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【場】『黄金原駅』 その3

1ようこそ、『黄金町』へ:2015/07/06(月) 19:20:24
北:メインストリート(商店街)
南:ネオンストリート(歓楽街)
西:黄金港


    郊外
                     ┏┛
                   ..┏┛
    ┌┐           ┏┛黄金川
  ┌┘ │     ┌――┐ 
  │  │ ┌――┘   │   
  └┐┌ .│      ┌┘ 
  ┌┘ ―┘      │
―┘          ┌┘   ◎ショッピングモール
―┐ H湖     ┌┘   ┌┐
  │      ┌┘   .┌ ..│ 
   ┐     │    ┌ ┌┘     住宅街
   │    │   ┌  │
    ┐   │  ┌  ┌..       黄金原駅
     │  └─┘┌―      ┏ ━■■━ ━ ━
  ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ┛
       │      └―┐黄金港  繁華街  
       └┐   ┌――┘
 ─────┘   └――――――――――――

     太 平 洋


――――――――――――――――――――――――――――――――――
前スレ
【場】『黄金原駅』 その2
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/netgame/9003/1397309596/

399関東 也哉子/ヤーコ『一般人』:2015/12/25(金) 00:34:21
>>398

        「う」

若い。
……自覚はある。甘ったれた考えだ。
世界はずっとそう言うものだし、長いものには巻かれるべきだ。
理性と感情がそう囁く。じゃあ、あたしを悩ませているのはなんだろう?

     「……盾になるか」「癒す人になるか……」

反芻するようにつぶやく。
盾になる。それはきっと素敵なことだ。傷つく人はきっと減る。
癒す人になる。それはきっと素敵なことだ。世界はちょっと優しくなる。
どちらもとっても素敵なことで……少しだけ、違和感がある。
なにか、なにかもうひと押し。妥協だけはしてはならない。
カウンセラー。その響きに、なにかもうひと押し、惜しいものを感じるのはなぜだろう?

      「……?」

        「『いっぱい』……って、なんですか、先生?」

ところで、気になったのはその言い回し。
『いっぱい』になる? 少し不思議な言い回しだ。

400加賀『プライベート・ライン』:2015/12/25(金) 00:54:39
>>399

「あっはは。」

       僕は笑う。
       笑い飛ばす。君の若さなんて直に消えるものだから。
       
「盾も癒しも両立できるけどねェ。」

「僕さァ、学生のころよくハンバーグ定食とトンカツ定食のどっちにするか迷ってたんだよね。」

「ゲン担ぎっていうかね。大事なときは好きなモノか縁起がいいモノか。」

「ま、大抵ミンチカツ定食食べたけどね。」

       あれって二つの料理混ぜたみたいな料理だよねェ。
       考えた人は尊敬するよ、一日だけね。

「『いっぱい』ってのは、『いっぱい』だよ。」

「お腹いっぱい、胸いっぱいね。」

       両手を広げてみせる。
       これが僕の両腕いっぱいね。
       いっぱいいっぱい。

「僕の先生が言ってたよ。『人間は容器だ。』ってね。」

「悩みがいっぱいになれば病むし、腹がいっぱいになれば食べなくていい。」

「『いっぱい』は終わりであり始まりなんだよ。」

「君はやりたいことをやって『いっぱい』にならないと満足できないと思うよ。」

       世の中にはそういう人間がいる。
       僕は彼らが得意じゃない。
       どいつもこいつもまっすぐで、真面目で……
       あぁ、そうか、あいつらも若いんだな。きっと。

401関東 也哉子/ヤーコ『一般人』:2015/12/25(金) 01:12:36
>>400

     「…………『人間は』……」

   「『容器』、ですか」

先生の、そのまた先生の言葉。
満たされれば終わる。あるいは、満たされることで始まる。
なら、あとは『何で満たすか』、だろうか。

      「…………………あっ」

――――――そうだ。
人が容器であるのなら―――――重要なのは、『何で満たすか』であるはずだ。
『スタンド使い』も人であるのなら。
ならばやはり、『何で満たすか』が問題になるはずで。

    「ああ……そっか」「そういうことなんだ……」

道が開けた、気がした。
暗闇の中を進んでいたのが、やっと道を見つけた気がした。
ペコリと礼をする。先生にはお礼を言わなくちゃいけない。

      「先生、ありがとうございます」

    「あたしの悩み……なんとなく、大丈夫になった気がします」

まだ、絶対にこれが正解だ! とは言えないけれど。
それでも、一歩前に進めた気がした。
だから、ニコリと笑ってお礼を言うのだ。

402加賀『プライベート・ライン』:2015/12/25(金) 01:33:02
>>401

「そう、容器ね。」

       お猪口の奴もいれば壷の奴もいるけど、おおよそそんな感じだ。
       満足できるか、納得できるか、それだけだ。

「あ、そう。よかった。」

       我ながら適当な見立てだったけど、よかったのかなァ。
       ま、人間所詮は一人。
       咳をしても一人。くしゃみをしても一人。死ぬときも一人。
       お悩み解決も一人。
       カウンセラーなんてそんなもんだ。

「迷ったならカウンセリングルームに来なよ。」

「僕がいれば相手してあげるよ。疲れない範囲でね。」

       暇つぶし、退屈しのぎ、金稼ぎ。
       マジになりすぎたらキリが無い。
       楽に楽に安きに安きに流され流されやるんだよ。
       給料泥棒だからね。

