[
板情報
|
R18ランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
1-
101-
201-
301-
401-
501-
601-
701-
801-
901-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
レス数が900を超えています。1000を超えると投稿できなくなるよ。
【アク禁】スレに作品を上げられない人の依頼スレ【巻き添え】part2
1
:
名無しリゾナント
:2011/01/18(火) 17:04:23
アク禁食らって作品を上げられない人のためのスレ第2弾です。
ここに作品を上げる → このスレの中で本スレに代理投稿する人が立候補する
って感じでお願いします。
(例)
>>1-3
に作品を投稿
>>4
で作者が代理投稿の依頼
>>5
で代理投稿者が立候補
>>6
で代理投稿完了通知
立候補者が重複したら適宜調整してください。ではよろしこ。
506
:
名無し募集中。。。
:2012/04/07(土) 10:30:10
学院の人々のほとんどは恵理菜の洗脳音波で操られている。
恵理菜の影響も音波のように伝わったのだ。
「どうするんですか?これだけの人々の洗脳をいちいち解いている時間はないですよ!」
「高橋さん!新垣さん!愛佳の提案聞いてもらえますか?」
「うん、何?」
「愛佳の案にしては突拍子もないですけど、前、田中さんがいうてたのを聞いたんですけど、田中さん、道重さん、亀井さんが約束してたんですよね。」
「それってもしかして・・・」
それは絵里、さゆみ、れいなのしたひとつの誓いであった。
れいなの共鳴増幅と絵里の風の力でさゆみのいやしの力を世界中に送り届けるのだと
「あれをするんです。これだけ大勢の人々の洗脳を解くにはそれが一番かと。」
「できるかどうか一か八かだけど、やるしかないけん。」
全員がうなずいたのちに円陣を組む、こうしたほうがたがいに共鳴しやすいのだ。
「じゃあ、始めるよ。」
里沙の合図をきっかけに共鳴を始めた。
だが、それを影から友が眺めている。
(おのれ、飯田はすでに私を見捨てて逃げている。もしやこうなることが最初からわかっていたのか。私は単なる使い走りか!だが、このままでは捨て置かないぞ、リゾナンター!)
すると友は針をれいなの顔に向けて、飛ばそうと構える。
「そうはさせないぞ!」
507
:
名無し募集中。。。
:2012/04/07(土) 10:31:13
すると駆け付けた一樹が友に組みかかった。
激しくふたりは廊下を転げまわる。
「邪魔をするな!」
友の針が一樹に迫る。
「さぁ、癒しを力を学院に・・・」
リゾナンターの円から光が学院中に降り注ぐ。
それは恵理菜を含め、学院中の人々にも届いていく。
光を浴びた恵理菜は発狂をやめて、静かに眠りにつく。
それに続くかのように学院中の生徒や教員も倒れていく。
光を解き放ち、リゾナンターは円陣を解く。
「うまくいったと?」
「彼女は眠ったの。たぶん、成功したんだと思う。」
周りを見渡すれいなの目に飛び込んだのは・・・
「一樹!」
一樹は胸を針で刺されて倒れていた。
れいなはすかさず駆け込んだ。
「そんな・・・嘘やろ!死ぬんやない!あんたが死んだら、誰がれいなの明太子パンを買ってきてくれると!」
いくら揺さぶっても一樹は目を覚まさない。
れいなの目には一筋の涙が・・・
508
:
名無し募集中。。。
:2012/04/07(土) 10:32:05
「ごめん・・・れいなたちとかかわったばかりに・・・関係ないあんたを死なせてしまった。」
「待ってよ・・・勝手に殺さないでくれる!」
すると一樹がぱっちりと目を開けた。
その様子にれいなは驚いている。
それもそのはずだ、位置的に確実に心臓のあたりを刺されていそうだった。
「これのおかげで命拾いしたよ。」
「明太子パン・・・」
「買っておかないと、君に怒られるだろうから。」
「よかったと!」
れいなは一樹に抱きついた。
里沙たちはれいなのあまり見ない光景に少し戸惑っている。
そんな中、愛は一樹を刺した針をゆっくり抜いて、確認をした。
「この針を刺した奴はどこにいったんやざ。」
「走って逃げたと思います。」
「そうか、ありがとう。さゆにきちんと治療してもらってな。小春!」
「はい!」
愛はすごい声で小春を呼びつけた。
小春はすぐさま愛の意図に気づき、念写を始めた。
そしてそれを見た愛はすぐさま瞬間移動で消えた。
509
:
名無し募集中。。。
:2012/04/07(土) 10:32:41
その頃、友は学院から走って逃げていた。
「このままじゃあ、終われないわ。いつか必ずリゾナンターに復讐してやるわ!」
「あーしらも終われないんやよ。」
すると友の前に愛が瞬間移動してきた。
「おまえは高橋愛!」
「やっと見つけたやよ。前の時の借りを返させてもらうやよ!」
数日後・・・
喫茶リゾナント
「いらっしゃいませ!」
喫茶リゾナントにれいなの姿があった。
すでに制服ではなくいつものウェイトレス姿だ。
「こんにちは。」
「がきさん、いらっしゃい。元の生活はどうとね。」
「そうね、身元を隠すために歌をわざと音痴にする必要もなくなったからね。楽よ。」
「それ必要なことかいな。さゆはあれから学院を離れたがらんくて苦労したと。鞘師と離れるのが嫌なんやろう。」
あの事件以降、学院の校長はけがから復帰して、飯田が逃亡したことにより理事長席は空白となり、風紀委員も友の暗躍から解放されて、風紀委員は矢島警備隊と統合されることになった。
騒動もなくなり、ひとまずれいなたちの潜入捜査は幕を閉じた。
510
:
名無し募集中。。。
:2012/04/07(土) 10:33:13
「ねぇ、愛ちゃん。メニューに明太子パンをいれようよ。」
「駄目やよ、どうせれいなしか食べないんやろう。」
「ぶぅー!」
れいながふてくされて、カウンターから離れると里沙が愛に話しかけた。
「結局、多くの生徒のDNAをダークネスに持って行かれたから、めでたしとはいえないけど・・・」
「そうやね、あの友ってやつはあーしがぼこぼこにして警察に引き渡したからよかったけど、結局ダークネスには手も足もだせんかったやよ。」
「真野ちゃんのこともこれからの課題だし、それに・・・」
「それに?」
「実はあの後、警察に問い合わせたんだけど、潜入捜査官に嗣永桃子というのはいないらしいわ。」
「えっ!」
確か桃子は里沙たちに警察からの応援の潜入捜査官としてやってきたと告げていた。
しかしそんな人物は最初からいなかった、これは里沙がKに確認してわかったことであった。
「うかつだったわ、田中っちたちがうまく潜入捜査できるかに気を配りすぎて、あの嗣永桃子の身元をちゃんと確かめなかったわ。」
「仕方なかったやよ、いろいろあったんやから。このことはれいなたちには内緒にするやざ。余計な心配させたくないし。」
「そうね・・・」
511
:
名無し募集中。。。
:2012/04/07(土) 10:34:03
一方、街中を桃子が携帯を片手に歩いていた。
「もしもし?私です。はい、今能力者のDNAサンプルを持って、そちらに・・・ええ、飯田圭織をだしぬけるか心配でしたけど、先生のおっしゃる通りでした。確実に飯田圭織の予知能力は衰えており、事前の対処に遅れが。はい、すべては先生の願いどおりに・・・」
「明太子パンほしいなぁ。」
ガランガラン!
リゾナントのドアが開かれると同時に明太子パンがれいなに向かって、飛んできた。
それを見て、れいながうれしそうな表情を浮かべた。
それは明太子パンが飛んできたことだったのか、それともそれを投げた彼の会えたことに喜んでいるのかはれいなしかわからなかった。
学園潜入 終わり
512
:
名無し募集中。。。
:2012/04/07(土) 10:37:00
>>501-511
「学園潜入 救いへの共鳴」
どうもリゾクラ作者です。
いろいろありましたが、なんとか完結です。
ドラマの内容に振り回されながら書いており、どのように終わらせるかも悩んでいましたが。
結局はリゾナンター集結というありがちな展開になりました。
やはりオリメンがしっくりきてしまうのかな?
