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【ファンキル】SSスレ

1ゆるりと管理人:2019/07/21(日) 01:13:38

ファンキルの二次創作SSを投稿するスレです。

・18禁の内容はNGです
・原作のキャラクター性を著しく損ねる内容はご遠慮下さい、
また損ねている可能性がある場合は注意書き等でご配慮下さい
・複数レスに跨る場合は投稿者名(いわゆるコテハン)を利用しましょう
・投稿に対する暴言は規制対象になります
・ダモクレスばかり登場させるのは控えましょう

※物は試しのスレなので需要が無く過疎った場合は放置でOKです

623方天画戟と未来日記:2019/08/18(日) 16:10:47
方天画戟「勘違いするなよ。手が届いたからついでに取ってやっただけだ。ていうかおまえなんでついて来てるんだ」

リットゥ「お前がノート返さないからだろ! い、いやいい。ところでそのリンゴ。そんなにたくさんあるなら一つくれないか? がっつくようだが好物なんだ」

方天画戟「おまえ、地元でさんざん食ってんじゃないのか?」

リットゥ「いや、私は守護者だから自分が守ってるもの自分で食べてたら本末転倒というか……そもそもエデンの果実ってリンゴじゃないっていうか……」

方天画戟「おっしじゃあ次行くぞー」

リットゥ「聞けよ」

方天画戟「この本によると、『方天画戟、最大の敵と出会う』とある。時間はこの後すぐ」

リットゥ「ふむ。予め知っておけば覚悟ができていいな」

方天画戟「いや、オレはむしろ自分から挑みに行くぜ! そう、覚悟をもって危機を受け入れるのではなく危機に挑みに行くんだ!」

リットゥ「おお、いい心がけだ」

方天画戟「やあやあ! オレを殺せる者はいるか!」

青龍偃月刀「ここにいるぞ!」

方天画戟「げぇっ! 青龍!」

リットゥ「なんだ逃げるのか方天画戟。覚悟は幸福だぞ」

方天画戟「こんな最大の敵はいらねえよ!」

青龍偃月刀「こら、逃げるな方天画戟! 貴方が立派な武将となるためにこの私が直々に指導をすると言っているのですよ!」

方天画戟「紙と筆はオレには向いてねーんだよ! だいたい勉学ってなんのためにするんだよ!」

青龍偃月刀「勉学はなりたい自分になるためにすべきことなんです! 貴方は覇王になりたいのでしょう! 愚行移山、面壁九年!」

方天画戟「うるせー頭でっかち! 漢字使えば頭よく見えると思ってんだろ! 世の中強けりゃいいんだよ!」

青龍偃月刀「そんなことでは最低最悪の魔王になっちゃいますよ! …………むぅ、逃げられましたか」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



方天画戟「はぁ、はぁ……そんなことない。オレは最高最善の魔王になるんだ」

リットゥ「なんか違う気がする」

方天画戟「間違えた。混沌の世を制する覇王だった」

リットゥ「そこお前のアイデンティティだろう。間違えるなよ」

方天画戟「青龍に乗せられたんだよ。それはともかくリットゥ。オレにはこのノートの使い方がわかったぞ」

624方天画戟と未来日記:2019/08/18(日) 16:11:22
マスター「いや今日も方天画戟のおかげで助かったよ。次の戦いもよろしくね」

方天画戟「はっはっは。これからもオレにどーんと任せておけ」

リットゥ「うまくやったな」

方天画戟「そりゃそうだ。つまりこのノート、書いてあることは変えられないけどそれに対する準備だけはできるってやつだろ。なら普通に準備していればいいだけだ」

リットゥ「そうだな。異族の大群が来ると書いてあればその時間にこちらもキル姫を揃えて待ち構えればいいし、誰かがケガするとわかれば生命水を準備してすぐに回復されれば感謝されると」

方天画戟「そういうことだ。よーし、オレはこのノートで新世界の覇王になる!」


(数週間が過ぎた)


方天画戟「この本によると次の戦いでは剣を持った異族が大量に来るらしい。弓と銃を揃えなけりゃ」

リットゥ「お前顔色悪いぞ。働きすぎだ」

方天画戟「そうもいってられねえよ。日に三十時間の準備行動という矛盾を可能にするくらい動かないとこの本に書かれた予言に対応しきれないだろうが」

リットゥ「待て、中にはフェアリーが期限過ぎて使用不能になるとかいうしょうもないのもあるし。そんなのにもいちいち対応してたら身が持たんぞ」

方天画戟「そこから致命的なことになるかもしれないだろ。とにかく準備しないといけねーんだよ」

リットゥ「方天画戟……お前」



青龍偃月刀「方天画戟」

方天画戟「なんだ青龍。悪いがおまえに構っている時間はねーぞ。来週新しい姫が入ってくる前にマナシード集めなきゃならねえんだ。百個くらい」

青龍偃月刀「勉学をしましょう」

方天画戟「オレの声が聞こえなかったのか?」

青龍偃月刀「たしかに最近の貴方の働きは知っています。隊は前より強くなったし皆も喜んでいます。貴方の貢献もマスターの耳に届いているそうで近々なにか役割が与えられるそうです」

方天画戟「いいことじゃねえか」

青龍偃月刀「貴方がよくないのです。貴方が常々言っていた覇王ってそんなものなんですか。今の貴方って本当に貴方が夢見た貴方なんですか?」

方天画戟「さぁ? 知らねえ。とにかくオレはやらなきゃいけないことが」

青龍偃月刀「方天画戟、貴方はどんな覇王になりたいのですか?」

方天画戟「…………」

青龍偃月刀「わからないなら勉学しましょう」

方天画戟「勉学ってなんのためにするんだよ」

青龍偃月刀「勉学はなりたい自分になるためにすべきことなのです」

青龍偃月刀「方天画戟、貴方はどんな覇王になりたいのですか?」

625方天画戟と未来日記:2019/08/18(日) 16:12:02
リットゥ「方天画戟……」

方天画戟「寝る」

リットゥ「そうか」

方天画戟「なあ、最近のオレってなんか違うよな。よく考えたら覇王ってあんな敵が来る前にチマチマ備えなくて行き当たりばったりにドーンと勝つイメージがあるっつーか」

リットゥ「そうだな。私もどちらかと言うとそんな感じが」

方天画戟「だからこの本はもうオレにはいらねえや」

リットゥ「おお! ついにか!」

方天画戟「ああ、決別の意を込めて」(びりびりびり)

リットゥ「返して…………………は?」

(ノートが縦裂きにされて紙片がひらひら宙を舞う)

リットゥ「ああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」

方天画戟「どうしたリットゥ。突然大声出して」

リットゥ「……………終わった」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



リットゥ「……かくして方天画戟は普段通り覇王目指して青龍偃月刀から逃げ回る日々に戻り……そして君の日記帳はびりびりに破れましたとさ」

セファー「えぇ……。それわたくしだけ損してません?」







セファー・ラジエール
・過去現在未来含むあらゆる知識を書き記した本。



『終わり』

626名無しさん:2019/08/18(日) 18:40:09
これいいな
センスを感じる

627名無しさん:2019/08/18(日) 19:11:40
未来日記!

628名無しさん:2019/08/18(日) 19:34:00
面白かったわ・・・

629名無しさん:2019/08/18(日) 20:40:02
今回いつにもましてパロディネタ多いのね

630パンデミックラブポーション:2019/08/19(月) 06:27:34
【パンデミックラブポーション】①

ある日、それは完成した。
彼女は自らの技術によって作られた大発明をみながら満足げに頷く。

パラケルスス「遂に完成した。存外、調合は難しかったがな」

彼女の後で青狸の秘密道具のテーマでもながれそうなほどに高らかに掲げたそれは、コルクで蓋をされた試験管だった。
試験管のなかにはピンク色の液体が泡をたてて揺らめいている。

パラケルスス「さて、問題はこの惚れ薬をどうするかだが・・・どうしようか?」

惚れ薬を興味本位で作ったは良いが、使用方法までは考えてなかったらしく、パラケルススは椅子に深く腰かけて思考を巡らし始めた。

パラケルスス「使うか?・・・いやいや、私が使うのは、その・・・そういうのは違うと本で書いてあったし、マスターとはプラトニックな関係でありたいというか・・・しかし、周囲には私など及ばない魅力的なキル姫が多いわけなわけで・・・いや、だが・・・」

彼女は深く考え込み始めると回りが見えなくなる。今回はかなり考え込んでいるようで、その時間は数分にも及んだ。そしてーー

パラケルスス「なに!?薬がなくなっている!?馬鹿な、いったいどうして?」

パラケルススが気付くと惚れ薬は忽然となくなっていた。
周囲を見渡して見ると、窓と実験室の扉が開いているのに気付く。

パラケルスス「実験室の窓は前もって開けていたが、実験室の扉は確かに閉めていた。ということはつまり誰かが持ち去ったのか?」

パラケルススはズラリと並んだ試験管の中から黄色い液体の入ったものを取る。入り口に詰めていたコルクを引き抜き床に黄色い液体をまいた。
この黄色い薬はパラケルススが開発した魔道具の一つで映歴ボトルといい、数分前の過去の映像の一部を映し出すことができるものだ。
映歴ボトルの黄色い液体は一瞬で蒸発し、液体から発生した煙が部屋に充満していく。それは次第に人の形を形成していき、一人の少女のシルエットを型どった。

パラケルスス「・・・なるほど、そういえば薬のいくつかを彼女にあげる約束だったな。色も確かに伝えたが、まあ確かに間違う色をしているか・・・まあいい、彼女を取り合えず訪ねるとしよう。・・・間に合えばいいのだがな」

パラケルススは着ていた白衣を脱ぐと、急いで映像に映し出された彼女の部屋に向かった。

631パンデミックラブポーション:2019/08/19(月) 06:36:12
>>630

【パンデミックラブポーション】②

???「でぇ!?私が間違って貴女の薬を持ってったって言うわけぇ?」
パラケルスス「ああ、そうだグリモワール。映歴ボトルで確認した。それで君の姿が映ったのだ、君以外に持っていっていた人物はいない」
グリモワール「知りませんわ、そんな薬。私が持ってったのは赤の薬だもの、間違いないわ」

映歴ボトルに映し出されたのは特徴的な服と、くるくるとロールしたツインテールだった。どう考えてもグリワール以外に考えられないシルエットであり、パラケルススは彼女に惚れ薬のありかを聞くのだが、彼女は知らないと返していた。

パラケルスス「君を信用していないわけではない。だが、万一の勘違いというのもある。薬を確認させてくれないか?」
グリモワール「・・・わかったわ。でも、なんだって言うの?その、ピンク色の薬ってやつ」
パラケルスス「あ、いや、それは・・・だね」
グリモワール「あーいいわ。その反応を見ただけで、まーた変な薬作ったってわかりましたしぃ」