「お礼とかいいよ。これも暇つぶしなんだからさ。」

「足の調子どう?」

       そういえばこの子が足を滑らせたのが最初か。
       随分と話が転がった気もするねェ。

「あ、そうだ。クリスマスプレゼントでもあげようか。」

403関東 也哉子/ヤーコ『一般人』:2015/12/25(金) 01:41:58
>>402

     「はい、なにかあれば、またお願いします」

くすくすと笑いながら、そう返す。
何がおかしいわけでもない。でも、とっても機嫌がいいから。

   「ふふ。でもあたし、先生のおかげで助かっちゃいましたから。
    やっぱり『ありがとうございます』、なんです」

うん、お礼を言いたい気持ちに、嘘をつくことなんてないのだ。

        「あ、足ですか?」

言われて、足を軽く動かす。
まだ痛む……が、酷い痛みではない。

       「……とりあえず、大丈夫そうですね。
        歩く分には平気そうです。ご迷惑おかけしました」

そう言って、またぺこりと頭を下げる。

  「クリスマスプレゼント……ですか?
   そんな、悪いですよ。もうあたし、先生にはよくしていただいたのに」

404加賀『プライベート・ライン』:2015/12/25(金) 01:56:42
>>403

「……あっそ。君はしばらくカウンセリングルームに用なさそうだけどね。」

       目をそらす。
       なんだろう、この子は。
       ダメだ。どうりでカウンセリングルームに来ないわけだ。
       あそこはサボり場で保健室だ。
       健全で健常で普通なヤツは来ない。

「あ、そうそう。足は保健室ね。僕んとこ来ても治せないから。」

       僕は治さない。
       与えるだけ。
       言葉とかなにかを与えるだけ。
       傷を無に返さない。

「えェー。いらないのォ。僕、こんなサービス滅多にしないよォ?」

       嘘だけど。
       これぐらいいつでも出来る。
       リップサービスみたいなもんだ。
       ま、別になんでもいいけど。興味ない。

「ま、いいんだったらいいけどね。無理強いするつもり無いし。」

405関東 也哉子/ヤーコ『一般人』:2015/12/25(金) 02:06:07
>>404

   「そうですね。
    しばらくは、大丈夫そうです。
    湿布がもらえるなら行ったかもしれませんけど。ふふふ」

はにかんで答える。
道は、なんとなくだけど見つけた。後は手探り進むだけだ。
少なくとも、『カウンセリングルーム』に頼るようなことは、しばらくはなさそうだ。

     「え、ええーっ」

  「い、いらないってわけじゃないんですが、その」

   「そ、そう言われるとその……き、気になっちゃうじゃないですかぁ」

そりゃあ遠慮したこっちも悪いが、その、滅多にしないとか言われると、気になる!
し、むしろ断ったほうが悪い気がする。
もらっちまえよと『誰か』が囁く。……うん、今回は、『誰か』に従っていいと思った。

     「えと、じゃあ、その」

   「プレゼント……頂けますか?」

406加賀『プライベート・ライン』:2015/12/25(金) 02:16:55
>>405

「湿布ゥ?あ、あったかも。」

       腰痛用にね。
       湿布より軟膏の方がいいんだけど匂いがキツいんだよねェ。
       そう言って、僕は少し嫌な感じがした。
       こんな風な物言いしたら、来て欲しいって思われるかもしれない。
       ヤだよ。僕、子供に興味ないし。

「あっはは。もらうんだ。」

「じゃあもう一度聞くよ。『クリスマスプレゼント』はいるかい?」

       それがスイッチだ。
       許可が出ればすぐにでも。

407関東 也哉子/ヤーコ『一般人』:2015/12/25(金) 02:26:11
>>406

   「ふふ、なんでカウンセリングルームに湿布があるんですか?」

冗談かなにか、と受け取ったらしい。
口元に手を当ててくすくす笑う。
本当にあったとしても、単に話のタネとでも判断したか。

     「う」「は、はい……」

……がっついたようでちょっと恥ずかしい。
顔を赤くして、ちょっとだけ俯く。でも、もう言ってしまったし。
どうしてかもう一度尋ねてきたから、こちらももう一度答えなくちゃ。

   「えと」「はい」

     「『クリスマスプレゼント』をくださいな、先生」

408加賀『プライベート・ライン』:2015/12/25(金) 02:40:02
>>407

「おもちゃもある。」

       嘘じゃない。ギターとか置いてる。
       持ち込んだものだけどね。
       ま、冗談だと思ってるならそう思わせとこ。
       変な感じになんないし。僕が。

「あぁ、もちろん。」

       許可は得た。それに、いい眺めだ。
       うん。実に機嫌がよくなる。
       いっぱいにはならないけど。

「さ、口閉じて。目も閉じて、零れ落ちるからね。」

       なにもかもが。
       おとなしく従ってよ?
       従わなくてもいいけど、出来ればね。

「……僕の先生はアリストテレス先生が好きだった。」

「『欲望は満たされないことが自然であり、多くの者はそれを満たすためのみで生きる。』」

「アリステレスの言葉でそれが一番好きらしい。」

「さ、準備できたね。」

       もったいぶるように指で数字を表す。
       一、二、三、四、五。
       片手が開き、全ての指がまっすぐに伸びる。
       じゃんけんのパーで、数字の五。

       『プライベート・ライン』彼女の口内に、今年のクリスマスに食べるつもりだったショートケーキの一部分を与える。
       今日は気分がいい。イチゴも放りこんであげよう。
       スポンジと生クリームとイチゴの三位一体を口内に広げるといい。

「ちょっとした手品だよ。」

409関東 也哉子/ヤーコ『一般人』:2015/12/25(金) 02:58:52
>>408

       「?」

    「??」

目はともかく、口も閉じる?
零れ落ちる? なんのことだろう。
なんのことだかわからないまま、言われるがままに目と口を閉じる。

    (アリストテレス?)