513
:
名無し募集中。。。
:2012/04/07(土) 10:37:45
あ、忘れてました。
自分のパソコンでは連投規制が入るので代理投稿よろしくお願いします。
514
:
名無しリゾナント
:2012/04/07(土) 17:26:09
レス数が多いな
ま、行ってみますか
515
:
名無しリゾナント
:2012/04/07(土) 17:53:55
どうにか完了
ありがちな展開というよりは王道の展開というべきか
516
:
名無し募集中。。。
:2012/04/07(土) 21:32:58
代理投稿ありがとうございます。
517
:
名無し募集中。。。
:2012/04/25(水) 20:57:03
>>274-277
彼女は風を感じるのが好きだった。
あの事故から数ヵ月。
陸上部での大会が迫っていたが、あの事故には自身の足に重症の怪我を負わせた。
リハビリをすれば治ると医者に言われたが、喪失感は彼女を絶望させる。
中等部最後の試合だった。
高等部でも続けるつもりだった。
この先もずっと駆け続けるつもりだった。
練習して見に付けた力が無くなる。失くなる。
不安で不安でしかたがなかった。
子供だと思われるかもしれない。
実際、子供だった。小さな世界しか知らない、未熟な子供。
そんな時だった。
完全に傷の治っていない、ちゃんと力の入らない足でも走る事ができた。
まるで魔法のように。
自分だけの魔法に、彼女は依存するようになった。
例えそれが、自身の両足に負担をかけていた事になっていたとしても。
いつしか"アレ"は彼女に反抗するようになった。いわゆる、暴走。
『空気を操る力』
部活中にそれは起こった。
仲間の数人が怪我を負って、彼女は、思った。
ああこれで、楽になれる。
518
:
名無し募集中。。。
:2012/04/25(水) 20:57:58
思ってしまった。
いつこの魔法が解けてしまうか判らない不安と、背負わされた期待。
ただ走れれば良かったのに。
自分の気持ちが恐ろしかった。ただ走って振り切る事しかできなかった。
誰に助けを求めばいいのか、判らなかったんだ。
ああ、眩しい。
オレンジ色のブレた太陽のヒカリ。
…違う。
似ているけど違う、あれは、あのヒカリは。
――― 少女の見下ろす世界。
変わらないモノを変える世界。カタチの変わる世界。
イノチの終わりを告げる世界。
卑屈に笑って、真っ白に消える、退屈に咲いて、真黒に朽ちる。
熱にうなされたまま。
命の輝き、傷の癒えない軌跡、屋上に佇む黒い影。
呟く、笑って、笑った―――
光が収束し、女の子は刃の切っ先を女子生徒に向けていた。
振るった。
瞳に宿る一閃。ぽっかりと『穴』が開く。
それがゆっくりと元の"カタチ"へと凝縮していく。
無機質な球体ではなく、持ち主の感情そのままに。
コハクのヒカリを帯びた、砂時計。
女の子はそれをしっかりと箱に詰め、古びた電話ボックスの受話器を取った。
519
:
名無し募集中。。。
:2012/04/25(水) 20:59:12
「ふっ、ほっ、はっ」
鈴木香音は両腕を横に泳がすような動作を必死にやっていた。
自分の部屋で、何の恥ずかしさも無く。
夕飯の時間までの軽い運動、といえば聞こえはいいかもしれない。
ぶおーん、ぶおーん。
両腕を横に振る事で微かな風力が収束し、見えない風によって壁に
掛けられたカレンダーがゆっくりと揺れている。
額から汗が滲んでいる。両目はどこか真剣だ。
少なくとも鈴木はまさに極めるかの如く「ちょうちょ」の動作をしている。
彼女の十八番だ。
得意だからこその真剣な眼差し。
それを往復数十回とこなすのだからモノマネも突き詰めれば達人の域だ。
母親は妹と一緒に買い物へ出かけている。
まだこの時間は学校で部活に励んでいるのだが、今日は顧問の先生が
不在だったため、休みになっていた。
誰も居ないからこそただならぬ集中力を発揮する。
誰かが顔を出そうと思うものなら鈴木の顔真似&両腕から繰り出される
横スマッシュによって顔を挟まれてしまう。
それとも「カマキリ」によって縦チョップが幾度となく繰り出されるかもしれない。
たかがモノマネ、されどモノマネ。
4歳の頃から持っているクマのぬいぐるみがアフロを付けていても
それが鈴木にとっては自然であり、また愛しさを憶えるようになる。
虫に対してもそのカタチを全て記憶したうえで処理をする。
つまりはそういう事だ。
520
:
名無し募集中。。。
:2012/04/25(水) 20:59:58
この動作に意味がなくとも、鈴木はモノマネをし続けるだろう。
そこに確かな愛がある限り。
〜♪!
そんな何処か青春ドラマチックな音楽を流しているような雰囲気に
なっていた鈴木の耳に微かな着信音。
1階にある固定電話からだ。
誰も居ないからこそ必然と鈴木がそれを取る事になる。
さすがに電話の"音"で誰かがかけてきたのかまでは判らない。
鈴木はタオルで汗を拭きながら、その受話器を取った。
「はい、鈴木でーす」
軽い口調で鈴木は相手に告げる。
だが声は返って来ない、静まり返るそれに、もう一度告げ返す。
「もしもーし?」
鈴木は無言電話か?と思い、その受話器を下ろそうとした。
だがなんとなく、本当になんとなく気になってしまう。
もう一度告げ返して、何もなければ下ろそうと思い、口を開く。
「あのーどちら様ですか?」
瞬間。
『嘘のない現実は無い』
521
:
名無し募集中。。。
:2012/04/25(水) 21:00:48
…?…??
『本当の現実はあっても、嘘のない現実が無くなることはない』
突然聞こえて来た、女性の声。
宗教勧誘か?
鈴木は耳から離し、受話器を下ろす。聞いてはいけない気がして。
カチャン。――― ?
鈴木の鼓膜に"音"が響く。キインという鋭い音。
頭を揺さぶられる音、奔る音、嫌な音。
何故?
何故なら。
『何故なら人の嘘で出来た世界だから。』
『優しい声に人は惑わされてしまう』
『優しい嘘に人は依存していく』
『ねえ』
『貴方は、本当にそこにいるの?』
ガチャン。
香音はビクリと反応する。
玄関から顔を出したのは妹で、「ただいまー」と声を上げた。
後に入ってきた母親が香音の姿を見て首を傾げる。
522
:
名無し募集中。。。
:2012/04/25(水) 21:01:46
「どうしたの?電話でもかかってた?」
「え?あ、う、ううん。間違い電話だって」
「そう?なんか顔色悪いけど大丈夫?」
「きっとお腹すいたんだよ、早くご飯ー」
「じゃあ手を洗ってきなさい、香音もね」
「うん」
スーパーの袋を抱える母親と妹を見て、もう一度電話機を見つめる。
鈴木は頭をかきむしりながら、二人を追った。
微かな違和感を端っこに押しやるように。
鈴木は気付かない。
それが受話器の向こう側ではなく、直接脳に伝わっていた事を。
鈴木は気付かない。
既に自分が"当事者"である事を。
鈴木は気付かない。
誰も気付かない。
今から始まるのではなく、以前からずっと続いていたことを。
523
:
名無し募集中。。。
:2012/04/25(水) 21:05:00
--------------------------------以上。
>>517-522
ついにPCまで規制に…というか忍法帖なんたらってまだ
あるんですね…もしかしたらまたお世話になるかもです。
すこし長くなりましたが時間がある時にでも…。
524
:
名無し募集中。。。
:2012/04/25(水) 21:08:44
あ、良ければ521の下から三行目を「香音」から「鈴木」
に変えてください、よろしくお願いします。
525
:
名無し募集中。。。
:2012/04/25(水) 22:01:38
>>523
代理っときやした!
526
:
名無し募集中。。。
:2012/04/26(木) 12:57:52
代理投稿ありがとうございましたっ。
個人的に長くなりそう…あの忍法帖はいつ解けるんでしょう。
527
:
名無し募集中。。。
:2012/04/26(木) 14:33:09
――― 譜久村は公園に立っていた。
ホームルームの時に彼女が入院した事を教諭から聞き、放課後
倒れていたというその場所に立っていた。
両足が酷い状態だったという。
事故で怪我をしていたという話をは聞いていた。
まだ完治していなかったにも関わらず、部活で走り続けていたのもあって
一歩遅ければ手術しなければいけなかったらしい。
だが時間をかければ治る見込みはあり、今後はリハビリをする事になる。
名もなき通報者によって彼女の人生は救われたと見えた。
「……」
譜久村の真下には何かの欠片が残っていた。
ペットボトルのキャップ、プラスチックの破片が散らばっている。
液体はもう乾いてはいるが、その事実は変わらない。
万物の元素の一つである物質層には、人が決して見ることの出来ない思念を纏っている。
本質的なエネルギー場、アストラル・コーザル。
足跡、そして、傷跡。
膝を折り、地面に手を置いた。
譜久村の両眼がグアアアと見開かれる。
眼球を押さえつけられているような痛みに眉が歪む。
ビデオテープの巻き戻される音が鼓膜を刺激する。
ガリガリガリガリ、ザリザリザリザリ。
目がジクジクする。視線に薄紅の閃が過る。
「くっ…」
528
:
名無し募集中。。。
:2012/04/26(木) 14:34:28
白黒、モノクロ、揺れる影、揺れるのは、女子生徒だ。
意識が揺れる。ダメだ、まだ。
気持ちが悪い、音に酔う、色に廻る。
まだ。
まだ。
女子生徒の姿。キイキイ。ブランコ。後ろ姿の女の子。
女の子と言い合う女子生徒。ブレる、ブレる。見えない。
携帯電話。投げられる。茂みの中。
女の子の顔が逆光に照らされる。ブレる視界。女子生徒が吠える。
赤。朱。血。刃。
ガリガリガリ、ザリザリザリ。
倒れる。ぼんやりと掠れた視界。黒、闇。穴。
オレンジ色。コハク色。
知ってる。箱に詰めた、コハク色。オレンジ。
知ってるような気がした。
――― 遊園地の観覧車の前で女性が一人。
綺麗な笑顔だった。
まるで今にも散ってしまいそうな華のように。
透き通る瞳。手を上げる。高く、高く、高く。指を宙(ソラ)に。
口を開ける。大きく、叫ぶ。
女性は満足したように静かに、風の音を聞いた―――…。
パシンッ。
529
:
名無し募集中。。。
:2012/04/26(木) 14:35:34
パシンッ。
譜久村の意識が戻る。
目を見開き、弾かれるように青空を仰ぐ。
晴天。今日もまた、晴天だ。
知ってるような気がした。あの女性の事。
とても切なくなるような、悲しくなるような、気持ちが揺れ動く。
涙が溢れそうになって、それを乱暴に拭った。
譜久村は茂みの中を捜し回り、携帯電話を見つける。
開くと、画面には一つの留守電。
部活が中止になった事を聞いて掛けた、譜久村の着信。
彼女から話を聞く必要がある。
譜久村は彼女の居る病院へと足を進めた。
頃合い、か。
屋上。其処は何処でもない。
其処はハシゴの上。其処は給水塔。其処はあっち側。
ポータブルプレイヤーにはイヤホン。両手にはサイダー。
イヤホンを付ける耳には静かなさざ波の音。
街が見える、公園が見える。小さな影が一つ、事実を拾った。
鞘師は少しだけ寂しくなかったが、しょうがないと思う。
目玉焼きはかのんちゃんに譲るよ。想う。
530
:
名無し募集中。。。
:2012/04/26(木) 14:36:20
夕凪。
静かな海の上を、めいっぱい羽根を広げたうみねこ
が飛んでいく。
波打ち際。光の中で。
光が眩しい、蒼い、蒼い空。
それは誰かが夢見ていた、願い。
世界は廻る。誰かが居なくなっても、それでも。
531
:
名無し募集中。。。
:2012/04/26(木) 14:38:49
-----------------------以上。
>>461-467
を投下の時に書いておいて頂けると幸いです。
また時間がある時にお願いします(平伏)
532
:
名無し募集中。。。
:2012/04/26(木) 14:41:39
付け足し。
りほりほがあの年で環境音楽が好きっていうのは
軽く衝撃を受けました。
533
:
名無し募集中。。。
:2012/04/26(木) 19:03:41
代理っときやした!
