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【ミ】『ヨハネスブルグの明星』 その1

956『ヴァージンロード・クルセイダーズ』:2016/07/13(水) 00:00:52
>>952(エイノー)

(訂正、了解)

脛を刺す痛みに対処するは、スタンドだ。

   ビ ビィィ────ッ!

スラックスの裾を膝から破らせると、
予想外の出血が、靴下を赤く染めている。
牛乳パックに穴を開けたように、どくどくと流れるそれは、
決して激しくはないが、確実にエイノーの血を奪っていた。
だが、エイノーの触覚が伝えるのは、それだけではない。
小さな痛みの元は、確実に生物的に動いている・・・・!
だが、血の色に紛れて、確認できない。

とは言え、傷はまだ小さく、毒の痛みはない。
今はまだ、無理に足を落とす必要はないと見た。

エイノーは床に伏せ、
菊川と、そして仲間にも語り掛ける。

(──天井に上がれる通路はないけど、
 鐘楼室の階段から、鐘楼塔を登れるよ。
 鐘楼室は真ん中の部屋。
 チャペル奥にある左右の扉、どっちからでもいける)

(──うん、ルンクスの退路を断つって意味でも、
 今のうちに動くべきかも。
 外にいる『ラッパ』は、ぼくにはどうにもできないし、
 このまま放置すると、不味い予感しかしないよね)

(──じゃあ、ぼくからもお願い。
 外の敵を倒したら、戻る前に鐘楼を塞いでほしい。
 方法は任せるけど、
 ルンクスが簡単に出られないくらいにね)

浜岡:
「悪いがあたしにゃ、ウィルの護衛の任務がある。
 それにあんたなら何とかなるさ、エイノー。
 あんたのスタンドにゃ、無限の可能性があるよ」

「老婆心ながらアドバイスするなら、
 敵の攻撃の性質を把握してから、対処するんだ。
 『研究』は得意だろ?
 『ファクト』を前提にしなくちゃ、正しい結論は出ない」

「──がんばっておくれよ。
 中でがんばる、あたしらの為にもさ」

>>953(高遠)

(──じゃ、サイレンみたいに鳴らそうかな)

この状況においても、菊川ののんびりした口調は変わらない。

ウィルと同じく、
高遠もまた、ルンクスの言葉に含まれる意味を読み取った。
加えて、両者の体は、いまだ汗で濡れ光っている。
ルンクスのそれは次第に引いているが、女性はまだ息も荒い。
彼女自身の汗に、『それ以外のもの』が混じっていれば、
それだけで、限りなく危険な存在となり得る──

油断なくルンクスを見据える高遠。
その視界の中で、井上は右後方の椅子列に身を潜め、
エイノーは菊川と相談を始めた。

それらを静かに見下ろすルンクス。
黒人に動きはなかったが、傍の女にはあった──
立ち上がると、黒く太い首に手を回し、濃厚なキス。

そして、こちらを振り返った──
その耳元で、ルンクスが何事か、囁く。


      ゴ     ゴ
                        ゴ     ゴ

上半身を肌けさせたまま、シンガポールの女性が、
火のようなまなざしをこちらに向けた、その時。


                    キィ イ!

扉を軋ませ、左手の扉から、『ナツメグ』が巨体を現した。
手で扉を開けた様子はない。まるで『自動扉』のような動きだ。

「敵に囲まれながら女侍らせてるたぁ、
 なかなか気合いの入った『リア充』だなぁ、ええおい。
 これだけ殺し甲斐のある相手は、久しぶりだぜ」

圧倒的な肥満体・・・・ではない。
質量は変わらないが、肉の形が明らかに異なる。
皮膚を押し上げるような筋肉の質感。バルク。
まるで『鉄骨』でも入れたかのような、変貌ぶりだ。

           ゴキ バキ コキキン

「細工は流々。『パーティー』にも間に合った。
 後は、そこで座って馬鹿を捻れば、任務完了ってわけだ」

                  ズ ギュン!

首を鳴らした『ナツメグ』の前に、
その巨体に劣らぬ、大柄な人型スタンドが発現した。


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