グリモワールは部屋の中央に立ち詠唱を唱える。すると、足元から魔法陣が現れ、そこから3本の試験管が茸のように顔を出した。
グリモワールは3本の赤い試験管を拾ってパラケルスス目の前に突き出す。

グリモワール「ほら、これで全部よ。それによくみなさい。ちゃんとビーカーの中身は赤色でしょ?」
パラケルスス「確かに、なくなった赤色のビーカーの数は合う。だが・・・」
グリモワール「なぁに?私がピンクのビーカーを隠してるって言いたいの?」
パラケルスス「正直、その可能性は否めないが、そうでないとすれば・・・いったいビーカーはどこに?」
グリモワール「さぁ?他の誰かが持ってちゃったんじゃない?それか、貴女が気付かずつかちゃったとか」

しばらく思案するパラケルススを余所に、グリモワールは赤のビーカーをそのまま魔法陣へと落とす。ビーカーは魔法陣のなかに消えていった。

グリモワール「それよりもうお昼よ、ご飯食べに顔出さないと、またマスターが心配してしまいますわよ」

グリモワールはくるりと回り優雅にスカートを靡かせると魔法陣は消失する。そのまま部屋からでようと、自室の扉へと手をかけようとした瞬間、それは起きた。

???「うわああああああああああ!?」

宿舎に木霊する男性の悲鳴。

グリモワール&パラケルスス「マスター!?」

二人はその悲鳴がマスターのものであると察する。
彼女達は急いで悲鳴の下へ駆け出すのだった。

632パンデミックラブポーション:2019/08/19(月) 06:43:16
>>631

【パンデミックラブポーション】③

マスター「パ、パラケルスス!グリモワールも!良かった君たちは無事だったんだね!」

自らの魔力で探知したグリモワールは即座にマスターを見つけ、パラケルススと共に合流を果たした。
マスターは珍しく憔悴しているようで、どこか怯えているようでもあった。

マスター「じ、実は、み、みんなが!みんなが!」
パラケルスス「お、落ち着けマスター。君らしくもない。異族でも襲撃してきたのか?」
マスター「いや、そうじゃない!そうじゃないんだけど・・たぶん、それよりも厄介なことが起きてるんだ」
パラケルスス「大変なこと・・・っと、なんだこれは?」

ずしん、ずしんと断続的な地震でも起きているかのような感覚に襲われるグリモワールとパラケルススは顔を見合わせる。
目の前の廊下の角に明らかに異常なにかが近づいてきている気配に臨戦態勢をとった。

グリモワール「えぇ!?フライシュッツ!?なにこれどういうこと!?」

そこから現れたのはフライシュッツだった。いやフライシュッツなのかと疑問に思うほど、明らかにその風貌は様変わりしていた。
簡潔にいうなら太っている。否、それだけではない。太っている上に巨大化しているのだ。
訳がわからない異常な事態に、グリモワールはドン引きしていた。

フライシュッツ「マ〜スタ〜く〜〜〜〜〜ん!こ〜こ〜に〜いたんだ〜〜!」

ずしんずしんと巨大シュッツが近づいてくる。
この場の3人はフライシュッツの抱き付き癖を知っているからこそ、次にする行動は決まっていた。

マスター「逃げるよ!二人とも!」
グリモワール「と、ととと、当然ですわ。あんなのに抱きつかれたら死んでしまいますもの!」
マスター「ごめん。シュッツ!本当にごめん!」
パラケルスス「訳がわからないな。いったいどうしてこんなことになったんだ?」
マスター「いまはそんなこと考えてる場合じゃないよ!」

3人はフライシュッツを背に逆方向に全速力で走り出す。
幸いにもシュッツは廊下を上手く移動できなかったらしく、まくことは自体は簡単だったが、マスターは遠ざかっていくフライシュッツが心配だった。

フライシュッツ「マスタ〜く〜〜ん!待って〜〜ハグさせてよ〜〜〜〜〜」

マスターからは彼女の姿は見えなくなってしまっていたが、フライシュッツの野太くなった声が、ただただ虚しく廊下に響くのだった。

633名無しさん:2019/08/19(月) 17:50:07
SSと小説の境目みたいな印象

634名無しさん:2019/08/19(月) 18:19:11
フォルカスメインのSSってありましたっけ?

635名無しさん:2019/08/19(月) 18:23:52
なかったと思うよ

636名無しさん:2019/08/19(月) 18:31:05
フォルカスがメインのSS書いて欲しいですねー 仮にも殿堂入りしたキャラなので良いと思うのですが如何でしょうか?

637名無しさん:2019/08/19(月) 18:39:32
お前が書くんだよ(迫真)
いやー、でもss書くって結構労力いるよ?7割がた書いたけどまだ終わらなくて心が折れそう……

638名無しさん:2019/08/19(月) 18:44:20
お疲れなりよ(´・ω・`) っ麦茶

639名無しさん:2019/08/19(月) 18:44:32
やはり管理人はクオリティで選んでるな

640名無しさん:2019/08/19(月) 18:49:25
今回の人のpixivであげてるからまとめないものかと思ってた

641名無しさん:2019/08/19(月) 18:51:38
クオリティの低い俺のは一生まとめに上がらないことが確定した
クオリティってなんだろう?俺はクリティカルしか知らない

642名無しさん:2019/08/19(月) 19:00:58
そりゃあからさまおっぱいの記事ばっか推してロリコンの風評被害記事なんて書こうとせんよ

643名無しさん:2019/08/19(月) 19:08:09
責任転嫁の時間?

644名無しさん:2019/08/19(月) 19:14:30
俺は今自分の文章を書く力のなさを戒めいている時間

645名無しさん:2019/08/19(月) 19:32:06
クオリティの問題ならなんでアルマスやティルの好評だったSSはあがってないの?

646名無しさん:2019/08/19(月) 20:04:24
管理人ちゃんさんもっとSSの記事も上げてくれなりよ(´・ω・`)

647名無しさん:2019/08/19(月) 20:06:04
逆にこういうことになるのならSSは記事にしないほうがいいのではと思えてきた

648リクエストあれば気が向いたら書くかも:2019/08/19(月) 20:33:41
何か書こうと思ってます
候補で気になるのがあれば

・ホラーハウスの続編
・ガチ百合ディスラプ(もちろん描写無し、ギャグ寄り)
・イナンナシスターズ
・キョヌーとヒンヌー 海上編
・妹が好き過ぎる件
・姉が好き過ぎる件
・既存の物語(昔話など)のパロ

全部は無理
時間はかかるかも

649名無しさん:2019/08/19(月) 20:35:50
マ?ディスラプ見たい見たい

650名無しさん:2019/08/19(月) 20:39:27
ディスラプは需要ある

651名無しさん:2019/08/19(月) 20:42:19
僕は王道を往くぅ……ガチ百合ディスラプですか。でも作者さんが書きたいやつが一番最初に書けばいいんやと思うで

652名無しさん:2019/08/19(月) 20:42:31
>>647
俺もそう思ってきた

653名無しさん:2019/08/19(月) 21:10:46
きょぬーとひんぬー

654名無しさん:2019/08/19(月) 21:59:08
百合ディスラプ…いいっすねえ

655パンデミックラブポーション:2019/08/19(月) 22:06:42
>>632

【パンデミックラブポーション】④

3人はフライシュッツから逃げおおせると、宿舎から離れたパラケルススの工房へと逃げ込んでいた。

パラケルスス「まず状況を整理しようか」
グリモワール「そうね。そうした方がよさそう」
パラケルスス「まず、どういった経緯でああなったかを聞きたい。マスター話せるか?」
マスター「うん、大丈夫。話せるよ」

深呼吸をして先程まで乱れていた呼吸を整えて、マスターは語り出そうとした。その時、扉をノックする音が部屋に響く。
一瞬、3人は体を強ばらせる。当然だ。外には原因不明で巨大化したキル姫がいるのだから、このノックの相手が巨大化したキル姫である可能性は低くはない。

パラケルスス「誰だ?名を名乗りたまえ」

ドクンドクンと早鐘を打つ心臓を抑えて、彼女達は来訪者の返答を待った。

???「私です。ミネルヴァです。その声はパラケルススですね?すみませんが扉を開けてはもらえないでしょうか?」

声の主はミネルヴァのものだった。
巨大化の影響を受けたもの特有のふとましい声はなく、彼女はなんの影響も受けてはいなさそうだとマスターは安心して扉を開けようとしたが、それをパラケルススは制止した。

パラケルスス「マスター、扉を開けるのはまってほしい」
マスター「どうして?早くミネルヴァも中にいれてあげないと危ないし、外の巨大化キル姫に見つかっちゃうよ」
グリモワール「そうよ!入れてあげない理由がないわ」
パラケルスス「それは確かにそうだがね。彼女が彼女である確証がない。今は非常時だ慎重に慎重を重ねる必要がある」
グリモワール「だったら、どうするって言うの?」
パラケルスス「私の仮説が正しければ・・・この確認の方法で問題ないはずだ」

パラケルススはミネルヴァ?にニケを先導して中に入ってもらうことを提案する。
ニケはミネルヴァのキラーズと繋がっている梟であり、彼女の最友のパートナーでもある。
彼女が偽物であればニケを寄越すことはできず、仮にミネルヴァ本人が巨大化の影響を受けているのならばミネルヴァのキラーズと繋がっているニケも巨大化して然るべきだ。
ならば当然、パラケルススの工房に出入りするなどできはしない。全ての窓と扉を締め切った状態で侵入できる場所は煙突の隙間だけ。
パラケルススはミネルヴァに煙突を通って中に入って貰うように頼んだ。

ミネルヴァ?「わかりました。ニケを先行させますね」

ミネルヴァ?はマスターたちに聞こえるように言う。その十数秒後、ニケが煙突から姿を現した。
ニケはパラケルススに向けてやや不満そうにホー!と鳴いたあと、グリモワールの膝元に着地する。

グリモワール「もう、ニケったら〜。これでわかったでしょ、ミーネは安全よ入れてあげなさい」

グリモワールは自分の服が汚れることも気にせず、事前に用意していたタオルでニケの体を優しく拭いてあげながら言う。

パラケルスス「む、そうだな。ミネルヴァ・・・疑って悪かった」

パラケルススはそういうと、扉にかけられた施錠魔術を解除する。しかし、彼女は警戒を解いてはいない。
マスターもまた、ごくりと唾を飲み込んでミネルヴァであろう来訪者が入ってくるのを待つ。

ミネルヴァ「みなさん、ご無事だったようですね。顔を見て本当に安心しました」

いつもとかわらない姿のミネルヴァは、心から安心をしたようでほっと胸を撫で下ろした。

パラケルスス「あらためてすまない、ミネルヴァ」
ミネルヴァ「いいですよ。こんな状況です、私だって同じ場面に遭遇したら同じことをしたと思います」
パラケルスス「そうか、そういってもらえるとこちらとしても助かる」
グリモワール「まあ、私はミーネがあんな風になるようなヘマしてるとは思いませんでしたけどね」
ミネルヴァ「それはありがとうグリモ。貴女の信頼が私は凄く嬉しいです。それと、ニケを洗ってくれてありがとうございます」

裏のない無垢な親友の笑顔を向けられ、照れを隠せないグリモワールは先程まで洗っていたニケを手放す。
ニケは満足そうにホ〜ゥと鳴くと、ミネルヴァのマフラーのなかへと戻っていった。

グリモワール「そ、それほどでもないですわ。それより、この事件私たちで手早く片付けてしまいましょう。なーに心配は要らないわ、ミーネと私、パラケルススにマスターがいるんですもの、すぐに解決して見せるわよ」
パラケルスス「そうだな。では、まずは情報交換と整理からだな。各自、自らの見たもの聞いたものを何でもいい、言っていってくれ」

656名無しさん:2019/08/19(月) 23:10:33
ディスラプは王道やな

657名無しさん:2019/08/19(月) 23:29:28
>>655
やっぱ前回のあれで終わりはちょっと変だなと思ってたんだ。続きあってよかった

658名無しさん:2019/08/20(火) 00:15:30
>>648
妹が好きすぎるってファンキルでは珍しいなって。だからこれ読みたいです

659リクエストあれば気が向いたら書くかも:2019/08/20(火) 01:47:31
いただいた要望を参考にします
順次投稿していきますので気長にお待ち下さい

660名無しさん:2019/08/20(火) 07:05:36
楽しみに待ってます!

