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【場】砂浜

1ZAKI:2015/01/01(木) 00:41:57

倉庫街の西、H湖の入口にほど近い砂浜地帯。
以前殺人事件が起きた『いわくつきの場所』だが、今は落ち着きを取り戻している。
シーズン中には海の家が栄え、沖では沈没船が静かに時を過ごす。
治安は悪くもなく、ランニングにやってくる一般人も多く見られるが、
『歩くスイカ』や『突然変異クラゲ』、『人を操る影』など不思議な情報も多く、
『黄金町のミステリースポット』と化しているきらいもある。


―┘          ┌┘
―┐ H湖     ┌┘   ┌┐   住  宅  街   
  │      ┌┘   .┌ ..│...      ‖
   ┐     │    ┌ ┌┘       ‖←メインストリート
   │    │   ┌  │         ‖
    ┐   │  ┌  ┌..       黄金原駅
     │  └─┘┌―      ┏ ━■■━ ━ ━
  ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ┛    ‖←ネオンストリート
       │      └―┐黄金港.. 繁 華 街  
       └┐   ┌――┘       倉庫街
 ─────┘   └◎―――――――――――

561久染 墨彦『インク・フィッシュ』:2015/09/19(土) 19:37:45
>>560

>いや、もとより女性にちょっかいなどかけていない。

 ダウト


 それはともかく……



  ・      「ふむ」

  ・            「ふむ」

  ・    「ふむ……」




  「なッ なんだって―――――― っ!


   まさか涼くんが裏で
   そんなことをしていたなんて………」


 中学生にスカウトさす部活動っていいのか……?
 いやそもそも あんだけ大規模なミスコンが
 まさか『一部活の企画』で動いてたことにビックリだ。


    僕がいつも通ってる『秋映学園』で―――僕のすぐそばで、
    まさしくマンガみたいな世界観の話が展開されているってのに、
    僕は今の今までそれにまったく気づいていなかったなんて! (ショック!)


 鈴元の口から次々と飛びだす壮大なスケールの話に
 ポカーンとあっけにとられていると……突然 急角度!



>「にしても墨彦さん
> エラい稗田さんのこと気にしてはるみたいやけどフアンなん?」


      「っえ」     ドキィ――――――ッ!


>「それとも純粋に好きとか?」


          「ぉっ」    ド ド ドキィ―――――――ッ!



   「………………………」


  胸のあたりをギュッと押さえ、背を丸めて黙りこむ墨彦。
  その顔はさっきよりさらにまっかっかだ。


     「いっ……」

562鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2015/09/19(土) 21:12:15
>>561

>ダウト

いや違う。本当だ。君は何か大きな思い違いをしている。そうだろう?

ともかくとして。
鈴元は解説を終え、結果として久染は驚いた。

「参加者の朱鷺宮さんも金言部の部員なんよ。」

「部長もエラいお人さんよねぇ……」

アレだけの規模を回したのだから。
いや、銀杏羽だけの力ではないだろうが彼女が色々と手を回していただろう。

……鈴元涼は恋を知らない。
また愛についてもよく分かっていない。
しかし他人の顔色については知っている。
久染の反応を見て鈴元はにっと笑っている。

「なるほど。」

「いっ?なに?」

もうちょっと様子を見てみよう。

563久染 墨彦『インク・フィッシュ』:2015/09/19(土) 23:47:35
>>562

  「いっ……」


        「…や、……」


     「その……」


 返す言葉と とるべき感情に迷っているのか、
 うつむいたまま真っ赤な顔で
 しばらく口をパクパクさせる墨彦。


    「……………」


 が、ギュ――――ッ と目を閉じて首をブンブン振る。
 何かの言葉を追い出すように、
 そうして次に顔をあげたときには、頬は赤くないし、
 もう瞳はまっすぐだ。



   「いや…………その……
    僕、そう、」


      「………『ファン』なんだ。『こいひめ』ちゃんの。
       すごく応援してる……」



 墨彦にとって 彼女との関係は、
 とても繊細で大切な何かだ。
 『そーいう言葉』で表したら 終わってしまいそうな……


     「そ……それだけ。ファンだったから、
      いきなり名前が出てちょっとビックリしただけ!」


 僕は彼女となにを約束したのか?
 自分の右手を見つめる……


              キュ

 ………少なくとも、今はまだ。



 「と、とにかく!
  すごいんだね〜〜〜〜ッ その『金言部』の部長さんっていうのは!
  なんだか活動もすごく楽しそうッ!」

 
 と、超強引に話題を変えよーとする墨彦。(オホンオホン)

564鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2015/09/20(日) 01:03:35
>>563

「ふぅん。」     
                「そう。」

鈴元は久染の瞳をじっと見つめる。
まるで中を覗き込むかのように。

「『ただのフアン』なんや。
 まぁ墨彦さんが言うんやたらそうなんやろうね。」

「墨彦さんがそう言うんやったらそうやし
 そう思うんやったらそうやわ。」

「もし違うくても言霊の力で嫌でもそうなるわ。」

追求するつもりない。
ただ久染の行動、言葉、顔、全て見て追求するつもりがなくなった。
少しイジワルな言い方になっているが、『ただのファン』なのだから気にする必要は無い。
そう、久染墨彦は『稗田恋姫の一ファン』だ。それ以上でもそれ以下でもない。
なら心に傷を負うことはない。

「そうそう。ウチの部長はすごいんよぉ。」

久染が変えたいのなら話題を変えよう。

「これからもミスコンみたいなことするんちゃうかなぁ。」

565久染 墨彦『インク・フィッシュ』:2015/09/20(日) 23:59:32
>>564

>「もし違うくても言霊の力で嫌でもそうなるわ。」


     「うっ……」


            「ぐぐ……」


 突きはなすような鈴元の言い方に 一瞬、
 応じ返したい気持ちが喉元までググッと出かかるが、飲みこむ。
 自分が言い出したことだろ……! 突っかかってどーする!


       「…………」


   (でも鈴元をみる目には無意識のうちに
    少しムッとした気持ちが乗っている。)



 「ふ、ふーん……
  なんかあの人が
  すごい人だってのは伝わったよ。
  面白そーな人だね」


   そういえばミスコンのオープニングでも
   鮫を撃ち殺していたな…… (直接的すぎる表現)

   こういうマンガみたいにブッ飛んだキャラクターに
   墨彦はどーも弱いのだった。


 「でも、涼くんはどーしてそんな部活に入ろうと思ったの?
  なんかきっかけが?」

566鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2015/09/21(月) 00:42:43
>>565

久染の目の変化くらいは鈴元にもわかった。
鈴元にとって久染の反応は正直予想外のものであった。
久染は冗談っぽく、喜劇的な人間に見えるがキチンとした人間だと思っていた。
危険な状況にいざという時は自分を置ける人間だと、思っていた。
大切なことを大事に、出来ると思っていた。

(まぁ、別にエエか。喧嘩したいわけやないし。)

そもそも喧嘩は苦手だ。

「そやねぇ。オモロいお人さんやわぁ。」

案外幽霊が苦手だった気がする。

「僕は部長から入らんかっていわれたんよ。
 まぁ、いわれたから入った訳やないけど。」

「僕が入ったらオモロそうっていうてくれたんよぉ。」

「毎日店番とガッコに行くんの繰り返しで退屈しとった僕にそういうてくれた。
 僕はそれがホンマに嬉しゅうて、部長は信頼できるお人さんやって思うて……」

「やから、僕は金言部に入ったんよ。」

心の底からそう思っている。
珍しく本音を語る鈴元である。その顔は爽やかで、笑顔は晴れやかであった。

                       ソガイ
「それに、鈴元家家訓『進まぬならば背向に終わりの影あり。』」

「進めるんやったら進みたかったんよ。」

567久染 墨彦『インク・フィッシュ』:2015/09/21(月) 01:33:29
>>566

 墨彦は何も言わなかった。

                                  . . .
 ことばにすることで失われてしまう 繊細な揺らめきや あわいが
 この世にはあると墨彦は思っているからだ。


  (そしてそれを ことば以外の方法で
   この世界になんとか縫い止めようとする試みが
   芸術であり描くという行動だと墨彦は信じている)


 けれど、
  . .. .. . .. . .. .. . . ... . ..
 ことばにしなかったことで失われてしまうもの というのもまた、
 この世にはあるのだろう……墨彦はそれに気づけない。
 ……さておき。



 「………
  ふんふん」



        「………」



 「…………
  そっかァ」


   「なんか……」


 なんとなく、
 なんとな〜〜〜〜くだけど、
 ちょっぴり分かった気がする…………

 金言部というのが……
 その『部長』という人が、涼くんにとってどういう存在なのか。


   「フフ。『進まぬならば』……かあ。
    いい言葉。僕も覚えておこっと」


 そういって楽しげに語る鈴元の顔を
 しばらく楽しげに眺める墨彦だったが、
 とつぜん吹いた秋の潮風を浴び、肩を抱いて身震いをする。


「うぶるるるるるる。
 な、なんかちょっと寒くなってきたかも……」

568鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2015/09/21(月) 02:21:57
>>567

鈴元涼はただ久染を見つめていた。

言葉を必要とせず、会話できるような
心のみで通じ合える、それが価値のあるものだと思っているし教えられた。

それは思いやりや心遣いであり、他人について深く知っていることであると思っている。
しかし、子供である自分には言葉にせねば分からぬことのほうが多いことも知っている。

鈴元涼と久染墨彦は違う。
同じ部分はあっても違う部分がある。
それがどういう部分なのか、鈴元は知らない。

「なんよぉ。もう。」

意味深な風に呟く久染に唇を尖らせる鈴元。

「『エエ言葉』やろ?家訓やもん。」

そういう問題ではないが鈴元の家への誇りがそういわせるのだろうか。
……そうこうしている内に久染が体を震わせる。

「あぁ、すんません。長話してもうたね。
 風邪引いたらアカンし、そろそろ帰ろか?」

そういって立ち上がろうとした瞬間、鈴元の動きが止まる。

「ねぇ。墨彦さん。もし、もしよかったらなんやけどぉ……」

「『金言部に入らへん?』」

「部長のことやしこれから色んなことする思うねん。
 そんな時、墨彦さんおってくれたらもっとオモロなる思うんよ。」

まっすぐな瞳で久染を見つめる。

「お願いできんかな?きっと損はせんと思う。漫画みたいにオモロくてすごいことが起きるはずやから。」

もしかしたら、面白い出来事も呼び起こすかもしれない。

569久染 墨彦『インク・フィッシュ』:2015/09/21(月) 23:31:25
>>568

 「えっへっへっへ……………… へっくし!」  ブミャー


 唇を尖らせる鈴元に
 思わせぶりなニヤ顔でこたえる墨彦だったが、くしゃみ。


「うぶるる、かたじけない………
 なんかついつい いっぱい話しちゃったね」


 二の腕をごしごし擦りつつ
 友人が立ち上がるのを待つ。


 が、彼から返ってきたのは
 意外な誘い文句だった。
 
 

