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【場】メインストリート その4

493朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』:2015/07/08(水) 20:33:50
>>492
「うわっ!…
 ま、まあ触られたらそれまでかもしれませんけどね…」
素早い動きに思わず涙音は、鳩尾を隠す動作をしてみせる。

「え、いいんですか?
 …うーむ、ありがたいことですが…
 え、援助交際という言い方はともかく。」
鞄の中の財布を確認しながらつぶやく。

「お言葉に甘えさせて頂いても…」
そう言って軽く微笑んだ

494斉賀『ベティ・ブー』:2015/07/08(水) 23:14:46
>>493
「あっこれ結構お高いやん。
 ……くっ、武士に二言は無い!」


軽いジョークのつもりだったのかもしれないが、
言ったからにはやっぱり払うらしい。


「だがうちが金を出す以上、その水着で大活躍してもらうで!
 トランペット少年のようになぁ―――!

 ところで連絡先交換せえへん?」

495朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』:2015/07/08(水) 23:20:54
>>494
「あ…うーむ、さすがにこれだけだとキツイかもしれませんね…
 私も少し出しましょうか?」
値札を軽く見てから、改めて斉賀に視線を向ける。
持っていたかばんから財布を軽く取り出し、中身を確認し始めた。

「大活躍…もちろんビーチに出たりプールに言ったりとか、してみせますよ!
 貰ったものは使わなければ!」
ぐっと右手を握りしめて力強く答える!!

「あ、もちろん。
 これも何かの縁ですからね。連絡先は共有しておきましょう。」
そう言って今度はかばんからスマホ(開運キーホルダーまみれ)を取り出して
軽く操作をし始めた。

496斉賀『ベティ・ブー』:2015/07/08(水) 23:27:22
>>495
「うう、すまんのう……ってうちが感謝するの間違ってる気がするわ」


女性水着の値段なんて知らねーけど、それなり高いんじゃないっすかね?
まあそんなわけで、お金を出し合って買うことになったのだ。


「はいポチポチー
 って、なんや色々ついとるなそのスマホ……
 開運の壷とか買わされんように、ホンマ気をつけたほうがええで。
 まあ、水着買ってあげるとか言って近づいてきた見知らぬお姉さんが言うのもなんやけど……
 うわっ、改めて声に出してみるとめっちゃ怪しいな自分」


斉賀もスマホを取り出して、連作先を交換する。
なお口ではポチポチ言ってるけど、スマホなのでボタンはついてない。タッチパネルだ。

497朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』:2015/07/08(水) 23:37:04
>>496
「そうですね。感謝すべきなのは私の方です。
 …ほんとにありがとうございます。」
そう言って水着代の半分ほどの額を支払った。
要するに、割り勘ということだろうか。

「大丈夫です。連絡先届きましたよー。
 じゃあこっちも。送信」
涙音もちょうど連絡先を交換し終える。

「…まぁ確かに…最近はだいぶ控えてるんですけどね。
 これを彫る前までは本当にこういうのに縋るしかなかったんです…」
ちょっと複雑そうな表情を浮かべる。

「大丈夫ですよ。今の所いい人という印象です。
 私は怪しいとかは思ってないですよ!」
フォローのつもりなのだろう。
とりあえず励ますように答える。

498斉賀『ベティ・ブー』:2015/07/08(水) 23:46:17
>>497
「そうかー、大変やったな」


スマホをしまう。


「うう、ええ子や。よーしよしよしよしよし」


朱鷺宮からのフォローに、泣き真似をした斉賀は、
次の瞬間、朱鷺宮の頭を撫でにきた。
頭どころか、犬を撫でまくる時みたいに、ほとんどハグ状態で、
抱きつくように撫で回す。
なんか色々触ってるし、斉賀の胸も朱鷺宮に押し付けるように当たっている(胸はでかいぞ)
これだけ女子中学生をお触りして水着半額はある意味安いかもしれない。

499朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』:2015/07/08(水) 23:50:43
>>498
「お気遣いありが…」
と、お礼を言おうとした所で。

「あ、その…」
頭を撫でられ、ちょっと照れくさくなる…が更に

「ふあっ!?
 ちょ、どこ触ってるんで…
 だ、ダメですってそこは!」
なんだか色んな所を撫で回されて顔が真っ赤になっている!

「ちょ、ちょっと…まって…」

500斉賀『ベティ・ブー』:2015/07/09(木) 00:00:07
>>499
「ふう……オーケーオーケー
 これは軽いスキンシップやで。何の問題も無い……」


急にそんなこと言いながら両手を軽くホールドアップして二、三歩朱鷺宮から離れる眼鏡。
背後では朱鷺宮が土下座倒立について許可を求めた店員が目を光らせていた。


「よし、レジ行くかー
 ちゅうわけで一旦水着脱ぎな。
 それともお姉さんが脱がして……あっいや、なんでもないです。通報しないで」


台詞の途中で急に朱鷺宮に背を向けたかと思うと、店員になんか言っていた。

501朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』:2015/07/09(木) 00:04:23
>>500
「…アレが『軽い』んですか…?」

502朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』:2015/07/09(木) 00:06:17
>>500-501
(※途中送信申し訳ない)

涙音は少し信じこんでるっぽい表情をしている。
変に刷り込まれそうだ。

「け、結構です!
 試着室がありますから!」
慌てて、涙音は試着室に入っていった。

…しばらくして…

「ふぅ…あ、その店員さんは思ったより優しいと思うんですけど…
 やり過ぎには気をつけてくださいね。」
そう言って、元の学生服に戻った涙音が現れた。
ちょっと呆れ気味の表情である。

503斉賀『ベティ・ブー』:2015/07/09(木) 00:09:46
>>502
「優しいのは未成年にだけかもしれん。
 レズロリコンか……」


声を潜めて朱鷺宮に囁く眼鏡。
お前が言うなというような内容である。


「じゃあお会計済まそーか」


そんなわけで、水着を購入したのだ。
こうして朱鷺宮の水着購入は完了したのだった。

504朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』:2015/07/09(木) 00:14:46
>>503
「…どちらかと言えばあなたのほうが…
 いえ、その、なんでもないです…」
ちょっと斉賀に対して怪しむような視線を浮かべつつ、
軽く頭を下げた。

「んじゃあ、すいませんー、
 これでお願いします。」
涙音はこの水着の代金の半分ほどを支払い、
めでたく購入を終えたのであった。

「…ふう、水着回に来ただけだったのに、
 結構色んな話をしてしまいましたね。」
ため息を付いて、斉賀に視線を向ける。

「海開きした後は、ぜひとも使わせていただきますよ!
 それじゃあ、またどこかでお会いしましょう!」
軽く微笑んでから手を振り、その場からゆっくりと歩き去っていった。

果たして、またどこかの海で出会えるのだろうか?

505斉賀『ベティ・ブー』:2015/07/09(木) 00:17:57
>>504
この眼鏡は自分の水着買ってないので、海に出没するかは不明であった。
もっと痩せたら買うから……とか言って、結局痩せないで夏が終わりそう。


「ぜひ写メとか送ってな。
 ほななー」


2人は手を振って別れたのだった。

506葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/07/10(金) 01:03:51

メインストリートの住宅街付近。

「…………」

        サン   サン

(……暑いなあ。
 ……7月……かあ……)

ベンチに座る穂風。
黒いマントのような、ぶかぶかの服を着ている。
膝の上には、スーパーの袋。


         ガサガサ

「……」
 
        ≪……お嬢様。 
          帰ってからお食べになっては?≫

「……お節介。」

袋から出したアイスを手に逡巡する。
従者の声は、背もたれで見えない背中のあたりから聞こえる。

507ロンパリ『落伍人』:2015/07/10(金) 01:10:20
>>506


 世界は邪悪で包まれている

 混沌は溢れ 百亥の幽鬼が嘶きを挙げている

 希望の夜明けは来ない


 メインストリートの住宅街通路、そこで葉鳥は目にする事が出来るだろう。
何か人の顔を模倣した『標識』を杖のようにして握りしめ、壁に
凭れ掛かるようにして立っている黒装束の人影を。

 「……」

 その人影は頭上の太陽を見上げていたが、歩いてくる貴方の足音に顔を向ける。
ゴーグルらしきもので顔を隠してるが、どうやら男のようだ。

 「……まァた  『スタンド』力」

 『ヴァンパイア・エヴリウェア』を一瞥して、そう男は呟いた。

508ネキリ『テロライザー』:2015/07/10(金) 01:13:01
>>506
何気なく通りかかって、何気なく耳に入って、何気なくそっちを見たけど、

「・・・?」

ベンチには一人。
聞こえた声は二人。

「あれ?」

ぽつりと呟いて、じー と見つめてしまう。

509ロンパリ? 『落伍人』:2015/07/10(金) 01:17:45
>>506->>508

 三人で回すのがきつそうなら、マンティコアが抜けるゾ

510葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/07/10(金) 01:20:41
>>507

さんさんと晴れた空に、少し影がかかった気がして顔を上げた。
そこに、謎めいた『黒装束』がいた。

         ビクッ…

「……?」

穂風は確かに視界にとらえた。
そして声を聴いた。

             ≪……お嬢様、お気を付けを。
              私めが見えているようで御座います。≫

             従者も音で、捉えた。
             スタンド使いと判断した。

「……あ、ええと。
 こ、こんにちは……?」

挨拶で、返す。
敵意があれば逃げるが……どうか。

               ≪…………≫

               従者は静観する。
               今は穂風を包むマントの形だが――意志はある。
               穂風の選択を尊重する意志だ。

511葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/07/10(金) 01:26:03
>>508(ネキリ)

穂風も従者も、謎の『黒装束』(>>507)に意識を向けている。
そのため、ネキリの存在には、まだ気づかない。

512ロンパリ? 『落伍人』:2015/07/10(金) 01:36:45
>>510

 いや、考えてみれば装束型だがになってる
『ヴァンパイア・エヴリウェア』に、スタンド音声も聞こえない
マンティコアが聞こえる筈がないもんで。
 つまり、あれだ。上記のレスは無かったもんだとしてくれ。本当スマン

513葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/07/10(金) 01:47:07
>>508(ネキリ)

「……」

(……どうしよう。
 迷ってたら、溶けちゃうし……)

(でも、お外だもんなぁ……)

穂風はそれほど敏感でもない。
まあ、日常のワンシーンだし、当然か。


                    ≪……? お嬢様。
                      あの方はお知り合いですか?≫

                    従者は視線に気づいた。
                    が、意図を察しかねた。

「……?
 違う、けど……」

視線に視線を返す。
……そして。

「あ、ええと……こ、こんにちは……?」

挨拶の一つでも、しておく。


>ネキリPC
すみません、このレスに返レスしていただければありがたいです。
>>511は後で削除依頼を出しておきます。

514ネキリ『テロライザー』:2015/07/11(土) 00:48:04
>>513(わかりました。すみませんがよろしくお願いします)

また何か話し声が聞こえた気がするから、

「・・・」

とことことことこ    ヒョイ

「??」

ベンチの裏に誰かいるのかな?って思って、歩いていって覗き込む。
当たり前だけどだれもいない。
頭に疑問符。目にも疑問符。? ?

