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【アク禁】スレに作品を上げられない人の依頼スレ【巻き添え】part3
1
:
名無しリゾナント
:2012/11/24(土) 11:55:51
アク禁食らって作品を上げられない人のためのスレ第3弾です。
ここに作品を上げる → このスレの中で本スレに代理投稿する人が立候補する
って感じでお願いします。
(例)
>>1-3
に作品を投稿
>>4
で作者が代理投稿の依頼
>>5
で代理投稿者が立候補
>>6
で代理投稿完了通知
立候補者が重複したら適宜調整してください。ではよろしこ。
893
:
名無しリゾナント
:2013/06/10(月) 16:22:18
>>513-520
の続きです
喫茶リゾナント。
優樹が攫われたと亜佑美に一報を入れた遥だが、攫った人物を追うとしてそのまま電話を切ってしまった。
それと同時に爆発事故の現場を報じていたテレビの画面が、ふっと暗くなる。
次の瞬間にテレビが映し出したのは、煌びやかな衣装を身に纏ったアイドルが歌い踊る姿だった。
「ちょっと、誰ですか!?テレビのチャンネル変えたの!」
しかもこんな時にアイドルの番組だなんて。
亜佑美は先輩である聖を反射的に見てしまう。が、聖は自分ではないと言いたげに首を大きく横に振った。
「この人、松浦亜弥やん」
聖と同じくアイドル好きな衣梨奈が、言う。
チャンネルを変えたのはこっちのKYか。と思いきやそうではなさそうだ。いや、それ以前に。
「おかしいです。どこのテレビ局も爆発事故を報じているはずなのに」
そう言う春菜の指摘は、正しかった。
ついさっきまで、ザッピングしながら他の報道番組を見ていたばかり。いつもは重大な事件が起きているのにアニメを放送している
あの局ですら、特別報道番組に切り替えていたはず。
「それにこの時間はこんな歌番組、やってません」
きっぱりと言い切る春菜。
すると、画面の中でおかしなことが起こる。それまで歌い踊っていた松浦亜弥が、カメラにゆっくり近づき、そしてまるで画面を隔て
たこちら側に向かって話しかけてくるような態度を取ったのだ。
「いやいや、鋭いね。そう、これは喫茶リゾナントだけで見ることができる特別番組」
カメラにアップで映るその顔は、既に国民的アイドルのそれではなかった。
まるで月が雲に隠れるかのように、表情の闇が増してゆく。
894
:
名無しリゾナント
:2013/06/10(月) 16:23:27
「はじめまして。芸能人『松浦亜弥』は世を忍ぶ仮の姿」
ぱちん、と指を鳴らす。
きらきらした衣装は、瞬く間に処刑人のローブへと姿を変えた。
手に持つ桃色の刃を携えた大鎌は、死神のそれによく似ている。
「あたしはダークネスの粛清人、『赤の粛清』」
テレビを見ている全員の背筋に、寒気が走る。
先輩の話でしか聞いた事のなかったダークネスの幹部が、ついに姿を現したのだ。
「まず説明します。あなたたちの仲間を攫った人物は、あたしです」
カメラが、「赤の粛清」がいる場所の背後に焦点を合わせる。
柱に縛られ、ぐったりしている少女は。
「まーちゃん!!」
「そのとおり。ま、気を失ってるだけだからそういきり立たないの」
まるで、こちら側の様子が見えているかのように。
優樹が捉われの身となっている事実に憤る四人を窘める、「赤の粛清」。
「で、ここからが本題ね。これから、あなたたちは道重さゆみと田中れいなを除いた7人で、あたしが待つ
この撮影スタジオに来て貰います」
にこりと笑みを見せつつ、そう説明する粛清人。
「どうして道重さんと田中さん以外で」
「明らかな罠です!!」
敵が提示した条件に疑問を持つ聖に、春菜が強く牽制する。