      (……なーんで今アリストテレスの話……あっ、『欲しがるのは恥ずかしゅうにゃあ』っちゅうことかね?)

……気を使われた、のだろうか。
いずれにせよ、目を閉じているから数字は見えない。ただプレゼントを待つ。
そして――――――――甘い。


   「――――――!?」

     「ふぁっ、んぐっ」

思わず声が出そうになって、でも声を出すとケーキが口から出てしまうから、あわてて手で口を押える。
驚きで目を丸くしながら、もぐもぐと咀嚼して。

          ゴクン

……甘くて、おいしい、ケーキ。
―――――なぜ?

   「んふぁっ」

      「て、手品?」

  「いや、でも今」

        「なんで」

困惑する。
ありえない――――手品と言うより、まるで魔法。
そう、こんなこと、『超能力』か何かじゃなければ―――――

     「―――――あっ」

もう一度、慌てて口をつぐむ。
銃を見せびらかすことはしない。さっき、先生自身が言っていたことだ。

       「あっ、えと」

      「い、今のは……?」

410加賀『プライベート・ライン』:2015/12/25(金) 03:10:42
>>409

「あっはははははは!」

       僕はけらけらと笑う。
       空を打ち抜くみたいに上を向いて。
       あー楽しい。なんて面白いんだ。
       僕はこうでなくちゃ。

「今の?言ったでしょ?ちょっとした手品だよ。」

「あっはは。」

       若さもまっすぐさも斜に構えたモノには通用しない。
       すかして逸らしてどこかに流す。
       関東さんに興味もなにも沸かないけど、からかう気にはなったよ。

「銃は簡単に見せびらかさない。でも、あることは分からせないといけない。」

「微妙なトコだよ。ホントにねェ。」

       持ってなければ狙われる、でも一度出せば相手と同じになるかもしれない。
       危険って言うのはそういう事に対しても言う。

411関東 也哉子/ヤーコ『一般人』:2015/12/25(金) 03:19:47
>>410

   「て、手品、ですか」

まだ、口の中が甘い。
目を丸くしたまま、口元に手を当てて、不思議な甘さの余韻を確かめる。
いたずらされた、というのはわかる。
多分、いたずら好きなんだ、この人は。

     「………………もう!」

   「先生は、ちょっといじわるです!」

頬を膨らませて、ぷりぷりと怒ったポーズ。
あくまでポーズ。本気で怒っているわけでもない。
それに――――『銃は簡単に見せびらかさない』『あることは分からせないといけない』。
……この人は、『スタンド使い』なんだ。
『銃』を持っている人。それで、こんなしょうもないいたずらを仕掛ける人。
あるいは、世のスタンドがこんなことにばかり使われれば……それはそれで、幸せな事なのだろうと思う。

412加賀『プライベート・ライン』:2015/12/25(金) 03:29:10
>>411

「そう手品だよ。」

「失礼だなァ。僕は平凡で平均な一般市民なんだよォ?」

       君とは違う意味でね。
       非戦闘員ではあるのさ。

「じゃあ、僕はそろそろ帰るよ。」

       待ってる人は居ないけど。
       欠けたケーキを食べてしまわないと。
       どうせどっかで買えばいい。
       驚いた関東さんの顔を思い出せば、美味しくなる。
       なにせ、いい眺めだったから。

「あ、関東さん。」

「知らない人から物貰ったり、食事に誘われたり、なにかモノを尋ねられたりしたら注意しなよ?」

「世の中君が思うほど優しくないかもしれないんだから。」

「君はつけ込まれるかもしれないよ?」

       そしてそれが相手を付け上がらせる。
       実に面白い。
       でも、終わればそれっきり。
       どうなるか、分かったモンじゃない。

「じゃあね。最近みんな浮き足立ってるから、それに乗せられないように。」

「またね。困ったらカウンセリングルームね。」

       君らは子供だ。法律が、社会が、守ってくれる。
       社会の歯車であるところの僕も君を守ってあげる。
       そうして僕はその場を立ち去った。
       え?関東さんがちゃんと帰れたかって?知らないよ。興味も無い。
       本人に聞きなよ。ほら。

413関東 也哉子/ヤーコ『一般人』:2015/12/25(金) 03:42:46
>>412

   「あっ、はい」「えと、今日はありがとうございました」

もう一度、ぺこりとお辞儀。
文字通り『一杯食わされた』ことなんて忘れてしまったように。
忘れているわけではないのだけれど、忘れてしまったように。
……そもそも、不機嫌はポーズだ。
特に何か不利益を被ったわけでもないのだ。ちょっと、からかわれただけで。

      「せ、先生がそれを言うんですか……?」

……でも、たった今人のことをからかった人に『知らない人には気をつけて』なんて言われても。

    「ま、まぁ、でも、そうですね。
     肝に銘じておきます」

ともあれ、しかし、忠告自体は真っ当なわけだし。
……うん、真っ当な忠告を、真っ当じゃない人がしているから違和感があるだけで。
忠告自体は真っ当なんだから、しっかり受け取るとして。

      「はい」

   「先生も、お気をつけて。
    よいクリスマスと、よいお年を」

なんだかんだ言っても、やっぱりこの人は先生なんだなぁ、なんて思いつつ。
手を振って見送って……先生が見えなくなったところで、ほっと一息。

        「…………うん」

     「あたしも、がんばらなきゃ」

道は、見つかったから。
決意を胸に秘めながら、也哉子も(少し歩きづらそうにしながらも)帰路につく。
もちろん、ちゃんと家には帰れました。
ふふ、誰かさんのおかげでしょうか、なんてね。