「あわっ」

あいさつされた。

「あ、こんにちわ〜」

つい返す。

「すいません〜。声がした気がして〜、見ちゃいました〜」

なんとものんびりした謝罪。
垂れ目。丸顔。くるくる癖っ毛。

「あ」

アイスが溶け始めて、ポタリと落ちそうになってるのを知らせようとしたけど、
なんだかうまく言葉がでてこないしもしかしたら失礼かな?とか思ってしまって、指さしだけして固まるネキリ。

515葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/07/11(土) 01:04:37
>>514

指をさされて固まる穂風。
「えっ……」

          ポタリ

「あっ」

    ジューッ

アイスが溶け落ち、水色の液体がマントに零れた。
――それが、みるみるうちに、『吸い込まれて』いく。

「あ、う……」

「え、ええと。
 聞こえ……たんですか。」

右目が泳ぐ。
左目は髪に隠れて見えない。

                          ≪……私めの声が。≫

                          その声は老爺めいている。
                          そしてやはり、少女の背から聞こえる。

「……その、すみません。
 驚かして、しまいまして……」

恐縮した様子で、頭を少し下げる。
アイスからは二滴、三滴と雫が落ちる。

                ジュゥゥーー ・ ・ ・

そして、飲み込まれていく。

                           ≪…………≫

「あっ……
 す、すみません。食べていいですか……?」

会話になりそうなので、一応確認しておく。礼儀というものだ。

516ネキリ『テロライザー』:2015/07/11(土) 01:19:27
>>515
「あっ・・・」

吸い込まれるようにしみこんでいくアイスのしずく。
そして『たぶん普通では聞こえない』声。(相手の反応から推測がなりたつ)

「『スタンド』ですか〜?」

覚えたての単語をつかってみる。

「アイスですか〜? どうぞ〜。おかまいなく〜」

517葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/07/11(土) 01:33:44
>>516

「あ、はい。
 ありがとう、ございます。」

          シャク

             ジャク

ソーダ味の棒アイスだ。
安いが、それなりに大きい。

二口ほどかじって、満足げに口角を上げる。

「は……はい。
 スタンド、です。」

             ≪『ヴァンパイア・エヴリウェア』
               ――と、申します。以後、お見知りおきを。≫

              老爺の声が自己紹介する。
              やはり、スタンドらしい。

「……ええと、その。」

「……貴女も、です……か?
 ええと、スタンド使い……?」

穂風はおそるおそる聞く。
悪い人には見えないが……

「……あ、その。座ります……か?」

ベンチの隣は空いている。
スペースはそれなりにあるので、密着する必要もない。

518ネキリ『テロライザー』:2015/07/11(土) 01:49:17
>>517
「わー」

ぺこり

「『ヴァンパイア・エヴリウェア』さん?でいいですか〜? あれ? ってことは〜、喋ってるんです〜?」

『テロライザー』は喋らない。
新鮮な驚きを隠そうともせず、

「はい〜。わたし、『柊ネキリ』です〜。『スタンド』は〜、『テロライザー』」

   ズン!

んー、と力みつつ発現。出すときには唸ってしまうクセ。
ネキリの傍らに寄り添う人型のヴィジョン。空の弾帯を体中に巻いて、ぼろぼろの戦闘服っぽい衣装を着た鉄のマネキン。
『テロライザー』。

「あ、ありがとう〜」

勧められるまま、ちょこんと座る。密着はしてないがナチュラルに近い。

519葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/07/11(土) 02:05:32
>>518

「あ、いえ、その、立ち話も、なんですし……」

近いが、気になるほどでもない。

              ≪私めに限らず――
                『意思』のある者はいるようで。≫

「あ、ええと……
 半自立型、って。言うみたいです。」

穂風も無知だ。
しかし、日々の中で、少しずつ知識は増えつつある。
それは嬉しいことだ。

「柊、さん……ですね。
 私は『葉鳥 穂風(はとり ほふり)』……といいます。
 ええと、その、よろしく……お願いします。」

               ≪どうぞよろしくお願いします。
                  柊様、『テロライザー』様。≫

人型のスタンドに視線を向ける穂風。

「なんだか、強そうな……見た目、ですね。」

穏やかそうな本体に見合わず。
まあ、精神とスタンドが直結しているとは限らないが。

520ネキリ『テロライザー』:2015/07/11(土) 02:20:28
>>519
「『半・じりつ』〜」

おうむ返し。
何度か頭の中で単語をぐるぐるまわし、

「半自立〜。『おしゃべり』できるってすてきですね〜」

『テロライザー』は喋らない。マネキンの視線もどこを見てるのやら・・・
視覚はないから、どこも見てないのが正解。
そして『様』付けされるのに馴れないので照れる。

「えへ」

『テロライザー』は動かない。

「で、え〜っと〜。『ほふり』ちゃんの『ヴァンパイア・エヴリフェア』さんは〜、その『服』〜?」

異常な吸収速度は、この推測を容易にする。

521葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/07/11(土) 02:36:35
>>520

「素敵……かなあ。」

             ≪……≫

穂風は思う。
己の従者は、口うるさい。

             ≪私めは服ではございません。
              『雨具』――に、御座います。≫

しかし黙するマネキン人形と、どちらがいいだろう。
……答えは出ない。


「……」


           パタ

       ガキン
              ペタン

穂風のマントが――『変形』する。
正しくは、組みなおされていく。

「これ、が……ええと、本当の姿……です。」

               ≪ありとあらゆる雨具に変化する――
                       それが、私めの能力ですゆえ。≫

傘を人型にしたような、異形の従者。
蝙蝠の頭骨のような、奇妙な頭部。

           シャク

マントがなくなった穂風自身は、夏らしく、薄手のワンピース姿に。


「…………『服みたいなスタンド』も、あるんです。
 私のは、その、服になる……スタンド、ですけれど。」

こうしてみると、意外と発育が良い。
わざわざそれを誇ったりはしないが。

522ネキリ『テロライザー』:2015/07/13(月) 23:21:54
>>521(ごめんなさい!)
「すてきだよぅ〜」

けらけら笑う。
邪気も悪意もなく、ついでに一瞬でタメ口。

「かっこいいし〜、いきなり雨が降ったりしたって、平気じゃない〜」

『雨具』の説明はわかった。
見た目とあわせて『第一印象』。
『テロライザー』は動かない。マネキンはマネキンらしく、そこに立っているだけだ。

「『テロライザー』は〜、力は強いけど〜。全然『便利』じゃないもの〜」

大きくベンチにもたれかかりながら、伸びの姿勢。顔に見合わず相当『立派』だ。何がとは言わないが『立派』だ。
口を尖らせて『テロライザー』を見る。
もちろん『テロライザー』は何も返さないし動かない。

523葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/07/13(月) 23:43:17
>>522

「そ、そうかな……」

                  ≪少なくとも、私めにとっては――≫

「……うるさい。」

素直に受け取れやしない。
だが、いいものなのかな、とは思う穂風。

(……難しい、な。)

「それは……そう、かも。
 傘には、困らないし……」

                  ≪無論に御座います。
                    雨避けに関してはこの私め、右に出るものは御座いませんとも。≫
 
                   誇らしげに従者は言う。
                   胸を張っているようにも見える。

「……ん。」

穂風も、それには同意だった。
……視線を『テロライザー』に向ける。『立派さ』には触れない。
穂風はねたまないし、いきなり触ったりもしない。立派だな、とは思うけれど。

「でも、ええと、力仕事、とか……は、その、困らないんじゃ……?」

それは己の従者には出来ない仕事だ。
もちろん、穂風も得意ではない。
背は高いし、『一部』は肉つきもいいが、手足は細く、白く、見るからに弱そうだ。

524ネキリ『テロライザー』:2015/07/14(火) 00:06:28
>>523
「わたし〜、よく傘忘れるからさ〜」

忘れようがないのは本当にいいなって思う。
そしてやっぱりおしゃべりが楽しそうだ。

「力は〜、あるけど〜」

『力仕事』。

「『不器用』だからね」

声も暗くなる。
本当に、日々のふとしたことには何の役にも立ちゃしないのだ。
片手で軽自動車が持ち上がるからって、それが一体なんだというのか。

「ほんと」

はふう、とため息。つきつつ、『テロライザー』解除。

525葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/07/14(火) 00:18:48
>>524

「私の、は……忘れても、勝手についてくる、から……」

                   ≪当然に御座います。≫

「……」

そーいうとこは、お節介でも、ありがたいのかもしれない。
少なくとも、単なる傀儡よりは――『便利』ではあるに違いない。

「あ、う……す、すみません……」

軽率な褒めだったらしい。
穂風は少し俯く。

物を壊すのには便利かもしれないが、そんな便利は不必要なのだろう。

「……あの、ええと。
 あ、アイス……おひとつ、いりますか?」

                ゴソ ゴソ

袋から、棒アイスを取り出す。
袋にはドライアイスが詰めてあるので、溶けてはいない。

526ネキリ『テロライザー』:2015/07/14(火) 00:27:30
>>525
「えっ」

『アイス』という単語にぱっと顔が明るくなり、そして暗くなった。

「ありがとう〜。でも〜、わたしこれから歯医者さん行かなきゃだから〜・・・」

歯医者さんの日はお菓子を食べたら怒られる気がするのだ。
だからせっかくの申し出だしほんと貰いたいけど、ことわる。

「ほんとありがとうね〜。『ほふり』ちゃんと〜、『ヴァンパイア・エヴリフェア』さん〜」

覚えた。
『ほふり』ちゃんはカワイイ女の子で、『ヴァンパイア・エヴリフェア』は『雨具』のスタンド能力!

