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【ファンキル】SSスレ

671pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/08/22(木) 15:10:01
「オレも他所の国の武器をじっくり見たのは初めてだけどよ。これがかなりの値打ちもんだってのはなんとなくわかるぜ。しかもこの船のどの武器も同じレベルの高級品だ。これ揃えたヤツはどんなヤツなんだ?」
「変な人ですよ」
「そっか。ま、何かを突き詰めたヤツってのは大概変なヤツだ」
 よっと。方天画戟はガラスケースから立ち上がって背筋を伸ばした。
「外はハルモニア兵の勝利でほぼ決まりですね。ほら、逃げていきますよ。あなたの仲間」
「おっ。そうだな」
 アロンダイトが指さした壁の穴の先を見て方天画戟も同意する。それを見てなお長鎗を構えた方天画戟にアロンダイトは問うた。
「もう軍としてのケイオスリオンに勝ち目はないと思いますが、なぜ戦う気満々なんですか?」
「? 戦いたいからに決まってんだろ?」
「理由になってませんよ?」
「そうだな……」
 ギンッ! と突然、アロンダイトの顔面を狙って刺突が放たれた。アロンダイトは左腕で大剣を振るいそれを打ち払う。
「オレは勝つのが好きなんじゃねえ! 戦うのが好きなんだよ!」
 方天画戟は打ち払われた勢いを利用して長鎗を一回転させ柄の部分でアロンダイトの側頭部を横殴りにした。アロンダイトの頭が勢いよく弾かれ体ごと横に飛ぶ。
「ああ? よく見たらおまえ右腕動かねえじゃねえの。可哀そうに。そこらに生命水転がってるから飲むといいぜ。全部割れて中身流れて天使人どもの血とブレンドされてるからさぞ美味いだろうよ!」
 口ではいろいろ話しているがその間も攻撃の手は一切緩めない。
 かろうじて刃だけは防いでいるが柄と石突きによる打突と殴打は避けようがなかった。嵐の中の木の葉のように翻弄され体がボロボロになっていく。
 鎗が容赦なく振るわれるたびにごん、ごん。という鈍い音とアロンダイトが痛みに呻く声が武器庫に響いた。
「腕一本でオレに勝とうなんざ百億年早ぇんだよ!」
 ぐりィ、と石突きをアロンダイトの腹部にめり込ませ。そのまま力任せに持ち上げ放り投げる。アロンダイトの体は床に何度かバウンドすると床に空いた穴に引っかかるようにして動きを停止した。
「うっ……あぁっ……!」
 落下の衝撃で肺から空気を絞り出されてもなお、アロンダイトは立ち上がる。
「……わた、しはっ! あなたを越えて……生きて帰る!」
 黒く焦げた右腕はだらりと垂れて動かないただの重し。
 足も顔も激しい殴打や先の戦闘の影響で痣や傷だらけ動きもかなり鈍い。
 ただ一つ残った左腕一つで大剣を持ち上げ目の前の敵へ突き付ける。
「絶対に、諦めない!」
 
「殺したい顔だ」
 方天画戟の頬が釣りあがる。
 彼女の首筋をぞくぞくとした快感に限りなく近い何かが走り去り後に残ったのは凶暴な歓喜だった。
「いいな! オレはそういう目をした敵が好きなんだ殺すぞ!」
 最上級に高ぶった興奮の赴くままに方天画戟はオオカミのように身を屈めアロンダイトに突撃した。

 方天画戟とアロンダイトの距離。四メートル。
 それは斬ル姫なら一秒もかからずに詰められる距離。

 アロンダイトは思う。
 自分はまだ何もわかっていない。
 この世界のことも、理想社会についても。
 ただ否定する。ハルモニアの選民思想も、トレイセーマの平等主義も。何が違うのかはわからないが、何かが違うという確信がある。
 それを見つけたい。やがて自分なりの答えを導き出したい。
 だから、今ここで負けるわけにはいかない。
「あぁあああああああッ!」
 だから、叫んだ。
 自身の祈りを、決意を、未来をかけた一撃を放つために。
「はぁああああああああああああああ――――――ッ!」

 ―――――キィン!

 瞬間、透き通るような青色の輝きが大剣から放たれた。




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