661名無しさん:2019/08/21(水) 21:31:12
パンデミックラブポーションおもろい
続き待ってます

662パンデミックラブポーション:2019/08/21(水) 23:36:56
>>655
【パンデミックラブポーション】⑤

マスターと3人のキル姫は互いの情報を交換した。
第一に、事件は食堂で起こったらしい。マスターは何人かのキル姫と一緒に、いつも通りの時間に昼食を食べていた。
異変に気付いたのは昼食を開始してしばらくしてのこと。突然一人、また一人とキル姫が苦しみ始めた。
マスターは料理に毒でも盛られたのではないかと考えはしたが、自分も同じ料理を食べていたし、周囲にもそのようなそぶりをしたキル姫はいなかったのだと言う。
そしてキル姫達が苦しみ出して数秒も経たないうちに変化が起きた。その場にいた全てのキル姫がフライシュッツのように巨大化していったのだ。
マスターは目の前の状況に困惑こそすれ、対応をしようとしたのだが最初にマスターを視認した巨大なフライシュッツに抱きつかれそうになり、このままでは確実にヤられると思い逃げ出して現在に至っている、というのがマスターの経緯だった。

パラケルスス「マスターを除いて全員が巨大化したのか」
グリモワール「荒唐無稽な話ね。ま、実際問題起こってるのだから信じるしかないけれど」
マスター「そうだね。僕もこの目を疑ったよ」
ミネルヴァ「何か他に変わったことはありませんでしたか?マスター」
マスター「んー、そうだね。シュッツは目が虚ろだったというか、焦点があってなかったというか、キル姫が暴走したあの感じに似てたかな」
パラケルスス「ふむ・・・暴走状態・・・・・・」
マスター「それと、シュッツの顔が紅潮してた・・・と思う。それと、何度呼びかけてもマスターくんハグハグ言うだけで、僕の声が聞こえてなかった感じだったなぁ」
ミネルヴァ「フライシュッツが、ですか?彼女は確かに、好きな相手ハグをすることが大好きですが、それでも良識はあります。普段の彼女なら、自分が巨大化した状態でマスターにハグをすればどうなるかわからないはずはないと思うですが・・・」
マスター「そうなんだよね。まるで何かにとりつかれでもしている感じだった」
グリモワール「霊的なものも、魔術的な干渉もなかったようだけど?それに、仮にキル姫数人をあんなふうにした原因が魔術や霊的な何かなら私以前に他のキル姫が気づくはずよ」
パラケルスス「・・・・・・」

3人の会話を聞きながら、パラケルススは先程制作してなくなった薬について考えていた。おそらく、いや間違いなく原因はこれであるだろうという直感が嫌な悪寒と共に彼女を襲う。

663パンデミックラブポーション:2019/08/21(水) 23:40:29
>>662

ミネルヴァ「パラケルスス?何か気付いたことでも?」
パラケルスス「ああ、いや・・・・・・その、だな」

パラケルススの腹がきゅっと締まる。腹を下したかのような不快感で汗がダラダラ流れ出す。
今現状知り得た情報の中で、この事態を引き起こした可能性が最も高いのはパラケルススが作った惚れ薬だろう。
いまは仮定仮説の段階だが、この事件を解いていけば、隠したとしても少なからず惚れ薬の件が明るみ出てしまう。彼女はそれを避けたかった。

パラケルスス「(この二人なら、まだいい。・・・だが、マスターに聞かれるのは問題だ。何より・・・女の私が惚れ薬を作った。この隊に男は一人だけ。使用する気は全くなかったと言えば嘘になるが、それでも使う気はなかった。・・・だが、それでも、マスターに勘違いをされたら私は・・・)」

人として嫌われ慣れているパラケルススが唯一耐えられなくなってしまったこと。それはマスターから女性として自分が嫌われることだ。軽蔑、その言葉がこれほど恐ろしく感じられたことはない。
故に、パラケルススの沈黙した。次に話す言葉が見つけられなかった。

グリモワール「(でぇ!それが何か問題なわけぇ!)」

心配そうに彼女の言葉を待つだけの時間、それを破ったのはグリモワールだった。

グリモワール「(まどろこっしいわね!パラケルスス、貴女がどういう気持ちでいるかはそれなりにわかってるつもりよ、でもね、ちゃんと言って受け入れてくれないマスターだと思ってるわけぇ。それってマスターのこと信頼してるって言えるのかしら?)」

以前に霊的な通信手段として念話ができるようにグリモワールは各キル姫にレイラインを繋いでいた。
相手側に魔術的な素養がなければ片道のみの電話のようなものでしかないのだが、それを使ってグリモワールはパラケルススに語りかけている。

グリモワール「(ちゃんと話せばマスターだってわかってくれるし、許してくれるわよ。それにたぶんパラケルススが一番心配に思ってることは杞憂に終わると思いますの。だってマスター、鈍感でしょ?)」
パラケルスス「(そうだ。そうだった。・・・・・・ああ、そうだね君の言う通りかもしれない)」

大丈夫だ。何をもってしても異性にたいしてあまりにも鈍感であるマスターへの信頼は厚いのだからと、パラケルススは最友のキル姫の言葉で一本踏み出すことを決意した。

パラケルスス「・・・実は、つい1時間ほど前のことなんだが」

惚れ薬の件を話した結果、マスターには呆れられもせず、逆に心配される羽目になった。
その後の流れで当然のようにパラケルススの心配は杞憂に終わったわけだが、パラケルススが少し不服そうに頬を膨らませたのをグリモワールは見逃さなかった。

664名無しさん:2019/08/22(木) 06:51:32
1回で書ききろうよ

665名無しさん:2019/08/22(木) 06:56:04
ほならね、書けもしないくせに黙ってろ

666名無しさん:2019/08/22(木) 07:04:40
みんながみんな一回で全部書ききれると思うなよ

667名無しさん:2019/08/22(木) 08:13:22
長編だってあって良いやろ…

668名無しさん:2019/08/22(木) 12:24:03
グリモが出てて気づいたがセブンスメンバーって今まであんま登場しないよね。書きにくいのかな

669名無しさん:2019/08/22(木) 13:12:26
普通書きためるんじゃないんか・・・?

670pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/08/22(木) 15:08:35
「あれ?」
 もはや戦場は船の甲板だけに留まらず地上も広がりつつあった船外の戦いであったが、一つの決着がつきつつあった。
「ケイオスリオン兵が、消えていく」
 乱戦の中での呟き。
 その数秒後には一帯を黒く埋め尽くすほどにいたケイオスリオン兵たちは半数以上が霧か霞のように姿を消していた。
「おい、見ろ! あれ!」
 誰かの声に反応してハルモニア兵もケイオスリオン兵も顔を上げた。
 ケイオスリオン兵たちが乗ってきた海賊船が、マストは折れ曲がり大砲は錆び付き割れていき、みるみるうちに朽ち果てて萎んでいく。
 それはまるで木材が風化して砂になる様子を早回ししているかのようだった。
 そして数秒後には海賊船があった場所には箱を横倒しにして車輪をつけたようなみすぼらしい輸送車が残った。
「な、なんだこれ?」
 ケイオスリオン兵たちに動揺がはしる。
 彼らには知らされていないことだったがケイオスリオン兵たちは実際の人数よりも多く見えるように幻術で偽装をされていたのだった。
 そしてそれは彼らが乗ってきた海賊船に関しても同様。その正体は小さな輸送車だった。
 その幻術をかけていたオティヌスという斬ル姫が戦闘が始まって早々に離脱した以上、その幻術も長くはもたない。
 短期決戦で勝負をつけられなかった以上幻術は解け、あとに残されたのはハルモニア兵が圧倒的に人数において勝る戦場のみ。
 結果としてケイオスリオンの有象無象たちは、数秒呆けた後、

「……え?」「なんか仲間がだいぶ減ったんだが?」「—―――それに船もだいぶ小さくなって」「幻術?」「そういやそんなのが得意な斬ル姫が貸し出されてるとか聞いたような?」「今はどうしてるんだソイツは」「帰った」「えっ?」「この状況俺ら不利じゃね? なんか白いのに囲まれてんだけど」「どーすんだこれ?」「いやもう無理じゃねってやつ」「なーんだ」「がははは」
「…………………………――――――――――………………………」

 一気に沈黙が広がったケイオスリオン兵たちにハルモニア兵たちは囲んで無言で武器を突き付ける。
「その命、神に返しなさい」
「う、わああああ―――――ああああああああ――――――――っ!」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 こちらは船内。
「おう、ようやく見つけたぜ。いやこの場合、待ちくたびれたぜって言うべきなのか?」
 方天画戟は船の武器庫の一室にいた。
 横倒しにしたガラスケースに腰かけて、二メートルを超すハルバード状の長鎗を肩に担いでくつろいでいる。
 部屋に踏み込んできたアロンダイトに対して待ち合わせをしていた友達のように微笑みながら軽く手を振った。
「麻痺が解けてからおまえを探していろいろ動いたけど疲れたんで、ちょっと一休みしてたところだったんだ」
 方天画戟は無邪気に笑っているが部屋は悲惨の一言だった。
 破壊されていない箇所を探すのが難しい。元は鏡のように磨かれていた壁も床も天井も無数の穴が穿たれていて仕切りの役割を果たしていない。
 武器を保管していたガラスケースも残らず倒されていて中身の武具は飛び出してそこらに散乱している。
 それらの間を赤黒く染め上げている血溜りや肉塊はもちろん方天画戟のものではない。返り討ちにした船内のハルモニア兵のものだろう。原型を留めないほどに破壊されていたので何人が犠牲になったのかもわからない。
 それらの惨状をたった一人で作り出したのが方天画戟だ。
「この船の武器ってさ。全部いいやつだよな」
 そんな凶暴性を一切感じさせずに方天画戟は感心した風に足元に転がる槍を蹴った。

671pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/08/22(木) 15:10:01
「オレも他所の国の武器をじっくり見たのは初めてだけどよ。これがかなりの値打ちもんだってのはなんとなくわかるぜ。しかもこの船のどの武器も同じレベルの高級品だ。これ揃えたヤツはどんなヤツなんだ?」
「変な人ですよ」
「そっか。ま、何かを突き詰めたヤツってのは大概変なヤツだ」
 よっと。方天画戟はガラスケースから立ち上がって背筋を伸ばした。
「外はハルモニア兵の勝利でほぼ決まりですね。ほら、逃げていきますよ。あなたの仲間」
「おっ。そうだな」
 アロンダイトが指さした壁の穴の先を見て方天画戟も同意する。それを見てなお長鎗を構えた方天画戟にアロンダイトは問うた。
「もう軍としてのケイオスリオンに勝ち目はないと思いますが、なぜ戦う気満々なんですか?」
「? 戦いたいからに決まってんだろ?」
「理由になってませんよ?」
「そうだな……」
 ギンッ! と突然、アロンダイトの顔面を狙って刺突が放たれた。アロンダイトは左腕で大剣を振るいそれを打ち払う。
「オレは勝つのが好きなんじゃねえ! 戦うのが好きなんだよ!」
 方天画戟は打ち払われた勢いを利用して長鎗を一回転させ柄の部分でアロンダイトの側頭部を横殴りにした。アロンダイトの頭が勢いよく弾かれ体ごと横に飛ぶ。
「ああ? よく見たらおまえ右腕動かねえじゃねえの。可哀そうに。そこらに生命水転がってるから飲むといいぜ。全部割れて中身流れて天使人どもの血とブレンドされてるからさぞ美味いだろうよ!」
 口ではいろいろ話しているがその間も攻撃の手は一切緩めない。
 かろうじて刃だけは防いでいるが柄と石突きによる打突と殴打は避けようがなかった。嵐の中の木の葉のように翻弄され体がボロボロになっていく。
 鎗が容赦なく振るわれるたびにごん、ごん。という鈍い音とアロンダイトが痛みに呻く声が武器庫に響いた。
「腕一本でオレに勝とうなんざ百億年早ぇんだよ!」
 ぐりィ、と石突きをアロンダイトの腹部にめり込ませ。そのまま力任せに持ち上げ放り投げる。アロンダイトの体は床に何度かバウンドすると床に空いた穴に引っかかるようにして動きを停止した。
「うっ……あぁっ……!」
 落下の衝撃で肺から空気を絞り出されてもなお、アロンダイトは立ち上がる。
「……わた、しはっ! あなたを越えて……生きて帰る!」
 黒く焦げた右腕はだらりと垂れて動かないただの重し。
 足も顔も激しい殴打や先の戦闘の影響で痣や傷だらけ動きもかなり鈍い。
 ただ一つ残った左腕一つで大剣を持ち上げ目の前の敵へ突き付ける。
「絶対に、諦めない!」
 
「殺したい顔だ」
 方天画戟の頬が釣りあがる。
 彼女の首筋をぞくぞくとした快感に限りなく近い何かが走り去り後に残ったのは凶暴な歓喜だった。
「いいな! オレはそういう目をした敵が好きなんだ殺すぞ!」
 最上級に高ぶった興奮の赴くままに方天画戟はオオカミのように身を屈めアロンダイトに突撃した。

 方天画戟とアロンダイトの距離。四メートル。
 それは斬ル姫なら一秒もかからずに詰められる距離。

 アロンダイトは思う。
 自分はまだ何もわかっていない。
 この世界のことも、理想社会についても。
 ただ否定する。ハルモニアの選民思想も、トレイセーマの平等主義も。何が違うのかはわからないが、何かが違うという確信がある。
 それを見つけたい。やがて自分なりの答えを導き出したい。
 だから、今ここで負けるわけにはいかない。
「あぁあああああああッ!」
 だから、叫んだ。
 自身の祈りを、決意を、未来をかけた一撃を放つために。
「はぁああああああああああああああ――――――ッ!」

 ―――――キィン!

 瞬間、透き通るような青色の輝きが大剣から放たれた。

672名無しさん:2019/08/22(木) 15:10:36
「なに……?」
 方天画戟の顔が初めて驚愕に歪む。
 隻腕で振るわれた剣が方天画戟の全力の一撃を受け止めていた。
「……っ」
 危機を感じたのか方天画戟が獣じみた動きでアロンダイトから距離を取る。
 大剣から漏れ出すように放たれている青色のマナは、形を変えて螺旋を描いていく。
 大剣の刃に巻き付くように、ぐるぐると巻き上っていく。
 やがて青い光は剣を覆い尽くし、その形を円錐状に変形させる。
「剣が、伸びた? いや違うな……あれは」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

純潔たる騎士の刃(アロンダイト)
・攻撃時に確率発動。運を物攻に上乗せした三百%威力の攻撃を繰り出す

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 その剣はケイオスリオン出身の方天画戟から見れば大きく太い鎗に見えただろう。だが遥かに技術の進んだトレイセーマ出身のアロンダイトに言わせれば見当違いもいいところだ。
 掌の先でゆっくりと回転を続けるそれは例えるならば巨大な削岩機、パイルバンカー、またはドリルと呼称するべきだろう。
「はぁあああああああああああああああああぁぁ―――――ッ!」
 アロンダイトは途轍もない勢いで突進した。
 それはさながら敵陣を食い破り包囲を突破する騎馬兵。一角獣のように大剣を真っすぐ突き出して、咆哮とも絶叫とも取り難い勢いのままに湖の騎士は床を蹴る。
 一瞬後、長鎗と大剣が激しくぶつかりあった。
「……はっ! ははは!」
 今度は方天画戟が受け止める側だった。
 禍々しい黒いマナに染まった長鎗を刺突の姿勢で突き出して、真っ向から青いマナを纏った大剣を迎え撃つ。
「はははははは! なんだおまえ! こんな力どこに隠してたんだよ!」
「あぁぁあああぁぁああああぁ――――ッ!」
 アロンダイトの大剣を覆う青いマナが回転している。
 円錐の形になったマナがドリルのように身を捻らせているのだ。その勢いとエネルギーは凄まじく方天画戟の体がじりじりと押し出されていく。
 ギャァルルリリリリリリリリリリィ! と火花を散らせながら黒と青のマナが互いにせめぎ合う。
 均衡を破ったのは方天画戟の方だった。
「うだらぁッ!」
 長鎗が赤黒い雷光を迸らせ、大剣を真上に弾く。
「うっ……」
 直後、ガラ空きになったアロンダイトの腹部に方天画戟のつま先が打ち込まれていた。方天画戟の投石機のような脚力で彼女の体は上空へ吹き飛ばされる。
 アロンダイトの体は天井に空いていた穴を潜り抜け船外へと射出された。
「やべぇっ!? 外に……」
 方天画戟は焦って穴の真下に移動して上を見上げる。
 逃げられる。と思った。
 しかし、
「まだです! 方天画戟!」
 闘志なおも衰えず。アロンダイトは空中で身を翻し受け身をとりながらまだ大剣を手にしていた。
 構えは変わらず突き。落下の勢いをプラスした一撃で方天画戟を串刺しにするつもりらしい。
「はっ! おまえいいヤツだな!」
 方天画戟も迎え撃つ構えに入る。長鎗を上段に構え、落下してきたところの首を刈り取る姿勢。
 上昇した高度から判断するにそのタイミングは五秒後。

673名無しさん:2019/08/22(木) 15:11:13
 五。
 四。
 三。
「今です!」
「……あ?」
 さっ。と空中でアロンダイトが半身避けた。
 アロンダイトの体に隠れていた人物が現れる。
 背から広がる一対の大翼。炎のように赤い髪。ドレスのような純白の衣服。
 そして何より、その女性の構える美しい弓。
「シェキナー。聖鎖(ジェイル)名ラファエル。大天使の力、お見せしましょう」
 打ち出された矢は音速を超えて、方天画戟へ迫る。
「狙いはフェイントかこの野郎!」
 船の外ではケイオスリオン兵対ハルモニア兵。だがそこにはシェキナーもいたのだった。
 当然船内から斬ル姫が飛び出してくればそちらを見に行くこともあるだろう。
 まして、その真下に敵の斬ル姫がいれば問答無用で攻撃に移る。
 だが、その程度では足りない。
「るァアアッ!」
 バギン! と方天画戟の眉間を貫きかけた矢が長鎗の一振りで空中で四散した。
 たった一度の不意打ちでは方天画戟は倒れない。
「好機!」
 だが直後、アロンダイトが方天画戟へ到達した。
 くるくると、大剣を突き出し滴状の流線形になった体を回転させさらに加速した一撃が方天画戟に迫る。
「ぐっ……!?」
 シェキナーの矢の迎撃のために長鎗を振り切った直後で隙だらけだ。
 おまけに長鎗の射程距離である中距離ではなく。もはや剣の間合い、至近距離。
「う、ぅぅぅぅぅっ!」
 近すぎて、動かすことすらままならない長鎗を防御のために無理やり構えた。
 型も流派もあったものではない見苦しい防御の構え。
「決まりです!」
 当然。

 —――――斬!