414球良 楽人『ストーン・サワー』:2016/01/05(火) 23:25:33
「はは…………ははは…………」
「コイツは凄いぞ……『可能性』をビンビンに感じるじゃあないか……!」

駅前、『午後1時』。
真っ昼間から酔っ払いか、はたまたタダの『キ印』か。

奇声を上げる奴がいる。
手にはアルミ缶が二本。

415灰羽『アクエリアス』:2016/01/06(水) 22:24:01
>>414
「ん? なんだあれェ……」


彼女は通りすがりの中学生である。
隣に守護霊(スタンド)がいることを除けば、飾り気の無い少女だ。


『……ぐるあーん』

「え? もしかして気になるのかぁ?
 やめとけよォ〜。あれだよ、ほら、あの……レンヒメさんも言ってたじゃん。
 コワチカとかいうやつ」


一般人から見たら、独り言にしか見えないため、
そう言う少女も十分に変人に思われるだろうが。

大柄な女性型のスタンドは道端のニオイを嗅ぐ犬みたいに、何が起こるのか気にしているようだ。

416球良 楽人『ストーン・サワー』:2016/01/06(水) 22:52:51
>>415
「〜♪」

『人の目なんか見えやしねー』って様子の痩せこけた青年がそこにいた。
げっそりした頬と、べったり目の下に貼りついた『クマ』が、
『見ちゃいけない』雰囲気を醸し出している。

「よォしよし…………だいたいこのサイズなら
『5〜6秒』もあれば十分だな」

青年が手にしている『コーラ』と『コーヒー』を
ぽい、と空中に投げ上げる。

次の瞬間――

『パ   ン』

2つの『アルミ缶』が、空中で『破裂』した。

「良いぞ!良いぞ!臭ェ花火だ!ははははははッ!」

ビチャ ビチャ

全身にコーヒーとコーラを浴びながら、青年は声を上げて笑う。
皮膚をあちこち『缶の破片』で切ったようだが、
これっぽっちも気にしちゃいない。

417灰羽『アクエリアス』:2016/01/06(水) 23:09:00
>>416
「んもォォ、行くぞ?」


少女は立ち止まった犬のリードを引っ張るがごとく、
スタンドを引っ張って進もうとするが


「えっ何? うっわぁ!?」

『ウヒャー』


精密性皆無の『破裂』は、当然周囲にも被害をもたらす。
遠巻きにしていた周囲の人々はともかく、スタンドが興味津々で近づいていた少女は
射程範囲に入ってしまっていた。


「ムッ」


まあ、距離が多少離れていたことと、スタンドの防御により、
缶の破片で傷つくことはなかったが、コーラが少しかかってしまった。
少女はムッとした顔で(口でもムッと言いながら)騒いでいる男を睨む。

418球良 楽人『ストーン・サワー』:2016/01/06(水) 23:25:07
>>417
「アァ―――――………………」

青年は『恍惚』とした表情で固まっていた。
虚ろな瞳で中空を見据え、そのまま『10秒』。

     ギョロ ッ

ふいに、周囲を見回し――遠巻きの『群衆』、
そして『灰羽』に目を止める。

「うお、ッ」

その存在に初めて気付いたような反応。
少し『怯えた』ような目を見せ、

「…………ンだよ」
「見せモンじゃねーぞォ、おい」

一転、低い声で凄んできた。
ただ、少しばかり『震え声』だが。

419灰羽『アクエリアス』:2016/01/06(水) 23:40:30
>>418
「……うぐぅ」


少女は怒り覚めやらぬ様子で、しかし同時に脅しが効いたのか
不満そうにしつつも言い返すことはせず、目を逸らした。
通常であれば弱みと取れる青年の怯えたような瞳も、震え声も、
異様な形相と態度を考えれば、触れてはいけないものという印象を深めただけである。


『ンガァァア?』

『ダラァ!?』

『ドルルルァァ!?』


だが一方、そういう雰囲気だとか空気だとか読めないスタンドが威嚇し返してくる。
女性型スタンドはでかく、ムキムキで、その胸は豊満であった。

420球良 楽人『ストーン・サワー』:2016/01/06(水) 23:56:41
>>419
「……へッ、へへへ……いや、怖がらなくても
いいんだぜ。うん、分かればいいんだ。分かれば」

『灰羽』が竦んだ途端、尊大に出る青年。
だいぶ、(人間的に)『小さい』男のようだが。

「……」

と、ようやく灰羽の傍らのスタンドを認識する。

「え」
「うわッ」
「うわあああぁぁあッ!?」

ドスン!

大げさなくらいの『驚愕』!
後ろに倒れて腰から落ち、そのまま這いずって
スタンドから距離を取ろうとする。

「なッ、なんだそいつ! なんだよ、聞いてねえぞ!」

421灰羽『アクエリアス』:2016/01/07(木) 00:07:25
>>420
『グルルアァン?』

「……」

『フンス』

「……」


少女は急に取り乱した青年と、自らの傍らのスタンドを交互に見た。
スタンドはどことなくドヤッとした顔を返す。


「あれあれェ〜? どうしたんですかぁ?」


さきほどまでの不気味さの助長とは違い、わかりやすくビビッている青年に
余裕を持ったのか、少女は近寄ってきた。
女性型スタンドは威嚇をやめて、ゴリラのように穏やかな雰囲気を発している。