534
:
名無し募集中。。。
:2012/04/26(木) 23:23:02
猫は群れない
誰と関わらないでも気にせず、勝手気ままに生きる
本能の赴くままに食べ、走り、眠る、そんな束縛を嫌う自由の象徴
犬は群れる
集団のなかに飛び込んで、社会を構築する一員となる
ボスの命令に忠実に従い、課せられた使命をこなす規律の象徴
そのくせ猫も犬も退屈を嫌うし、悩む
自由な猫は時折思う、何のために生きているのか?今をいきるだけでいいんだろうか?
縛られた犬も時折思う、ただ従うことが本当に正しいのか?自分らしさとはないか?
「れいな、暇やけん」
そう言って隣で笑うあなたの見た目は猫
『・・・今も退屈ですか?』
ためらいがちに尋ねた私の質問にあなたは答えた
「ん?そうっちゃね・・・昨日よりは楽しいけど一昨日よりは退屈っちゃね」
本当に気まぐれだと思う。でもそれは私も同じ
まわりからみたら私もきっと猫
でもこうやってあなたの傍にいたいと思う気持ちは犬
・・・もし私が犬だと気付いたら猫のあなたはどこかに行ってしまいますか?
535
:
名無し募集中。。。
:2012/04/26(木) 23:31:09
新しい話が多くて色々と刺激受けてます。時代の移り変わりも感じてます。
投下したのは『Vanish! 0.7』のプロローグです。読み方は『バニッシュ レイナ』
れいなの『共鳴』が発現してない時代、いわゆる『過去編』になります。
某ベリメンが出る話なのでホゼナンターの許可をもらってから書きます
代理の方よろしくお願いします
536
:
名無しリゾナント
:2012/04/27(金) 02:11:54
とりあえず貼っときました
537
:
名無し募集中。。。
:2012/04/27(金) 07:05:09
代理ありがとうございました
538
:
名無し募集中。。。
:2012/06/01(金) 03:27:33
http://www35.atwiki.jp/marcher/pages/577.html
http://www35.atwiki.jp/marcher/pages/584.html
の続き。
何処にも繋がっていない世界。
子供のころに、いつも傍にあった辺りをはね廻る音たち。
両手いっぱいにすくったはずの水は、今でも零さないように大切にしていた。
失くすことを恐れた。
手にくんだ水は、本当は乾いていて。
誰にとってもそうで、体温で乾いていく。
生きてるから。熱を持ってるから。
でも失くした水は、また汲んでくれば良い。
その場所は何処にでもあるから。
道端に転がるほんの小さな小石にだって。
例えは誰かのココロとか、自分のココロとか。
気付くことが出来れば簡単なことで。
見つける事ができればなんて優しい。
少し目線を変えればいいだけなのに、まだ小さな世界に佇んでいる。
*
――― カチカチカチカチ。
携帯を操作する音。
メールを作成するのに数分を要するものの、デコレーションくらいは
少しぐらい力を入れたいと思っていたりもする。
だがあまり夜にはしてはいけない。理由は簡単、寝てしまうからだ。
でもどうしても不安になったときは構わず送信してしまう。
こればかりはどうしようもないのかもしれない。
539
:
名無し募集中。。。
:2012/06/01(金) 03:28:13
カチカチカチカチ。
きっと相手の顔を見て言った方が良いのかもしれないし、それが
苦手という訳でもない。
人見知りはしないタイプ。
言いたいことは言っておきたいタイプ。
それがどんなに相手のことを考えていない発言だとしても
自分が後悔することの方がダメだと思うから。
後悔はしたくない。
勝負に負けることもしたくない。
悲しい事は嫌だから。
自分を犠牲にすることで切り開ける未来なんて考えられない。
でも誰かのためならそういう事もするかもしれない。
優柔不断という訳じゃない。
ようするに優先順位で物事を決めるタイプ。
カチカチカチカチ。
仮面ライダーゼロノスとボウケンピンクの共通点は、二人共
最終回では自分の為に仲間と別れて旅立ってしまう。
前者は自分の生きる歴史を捜す為に。
後者は想い人を支える為に。
求めるのは凄く良い事だと思う。
人は求めるものがあるからこそ生きたいと思うし、生きられると思うから。
彼の言葉はそれを物語っているとしか言いようがない。
ふっ、思えば熱い男だったとよ。
カチカチカチカチ、ピッ。
540
:
名無し募集中。。。
:2012/06/01(金) 03:29:33
送信し終えたと同時に教室のドアを開ける。
開け、ドア!
「おはよーっ」
にこやかに、元気さもアピールしつつ、生田衣梨奈はクラスメイトと挨拶を交わした。
窓側のうしろから三番目が彼女の座席。
カバンを机の横にかけ、椅子に腰を下ろそうとする。
が。
「おい生田あ、授業中だぞー」
「はーい」
「はーいじゃない、せめてもう少し静かに入ってこい。
事情は親御さんから聞いてるが、ちゃんと学生生活も励むように」
教諭の軽い説教に、生田は髪を触ってアハッと笑った。
541
:
名無し募集中。。。
:2012/06/01(金) 03:41:35
以上です。そしてご無沙汰です。当初は学園要素を含まない予定
だったんですが、もうどうにでもな〜れ、です。
登場するメンバーの性格、特徴に関しては加入当初の雰囲気で
想像してもらえると、生ぬるく見守ってください。
---------------------------ここまで。
いつでも構いませんので、よろしくお願いします。
542
:
名無しリゾナント
:2012/06/01(金) 21:58:43
>>541
代理っときました。
待ってましたよw
543
:
名無し募集中。。。
:2012/06/02(土) 00:00:21
すみませんこんな駄作を待って頂けて…ブワッ(涙
代理ありがとうございます。
544
:
名無し募集中。。。
:2012/06/05(火) 00:16:23
http://www35.atwiki.jp/marcher/pages/577.html
http://www35.atwiki.jp/marcher/pages/584.html
http://www35.atwiki.jp/marcher/pages/610.html
の続き。
2限目が始まる前、鈴木香音のクラスは所々から談笑が上がっていた。
「昨日のドラマ観た?やっぱりあの警察官が黒幕だったんだよ」
「あの雑誌読んだ?ちょーイケメンでさー」
「髪型変えたんだあ。可愛いーっ」
さすが中高一貫校ともあって、少し色が濃い生徒が何人か居たりもする。
先輩の影響を受けることもあれば、兄弟が居れば様々な情報が入り込む。
当然そういう人間は一目置かれたりもするし、良くも悪くも"有名"のレッテルを
貼られることになる。
大抵のことであればそんなレッテルを喜んだりする事はないのだが、この学校
に入学早々、すごい生徒が居るという噂があった。
「あれこそがKYっていうか、むしろあの人自体が空気っていうか。
空気なのに色があって匂いがあって味があって…いやホントなんだって」
その女子生徒と同学年の姉がいるということで、いろんな話を聞かせてくれたそうな。
だが噂は時間の経過によって様々に形容し、変化する。
だから本当かどうかは定かではない。
空気が読めない。
全くではないが、10個の事柄があれば8個くらいはKYだと言われる。
一生懸命作った積木を一緒に喜びを分かち合ったあとに嬉しそうに
「ダーン」と崩してしまうようなあの感覚、とは少し違うらしい。
ただ空気が読めないという事はやはり他の人にも迷惑がかかっているという訳で。
545
:
名無し募集中。。。
:2012/06/05(火) 00:17:42
近いものでいえば買おうとしていたゲームが売り切れになって、もしかしたら
まだあるかも、という淡い期待を捨てきれない空気さえも分からずに相手の
真隣で購入したゲームを広げるとか。
趣味がゴルフという事もあって、そういう風速と角度は分かるらしい。訳が分からん。
「でも運動能力はすごく良いんだよ。器械体操だっけ?それやってたらしくて。
ことあるごとにハンドスプリングやってたな。ほら、身体をこおグルって回すヤツ」
それは鈴木も知っている。
一部では「回転少女」という異名で知られていて、部活の先輩から聞いた事がある。
マラソン大会のときに最初から全力疾走で走って、一度も速度を落とすことなく最後まで
ゴールするという荒技をこなした事で、陸上部にスカウトされていたほど凄まじい。
断ったらしいが。
50mの記録は8秒ジャスト、速さは普通だがその耐久度が半端ない。
ただもう一度だけ言う、全ては噂だ。最後の話以外は全て同級生からの都市伝説級の
噂であり、真実は分からない。
キーンコーンカーンコーン。
チャイムが鳴り、ぞろぞろと生徒が自分の席へと座って行く。
先生が来ると客席、礼、挨拶と順序良くこなしていく。
2限目が始まった。
鈴木は窓側で後ろから数えると3番目になる。
ふと、窓から南棟が見えた。屋上は死角になっていて分からないが
本来ならあそこに鞘師里保が居る。
546
:
名無し募集中。。。
:2012/06/05(火) 00:18:30
そう、本来なら。
譜久村があの場所に風紀委員として調べに来た翌日。
あの屋上を一時的に"閉鎖"するという形を取られてしまったのだ。
出入りしているという事実はすでに教諭の耳にも入ってしまっているため
例え調査しようがしまいが、そういった処置をするというのは決まっていたらしい。
だから鞘師にも説明はしていて、あそこは今無人になっている。
…とは思うけれど。
何せ鞘師がいつあの屋上にいて、いつあの屋上からどこに帰っているのか。
それは鈴木も譜久村も知らない。
何度か譜久村が一緒に帰ろうと誘ってみたりもしたのだが、居る所を目撃されると
面倒だからと断られてしまう。
だが鞘師自身も二人と別れるのは少しばかり寂しいらしく、譜久村がなだめる
ことで少し気を紛らわせては別れることが多かった。
確かにあの包容力を一度味わうとね、鈴木は羨ましくもあり、だが鞘師の気持ち
も分かるものがある。
ただ不思議と、彼女の心配はしなかった。
きっとどこかでグウグウと寝ているのだろう、音楽でも聞いて。
サイダーでも飲みながら。交信でもしてるんだ。
そしてまた会える、どちらかが願えば簡単なことだった。
トントン。
不意に、背中を指で軽くつつかれた。
何事かと振り向くと、後ろ斜め横の机に座る女子生徒がわざと変顔してにんまりと笑った。
547
:
名無し募集中。。。
:2012/06/05(火) 00:19:10
朝っぱらからハイテンションの芸当をする彼女にリアクションすることなく
鈴木は机に向き直り、几帳面に折りたたまれたルーズリーフの切れ端を開く。
"窓の外に例の影。イチゴは好きなのにバナナは嫌いで、野菜も苦手らしいよ。
でもイチゴって野菜だって知ってた?"