 真っ二つになる長鎗。
 アロンダイトの一閃は方天画戟の長鎗を叩き切り。そのまま返す刀で切り込んだ。
 だんっ。大剣の勢いは方天画戟の胸板を貫いても止まらずその体をそのまま壁に縫い付ける。
「がッ―――――――」
 方天画戟が口から大量の血を吐き出した。
 激しく呼吸を乱れさせながらその両腕が鎗を探す。たまたま壁に立てかけてあったハルモニアの鎗を握れたがすぐに手から滑り落ちた。
 ケイオスリオンの彼女にはハルモニア製の武具は使えないのだ。
「な、なんの……ま、だ、ま、だ……!」
 方天画戟はぎこちなく体を動かしながら、自分を貫く刃をずぶずぶとさらに食い込ませ、一歩ずつアロンダイトへ近づいていく。
 そして大剣の鍔が皮膚に接するまで近づいたところで方天画戟は右の拳を振り上げた。
 アロンダイトは動かせない右腕。
 その腕が振るわれアロンダイトの頬に突き刺さる。ガツンという鈍い衝撃音がアロンダイトの頭の奥に響いた。
 数秒後、だらり、と頬に押し付けられていた拳から力が抜ける。
「けっ……」
 方天画戟はもう一度したたかに血を吐くと、笑ったまま意識を手放した。

674pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/08/22(木) 15:13:32
今回はここまでです。なぜか途中でコテハン切れてごめんなさい。あとエピローグをいくつか挟んで終わります。
方天画戟は後で元気に再登場するんで方天画戟推しの方にはごめんなさい許してください

675フォルカスと秘密結社:2019/08/22(木) 15:14:49
『フォルカスと秘密結社』


マスター「最近怠いんだよね」

フォルカス「えっ、それは大変です。熱は測りましたか?」

マスター「いや、肉体的なのじゃなくて精神的に。なんか何してても身が入らないっていうか。ログインボーナスだけで済ませちゃうっていうか」

フォルカス「はぁ、理由のない倦怠感ですか」

マスター「年かなぁ」

フォルカス「そんな年でもないでしょう。……そうですね。それなら気分転換に秘密結社、素晴らしき青空教室に行ってみますか?」

マスター「平和な日常に突如現れた不穏なワード!?」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



マスター「普通に占いサークルって言ってよ」

フォルカス「それっぽい方がいいかと思って」

マスター「それにしても、夜な夜などこかに出かける姫が最近多いなと思ったら。こんな森の中で活動してたとは……」

フォルカス「雰囲気が大事ですからね。暗い森で占いなんてミステリアスで素敵じゃありませんか?」

マスター「夜なのに青空教室って名前にしたんだね……。でもキル姫とはいえ女の子が夜中にうろつくなんて危な」

フォルカス「あ、見えてきました! あのテントが目印ですよマスター!」

マスター(さてはテンション上がってるな)



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



フォルカス「ではメンバーを紹介します」

マスター「なんかフードの人たちが僕の周りを囲んでるんだけど」

フォルカス「占いで使ったルーンストーンがなぜか爆発! 担当は風水。ミッドナイト☆ゲイボルグ!」

ゲイボルグ「魔鎗も占いも必中だぞ」

フォルカス「お祓い、呪い、なんでもござれ! 担当は交霊。アーマータイム☆梓弓!」

梓弓「とりあえず口寄せしますね」

フォルカス「そして最後。ソロモン七十二柱の実力フル活用! 担当は占星術!ハ……ハッピースター☆フォルカス!」

マスター「今ちょっと名乗るの躊躇したよね」

フォルカス「…………はい」

676フォルカスと秘密結社:2019/08/22(木) 15:15:19
マスター「あれ? 三人だけ? 他のフードの皆さんは?」

フォルカス「彼らは信者、もといお客様たちです」

マスター「あ、そう(さりげなく距離を取る)。じゃあメンバーは三人だけなんだ。三人なのに秘密結社なんだ」

フォルカス「たしか法律では取締役が三人いれば株式会社が設立可能だそうです」

マスター「生々しいね」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



フォルカス「とりあえず占ってもらっては」

マスター「じゃあゲイボルグ(はなんか怖いから)じゃなくてまずは梓弓から」

ゲイボルグ「今何か思ったか?」
マスター「いえなにも」

梓弓「では不肖わたくしからマスターを占わせていただきます。……はぁぁあああぁああああ―――――――」

マスター「目をつぶって弓の弦を弾き出したね」

フォルカス「鳴弦です。梓弓は霊を憑依させるためにまずトランス状態に入ります。弓を鳴らす音はそのためのトリガーのようなものと考えてください」

マスター「犬に餌を見せるとヨダレを垂らすみたいな感じで、梓弓は弓の鳴る音とで気絶するってこと」

フォルカス「気絶ではなく睡眠に近いのですが……あ、そろそろです」

梓弓「あぁっ! 来ました! 来た来た来た来た来た来た来たキタキタキタキタキタキタぁっ! いざっアーマータイム! ……がくり」

マスター「だ、大丈夫?」

梓弓「車、車だ。車が欲しいんだよな。できれば外車。左ハンドルってカッコいいからな。世間も俺のことをリッチだと勘違いしてくれる」

マスター「どうしたのこれ」

フォルクス「俗物の霊が憑依したようです。チェンジしてもらいましょう」

ゲイボルグ「よし。一、二、……ポカンっ」

梓弓「……はっ。あ、マスター。どうでしたか。賢者の霊などが憑依してくれていればよいアドバイスができると思ったのですが」(キラキラとした瞳)

マスター「ま、まあまあだったかな」

梓弓「そうですか! それはよかったです! もう一度やりましょうか?」

マスター「……またにするよ」

677パンデミックラブポーション:2019/08/22(木) 15:15:24
今さらですが注意書き

意外とみんな見てくれてるんですね
仕事があるので中々書ききれないので、単発ずつ投稿していく形を取っています
初SSなので色々勝手がわからないところがありますがご了承ください
それと、巨大化キル姫は過剰編キャラの設定を組み込んでいますが、必ずしも同じ設定通りの行動をとるわけではありません
キャラ崩壊しないようにしてはいますが暴走するキャラはそこそこ出てくると思いますので、読む場合は注意してください

678フォルカスと秘密結社:2019/08/22(木) 15:15:59
ゲイボルグ「次は私だな。風水の力で運気をあげるとしよう」(スラスラー)

マスター「何書いてるの?」

ゲイボルグ「貴様の自室の間取りだ。これから私が家具の位置などを指示するからそのように模様替えするのだぞ」

(指導終わり)

マスター「意外と普通だったね。ただの片づけっていうか」

ゲイボルグ「本棚、机、ベッド。一つ一つに意味があるのだ。元より貴様の部屋は散らかりすぎだからな。片付けるだけでも気持ちが改まろう」

マスター「う、痛いところを」

ゲイボルグ「『気』が正しく流れてこそ人に限らず世は健全であるのだ。風水はその流れを人の手で操ろうという技術だからな」

マスター「流れね」

ゲイボルグ「例えば水。例えば血。あるいは大気。モノの流れこそ世の全て。だからこそそれが濁れば乱れる。例えば山の木を伐りすぎれば気の流れは変わり、獣が去り、水も山に溜まらず、川は流れを早め、水は冷えて魚が死ぬ。魚も獣も消えれば人の世は乱れ争いが起きる。一つの滞りが全体へ波及する。だから流れを正常に保たねばならぬのだ」

マスター「なんだか難しい話だね」

ゲイボルグ「簡単だ。ただ貴様の場合は部屋の風通しをよくすればよい」

マスター「なるほど」

ゲイボルグ「ちなみに寝る時にこの等身大リセパララ人形を抱けばさらに運気アップだ。今ならレアメダル300枚だ。買え」

マスター「ちょっとフォルカスーっ! これアウトじゃない!?」

フォルカス「まだ法律上はセーフですね。おそらく」

ゲイボルグ「ちなみに拒否権はないぞ」

マスター「いい話だったのになー」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



フォルカス「生年月日から判断するにマスターに対応するタロットだと女帝。星なら金星です」

マスター「なるほど」

フォルカス「導き出されるアドバイスとしては新しいことを始めればいかがでしょうか? 活力も漲ってきます」

マスター「意外と普通の人生相談みたいな感じ」

フォルカス「占いってそういうものですよ」

679フォルカスと秘密結社:2019/08/22(木) 15:16:33
マスター「不思議な力とかで透視してるんじゃないの?」

フォルカス「魔法を使うまでもなく星は動くしカードが散らばるのも占い師の力加減ですからね。そういったものは特に。私が思うに占いというのは誰かを勇気づけるための道具です」

マスター「人生相談のための?」

フォルカス「はい。だってアドバイスされる時もただ指示されるより、理屈に則ってアドバイスされる方が何となく信頼できるでしょう?」

マスター「その理屈が星の巡りだったりカードだったりするんだ」

フォルカス「言ってしまうと星やカードの解釈も無数にありますから。私はその中から相手にとってプラスになるような情報だけ伝えるようにしています」

マスター「マイナスの情報っていうのもあったんだ」

フォルカス「マスターに対応する星やタロットの情報ですと新しい物好きで慎重さに欠けて自己中心的などがありますね」

マスター「うわぁ……」

フォルカス「普段は気づいても言いませんけどね」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



梓弓「わたくしは精神疾患」

ゲイボルグ「私とフォルカスは新興宗教」

フォルカス「などと見る人が見れば勘違いされるような私たちではありますがこれからもどうか秘密結社・素晴らしき青空教室をよろしくお願いいたします」

マスター「うん。なんだかんだで楽しかったしまた来させてもらおうかな。組織名はともかく」

梓弓「やりました。マスターを引き込めましたよ」(小声)

ゲイボルグ「よし。これで他のキル姫たちも客として取り込めるだろう。ある程度客が増えたらマスターも用済みだ。レアメダルを搾り取って切り捨てるぞ」(小声)

マスター「おい」

フォルカス「悪気はないんですよ」


『終わり』


・おまけ

マスター「なんでゲイボルグはそんなにレアメダル欲しがってるの」

ゲイボルグ「淘汰値のためだ。ショップで売ってる私を買い占める」

680フォルカスと秘密結社:2019/08/22(木) 15:18:55
毎度のことですが投稿するたびにレスをずいぶん使ってしまい申し訳ありません。書き溜めずに随時投稿する理由は自分の場合は勝手ながらモチベの維持のためです

681名無しさん:2019/08/22(木) 16:47:06
自分の書きたい書き方をして大丈夫ですよ
モチベって大事ですし

682名無しさん:2019/08/22(木) 17:13:15
素晴らしき青空教室ってなんか聞いたことあると思ったけどもしかしてキバの素晴らしき青空の会だったかが元ネタ?

683名無しさん:2019/08/22(木) 17:29:54
そうだね

684名無しさん:2019/08/22(木) 17:36:17
>>682
よく気づきましたね

685名無しさん:2019/08/22(木) 18:35:43
つまりフォルカス達がイクササイズでもやるのか……?フードの信者のなかに女たらしのバイオリニストでもいるのか……?

686名無しさん:2019/08/22(木) 18:43:33
ゲイボルグがイクササイズを始めてフォルカスが女たらしのバイオリニストになるのかな?

687名無しさん:2019/08/23(金) 00:31:01
アーマータイム!
獣刻!
メデューサ!