422球良 楽人『ストーン・サワー』:2016/01/07(木) 00:23:47
>>421
『ドヤ顔』で歩み寄る『灰羽』。
こいつら――良い勝負だ。

「ハァ、ハァ、ハァ……クソッ、急に強気に出やがって――!」

先ほどまでの自分を棚に上げつつ、灰羽に言う。
冷や汗がダラダラと流れているが、コーラと混じって
よく分からないことになっている。
ついでに体も冷えてきた。

「どうした、って……そいつだよ、そいつ!」

『スタンド』を指差して、叫ぶ。
もう余裕も何もあったものではない。

「一体全体『何者』なんだ!?
『説明』を……説明を、してくれ、頼む」

423灰羽『アクエリアス』:2016/01/07(木) 00:41:24
>>422
待て! ドヤ顔をしたのは『アクエリアス』だ。
灰羽は……口の端を歪めた妙な表情をしているぞ。笑顔のつもりかもしれない。


「ちょ、ちょっとぉぉ、あんまり騒がないでくださいよ。
 変な目で見られるじゃないですか」


異常な行動を取ったり騒ぐ男に近寄っている時点で、
変な目で見られる対象に入ってしまっているため、手遅れである。


「え〜……
 そういうのは聞くほうから話すのがマナーってよく言うでしょう。
 さっきの缶を爆発させたのがあなたのですかぁ?
 ヴィジョンは見えませんでしあけど」

『アクエリアスー!!』

「ちょ」


少女は野良犬とコミュニケーションをとるように、
警戒した様子で言葉をかけてくる。
隣のスタンドは何故かスポーツ飲料の名前を叫んでいる。

424球良 楽人『ストーン・サワー』:2016/01/07(木) 01:07:54
>>423
>待て! ドヤ顔をしたのは『アクエリアス』だ。

!? ……その通りだった。これは『球良』の
『動揺』を表している、そう考えていただきたいッ
(申し訳ありません)

「変な目……?
ま、良くあることだ。ちょっと怒鳴って、
追っ払えばいいだろ」
「もしかしたら『ファン』かも――いや、
ぼくに『理解者』はいないし、いらないな」

どうもこの男、『奇異の目』は慣れっこらしい。
いつも、さっきの調子で凄んで見せるのだろうか……

「缶?爆発? ああ、あれはぼくがやったけど。
なんだか『目が覚めたら』、『出来た』。
変な『女』の夢を見たよーな気もするけどな」
「それで『ストーン・サワー』と名づけた。
ぼくの『感覚』が、そう言っていた――気がする」

中空を見上げながら、喋る。
目つきが、また『ヤバい人』のそれっぽくなった。

>『アクエリアスー!!』
「喋ったぞ、こいつ……!?
おい、『アクエリアス』ってのが、こいつの名前なんだな?」

425灰羽『アクエリアス』:2016/01/07(木) 01:20:55
>>424

「ふーん。なりたてなんですかぁ。
 夢……?」


一発で名前と分かってもらえた楽人の勘の良さに『アクエリアス』もニッコリだ。
トトロとメイちゃんみたいなやり取りである。


「うーん、変なことするのは勝手ですけど、他人の迷惑にならないようにお願いしますよ。
 せめて爆発させるならベトベトするコーラとか、シミになるコーヒーじゃなくて、
 空き缶とかミネラルウォーターにしといたほうがいいですよォ」


楽人が(比較的)普通に話しているからか、周囲に人が戻りつつある。
少女はそれが逆に気になったのか、そわそわした。


「目覚めたてっていうなら許してあげます。特別にですよ?
 私も暇ではないですしぃ」

426球良 楽人『ストーン・サワー』:2016/01/07(木) 01:33:54
>>425
「なりたて……よくわからんがお前はベテランなのか?
……あ、ベテランなんですかね?『アクエリアス』さん」

なぜか『アクエリアス』にだけ腰が低い。
多分ちょっと『ビビってる』んだろう。『小さい』。

「いやいやいやいや、透明なモンぶちまけたって面白くも何とも無いだろ。
もうちょっと考えてものを言いたまえ、うん」

『常識』が欠けてそーな奴とは思えない口振りで、
『灰羽』に言う。卑屈になってみたり尊大に振る舞ったりと、随分と忙しない。

「お前に『許される』いわれは――ッくショいッッ」

      ブハックショ〜イ

灰羽の言葉に反論しようとして、盛大に『クシャミ』をする。

「……クソ、こりゃ冷えたか……?
まあいい、ぼくの『ストーン・サワー』。覚えとけよ、
『アクエリアスさん』、それとそこの……あー、お前」
「はははッ……『あばよ』ッ!」

そう言って、人並みの間を縫って去っていく。
後日、しっかり風邪を引いたのは言うまでもないのであった。

427灰羽『アクエリアス』:2016/01/07(木) 01:50:06
>>426
「えっ、いや、まあ……多少はねぇ?」


スタンド使い暦は一年ちょっと……ベテランかと言われると、微妙なところだ。
……しかしスタンド使いになったのが中二で、今も中二……
そこに触れることは死を意味する。


「色つきの液体だと面白いのかぁ?
 そういやファンとか言ったりしてたな……アーティストかなんかか?
 現代アーティストって理解できない」

『バイバイ』


名乗らなかった少女が現代アートに思考をめぐらせている間に、
『アクエリアス』はぶんぶん手を振って名も知らぬ青年を見送った。
結局『スタンド』の名前だけ交換した彼らだった。