だが、次に「赤の粛清」が取った行動により選択肢は消滅した。
895
:
名無しリゾナント
:2013/06/10(月) 16:24:24
画面に向け、翳した大鎌の刃。
桃色の刃が、まだらに光る。何かが、滴り落ちている。
刃の上には、毛の生えたボールのような物体が、数個。よく見ると。
それは見知らぬ中年たちの生首だった。
「安心して。スタジオの責任者のおじさんたちはもう口が利けません。堂々とスタジオに乗り込んできてく
ださい。でも、あたしの誘いを断わったり、先輩たちにこのことを知らせた場合」
「赤の粛清」が、鎌を背後の優樹に向ける。
勢いで生首が転げ落ち、バウンドしながら床に赤い染みを作った。
「生首がひとつ、増えることになるけどね」
その台詞が、最後まで語られることはなかった。
衣梨奈が、手にしたピアノ線をテレビに巻きつけ粉々に破壊したからだ。
「行こう、聖」
「うん」
衣梨奈の呼びかけに聖が、力強く頷く。
最早一刻の猶予も無い。罠だろうが、何だろうが、手をこまねいていては優樹の命が危ない。
「道重さんや田中さんには…」
「優樹ちゃんのことを考えるとそれはできないよ。大丈夫、優樹ちゃんを助けたら逃げればいい」
春菜の提案を、やんわりと否定する聖。
相手はダークネスの幹部だ。普通に考えればとてもではないが太刀打ちできる相手ではない。
ただ、相手の虚を突きその隙に場を離脱することくらいなら可能なはず。
さゆみ、れいなに続き聖はリゾナンターでも三番目の年長者になっていた。
状況を考え、最善の手を打つという考え方は、新しいリゾナンターたちのまとめ役である彼女の中にも育ち
つつあった。
ただ、それでもやはり聖の考えは甘かったと言わざるを得ない。
896
:
名無しリゾナント
:2013/06/10(月) 16:26:31
●
まるで忍者漫画に出てくる忍者のようだ。
人攫いは民家の屋根を飛び、電信柱を足場にして、さらにマンションの屋上へと飛び上がる。
しかし、追いかける里保もまた、「水軍流」によって鍛えられていた。故郷の切り立った崖や谷に比べれば、
都会のコンクリートジャングルなど比ではない。
追跡していた赤いスカーフが、大きな建物に入る。
建物の玄関に降り立った里保はそこが、テレビ撮影に使用されているスタジオらしき場所であることに気づく。
誰か人がいるかもしれない。
しかし、躊躇している時間はない。
里保は息を大きく吸い込み、それから意を決してスタジオの中に乗り込んでいった。
実に奇妙だった。
受付、建物の中。まるで人の気配がしない。そもそも、こういった類の場所の玄関ににいそうな警備員すら見当
たらなかった。
既に敵の手がこの建物に伸びている、と考えるのが自然。とすればこれから先どんな罠が張られているかわから
ない。
里保は自戒の念を込め、ゆっくりと探るように建物の内部に入ってゆく。
「こっちだよ」
不意に、声が聞こえてくる。
第五スタジオ、と書かれたスタジオの入口が開放されていた。
周囲に最大限の注意を払いつつ中に入ると、声の主が大鎌を立てかけて待っていた。
「あたしの足について来れるなんて。なかなかやるじゃん」
頭上の照明に照らされているその顔に、里保は見覚えがあった。あのTVによく出ているアイドルか。ただ、今
はそんなことはどうでもいいことだ。
897
:
名無しリゾナント
:2013/06/10(月) 16:27:35
「まーちゃんは?」
「そういうのってさ、お約束でしょ」
言いつつ、大鎌の切っ先を里保に向けた。
力づくで聞けか、ならば望むところだ。
腰の刀の鍔にかけていた親指を弾き、ゆっくりと刀を抜いた。
「お、水軍流ってやつ?見せてよ」
「言われなくても!!」
両手に構えた愛刀「驟雨環奔」を片手に持ち替え、空いた手を懐に忍ばせる。