「あっ。わたしのも〜、言っとかなきゃね〜。『テロライザー』は〜」

教えてもらったら、お返しに教える。当然の礼儀だと思う。


「『壊したもの』に〜、『地雷を埋め込む』の〜」


「あわっ」

時計をチラ見してあわてる。
もうじき予約の時間だ。

「遅れちゃったらいけないから〜、もう行くね〜。今日はありがとう〜。『ほふり』ちゃん」

手をふりふり、振り返っては手をふり、そうして歯医者に向かう。

527葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/07/14(火) 00:38:18
>>526

「あ……歯医者さん、ですか……」

顔を曇らせる穂風。
歯医者は……きらいだ。すごく。

「地雷――」        ≪で、御座いますか。≫

地面に埋まる爆弾。      戦争の兵器。

      やはり強力そうで。
      なるほど、便利ではないだろう。

しかし衝撃はそれほど大きくもない。
地雷という言葉は凶悪だ。しかし、それがネキリにそのまま当て嵌まるわけでもない。

「あっ、はい。あの、その……こちらこ。
 また今度、その、どこかで会ったら、そのときは、また……」

               ≪では、お気を付け下さいませ――ネキリ様。≫

手を振り、見送る穂風。     そして、その従者。

528板踏甲賀『ウィズイン・サイレンス』:2015/07/14(火) 21:52:53

なぜだろう。
気温は高く、湿度も高く。
その蒸し暑さはまるでサウナか何かのようで、外にいればそれだけで滝のように汗が流れる。
かいた汗で制服が肌に張り付き、独特の気持ち悪さのおまけつき。
夏というのは、およそ過ごしやすい時期ではない。
下手をすれば脱水症状で倒れる者もいるぐらいなのだし。

だというのに……なぜだろう。


  「…………………………」

     ウト
         ウト

少し休むために座ったベンチで、眠たくなって舟を漕いでしまうのは。
夏休みのコンサートもあるし、最近その練習ばかりで疲れているからか?
この蒸し暑さの中では、寝苦しくて仕方ないはずなのに……今にも……眠ってしまいそうで……

529鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2015/07/14(火) 23:03:17
>>528

「あの、隣エエですかぁ?」

板踏の耳に入ったのは少年の声であった。
片手に小さな和傘を差し、もう片方の手には買い物袋を提げた少年だ。
和服を身にまとい、癖のある黒髪が肩まで伸びている。
       オ
(どっかで会うた気ぃするなぁ……)

おそらくミスコンの審査員席であろう。
板踏がそれを覚えているかは分からない。

「ちゅうか、大丈夫ぅ?熱中症?」

眠そうな姿を疲れているとかしんどそう、と判断したようだ。
心配そうな瞳が板踏を見つめる。

530板踏甲賀『ウィズイン・サイレンス』:2015/07/14(火) 23:18:44
>>529

「ん……」

声をかけられ、ハッと目が覚める。
……危ない危ない。ほとんど寝ていた。
流石にこの炎天下、外で無防備に寝るのはあまりよくない。
かぶりを振って目頭を指で揉み、眠気をほぐしていく。

「ああ……その、大丈夫だ。
 隣もそうだし、熱中症のほうもな」

それから、視線を少年の方へ。

(…………ん? こいつ、どっかで見たか……)

       (覚えてないってことは、多分音楽関係じゃなさそうだが……)

  (……じゃあいいか)

……覚えてなかったどころか、思い出すことすら放棄した。
ミスコンは楽しい記憶として覚えているのだが、出場者はともかく審査員の方までは記憶に残っていなかったらしい。

「少し、疲れてたらしい。
 この蒸し暑いのに寝れるとは、我ながら器用なもんだ」

まだ眠いのか目を細め。冗談めかした物言いの割には、不愛想な表情で。
顔立ちは整った方ではあるが、長身と相まってどこか威圧的でもある。

531鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2015/07/14(火) 23:57:01
>>530

「おおきに。」

普通にベンチに座る。
和傘は差したままだ。板踏も影に入るように傾けている。

「……?あんさん、板踏さん?ミスコンの審査員してはった人?」

とりあえず聞いてみる。
イマイチ自信はないが。多分音楽用語云々の人だったと思う。

「大変ですねぇ。」

そういうと、買い物袋からペットボトルを一本取り出した。
ラムネである。水色のラベルが清涼感をもたらしてくれる。

「いりますぅ?あぁ、お代とか取らへんよぉ?」

532板踏甲賀『ウィズイン・サイレンス』:2015/07/15(水) 00:13:13
>>531

「……? ああ、俺は板踏だが……」

怪訝そうな顔をする。
なにかこう、喉まで出かかっている気がする。ミスコン……ミスコン……?

「……………………………………………………」「あ」

  「そういえば、おまえもあの時会場にいた気がするな。
   ……名前までは、憶えてないが」

どうやらミスコン関係者で、共に審査員席にいたことまでは思い出せたようだ。
名前とかどういうこと言ってたかはあんまり覚えていないが。
なお、和傘が影を作ってくれていることには気づいていない。眠気で注意力が落ちているのかもしれない。

「まぁ、そう大変でもないさ。
 楽しくてやってることで疲れてるんだから、望むところでもある」

そういうと、板踏はちょっとだけ笑った。
しかしラムネのペットボトルを見ると、顔をしかめて、視線を一瞬巡らせて。

「それは……気持ちだけ貰っておく。
 炭酸は『肺』とか『喉』とかによくないから、飲まないようにしてるんだ。悪いな」

533鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2015/07/15(水) 00:25:59
>>532

「審査員してた鈴元涼です。よろしゅう。」

自己紹介しておく。別に名前を覚えてもらう必要も無いのだが、礼儀だ。

「ふぅん。」

気持ちだけ受け取られた。前にも似たようなことが会った気がする。
相手は女性だったが。

「じゃあ、こっち?」

次に出てきたのは緑茶である。

「烏龍茶は喉の油落とすって聞いたことあるけど、緑茶は違うよねぇ?」

受け取ってくれるか?と言いたいらしい。
          コ
(まぁ、緑茶しか買うてへんけど。)

「うふふ。気ぃつけてはるんやね。」

「さすがは吹奏楽部って事やろか?」

けらけらと笑う。
笑いながらラムネのふたを開け、自分の口の中に流し込む。

「けふっ。他にも気ぃつけてはる事とかあります?」

534板踏甲賀『ウィズイン・サイレンス』:2015/07/15(水) 00:42:14
>>533

「俺は板踏甲賀――――っと、知ってるんだったな」

ちょっと抜けた答えを返しつつ。
多分、名乗られたからにはちゃんと名前を覚えた。多分。

「…………なんというか、悪いな。ありがとう」

そしてこんな不愛想な奴によくしてくれる鈴元に、素直に感心して、感謝する。
板踏には、コミュニケーション能力が不足しているという自覚がある。
それでも板踏を心配して、関わってくれるこの少年は『いいやつ』だと、板踏は思った。
だから素直に緑茶を受け取り、キャップを開けて喉に流し込む。

「んっ……ぷはっ。
 ……他に気を付けてる事? そうだな……」

   「……『背筋』とかか?
    呼吸がしっかり体を通るように、姿勢が悪くならないようにいつも気を付けているが……」

そういう板踏の背筋は、確かにピンと張って真っ直ぐに伸びている。

「あとはまぁ、冬は筋肉が委縮しないように厚着するようにしているとか、そういう感じか」

535鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2015/07/15(水) 01:01:48
>>534

「うん。しっとるよぉ。」

「エエんよぉ。これぐらい。
 あ、いきなり冷たい飲みモン飲んだけど大丈夫?お腹壊したりとか。」」

鈴元からすればこれぐらいはなんでもないことだ。
ここで会ったのも何かの縁であるし、冷たく扱う必要もない。

「はぁ。色々してはるんやねぇ。」

感心して板踏の姿勢を見る。
鈴元も姿勢はきれいだが、体の大きい彼のそれはなんというかサマになっている。

「かっこエエねぇ。職人気質っちゅうか、真面目やねぇ。」

そういう人間には敬意を払うのが鈴元である。
楽しそうに笑っている。

(ちゅうか、うちの部活って気ぃつけるとこないよねぇ。)

金言部など世界中探しても1つしか存在しないだろう。
そもそも活動指針はあっても活動内容はいつもバラバラなのだ。
気をつけるとかそういう次元の部活ではない気もする。

「そういえば、板踏さんってなんの楽器やってはるん?」

あまり詳しいわけではないが聞いておこう。

536板踏甲賀『ウィズイン・サイレンス』:2015/07/15(水) 01:20:21
>>535

「このぐらいなら、大丈夫だ。
 キンキンに冷えてるってわけでもない」

適度に冷たくて、ジュースだとか炭酸飲料ほどではないが、爽快感がある。
板踏にとって、ペットボトルのお茶は普段から飲みなれたものだ。日常的な癒しがあった。

「真面目、というかな。
 さっきも言ったが、楽しくてやってるんだ。
 当たり前の話だが、うまくやれたほうが楽しい」

できないことができるようになると楽しいし、できることのクオリティが上がっていくのは楽しい。
板踏はそういう『娯楽』として音楽を楽しんでいるし、そのために努力を重ねている。
そして、それは誇るようなことでもないと思っている。
遊んでいることを『偉い』と言われても、違和感があるようなものだ。

「俺がやってるのは、『トランペット』だな。
 他の楽器も……まぁ『金管』なら多少はやれるし、『ピアノ』も少しは弾けるが、『トランペット』が一番好きだ」

     「『トランペット』はいいぞ。一番音がまっすぐで、力強い。
      吹き込んだ息がそのまま音になって、遠くまで飛んでいく。俺はそれが好きなんだ」

楽器の話をすると、途端に不愛想だった板踏の表情が子供のような笑顔になった。
心から、音楽が好きだと言わんばかりに。

537鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2015/07/15(水) 01:32:30
>>536