鈴木はチラッと視線を窓の外に向ける。
グランドのド真ん中を堂々と歩き、校舎へと入って来る人影。
スクールバッグをランドセルのように縦に背負い、クリーム色のカーディガンには
この学校の校章が縫い付けられている。
携帯を片手に髪が風になびいた。
"野菜の中でも好き嫌いがあるのと一緒でしょ"
ルーズリーフの空いた場所にそう書き足すと、今度はそれを
振り向かずに脇の隙間から放り投げる、背後で微かに驚いた声が聞こえた。
「回転少女」、もとい生田衣梨奈という先輩の話は紛れも無く背後の彼女からであり
何故鈴木がその話を聞くに至ったかは、実に簡単なものだ。
ただ知れば知るほど、鈴木は生田が少しだけ苦手になっているのも事実。
何せ生田衣梨奈という人物は、一部では「アイドル」だからだ。
548
:
名無し募集中。。。
:2012/06/05(火) 00:24:09
以上です。もうスレが立たないかと思いましたが
規制されている人間の弱さを痛感します(涙
1年前の出来事を調べていると4人の成長っぷりを垣間見ますね。
549
:
名無し募集中。。。
:2012/06/05(火) 00:26:51
-----------------------------------------ここまで。
変なレスの消費をしてしまったorz
意外と1年前のえりぽんの掴みなさに苦戦してます…。
おはスタでも見てみようかな。
いつでも構わないのでよろしくお願いします。
550
:
名無しリゾナント
:2012/06/05(火) 09:37:34
>>549
遅くなったけど代理っときました。
研究熱心ですね
551
:
名無し募集中。。。
:2012/06/06(水) 02:39:43
>>14-17
の続き。
黎明学園中等部2年、生田衣梨奈。
父親はこの街の市長になった事があり、祖父は知事だったという政治家一家。
母親はステージママ気質があるらしく、モデル雑誌に応募させていたことで
生田はページに掲載された経歴を持つに至った。
なのに、彼女はかなりの不思議ちゃんとして名が通っていたりする。
だから有名人であり、アイドル、なんちゃってアイドルの方が正しいかもしれない。
そんな肩書きもあってか、今でもモデル業を行っているためと
この学校にも顔がきくということで遅刻をしても大目に見られることが多い。
鈴木は普通の家庭で育ち、普通なら羨ましく思えるのかもしれないが、その"普通"
という範囲を越えた家族関係が少しだけ窮屈なもののような気がした。
他人のことなのにまたいろいろと考えてしまうのは性なのかもと思いに駆られるが
空腹によって頭のはじっこに置いておくことにする。
お昼。
この学校は中等部は給食が用意され、高等部になると弁当を持ってくるか
給食かを選択できるようになる。
鈴木は妙に燃えていた。
隣にはあのメモを渡してきた彼女が居て、ギラリと瞳が光る。
「はっはっは、ついにこの時間がやってきたな香音」
「あんた達またやるの?中学生にもなって…」
「給食を笑うものは給食に泣くって言葉しらないの?」
「知らないし…」
「じゃああのみかんゼリーちょうだいよ」
「それとこれとは話は別」
552
:
名無し募集中。。。
:2012/06/06(水) 02:40:26
別の同級まで混ざり、給食のあれが美味しいだのあれは
マズイだのと談笑を交わす。
遠くから配膳をする生徒にそれを大目に、など注文しながら。
それが終わると生徒達の給食が始まる。
献立はごはん、豚汁、エビフライ、切干大根、みかんゼリー、そして牛乳。
切り干し大根が舞った、プレートから2、3cmの高さにその姿が浮く。
ガチンガチン。箸が鳴る、ガチンガチン。
エビフライの尻尾を掴もうとする箸を阻むのは一本の箸、二刀流とでも言うように構える。
豚汁がこぼれそうになる、隙アリと切干大根に箸が伸びる。
鈴木の瞳がギラリと光った。
箸の先でフタのとれた牛乳瓶を押し倒そうとしたのだ。
「こら香音っ、そんなの反則だろっ」
「そっちだって私が好きなの知ってるクセにっ、LOVE大根!」
「じゃあエビフライ取ろうとするなっ」
机を向き合うようになってる為、斜め横の彼女とはこんなバトルが行われる。
先ほども余った料理を取りに行ったときも一悶着があったというのに、今度は
自分の好きなものを隙あらば取ろうと躍起になる。
隣の男子は何も言わずにモソモソと食べている。
毎度のことなので慣れたのもあってか、自分達の給食も被害に
遭わないようにさりげなく端の方に配置しておいてあったりもする。
早く席替えしないかな。とポツリ。
「こらっ、食べ物で遊ぶんじゃないっ」
553
:
名無し募集中。。。
:2012/06/06(水) 02:41:37
そんな事をしていると当然教諭にも注意される訳で、一応それで二人は
大人しくなるのだが、いつ攻撃がしかけられるか分からないので鈴木は
切干大根を自分の手の近くに配置する。
給食が終わるとソフトボールをしようと言いだした彼女と別れて鈴木は廊下に出た。
特に用事はない、ただ少し食べ過ぎたせいで暴れるとかなり危険な状況だったのは事実だ。
うぷ。口を手で押さえる。
ふと。
職員室から会釈をしながら出て来た譜久村を見つけた。
最近はタイミングが合わずになかなか会えなかったので声を掛けようとする。
「みずきーっ」
瞬間、背後からの声に思わず掃除道具入れのロッカーに身を隠す。
あれ、デジャヴ?
