」
「痛てェって言える内はまだ大丈夫だから我慢しろ。お前さんのはただの捻挫だ捻挫。」
「渡した湿布貼ってろ。」
そう良いながら湿布を取り出して患部に貼り付ける。

その姿は本当に気だるそうでしかないが、腕は確かな様だ。

「そこ!ベッドはできるだけ離せっつってんだろ!!感染症のリスクが高まるだろうが!!」

患者を乗せたままベッドを離す白衣の男。
細身の身体であるが、その肉体は引き締まった筋肉で構成されている。

結構な数の患者をどうやら現在1人で診ている様で、ちょうどゲイリーがそちらに来る頃には診察中の人間は居なかったようだ。

「あ゙ー・・・疲れた・・・こればかりは天才でも疲れた・・・」

2117ゲイリー:2017/03/11(土) 21:10:18 ID:tNoh/TOE
>>2116
(医者も探した方がいいなこれは)

状況を見、男は医者に声をかけるでもなく其処を後にする。
医療の心得は並みの冒険者が持つ応急処置の類しか男にはない。
変に首を突っ込む必要もなさそうであるし、仕事を片付ける理由が増えただけであった。

2118白銀山麓難民キャンプ/乱入歓迎:2017/03/19(日) 00:18:44 ID:jf0OXEtU
ここは、王都近郊、白銀山の麓に位置する難民たちの避難所である。

「ふむ。」
幾数十枚の羊皮紙を見つめ、思案にふける男がいる。

「となると、この場合は彼に依頼するとして・・・この件は・・・」
「うぅん・・・効率が悪いね・・・一旦人事入れ替えをするべきか。」

『報告します!!』
「ん?どうかしたかい?」
ふと、周辺の警護を担当する憲兵の声に向き、そう答える騎士。

『現在当施設における予想での食料が残り1週間分を下回りました。』
「うぅん、まずいね・・・非常にまずい。」

『つきましては、当施設で何か食料を自給できるシステムを導入するのはいかがかと思い、報告および提案に参りました次第です。』

「成る程・・・備蓄はあと1週間として、食料は冒険者達にも依頼をしているからね。誤差はあるだろう」
「まずは・・・それに適した土地があるかを確認しようか。」
「すまないが、少しの間ココを任せてもいいかな?」

騎士は杖をついて立ち上がり、覚束ない足取りで出口に向かう。
その左脚は失われていた。その部分には鉄の棒で無理やり拵えた義足の様な物で補っており、見るからに痛々しい。

『かしこまりました。・・・あの、この様な事を言うのは無礼であるとはわかっているのですが』
『その、その脚で大丈夫なんですか・・・?』

「なぁに、生きてるだけで儲け物だよ。それに、生きてさえ居れば代わりになる足を作れる技術者とも出会えるかもしれないだろう?」
「こう言う時にこそ前向きに考えるのさ。それじゃあ、留守を頼むよ。」
『お気をつけて。』


これが、およそ2時間前の出来事である。

そして現在

「ふむ、川が近くにあるのは把握していたが、中々にきれいな水だな・・・」

川辺に居た。
避難所から通常ならば20分ほど歩けば到達する位置である。

2119難民キャンプ周辺の小川/乱入、置きレス歓迎:2017/03/20(月) 01:54:27 ID:nfR27RUg
>>2118
「よいしょ・・・と」
近場にある岩に腰を下ろし辺りを一望する。その直後、騎士の眼前の空間に小さい魔方陣の様な物が現れた。

「距離にしておおよそ・・・」フィンフィン

そしてその魔方陣に指を合わせ形を変えていく。どうやら周辺地域の大まかな見取り図を作っていた様だ。

「しかし、本当に色々覚えておいて正解だったね・・・周りにはいつも呆れられてたなぁ・・・」

ふと、風が吹く。
「・・・ッ くぅ〜・・・傷口に染みるねぇ・・・もう無いってのに。」

一人、そう呟き魔方陣に描かれた見取り図を確認する。

「水を引くにしても・・・いやそれよりも・・・」

再び思案に入る騎士。身体的特徴も含め、川辺で魔方陣を浮かべながら思案に更ける騎士というのは中々に目立つ風貌である。

2120 ◆/yjHQy.odQ:2017/07/21(金) 21:54:04 ID:wV2CkvIM
【今は遠く、しかしかつて確かにあった時代】


 荒野と、それに連なる岩山。
 真冬の月が塵舞う風を照らす丑三つ時。
 僅かに咲く寒気の癒やしが花弁を散らした。
 風、いや違う。
 駆け抜けていった、黒き影に当てられ、腐り果てた証拠だった。