「せやったら、エエんやけど。」

お腹を壊して演奏に支障をきたしたら問題である。
厚意からそんな結果を招いてしまうことを鈴元は望んではいない。

「なにごとも上手に出来たら気持ちエエもんねぇ。」

(僕はあんまりなんかを上手く出来たことはないけど。)

うんうんと頷いて同調する。
彼自身はその経験が少ないと言えど、気持ちは理解できる。
鈴元は和菓子作りでもゲームでも上手く出来たと思えたことがない。
高すぎる目標は常に彼の上を行くのである。
近づくことも出来ない高みである。

「『トランペット』ですかぁ。音がこう、キンッってくるイメージやわぁ。
 目立つっちゅうか、花形とも違うかもしらんけど、うん。」

「……うふふ。ほんまに好きなんやねぇ。」

板踏の顔が変わった。
鈴元はそれを見逃しはしない。

「エエ顔してはるわぁ。」

「もっと聞かせてもらえるやろか。吹奏楽のお話。」

538板踏甲賀『ウィズイン・サイレンス』:2015/07/15(水) 02:17:30
>>537

「上手くなかったら楽しくないかと言えば、そういうわけでもないんだがな」

下手だろうが上手だろうが、楽しめているかそうでないかが一番大切だ。
それが彼の持論だ。
例えドがつく音痴でも、歌うのが楽しければそれでいいのだ。
もちろん、上手いに越したことはないし、下手である自覚はあったほうがいいとも思うが。

「どれが花形かってのは、曲やメンバーの構成にもよるが……
 だが、確かに『トランペット』は一番目立つ楽器だ。
 吹奏楽で最も『鋭い』音を出す楽器だからな。高さとスピードが段違いだ」

そして当然、板踏甲賀は音楽を楽しんでいる。
楽しんでいるから、音楽の話をしている時は楽しそうな顔をする。
実際楽しいからだ。その気持ちに嘘をつく必要はどこにもない。

「……顔? 俺のか?」

       「……ふっ、そりゃあ、俺は音楽が好きだからな」

   「俺の話もいいが……そういうお前は、どうだ?
    音楽、やってみないか」

 「いいぞ、音楽は。楽しいぞ」

だから、彼は人に音楽を勧めたがる。
楽しい遊びを見つけたから、皆もやろうと誘う子供のように。

539鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2015/07/15(水) 23:52:30
>>538

「はぁ。すごいねぇ。」

にこにこ笑って板踏の話に相槌を打つ。
語り部の板踏が楽しそうなら、聞き手の鈴元も楽しさを感じる。
鈴元はそういう男であった。

「好きなことあるって、エエねぇ。」

そういうことが人生に彩を加え、華やかに変える。
鈴元はそう考えている。
板踏の顔を見て、改めてそう思う。

「……音楽?僕が?」

「うーん……おもろそうなんよねぇ……」

少し間があって

「エエねぇ。『やりたいわぁ』」

笑顔で板踏にそう告げる。
楽しいこと、面白いことは好きなのだ。
それに何事も経験なのだ。
少し試してみるのもいいかもしれない。

「ところでぇ……」

「板踏さんが僕のセンセになってくれはるん?」

540板踏甲賀『ウィズイン・サイレンス』:2015/07/16(木) 00:19:44
>>539

       「おっ、本当か!」

『やりたい』という返答に、無邪気に喜ぶ。

   「ああ、誘ったからには、付き合わせてくれ。
    部活もあるし、コンサートも近いから、いつでもってわけにはいかないが……」

    「でも、お前と『音楽』してみたいからな」

音楽は楽しい!
楽しいが……人とやる音楽は、もっと楽しい!
一人よりは二人で、二人よりはたくさんだ。
そっちの方が絶対に楽しいから、板踏は人とやる音楽が好きだ。
誰一人、まったく同じ音を出す人はいないのだから。

   「それで、おまえはなにがやりたい?」

ぐいと鈴元に顔をよせ、鋭い目つきを輝かせて覗き込む。

 「『管楽器』か?
  『打楽器』か?
  『弦楽器』でも『鍵盤楽器』でもいいし、当然『歌』でもいいぞ」

     「今この場で教えられるのは、『打楽器』か『歌』か、基礎の基礎かってとこだが」

最初は色々やってみるのが一番なんだけどな、なんて笑いつつ。
なにがおかしいのかわからないが、笑いつつ。

541鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2015/07/16(木) 01:05:25
>>540

「えっとぉ。」

板踏の勢いは鈴元の想定外だった。
しかしそれは鈴元の思う以上に音楽を愛していたということでもある。
そう思うと、鈴元は板踏から教わるのが楽しみになってきた。

「僕、あんま詳しぃないんやけどぉ……
 『打楽器』とか『管楽器』後、『歌』は興味あるかも……」

「とりあえず、今日は『歌』を教えてもらえるやろかぁ?」

板踏に提案する。
楽しそうな笑顔だ。
板踏の笑いに共鳴するかのように笑った。

542板踏甲賀『ウィズイン・サイレンス』:2015/07/16(木) 01:19:33
>>541

「『歌』か。ああ、一番手軽だしな
 なにせ楽器となると、タダじゃなくなっちまう」

冗談(なのかどうかよくわからないが)を言いつつ、すっくと立ち上がる。
そして、くいと首で「お前も立てよ」と促した。

「歌は、学校の音楽の授業でやったっきりか?
 武道とかストレッチとか……あるいはなんかのスポーツの経験はあるか?」

肩幅に足を広げ、ピンと背筋を伸ばし、両手を自分の丹田の辺りに当てた。
胸は張り過ぎないように、肩に力は入らないように。

「演劇でもいいぞ。どのぐらい『呼吸』ができるかって話だ。
 『管楽器』でもそうだが……歌で一番大事なのは、『呼吸』だからな」

543鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2015/07/16(木) 01:47:04
>>542

(楽器ってウン十万するんが普通って聞いたことあるわぁ。)

板踏の言葉に頷きつつ自分も立ち上がる。
二人が並ぶと、身長差を改めて感じてしまう。

「歌うんは結構好きやけど。ストレッチは毎日やってるよぉ。
 運動は……ほどほどやねぇ。」

体が柔らかいと健康にいいと聞いてやっている。
生活習慣の一部だ。
板踏と同じように立つ。

「『呼吸』?息止めるんやったら一分ぐらい出来るけどぉ。
 大きな声出せたほうがエエんやろかぁ?」

544板踏甲賀『ウィズイン・サイレンス』:2015/07/16(木) 02:20:21
>>543

ちなみに楽器は高いものだと普通に車が買えるレベルだったりする。
もちろん、安いものを買えば値段もある程度マトモな範疇にはなるのだが、それでも一般的には『金のかかる趣味』と言える。
整備の手間を考えれば、『金と手間のかかる趣味』だ。

閑話休題。

「歌が好き。いいことだ」

  「毎日ストレッチしてるってのも、いいことだ」

前者はもはや言うまでもないのでともかく、後者についても素直に感心し、賞賛する。
つまり、歌うための土台は既にある程度できているということだ。
口の端を吊り上げてニィと笑って見せる。

「大きな声……『声量』も当然大事だが、それ以前に呼吸が疎かだと音に『伸び』が無くなるからな。
 息を大きく吸って、吐く。この『呼吸』の質で音はガラリと変わる。腹式呼吸はできるか?」

  「……もう少し肩の力を抜いて……顎も引いたほうがいいぞ。
   で、へその辺りと横隔膜……肋骨の下あたりにある膜だ。それの動きを意識して……大きく、ゆっくりと息を吸え」

 「吸ったら、今度はゆっくり吐く。全部だ。……こんな風に」


     スゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……………


あれこれと支持を出してから、板踏も大きく息を吸った。
それで、随分長く息を吸ってから……ゆっくり、吐き出していく。


        ハァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ…………


   「……おまえも一回やってみろ」

545鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2015/07/16(木) 03:07:53
>>544

「エエんやったら、よかったわぁ。」

世の中どこでなにがどう作用するかは分からないということだ。

「ん?え?伸び?腹式?」

「こ、こうしたらエエんやろかぁ?」

なんだかよく分からないが説明を受けているらしいことは確かであった。
とりあえず板踏の指示に従って立ち方を直し、板踏の体を観察する。

(普通の呼吸とは、違うんかなぁ?)

「あ、僕の番やね。」

鈴元は板踏の体の動きを思い出す。
鈴眼での和菓子修行。見て学ぶことも多い。

すぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ…………

       はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………

板踏ほどの長さではなかった。
が、たしかに鈴元の呼吸は腹式呼吸であった。

「こ、これでエエんかな?」

546板踏甲賀『ウィズイン・サイレンス』:2015/07/16(木) 22:38:08
>>545

     「む」

 「……悪いな。あまり口が上手い方じゃない。わかりにくかったか」

       「んー……」

言っていることが正確に伝わっていない、ということを察した。
用語が多かったか。さて、どう説明したものか。
少し思案して……しかし。

     「………………なんだ」

  「できてるじゃないか」

わざわざ説明するまでもなく、鈴元は腹式呼吸ができていた。

  「ストレッチをやってるだけはある。
   それでいい。その感覚を忘れるなよ。
   呼吸をしっかりすれば、声に張りが出てよく響くようになる。
   空気を腹にため込んで、全身に行き渡らせるイメージを持て。吐く時も、体内を巡る空気の循環をイメージしろ」

    「それと、できるだけ胸を動かさないように気を付けろよ。
     呼吸が下手だと、内臓や喉を傷めることもあるからな」

上機嫌に、ニマニマと笑いながらレクチャーする。
いよいよ楽しくなってきた、という感じだ。

 「もう一回やってみろ。
  ただし今度は、吐く時に『声』を乗せて、だ」

言って、大きく息を吸う。

     スゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……………

吸って吸って、大きく吸って……


   「アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ―――――――――」

547鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2015/07/17(金) 00:32:15
>>546

「え?ホンマ?できてた?」

よく分からないが出来ていたらしい。
先ほどのように息を吸ったりはいたりしている。
体に感覚をなじませようとしているらしい。

「胸を上げずにぃ……」

笑う板踏と対照的に真面目な顔である。
集中しているのだ。
暑さも忘れている。

「っ!」

「……エラい大きいねぇ。」

音は空気の振動だとか波だとか色々いわれたことがある鈴元だが
板踏の声をまるで津波のように感じた。

(言霊すごそう。)

ともかく鈴元もやってみる。

(空気を思い切り入れて……)

すぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ…………

(胸は上げんようにして……)

(音の塊をぶつけるような……感じやろか?)