「あれ?えりぽん…香音ちゃん何してるの?」
譜久村が首を傾げるのは、予想以上に狭かったロッカーをどうやって入ろうか
アタフタして、やけになってバケツ(新品)で頭だけを隠す鈴木に対してのもの。
ハッ、バレテル。
そんな鈴木を見て。
「敵怪人だ!このゼロガッシャーでやっつけてやる!」
生田衣梨奈が散らばったホウキとちりとりを手にとって構えを取った。
ちなみにゼロガッシャーとは、とある仮面ライダー専用武器だったりする。
だが鈴木はその豆知識を全く知らない、頭の中では「???」だ。
瞬間、生田が前にでる。
554
:
名無し募集中。。。
:2012/06/06(水) 02:42:24
「最初に言っておく。俺はかーなーり、強い!」
台詞をバッチリ決めて生田はドヤ顔を見せつけた。
555
:
名無し募集中。。。
:2012/06/06(水) 02:47:44
以上です。
l /
(O|゚|O ) </.l /| /\___
/_/_(‘ <_‘|9|| / l / / / //
l┌O-┝⊂ l ___  ̄ > \_/ /____// ガッシャーン
77∧:ヨ (⌒_ノ/、/~ />  ̄ ̄ ̄ ̄
γ⌒X||乢_し' 、/ヽ  ̄>__ || |::
|l (◎)l`ーミ三=Z) l| |/ / /\ || |::
ゝ_.ノ ゝ_.ノ ∠__/  ̄ || |::
-------------------------------------------ここまで。
少しペースを早くしてますが、スレの方に投下するのは
いつでも構わないのでよろしくお願いします。
ああ早く規制解けないかな…前回の代理投下ありがとうございました。
556
:
名無しリゾナント
:2012/06/06(水) 04:16:35
>>555
代理っときました。
ライダーらしく555ですね
557
:
名無し募集中。。。
:2012/06/09(土) 00:22:19
>>14-17
の続き。
振り落とそうとした途端、「あれ?」と生田が素っ頓狂な声を上げて両手を見る。
背後からホウキとちりとりを引っ掴むのは譜久村だ。
「こら、人に向けたら危ないじゃない。それに確か
ゼロノスじゃなくてWにハマってるって聞いた気がするけど」
「そうだっ、ねえねえみずき、今度映画みにいこうよっ、ゼロノスは出ないけど
Wが出るっちゃん、キャッチコピーはこうとよ。
『世界よ、これが日本のヒーローだ!!』」
「私戦隊モノ見たことないから分かんないよ。
それよりさ、モデルになったっていうアイドルの人の話聞きたいんだけど」
「あー…えりなはあんまり好かん人やったかなあ、キャラが被るんよねえ」
ホウキとちりとりを持ったままなので、万歳の姿のままの生田。
バケツ(新品)を被ったままで鈴木は考えていた。
生田衣梨奈の祖父は知事をしたことがあるが、その同級生であり
この街の発展に一役買った立役者、それが譜久村聖の祖父だった。
譜久村に対する周りの反応が「お嬢様」や「お金持ち」なのもここからである。
なので家族の交流もそれなりにあったりして、何気にこの二人も
自然の流れなのか、仲は良い。
譜久村の"音"は薄ピンク、生田の"音"は紫だ。
鈴木には人間のオーラなどを「音」の振動音波によって「色」で知ることが出来る。
霊感とは違って、絶対音感の持ち主だから、というのが主な理由らしい。
子供の頃にある医療施設でそれが発覚したというのを母親から
聞かされたことがある。
そこでは鈴木が持つ能力のことを『共感覚 -シナスタジア-』と呼ばれていた。
558
:
名無し募集中。。。
:2012/06/09(土) 00:23:04
これは絶対音感を持つ人間によくある知覚現象らしく、私生活には
問題はないという事で母親はかなり安心したらしい。
知ってるのは家族と、譜久村だけ。
とは言っても、最近その能力が少しだけ変になっている。
一つは相手のオーラが「音」から「色」へ変わる瞬間
なぜだか別の風景イメージが見える時がある。
その異変が起き始めたのが、あのガラスレンズを見てからだった。
鞘師が大事そうに箱に詰めていた、あの不思議なレンズ。
生田のようなバイオレットの"紫"ではなく、アメジストのような"薄紫"。
違和感はまだ残っている。
最初は流し込まれるその風景に戸惑っていたものの、身体に馴染んだのか
それほど酔うようなことも無くなった。
鮮明ではないが、まるで相手の心を見ているような気がして良い気はしない。
自分でもそんなことを相手からされてると思うと嫌だと思うから。
ただあの時に感じたイメージはとても、懐かしい感じがした。
あの"薄紫"の女性は誰だったのか、もしかしたら鞘師は知っているのかも
しれないと思ったのだが、知らない人間の話をするのも気が引けてしまう。
最近こんなことばっかり考えてるな、鈴木は溜息を吐いた。
「香音ちゃん、いつまでこれ被ってるの?」
そんな声が聞こえて、顔にかぶさっていたバケツ(新品)を取り払う
譜久村の顔が、眩しさに細める視界に入る。
気つけば生田の姿が居なくなっていた。
559
:
名無し募集中。。。
:2012/06/09(土) 00:23:37
「えりぽんにはちゃんと言っておいたからもう大丈夫。
でも携帯が鳴った途端に急に走ってったからどうしたんだろ…まああの子って
行動力だけは人一倍あるから、別に驚くことじゃないんだけど」
どうやら生田の行動に鈴木が怯えてるんじゃないかと心配したらしい。
正確にはドン引きして対応に迷っていただけだったのだが。
そんな事は夢だと自分で言い聞かせながら、鈴木は久し振りに会話を交わす。
「あのみずきちゃん、今日一緒に帰れる?」
「ああ、ごめん。ちょっとお見舞いに行かなきゃいけなくて…」
「え?お見舞い?」
「あ、そっか、香音ちゃんにはまだ話してなかったね、実は…」
――― カチカチカチカチ。
携帯を操作し続ける。
南棟へ走り込んだ彼女は、この着信をいつも待ちわびていた。
電話はできない、恥ずかしくて泣き声になりながらなどあまりにも
情けなさすぎて出来ないからだ。
それならメールで我慢する。
声が聞けなくとも、文字だけでも心の会話が楽しめるのであれば
そっちの方が何倍も良い。
あの顔と向き合おうものなら失神してしまう。
だからこそせめて文字で、言葉で語り合いたい。
南棟へ辿り着いた。
屋上に向かう階段には『立ち入り禁止』のプレートと障害物。
カチカチカチカチカチ。
カチカチカチカチカチ。ピ。
560
:
名無し募集中。。。
:2012/06/09(土) 00:26:33
生田は口角を緩ませた。
仮面ライダーWの関係性は素晴らしいと思う。
俺たちは、僕たちは、二人で一人の仮面ライダーさ!
まるで"私達"のようでとても共感が持てる。
ただ"あの人"の戦闘モノの知識はそれほど豊富ではないらしく
そこが少し残念だけれど。
生田は携帯の画面を見つめる。
両眼に紫の閃が過る。バイオレットの煌めきが。
カチカチカチカチ。
内容に返信を送り、生田は携帯を閉まった。
【i914の反応あり。高橋愛のそうさくを続行】
生田は心底嬉しそうに嗤う、ゾワゾワと沸き立つ愛を一身に受けて。
561
:
名無し募集中。。。
:2012/06/09(土) 00:31:26
以上です。
自分も
>>117
さんの作品を楽しみにしてます^^
562
:
名無し募集中。。。
:2012/06/09(土) 00:33:07
--------------------------------ここまで。
また変なレスw(ry
>>556
さんありがとうございました。
意識はしてなかったんですがホントだw
またいつでも構わないのでよろしくお願いします。
563
:
名無しリゾナント
:2012/06/09(土) 07:22:24
上げておきました
何かが動き出したってかんじですかね
…ところで作者さまは仮面ライダーとか詳しいのですか?
564
:
名無し募集中。。。
:2012/06/09(土) 09:25:54
こんなに早くありがとうございます(平伏
仮面ライダーの知識はそうですね、バックルが変身アイテム
なのと、顔がバッタっぽいのだけ…w
えりぽんが興味なかったらきっと織り込まなかった
要素だと思います。
565
:
名無し募集中。。。
:2012/06/11(月) 14:15:46
>>138-141
「おはようございまーす!」
校門の前、鈴木も見慣れた風景が広がっている。
生徒会と風紀委員が左右に列を作って、あいさつ合戦をしていた。
鈴木も挨拶しようとして、不意に思ってしまう。
うるさい。
いつもは気にもならないのは、今日はやけにうるさく感じた。
頭に響き、眉間に軽くしわが寄って行く。
他の生徒は気にせずに歩いて行くのだが、鈴木は違った。
異様な"音"の混ざり合いに鼓膜が疼いて仕方が無い。
譜久村の姿が見えるが、鈴木はその場を立ち去りたくて早足になる。
玄関先になってもその疼きが止まらないため、鈴木は怖くなった。
上履きにはきかえ、教室に入って友人に挨拶を交わされてもそれは同じ。
「どうかしたの?顔色が悪いけど」
「なんか、気分悪くて…」
「保健室に行った方がいいんじゃない?」
同級生たちは何事も無い様にしている。
誰かは宿題を写させてくれるように友達に頼んでいたり。
誰かはきのう観たバラエティ番組の話で盛り上がっていたり。
誰かは携帯をいじって誰かにメールを送っていたり。
教諭に見つかって注意を受けたが。
「せんせー、香音が不調を訴えてます」
「ん?鈴木どうした?顔色悪いぞー」
566
:
名無し募集中。。。
:2012/06/11(月) 14:16:38
鈴木は答えない、答えられなかった。
疼きが痛みへと変わって行く。
"音"がグルグルと、視界に異様に混ざった"色"が見えるようになっていた。
なんじゃこりゃ!
叫びたいのに声が上がらない。
スモッグのような薄い霧が、教室全体を覆い包んでいるのだ。
「おい、香音、しっかりしろっ」
友人の彼女が声をかけたのを最後に、鈴木の意識は途切れた。
完全ノックアウトだ。
――― 嫌な夢を見た。
誰かを失ってしまう、誰かと別れてしまう。
もう二度と会えなくなるような、その気にさせる夢を見た。
誰かは分からない。
鞘師、譜久村、生田、両親、妹、友達、 そのどれもが当てはまらない顔。
だけど知ってるような気がして、鈴木はその身体に抱きつく。
まるで泣き虫な子供がぐずるように。
嫌だ嫌だと泣いて、泣いて、泣いて。
こんなヤツだったかなあたし、そう鈴木が思う内に、誰かの姿は消えた。
誰も居なくなって。誰かを探して腕を上げる。
誰か、ねぇねぇ、誰か――― !!