688チャレンジアロンちゃん:2019/08/23(金) 02:33:26
チャレンジアロンちゃん番外編

梓弓
(今日は大吉と出ていたのですが特に何もありませんね)

アロンダイト
「あの...梓弓」

梓弓
「はいどうかしましたか?」

アロンダイト
「梓弓って昔フォルカスやゲイボルグと一緒に占いの館みたいなのをしてたんですよね?」

梓弓
「占いの館?...ああそういうのもしてましたね懐かしいです」

アロンダイト
「私にも占ってくれませんか?」

梓弓
「わかりました」

梓弓は弓の弦を弾き出し『アーマータイム!』と叫び霊を憑依させた

梓弓
「.........」

アロンダイト
「あ、梓弓?」

梓弓?
『やあお嬢ちゃんこんなところでなにしてるの?』

アロンダイト
「え?え?」

梓弓?はアロンダイトの頬を優しく触った

梓弓?
『君みたいな綺麗な女性は始めてだどうだい?僕と一緒にお茶なんてどうだろう?』

アロンダイト
「あのあなたは?」

梓弓?
『僕?僕はそうだな優しい紳士とでも思ってくれたら良いよ』

梓弓?はアロンダイトの顔を引き寄せた

梓弓?
『見るたびに本当に綺麗な顔だ』

アロンダイト
「あ...あ...ああああ////」

アロンダイトは甘い言葉の連続にパニックになり梓弓?を殴り飛ばしてしまった

689チャレンジアロンちゃん:2019/08/23(金) 02:42:22
>>688
殴り飛ばされた梓弓?から青いなにかが飛んでいった

梓弓
「う...うーん...ああ憑依が終わったんですねどうでしたアロンダイト?」

アロンダイト
「ああすみません梓弓ちょっと色々あって殴り飛ばしてしまいました」

梓弓
「いえ憑依させたのが悪かったので私のせいですよ」

アロンダイト
「あなたに暴力を振るってしまったのには変わらないので何かお詫びをさせてください」

梓弓
(お詫び...それだったらアロンにあんなことやそんなことを....)

梓弓
(いえ!待ちなさい梓もしこれで下心全開の頼みごとをしてしまったら...)

*******

アロンダイト
「梓弓あなたには失望しました紅しょうががない牛丼ぐらいに失望しました」

*******

梓弓
(あり得る!!)※あり得ません

梓弓
(ここは距離が縮まる感じのを..)

梓弓
(よしこれならアロンから軽蔑されないはずです!)※アロンダイトは相当な変態じゃない限り軽蔑しません

690チャレンジアロンちゃん:2019/08/23(金) 02:49:38
>>689
梓弓
「アロンダイト」

アロンダイト
「はいなんでしょう?」

梓弓
「私の顎をくいっと上げて一言添えて梓って言ってください」

アロンダイト
「わかりました」

アロンダイト
(やっぱり綺麗とか言われた方が良いんでしょうか?)

アロンダイト
(それならさっきの言葉をもらいましょう)

アロンダイト
「行きますよ梓弓」

梓弓
「はい来て下さい」

アロンダイトは梓弓の顎をくいっと上げた

アロンダイト
「とても綺麗なお顔ですよ梓」

梓弓
「/////////」

梓弓
「ぶはっ!」

梓弓は鼻血を吹き出した

アロンダイト
「梓弓!?」

アロンダイト
「梓弓!梓弓!梓弓ーーーー!?」

梓弓
(今日はやっぱり大吉....いや大大大大吉///////)

アロンダイトの梓弓を呼ぶ声はこだまし梓弓は幸せそうな顔をしてたのであった

691チャレンジアロンちゃん:2019/08/23(金) 02:53:11
フォルカスと秘密結社の話を書いた方許可もなく勝手にネタを使ってしまいすみません
今回もアロンはなんのチャレンジもしてないので番外編です番外編なのでいつもの注意書きはありません

692パンデミックラブポーション:2019/08/23(金) 03:29:18
>>663

【パンデミックラブポーション】⑥

巨大アロンダイト「ロンギヌス、嘘ですよね。・・・・・・嘘といってください」
巨大ロンギヌス「トマトを食べましょう」
巨大アロンダイト「どうして、今が何も信じられない、こんなことはありえない・・・・・・」
巨大ロンギヌス「トマトを食べましょう」
巨大アロンダイト「あああああんまァりぁああぁああああああああアアアあああああアア!?!?」
巨大ロンギヌス「おい、トマト食えよ」

巨大化したロンギヌスとアロンダイトにバレないよう、壁伝いに潜み行動しているものたちがいる。
それはミネルヴァ、パラケルスス、グリモワールの三人だった。

パラケルスス「(しかし地獄絵図だな。正気を失っているもの、常軌を逸しているもの、現実が受け入れられず精神崩壊しているものもいる)」
グリモワール「(あっちじゃ巨大化リットゥが幸せそうにリンゴ食べてたわ)」
ミネルヴァ「(肉体とは別に精神に作用するものであるとは聞きましたが、ここまでとは・・・どちらにしても正気ではないようですね)」

彼女たちはマスターと別れて寄宿舎への侵入を開始していた。というのも、パラケルススの惚れ薬が混ざったのはおそらく食堂、もしくは調理場だろうという推論に至ったからだ。
今回の原因が惚れ薬である可能性が高いと見越し、さらなる暴走の助長を避けるべくマスターはニケと共にパラケルススの工房にいて貰うことに。
グリモワールにレイラインを繋いで貰い念話をできるようにした彼女たちは、食堂を目的地としてスニーキングミッションを開始した。

パラケルスス「(マウス実験しかしてなかったが、なかなかどうして興味深いな)」
グリモワール「(言ってる場合じゃないでしょ。そもそもなんで巨大化なんて副作用があるのよ!)」
パラケルスス「(巨大化については理由はわからない。とはいえ、これは原液をそのまま利用すると、秒で発情してマウスが交尾をしだすぐらい強力なものだった。人間とは違う私達キル姫が使用すればどうなるかは未知数。せめて人体実験ができていれば・・・)」
ミネルヴァ「(あ、止まって下さい。誰かが来ます)」

十字になっている廊下の突き当たりで、ミネルヴァは二人を制止するように促す。
3人は呼吸を潜めて、しばらくその場を動かないようにした。すると、巨大化したクラウソラスと巨大化した与一が全力でタイヤを引っ張りながら走ってきた。

巨大クラウソラス「もっと熱くなれよ!熱い血を燃やしてけよ!キル姫は熱くなった時が、本当の自分に出会えるんだ!だからこそ!こんな時こそ!もっと熱くなれよおおおおおおお!!」
巨大与一「はぃいいいいいいいい!コーチ!私頑張りますぅうううううう!!」

タイヤを引きずる音を廊下に響かせながら、彼女たちは走り去っていった。

パラケルスス「あのクラウソラスまでもが・・・」
グリモワール「なにあれ、なんか別の人格が乗り移ってなかった?」
ミネルヴァ「いよいよ、危ないですね。というか、やはり被害が・・・・・・」

今のところ人命に関わるような被害はないのだが、彼女たちがラグナロク協会から借り受けた寄宿舎は既に半壊している。
各々が巨大化したキル姫の力で好き勝手に暴れ回っているのだ当然の結果である。
先程の巨大クラウソラスと巨大与一のタイヤを引っ張った廊下は、タイヤの汚れやタイヤで擦ったあとでボロボロになっていた。

693パンデミックラブポーション:2019/08/23(金) 03:33:18
>>692

パラケルスス「気にしても仕方がない。全ては後だ、いまは」
???「おい、トマト食えよ」
3人「!!?」

突如として聞こえた声に思わず振り返るとそこには、巨大化したロンギヌスが立っていた。
手には大きなダンボール箱に入ったトマトが散乱している。しかし、それはどれも潰れて中身が飛び出していてぐちゃぐちゃで、とても食べられる状態ではなかった。

ミネルヴァ「待って下さいロンギヌス、その箱の中身は衛生的に良い状態だとは言えません。できれば、ちゃんとしたものを食べたいので、持ってきてはくれませんか?」
パラケルスス「(上手い!いまの流れなら食べて貰いたいロンギヌスはちゃんとしたトマトを持ってくる選択肢が生まれる。そうなればトマトを用意するためにロンギヌスを撒ける。もし再び出会ってもちゃんとしたものをこちらが食べればロンギヌスは欲求を満たして立ち去らせることができる!」
巨大ロンギヌス「この、トマトを、食べて下さい(ニッコリ」
パラケルスス「ダメか」
グリモワール「どちらかと言えば拙かったみたいね」

巨大ロンギヌスはダンボールから取り出した潰れたトマトを、

巨大ロンギヌス「もっとトマト食えよぉおおおおおお!!」

大きく振りかぶってなげてきた。
ベチャリベチャリとペイント弾のように弾けて壁に張り付いていくトマトの流星群。この日、ロンギヌスは新たなスキルを覚えた。

グリモワール「ちょっとちょっとぉ!やめてロンギヌス!服が染みになっちゃうじゃない!」
ミネルヴァ「言っている場合ではないですよグリモ。もっと速く走って撒きましょう」
パラケルスス「ああ、それに賛成だ」

3人は全力でロンギヌスより待避する。幸い、巨大化したキル姫の動きはそれほど速くはなかった。

パラケルスス「(泣いていたな・・・ロンギヌス。それもそうだ。暴走して欲求の捌け口を求めての行動だったとはいえ彼女の本来の意思ではない。・・・・・・すまない、ロンギヌス。この償いは必ず行う。君が祈る神に誓って)」

自らの行いを再び悔いたパラケルススは、念話を一時的に遮断し、巨大ロンギヌスに誓いを立てる。
事態の収拾をつけるべく、より一層力強く地面を踏んで、食堂へ向かうのだった。

694名無しさん:2019/08/23(金) 12:01:56
支援

695名無しさん:2019/08/23(金) 14:15:41
>>688
バイオリニスト本人やんけ

696名無しさん:2019/08/23(金) 17:01:15
>>690
この日梓弓は興奮して眠れなかったとか

697名無しさん:2019/08/23(金) 17:22:18
>>691
いいんですよ

698名無しさん:2019/08/23(金) 18:44:10
>>693
ポプテピ感

699解決アロンちゃん:2019/08/24(土) 02:46:55
解決アロンちゃん5

カシウス
「悩みが円環の如く回る」

アロンダイト
「悩みがあるんですか?」

マスター
「カシウスが悩みって珍しいな」

アロンダイト
「それで悩みってなんですか?」

カシウス
「私より長く生き甘美なる時を与える者を密かに求め続けている」

マスター
「甘美なる時を与える者?」

アロンダイト
「わかりましたマスター」

マスター
「え?わかったの?」

アロンダイト
「はい甘美は甘い物それをくれる人...すなわちカシウスはパティシエがほしいんです!」

マスター
「なんか違くない?それなら甘美なる時じゃなくて甘美なる物を与える者って言わない」

アロンダイト
「ああそうですね...」

マスター
「長く生き...年上ってことかな?」

アロンダイト
「年上で....甘美なる時......ああ!わかった!!」

マスター
「わかったの!?」

アロンダイト
「はい、年上の人から甘やかしてほしいんです!」

マスター
「ああなるほど年上から甘やかしてもらいたいんだな.....」

マスター
「.........」

アロンダイト
「..........」

マスター・アロンダイト
「で?結局どういうこと?」

700解決アロンちゃん:2019/08/24(土) 02:57:28
>>699
カシウス
「ガイアのようなものではない」

マスター
「ガイア?」

アロンダイト
「赤と銀の大地の巨人では?」

マスター
「うん絶対に違うと思う」

アロンダイト
「では母親的なガイアってことでは?」

マスター
「たぶんそれだろうな」

カシウスもゆっくりとうなずいていた

マスター
「じゃあ母親から甘やかされることじゃなくてお姉さんから甘やかされるってこと?」

カシウス
「そう」

マスター
「でも甘やかしてくれるならティファレトとかは?」

カシウス
「私は己の意思を曲げず貫き通す姉が良い」

マスター
「うーんとどういうこと?」

アロンダイト
「己の意思を曲げない.....しっかり者の姉が良いってことでは?」

マスター
「しっかり者の姉か....少し考えるか」

701解決アロンちゃん:2019/08/24(土) 03:09:08
>>700
アロンダイト
「姉...ですか」

マスター
「カシウスって身長高いからな」

カシウス←163cm
「お館様でも困難なこと?」

マスター
「やっぱり姉にするなら身長は高い方が良いだろうしなにかしらカシウスと特徴が似てる部分があった方が良いだろう」

アロンダイト←156cm
「それにしてもなぜカシウスは甘えたいんですか?」

マスター
「いや考えたらなんとなく解るよ」

マスター
「二人と比べて身長が高いのはアルテミスぐらいだしティファレトとかなら甘えようと思えば甘えられるしフェイルだってぬいぐるみがあるから存分に甘えられるだろう?」