吸いきった後、一拍置いて

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」

その場に鈴元の声が響いた。

548板踏甲賀『ウィズイン・サイレンス』:2015/07/17(金) 01:12:53
>>547

「ああ、できてたとも。
 何度もやって、モノにしろ」

真剣に練習している鈴元を見て微笑む板踏。
当然、嘲笑しているわけではない。
鈴元が音楽(まだ呼吸しかしていないが)に対して真摯に向き合っていることが、たまらなく嬉しいのだ。
その場に響く鈴本の『声』を聞いて、笑顔はもっと深くなる。

「よし……少し力み過ぎだが、その調子だ。
 もっと力を抜くといいな。音が空間に広がっていく情景をイメージできると、良い声が出せる」

「それが『歌』の基礎の基礎――――『発声』だ。
 リズム感だとか、音程だとかは後回しでいい。まずは、気持ちよく声を出せ」

そう言いながら、板踏は自分の口角に両手の人差し指を当て、自分の笑顔を強調する。

   「それと、ほら、『笑え』よ。
    口角を上げて、大きく口を開け。
    その方が、もっと大きくて伸びのある声が出るからな」

実際、発声練習で『お腹から笑う』という方法もある。
笑顔は一番声が出せる表情で、笑い声は誰もが作れる腹式の音だ。

549鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2015/07/18(土) 00:28:55
>>548

「はい。センセ。」

大真面目に板踏を先生と呼ぶ鈴元。
それだけ目の前の板踏に敬意を表しているという事だろうか。
そしてまた、何度か呼吸を繰り返す。

「うん。音が広がる感じでぇ……」

「勉強なるねぇ。」

一つ一つ確認するように頭の中で復唱しながら、呼吸を繰り返す。

「笑顔?」

板踏の真似をして口角を指で吊り上げる。
唇が持ち上げられ白い歯が見えた。

「こう?あ、こうやろか?」

板踏に笑顔を見せる。
普段のような柔らかい笑みではなく、満面の笑みとも言える表情であった。

また発声をしようと息を吸い込んでいると、周囲に人が集まっていることに気付いた。
二人の声に人が引き寄せられたのかもしれない。

「いや、なんや集まってきはったわ。」

「センセ、どないする?」

550板踏甲賀『ウィズイン・サイレンス』:2015/07/18(土) 01:10:55
>>549

「『先生』はよせよ。ガラでもない」

口では否定しつつも、そうまんざらでもなさそうだ。

「くははっ、いい感じだぞ。涼は飲み込みが早いな!
 その調子で練習すれば、すぐに気持ちよく声が出せるようになる。
 そうすれば、後は好きな歌を歌えばいい。何度も何度も歌えば、後は勝手に上手くなるぜ」

本当は、細かい技術やらなんやらあるし、少なくとも一定の水準を超えるためには勉強が必要なのだが……
……残念ながら板踏は『歌手』ではないし、歌に関しては専門的なことを言えるほどでもない。
それに、好きな歌を歌うのが一番だと思っているのも本心であった。楽しいのが一番だ。

        「む」

ところで、気づけば周囲に人だかりができている。
そりゃあ街中で急に発声練習なんて始めれば、好奇の視線は寄ってくるだろう。
板踏はそれに顔をしかめるでもなく、むしろ笑ったまま、周囲の人々に声をかけた。

    「なんだおまえら、一緒にやるか?」

――――本人としては、純粋な誘いであった。
興味があるのならやってみないかと、そう思っての言葉であった。
だが……残念なことに、彼の笑顔は……ちょっと、怖かった。
本人は上機嫌だ。上機嫌なのだが……ちょっと、獰猛な肉食獣めいた笑顔だったのだ。
目つきが鋭いせいなのか、単に笑顔が下手なのか、それともそういう性質なのか。板踏甲賀の笑顔は、よくこうなる。

そして当然、そんなサメのような表情を向けられた周囲の人々はサッと顔を背け、そそくさと退散していく。
ライオンの唸り声を聞いた草食動物のような、素早い散開であった。

「…………………むう」

板踏はすごい残念そうな顔をしていた。多分原因はわかっていない。

「…………まぁ、仕方ない。
 どうする涼。まだ続けるか?」

しかしこの一連の流れによって、今いる場所と状況を思い出す。
そういえば鈴元は買い物帰りらしい様子だったな、ということを思い出したのだ。

551鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2015/07/18(土) 01:58:51
>>550

「涼、かぁ……」

(ハズいハズい。)

ちょっとだけ板踏から目をそらす。
名前で呼ばれるのは少し、恥ずかしい。

「センセ教え方上手やねぇ。僕頑張るわぁ。」

そう言って鈴元は笑う。
けらけらと楽しそうに笑う。
真剣に教えてもらえるのは純粋に嬉しい。

(……まぁ、大声出してたらこうもなるわなぁ。)

適当に言って帰ってもらおうか、それとも場所を変えるか。
後者の方が楽で確実ではあるが……
どうしたものかと考える。
ちらりと板踏の方を見た。彼はどうするつもりなのか聞こうと思ったのだ。

(なんちゅうか、怒ってる訳やないんやろうけど……)

(猛獣さんみたいやね。)

板踏の笑顔を見た鈴元はそう思った。
群集が去った理由がそれであることは鈴元の目を通しても明らかであった。

「そやね。続き……あ。」

「買い物の帰りなん忘れとった。」

どうやら練習に夢中になりすぎていたらしい。

「えっとぉ。すんません。続きはまた今度でエエやろかぁ?」

「後、連絡先交換してもろてエエ?」

懐からスマホを取り出して聞いた。

552板踏甲賀『ウィズイン・サイレンス』:2015/07/18(土) 02:23:05
>>551

          「?」

視線を逸らす鈴元を見て、不思議そうな顔をした。
少しでも相手の事を気にいるとすぐに下の名前で呼ぶ習性が彼にはある。
板踏甲賀17歳。彼の辞書にデリカシーとか遠慮とかそういう言葉は存在しないのであった。

   「……俺よりいい先生なんて、いくらでもいるけどな。
    だが、俺が教えられることならなんでも教えてやるよ」

           「だからまぁ……続きはまた今度としても、俺は楽しみにしておくとするさ」

そう言って、今度はちゃんと(?)ニヒルに笑った。
どこか寂しそうでもあるが、『また今度』という楽しみがあるから大丈夫、という顔だ。

「連絡先か? いいぜ、交換しておこう。
 なにか気になることでもあれば、気軽に連絡してくれ」

こちらも通学カバンからスマホを取り出して、連絡先を交換する。
……吹奏楽部の仲間を除くと、地味に貴重な連絡先の追加であった。
そしてそのままカバンを肩にかけ、帰る準備を整えて。

   「…………それじゃあ、気を付けて帰れよ。
    ふとした時に暇があったら、今教えた呼吸をやっておくといい。『継続は力なり』って奴だ」

553鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2015/07/18(土) 23:55:59
>>552

「おおきに。また、よろしゅう。」

「継続は、力。その通りやね。」

連絡先を交換し、板踏を見送る。
先ほどのあの笑顔を思い出しながら。

(今度は僕が笑顔を教えようかなぁ。)

口角を上げた笑みを浮かべて、家に帰る。
次会うときは今よりも上達した発声を見せる。
そう心に誓いながら。

554新『バーデン・バーデン』:2015/07/20(月) 01:20:41
「ああ、どうしよう…、ど、どどうしよう……」

夜の通りを、女がぶつぶつとつぶやきながら、うつむいて歩く。
酷く焦り、怯えているようで、
無意識なのか右手の指の爪を左手の甲に食い込ませている。
血は出ていないが、爪が立っている箇所は真っ赤になっているが、彼女は気にしていない。

「ああ、本当にどうしよう、どうしよう……『あんな』つもりじゃ、なかったの……」

555新『バーデン・バーデン』:2015/07/20(月) 01:41:55
「落ち着いて落ち着いて落ち着いて、そう、落ち着くの、ね、落ち着こう……」

自分に言い聞かせているのだろう、呪詛めいた呟きが続く。

「大した事ない、すごく大した事ない、きっと皆『よくあること』なのよね
私には『大事件』でも……だから、クールに、前向きに、生産的に、ね、マキ…」

ガリガリガリガリガリガリガリ

左手の甲をかきむしる、右手。赤い蚯蚓腫れから、ぷつぷつと赤い玉が浮き出る。
女は、狂人のように呟き続ける。

「ああ、あああ、でも、どうしよう。言い返して、彼女が怒って、とんでもなく無駄で
非生産的な時間をもうすごしたくないって言い返して、これって喧嘩よね、
おこ、怒られるのはよくあることだったけど、私が言い返して喧嘩になるのは初めてで
友達なら嫌な事を嫌って言えばわかってくれるはずって言ったら
あんたなんて友達じゃないってあの子が叫んで……それ、から……
ああ、なんてこと……わたし、こんなつもりじゃ……
こんなのって、すごく……すごく……」


ニィ



「すごく楽しかった」

556新『バーデン・バーデン』:2015/07/20(月) 02:07:04
「でも『いけない』、こういうのって『だめなこと』、だから、落ち着かなくちゃ……
でも、でもでもでも、すごく、楽しい。もうこれで無為な事をしなくてすむ、
無為な話を聞かなくてすむ、ああ、なんて楽しいの」

血が出ている手の甲をかきむしりながら、
女はなおもぶつぶつと呟き続け、そして、暗い空を仰いで、
「何て素敵な星空!」と叫んだ。

夜の空は暗く、雲で月星などほとんど見えない。

「ああ、落ち着かなくちゃ、落ち着かなくちゃ、でも、だって、どうしよう……
ああ……」

女はもう一度繰り返すと、夜の中へと歩いていき、そして、見えなくなった。

557葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/07/21(火) 09:32:49

      チリンチリーン

……『水溜(みずたまり)さん』への野菜配達も、随分慣れた。

道は覚えたし、はじめは不審がられたが、今では受け入れられている。お菓子を出されることもある。

    キコキコ

なだらかな道を、店の自転車をこいで帰る。
今日は真夏日。

           ジリジリ

「暑いなあ……」

黒いワンピースの上に緑のエプロンを着けた格好は、さすがに、暑い。

(もっと薄着、しようかな……でもな……)

558東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2015/07/21(火) 12:29:49
>>557

(…よいよ、あっついのう)

学生らしく、半袖のワイシャツにスラックスの姿での帰途、見かけた駄菓子屋に寄っている。

「ばあちゃん、ラムネ一つくれ」

 「あいよ」

ポケットから財布を取り出し、金を払う。
そして再びポケットにしまおうとしたところで、遠くから道を走ってくる自転車に気付いた。
その漕ぎ手が、見知った少女であったことも。

「あいつは…」「葉鳥ィッ!」

東雲のガタイに相応しい大きな声で、呼びかける。

559葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/07/21(火) 13:04:27
>>558

自分を呼ぶ声が聞こえた。

          ビクッ

(声、大きいな……誰だろう? 私のこと、葉鳥って呼ぶ人って――)

「……あっ……」

         グイッ

    キキーッ!