  「………」



      「………」



   「涼くんがそこまで言うんだから、
    ほんとにほんとに素敵なところなんだね――」


    その瞳がなによりの、だ。
    墨彦も正面から見かえして応える。


  「わかった。『入るよ』」



      「………………
       ………………
       って言いたいところなんだけど……


       僕 『漫研』に入っちゃってるんだよね、
       実はすでに……」


    タハハ、と申し訳なさそーな笑いを漏らして
    頬をかく墨彦。



    「えーっと……
     『掛け持ち』でもいいのかな?」

570鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2015/09/22(火) 00:21:28
>>569

「あぁ、大丈夫?寒かったらそれ使い。」

それとは先程渡したネックウォーマーだ。
まぁ暖かいだろう。

「ホンマ?」
「ホンマに?」

「おおきにぃ。」

それは満面の笑みであった。
喜色満面。今にも久染に抱きつきそうで、鈴元の心から喜びが発露しているのだ。
本心を隠し、繕われた外面と
掴めない言葉で生き続けた男の珍しく見せる本心だった。

「兼部も全然大丈夫。」

「僕らはいつでも歓迎するよぉ。」

右手を差し出した。
約束の握手だ。友情の握手だ。
仲間を歓迎している握手だ。

「墨彦さん。行こか。」

571久染 墨彦『インク・フィッシュ』:2015/09/22(火) 00:46:44
>>570

 「う、うん」


  「うん」


   「………」


 「そ、そんなに喜ばれるとこっちが
  照れちゃうなァ〜〜〜……」


 後頭部をポリポリ掻きつつ、
 デヘヘと 正直に照れ笑い。

 けれど珍しい――友人の満面の笑顔を見れて、
 今は悪くない気分だ。

  これだけ笑顔になってもらえただけでも
  YESと言った価値はある……かな?
 


 もらったばかりのプレゼントを、
 さっそく頭からかぶりつつ。


 「でへへ………
  あったかァ〜〜〜〜い」


    「超あったかいよ涼くん!」


 頬までネックウォーマーに
 うずめてホクホク顔だ。

 そして差し出された鈴元の手に、
 こちらも力強く右手を出して応じる。


 「こちらこそ。
  いつもありがとう。

  そして、これからもよろしくね、涼くん」


      ギュ


 「〜〜〜〜〜よしっ!

  せっかくだから涼くん、このままウチくる?
  ごはん食べて行きなよ――――」


 波の音を背に、墨彦は歩き出していく。
 友人とふたり、肩を並べ、同じ歩幅で――

572鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2015/09/22(火) 01:14:27
>>571

「うふふ。なんでよぉ。」

その顔は徐々に普段通りの笑顔に戻っていく。
本心を見せるのは一瞬だ。

「暖かい?よかったわぁ。」

「うん。これからもよろしゅうね。」

久染と並んで歩く。
二人の影が歩いていく。
二人の行く先には何があるのだろうか。

「ご飯かぁ。墨彦さんのご両親にご挨拶せんとねぇ。」

鈴元涼→『ネックウォーマーを渡す』

久染墨彦→『金言部 入部』

573錏葉九郎『ザ・シグマ』:2015/09/27(日) 23:09:28
「おー」

「いい流木」

薪を拾いにきた。
砂浜に打ち上げられた流木は薪に良いと何かの本で読んだのだ。
そういうわけで流木を拾っている。
小さいのも大きいのもある。運べないような

  「フン!」

    ベキ。

人の胴体ほどあるようなやつは叩き割って、細かくして、どでかいカゴに入れるのだ。

574立花『リンネ・ラジオ』『XTC』:2015/10/06(火) 22:44:24
>>573
「…………」


テトラポッドに腰掛けた小学生くらいの女の子が、
ぼうっと海を眺めていた。


「……ん……」


ふと、錏葉に気づき、流木を拾っている姿を目で追う。


        じー

575立花『リンネ・ラジオ』『XTC』:2015/10/12(月) 00:30:56
>>574
「ふあ……」


しばらく眺めていた少女であったが、
眠そうにあくびをすると、そのうち、うとうとし始め


「はっ……」


時計を見ると、慌てて帰っていった。

576黄 町 断 ル ラ イ with:2015/10/13(火) 23:25:24
秋も半ば、そろそろ冬物の衣類を準備し始める季節の某日の朝十時。

足跡も轍も無いまっさらな砂浜。

波の音だけがただ引き続けているその砂浜の真ん中に、
大きな『何か』が、ポツンとある。大きさは小型のバスほどだろうか。

『何か』と形容したのは、それには上から全体に大きな布がかぶせてあり、
詳しい形や、色などが解らない様になっているからである。


 ザザァー
                ザザァーン

577音無ピエール『ジュリエット・アンド・ザ・リックス』:2015/10/13(火) 23:41:16
>>576
「……おい、何だこれは?」


    「クジラの死骸でも流れ着いたか?
     変な臭いとかしないだろうね、――――どれどれ」


ランニングシューズにハーフパンツ、ウィンドブレーカー。
いかにもランニング中という格好で足を止め、足元の珍物を訝しげに見下ろす。
海難物なのだろうが、それにしては周囲に人気も見えない。
周囲の様子を見るに、まるで空から落ちてきたかのようだ。


       ガシッ


布の端っこを掴み、持ち上げて捲ってみる。

578黄 町 断 ルトラ イ with:2015/10/13(火) 23:50:38
>>577
布の端を持ち上げれば、そこから現れるのは径の大きい『タイヤ』だ。
どうやらこれは『大型車』らしい。

しかし、肝心の車体の部分まで布をまくることは『できなかった』。
まるで『接着剤でくっつけられている』かの様に、布はそれ以上ピクリとも動かない。


「あー……うーん」

布の中から、唸り声のような物が聞こえた。

579音無ピエール『ジュリエット・アンド・ザ・リックス』:2015/10/13(火) 23:59:49
>>578
「――――お、おい!?

 大丈夫か!?  クソッ、唯の『事故車』じゃあないかッ!
 せめて、私が『落とし穴』に引っかかるくらいで済んで欲しかったッ」

『横断幕』を引っ張るように砂浜を走った『ジープ』が、
砂にタイヤを取られて転倒、布を巻き込むように倒れこんだのか。
何にせよ、運転手が心配だ。この砂浜には『足跡』も『轍』もない。
――――つまり、事故が置きてから時間が経過している可能性がある。


    「だ、誰か!  誰か来てくれッ!
     人手が必要なんだァァ――――」


         「クソッ、埒が明かないぞッ!
          『ジュリエット』、救いの手となれッ!」


                           ジ ュ リ エ ッ ト
周囲に大声で助けを呼びつつも、遂には、『 両 手 剣 』を発現。
右手に発現したそれを逆手に掴み、肉厚な刃の切っ先を布に宛てて滑らせる。
『捲くる』のではなく『切り裂く』。『コの字』に裂いてから布を捲り、声の主の様子を見る。


        「しっかりしろォォ――――!!」


               「もう少しだぞォォ――――!!」

580黄金町 断 ルトラ イ with:2015/10/14(水) 00:24:01
>>579
大声で助けを呼ぶピエール。
砂浜沿いの歩道を歩いている若い男性が見える。
距離的に考えて、その声は十分に彼に届いているように思えた。
 

  「しっかりしてます。してますともォ〜」
 
  「だけど残念。そのパターンはもう『見た』んですよねえ」

         布の奥からの声。


歩道を歩いていた男性は、ピエールの声に応えることなくそのまま歩き去っていく。
一瞬視線があったような気がするが、特に大きな反応は示さなかった。

しかし、
『ジュリエット・アンド・ザ・リックス』の刃は、布をコの字に切り裂いた。


「お」

「この流れは、『初めて見た』ですよ」
「なかなか貴方、『新しい』ですね」


コの字に切り裂かれた部分の布のみがめくれて、隠されていた物の一部が露わになる。

そこから現れたのは──艶のある黒髪を伸ばしたケツアゴの男性。
いや、これはピエールの顔が映っているだけだ。

布で隠れていた部分は、どうやら『鏡』になっているらしい。

581音無ピエール『ジュリエット・アンド・ザ・リックス』:2015/10/14(水) 00:36:36
>>580
「な、なんだこりゃあ!?」

捲った先に見えたのは己自身、――――否ッ!
曇りのない鏡だ。しかし、車両の何処にそんな鏡を付ける必要がある?
鏡面ガラス窓とは考えにくいが、バックミラーにしては大き過ぎる。

>「この流れは、『初めて見た』ですよ」

>「なかなか貴方、『新しい』ですね」


        「――――や、やられたッ!

         貴様、私に『ドッキリ』を仕掛けたかッ!
         ええい、怪我人を装ってイタズラとは恥を知れッ!」


鏡には羞恥と怒気で顔を真っ赤にしたピエールが映るだろう。
『剣』を持たぬ対の手を握り、鏡に思いっきり拳をぶち込む。

582黄金町横断ウルトラクイズwith……:2015/10/14(水) 00:56:12
>>582

「ああ、そんなつもりはなかったんですよ」


鏡面の奥から声がする。
次第にはっきりと聞こえるようになったこの声の主は男性のようだ。


興奮したピエールの拳が鏡面に炸裂する。

だが、『何も起こらなかった』。

殴った鏡面には傷一つつかず、ピエールの拳にも衝撃は走らず、激突音もしない。
ただ、壁を殴った様な感触はあるが痛みも無い。



「そのパターンは、それこそ何回も『見た』んですよ」

「どんなに人気があっても、どんなに素晴らしくても」

「何回も見られたら、飽きられて、意味を持てなくなっていくのです」

「すべて、すべてが」


  ブロロロロ……


布の中から響き始めるエンジン音。
車輪が砂を弾きながら、ゆっくりと前進し始める。


「でも貴方はそこそこ新しかった」

「これで貴方が『18歳以上の女性』だったら……いえ、自称でも良いんですけれどねフフフ」



布をかぶったままのそれは、次第に加速を始める。
ここから去るつもりのようだ。

583黄金町横断ウルトラクイズwith……:2015/10/14(水) 00:58:00
安価ミス
>>582>>581です。

584音無ピエール『ジュリエット・アンド・ザ・リックス』:2015/10/14(水) 01:05:43
>>582
「逃がすかッ!