その時に微かに見えたのが、青空のような水面に映る虹だった。
567
:
名無し募集中。。。
:2012/06/11(月) 14:17:27
次に目が覚めると、保健室のベットの上。氷枕でヒンヤリと頭部が冷える。
ボウッとしていた。
先ほど感じた"音"は少し収まっていたが、まだ鼓膜が疼く。
ふと、鈴木の視界に入って来たのは同級生の顔だった。
彼女の顔もしっかりある。
「気が付いた、香音っ」
心配したようにそう声をかける彼女に、鈴木は「ああ」とため息のように零す。
結局あの強烈な"音"に耐えきれずに気絶したのだと分かって、時計を
見るとすでにお昼になりかけていることを知った。
母親には既に連絡をいれているらしく、鈴木は早退することになった。
母親の車から見えた校舎が、いつもよりも大きい。
蜃気楼のように歪んだように見えて、鈴木は視線を逸らす。
それにしても、あの不気味な"音"の正体が分からない。
ただ何処かで、似たようなものを聞いたことがあったかもしれない。
あれはそう、鞘師と会ったあの日に、いじめられっ子の彼女から聞こえた、黒。
あんな風に感じたことも初めてだったし、なによりも鞘師と出会ってから何かがおかしい。
譜久村の友人が入院した事も、変な幻覚や夢を見るようになったのも。
そして気付けば、屋上が閉鎖してから彼女とまったく会えていないという事。
鈴木は自分の部屋でいろいろと考えていた。
保健室で眠っていたときのあの夢が過る、夢のはずなのに、現実味があり過ぎる。
あの9人の顔に見覚えは、ない。それなのにどうしてこんなにも。
568
:
名無し募集中。。。
:2012/06/11(月) 14:17:58
「香音、お友達が来てくれたわよ」
母親の言葉に鈴木は疑問を抱く。
まだ学校は終わっていない時間なのに。
部屋のドアが回され、その姿に鈴木はあんぐりと口を開けた。
訳が分からない。
訳が分からねえ。
「こんにちわ、かのんちゃん」
にっこりと、鞘師里保は薄い笑みを浮かべた。
569
:
名無し募集中。。。
:2012/06/11(月) 14:21:44
以上です。ちょっと場面がぐるっと変わりました。
千秋楽のステーシーズを観に行ってきます。
----------------------------------------ここまで。
いつでも構わないので、よろしくお願いします。
570
:
名無しリゾナント
:2012/06/11(月) 19:48:06
承って候
571
:
名無しリゾナント
:2012/06/11(月) 19:52:24
終了
千秋楽うらやまし
572
:
名無し募集中。。。
:2012/06/17(日) 02:52:16
ここは掃き溜めの中。
此処はあまりきれいじゃないよ。
つながっていたかっただけで。
死んでしまったあとの花のように。
醜い私は、影にくるまって眠るの。
君は星のように、はかない声で鳴いている。
いつだって昨日の向こう側。
私は死ぬように君を愛す。
君が死んでから私を愛すように。
生きる事が永遠を壊したけれど。
醜い光が私を射つ。
それでも願ってた。
願ってただけだった。
いつか彼女は、世界にココロを鬱されていた。
「泣けなくなったのはいつかなんて覚えてないよ。
神経の異常なのか、障害の一種なのか、考えたって
私にはそんな知識は必要なかったの、必要のない場所に居たから」
受け入れることが生きる事。
全ては日常の中に消えて行く。
誰も彼も、彼女も例外なく、逃れることなく、逃れれる者が居ようもなく。
573
:
名無し募集中。。。
:2012/06/17(日) 02:53:35
「だけどね、それで少し良かったって思うことはあるよ。
泣けないなら、笑えばいい。
だってそうすれば、いろんなことが良い方向に進むような気がしない?
後ろ向きに考えるよりはさ、生きてるならきっと、その方がいいよ。
死んだあとのことなんて、人間は考えないんだから」
彼女は鼻歌にメロディを口ずさむ。
流行りではないが、それでもなんとなく気に入っていて、無意識の
うちに口に出してしまうくらいの歌。
心地よかった。意味はない、ただ、心地よかっただけで。
日常の中で、誰もが他人に無関心になる。
"此処"にいる殆どの人間もそうで、そいつの存在自体がまるで最初
から無かったかのように。
しかし彼女はそんなことを傍から理解していて、そしてむしろ、状況を
楽しんでいる節もある。
実際、楽しもうとしていた。
「だから変にディスられてるのも知ってるよ。アハハ。
まあそうだよね、皆やっぱり、心のどこかでは悲しんでるのに、私だけ
気持ち悪いくらいニコニコして立ってるんだから。
でもさ、逆に考えてもいいじゃない?悲しむだけ悲しんでさ、それで
見ぬふりするより、背負った方がいいでしょ?」
誰もが全てを見えているというワケじゃない。
全て見えると思っているだけで、全てを見た気になっているだけで、実際のところ
目に見えるモノなど小指の先ほどの事柄しかない。
しかもそれは決まって、他人にはどうだっていいことなんだ。
574
:
名無し募集中。。。
:2012/06/17(日) 02:54:09
そんな事を思うと、彼女は愉快になって軽く吹き出しそうになったが、口元を
ゆるめるだけに留めてくれた。
感情なんて、余計なものだと思う。
「私さ、ずっと笑ってたいんだよね。そんな場合じゃないっていうのは
判ってるんだけどさ。無理に笑ってないのだけは覚えててほしいな。
きっとさ、神様のきまぐれなんだよ。私にそうやって背負えるように
涙を与えなかっただけ。涙だけなら、安いものじゃない?」
彼女はテーブルの上のコーヒーカップに手を伸ばす。
湯気を立てるそれをのぞき込むと、コーヒーの香りとミルクの匂いが
同時に漂ってくる。
コーヒーは正直苦手だけれど、ミルクを入れればそれは別の代物へと変化する。
口が緩むことに躊躇すると、彼女が代わりに笑った。
日常にリアルを求めること自体がすでに不自然だった。
日常こそがすでに非日常で、感覚の麻痺した世界でリアルなど存在しない。
現実感などずっと昔に失くしてしまっているのだから。
最初からそんなモノは存在していないかのように。
最初からセカイは、全てが失せている。
それなのに。
「じゃあさ、もしもどちらかに何かがあった時は、どちらかの気持ちを
互いに渡そう。欠けたものを渡し合おう。
いらないかもだけど、迷惑かもだけど。こんな歪んだものなんてきっと
好きにはなってくれないかもだし、言ってる時点であれか、アハハ。
でもまあ、私は嬉しいかな、―― が泣いてる姿、けっこー好きなんだよね」
575
:
名無し募集中。。。
:2012/06/17(日) 02:55:20
泣けない彼女と、笑えない自分。
神経の異常なのか、障害の一種なのかは分からない。
そんな知識の必要がない場所に、自分達は居るのだから。
笑えない代わりに、涙がなんの前触れも無く、流れることがあった。
恐怖も絶望も感じてないはずなのに、それでも人間は本能的に
感情を浮かべるようになっている。
それが自分にとってどんなに目ざとく思っていても。
気がつけば"組織"にいて、気がつけばヒトゴロシだった自分達。
ときには強引に殺し、ときには事故に見せかけて殺し、ときには消し去るように殺す。
研究員たちは"チカラ"のことに関して両目を輝かせ、ヒトゴロシを
する自分や彼女に対しても恐怖と、好奇と、絶望と、希望と。
様々な色と、音と、歌と、血と、人と、死と。
だけど誰が悪いのかなんて、判らなかった。
自分達が悪いのかもしれない、研究員が悪いのかもしれない。
何が悪いのかが分からないけど、どうして悪いのかが分からないけど。
彼女が死んだ時に、自分は、全てを背負えただろうか?