危なげなくブレーキ。東雲から少し離れたところで、止まる。

「……東雲、さん。」

ロードバイクではなく、ママチャリ。
黒衣はそのままだが、緑のエプロン。

「あの、お久しぶり、です。」

         スタッ

自転車から降り、ややまごまごとした様子で頭を下げる穂風。

560東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2015/07/21(火) 13:50:49
>>559

駄菓子屋の老婆に礼を言ってラムネを受け取ると、東雲は穂風へと向き直った。

「久しぶりだな」「…ん?」

挨拶を交わす。と、少女の乗り物や、服装が以前見た時のそれと明らかに変わっていることが分かった。

「お前のその格好…もしかしてバイトが見つかったか?」

561葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/07/21(火) 15:40:05
>>560

「……! は、はい。そうなんです。えへ……あっ、ええと……」

エプロンの端をつまみ、少し持ち上げる。

「八百屋さん、で。」

色は野菜をイメージしているのだろうか。

『トマト』を除いて野菜っぽい印象の薄いカラーリングの穂風だが、これを着けているとそれっぽく見える(のではないか?)

「その、働かせてもらってます。
 お野菜の勉強、も……少しずつ。」

旬の野菜はずいぶん覚えた。

「……あ、その。東雲、さんは、何か……変わったこと、とか……」

         グイッ

         「ぃしょっ……と。」

      ガタン

「……こととか、その、ありましたか?」

自分はまあ順調だが、相手はどうだろう。
自転車を道の端に止めつつ、聞く。

562東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2015/07/21(火) 17:05:00
>>561

「八百屋か。いいんじゃねーか」「スイカみてーだし、似合ってんぞ」

薄紅色の頭髪と、緑色のエプロンの合わせ技を見てそう思う。
なお当のスイカは見方によっては野菜なのだが、青果市場の取り扱いでは果物のようだ。
もちろん東雲にそんな詳しいことは分かっていないが。

>「……あ、その。東雲、さんは、何か……変わったこと、とか……」

>         「ぃしょっ……と。」

>「……こととか、その、ありましたか?」

「・・・・・」

変わったこと、で言えば間違いなく『アリーナ』で強者と見えたことだろう。
刃物を持った相手と、命を賭けた戦いに赴いたあの時の記憶は、今でも鮮明に焼き付いている。
だが、それはこの少女に伝えるべきではないし、そもそも『スタンド』を知らない彼女に伝えても何の意味もないだろう。

「…まあ…何もねぇな」

故に、少し沈黙を続けた後に、明後日の方向を向いて呟く。東雲は、ウソをつくのは下手くそのようだ。
頭をガリガリと掻くと、駄菓子屋の老婆へと振り向いた。そして100円玉をもう一つ渡す。

「ばあちゃん、もう一本くれ」

 「はいはい」

「バイトが見つかった祝いだ、飲めよ」

引き換えに出された瓶容器のラムネを受け取り、穂風の方へと突き出した。

563葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/07/21(火) 19:41:43
>>562

「す、すいか……ですか。」

(喜んでいいのかな……
 ……でも、似合ってるって、言ってくれてる。)

「……えへ、ありがとうございます。」

西瓜にしては種(黒)が多過ぎるが、なるほどカラーリングは近い。

      ・・・・そして。

「あ……え、ええと。
 その、そんな、ものですよね。」

(…………何か、言いにくいこと、なのかもしれない。)

嘘をついてるとはわかっても、その中身まではわからないし、分かる必要もあるまい。

「すみません、その、変なこと聞いて。
 ……あっ、ありがとう、ございます。」

ラムネを受け取る……が。
案の定、困った。

        ギリリ…

(……? 蓋、捻っても開かない……というか、びくともしない……? 形も、なんだか変、だし……)

(コルク、でもない……ワインの瓶とも、違う……?)

「……あ、あの。
 これ、どうやったら……」

おずおずと瓶の蓋を東雲に向ける。
彼は飲んでるのだし、彼なら分かるのだろうと判断した。

564東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2015/07/21(火) 21:20:56
>>563

>「……あ、あの。
> これ、どうやったら……」

「お前は期待を裏切らねぇなぁ」

にやにやと口元を歪めて、頷く東雲。どうやら穂風の返答は予想の内だったらしい。
就職祝いというのは本当だろうが、この話題を変えるとい狙いもあったのかもしれない。

自分の手元にある一本を、側にある年季の入った木製テーブルに置く。
そしてシールを剥がし、中のキャップから輪っかを外して、凸部分の玉押しを作る。

「そしてこの部分を口の所に当てて…こう、だ」

玉押しをエー玉に当て、押し込む。耳触りのいい音と共にエー玉が落ち、
中のラムネが空気に触れ、シュワッと泡が口の方へと登ってきた。

「すぐに飲んでもいいけどよ、炭酸に強くなけりゃしばらく収まるまで待った方がいいぜ」

その言葉通り、少し時間をおいて手を離すと、勢いの弱まったラムネは瓶の中に留まる。
そうしてようやく瓶を傾け、ラムネを煽るように飲んだ。

565葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/07/21(火) 22:21:27
>>564

「…………」

         ムッ

(からかわれた……)

やや憤りを感じなくもない――が、善意からのこと。

「い、意地悪……」

そう返しつつ、彼の手本を見る。
……なんとも妙な仕掛けだな、と穂風は思った。だが。

(……楽しそう。)

              ・・・・そして。

「……こう、でしょうかっ!」

エイ、とばかりに力を加える穂風。

          ググ

                 カコン!

「わっ――」

                     ジュワワワワワァーーッ

            「!? わっ、あ……」

随分と泡が漏れ出して困った穂風。
しかし、それもしばらくしたら治まっていく。

「……これくらい、かな……」

そうして、瓶を手に取って、不慣れな様子でそれを傾ける。

        ゴクゴク

「……ぷはっ。」

             「…………美味しい、です。」

からかわれたのはともかく、これは嬉しい贈り物になった。

566東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2015/07/21(火) 22:51:10
>>565

「悪い、ついお前の反応が面白くて」

年の離れた従兄弟がいたら、こんな感じなのだろうか。
もっとも身長的には少し離れていても(東雲はもちろん高いが、葉鳥も意外と高い)、実際に年はほぼ離れていないが。

>「わっ――」

>                     ジュワワワワワァーーッ

>            「!? わっ、あ……」

「意外と押さえこまねぇと出てくるからな」

どことなく、微笑ましく開栓する様子を眺める。

>「……ぷはっ。」

>             「…………美味しい、です。」

「だろ?夏祭りとかでも売ってるぞ」「個人的には夏といったらこいつだな」

穂風の言葉に満足げに頷き、自分もラムネを口にして、そしてふと気付く。

「そういや葉鳥の方は、俺んとこよりも早くに学校終わったんだな」
「それとももう夏休みなのか?」

567葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/07/21(火) 23:04:20
>>566

「……わ、私は面白くない……です。」

ややむくれた様子で言う。
もちろん、本気で怒ってはいないし――

                ゴク
                   ゴク

「……」

(甘くて、涼しい……)

やっぱり、この味を教えてくれたのが、ありがたい。

「夏――そう、ですね。
 これからは、毎年……これ、飲みます。」

             ゴク

そんな穂風の満足げな表情は、東雲が切り出した話題で少し変わる。
……学校。穂風の、次なる課題。

「あ、う……その、ええと。」

言葉に困り、もごもごと口ごもる穂風。

568東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2015/07/21(火) 23:18:01
>>567

「…ん?」

口ごもる穂風に対して、眉根をひそめる東雲。
だが、すぐに得心がいったとばかりに頷いてみせた。

「ああ、サボったのか。まあたまにサボるのはいいが、それでバイトってのはあまり感心できねーな」
「親が金を払って学校に行かせてもらってんだ、その時間を自分が金を稼ぐのに使うってのはな」

勘違いをして、講釈を垂れる東雲。
葉鳥がその気になれば、うまく誤魔化せることもできるだろう。もちろんそうしないこともできる。

569葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/07/21(火) 23:38:07
>>568

「う……」

(そうじゃないんだけど……でも、わざわざ説明するのもなあ……)

       モゴ

口を閉じ、少し俯く穂風。

          ゴク

ラムネで、乾く口を潤す。

「……その、すみません。」

謝罪が口をついて出た。

            「あの……」

       「その。」

穂風は迷っていた。
本当のことを言ってはいけない理由もない――が。

(東雲さん、だって……言わないことはあるんだし……
 言いにくいことは、言わない方が、いいのかも……しれない。)

「……その……
 …………サボっては、ないです。」

そういう考えから穂風は妥協案に走った。
嘘ではないが、完全な真実でもない――というやつだ。

……別に嘘をつくのは初めてでもないが、そこはかとない罪悪感を覚える。

570東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2015/07/21(火) 23:48:40
>>569