  ――――貴様の『善悪』をハッキリさせるッ!」


『自動車』が加速を始めるよりも先に、左手に『ザ・リックス』を発現。
地面に這うと『盾』を後輪に押し当て、『移動』する『パワー』を奪う。


      「『温故知新』を知れッ!
       手始めに『人を騙す』とどうなるかってところだ!」


『ジュリエット』の柄を押し付け、『紋章』を吸収する。

585黄金町横断ウルトラクイズwith……:2015/10/14(水) 01:42:42
>>584

「……ほほう」

「凄いですね。正解は『無効化』?『吸収』?」

「正確な『解答』を出すには、時間が足りない様な気がしますね」


布に包まれた車両は動かない。否、動けない。
『ザ・リックス』が『移動するパワー』を奪っているからだ。


「とにかく『スタンド』の力ってのは凄い。奥が深い」

「誰も見た事が無い『新しい』『力』。良いですよね」

  
  ブロロロロッ!


エンジン音が強く鳴り響く。


「『善か悪か』。そんなの、どう答え立って『正答』だし、『誤答』ですよ」

「ともかく、今回は『貴方の勝ち』です。ああ、また材料を集めないと」

「それではさようなら、『挑戦者』さん。賞品はいずれお渡ししますよ」

     ブオンッ

                  ガシャッ ガシャ

              ガシャガシャガシャッ


ピエールの反対側から飛び出す大型の『オフロードバイク』。
フルフェイスのヘルメットをかぶった男の運転するそれは、
猛スピードで疾走し、瞬く間に彼方へと消えた。


                  ガシャッ ガシャ

              ガシャガシャガシャッ

      ガシャンッ!

布に包まれていた物が崩れていく。

露出されていたタイヤとホイールも瞬く間にボロボロのスクラップへと変化していく。



    ……ブオオオオン

その場に残されたのは、巨大な布に包まれた大量のスクラップ。

586音無ピエール『ジュリエット・アンド・ザ・リックス』:2015/10/14(水) 01:56:20
>>585


         ギャルルルルル――――


  「(『回転』の刃でタイヤをバーストッ)」


                           「(『振動』の刃で車体を切り裂くッ!)」


     >ブオンッ

                  >ガシャッ ガシャ

              >ガシャガシャガシャッ


     「――――――ッ!?」


          「しまっ――――」         「『デコイ』ッ!」


飛び出したオフロードバイクは一陣の風のように己から遠ざかっていく。
眼前の自動車はスクラップとなって崩れ落ち、砂浜に散らばったのだ。


    「な、なんだったんだ……?」


まるで妖精に化かされたような一連の事態にポカンを大口を開けるも、
やがて、散らばったゴミ達を片付けようとパーカーを腕捲くりする。


     「全く、今日はなんて日だ!」

             「とにかく、これをどうにかしないとな……」


エッチラオッチラとスクラップを引きずって、砂浜の隅っこに置いていく。
やがて、人目に付かぬ場所へと置き去れば、ランニングコースへと戻っていった。

587荒咬『ザップ』:2015/10/18(日) 02:06:39
「ふー、季節の変わり目は寒かったり暑かったりして、調子が出ないなあ」

海を眺めながら、『ダイヤルを回す』。

※次にレスする人は、詳細を読んで荒咬が『どこに移動するか』をレスの秒数下一桁で決め、URLを指定してください。
  1レスのみで構いません。お気軽にどうぞ。

『ザップ』能力詳細
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/netgame/9003/1311712763/564

588ようこそ、名無しの世界へ…:2015/10/18(日) 02:18:41
>>587
残念。フィレンツェ行きには間に合わず――

【場】メインストリート その4
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/netgame/9003/1424962526/

589荒咬『ザップ』:2015/10/18(日) 02:21:53

            『ZAP』!

→ ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/netgame/9003/1424962526/799

590稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2015/10/27(火) 00:40:07

恋姫はもうどうしようもないし、どうしたらいいかもわからなかった。

     ザザーーン

「……」

        ゼェ   ゼェ

肩で息をして、砂浜に体育座り。
内心ドラマみたいだな、と思った。悲劇に浸りたい自分がいたのか。

「クソゲーだな……人生は。
 えひ……鬱ればいいと思ってやがるんだ……」

         《オォォォオオオオ》

己の精神の像に語りかける。
虚しい気分だ。

     《オォォォ……》  

        ボボボボ

黒衣のヴィジョンから、不完全燃焼気味に青い炎が吹く。

あったと思ったものは、無かった。
怒り、恐怖、それに……心に空いた、穴。

591トミー『ラム・オブ・ゴッド』:2015/10/27(火) 01:29:49
>>590
「人生にお悩みですか?」
           『スッゲー燃エテル』
「んっふっふっふ」
        『イイノカソレ、スッゲー燃エテルケド』

後ろから声をかける。
長身、金銀マダラに染めた髪、安物のスーツ。そろそろ寒いのでコート。
そしてその傍らでひたすら『青い炎』にツッコミを入れる羊角剛健の『スタンド』。

592稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2015/10/27(火) 01:58:30
>>>591

       「ん……」

      グイッ

座ったまま、首を後ろに傾けて、その姿を見る。
金銀まだら頭。ある依頼で共犯者だった――

「……あー、ええと…………探偵か。おっすおっす」

         ボ  ボッ

「えひ……燃えてるんじゃないよ……
 こういうもんなんだ、僕の『ブルー・サンシャイン』は。」

       「……あんまじろじろ見んなよな。」

     ォォォ 
          フシュン

ヴィジョンは掻き消える。
炎を指摘されて、何だか、気恥ずかしいような――  

      ・・・・まあ、ともかく。

「……探偵ってジョブは、あれか?
 『カウンセリング』もやんの……?」   

        「僕、今自分語んのめっちゃ捗るけど……」

陰気な笑みを浮かべる恋姫。
誰かに話を聞いてもらうと、楽になるか?

         ・・・・そもそもこれは悩みなのか?
           ・・・・それとも一過性の感情なのか?

593トミー『ラム・オブ・ゴッド』:2015/10/28(水) 19:48:04
>>592
「やあ、どうも」「お久しぶりです」

奇妙なことだが、知らない仲でもない。

「その節はどうも」  『ソーイウモンナノカ?』

ごく自然に上から見下ろす形になるが、気にしたふうもなく。そして『LoG』は消えた『ブルー・S』のいたところをじっと眺める。特に意味はない。

「いや、業務には入りませんが」
「そもそも芝居がかった言い方をすれば、ぼくらはいわゆる『戦友』」
「その友人が、何か知らないが相談をしようというのに、金を取るなんて真似はとても致しかねますねえ」「んっふっふ」

「何か思うところが? あのあと、何かありましたか」

すっと『稗田』の隣りへ移動するトミー。
こういう感じの話は、顔を突き合わせるのが厭なタイプの人もいるからだ。希望があれば座るし向くが、とりあえず隣りに立ち、海を見ている。

594稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2015/10/28(水) 21:56:27
>>593

「どもども……そういうもんだよ。僕のはな……」

        ・・・・

     ・・・・

消えたヴィジョンは少しの熱も残さない。

「戦友って。えひ、漫画とかでしか聞いたことないぜ……」

      (……言ったことはあるけど。
       こいつそういうキャラだったのか……)

            ニマ

陰気な、笑みを浮かべる。

悪い気はしない。
事実、的外れでもない――

「まあ……ありがとな……」

隣にトミーが来たのを察する。
向き合って話したい、とは思わない。この位置がいい。

         ・・・・海は穏やかだ。

「……僕も、あんま整理できてなくて。
 チラ裏でやれって感じも、するんだけど……」

           「あー……」

自分の心のアウトプットは案外、難しい。
頭を小さく掻いて、体育座りの膝に顔を埋める。

「……妹が出来たと思ったら……朝起きたらいなくなってた。」

      「実際んとこは……
       そういう能力を食らったっぽい……」

シンプルな――スタンド攻撃を受けた、という話だ。

595トミー『ラム・オブ・ゴッド』:2015/10/28(水) 23:13:52
>>594
「ほう?」

じっと黙って聞くが、『能力を食らった』という言葉に返す。

「人がいなくなるのは簡単です。自分の足で歩けばいい。そういった可能性や、あるいは妹さんが寄りそうな場所まで考慮に入れた上で」
「『スタンド使い』である君が『いなくなった』と言うならば、なるほど、深刻だ」

あるいは『スタンド使い』『だから』。そうなのか? という疑問は口には出さず、その単語を僅かに強調する口調で問う。

596稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2015/10/28(水) 23:38:14
>>595

「……僕、一人っこなんだ。妹なんかいるわけない……
 義理のもいないし……腹違いもいない……いるわけない。」

顔を上げないままに、恋姫は言葉を紡ぐ。
事実をかみしめる。妹などいない。

「……いるわけないんだ。
 現実はゲームじゃない……
 いきなり妹が出来るなんてありえない。」
          
       「でも……昨日は妹がいたんだ。
        家族になる『能力』ってやつで……
        僕の妹に成りすましたやつが……いた。」

――稗田鈴野。
存在するはずのない妹。

「……朝起きたらそいつがいなくて……
 妹なんかいないってこと、思い出して……」

       ギュ

        「……わかんないんだ。」

膝を強く抱える。
自分の心の炉に、何が燃えているのか、分からない。

            ザザ --ン ・・・・

海は答えてくれない。
探偵は、どうだろうか。

597トミー『ラム・オブ・ゴッド』:2015/10/29(木) 00:05:11
>>596
「あ、成る程」

『妹』が『スタンド能力』によって『いなくなった』のではなく
『スタンド能力』によって『妹』に『なりすました』誰かがいる、という意味だった。

「いや、これは早とちりでしたね。んっふふふ」

「要するにそれほどまで深く『思い込む』ほどの能力」
「しかし能力は解除されたようだし、君も状況はきちんと把握しているようだ。問題は」

稗田には見えないが、首を傾げつつ。
阿南トミーは探偵であり、探偵は事実を事実としてのみ取り扱う。
阿南トミーは人間であり当然、人情を充分に理解するが、既に起こった事実、それが誰かの仕業であれば、思考するのはただ二つ。
『ゆるす』か『ゆるさない』か、だけだ。

「君がどうしたいか、では? まず敵――いやいや、その相手が何を目的にしていたのか。知っているならそれは達成されたのか。ならばそれを君はゆるすのか?」
「分からない時こそ、一旦整理してみることが肝心ですよ。ご存知の通り、この世には何が埋もれているのかわからない」
「君自身に何の覚えがなくとも、誰かが君を狙うのかもしれない。その敵――ではなく相手が初対面でも、相手からしたら違うかもしれない」
「考えて、行動することだ。悲嘆にくれるのはそれからでも遅くはない。それこそ還暦過ぎてからでも遅くはないどころか適齢期なんだから」

「『わけのわからんことで心を千々に乱れさせられる』なんていうのは、一刻も早く解決するべき重大な自由の侵害なんですから」

598稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2015/10/29(木) 01:22:25
>>597

「考えて、行動する……か……」

「そう……だよな。
 理由……それか、なんかのフラグがあるはずだ……
 それこそゲームじゃないんだし、超展開はない……常識的に考えて。」

       グイ

探偵の助言を受け、恋姫は少し顔を上げた。陰気な笑みが戻る。
正体不明の妹・鈴野にも、『バックボーン』はあるのだ。

                 ・・・・あるはず。

「目的……ぽいことは言ってなかった……
 攻撃とか……物盗むとかも、されてないし……」

        「あ……」
 
            「……距離、近かったなそういや。
            それなんて百合アニメってくらいベタベタしてきた……
            やっべ変態じゃん……こわちかだな、えひ。」

     「……」

恋姫に近づくことが目的。
……そう考えるのが自然か? 