「……なんかいつも思うけど、お前、私よりも扱いがよくないかぁ?」

『……』

「くそっぉ、コーラがベタつく……せめてノーカロリーでやれよ」


そして少女はむかつきが再燃したのか、不機嫌そうに帰っていった。

428人吉 佐和子『クラウド・ボーイ』:2016/01/07(木) 22:33:59
「んんー…………っ」
「ふう……眠いわぁ」

『AM7:00』。
駅構内の『待合室』で、大きく伸びをする。
正月休みも終わり、仕事が再開してから2日。

「しばらく休んでたから…………朝起きるのが辛いわねぇ」

彼女の場合は普段からそうなのだが、ともかく。

「…………暇ねぇ……」

『電車待ち』である。

429石動 遥道『アルター・ブリッジ』:2016/01/07(木) 23:37:45
>>428
やがて、同じく電車待ちであろうサラリーマン風の男が一人、待合室に入ってくる。
長らくアイロン掛けをしていないらしき、もっさりとした背広を身に纏い
朝から仕事の疲れを滲ませながら、眠そうな表情を浮かべている。
鞄などは持ち歩いておらず、手ぶらだ。

そしてあなたのほど近くで立ち止まる。
椅子には座らず立ったまま、ポケットに手を突っ込むと一本の煙草を取り出し、口に咥えた。


……待合室に限らず、駅構内は『全面禁煙』である。

430人吉 佐和子『クラウド・ボーイ』:2016/01/07(木) 23:45:35
>>429
「ん〜…………」  コックリ コックリ
              ムクッ
「あらっ、いけないいけない」

ヒマさに負けて、意識を手放しかけつつ、何とか寝ないように
頑張っている。ここで倒れたら『遅刻』待ったなしだ。

「…………あっ」

近くに人の気配を感じ、目をやって、『煙草』に気付く。
『アロマ』は好きだが、煙草の匂いはあまり得意ではないし、
一応『禁煙』というやつだ。

「あの……すみません、ええと、そのぉ」

遠慮がちに男に声を掛け、自分の口元を指差す。
婉曲なやり方だが、初対面の男性に、直接面と向かって
抗議するほど『勇気』はなかった。

431石動 遥道『アルター・ブリッジ』:2016/01/07(木) 23:58:18
>>430
「はい?」

あなたの抗議に気付く。

「ああー、すいません、紛らわしかったですね」

バツが悪そうに頭を掻く。
謝罪しながらも、咥えた煙草を仕舞ったりはしない……
だが、火をつけようともしない。

「良かったら一本どうですか。ウチの人気商品なんです」

そういって煙草を取り出したポケットから箱を取り出す。
煙草の箱ではない。大きさ、形ともよく似ているが、派手な赤い色のパッケージには
可愛らしい猫のキャラクターや星などが描かれ、『シガレットチョコ』と書かれていた。
箱から一本取り出し、あなたに差し出す……。

432人吉 佐和子『クラウド・ボーイ』:2016/01/08(金) 00:04:38
>>431
「あら…………?」

『紛らわしい』ってどういうことかしら、というような表情を
しているうちに、『箱』を差し出された。
のんびりしたしぐさで、しばらく見入る。

「『シガレット』……『チョコ』、あらっ、お菓子だったのねぇ。
ええと、ごめんなさい、早とちりしちゃって」

ペコ

小さく頭を下げて、謝る。
仕事でも謝る事多いわよねぇ(トロいから)、とか考えつつ。

「えっ、いいんですかぁ」
「それじゃあ、いただきます。ありがとうございます〜」

差し出された『シガレット』を受け取り、
口にくわえてみる。味はどんなものだろう?

433石動 遥道『アルター・ブリッジ』:2016/01/08(金) 00:19:38
>>432
「いえいえ、こちらこそすいません。へへ……
今時『シガレットチョコ』なんて珍しいでしょう。
子供に煙草を吸う真似なんてさせたくない親御さんが多いですからね」

シガレットチョコを手渡す。あなたは、それを口にする。
シガレットチョコは、煙草のように細い筒状の紙の中に、何の変哲もないチョコレートが入っている。
ただそれだけの菓子だ。
紙が邪魔で食べにくく、『煙草を吸う真似』をすることに興味がなければ、
紙をむいてしまって『ただの細長いチョコレート』として食べたくなる。
チョコレートの味も、普通だった。

「ウチの会社は、こういう時間に取り残されたような商品ばっかり売ってましてねえ。
だから経営も火の車で……ああ、すいません、いま会ったばっかりの人にする話じゃあないですね」

未来への不安とも、過去への郷愁とも取れる感情を顔に浮かべ、笑う。

434人吉 佐和子『クラウド・ボーイ』:2016/01/08(金) 00:37:09
>>433
「そうですねぇ、わたし、初めて見たかも……」

紙をくわえて、煙草を吸う仕草を真似てみる。
……そのまま、チョコが溶け出すまでぼーっとしていた。

「……これ、なんか落ち着きます……
このまま寝ちゃいそう、うふふ」
「いいお菓子だと思いますけど……経営が苦しいのは、辛いですよねぇ。
わたしは『寝具メーカー』に勤めてるんですけど、最近『若い人』が少ないとかで、
『一人暮らし』を始めるひとが少ないんですよねぇ」

シガレットをくわえたまま、話し出した。
声にあわせて、包み紙がゆらゆら揺れる。

「そうすると『ベッド』なんかは、あんまり売れなくって。
今年の『春』はどうなるのかなぁ……ふわぁ」
「考えると、眠くなっちゃいます」

435石動 遥道『アルター・ブリッジ』:2016/01/08(金) 00:57:40
>>434
「あっはっは、お姉さん面白い人だねえ。
咥えたまま寝ると、たぶん体温で解けて、目が覚めたときにはすごい事になってそうだ」