「アアアハハハハハッッ! ハハッ! ハハハハアァァ!!」

 金切り声にも似た、哄笑。
 細身を隠した全身の包帯、それを更に覆う鎧の断片達。
 踏み出した一歩が大地を揺らし、奮った腕が木々を手折る風を生む。
 剥き出しの歯は鳴り響く、腐った喉は理性無き咆哮を繰り返す。

 それを知る者は今やない。
 故に語ろう。
 ジャガーノート。
 かつて戦場にて屍山血河を築き、死せぬまま妖魔に作り変えられた、【バケモノ】だ。


「……間に合わんか」


 相対する男が呟いた。
 鴉のような黒髪が月光を拒む。
 手に握る妖刀が喧しく響鳴する。
 白衣を加工した戦闘服が、度重なる死闘に点々と朱を残す。

 重ねて語ろう。
 彼の名は、ゼオ。
 ゼオ・ウッドフィールド。
 この【バケモノ】が垂涎して付け狙う、【エモノ】である。


「クエストメンバーが集結するポイントまで山一つ」

「逃げに徹してかかる時間は三十分強、こいつが俺を四回はくびり殺せる距離となる」

「戦闘続行時間は」

『三分五十秒』

「博打は好かんのだが、な」

2121 ◆/yjHQy.odQ:2017/07/21(金) 22:17:15 ID:wV2CkvIM

「シィアァァッッ!!!」

「!」


 痺れを切らした【バケモノ】が、先手を打つ。
 大きく振りかぶった拳を、彼の顔面めがけて一直線に振り下ろす。
 やや大げさ、拳三つの距離を開けて半身で回避するゼオ。
 
 ……直後、彼の後ろの山肌に直径3mほどの小さなクレーターが出来る。
 風圧、及びこの怪物の魔力、気力のたぐいが当てられた、残滓の結果。
 ミノタウロスやサイクロプスと言った豪腕自慢の怪物たちを粘土細工に変える、悪魔の膂力の結果だった。


「……ア?」

 
 が。
 怪物は、次なる一撃を放つ前に、宙へと浮いていた。
 正確には、地面へと強烈に叩きつけられてのワンバウンド・フライング。
 ゼオの、【エモノ】のカウンターじみた背負投によるものだった。


「纏え――!」


 念じた、そして、喚んだ。
 ゼオの両手足には大気が渦巻き、どこからともなく金属の装甲が纏わりついていく。
 右腕は白銀の輝きを強めた。
 

「奏でよ、雷光の調……我が手に宿り敵を穿て」


 続いて、詠唱。
 下級の雷魔術、魔法学校での必須科目のそれ。
 しかし、右腕の輝きはそれの比ではない。
 加えて、絶えず変質した稲妻の輝きは、ついに増幅を圧縮させ、剣刃が如き雷孤を生み出した。
 
 射出。
 下級魔術とは思えぬ威力と速度、怪物の顔面を捉えて即座に放電、霧散した。
 この間五秒もなく。
 投げられて崩した体勢を更に崩した上で、彼は跳躍した。
 右手に握る刃を構えて。

2122 ◆/yjHQy.odQ:2017/07/21(金) 22:51:03 ID:wV2CkvIM
「はぁぁっ!!」


 斬り上げる。
 刃には霞のような黒紫の妖気。
 金属の塊を、強大な斧刃で叩きつけたような音が響いた。
 
 更に、二旋。
 続けて、三尖。

 猛牛の集団の突進を物ともしないこの怪物が、四肢を揺らして受けるがまま。
 刃は鎧を断ち、包帯に食い込み、その奥の肉体を砕いていた。
 そこから左足で蹴り上げ、一回転。
 巻き起こる風の柱に、五体は為す術無く岩壁へと叩きつけられた。


「まだ――?!」


 こんなものでは無いと、身を乗り出す。
 虚空を蹴って疾駆する体勢。
 男は一瞬、されど致命の瞬間を、確かに見た。


(間に合うか――!)