        ――お姉様。

そう呼ばれた声。表情。そして、あの『告白』の意図――
心に空いた穴のような、気持ち。

       「……探偵、人探しは本業だよな……?」

『またね』――もう一度会えば、何か分かるのか?

599トミー『ラム・オブ・ゴッド』:2015/10/29(木) 23:22:45
>>589
「ぼくは何でも本業ですよ」「んっふふふふふ」

稗田の思考に水はささない。
『人探し』という単語に返す。

「少々お時間はいただくかもしれませんが」

600稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2015/10/29(木) 23:56:11
>>599

「……えひひ。
 頼もしいよな、お前って……」

恋姫は顔を上げ、トミーの方を向く。
お姫様としてじゃあない、『稗田恋姫』として――

「……鈴野、って名前で……見た目は小学生くらい……
 ほんとの年は分からないけど……髪はちょい青っぽい。目は黒……」

       「……スタンドは、『フナムシ』。
        僕が会ったのは、ZUTAYA……」

鈴野について、知ってることは話す。
見つけだす、意味があるからだ。

自分はRPGの無能な王様じゃあない。
出来ることは、する。

「……全然、知らないんだ。あいつのこと。
 お金は……払うよ。……50ゴールドなんて言わない。」

        「……頼める、か?」

恋姫は真剣な面持ちで、言った。

601トミー『ラム・オブ・ゴッド』:2015/10/30(金) 00:31:23
>>600
「名前まで分かっているとは、これはけっこう」

   チャッ

鈴野。
小学生のような見た目。
黒い目。青っぽい髪。
『フナムシ』の『スタンド』。

           Pi

聞きながら、フリック。メモは重要だ。記憶力とは曖昧だからだ。

「ZUTAYA。日常的に利用しているならば、レンタルと返却で二回。んっふっふっふ」

探しやすい。

「もちろん、引き受けましょう。探して見つけたらどうします? 『目的』まで吐―――調べるべきでしょうか」
「それとも、連絡をするべきでしょうか」「おっと、後払いで結構。当然お安くしときますとも」

602稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2015/10/30(金) 00:39:16
>>601

   チャッ

           Pi

「えひ……まじで探偵なのな。
 あの仕事んときは、探偵カッコ物理だと思ってた……」

        「……ありがとな。
         受けてくれて……」

陰気な、しかし満足げな笑み。
上手くいくかは、分からないけれど――

「見つけたら……連絡でよろ。
 電話番号は、教えとくから……」

      「……悪用は禁止だかんな。
        プライスレスなレア度だぜ、僕の番号……えひひ。」

スマートフォンを取り出して、電話番号を教える。
探偵に依頼する以上、まあ当然のことだが。

            ・・・・少しは、もやが晴れた。

603トミー『ラム・オブ・ゴッド』:2015/10/30(金) 01:07:44
>>602
「わかりました」「あ、これぼくの番号です」「知らない番号には出ないって依頼人もいらっしゃいますし、一応」

電話帳登録は番号のまま。顧客のは名無しだ。個人情報だし、この程度は充分記憶力の範囲内だ。

「お礼なんて水臭い。では、見つけたら連絡しますよ」「ちょっと声に張りも出てきたようだ」

  ニカッ

笑いかけ、踵を返す。鼻歌混じりに。呼び止められないなら、このまま砂浜を去るのだ。

604稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2015/10/30(金) 01:17:07
>>603

「……登録しとくわ。
 えひ、やったね恋姫電話帳が増えたよ……っと。」

           pi
pi

番号は登録した。

「じゃ……頼むな、探偵。
 緊急クエストってわけじゃないから……」

なるはや、ってところだ。
自分でも、探そう。他にもやることはあるけど。

        「……えひ。
         んじゃ、朗報待ってる。」

            「おつー……」

     ニマ

笑い返し、小さく手を振る。

605関東 也哉子/ヤーコ『一般人』:2015/12/03(木) 23:49:05

    ザザーン

          ザザーン

夕暮れ時の砂浜。
陽も傾き、夜も近いかという時間。

   「……そろそろかなぁ」

一人の少女が、潮風を受けながら佇んでいた。
白いつば広帽子、ベージュのコート、淡いブルーのロングスカート。
黒の長髪が風で乱れぬように手で押さえ、もう片方の手には安物のデジタルカメラ。
沈む夕日を眺めながら、そんな少女が佇んでいた。

         ブ ワ ッ

           「あっ!」

と、その時、ひときわ強い潮風に煽られ、帽子がするりと外れて飛んでいってしまった。

606関東 也哉子/ヤーコ『一般人』:2015/12/05(土) 02:26:35
>>605

   「ふぅ。潮風、強いなぁ」

ざくざくと砂浜を歩き、飛んでいった帽子を拾う。
砂を払って、被り直して。

    「……よし、ピッタリ」

振り返れば、陽が沈むところ。
この風景をしばらくデジカメで撮影して……陽が沈むころには、少女は去って行った。

607葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/12/07(月) 03:36:39

「…………」


    ザ

       ザーン ……


穂風は砂浜を歩く。
今日は仕事もなければ、書類も届かない日。

        (あ……綺麗な、貝。)

    ザ 

しゃがみこんで、貝殻を拾った。
こうして『ビーチ・コーミング』に興じるのは、楽しい。

「……」

      ニコ-

穂風はその貝を、日に翳してみる。
あまり、意味はないけれど。

              ・・・・ひさびさに、心休まる時間。

608葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/12/10(木) 04:41:10
>>607(続き)

    ザ
         ザーーーン


「わっ……」

          バチャ!

         「たっ!」

(つ……冷たい。
 冬の海って、こんなに……)

寄せる波が脚を濡らす。
冬の海は、冷たい。

          ザ
             ザーー ・・・

  「……えへ、へ……」

        パチャ

       「つめたっ」

                 ≪……お嬢様。
                  お風邪をお引きになられます。≫

    「……」
                    その傍らには、スタンドの像。
                    蝙蝠傘を人型にしたような、不気味な像。

穂風はそれを、不服そうな目で見る。
そんな様子が、今砂浜にはあった。

609春夏秋 冬樹『メメント・モリ』:2015/12/10(木) 23:29:44
>>608
「――――ちょいと、嬢ちゃん」

穂風の背中に、声がかけられる。
振り向いたなら、『灰色』のコートを着た、
初老の男が目に入るだろう。
男は、右の頬に、『ウサギの手』の『刺青』を入れている。

「こんな季節にどうしたんだい・・・?
冬の海なんて眺めても、寂しいばっかりじゃないかね」
「ま、余計なお世話かも知れないが」

『人型』をちらりと見やると、そう言って煙草を吹かす。
冬の寒天に、紫煙がゆらゆらと漂う。

610葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/12/10(木) 23:52:14
>>609

     ピク

   …クル

「あ、う……は、はい。
 あの、私……ですよね?」

       (な、何、だろう……?
        刺青……スタンド、使い――?)

穂風は振り返る。
片目に掛かった赤い髪、蝙蝠のような大きなリボンが揺れる。

             ≪…………≫ 

             傍らの像――傘の従者は男に視線を向ける。
             見えているのだろう。ゆえに品定めするように。

         パチ

穂風は問いに、目を瞬かせて。

「あの、お散歩……しに来て。」

        モゴ

「海……砂浜を歩くの、好きなんです。
 その、綺麗な貝殻とかが、落ちているので……」

           モゴ

ややもごもごした口調でそう答える。
そして、穂風は足元に寄せる波を見て。

       ザ ザ ――― ・・・

「……冬の海は、その。
 冷たいですね。それに……」

「……それに、確かにちょっとだけ、寂しい、かも。」

穂風はそういうと、沈黙する。
波の音。
くゆる煙。

   ・・・・

        ・・・・

今日の穂風には少し、この場所が広く感じていた。
そういう事を感じる『余裕』が、心にある穂風だった。

そしてふと、気になった。

    「あの。貴方は、どうして……?」

              ・・・・ここに来たのか?という意味。

611春夏秋 冬樹『メメント・モリ』:2015/12/11(金) 00:11:51
>>610
「キヒヒ・・・他に誰もいやァしないさ」

男は笑った。風に吹かれる枯れ草のように、乾いた笑いだ。
『従者』は男を見る。男の表情は柔和だが、
瞳は、眼前の海よりも冷たく、淀んでいる。

「『貝殻』ねえ。いいね、『ロマンチック』だ。
あっしにゃ、貝ってえと『酒の肴』としか思えないが」

そう言うと、また一服。
白い空に消える煙を、何ともなしに眺める。

「あっしかい? ちょいと、気分転換にね。
しんみりしたいとき、ってのもあるのさ」
「・・・特に歳食ってくるとねえ・・・こんな季節は、
人が良く死ぬ。知り合いだったり、そうでなかったり」

どこか遠くを眺めながら、男は言う。
頬の刺青に手を当て、何かを思い出している風だ。

612葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/12/11(金) 00:28:57
>>611

「あ……う、で、ですよね。」

       (何だろう……
        この人の、目。なんだか――)

他に誰もいない。
穂風はそれはそうだな、と思った。     ≪……≫

                 だからこそ従者は警戒していた。
                 柔和な表情。反して、沼のような目。

「ロマンチック、ですよね。
 いろんな色で、いろんな形で……
 あ、食べるのも、美味しいですけど……えへ。」

         ザ ザ ―― 

波が返していく。穂風にはロマンチストの気があった。
食べる分にはホタテ貝とか好きだ。最近は食べてない。

       ゴソ

「これとか、その……さっき拾って。
 きれいだなって、思うんです。えへ……」

         キラ

鈍く光る、小さな巻貝。
同時にこれは食べられないだろうなと穂風は思う。

   (食べる方に意識が……
     私、お腹すいてるのかな……)

         ・・・・ともかく。

「しんみり……」

「……あ、あの、ええと。
 私、もしかしてお邪魔……でしたか……?」

      (誰か、死んだ、のかな……
       聞けないよね……そんな、こと。)