>「……その……
> …………サボっては、ないです。」

『ピタリ』

「・・・・・」

穂風の言葉に、さすがに察しの悪い東雲でも気付いたようだ。
思わず瓶を動かす手を止め、少女を見る。
少なくとも、葉鳥穂風には何か常ならざる事情があることに。

「言いたくねーことならいい」
「………そうか。勘違いして、すまん」

穂風に向けて、非礼を詫びて頭を下げる。
興味がないわけではない、むしろ何か問題を抱えているならどうにかしたいぐらいの気持ちはある。
だが、心の機微に疎い自分が迂闊に踏み込んでいいものか、迷うところはある。

571葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/07/22(水) 00:04:41
>>570

「あ、う、そんな……」

          「謝る事じゃ、ない……です。」


・・・・穂風はそれ以上、何も言えない。

東雲を信頼しないわけではない。
そもそもの話なのだ。

(私、ただ、学校に行ってないだけだしな……
 お仕事、慣れたら……行くつもり、だし……)

(東雲さんも、お仕事しながら、学校に行ってるんだし……)

穂風は、現状を自分で解決する気でいる。
相談するような問題、だとも思っていない。

      「あのっ……」

ゆえに。

「……あの、その……
 ……東雲さん、学校は……」

            「……楽しい、ですか?」

聞きたいことがあるとしたら、それだけだった。

572東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2015/07/22(水) 00:36:42
>>571

>「……あの、その……
> ……東雲さん、学校は……」

>            「……楽しい、ですか?」

穂風のその言葉で、やはり彼女は学校に行っていないことが分かる。
だが、その理由は何なのだろう?
親が早くに他界し、自分の生活費を稼ぐだけで精一杯か。
または学校でいじめられて、もう自分の足で行くことはできなくなってしまったか。

「………」「学校は楽しいか、か」

ここでどんな言葉を穂風にかけてやるのが正解なのか、東雲には分からない。
だから、ただ単純に、今思っていることを話すことにした。

「わしゃあもっと西の方の出身でな。つい最近こっちに越してきたんじゃ」
「学校には様々な連中がおる。中にゃあ他人を見下して楽しむようなモンもな」
「そいつらに転校早々、わしは方言のことで因縁つけられとった。
 初めは無視しとったんじゃが、とうとう我慢ならんでな。
 ケンカになっちまったんじゃ。…最初に手ぇ出してきたんは向こうじゃがのう」

「そんでそっからは、ケンカっ早い連中に目ぇつけられてな。
 それを買っとるうちに、もうクラスん連中からは話しかけられんようになった」
「早い話が、浮いちまったんじゃのう」

「じゃが、それでもわしは学校へいっちょる」

「勉強が大事なのも理由じゃが、何より地元の小学校や中学校じゃあ
 かけがえのない友人がおるからのう。それは学校以外ではなかなか手に入らん財産じゃ」
「そんな奴らと過ごす学校は、ぶち楽しかったけぇ」

その部分だけは、何かを思い返すように腕を組んで微笑む。

「………お前は一度もいったことないんか?」

573葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/07/22(水) 00:52:22
>>572

「……私、は。」

「ずっと、お家で、勉強してました。
 それが私には、普通だったから……
 だから……学校は、行ったこと、ない……です。」

東雲は事実を、隠さずに話してくれた。
ならば穂風も、そうするべきだと思った。

(嫌な事も、やっぱり、たくさんあるかもしれない……
 でも……かけがえのない、財産。『宝もの』……
 楽しいことだけじゃあなくても、そういうものが――)

              「見つかるの、かな……私にも。」

穂風には――かけがえのない宝ものは、まだ、ない。
それは学校にあるのかも、しれないと思った。

               楽しいだけの楽園じゃあないと知った。
               それでも、学校という『きらきら』に憧れる。

(やっぱり、学校……行かなきゃ、駄目だ……!)

「……あ、そ、その、すみません。
 変な事、聞いて……一人で、納得、しちゃって……」

――少し自分の世界にいた。
東雲の顔を見て、もごもごと弁明する。

574東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2015/07/22(水) 01:14:37
>>573

>「……私、は。」

>「ずっと、お家で、勉強してました。
> それが私には、普通だったから……
> だから……学校は、行ったこと、ない……です。」

「…そういうことか」

家庭環境が、そういう場所だったということか。
想像していたよりはまだ救いのある環境に、少し胸を撫で下ろす。
しかし、それが今や自立して、自分で働きに出ている。この分だと、住まいも自分で見つけているのだろう。
改めて、この葉鳥穂風という人間の強さに敬意を感じる。

>              「見つかるの、かな……私にも。」

「お前ならきっと見つけられる。わしが保証しちゃるけぇ」

穂風の独り言に、深く頷く。
仮に自分のように誰かに目を付けられることがあっても、穂風ほどの強さがあれば、折れたりはすまい。

「少しでもお前の参考になったんならそれでえぇ」
「…と、バイトの途中じゃったな。長い間引き止めてすまんかったのぉ」

575葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/07/22(水) 01:27:28
>>574

「……はいっ! ありがとう、ございます。
 …………その。引き止めてくれて、よかった……です。」

今日という日は。

                サン サン

とても暑い日で。
……穂風に、とても大きなものが齎された日だ。

「それでは、ええと……
 私は、そろそろ、お店に……戻ります。」

            「……っと。」
 
        ガチャ

             ズイッ

自転車のスタンドを上げて、サドルに跨る。

「あの……商店街の、かとう青果店……というお店、です。
 その、東雲さんも、もしよかったら、今度、いらしてくださいね。」

「では……お元気で。
 また、どこか……で!」

              キコ

                   キコ

……そうして、この場から離れていった。

576東雲 忍『ザイオン・トレイン』:2015/07/22(水) 01:42:49
>>575

「あぁ。葉鳥が元気に働いとる姿、見にいっちゃるけぇ」「また今度な」

かとう青果店という名前をしっかりと覚え、去りゆく穂風の背中に手を振る。
またどこかで会う時は、彼女も無事に学校へと通えていて。そして、大切な友人に囲まれていたなら何よりだろう。

「…わしももう少し柔軟にならんとなぁ」

穂風にああも言った手前、自分とてこの状況に停滞しているのは駄目だ。
半ば諦めかけていた、今までの学校生活。それを取り戻すために、自分からも歩み寄ろう。
そう決意しながら、ラムネ瓶を片手に路地を歩いていく。
穂風に何か大きなものがもたらされたように、東雲にも確実な変化が起きた、暑い日の出来事であった。

577カグチ『アヴァドン』:2015/07/23(木) 23:58:26
「(ダメじゃあないか、『燃え尽きる』なよ。
  まだだ、まだ『焼き足りない』……)」


           「(『焦土』から発展した都市はいくらでもある。
             『戦火』から生まれる『叡智』は数尽きない)」



      「そうだ、『獲物』を探せ」


青い作業着に身を包んだ『中年』の男。
脱色したバサバサの髪に痩けた頬、
『人畜無害』そうな男の目は『燃えている』。

大きなディバッグを肩に掛け、周囲の建造物に目を光らせている。
ここは『駅』と『住宅街』の狭間、建物ならば星の数ほどある。
『古く』、『汚らわしく』、それでも尚のこと『しぶとく』生き残った建物だ。

578カグチ『アヴァドン』:2015/07/26(日) 02:33:14
>>577
『獲物』は見つからない。
『裏路地』も探そうと決め、本日は帰路へ向かった。

579葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/07/27(月) 00:02:01

          チリンチリン

「…………」

         「……ふぅ……」

(30℃……当たり前みたいに、越えるなあ……夏だもんな……)


無意味に二度ほどベルを鳴らし、住宅街を進む赤いロードバイク。

         ジリ…ジリ…

それをこぐのは片目を前髪に隠した、赤色の髪の少女。
黒いマントのような衣装に身を包み、大きな黒いリボンを着けた少女だ。

(…………学校、こっちで合ってたっけ?
 まだ、通えるって決まったわけでも……ない、けど……)

今日向かう先は八百屋でも、自宅でもない。
この町の学校……『私立秋映学園』だ。目的があるから。

580葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/07/28(火) 23:39:33

キコ キコ

「……」 

       ハァー ハァー

(足が痛くなってきたな……)

「おかしい……な……」

             ピタ

15分ほど、暑さに耐えつつこいだ。

だが――いっこうに、学び舎らしきものは見当たらない。
これはいかなることだろう。


「……あっ!」

(間違えた……あの道、ひ、左……)

         「…………」

途方に暮れる穂風。

       シュタ

ロードバイクから降り、道の端に寄せる。
近くには自販機があった。

(……飲み物でも、買おうかな……)

581フェール『マシーン・ドラム』:2015/07/28(火) 23:51:37
>>580

 生憎だが、この自販機は現在使用してる最中だ……買えねー ぜ

と、そんな馬鹿な話がある筈もなし。一人橙色に近い白髪が少し生えた
身長180前後の男が暑さにうんざりした様子で自販機の前で何やら
スポーツ飲料水を一気飲みしてる。

  ゴキュゴキュゴキュゴキュ……プハァ!

 「……」

 チャリン。

 winwinwinwinwin
 
 ……ポチ。

 !! pipopopipopopipopo!!!

 …! 当たった! 自販機のスロットが見事に揃い二本目を
見事に無料で手に入れる事に成功した。

 「♪ ……?」

 少し目を細め、飲料水を選ぼうとした時。ようやく葉鳥に気付いた。

 「…………」

 暫し、貴方の顔をじっとフェールは見つめる。

582葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/07/28(火) 23:59:03
>>581

穂風は自販機の方を向いていた。

(うわ、すごい飲みっぷり……!)

 !! pipopopipopopipopo!!!