 刀を落とし、両手をかざし魔力を放つ。
 無詠唱の盾魔法、しかしやはり強度は遥かに堅い。

 それを確実に貫通し、彼の身体に突き刺さっていく、飛沫。
 浴びせられた極小の破片が、嵐の如く男に襲いかかったのだ。


「ぐ、ぁ……!!」

「ギャハハハハハァァッッ!!」


 それは、ただの石礫。
 怪物の腕力で投擲されただけの、【凶器】であった。
 墜落する男を嘲笑が追った。
 一瞬の逆転劇。
 怪物の跳躍が、矢の如き破壊を伴い男へと一直線。

 かざした腕の先は、もちろん男の頭部。
 握りつぶさんと、一心不乱に伸ばした。

2123 ◆/yjHQy.odQ:2017/07/23(日) 02:02:12 ID:h0vM2CUA

「ッギィ!」


 また響く、豪閃の一響。
 甲冑と包帯の奥の腐った眼が、見開かれる。
 歪んだ空間に包まれた腕を、横合いから何かが斬りつけた。
 彼の頭を大きく逸れて、掌は空気を握りつぶす。

 闇魔刀。
 そう呼ばれるゼオの愛刀が【事前に託された】一撃。
 リモートで発動した歪曲精神空間からの一撃であった。

 一瞬。
 また戦局は大きく動いた。
 視界を戻したジャガーノートの、全身が弾かれ吹き飛ばされる。
 そこには巨大な岩石の拳、それのみが中空から発生している。
 更に、その四肢は突如として発生したシールドマジックに衝突し停止。
 怪物へ浴びせられる追撃は豪炎の砲弾、雨霰。
 着地さえも待たず、部分召喚、遠隔魔術発動、輪唱魔術と矢継ぎ早の高等術法連続照射が繰り出される。


「ドヴァー…フス…ナァク……!!」

   
 まだだ、まだ終わってはいけない。
 彼の焦燥と決意は、頭上のジャガーノートへ。
 このまま数秒と待たず、虚空を蹴り上げ一直線に自分へと飛び込んでくる。
 何ひとつの恐怖も宿さない、がらくたの破壊衝動がやつの正体だ。

 着地と同時、拾い上げた闇魔刀に【竜の言葉】を吹き込む。
 峰に指を滑らせ、刀身の妖気と言葉が合わされば強烈な縁を生み出す。
 地面を裂きながら深く斬り上げる。
 その剣閃の先端、切っ先に放たれる妖気の形状は、竜の顎となって上昇。
 此方を見据えた直後の怪物へと一息に食らいついた。


「アギィィアアアァ!!!」


「喧しい、どうせ効いちゃいまい……!!」

2124 ◆/yjHQy.odQ:2017/07/23(日) 02:33:49 ID:h0vM2CUA


「とっておきだ……喰らって死ね!」

 駄々をこねるように、鋼鉄の霧に等しい竜の顎を殴り砕く怪物の手足。
 だが、時間は十分に稼げる。
 始めた詠唱は何の変哲もない、【ただ難しいだけの高等魔術】。

 しかし、迸る魔力の波長は明らかに通常のプロセスを組んでいない、異常な流入を見せている。
 違うのは、何だ。
 詠唱――否。
 媒介――無。
 発動手段――非。

 それは、魔力源。
 全身から発せられる膨大な量の魔力を以て生成される、術式の強制拡張。


 そして、それは訪れる。
 顎を砕いた瞬間、静止した空間に放られたジャガーノート。
 妖刀の一撃さえ瞬時に治癒する肉体が、それに包まれた瞬間一切の抵抗も無に帰し凍結。
 音を伝達する一切合財を巻き込んだ、静謐とともに結晶化していく。
 ――そうして、発動した氷結魔術。
 せいぜい一人を凍らせる程度の範囲を、ゼオの立つ場所一つ除いて岩山一つ氷晶に飲み込み尽くす大規模魔術へこじ開けた、魔力的な力押し。

 マナ解放。
 肉体を魔力に変換して術式を強制的に高次元へと引き上げる、強制強化魔術の一種がそれの正体だった。


「……死さえ許されなかった頑強さに免じて、しばしの眠りをくれてやる」

「何もしなければ一年程度は溶けない魔晶の牢獄だ。寝坊、永眠、好きな方を選べ」


 その絶大な効果をもたらす代償に、全身を朱に染めつつ膝をつく【エモノ】。
 煌めく透明なショーケースに呑まれた【バケモノ】に背を向けて、いつ終わるともしれぬ逃避行を再開した。
 
 分かっている。
 奴は、氷の中で抵抗と魔力の吸収を繰り返す数日の間に復活を遂げる。
 だがそれだけ稼いだ時間で、冒険者たちがこの怪物を操る者の真意に到達するはずだ。

 
「分の悪い……博打だ」


 だが、不思議と気分は悪くなかった。
 まあ、そういう日もある。
 小石の散弾に穿たれ、血を漏らす太ももを庇いながら、男は浮かべた笑みの意味さえ分からず、進み続けた。