          ゴソ

貝を懐にしまいつつ、穂風は言う。
……物憂げな男は、一人になりたいのでは?と思ったから。

613春夏秋 冬樹『メメント・モリ』:2015/12/11(金) 00:40:49
>>612
「そうだねえ・・・色んな形がある。人間みたいだと思わないかい?
世の中は人で溢れてるのに、おんなじヤツは二人といない」

男は、穂風の取り出した巻貝を見ながら、そう言った。
『従者』は、彼の手の動きに気付くかもしれない。
『鋭利』な巻貝を見て――恐らく反射的に――左手が、
ス、と動いた。『防御』の構えだ。もし『突き出された』ときのことを、
考えているかのように。

「ああ、いやいや・・・邪魔なんかじゃないよ。
お邪魔したのは、あっしの方だしねえ」
「むしろ、そうさね――あんたがいてくれて良かったのかもしれない。
何となく、物寂しくってねえ」

頬の刺青をさすりながら、男は笑う。
一瞬だけ、寂しげな光が淀んだ瞳に宿り――すぐに掻き消える。

「・・・『縁』のあったヤツが、あっしの知らんところで死んじまってね」
「もう何年になるか・・・未だに、信じられんよ」
「――いや、済まない。嬢ちゃんに聞かせるような話じゃ、ないね」

614葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/12/11(金) 01:07:18
>>613

             ≪……?≫

             従者は怪訝そうに首を傾げる。
             動作の意図は、読み切れなかった。

「そう……かも、です。えへ……ロマンチック、ですね。」

(皆、いろいろ……違う、もんね。)

穂風はそう思った。
もっとも、深い理解とか、思想の域には達さないが――

「……そう、ですか。あの、邪魔とかじゃ、ないです
 それで……あの、ええと、じゃあ……私、ここにいますね。」

          (……この人の、目。)

         ザザ -ン

波打ち際から少し離れる。
穂風は妙な義のようなものを、持ち合わせていた。

         ・・・・そして。

「……うぇ……あの。ええと。
 すみません、なんて言ったら、いいのか……」

    モゴ モゴ

        「……すみません。」

――『死』。

穂風はまだ、それを知らない。
言葉ではなく、死というものは籠の中に無かったから。

        (死んじゃうのって、寂しいん……だ。)

615春夏秋 冬樹『メメント・モリ』:2015/12/11(金) 01:31:10
>>614
「いや・・・済まないねえ、なんか。ま、『過ぎたこと』さ」

口ごもる穂風の様子を見て、男は気まずげに頭を掻いた。
気を使わせた、と感じたのだろう。

「・・・そういや、嬢ちゃんは散歩しに来たって言ってたねえ。
しかし、市街地からもちょいと遠いし、何もなしに
ひょいと来れるような場所でもなし」

寂しさを振り切るように、男は話題を変える。

「何かきっかけがあったんじゃないかい?
ま、勝手な『憶測』だけどねえ」

616葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/12/11(金) 05:45:30
>>615

「あ…………」

     「は……はい。」

   シューン

穂風は、やや縮こまる。  
      
       ザ
          ザ  ァァーーーー
                      ン ・・・

(気まずい、な……
 でも……しょうがない、よね。)

別にお互い悪くはない。
が、気まずい感じになってしまった、そこに。

「……あっ、は、はい。お散歩……です。
 あの、今日は、お日様、気持ちいい日ですし……」

話題変わって、安堵する穂風。
言いながら、少し首を上げて、上を見る。晴天。

「それに、その。
  す、すごくっ……すごく『いいこと』が、あって。」

           ンフー

少し鼻息荒く、穂風は続ける。

「胸が、どきどきしてるんです。
 だから……いてもたっても、いられなくてっ!
 跳び回りたく、なるくらいで……だから、ここまでっ」

       グイッ

身を乗り出す穂風。

「……あっ。」  シュン        

すぐにはっとして、また少し小さくなる。

   「えへ……あの。それで、です。
     ほんのちょっと遠出、しようと思って……」

             ニコ                  

穂風のその表情には、喜色が混じっていた。
それは今の喜びだけではなくて、未来に向かうものだった。
 
                  ザ  ザーー ン

617春夏秋 冬樹『メメント・モリ』:2015/12/11(金) 10:13:14
>>616
「ほお、『いいこと』か。何だか分かんないけど、
そりゃあ良かったよ・・・本当にね」

明日の方向を見る穂風を見て、男は目を細めた。
黄昏時を生きる彼には、少しばかり眩しかったからだ。

「そうだねェ、良いことは、目一杯楽しむのが一番いい。
なにせ人生いつ終わるか分かんないからねえ」

うん、うんと何度も頷く。

「いや、ちょいと羨ましいよ。若いってなァ、良いもんだ」

618葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/12/12(土) 00:15:36
>>617

「はいっ、本当に…………」

穂風は。吸血鬼の籠で育てられた少女は、太陽のような笑みを浮かべる。

「色んな人の、おかげで。
 だから……私、最後まで、せいっぱい楽しみます。」

      「いろんなこと」

           「……めいっぱいっ!」

穂風はそう言って。
また、はしゃぐ自分を自覚し、縮こまる。

         ・・・・そして。

「あの、私。向こうの方、見てきます。
 綺麗な貝殻……もっと見つけたくて。」

「……その、貴方も。
 いっしょに、来ませんか……?」

何となく、そんな提案が口をついて出た。

            《……お嬢様。》

「…………」

穂風の中の『義』のような感情かも、しれなかった。

         ザザーーー   ン

どちらにせよ、穂風はその場に去り、波の去る音が残る。

         ――この話は、ここまで、だ。

619春夏秋 冬樹『メメント・モリ』:2015/12/12(土) 01:07:25
>>618
「最後まで・・・・・・ねえ」

明るく、どこか儚い少女のその様子に、
男は何とも言えない笑みを浮かべた。

「・・・いいや、あっしはもう少し、ここで風に当たってくよ。
せっかくのお誘いで、申し訳ないけどねえ。
ありがとうよ、嬢ちゃん」

穂風の誘いに、丁重に断りを入れる。
彼女にも、思うところがあるのだろう。
ただ、今はこれ以上、この眩しさの側にはいられない。
男は、そう感じていた。

「・・・・・・・・・・・・真っ直ぐな感情」
「真っ直ぐな言葉――――」

煙をふかす。

「はは・・・あっしは、奪う側の人間だ」
「だけどまあ、人様の幸せくらいは、祈っておくよ」
「『お仕事』が入らない限りはねえ」

自嘲気味にそう言うと、男は静かに歩み去る。
そうして、誰もいない砂浜が残された。

620小鍛治 明『ショットガン・レボルーション』:2015/12/26(土) 00:34:53
冷たい風が吹く年の瀬。
一人の女性が海の側で立つ。

「……。」

潮風に黒髪が揺れる。
寒そうな様子は無い。

「はぁ……」

物憂げに足元に目をやる。
そこには焚き火。赤く火が燃える。
そして、側には紙袋。

「つまらないわ。」

紙袋から紙束を取り出して焚き火に放り込んでいる。

621小鍛治 明『ショットガン・レボルーション』:2015/12/29(火) 00:07:39
>>620

「もう今年に思い残すことは無いわ。」

紙袋すら小鍛治は燃やしてしまった。
もはや燃えカスのみとなった部分に砂をかける。

「火はいいわ。何もかもを消し去ってくれる。」

622<ガオンッ>:<ガオンッ>
<ガオンッ>

623<ガオンッ>:<ガオンッ>
<ガオンッ>

624葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/12/31(木) 00:14:07

ロードバイクを停める穂風。
スクールバッグを肩に掛け、海の向こうの風景をながめる。

      ヒュ
 
           ォォォ

    ジャリ

小さなポケットの中の赤い貝を、指で弄ぶ。

(もうすぐ、『新年』……かあ。)

外に出て。
今年一年、いろいろあって。

         ザ  ザァーン

       (……初日の出、見てみたいな。)

               ・・・・『太陽』を、拝みたいと思った。

625イザベル『アーキペラゴ』:2015/12/31(木) 00:19:05
>>624

       ザッ


    「…………………………あー」


  「『次会う時は学校で!』……っつっちまったんだけどなァ」


……その後ろから、声をかける。
苦笑しながら。どこか恥ずかしげに頭を掻きながら。

     「よっ」

   「元気そうじゃねェか、ホフリ」

626葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/12/31(木) 00:32:59
>>625

   ピク

       「……」

          クル

振り返って――

「――あっ!」

    ニコ
    
        「……え、えへ。
         イザベル、さん。こんばんは。」

『アミーガ』の姿を認めて。
太陽とは言わなくても、明るい笑みを浮かべて。

「はい、元気です。
 イザベルさんも、元気そう、で……良かったです。」

そう、返す。
そして。

             ブン
                   ブン

「……えへ……
 イザベルさん、これ。」
  
         「私の、です。」

スクールバッグをぶんぶんと揺らして、ややひそめた声で。

627イザベル『アーキペラゴ』:2015/12/31(木) 00:57:06
>>626

     「おう、こんばんは」

ニカっと笑って返す。
少し気恥ずかしさはあるが、まぁ『ガラじゃない』。
目の前の少女の笑顔を思えば、馬鹿馬鹿しくてちっぽけな悩みだ。

    「まァアタシは元気さ。
     最近は流石に冷えるけどな。それでも―――――っと」

そして、目に入るスクールバッグ。
誇らしげな、真新しいそれ。
それを見ているとこちらまで嬉しくなってきてしまって、頬が吊り上がる。

      「『新学期から』、か?」

   「へへッ、よく似合ってるじゃねェか!
    いよいよお前も『学生さん』ってわけだな!」

両手を広げて、喜びを表現するジェスチャー。
そのまま抱きしめてしまいたいぐらいだが、背丈が少しばかり足りないのがネックだ。
今日ばかりは恨むぜ自分の低身長。

        「ッたく、アタシがまごついてる間にさっさと進んじまってよッ!
         ホントに良かったなァホフリよォッ!」

喜色満面に悪態をつきながら、良かったなぁと高らかに。

628葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/12/31(木) 01:08:51
>>627

「はいっ! 新学期から、『女子高生』……ですっ!」

                クルッ

          パシ

鞄を回して、それを手で止めて。


   「――嬉しくって!
      とっても、嬉しくって。」

        クイ

少しだけ、身をかがめて。
イザベルと視線を合わせて。

 「本当に、良かった……です。」

    「イザベル、さん。
     ありがとう……ございます。」

                 ペコー

頭を大きく、下げてみせる。

                ・・・・そして。

「イザベル、さん。私、今からっ。初日の出……見ようと、思うんです。」
 
            「あの。一緒に……
             待ちません、か? 初日の出!」

そう、切り出した。
まだ、日も変わっちゃあいない頃。

      じぃぃ ・・・

          ・・・・穂風はイザベルに、目を合わせる。

629イザベル『アーキペラゴ』:2015/12/31(木) 01:26:55
>>628

      「な、なんだよ」

一歩、後ずさる。
口元や、指先がわなわなと振るえた。

   「アタシは、なんもしてねェんだぜ。
    お前に礼なんか言われることは、なんもしてねェし」

二歩、後ずさる。
ゴクリと唾を飲みこむ音が、自分の中でいやに響いた。

          「それが」

     「おまえ」

            「おまえ――――」

そして、最後に目を下に逸らす。
振るえる身体を抑えるように、ぎゅっと拳を握りしめて。

――――だって、だって、だってッ!