今度は普通に笑う。
心の距離が縮まったのか、敬語ではなくなった。

「あー、なるほどねえ……寝具業界も大変なんだ。
絶対数が減ってるのもあるんだろうけど……
据え膳上げ膳の親元で暮らして、近くの会社に入って、
大博打に出ることも無理をすることもなく『人生というレール』の上を『通り過ぎていく』……
……こりゃ俺のことか」

そう言いながら線路を見つめる。


「あー、なんか会社行きたくねえや。
いっそこのまま電車が停まっちまえば、今日だけでも、どこか別のところへ出かけられるかね」


ユラァ……


あなたは、『陽炎』のようなものが私の身体に重なって見える。
完全に重複しているためはっきりと区別しづらいが、それは『スタンド』だった。

436人吉 佐和子『クラウド・ボーイ』:2016/01/08(金) 05:35:17
>>435
「そうなんですかぁ……服が汚れちゃうかな」

寝ないようにしないと、と呟いた。

「『レールの上』を……ですか?」

『石動』の言葉に釣られて、線路を見る。
その述懐までは理解出来なかったのか、少し不思議そうな顔をしていたが、

>ユラァ……

「えっ、えぇ……っ?」

突如発現した『陽炎』に驚きの声を上げた。
シガレットの包み紙が、ぽとりと落ちる。

「わたしも時々そんな風に思います…………でも、あの」
「……何をするつもりなんですかぁ」

石動を見上げ、恐る恐る声をかける。

437石動 遥道『アルター・ブリッジ』:2016/01/08(金) 20:30:52
>>436
「『脱線事故に巻き込まれた』って事にすりゃあ、会社に言い訳も立つか……」

などと半ば独り言のように言いながら、先程までとはまるで違う冷徹な眼で線路を見ていたが……


「あーやめやめ。
休みたいなら仮病でも無断欠勤でも一人で勝手にやりゃあいいんだし、
人様を事故に巻き込んで迷惑かけることじゃねーや。
お姉さんだってせっかく気合入れて駅まで来たんだ、帰りたいとは限りませんよねえ……どうしました?」

思いついた凶悪な『悪戯』を取り下げ、スタンドは引っ込む。そしてあなたに向き直る。
考え事に夢中であなたの様子にまで注意を払っていなかったため、その時に気がついた。

「いえね、ちょっとした『妄想』をしただけですよ。いやお恥ずかしい。
でも、そんなに驚くほどヤバイ顔してました?…………それとも、
なにか、見えました?」


再び心の距離が開いたのか、丁寧口調に戻っている。

438人吉 佐和子『クラウド・ボーイ』:2016/01/08(金) 20:59:13
>>437
「…………………………………………」

『怯え』と『驚き』が入り混じったような表情で、『石動』を見た。

「いいえ、何も…………ううん、ごめんなさい。見えました」
「ぼやっとした……『影』のような、ロウソクの『灯り』のような」

誤魔化そうとして、やめる。『嘘』をつき通せる自信はなかった。

「えっと……その。何か『しよう』としても、
それを『できる』としても、『実行』しなければ……
思うのは、自由だと思います」
「わたしも、小うるさい『課長』がどこかに
『転属』にならないかなぁ、って思うこともありますから……」

ぽつりぽつりと、思い浮かんだことを喋っていく。
言葉が途切れるのが怖いからだ。

439石動 遥道『アルター・ブリッジ』:2016/01/08(金) 22:11:24
>>438
「そう、ですか……『惹かれあう』って話、本当だったんだなァ」

まだ『スタンド』に目覚めて数日。
しかし『相手にも見える』ということの意味は、判っている(はずだ)。

「『夢』を見たんですよ。その後だったなァ、『超能力』に目覚めたのは。
それで思ったんです。この力があれば、今までとはまったく違う人生を生きることもできる、ってね。
潰れる寸前の会社なんか行かなくたっていい。『持たざる者』から欲望のままに奪って生きる事だってできる。
でも、同時に思ったんですよ、本当にそれでいいのか、って。
それまでの人生をすべて投げ捨てて『自由』を手にしたとして、それは本当に俺の欲しているもんだろうか。
考えてもわからないんで、とりあえずこのまま……会社を辞めたりしないで過ごすことにしたんです。
『レール』か、『自由』か。
何らかの『分岐点』までは、レールの上をもう少し進んでみよう、って」

遠くで踏み切りの鳴る音がする。二人が乗るはずの電車が近づいている証拠だった。
そろそろ時間だ。

440人吉 佐和子『クラウド・ボーイ』:2016/01/08(金) 22:34:56
>>439
「『スタンド使い』は『惹かれあう』……」
「そうかも、知れませんね」

自分が、これまでに会った人々を思い出す。

「自分の人生を変えられるような『力』……
でも、あなたはそれに溺れないでいるんですね。
凄いことだと、思います。うん」

たとえそれが『判断の保留』に過ぎないのだとしても、
そこで一旦『踏みとどまる』ことが出来るのは、やはり
良いことなのだろう。ふと、そう思った。

「『分岐点』まで――えっと、上手く言えないですけど……
頑張ってください、とっても、大切な判断だと思いますから」
「……ふわ、ぁ。
ごめんなさい、ちょっと安心したらぁ……急に眠く……」

たどたどしく、思いつくままに言葉を紡いだあと、
緊張の糸が切れたように欠伸をする。

パァアーーッ

列車が、ホームに入ってくる。
気だるそうに立ち上がり、そちらに目をやった。

「……そういえば、これからお仕事だったかしらぁ……
行きましょうか、……ええと、お名前、伺っても?」

441石動 遥道『アルター・ブリッジ』:2016/01/08(金) 22:44:53
>>440
「あー……うん。
自分じゃ優柔不断なばっかりだと思ってたけど、アンタ、いい人だな」