アロンダイト
「確かに他二人と比べて表立つこともありませんしカシウスはあまり感情を表に出さないから存分に羽を伸ばして甘えることも出来ませんし」

マスター
「それなら頑張って探して見つけよう」

アロンダイト
「はい見つけましょう!それに私心当たりがあります」

702解決アロンちゃん:2019/08/24(土) 03:27:14
>>701
数分後

マスターとアロンダイトが小声で話した

マスター
「本当に大丈夫?」

アロンダイト
「大丈夫ですうまく行きます!」

アロンダイトは咳払いしてカシウスの方をむいた

アロンダイト
「我々スタッフが総力を結集してカシウスあなたのお姉さんを見つけました!」

※スタッフはアロンダイトとマスターの二人だけです

アロンダイト
「カーテンの向こうにお姉さんがいます!」

カシウス
(ワクワク)

アロンダイト
「それではカーテンオープン!!」

カーテンが開くとアバリスが立っていた

アバリス
「あの...妹に会えるからここで待っていてとマスターから言われて解らずに待っていましたがど、どういうことでしょう?」

アロンダイト
「さあカシウス!お姉さんに存分に甘えなさい!」

アバリス
「え?お姉さん?私が?」

アバリスが混乱しているとカシウスがしがみついて来た

カシウス
「お姉...ちゃん」

アロンダイトはジェスチャーでアバリスに伝えた

アロンダイト
『カシウスを甘やかしてください』

アバリス
『わかりました』

アバリス
「えっと...よしよしカシウスは良い娘ですね」

カシウスは黙ったままアバリスに頭を撫でてもらっていた

マスター
「それでなんでアバリスなの?」

アロンダイト
「髪色がなんとなく似ているからです」

マスター
「それだけ?」

アロンダイト
「それだけです」

マスター
「ああそう....」

時々アロンの思考回路は良くわからないと思うマスターであった

703解決アロンちゃん:2019/08/24(土) 03:54:17
いつも忘れる注意書き
これはアロンダイトの疑問を解決したりしなかったりアロンダイトが人の悩みを解決したりしなかったりするものです

704名無しさん:2019/08/24(土) 06:02:42
頭のなかでお夕飯のこと考えてそう<カシウス

705名無しさん:2019/08/24(土) 07:00:19
>>702
身長の話がでた瞬間アバリスかなと察知してしまった

706解決アロンちゃん:2019/08/24(土) 12:12:41
>>705
この人の頭の良さと自分の単純思考が露呈してしまった

707名無しさん:2019/08/24(土) 14:26:37
>>706
今見たら毛先ピンクなだけで似てる!
それはマスターの妄想が捗った瞬間だった。

708名無しさん:2019/08/24(土) 16:37:49
この理論ならアロンは末の妹になれるのでは…?
マスターは訝しんだ

709EPILOGUE アロンダイト:2019/08/24(土) 16:58:15
EPILOGUEアロンダイト

アロンダイトのSSです。

EPILOGUEアルマス、ティルフィングと同様に新章ストーリー後を想定して書いてます。

今回はマスターは出ません。

アロンダイトの高潔さが少しでも伝われば幸いです。

今回はEPILOGUEアルマス、ティルフィングと比べると若干話の方向性?が違います。

その辺りも含め、本SSの内容について意見・感想の方を頂けると嬉しいです。

710EPILOGUE アロンダイト:2019/08/24(土) 16:59:18

ふとしたとき思い返す。

かつて、肩を並べて共に戦った彼女との記憶。

初めはナディア姫をケイオスリオンから取り戻すまでの協力関係だった。

彼女はお人好しだ。

他国の斬ル姫である私を信用し、自国を襲った斬ル姫にも迷い無く手を差し伸べる。

そんな彼女に希望を見いだした。

彼女の考え方こそが、本当の意味での平等社会を実現できるかもしれないと。

斬ル姫もイミテーションも、皆、平等に生きられる世界。

国の命令に反し、彼女と共に戦うことを選んだ。

それがトレイセーマの為になると、そう信じていたから。

しかし、私の想いが届くことはなかった。

トレイセーマに戻った私に待っていたのは、思想矯正施設エドゥーによる再教育。

識別系統B・02となり果てた私は、背中を預け合った戦友を騙し、

背後から斬りつけた。

彼女は、私のことを信じきっていた。

自国の斬ル姫ではない私のことを信じてくれていたのに。

私が彼女の信頼を踏みにじった。

今ここに居る私は、ただの抜け殻。

かつての誇り高き騎士、アロンダイト・獣刻・ユニコーンはもういない。

711EPILOGUE アロンダイト:2019/08/24(土) 17:00:04

「ふっ……!」

トレイセーマの首都グライヒハイツより少し離れた所にある森。

そこが私の修行場所。

今日もまた、雑念を払うように剣を振るっていた。

「…………」

静かに呼吸を整え、剣を鞘に納める。

「アナタも懲りませんね、梓弓」

「……気づいていましたか」

木々の間から梓弓が姿を現す。

「こうも連日会っていたら、嫌でも分かります。何の用ですか?」

「アナタに会いに」

「冗談は結構です。またはぐらかすつもりですか?」

「用件を言えば、アナタは断るでしょうから」

最近はいつもこうだ。

私の行く先々で梓弓に会い、何をするでもなく別れる。

少しウンザリしていた。

「前向きに検討すると言えば、その用件を教えて貰えませんか?」

「引き受けては貰えないのですか?」

「……それは了承しかねます」

内容も聞かずに頼み事を請け負うことはできない。

断るのが目に見えているというなら尚更。

「……これ以上良い返事は、引き出せそうにありませんね」

だが、梓弓は観念したようだ。

「アロンダイト、もう一度トレイセーマの騎士となるつもりはありませんか?」

正直に言えば、こうなるような気はしていた。

今の私は騎士じゃない。

「私は、もう二度と騎士を名乗るつもりはありません」

「その資格が、私にはない」

「まだ気に掛けているのですか……?」

忘れられる訳がない。

「アルマス・妖精結合・ティターニアのことを」

あの時の後悔が、今も私を縛り付けているのだから。

712EPILOGUE アロンダイト:2019/08/24(土) 17:00:51

「かつてのトレイセーマは、平等という名の絶対的支配を強いる国でした」

多種族間での諍いを避ける為に、規律を逸する者に厳しい罰を与えた。

国の意向に反する者には、思想矯正施設エドゥーで心の自由を奪った。

トレイセーマに仇なす存在は、オーダーキラーズが全て始末した。

「上辺だけの平等社会、平和という名の鎖が皆の自由を奪っていた」

「梓弓、アナタは今のトレイセーマをどう思いますか?」

梓弓は少し考えたようだが、答えるまでにそう時間はかからなかった。

「……トレイセーマは変わりました。様々な種族の良いところを尊重しあう、本当の意味での平等社会に」

「私も同意見です」

今のトレイセーマには思想矯正施設エドゥーもオーダーキラーズの暗躍もない。

「トレイセーマが理想社会を実現した今、もう私の役目はないんです」

梓弓は何か言いたげだったが、その言葉を飲み込み控えめに微笑んだ。

「それでも鍛錬は欠かさないのですね」

「……ただの習慣です」

剣を未だに振るうのは、何かに没頭していないと余計なことを考えてしまうからだ。

これは現実逃避だ。

私の嘘は、梓弓に見抜かれていたのかもしれない。

控えめに笑った彼女の目に、悲しみの色が混じっていた。

ーーーーーー

ーーー

「……梓弓、いつまでついてくるのですか?」

「帰り道が同じだけです」

梓弓は目を逸らしてサラッと答えた。

……もしかすると私は心配されているのかもしれない。

「……いつもより街が騒々しいですね」

「気にする必要はありません、早く戻りましょう」

梓弓のその発言に何か含むものを感じた。

「あーっ!アロンダイト!」

「!!」

数ヶ月ぶりに聞く、懐かしい声に心を揺さぶられる。

振り返るとそこには、私が裏切り傷つけた斬ル姫

「久し振りね」

アルマス・妖精結合・ティターニアがいた。

713EPILOGUE アロンダイト:2019/08/24(土) 17:01:44

「アル、マス……?どうしてトレイセーマに?」

「えっと説明すると、ギルが外交官になってるんだけど今日はトレイセーマの会談で外交官として今日行くに当たって1人だと危ないから護衛として私とティニが同行するようにオベロン様に頼まれて普段はモラベガが付き添いなんだけど…」

「ちょ、ちょっと待ってください!」

「どうしたの?」

「端的に言ってください」

「言ってるでしょ!」

アルマスは相変わらず口下手だった。

ーーーーーー

ーーー

梓弓の協力で、アルマスの言いたいことを何とか理解することができた。

街がざわついていたのは、ティルヘルムからの使者が来るとの噂が流れていたからみたいだ。

「つまり、アルマス。アナタはギルの護衛でトレイセーマに来たのに、迷子になってしまったということですね」

「ギルとティニが迷子になったの」

「……変な所で強情ですね」

意地っ張りなアルマスに梓弓は呆れている。

「アルマス、護衛なら早く合流した方がいいのでは?」

「え?」

梓弓の提案に、間抜けな声を漏らしてしまう。

確かに、アルマスは早くギルと合流すべきだ。

でも、

「ん……、そうね。名残惜しいけどティニ達が心配だし、そろそろ…」

「ま、待ってください!」

まだ、伝えたいことを言えてない。

気がつけばアルマスの腕を掴んで、引き止めていた。

「私がギルに手を上げ、アナタを騙し、傷つけたことを謝罪させてください」

「良いわよ、そんなこと。ギルももう気にしてないわ」

……そんなこと?