2125うさぎ:2017/11/06(月) 03:22:53 ID:a0l8AeZg
tp://ssks.jp/url/?id=1451

2126とある世界の冒険者:2019/12/11(水) 21:36:43 ID:.Do.2/QI
<ジグザール王都のとあるゲート―”怪異”の発生から間もない頃―>

王都を未曽有の怪異が起こってから、少しばかり経ったある日に1人の少女がジグザールへとたどり着いた。
彼女の名前はモル・リステュリア。……とある王国の次期女王候補である。

此度は自身がより女王として、ふさわしい存在になるための修行の一環としてジグザールにやってきたのだが
そのジグザールは彼女が聞き及んでいたものから、あまりにもかけ離れた状況であった。
彼女の事前知識によれば、ジグザールといえば、巨大な王立図書館を中心として栄えた魔法都市だ。
古今東西の知識が集まる英知の都。優秀なる魔法の担い手の学び舎。そして、齎される英知は人の欲望を加速させ、大小限らず事件も多いと聞いている。

そんな王国を肌で感じることが出来れば、自身の目指す”優しくて強い女王”に一歩近づくと信じてモルはこの地へと降り立ったのだ。

だが――――。


「……これが”あの”ジグザール王国だと言うの?」

自身が目にする惨状に思わず、声を漏らす。
都市は荒れ果て、空は不気味な色に染まり、否――――、空にはそもそも人でないものが不気味にこちらを見下ろしている。
当然、外を歩く人間はほとんどいないばかりか、遠くの方でこの世のものとは思えない咆哮が聞こえてくる。

「けど、そんな短期間で国がここまでの状態になるなんて、ありえない。
……何か、うん。何かあったに違いない。」

そうつぶやくと彼女は踵を返す――――わけではなく足を進め始めた。
それは、ほんの知的好奇心だったのかもしれないし、”異変”の規模を見極められなかった未熟さ故かもしれない。
彼女はジグザールで起きている異変を直感的に感じ、また同時に「助けなければ」と放っておくことが出来なかったのだ。

かくしてモルは異界と化したジグザール王国へと足を踏み入れていく。
そんな王都で彼女が様々な事件に巻き込まれるのはまた別の話――――なのかもしれない。

【終】

2127とある世界の冒険者:2019/12/11(水) 22:05:39 ID:.Do.2/QI
<とあるアジト跡地―”怪異”発生から間もないころ―>

王都の郊外にあるとあるアジト。
かつては夜盗の一団の塒であり、夜な夜な”戦利品”による宴会が開かれていた。
しかし、そんな話ももはや、数十年前、その夜盗は捕らえられ、処刑がなされたという。
欲望の溜まり場であったアジトも今やただの忘れ去られた穴倉だ。

そんな穴倉のガラクタを蹴散らしながら不機嫌そうに歩く影が一つ。
明かりも何もないはずだが、彼の周りは鈍い赤色が照らしていた。

「あァん?クソ、どこもかしこもボロボロじゃねぇかァ……!」

悪態をつきながら、影が蠢く。
影はひょろひょろと幽鬼のように、アジトだった場所をさ迷い歩く。

彼の名はレホロン=ブラッパー。このアジトを塒にしていた夜盗の一員だった者だ。
無論、彼も処刑にかけられた一員であることは言うまでもない。
しかし、彼は生き返った。――――否、アンデッドと化したのである。

「おいおいおォい、俺様のオキニはどこ行ったんだよォ……?」

アジトにある埃の被った豪奢な鏡に映る姿は、正しくガイコツだ。
肉と呼べるものはほとんどなく、肋骨が異様に発達し、トラバサミのようになっている姿は正に異形だ。
王都に怪異がもたらした変化は空の色や、人々の獣化に留まらなかったのかもしれない。
彼は怪異発生から間もなくして、自身の墓から”這い出てきた”のである。

「おっ、へへへ、なんだ、あるじゃねぇか」

廃墟と化したアジトを蹴散らしながら、ようやくお目当てのものを見つけたようだ。
それは、自身がかつて身につけていた衣服だ。

皮の帽子に、ズボン、そして毛皮のマントである。
異形と化してしまった彼にはもはや必要のないものだが、気分の問題である。

「いよォッし、ようやくスイッチが入った気分だぜぇ……。
この俺様をこんな姿にしやがって、覚悟しやがれよ。」

次の野望にぎらぎらと目を輝かせる姿はその痩せこけた体には全く見合わないものだったとか。

【終】


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