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避難所ロールスレ
43
:
名無しさん
:2020/07/22(水) 15:33:38
>>42
「つ、つが……!! げほっ、げほっ……!」
彼女の言葉に揶揄の意図は含まれていなかったかもしれないが、少なくとも美珠自身に似た効果があったことは明確だった。
顔に昇る熱は美珠自身の錯覚によるものではなく、紅潮という形で、外見から見て分かる通りに描き出されている。
品も無く噎せてしまったことで、そこに否定も肯定も挟む余裕もなかったのは、ある意味で幸運だったかもしれない。
落ち着いた後も、動揺から落ち着きを取り戻すのに、ほんの幾許かの空白を挟む必要もあった。
「……ええ、確かに初めてです。でも……貴女にもらったものは、これだけじゃない」
差し出されたスコーンを、指先で摘んで拾い上げて、口へと運ぶ。
その話も名も聞いている。偉大なる碩学が一人。マハトマの女。……彼女はあくまで、そう名乗ることはなかったが。
彼女はあくまで、その好奇心のままに動いた。それだけかもしれない。
彼女が……その口振りのままに、全て知っているのだろう。彼女の上を行こうだなんて、そんな気持ちは欠片もない。
「……貴女は、淡島豊雲野という少女を生み出してくれた」
――――それは、彼女の実験の結果。或いは、その経過だ。
ある魔術師とともに、彼女の魂を分けて生み出された一人の少女。
今まで正しく熱を籠めて、語り続けてきた一人の少女の名だ。きっと彼女にも、覚えがある。
「あの子がいなかったら、私はこの世界が大嫌いなままで……いえ、この場にはいなかったかもしれない。
だから、貴女に感謝しないといけません。あなたには、そんなつもりなんて無かったかもしれないけれど……」
その少女がいなければ、美珠はジェームズ・モリアーティの駒として、呆気なく死んでいたのは間違いない。
誰かが、その事件を解決していたとしても、仮に生き残ったとしても、その先の鬱屈とした人生は変わらない。
あの日、自分に語りかけた少女がいなければ。
「――――豊雲野さんを生んでくれて、ありがとうございました」
……ともすれば。淡島豊雲野という少女に、彼女は非人道的な振る舞いをしたかもしれない。
それでも、彼女がいなければ、自分はこんなにも今を幸福に生きることは出来なかった。
だからそれだけは伝えたかった。貴女の生み出した一人の少女は、ここにいる一人の愚かな人間を、確かに救ってくれたのだと。
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