「何を言ってるんですか?私はアナタを裏切ったんですよ…!?」

「エドゥーで再教育されてたから、でしょ。そんなのは裏切った内に入らないわ」

そんなの。

あの日の出来事に対するアルマスの考え方に、温度差を感じた。

ーーーダメだ。

アルマスは気にしないと言ってくれている。

だから、これだけは尋ねてはならない。

「アルマス、あなたは……」

聞けば、きっと後悔する。

そんな予感があった。

ーーーあったのに

「私に裏切られたことを、どう思っているのですか?」

止められなかった。

714EPILOGUE アロンダイト:2019/08/24(土) 17:02:22

私は、戦友に裏切られたらきっと許すことはできない。

洗脳されていたという理由があるならまだ分かるが、それでも「そんなこと」の一言で片付けられない。

「私は……」

アルマスが視線を逸らして言い淀む。

それでも、意を決したのか、私に目を合わせてハッキリと告げた。

「私が至らないばかりに、アナタにつまらない負い目を感じさせた」

「アナタにあんな真似をさせたこと、後悔してる」

アルマスの表情は真剣そのもので、

それが彼女の本心だということは疑いようがなかった。

「…………」

「……ちょっと辛気臭い話になったわね。ティニ達が待ってるから、もう行くわ」

ギル達と合流する為に、アルマスはその場を去っていった。

再び呼び止めることはできなかった。

ーーー私が至らないばかりに、アナタにつまらない負い目を感じさせた。

アルマスが至らない?

そんな訳がない。本気で言ってるなら、それはただの傲慢だ。

ーーーアナタにあんな真似をさせたこと、後悔してる。

私が裏切ったのは、私の心が弱かったからだ。

アルマスが後悔するようなことじゃない。

そう、本来なら。

「…………滑稽、ですね」

温度差の正体。

アルマスにとって私は、戦友、ではなく。

もう、護られる側の人間だった。

715EPILOGUE アロンダイト:2019/08/24(土) 17:02:59

その夜は、トレイセーマの宿で寝泊まりすることになった。

ベッドに寝転び、考え事にふける。

ーーー私に裏切られたことを、どう思っているのですか?

問い掛けに答えた時の、アロンダイトの表情を未だに忘れられない。

「…………アロンダイト」

私にとって、アロンダイトは……

「アルマス、お客さんが来ましたよ」

ティニに呼ばれ、思考を打ち切る。

「私に?」

扉を開けると、そこにいたのは意外な客人だった。

「……梓弓?」

716EPILOGUE アロンダイト:2019/08/24(土) 17:04:06

夢を見た。

かつての記憶。

アルマスと共にケイオスリオンへ向かい、

ハルモニアへ同行し、

またケイオスリオンに戻って。

そして、トレイセーマで再会した。

ギルに手を上げ、アルマスを騙し、傷つけた。

717EPILOGUE アロンダイト:2019/08/24(土) 17:04:40

「…………」

最悪の目覚め。

雑念を払う必要がある。

今日も剣を振るうべく、修業場所へ向かう。

修業場所には、既に誰かがいた。

また梓弓かと思ったが、違う。

「アルマス……?どうして、アナタが……」

よく見るとティターニアやギルも傍に控えていた。

「……アロンダイト、アナタに決闘を申し込む」

突然の申し出に思考が固まる。

「アルマス、何言ってんだ!?」

「ギル、大切なことなの。黙って見てて」

ギルが慌てた様子でアルマスを諌めるが、彼女の決意は固い。

「……私達が戦う理由なんてない筈です」

「私にはある。勝負に乗れないなら、もう剣は捨ててしまいなさい」

「言ってくれますね」

斬ル姫にとって、武器は自分自身だ。捨てられる訳がない。

「何のつもりかは知りませんが、そんな挑発には……」

「逃げるの?まぁ、仕方ないわね」

「ーーーアナタはもう騎士じゃないんだから」

その言葉に、胸が強く痛んだ。

「アルマス、アナタには関係ないことです」

「本気で言ってるの?」

「……えぇ」

アルマスは唇を噛み締める。

「もう、いい」

718EPILOGUE アロンダイト:2019/08/24(土) 17:05:24

「ーーー構えないなら、こっちからいくわ」

次の瞬間、アルマスの手元に剣が顕現され、

「!!」

私はアルマスの剣戟を自身の剣で捌ききった。

「アルマス!何を!?」

「アナタが分からず屋だからよ!」

再び斬りかかってくるアルマスに、真っ向から剣を振るい、鍔迫り合う。

「……この程度なの?昔のアナタはもっと強かった!」

アルマスに少しずつ押されていく。

力比べではアルマスに分があるようだ。しかし、

「それは、勘違いです!」

アルマスの剣を受け流し、がら空きの背中に蹴りを見舞う。

ーーー速さは私の方が上だ。

そう考えた刹那。

「甘い!」

アルマスは蹴り飛ばされた不安定な姿勢のまま、手をかざし氷弾を放ってきた。

身を捻り、氷弾をかわすが

「はあああ!!!」

体勢を立て直したアルマスに、大上段から剣が振るわれた。

「ぐっ……!」

咄嗟に飛び退き、事なきを得る。

不倒不屈の剣、それがアルマス。

彼女の眼は真っ直ぐ私を捉えていた。

「もう一度言うわ。アロンダイト、今のアナタは理想を追ってた頃のアナタより遥かに弱い」

「剣を交えた今ならわかる。どれだけ腕を上げようと、アナタの剣には心が伴ってない」

719EPILOGUE アロンダイト:2019/08/24(土) 17:06:50

「アロンダイト、平等社会の実現はどうしたの?」

それは、かつて自分が思い描いていた夢。

しかし

「実現、したんです……」

今のトレイセーマに暗い陰はない。

「トレイセーマは、斬ル姫も常人も、皆が平等に生きられる国になりました」

本当の意味での理想社会になったのだと、心の底から信じている。

「夢は、叶ったんです……」

だから後悔なんて、ない。

だけど、アルマスは納得しなかった。

「夢が叶ったっていうなら、どうしてそんな辛そうにしてるのよ!」

「それは……」

「確かに平等社会は実現したのかもしれない。でも、それがどれだけ脆いものなのか知らないアナタじゃない筈よ……!」

「この平和を誰かが守っていかないといけない!そうでしょ!?」

そんなこと、分かってる。

「……でも、私にはその資格がないんです」

「私が、アナタを裏切ったあの日から」

仲間を裏切る人間が、国を護る者として必要とされることは決してない。

それが、私が騎士をやめた理由。

「この……絶バカ!」

「ティニ、アロンダイトの目を覚まさせるわ!一気に畳み掛ける!」

アルマスの背中から、蝶のような形をした蒼い翼が形成される。

これが、アルマスの本気。

「ーーー行くわよ、アロンダイト」

「!!」

声をかけられた次の瞬間には、目の前に剣を振りかぶっているアルマスがいた。

ーーー速い!

「ぐ……!」

彼女の一撃を剣で受け止めるが、踏ん張りがきかず吹き飛ばされる。

追撃を逃れる為に、すぐさま受け身をとるが、

「遅い」

背後から掛けられた声に、全身が総毛立つ。

ーーー間に合わない!

振り向くこともせず、そのまま前方へ跳ぶ。

先程まで自分がいたその場所は、アルマスに切り払われていた。

720EPILOGUE アロンダイト:2019/08/24(土) 17:07:27

「ハァっ……!ハァ……!」

力比べでは彼女に分がある。

今となっては、速さも圧倒的に彼女の方が上だ。

思い知らされるアルマスとの実力差。

満身創痍の自分に対し、アルマスは息一つ乱していない。

その余裕からか、アルマスは戦いの最中にも私を問い詰めていく。

「誰かを護るのに資格が必要だなんて本気で思ってるの!?」

「アナタの夢は……、たった一度の失敗や挫折で諦めるようなものだったの?」

「……たった一度?」

怒りで頭が沸騰していく。

その言葉を、アルマスから聞きたくはなかった。

「そのたった一度で、取り返しのつかないことを私はしたんです!!」

「他国のキル姫である私をアナタは信じてくれた……。本当に……、本当に嬉しかった!!」

「なのに、私は……」

例えアルマスが許しても、私は私を許せない。

「……無神経なことを言ったのは謝る」

「でも、私もギルもこうして無事でいる、取り返しのつかないことなんてない!!」

「!!」

アルマスのその言葉に、どれだけ救われたのだろう。

アルマスは、私を糾弾するために決闘を申し込んだのではなく。

「まだ、騎士に戻るつもりにはなれないの……?」

私を励ますためのものだった。

721EPILOGUE アロンダイト:2019/08/24(土) 17:07:57

「ごめんなさい、アルマス」

「騎士に戻りたい気持ちは、あります。……でも」

この決闘で思い知らされた。

「トレイセーマを護るには、力が足りない。私は、余りにも…………弱い」

私がどれだけ望んでも、きっとアルマスには届かない。

いや、オーダーキラーズの足元にも及ばないのだろう。

だというのに。

「ーーー馬鹿にしないで」

「アロンダイト・獣刻・ユニコーンは、理想を求める誇り高き騎士よ」

「アロンダイト、例えアナタでも、私の戦友を馬鹿にすることは許さない」

こんな私を、アルマスは認めてくれた。

「長い旅の中で、共に戦ってきた」

「零装支配されていても他国の人間に手を差し伸べることを厭わなかった」

「例え命令に背くことになっても、自国の理想の為に自分を貫いた」

信じてくれた。どこまでも真っ直ぐに。

「そんなアナタを、弱いだなんて言わせない!」

きっと、アルマスはそれを伝える為だけに勝負を持ち掛けたのだろう。

言葉だけでなく、剣に乗せた想いを通して。

「……私も人のことは言えませんが、アナタも大概不器用ですね」

「今更でしょ?」

そう言って、アルマスは微笑んだ。

「どうして、そこまで私を信じてくれるのですか……?」

「そんなの決まってる」

「私が初めて背中を預けた仲間が、アナタだからよ」

722EPILOGUE アロンダイト:2019/08/24(土) 17:08:27

決闘の途中だというのに、自然と笑みがこぼれた。

「信じます」

「自信がないんじゃなかったの?」

勿論、そんなものはない。

「私を信じてくれる、アナタのことを信じると決めたんです」

剣を構えて、目を閉じる。

私が思い描く強さ。

真っ先に思い浮かぶのは、アルマスの姿で。

あぁ、そうか。

アルマスの強さは、絆だ。

だから、もう大丈夫。必要なのは覚悟だけ。

だって、今の私には信じてくれる人がいる。

どこまでも、真っ直ぐに。

今までの弱い自分に別れを告げた。




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