パンッ、パパパパパッ、パパパパパパッ。
複数の乾いたような、連続した音。
銃声。
分解から組み立て、その種類も能力も把握している。
音を聞けばそれが何なのか判った。
576
:
名無し募集中。。。
:2012/06/17(日) 02:57:17
気付けば叫んで、常人には有り得ないような脚力で一瞬にして、彼女を
抱き上げ、その場から逃げ出す。
背後から銃声がして、数発が身体をかすめる。
途端に傷口から血が噴き出してきたが、走るのをやめはしない。
抱きしめる身体から少しずつ、確実に力が抜けていた。
それでもまだ暖かい。心臓が、鳴っている。
早かった鼓動が、少しずつ、ゆっくりに。
グッと、腕を掴まれる。
最後の力を振り絞るように、腕を、手を、自分の首に押しやった。
それはまるで、儀式のように行われた通過儀礼。
「私さ、親友を殺したの。もう助からないって思ったから。
私が肌に触れると、そこが砂になって、粒になって、灰になるの。
身も心も血も、全てが燐粉になっていった。まるでヒカリみたいに」
"作戦"が失敗した場合、死んでも"組織"につながるような証拠は残してはならない。
外部に少しでも情報が漏れるのを防ぐために。
自分達の死体ひとつを残すことさえ許されない。
そうやって生まれたときから教育を受けて来て、それが全てだった。
そして"作戦"は、失敗した。
「私が殺してきた人達も、あんな風にヒカリになって、飛んで行った。
蝶みたいに、私もさ、あんな風になれるかな?醜くてもいいから」
577
:
名無し募集中。。。
:2012/06/17(日) 02:59:27
最後の言葉なんてものもなく、最後に受け止めるココロもなく。
"作戦"が失敗したという事実だけが残って、カラッポの世界だけが残って。
砂になって、粒になって、灰になる彼女を見上げた。
涙が溢れるのに、恐怖も、絶望もない、ただ、口角を強引に開けて、笑った。
歪な笑顔で笑って、笑って、笑って、笑って、笑って、ごめんと叫ぶ。
「きっとこれも、神様のきまぐれなんだよ。
このセカイも、あのセカイも、この"チカラ"も、私達もね。
もしもどちらかが欠けたなら、探しに行けばいいの。このセカイも私で、―― も、私なんだから」
―― 私は、青空の下に居た。
小さなベンチに一人佇んで、何をすることもなく、眠ることも無く。
このまま地面に溶かされてもいいくらいに思えた。
「どうしたの?まるで死人みたいな顔してさ」
なんて挨拶だと、思った。表情に浮かぶそれに、そっと言葉を乗せる。
「親友が、死んだの」
「そっか、私の親友も、さっき死んじゃったんだ」
「…そう」
「でもね、泣けないんだ、なんでだろうね。悲しいときにも涙は
でるはずなのに、アハハ、ほら、変でしょ?うん、まあこんな事
言ってもしょうがないんだけどね、アハハ。ねえ、そこ座っていい?」
陽の光に、目を細める。
アスファルトから飛び出したその花に名前を付けて。
そうしてまた日常が始まって。ただ願ってたはずのココロが微かに、笑ってた ―― 。
578
:
名無し募集中。。。
:2012/06/17(日) 03:09:26
「Whim of God」
以上です。だいぶ舞台の影響を受けましたってことでツヅカナイヨ。
名前を伏せたのは神様のきまぐれです、ウソです想像に
お任せという事でどうか。
----------------------------------ここまで。
ちょっと長くなりました、投下が難しいかも…申し訳ないです。
579
:
名無しリゾナント
:2012/06/17(日) 12:50:35
ふぅなんとかいけた
名前を描かなかったことで普遍的な広がりが感じられる仕上がりになってますね
580
:
名無し募集中。。。
:2012/06/19(火) 03:31:01
>>189-192
の続き。
闇の中に、【闇】が浮かんでいる。
ユラユラユラユラ。
闇の空間をたゆたう影。
影は黒いコートに身を包み、フードを深く被っていた。
小柄な影。手のひらには三つの球体。
誰かは【ダークネス】と呼んだ。
悪意の塊。
悪意の記憶を糧として生まれた、それが【ダークネス】。
【闇】を満たす唯一の概念。
ただ、其処には何も無い、ナニモナイ。
満たされているから、満たされていると思い込んでしまう。
手では掴めない。
叫んでも答えてくれない。
ただ満たされてるだけ、闇が、在るだけ。
その【闇】に、影は球体を投げ込んだ。
誰かの悪意の記憶を零していく。
すると、闇の中の一部に裂け目が現れ、大きな口の形をしていた。
闇に落ちた球体。
ムシャムシャムシャ…咀嚼音。
喰らっていた、響く、誰かを食べる音が。果てしなく続くような闇の中で。
グググググググググググググ。
闇が盛り上がるように『成長』する音が微かに鳴っている。
パキパキと枯れた音が無骨に。
581
:
名無し募集中。。。
:2012/06/19(火) 03:32:37
オオオオオオオオオオオオオオオオ。
【闇】が、啼いた。
*
黎明学園敷地内。
二つの影がフェンスの裏側から入り込み、上手く闇に身を潜めながら校舎に近付く。
何処かに中に入れるところはないかと探していると、一ヶ所灯りの点っている場所を
見つけた。
「…誰かいますかー?」
窓に近付いてそっと中をうかがった鈴木が言った。
そこは警備員が使っている宿直室のような部屋だ。
「鍵もかかってないよ、不用心だなあ」
鈴木が窓に手をかけると、軽く力を入れただけでそれはゆっくりと動いた。
窓の隙間から、暖房の暖かい空気を感じることが出来た。
これでは警備も監視もないじゃないか、とは思ったけれど、そのツメの甘さに
今だけは感謝しようと思う、状況が状況なだけに。
「じゃ、ここから入るよ」
鞘師はうん、と頷いた。
――― 鞘師が彼女の元に来たのは数時間前の事。
鈴木は驚いた、心底驚いた。
だって知るはずがないのだ、鞘師が鈴木の家を知ってるはずがない。
582
:
名無し募集中。。。
:2012/06/19(火) 03:33:09
だけど鞘師は平然とサイダーを飲んでいて、鈴木もまたその手に持っていた。
本物だった。
しゅわしゅわしていた、「しゅわしゅわーぽんっ」とお決まりの言葉を言って
恥ずかしそうにしている鞘師は本物だった。
頭痛は、いつの間にか治っていた。
「なんでクマがアフロなの?」
「アフロヘアーに憧れた時期があったんだよ。ちゃーちゃんにも」
「ちゃーちゃんって言うんだ」
そう言って鞘師は飾ってあったクマのアフロを鈴木に被せてニヤニヤ笑っていた。
鈴木はアフロ頭のままで疑問を聞いてみる。
「で、なんでりほちゃんがいるのさ」
「お見舞いだよ」
「あたし、家教えたことないよね?」
「うん」
「いや、うんじゃなくて、誰かに聞いたの?」
「うん」
「誰?」
「宇宙人に」
鈴木はサイダーの瓶を鞘師の頭に振り落とすフリをした。
流れるように避ける鞘師。
壁にドカッと頭をぶつけてしまい、手でさする鞘師。
いろんな意味でアホだった。
「痛いよかのんちゃん」
「りほちゃんが変なこと言うからだよ、しかもあたし何もしてないよ」
「でも聞いたのはホント、信頼できる人だから大丈夫」
583
:
名無し募集中。。。
:2012/06/19(火) 03:39:00
信頼してる割には宇宙人呼ばわりとは。
個人情報のセキュリティが期待できないこの時代。
ただそこまでしてこの家に来た訳がなんなのか、それが知りたくなった。
「で、なんでりほちゃんがいるの?」
「かのんちゃんにお願いしたいことがあるの」
「お願い?」
鞘師はまた薄い笑みを浮かべた。
けなしている訳ではないんだろうけど、何かを企んでいる様な笑顔。
引いた表情をすると、今度は口を開いてイヒヒと笑う。
「かのんちゃんだから、お願いしたいことがあるんだよ」
――― 二人はソロソロと足音を消しながら、まるで泥棒みたく
身を小さくして、廊下を進んで行く。
学校というところは、昼間は人の声で溢れている場所も、今は
逆に音を吸い込んだように静まり返っている。
油断すると傍らの闇に引きずり込まれてしまいそうな錯覚に襲われる。
だが、鈴木は平然としていた。
お化けが居ると思うから居るように思うのだと思ってる。
気味が悪いと思うから変な想像をするのだと思ってる。
空気が読めないわけではない。
断じて読めないわけではない。
怖いことは怖い、だけどそう思わないようにしてるだけなのだ。
584
:
名無し募集中。。。
:2012/06/19(火) 03:39:41
そんな鈴木とは裏腹に、隣の鞘師は異様に辺りを見回すかと思えば
ギュウギュウと身体をひっつかせてくる。
「ねえ歩きにくいんだけど」
「かのんちゃん怖くないの?」
「怖いけど、りほちゃんが言いだしたことなんだからしっかりしてよね」
「……」
鞘師は何かを言いたそうにしていたが、突然足音が聞こえた。
「!?」
廊下の突き当たりを曲がった向こうから。
こればかりは鞘師ばかりではなく鈴木もビクっと身を震わせ硬直する。
懐中電灯と思われる光が見えてマズイ、と思った。
警備員だ!
鈴木にとってはオバケよりも人間の方が怖い。
鈴木は小さく舌打ちをすると、硬直したままの鞘師の手を引いて
丁度通りかかっていた教室の中に滑り込んだ。
585
:
名無し募集中。。。
:2012/06/19(火) 03:43:57
以上です。
こんな物を拾いました つ「鞘師<モー娘。メンバーを戦隊モノのヒーローに例えてみた」
http://www.youtube.com/watch?v=KMt_JEI8U5Y
---------------------------------ここまで。
最近ここを独占し過ぎですねすみません(汗
いつも代理してくださる人、ありがとうございます。
昔の9人話の受領は今でもあるのか少し気になりました。
586
:
名無しリゾナント
:2012/06/19(火) 21:38:32
遅くなりましたが投下終了しました
>昔の9人話の受領は今でもあるのか少し気になりました。
受領は致しかねますが需要はありますw
587
:
名無しリゾナント
:2012/06/22(金) 21:45:43
――――――――――――――――――――――
心の中を無にしよう。
この世界は贋物だ。
構成要素の配置が変わっただけの紛い物。
だから、戸惑う必要も捉われる必要もない。
現実(リアリティ)はすべて、この世界の外にある。
――――――――――――――――――――――
588
:
名無しリゾナント
:2012/06/22(金) 21:46:25
追いかける。
追いつめる。
この爽快感がたまらない。