             バッ

       「――――――あったりまえだろうがこのヤロウッ!」


こんなにもこみ上げてくる喜びを、我慢できるわけがないんだからッ!
下からこみ上げてくるような喜びに身を任せ、顔を上げて歓喜に震えながら、下がった一歩と二歩を取り返すように踏み込んで!
遠慮も何もなしに、両手を広げて穂風に飛びつく。思いっきり、抱きしめるために。
大丈夫。軽いから大事には至らないだろう。今日ばかりは感謝するぜ自分の低身長。

    「あーッ!」「もうッ!」

        「初日の出だってなんだって見るぞッ!
         途中で眠いなんて言いやがったら叩き起こしてやるからなこんちくしょうめッ!」

630葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/12/31(木) 01:39:14
>>629

             バッ

「わっ……」

      ム  ギュ

        「と」

           「と……」

           
          アミーガ
飛び込んできた『ダチ』を、受け止める。

        スト

そのまま、尻もちをつく。

       ギュ

そして、控えめに、抱き返して。

    「え、えへ……
      イザベルさん、私、嬉しい。」

          「一人で見るよりっ。
            いっしょの方が、きっと……」

一人で見る初日の出より、先に。
二人で見る初日の出が、穂風の初めての、初日の出。

「は、はいっ。絶対、起こしてくださいね!
 私、今日はちゃんと、お昼寝してきた、けどっ……」

          「もし寝ちゃったら、きっと、ですからね!」

笑顔で、そういって。
キューケツキなんかじゃないって、全身で表現するように。

     「……」

       「……あっ、ご、ごめんなさい。
         えへ、抱きしめたまま、でした。」

                  パッ

631イザベル『アーキペラゴ』:2015/12/31(木) 02:02:15
>>630

     「バッキャロー! アタシだって嬉しいに決まってんだろッ!」

   「いーやっ! むしろアタシの方が倍は嬉しいねッ!」

         ぎゅぅぅぅぅぅ……!

喜びに比例するように、思いっきり、力いっぱい抱きしめる。
ああ、ぶ厚い上着が邪魔くさいぐらいだ。今日が冬で無かったのなら!
                      アミーガ
そんなことを思いながら、かわいい『友人』を抱きしめる。
かわいいかわいい、アタシの妹分。

          愛おしいアタシの友達よ
          「『El amor, los amigas』ッ!」

               ポンポン

                   スッ

      「こっちこそ、っつーかアタシの方がわりィな! 痛かったか?」

名残惜しそうに、背中を軽く二度叩いてから抱擁を解く。
そして少しも悪びれずに満面の笑みを浮かべながら、手を差し伸べた。
転ばせてしまったし、強く抱きしめた。痛がってたら申し訳なくも思うが、それ以上に、今とても嬉しいのだ。

         「なァ、日の出がみてェのなら、良い場所知ってんだ。案内してやるよ」

だから、ちょっと悪戯っぽく笑いながら、イザベルはそう提案するのだ。

632葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/12/31(木) 02:28:32
>>631

               ポンポン

「えへ……」

       (なんて言ってるのかは、分からない。
         けど、きっと、嬉しい事なんだって、わかる。)

             (だって、こんなに。
               ……イザベル、さん。)

保護者でも、先生でもない。
穂風の、大切な、ともだちだから。

     ・・・・

       ・・・・


「い、いえ、痛くなかったです。
 それより、私、ほんとにっ、嬉しくて……」

     「あ……よいしょっ――」

          スック

           「っと……え。
             いい場所……ですか?」

手を引かれて、立ち上がって。
イザベルの提案に、笑顔で。

「じゃ……じゃあ、そのっ、お願いします。」
          
         コク   コク

   二回ほどうなずいて――着いて行ってみることに、した。

633イザベル『アーキペラゴ』:2015/12/31(木) 02:47:50
>>632

    「任せとけよ。海辺はアタシの庭みたいなもんだ」

ニカっと笑って、先を歩く。
数年の付き合いだが、海は毎日のように来ている。
日の出も、何度か見に来ている。そもそも、今日だって日の出を見に来たのだ。
だからそーいう知識なら備えてあって、それがなんとも誇らしい。

      ザッ
           ザッ

     「そーいえばよォー」

首を後ろに向けて、歩きながら問いかける。

          ザッ
               ザッ

       「お前さんの『後継人』だっけか。
        それってどんな奴なんだ?」

                 ザッ
                       ザッ

    「人一人の面倒見ようってんだから、大した奴なんだろーけどよ」

気になっていた、穂風の保護者のこと。
男なのか、女なのか、年老いているのか、若いのか。
そういえば、そのことについて何も聞かなかったな、と思っていたのだ。

         「そいつとはうまくやれてんのか?」

634葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/12/31(木) 03:02:11
>>633
 
       ガチャ

停めていたロードバイクを動かす。
一年の最後の夜、すっかり真っ暗な海を背景にして。

「はいっ。」

      (……かっこいい、なあ。)

    ト ト
            コロコロ
      ト ト

イザベルに、着いて行く。

          「……はい?」

    「あっ、ブリスさん、ですか。
      ブリスさんは、学校の先生、で。」

  ト
    ト  


「お料理が、とっても上手で。
 このスクールバッグも、プレゼントして、くれて。」

視線が少しだけ、下を向いて。
すぐにまた、上へ。

        「いつか、絶対。
          恩返し、しなきゃ、って……!」


      「……そう、思うんです。」


  トト    トト  

あまり深い情報は、穂風の口からは出なかった。
けれど、穂風は、一度決めたことは、破りたくない。恩返し、必ず――だ。

「……だから。上手く、やれてます。
 ……あ、イザベルさん。先生で、思い出したんです、けど。」

        「カガっていう先生に、私のこと、その、言ってくれたんですよね。」

次に口に出たのは、教師の名前。
実際には教師ではなく、スクールカウンセラーだけれど。

635イザベル『アーキペラゴ』:2015/12/31(木) 03:17:51
>>634

      ザッ
           ザッ

    「ほー、ブリス。
     ブリスなァ……聞いたことがあるよーな、無いよーな」

イザベルは大学部の生徒だ。
自然と知っているのは大学部の教授になるし、恐らくは知らないだろう。

      「ま、そーだな。受けた義理は返さねェと」

         ザッ
             ザッ

    「手ェ貸せることあったら、言えよ?
     そりゃお前が自分でどーにかしなきゃいけねェことだけどさ。
     人付き合いの人脈ってのも本人の力のうちだからよ。手伝いぐらいはさせろよな」

笑いながら、手をひらひら振って。
ぐだぐだ言ってるが、結局のところは。
この少女の力になってやりたいと、そう思っているだけの話。

           ザッ
               ザッ
 
        「あン?」

     「あー、あー、加賀な、加賀」

         「確かに話したな。あいつ、お前の噂聞いて気になってたみてェだったからよ。
          まァ名前と、転入したがってて目途が立ったらしいって話しただけだ。
          だから別に大したことじゃねェんだよ、ホントに」

逆を言えば、イザベルがやったことと言えば、やれたことと言えばその程度。
大見栄切っておいて、恥ずかしいぐらいだ。本当に、大したことはやってない。

      「ん、つーかアイツと話したのか?
       あいつ別に常勤講師ってわけじゃねェのに。つーか厳密には教師でもねェはずだが」

636葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/12/31(木) 03:46:21
>>635

「あ……ええと。
 ほんとの名前は、ブリジットさん、って。」

           「あの。小学校の、先生なんです。」

  トト ト     コロコロ

ブリジット。
女性的な名前だ――西洋圏の。

「ありがとう……ございます。
 もし、何かあったら、イザベルさんにきっと、相談します。」

      コク

穂風は、イザベルのことを信頼している。

      トトト    コロコロ

「あの。電話した時に、加賀、先生が出てくれて。
 ……それで、です。あの人にも、今度、お礼しなくちゃ。」

            「しなくていい、って。
             言われたんです、けど。」

それでも、お礼を言いたい気持ちはあるから、言うのだ。
穂風は歩いていく。

「……イザベル、さんは。
 あの、初日の出って、見たこと、あるんですか?」

        「すごく、おめでたい、って……聞きました、けど。」       

まだ、空の色は黒だった。
時間はまだまだある――穂風は、イザベルと話したい。

637イザベル『アーキペラゴ』:2015/12/31(木) 04:16:50
>>636

   「あー、小学校か。ならアタシはわかんねェなァ」

     「ま、そのうち顔拝んどくかね。
      お前の後見人なんだし、いっぺんどんな奴なのか話してみてェ」

        ザッ
             ザッ

    「ふゥん、あのセンセがなァー」

            ザッ
                 ザッ

      「ケケケ、大分ねじ曲がった性根してそーなセンセだからな。
       悪い奴じゃなさそーだけどよ。まァ存分にお礼してやれ。嫌がるぐらいに」

そう言って、意地悪く笑う。
多分あの飄々としたスクールカウンセラーは、真っ直ぐな奴と相性が悪いタイプだから。
この少女と話をすれば、なにかしら愉快なことになりそうだ、なんて思いつつ。

       「おー、もちろんあるぜ」「二ホンに来てからだけどな」

初日の出。
海外ではあまり馴染みの無い文化だが、日本ではむしろ当然のように信仰されているもの。
日本に来たばかりのころ、人に連れられて眠気眼で見に行ったものだ。

         「まァあれだ。二ホン人は『初物』ってのが好きみたいだからよ。
          『初日の出』ってのもその一環なんだろーさ」

     「『一番最初の日の出を見て、今年も一年頑張るぞ』ってなもんなんじゃねェかな」

           ザッ
                   ザッ

            「あと、単純にキレーだし」 

           ―――――ザッ

……足を止める。

          「おう、ついたぜ。ここだ」

着いたのは、海に対して突き出した、岬未満のコンクリート。
少し奥まった場所にあり、周囲に岩も多いため、昼間であっても人は少なさそうな場所。
イザベルにとっての、『とっておき』だ。

     「こっからならどこ向いても海だからよ。日の出もいいのが見れると思うぜ?」

        「日の出までまだ時間はあるけどな」

638葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/12/31(木) 04:49:28
>>637