水の入ったペットボトルの封を切り、あふれ出した水でもう一本の刀を作り出した。
二刀流。
本来ならば里保の切り札である流法を真っ先に出した理由は、相手の得体の知れなさ。
誰にも気づかれずに、優樹に接触し、攫ったやり口。侮れない。
走りながら刀を交差させ、ぎりぎりまで溜めた力を相手の前で解放する。
「さすがリゾナンターの次期エース。けど、ダークネスの幹部を相手にちょっと舐めすぎなんじゃないの?」
交差した刀の先には、大鎌。
行き場のなくなった里保を、前蹴りで弾き飛ばした。
その威力を最小限に抑えるかのように、後ろに飛び、再び間合いを取る里保。
この人、ダークネス。それも、幹部って言ってた…
心臓が跳ね上がりそうになるのを、努めて冷静に抑える。
普通に考えれば、到底自分が相手になるような状況ではない。
ただ、そんなものは実際にやり合わないとわからない。能力の相性もあれば、戦略の有利不利もある。名前で物
怖じするなど、水軍流の名前に泥を塗る行為に他ならない。
再び、「赤の粛清」に正対する。
体を半身にし、「驟雨環奔」を持つ手を相手に向ける。俊敏さを優先した、水軍流剣術の構え。
898
:
名無しリゾナント
:2013/06/10(月) 16:28:07
「いいね、その表情。ぞくぞくするよ」
「いざ、参る!!」
里保が飛び出した。
「赤の粛清」が、向かってくる相手の首を薙ごうとその凶刃を振り上げる。
勝負は一瞬。鎌の軌跡が自らに届くより前に、相手を斬らなければならない。
桃色の刃が、弧を描く。
その軌跡上を、里保が駆け抜けた。
「ぐあああああっ!!!!!」
叫び声とともに、得物を取り落とす音。
斬られたのは、「赤の粛清」だった。
胸を十字に斬られ、鮮血が赤いスカーフをさらに赤く染め上げる。
あっけない結末。
相手の奢りがあったからか。それとも里保の実力が上回るほどに成長していたのか。
「くっ…舐めてたのは、あたしのほうだったか」
大鎌を拾いあげ、息も絶え絶えに「赤の粛清」が言う。
その表情にはもう、余裕はない。
必死の形相で襲いかかる粛清人。
鎌の持ち手を短くし、斬撃のストロークを短縮する。
だが里保もふた振りの刀を器用に使いこなし、凶刃を捌く。
左からの刃を「驟雨環奔」で弾き、返す刀をさらに水の刃で止める。
鎌の一撃をかわしながらも、里保の本能が必死に訴えかける、違和感。
何かがおかしい。
足元を掬う鎌の刃をジャンプで回避した時に、それは起こった。
899
:
名無しリゾナント
:2013/06/10(月) 16:29:00
「もう、いいよ。大体『わかった』」
「赤の粛清」が発した言葉ではなかった。
むしろ彼女自身、声の主を探そうと、スタジオの方々に首を向けていた。
「誰?出てきなよ!」
「赤の粛清」が睨みつけた先の空間が、歪む。
暗黒の虚、ゲートの出口から出てきたのは。
「だから言ったじゃん。大体わかったんだってば」
里保は目を疑う。
そこには、「赤の粛清」に寸分違わず同じ造形をした、「赤の粛清」がいた。
「あんた…クローン?」
「いいから。あんたの役目は終わったの。さっさと交代」
「クローンの分際で生意気な!!」
赤き粛清人の言葉は、そこでぷつりと途絶える。
いつの間にか首を攫われていた「赤の粛清」は、自分が何をされたかすらわからないまま、永遠に意識を失った。
「はい、ご苦労さん。て言うかあんたがクローンでしょうが」
目にも止まらぬ動きで、たった一撃で相手を死に至らしめた。
先ほどから里保を襲っていた違和感。今なら理由がわかる。
後からやってきた女性こそが、本物の「赤の粛清」であると。
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