「わ、あ、当たり――」

(初めて、見た……!
  ラッキー、だなあ……いいな。)

             「……あ。」

だから、そちらがこちらを見ると、目が合うのだった。

「う……」

           ガチャ

じろじろ見た上にリアクションまでして、なんとなーく、気まずい感じがする穂風。
ともかく、赤いロードバイクをその場に留めつつ。

「え、ええと、その……どうも……です。
   ……? あ、あの、えっと、な、何か……その……」

(じ、じろじろ見たの、怒ってるのかな……それとも……)

凝視されていることから、そう思った。なので、やや申し訳なさげに言う。

583フェール『マシーン・ドラム』:2015/07/29(水) 00:07:36
>>582

 一本目。選んだのは『アクエリアス』だ。

二本目は未だ選ぶ最中、そして一般的なロードバイクを漕いできたらしい
少女は、髪の毛が長い所為で分かり辛いが、かなり披露してる気がする。

頭上を見上げる。かなり燦々と太陽が照らしてる。30度はしそうな真夏日だ
当然ながら暑いだろう……。

 「……」

 自販機に向き直る。押すのは『体に優しいイオン桃水』と言う
ペットボトルに入ったものだ。

 ポチ……ゴトン。

すぐにペットボトルが自販機の下から落ちる。それを取り出し片手に持ち
少女へ近寄る。

 ……上げる。

 そう、ペットボトルを差し出しつつ、もう一つの片腕で額を軽く拭いながら
言葉なく雰囲気で渡す事にする。

 こんな熱射病にでもなりそうな気温を共有する同士だ。
運良く飲めるサービス分、脱水でも起こしかねない少女に上げても
別に罰は起きないだろう……。

 ―じゃ。

 そう、ニュアンスで片手だけ上に掲げ去る事にする。
お礼が欲しいとか、下心は全く無い。ただ、見てて暑そうな人がいれば助ける。
 それが当然だとフェールは思ってるだけだ。

584葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/07/29(水) 00:17:39
>>583

「……あ、あの……」

やや萎縮気味に、様子を伺う穂風。
すると自販機に向き直るフェール。

      (あ、う……む、無視されてる。
       ……でも、それが普通なのかな。)

別に用事もないし、年頃も遠そうだし――
 ポチ……ゴトン。

             ・ ・ ・しかし。

「えっ……あ、え?」

               「く、くれるんです……か?」

差し出された『体に優しいイオン桃水』……つまり、そういうことなのだろう。
……おずおずと、それを受け取った。

「あ、え、えっと、ありがとう……ございますっ!」

汗を散らすような勢いで、頭を下げる。
これは実際、嬉しいプレゼントだった。

             「……あ、あっ、あの……っ……」

     「なにか、お、お礼とか、その……?」

去りゆくフェールの背中に、慌てて声をかける。
もっとも――彼はそれをも、固辞するのかもしれないけれど。

585フェール『マシーン・ドラム』:2015/07/29(水) 00:27:42
>>584

 >「なにか、お、お礼とか、その……?」

 「……」

 その言葉に、歩くのを止めて小さな少女、葉鳥を見る。
まぁ、小さい、とは思うものの身長は160前後、この日本と言う国だと
長身に入る部類だろう。それはともかく

 スッ…

 いつものコミュニケーションで使用する携帯を取り出し。文字を打つ
  
 pipipipi……

 『お礼とか、そう言うのはいりません。
あくまで、暑そうと思ったが故の私の親切の押しつけです。
私の事は些細な幸運を授けた人と、忘れてください』

 そう、メール文を見せて、削除のボタンを押す。
これでいい、生まれつき『スタンド』を持った男だ。
 付き合う人間は極力少ないほうがいい。

586葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/07/29(水) 00:39:04
>>585

 pipipipi……


「……?」

なぜ携帯を――と思った穂風だったが、すぐわかった。
つまり、それが彼のコミュニケーション。

      「そう……です、か。」

無理して礼することもない、と穂風は知っている。

(……なんで、メールなんだろう?
 しゃべるの、苦手……なのかな。私と、同じ……)

シンパシーのようなものを感じた。
 
         ・・・・大間違いだとも、知らずに。

「あの、その……」

(せ、せめて、お礼はいらないって言っても……)

            キュ キュ

ボトルのふたを開ける。
そして――

                     ゴク   ゴク  ゴク

「ぷはっ――」

「……あの、えっと。美味しい、です。」

それだけ、伝えておく。
そして去るならば、引き止めたりはしないのだ。穂風も、道の途中だから。

(……もうちょっとだけ、がんばろう。
 道は、誰かに聞いて、そうすれば……っ。)

水分でリフレッシュしたことは、穂風にとって大きな助けとなった。
フェールには、心の中で、また、感謝しよう。

587フェール『マシーン・ドラム』:2015/07/29(水) 00:57:19
>>586

>ぷはっ――
>……あの、えっと。美味しい、です。

 別にお礼など言わなくていい。ただ単に 自分が見ていられなかっただけだ。

人は、きっと俺のしてる事を第三者が見れば、良い奴だ 気取った奴だ。そう言うかも知れない。
 そう思うと……どうしようもなく遣る瀬無く胸の中が虚空になる気がした。 
 
 「……」

 葉鳥へと近づく、その顔は険しい。

 吐息が掛かる程度までの距離、そこまで近づき……。

 ―スッ。

 無言で葉鳥に許可を得ず首筋に手の甲を当てる。

(……熱い)

 ボトルの蓋を開いて、一気飲みしてる時点でかなり『疲弊』が見て取れた。
そして、帽子も何も日差しを遮るものなくロードバイクなんてもので
こんな炎天下を走っていたら遅かれ早かれ自覚がなくても日射病になりつつある。

 「……」

 「…………」

 ―ガシガシガシ

軽く片手で頭を掻き毟ってから、持っていた提げ鞄からタオルを取り出す。

 ―ドポドポドポドポ
そのタオルに一本目で買った『アクエリアス』にタオルを濡らす。

 そして問答無用で葉鳥の首に巻き付ける。ここまですれば
あと腐れなく別れられる。去った後に途中で倒れると言う可能性も低いだろう。

 ただ単に、見ていて辛そうなのが嫌だっただけ。別に葉鳥が心配だったからじゃない。
これは只のフェールのエゴだ。そのエゴを貫こうとしているだけだ。

 携帯を取り出し、少し乱暴にボタンを連続で押す。

 pipipipi

 『目的地は近いのか? 遠いなら何処かで涼め
倒れるぞ、そんな疲れた体で自転車を漕いでも』

 そう、メール文で打って忠告する。あくまでこれは『お節介』だ。
親切とか善意じゃない。

588葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/07/29(水) 01:10:21
>>587

          ビクッ……!!

近づいてくる男に、思わず、身構えてしまう穂風。
なにせ、そう、近すぎるから。

「え、あの――」

 ―スッ。

               「わっ、な……っ!?」

首筋に触れられ、思わず、飛びのく。

(な、なに? 何でいきなり触って……)

 ―ドポドポドポドポ

「……な、なにして。」

           「ぅぐっ……」

       ――と、訳も分からないうちに首に巻かれたタオル。

「あ、つめた――」

「……こ、これ、良いん……です、か。
 貴方のタオル、です……よね、の、飲み物まで……」

 pipipipi

         (あ、また……)
     
困惑した様子で、打ちこまれた文字を見る穂風。
……その内容は、あまりにも。

(親切、過ぎる……よ。)

「……はいっ。そう、します。」

難しい気持ちで、頭を下げる。
礼を返したいのに。されてばっかりで何だか、居心地が悪い……なんて、わがままか?

589フェール『マシーン・ドラム』:2015/07/29(水) 19:02:22
>>588


「……はいっ。そう、します。」

頭を下げる少女。困惑した顔や、狼狽えてる様子を見て漠然と
あぁ、これは引かれただろうなぁと考える。
 実際、自分のしてる事は過剰な親切の押しつけだ。代償もない善悪の
行いなど、どちらであれ普通では無いだろう、と俺は思う。
 それでもしなくては、しなければならないと思ってしまう。余りにも自分はエゴイストだ。

 pi pi pi

 『それじゃあ気を付けて』
 
 メール文で短く打ち込み、秋映学園へ向かう。

 真夏日だ。だけれでも照り付ける太陽より胸抱く想いは苦しく
とても凍えるように固いものが心臓の隣に据え置かれる。

590葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/07/29(水) 23:10:58
>>589

穂風にはフェールの思いなど分からない。
顔色をうかがうように、少しだけその姿を見ていたが――


 pi pi pi


「あ……は、はい。
 その、ええと、貴方も……お気をつけて。」

            ペコ

頭を下げて、去るのを見送る。

        (……なん、だろう。
         すごく、いい人……だったんだろうけれど……)

思うところはあるが――別にフェールが悪いことはない。
穂風の中で、整理のつかない気持ちがある、というだけで。

              ・ ・ ・

10分ほど、自販機の前で休んだ。

「……よしっ。」

再び、自転車にまたがる。
そして、『学園』に向かって、再び自転車をこぎ始めた。

591我堂 蘭『マーチャンダイス』:2015/07/30(木) 00:39:06
――7月某日、午後。

一人の少女がメインストリートの外れにある公園内の片隅で、
キャリーバッグを空けてゴソゴソと中身を漁っている。
年の頃は10歳ほどだろうか。
頭に三角巾を被り、左の頬に大きな絆創膏を貼り付けている。


「そういえば夏になったから」
「『携帯型プロペラヘッド』がまた使えるようになるわね」
「在庫が余ってるんで早めに売り出そうかしら」

そう言いながら少女は手を覗きこむ。
大半の人間からは、何も持たずに空の手を凝視しているようにしか見えないだろうが、
ある一部の『特別な人間』には、少女の手の中に
小さな『風車』が1つ、握られているのが見えるだろう。
そして、その『風車』が実体の無い『スタンド』であることにも、気がつくに違いない。

592久々宮 縁組『ザ・プレイヤー』:2015/07/30(木) 01:23:56
>>591
「ふむっ……」

裾の短い水干を着た、ツーサイドアップの少女が、紙切れを片手に周囲を見回す。
(ttp://image01w.seesaawiki.jp/e/4/ebatan4/a238eea1.jpg)

「『方角:東方に吉あり』『探し物:人々の集う場所に行くべし』『色:白色のものを身に着けるとよい』。
……というか神社から東で人が集まるってこれ漠然としすぎですね…」
《のう巫女や……今日はもう帰って涼まぬか………?》

 グニャア

ただでさえ冒涜的な像が、陽炎のようにぐねぐねした。

「ここまで来たのに!というか神様でも夏バテするんですね」
《仕方あるまい。『悪霊』や『守護霊』の力は届かずとも、この世のことわりそのものまでは儂にもどうにもならぬ》


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