「私、も……ブリスさんに。
 お友達……イザベルさんのこと、紹介したい、です。」

       ト  ト

「加賀、先生は……
 不思議な人、だった……気がします。」

      コクリ

         「お礼、した方が良いですよね、やっぱり。」

穂風は頷いて、笑みを浮かべる。
べつに嫌がらせなんかじゃあ、ない。再確認した、だけ。

「がんばる……なるほど。
 私、来年もたくさん、あの、頑張りたいですし――」

     「それに、綺麗なのも……
       見てみたいから。楽しみです。」

            ニコー

        ・・・・

           ・・・・  

                 ザ    

足を、止める。ロードバイクの車輪が止まる。

「ここ、ですか――」

      キョロ   キョロ

「こんなところ……はじめて、来ました。
  ……ほんとだ、どっちを見ても、海しか……」 

           ガチャ

ロードバイクを停めて。

             ストン

「……お天気で、よかった。
 イザベルさん……もうすぐ、新年ですね。」

その場に、座り込む。
星が綺麗だ。けれど穂風は太陽を見たい。

                 ――空は晴れていた。

639イザベル『アーキペラゴ』:2015/12/31(木) 05:33:22
>>638

    「いいとこだろ?」

     「とっておきだ。人には内緒だぜ」

人差し指を口元に当てて、秘密のジェスチャー。
ほんとは人に話したって構わない。公共の場所だ。誰も知らない訳じゃない。
でも、二人にとっては秘密にしたい。
ここはイザベルにとって、そういう場所だから。

      「だな。新年早々曇り空、なんてことになんなくてよかった」

   「あとちょっとで2016年。……家族で迎えることもありゃ、一人で迎えることもあったが」
 
                         アミーガ
        「今年はお前と二人だな、『お友達』」

2015年の最後と、2016年の最初。
イザベルと穂風と、二人で終わって、二人で始まる。この二人の世界では。
空には雲一つない。雨なんか、降りそうにもない。

           「ああ、そうだ……」

      「ホフリ、寒くねェか? 一応ココアとか持って来てんだ、アタシ」

                         「ブランケットもあるぞ」

               ゴソゴソ

肩にかけていたショルダーバッグを漁れば、中から出てくるのは魔法瓶。
準備は色々としてあったのだ。もちろん、一人分の準備ではあるが。

640葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/12/31(木) 21:25:05
>>639

  「……はいっ!」

     「私達の、秘密に……!」

      
      ニコ

穂風は深く、笑みを深く浮かべた。

「私……よかった、です。
 だって。始めてみる初日の出、だから――」

           「……えへ。」

たった一日何かが違えば、今日はなかった。
星空も。寒い海風も。そして、隣にいる、得難い『友達』も――

「あ……ええと。
 寒い、です、けれど……お茶は、持って来たんです。」

      ゴソ

スクールバッグから、小さなボトル。
温かいお茶――もう、ずいぶんぬるくはなっていた。

「……あの。それに。
  イザベルさんだって、寒いんじゃ……」

       ビュ オオオ  

冷たい冬風。

       「・・・・」

           「あの、すみません……
             ブランケット、貸してもらっても……」

       モゴ

もごもごと、恐縮そうに穂風は言った。

641イザベル『アーキペラゴ』:2015/12/31(木) 22:09:08
>>640

    「おう。まァ正直アタシもけっこー寒い」「にへへ」

ダウンジャケットを着て、下にはタイツも着て、大分暖かくはしているが。
それでも、寒いものは寒い。
吐く息は白いし、鼻は赤いし。

        ヒョイ

            ファサッ

      「――だからま、ちと狭いのは我慢しろよな?」

だから、すぐ隣に座りこんで、肩を寄せて、ブランケットで二人を包む。
少し狭いが、でも、その分暖かい。

        「へへっ、こうすりゃひとつで足りっからよ」

          「ほらよ、ココアも飲め飲め。アタシ一人じゃ余っちまう」

                 コポポポポ……

魔法瓶のフタを取って、そこにココアを注ぐ。
湯気が立つぐらい暖かいそれを、隣の穂風に差し出して。

      「折角入学も決まって、新しい一年が始まるんだし。
       年が明けたら、どんなことがしてみたい?
       お前ならなんだってできるさ。言ってみろよ」

642葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/12/31(木) 23:08:36
>>641

        ヒョイ
            ファサッ

「わっ……」

「え、へへ。そう、ですね。」

            キュ

穂風はイザベルに身を寄せて、微笑む。
籠の中じゃなくても、安心できる止まり木は、きっとある。

         ス

「ありがとうございます――」

         コク   コク

温かいココアを、喉に通して。

            「ぷ、は……
             美味しいです。」

       ・・・・

     ・・・・

「来年、は……いくらでも、したいこと、あって。」

             ス

穂風は少しだけうつむく。
頭の中には、いくらでも、思いつくことがある。

「色んな、行事、とか。したことないから。
 あと、友達、もっといっぱい欲しいし……
 おしゃれも、ちゃんと、自分でいっぱい。
 部活、も、入ってみたいんです。学校で……
 将来のこと……『夢』も。見つけられたら、なあ……」

             「……他にも、いろいろ。
              いっぱい、いっぱい、いっっぱい!」

     バ!

穂風は、空を仰ぐ。
世界は広いから。一つに絞るなんて無理なんだって穂風は思った。

          楽しいことは。
           なんでも。なんでも。


「……あの、イザベルさんは。
  イザベルさんは、その。何がしてみたいですか?」

思いついたように、穂風はイザベルに問い返す。
その顔は、瞳は、きらきらと未来を見つめていた――

643イザベル『アーキペラゴ』:2015/12/31(木) 23:24:48
>>642

     「おう……おう、おう!」

    「そうだな。いくらでも、なんでも、いっぱいだな!」

彼女の物語は、まだまだ始まったばかりだから。
彼女にとっては全てが新鮮で、全てが未体験で、全てが『やってみたいこと』だから。

      「ん、アタシか?」

翻って、自分はどうだろうか。
イザベル・ドレーク・ノルダーノは……もう、『道筋』を決めた人間だ。
だから、まぁ、決まっていると言えば決まっている。

   「アタシは……たくさん本読んで、たくさん講義受けて」

       「たくさん海行って、めざせ『海洋学者』、ってなもんだけどよ」

遠くの星を見つめながら、つらつらと『今年と同じ来年』の姿を描く。
……そして。

     「さしあたって……そうさなァ」

視線を横に向ける。
そして、笑いかける。

         ニカッ

      「日の出見終わったら、どうだ。一緒に初詣行かねェか?」

   「いつもは行かねェんだが、たまにはなっ!」

644葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2015/12/31(木) 23:58:14
>>643

「はいっ……楽しそうな事、全部っ!」

       ニコ 

そして穂風はイザベルの答えを待つ。
夢を持つひとが、友達が、何をしたいと思うのか――

 「……海洋学者。」

         「やっぱり。
          えへ。夢、ですもんね……!」

夢。大きなもの。
穂風にはまだないもの。
それは凄く眩しい物に思える。

          ・・・・そして。


「……初詣っ!!」

    パァァ ・ ・ ・!

     「わっ、私も! 私も行きたいって――
       イザベルさんと行きたいって、思ってたんですっ!」

穂風は笑顔で、そう返した。

「きっと起きてますから!
 だからきっと、いえ、絶対、いっしょに……!」

          ――それは。

             ――今年最後の、穂風の、大きな笑顔!

645イザベル『アーキペラゴ』:2016/01/01(金) 01:17:04
>>644

     「おう、アタシの夢は、もう決まってっからな」

自分の道はもう決めたから。
後は、道を進むだけ。
途中で行き止まりもあるかもしれないが、それを最初から心配するなんて馬鹿馬鹿しい。

ともあれ。
『そんなこと』よりも――――今は!

      「……ホントか?」

自分と一緒に初詣に行きたいと言ってくれる、友達だ。

        「……うへへ」「んじゃ、約束だからな」

    「日の出見て、そっから初詣だ!」

             ニッ

幸せそうに笑いながら、穂風の顔を横から見上げる。
本当に――――本当に、素敵な一年だったと。素敵なことがあった一年だったと、そう思う。

そして――――――

           「……ん」「そろそろ、かな」

ポケットから出した携帯で時間を見る。
揺れる秒針。カウントダウン。

     「3」

        「2」

           「1―――――」


      「―――――ハッピーニューイヤー、ホフリ!」


――――そして、2015年は後ろに過ぎ去ってしまって。
そして、小躍りしながら2016年がやってきて。
今年最初の言葉と、笑顔を、隣の友達に贈る。

646葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2016/01/01(金) 01:34:16
>>645

 「さんっ」

    「にぃ――」

        「……いちっ!」

        
             「ハッピー……ニューイヤー! イザベルさんっ!!」

一年最初の笑顔も、イザベルに。
去年は一昨年よりずっと。今年は去年より、もっと!

    「……えへ、へ、へ。」

「これで、ええと2016年、なんですね。
 あとは……お日様が昇るの、待つ、だけ……」

              ト

肩をイザベルにぶつける。
穂風は、眠たげに目をこすって、空を見て――

             「……お日様、まだ、かな。
               えへへ、楽しみで、眠れないくらい。」

太陽はまだまだ上ってきそうにないけれど。
穂風は少しだけ、眠くなってきた。けれど、起きていたいから。

「……イザベルさん、初もうでって、あの、神社でするん、ですよね。」

他愛のない話を、イザベルに振る。

647イザベル『アーキペラゴ』:2016/01/01(金) 01:49:26
>>646

    「ああ、2016年だ! またこっから、365日が始まってくんだなァ!」

何が楽しいのか、何が嬉しいのか。
なんだかよくわからないけど楽しくて、なんだかよくわからないけど嬉しくて。
どうしようもなく、笑ってしまう。

     「日の出は……まだまだ先だなァ」

イザベルは、夜更かしに慣れているから平気だけど。
穂風はそうでもなさそうで、少し、いやかなり眠そうだ。
少しだけ心配になって、ブランケットを二人の身体に寄せながら。

    「おう、寺でもやってるらしいけど、黄金町なら神社だな。
     アタシも真面目に行った事はねーからよく知らねェんだけどよ」

   「カミサマにお願い事するんだとよ。今のうちに考えとくか?
    こればっかりは、なんでもかんでもってわけにはいかねェしな」

648葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2016/01/01(金) 02:03:40
>>647