ガタンゴトン  ガタンゴトン  プシューーーーッ


電車が到着し、ホームに停車した。

「俺は石動 遥道(イスルギ ハルミチ)。スタンドの名は『アルター・ブリッジ』」

ほぼ同時に名乗る。一拍をおいて電車の扉が開く。

442人吉 佐和子『クラウド・ボーイ』:2016/01/08(金) 23:00:29
>>441
「石動さん、ですね。よろしくおねがいします……
あっ、わたしは人吉 佐和子(ヒトヨシ サワコ)と申します」

『メヘェェェ』
鞄から、『枕みたいな羊』の『スタンド』が顔を出した。

「この子は『クラウド・ボーイ』」
「それじゃあ、そうですね……うふふ、
これも何かの縁ですし、降りるまではご一緒しましょうか?」

そう言って微笑みかけ、列車に乗り込む。

『〜♪』
発射のジングルがなる。ゆっくりと、汽車が駅を離れていく。
……道中、人吉が何度と無く眠りに落ちかけたのは、また別の話だ。

443石動 遥道『アルター・ブリッジ』:2016/01/08(金) 23:16:11
>>442
「人吉さんですか、よろしく。
『羊』……か。なるほど、これは奇妙な縁かもしれませんね。
夜の夢でスタンドに目覚めた私には……」

多眠症の気がある女性と、眠りに関係していそうな『羊』のスタンド。
『ファム・ファタール』との関係は……偶然だが、『出来過ぎ』だと思った。

「はい、まあ、どっちかの降りるところまで」

プシューン

ガタンゴトン……ガタンゴトン……

二人は電車に乗り込み、扉は閉まり、走り出した。
人吉は席に座り、俺はその前で立っている。
その後は話らしい話もなく……どちらか先に降りる方の駅で、別れた。

444青田『トライブ・コールド・クエスト』:2016/04/03(日) 23:18:11
駅前、監視カメラの真正面でベンチに寝ころび、
顔に帽子を被せている。眠っているようだ。

445青田『トライブ・コールド・クエスト』:2016/04/04(月) 00:06:45
>>444
ふらりと立ち上がると、そのまま歩き去った。

446青田『トライブ・コールド・クエスト』:2016/09/28(水) 22:58:54
駅から出入りする人間から見える位置のベンチでスマートフォンを弄っている。

447青田『トライブ・コールド・クエスト』:2016/09/29(木) 09:08:23
>>446
男は居なくなっていた。

448坂下 佳侑希『レイルウェイ・チルドレン』:2018/12/29(土) 21:04:40
 
 
タタン
   タタン


            タタン
              タタン
 
 
この時期の電車は混み具合が本当に読めなくってうんざりするんだよ。
変な時間の上りが妙に混んでたり、朝イチの下りに人が溢れてたり、
私がどうにかこうにか意を決して乗り込んだずっとずっと遠くまで行く電車が、
ずっとずっと遠くまで行きたい人でそれなりに繁盛しちゃってたり。

すっごく遠くまで行こうっていうのに、立ちっぱなしってのは流石にしんどいんだよね。

 
    タタン
       タタン


          タタン
             タタン
 
 
だから私は、惜しげもなくズルを、イカサマをインチキをしてしまうんだ。

『誰がいつどこで降りるか』が『分かって』、そのタイミングを好きにいじれる私の『裏技』。
使いすぎると自分がどんどん弱っていって甘えていってつまらなくなっていくような気がするけれど、
だけどだからって言って、この街を出るのってのに最後だからってのに使わないってのは、
それはそれで違うじゃん?


           タタン
             タタン
                     タタン
                        タタン


「『レイルウェイ・チルドレン』って、いうんだよ」
 

誰に聞かせるともなく呟いて、私は座席を確保する。
そのくらいは、私の『手のひらサイズの未来予知』があれば、まるっきり楽勝って感じなんだ。 

思えば、色々なことがあって、その色々が大体全部いいことで、
思い返してみれば、私の人生って奴はどうやらうまいこと行ってるみたいで。

だから、

 
   タタン
      タタン
                タタン
                   タタン
 
 
だからやっぱり私は、行かなきゃいけないんじゃないかって思うんだ。
もっと色々なことがあって、もっといいことがあって、もっとうまく、行ったらいいと思うから。
 
 
「たくさん考えると、疲れちゃうよねえ」
 
 
この電車は座席の下からも暖房が効いていて、
ひとたび座ったらたちまち私の身体は暖められて、どうにも抗いがたい眠気に襲われるんだ。
疲れていて、暖かくなっって、眠たくなって。

だから今から私が眠ってしまうのも、きっと無理のないことだと思う。
 
 
次に目を覚ましたら、きっとずっと遠いところに辿り着いているんだろうけど。
それでも、それって別にさみしいことじゃないって思うから。

だから私は、薄く笑って瞼を閉じる。
楽しいこととたくさん遭って、楽しいことがたくさん待ってて。
まったく、ひょっとして私の人生、最高なんじゃないか。

 タタン
   タタン
            タタン
                タタン
 
 
両耳を塞ぐイヤホンからは、昔のヒット曲が絶え間なく流れている。
居場所の要らない女の子が人の心を渡っていくような、そんな歌。

車輪のリズムと慣れたメロディに包まれて、
どうしようもなく本当にまるっきりおめでたくて幸せな私は、小さく一つ呟いて、意識を手放してみるんだよ。
 
 
「ぐんない」


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