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【ミ】『ヨハネスブルグの明星』 その1

552『小角 宝梦は火種となる』:2015/11/03(火) 02:05:42
>>546(エイノー)
自身の状況をチェックする。

声は・・・・出せる。喉に傷はない。
身を起こす・・・・体中の骨が悲鳴を上げるが、やれそうだ。
骨も、主要な骨格はどこも骨折には至っていない──

          ズキィ ン!

いや、右肩は無事で済まなかったようだ。
折れてこそいないが、肩の筋肉に大きな瓦礫が突き刺さっている。
瓦礫の直撃を受けた箇所だ・・・・肉が爆ぜ、右腕は満足に動かせない。

               ヒュッ

スタンドで部屋のスピーカーに礫を投げる。
すでに高遠によって破壊されたものだが、
距離3mばかり──問題なく命中。精度は落ちていない。

             カラン カラン

床に転がる瓦礫に目をやり、立ち上がろうとした時、エイノーは見た。

         ズザッ ズザッ

倒したばかりのサイと寸毫変わらぬ大きさのそれが、
新たに壁の穴から顔を覗かせている・・・・角さえも同格だ。

「教えておこう・・・・『シロサイ』は『群れ』で行動する」

>>547(紫)
肺の中から、強制的に絞り出される空気。
そこに混じる血の味を、紫は味わう。

──カバの突進は『時速40km』に達する。
サイズをとっても『軽自動車』ほどもあり、
二発目を放った時には、すでに突進に入っていた。

全力で横に跳べば、或いは避けられたかもしれないが、
『突進する生物の目を精確に狙う』というミッションを優先させたのが失敗だ。
『明智小五郎』は銃の名手だが、
さしもの彼であれ、これほど小さな的を、瞬時に狙い撃つのは『不可能』。
狙いを定め、引き金を引く僅かな時間が、紫から回避の余地を奪ったのだ。

ともあれ──『反省会』をしている場合ではない。

               フシュ       ズギュ!!

『明智小五郎』を解除し、現れ出た『安楽椅子』に身を預けた。
一階分ほど落ちるも、空中で停止する紫の体。
胸と背中に激痛が走るが、墜落死は免れた。

怪我は・・・・左腕は無残な有様だが、足は無傷。
胸は呼吸のたびに電流のような痛みが走る。
肋骨が何本か折れている感じだ・・・・背中にも明らかに怪我を負っている。

だが・・・・宙に停止した紫は、一瞬、その痛みを忘れた。

  タンタンタン! タンタンタン! 
                           ドンドン! ドコドンドコドン!

穴の開いた教授棟の外側に、黒い毛並みの動物が無数に群がっている。
人間と同じほどのサイズの『サル』。
これは──『チンパンジー』の群れだ。

特に紫のいた会議室の窓を囲むように、
何匹も壁に張り付いた様子から、紫はすべてを悟る。

こいつらが、スヴァルトの『目』だ。
窓の外の異常も『チンパンジー』によるもの。
異常が始まった頃合いから、『覗き見』されていたのだ・・・・!

その彼らが、揃って椅子の上の紫を見下ろしている。
壁の穴の周囲にも、サルたちはぶら下がっている。
黒目がちなその瞳から感情は読めないが、簡単に想像はつく。
手の届く範囲に近づいたなら容赦しない・・・・そういう『目』だ。
猿たちとの距離(壁までの距離)は──『3m』。

>>548(高遠)
外壁を大きくぶち抜いた穴からは、外の景色が見えている。
吹き込む風。流れ込む太鼓のリズム。
カバAと紫が消えた理由は自明だが、高遠が対処すべきは、もう一匹だ。

       ────?

               ゴ キィィン!

回転から横なぎに払った蹴りが、カバの頭部に叩き込まれた。
サンドバッグを叩くような感触。並の威力では止まらない敵だ。
とはいえ、『クレモンティーヌ』もまた『規格外』。

      ズズ ゥ ン

肉の中に秘められた頭蓋を砕く、確かな手応えとともに、
カバは穴の途中で崩れ落ち、血の池に沈んだ。
その体が、ゆっくりと消えていく・・・・

「なかなかやるな、高遠。
 だが『腕っぷし』だけでは、サバンナを生き抜けはしない」

             ドコドン ドコドン ドコドン

隣室から、太鼓の音が響く・・・・


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