「そう、ですね……
 365日、何回もお日様が、、出て、沈んで……」

         「まだまだ、ですか……
           ……え、えへ、眠くないですから。」

    ふ わ 

小さくあくびをして、慌てて穂風は笑う。
夜更かしは、嫌いじゃないけど、安心してしまったか。

               ・・・・そして。

「かみさま、に。」

「かみさま……は。
 お願いごと、ちゃんと叶えて、くれるかな……」

               キュ

少しだけ、不安になった。
サンタクロースは、あんまりわかってくれなかったから。

         「お願いごと……
          どう、しよう、ううん。」

    「……ちょっと、考えてみます。」

             ウーン

頭を悩ませていれば、眠くもならない、かも――

649イザベル『アーキペラゴ』:2016/01/01(金) 02:18:25
>>648

    「……眠いならちょっと寝ても平気だぞ?
     日の出前には起こしてやるし、最悪目覚まし時計も持って来てあっからよ」

準備は万全。
他にも灯りや本も持ってきていて、ほんとは一人で本を読んで日の出までの時間をつぶすつもりだったのだ。
だから、もしも寝てしまっても平気だ。
――――もちろん、穂風は起きていたいと思うだろうし、イザベルも起きていて欲しいと思うけど。

ともあれ。

      「どーだろなー」

        「まースパッと叶えてくれるもんじゃねェ気はすっけどなァ」

なんとなく、人から聞く限りでは。
みんな、初詣に何を願ったかと聞けば、『これを頑張りたい』だの、『この目標を達成したい』だの。
どちらかといえば、自分への抱負のような印象を受けた。

   「なにをしたいか――――なんだろな、多分」

          「この一年、なにがしたいのか」

     「そいつをカミサマに伝えて、頑張りますから見守っててくださいねって、そういうもんなんじゃねェかな」


             「……まっ、アタシは二ホン人じゃねェしよくわかんねェけどな!」

無責任に笑いながら、悩む穂風を見る。
何を願うにせよ、彼女はきっと大丈夫だろうから。
強く生きていけると思うから、そこは何も心配していないのだ。

650葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2016/01/01(金) 02:31:41
>>649

「ね、ねません……眠くないですから!」

     ブン   ブン

        「お日様が出るまで……
          ……おしゃべり、してましょう。」

小さく頭を振って、冷たい風を浴びる。
穂風は、今起きていることに意味があると思うから。

              ・・・・それに、横にイザベルがいるから。

「……あ、叶えるんじゃ、ないん、ですね。
 えへ、勘違い……してました。私も、よくわからなくて。」

           「……うーん。」

穂風は、少しだけ、考えて。
それから――

「……じゃあ、ええとっ。
 『今年も、一年間、楽しいことがたくさんありますように』……」

         「……『去年よりもっと』!
             こんな感じ、でしょうか。」

欲張りでも、かみさまはきっと怒らないだろう――穂風はそう、思った。

      「イザベルさんは!
        イザベルさんは何、お願いしますか?」

              「……えへ、私、聞き返してばっかり……」

イザベルには夢がある。
だから、お願い事がなんでも、真っ直ぐ進めるんだろう。

                  ・・・・まぶしい、なあ。

651イザベル『アーキペラゴ』:2016/01/01(金) 03:01:23
>>650

      「そうか?」

   「へへ、んじゃ寝るなよな」

上機嫌に、重ねて上機嫌。
だって嬉しい話じゃないか。
お互いに、もっとおしゃべりしていたいと思ってる。

    「今年一年」「去年よりもっと」

      「楽しい事がありますように、か」

それで、彼女の『願い事』。

     「――――欲張りだなァ、ホフリはよッ!」

それはとっても欲張りな願い事で、しかしだからこそ素晴らしい。

       「ああ、ああ、そンならカミサマもノリ気になってくれるさ!」

    「なァに、こういうのはちっとばっか欲張りなぐらいがちょうどいいわな!」

カラカラと笑いながら、その願いを肯定する。
その願い事は、きっと叶うはずだ。
そうじゃなかったら、カミサマを呪ってもいいぐらいだ。

         「で、アタシか!」

     「ま、こーいうのは順番だわな」

さてこちらはどうだろう。
初詣もあんまり行かない、と先ほど言ったが。
そのぐらいだから、お願い事もあんまり考えてはいない。

      「アタシは…………」

少しだけ、考える。
そして、すぐに妙案を思いついた、という顔をして。

   「――――じゃ、『ホフリがもっともっと楽しい一年を過ごせますように』、だなッ!」

うん、それが、一番心からお願いできる事。

    「アタシにはもう『守護天使』様がついてっから、今更カミサマに助けてもらうこともねェし」

         「アタシの分はお前にやるよ」

652葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2016/01/01(金) 03:20:50
>>651

「寝ませんってばっ!」

        「……えへへ。」

寝るなんて、帰ってからすればいい。
楽しい事は、出来るうちに、いっぱい。

「だってっ! 
 もっといっぱい、楽しい事、増えて欲しいですし……」

       「欲張りくらい、しなきゃ。
         ちゃんと、かみさまに分かるように言わなきゃ。」

     ニコ

穂風は笑みを浮かべて、そう返した。
言いすぎなくらい言った方が、そういうのはいいもんだ。

         ・・・・そして。

(イザベルさんのお願い事……
 なん、だろう……やっぱり、海のこと、とか――)

        「……」

           「……えっ。」

思いがけず上がった、自分の名前。
穂風は目を丸くして、イザベルの方に、視線を向けて。

「……あ、あぅ……」

「ず、ずるい。イザベルさん、ずるい……!」

           ニコ

穂風は嬉しい。
そして。いつか感じたような、居心地の悪さはない。

       「……え、えへへ。
         ずるい、です、よ……」

             ・・・・きっと一方的な気持ちじゃ、ないから。

    ・・・・
 
        ・・・・

時間は少しずつ、過ぎていく。
穂風はややまどろんだ様子で、イザベルにもたれかかる。

                   「……寝てません、からね……」

653イザベル『アーキペラゴ』:2016/01/01(金) 03:38:33
>>652

        ニィッ

底意地の悪い、『してやった』という笑み。

   「ケケケ、アタシはホフリより少しばかしお姉さんだからなァ!」

     「その分ちょっとだけズルいんだよ、ざまーみろっ!」

ブランケットの中で、お互いに口だけの悪態をついて笑い合う。
まるで、本当に二人きりの世界になったかのように錯覚してしまう。
自分がいて、相手がいて。
見上げれば夜空があって、見渡せば水平線があって。
座っていれば冷たい風が吹いてきて、体を寄せ合えば暖かい。
それだけの、小さくて幸せな世界。

……でも、その世界は。
その世界も本物だけど、もっと大きな世界があって。
殻が破れる時は、すぐに来る。

       「ったく、おまえも強情っぱりだなァ―――――っと」


    「おい、見ろホフリ。そろそろだぞ」


          ユサ
            ユサ

象徴するように、夜の帳が消えて行く。
じきに、夜明けがくるのだ。
日が昇る。その前に、隣で眠たげにしている少女を起こさなければ。
肩を揺さぶって、水平線を指さした。

654葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2016/01/01(金) 03:55:00
>>653

「そんなの……そんなの、イザベルさんってば……」

          モゴ

              モゴ

ブランケットの中で、悪態に、もごもごと返していたが――

「ん……そろそろ、ですか……」

      グイ


身を起こす。
目は、すぐに見開かれた――水平線。

         「わ、あ……」

                「夜、が。」

明けていく――

穂風には、自分の目から流れる涙の理由が分からない。
水平線からその端を覗かせる太陽は、穂風の何かを溶かしたのかもしれない。

「……イザベルさん。
 すごいですね、初日の出。」

             言葉は少なかった。
              それ以上の物はなかった。

     ・・・・

         ・・・・

太陽が昇ってくる。
穂風は、その様子をじっと見ていた。

655イザベル『アーキペラゴ』:2016/01/01(金) 04:05:27
>>654

   「―――――ああ、綺麗だなァ」

陽が、昇る。
水平線の向こうから、ひょっこりと顔を出して。
暗闇に包まれた世界を塗り替えるように、白と青で世界を染めて行く。
こうして――――新しい一年が始まるのだ。
大仰な言い方をすれば、新しい世界が。
冷え切った大気も、少しずつ暖められていくのだろう。それが、陽が昇るということだから。

      「…………………………」

釣られてか、気を遣ってか、それともイザベルもなにか感じるものがあったのか。
黙りこくって、太陽がその姿を現すのをじっと見つめる。
水平線からやってきた太陽は、徐々に水平線から離れて行くのだ。
そうして輝きで海を照らしながら――――陽は、昇った。

        「……………………」

              ホゥ…

ひとつ、息を吐いてから。

         「………………行くか?」

首を向け、問いかける。

656葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2016/01/01(金) 04:22:37
>>655

明るくなり始めた空の下、穂風はイザベルに向き直る。

「……はい。
 …………はいっ、行きましょう。」

     グシ

目元を手で拭う。
そして、もそもそとブランケットから抜け出して。

         「ええと、神社、ですよね?
          今からで、もう、その、開いてるんですか?」

初詣は、はじめてのこと。
作法も何も分からないけど、面白そうだからやってみたい。

                   「えへ、初めてのこと、ばっかり……」

657イザベル『アーキペラゴ』:2016/01/01(金) 04:35:43
>>656

     「んー、多分開いてるんじゃねェかな」

  「こーいうのって日付変わってすぐでも色々やってるらしーし」

     「つーか基本的に開いてることにはいつでも開いてるはずだ」

出店とかがあるかどうかは、まぁともかくとして。
神社自体は24時間いつでもだれでもウェルカム……なはず。

         ゴソ
            ゴソ

そんなことを言いながら、ブランケットを畳み、魔法瓶も鞄にしまい込んで。

    「まっ、初めてなんて一回こっきりだからよ」

        「楽しんで行こうぜ、ホフリっ!」

笑いかけて、手を差し伸べる。
一緒に行こう。二人で、一緒にだ。
たくさんの人がいる、大きな世界へ。

658葉鳥 穂風『ヴァンパイア・エヴリウェア』:2016/01/01(金) 04:54:10
>>657

「そういうもの、なんですか。
  ……えへ、行ってみたら、分かりますよね。」

神社について、多くのことは知らない。
けれどきっと、楽しいはずだ。

だって。     

      「……はいっ、イザベルさん!
        私、いっぱい、楽しいこと――!」

   パシ


イザベルの手を取る。
だって、この人と一緒なら、きっと――

            「イザベルさんっ、行きましょう!」

                           →『初詣』へ。

659稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2016/01/12(火) 01:21:29

「…………」

     ザ ァーン

緩やかに波が打ち付ける。恋姫は座っている。

海岸。何となく、物思いに耽りたい時、ここに来る。
シチュエーション先行。漫画の読みすぎ、かもしれない。

   カサ

     「うおっ……」

       岩陰のフナムシに、目を留める。
       集団から、偶然はぐれたのか?

              (……探偵、上手い事やってるかな。)   

                     ・・・・思い返すのは、『妹』のこと。

660稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』:2016/01/14(木) 02:25:58
>>659(撤退)

「…………」

     スッ

空もそろそろ、暗い。
今日のところは家に変えることにしよう。

          ザッ

               ザッ


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