敵の能力者は、大通りを突っ切ってそこの角を曲がった。
衣梨奈は知っている。そこの角は行き止まりだ。
もう奴に逃げ場はない。
「観念しなさい、悪の手先め!」
予想通り袋小路に追いつめられて慌てふためく男に向かって、衣梨奈は得意げに人差し指を突き立てた。
「このところの連続婦女誘拐事件の犯人はあんたやろ!調べはついてるけんね!」
「・・・へへ、こんなお嬢ちゃんに追跡されるたぁ俺も落ちたもんだ・・・・・・なあ!」
男は軽薄な笑みを浮かべ、右手を振り上げる。
白くしなやかに蠢くそれは、もはや人間のそれではなかった。
イカだ。
男は半獣人化し、その右手を長さ二メートルはあろうかというイカの足に変化させた。
「ガキには興味ねえ!死ねやぁ!」
白い右手が衣梨奈の身体をなぎ払おうと迫る。
衣梨奈はかろうじてそれを避けると、自らの腰に提げていたバトンに手をかけた。
「くらえ!」
589
:
名無しリゾナント
:2012/06/22(金) 21:47:21
引き抜いたバトンを、ブーメランの要領で投げる。
しかし微妙な体勢から放たれたバトンはブーメランのようにはいかない。
ぐらぐらと不規則な回転を繰り返し、衣梨奈のバトンは男の遥か後方に逸れていった。
「ギャハハ!どこ狙ってやがる!」
「いや・・・これでいいっちゃん」
衣梨奈が不敵に笑う。
「半獣化能力者には、能力だけではカバーできん大きな弱点があるとよ」
すると突然、バトンの軌道が変わった。
あさっての方向に飛んだはずのバトンが変則的に曲がり、さらに大きく回転を加えて戻ってくる。
「それは」
「んがっ!!」
戻ってきたバトンが直撃し、男は地面へと倒された。
イカの足と化した白い右手も、隠し玉のつもりだったのだろうカニのハサミと化した赤い左手も、ぴくりとも動かない。
「あ・た・ま。どいつもこいつも、そこだけは人間のままやけんね」
死角から勢いよく飛んできたバトンが後頭部に当たり、気を失っている。
男が起き上がってくる気配はなかった。
「いえーい!生田衣梨奈、完璧完全大勝利ぃー!またバトンの腕が上がったかもー!」
590
:
名無しリゾナント
:2012/06/22(金) 21:48:06
「“だいしょうりぃー!”じゃないよ、まったくもう」
勝利の余韻に水を差す、不機嫌そうな声。
衣梨奈が振り返るとそこには、腕を組みこちらを睨むように見つめる鞘師里保と、困ったように眉尻を下げる譜久村聖の姿があった。
「念動力で操ってるんだから“バトンの腕”関係ないじゃん。そもそも犯人が現れたらまずみんなに連絡して、
それから尾行って話に決まったでしょ?何一人で勝手に突っ走っちゃってんの」
「だぁってー、犯人がもう女の人に声かけてたんだもん。このままじゃ次の犠牲者が出ると思って」
「だからって、街中を『こいつ犯人です!こいつ犯人です!』って言いながら追いかけまわすことないじゃん。ホントえりぽんってKYだよね」
「ちょっと!なん、その言い方!」
「本当のことを言ったまでだよ。フクちゃんが通行人の記憶を全部操作するのにどれだけ苦労したか、わかってる?」
「あ、あの、里保ちゃん。そのくらいでもういいから・・・」
喧嘩腰になる里保と衣梨奈の間に、聖が割って入る。
「えりぽん。私たちは目立たずひっそりと、でも確実に敵を倒していかなくちゃいけない。どうしてだか覚えてる?」
「・・・うちらは・・・少人数だから。敵がその気になったら、すぐ潰されちゃうから」
「そうだよね。『でもそこが秘密の正義の味方って感じがしてかっこいい!』って、えりぽんが言ってくれたんだよね」
「・・・・・・」
591
:
名無しリゾナント
:2012/06/22(金) 21:48:41
聖の口調は優しかった。
子供の間違いを正す母親のように、優しく衣梨奈に言い聞かせる。
「あんまり派手な妨害をすると目をつけられちゃう。目をつけられたら・・・殺されちゃう」
「・・・ごめん」
「それに、今回はえりぽんだって危なかったんだよ?犯人が逃げた先にもっと強い敵が待ち構えてたらどうするつもりだったの?」
「ごめんってば!」
優しく追及されることが却って辛いこともある。
衣梨奈は強引に話の流れを断ち切り、言った。
「勝手に単独行動に出てすみませんでした!もうしません!」
それこそ子供のするような、投げやりな謝罪だった。
だが衣梨奈の性格を知っている二人は、そんなことに目くじらを立てたりはしない。
「まあ、わかればいいんじゃない?」
「警察には通報しておいたし。・・・帰ろうか。みんな心配して待ってるよ」
里保は矛を収め、聖は笑って手を差し出す。
衣梨奈は膨れっ面をしながらもその手をとる。
それが彼女たちのバランスだった。
この世界においての彼女たちの関係は、そんな風にして成り立っている。
592
:
名無しリゾナント
:2012/06/22(金) 21:49:41
= = = =
衣梨奈が誘拐事件の犯人を倒した数日後。
聖たち八人は、彼女たちの本拠地である街外れの空き家に集まった。
空き家と言っても、聖の家が所有して聖が離れとして使うことを黙認されている“生きた”家だ。
誰が手を回したか知らないが当然のように電気は通うし、家具もきちんとされている。
「鈴木さーん!さっきそこで膝を擦りむいちゃったんですけど、これって治してもらえますかねー?」
「ちょっとやめてよ、くどぅー。香音ちゃんは薬箱じゃないんだよ」
「鞘師さんはもっと大きなケガ治してもらったりしてるじゃないですか。ハルこれから撮影なんすよ」
「“傷の共有”使った時の傷と、そこら辺を走り回ってできた傷を一緒にしないでほしい」
「まぁいいからいいから。ほら、どぅー。膝見せてごらん」
八人が集ったリビングはいっそう賑やかだった。
この賑やかさは聖も好んでいたが、真面目な話を切り出すには向いていない雰囲気だと常々思っていた。
「みんなー!ちゅーもーく!」
左手に鍋、右手におたまを持って、大きな音が出るように叩く。
やや古典的だが、効果的なやり方ではあるようだ。
思い思いにくつろいでいたメンバーの視線が聖に集中する。
「はい。先日の誘拐事件はご苦労様でした。みんなの活躍のおかげで犯人は無事逮捕。以後、能力者による事件は今のところ確認されていません」
聖の報告に対して、「イェイ!」「やったー」などと喜びの声が返される。
593
:
名無しリゾナント
:2012/06/22(金) 21:50:26
「ただ、今回みたいな事件がまた起こらないとも限らない。だから今日は、いざという時のためのペアを決めたいと思います」
「ペア?」
「そう。一人一人が別々の場所に張り込むのって、効率は良いんだけどやっぱり危険じゃない?
だから今のうちに、そういう事態になった場合に一緒に行動するペアを決めておきたくて」
先日の一件での反省を踏まえた発案だった。
こうすれば、衣梨奈のように深追いして身を危険にさらすメンバーはいなくなる。
「なるほど。じゃあ、私とまーちゃんは一緒にしてください。“白銀のキタキツネ”様をお守りするのが“蒼炎”を背負う私の使命です」
「もうあゆみんってば。そうゆうのヤダって私ずっとゆってるのに」
「亜佑美ちゃんはそう言うと思ったよ。他には?希望ある人はいる?」
聖は周りを見回した。
蝦夷の頃より続く神使の家系である佐藤優樹と、代々神使に仕えてきた一族の末裔・石田亜佑美がコンビを組むことは予想していた。
問題はそれ以外の組み合わせだ。
どういったペアが適当か、聖には皆目見当がつかない。
「希望っていうか推薦なんだけど、えりちゃんは聖ちゃんと一緒がいいと思う」
鈴木香音が手を上げて言った。
「力ずく以外でえりちゃんの暴走を止められるの、聖ちゃんしかいないもん」
「確かに。うちがやったら鋼線でケガさせちゃうけど、聖ちゃんなら“精神干渉”でえりぽんの心を直接止められるもんね」
「ちょっと意味が違うんだけどな・・・」
「え〜!でもでもぉー、リーダーとサブリーダーはバラけたほうがいいっちゃない?」
「は?サブリーダーって生田さんだったんすか?」
「年齢と落ち着きと話の面白さから考えて、てっきりはるなんがサブリーダーかと思ってました」
「えっ!いやいやそんな!私なんてそんな!」
594
:
名無しリゾナント
:2012/06/22(金) 21:51:34
聖なら衣梨奈を説得できると考えての香音の提案だったのだが、なぜだか話は逸れていく。
いつしか議題は、「このチームのサブリーダーは誰か」ということになっていた。
「待って、こういうのは年功序列って決まってるの!この中で聖との付き合いが一番長いのはえりやけん、えりが」
「付き合いの長さならフクちゃんと幼なじみのハルのほうが上ですけどね」
「年齢だったら飯窪ちゃんとだーいしのほうが上だし」
「ちーがーうー!そういうことじゃなくって!」
「あ、でも生田さん、この前お一人でイカカニ男を倒したんですよね。すごいです、私一人じゃ絶対無理です!
やっぱりそういう実力を考えると、生田さんのほうがサブリーダーに向いてるんじゃないかなって思うんですけど・・・」
「出た、はるなんのヨイショ芸」
「ほらほらぁ!本人もそう言ってるんだから!サブリーダーは、生田衣梨奈ってことで!」
「しょーじき私はどーでもいいです。ウフフ」
「“どーでも”!?“どっちでも”の言い間違いだよね優樹ちゃん!ねえ!」
= =
話し合いは終わり、解散宣言が出される。
留まるも帰るも個人の自由だ。
これから雑誌の取材の予定が入っているという工藤遥は、大慌てで帰り支度を始める。
「売れっ子の子役も大変だねえ」
「忙しいのに呼び出してごめんね、くどぅー」
「いえいえ。ハルはお仕事してるより、こうしてみんなと過ごすほうが楽しいですから」
遥はテレビや雑誌などで活躍する女優の卵だった。
数年前に母親が応募した子役オーディションに合格して以来、それなりに忙しい日々を送っている。
595
:
名無しリゾナント
:2012/06/22(金) 21:52:14
「あっ!くどぅー、いつもの駅は行かないほうがいいよ!accidentのかんばんが視えた!」
「アクシデントの看板?・・・あぁ、人身事故の表示か。サンキューまーちゃん。タクシーで行くよ」
「一人でタクシーなんて大丈夫?仕事場まで“瞬間移動”で送ろうか?」
「大丈夫だって。それよりはるなん、来週からテストって言ってたじゃん。勉強しなくていいの?」
「もぉ!思い出させないでよー!」
「それじゃ、みなさん!お先に失礼しまーす!」
最後に威勢よく挨拶をして、遥は仕事へ向かった。
それからまもなくしてテスト勉強を理由に春菜が、門限を理由に香音が、アルバイトを理由に亜佑美が、それぞれこの場所を後にする。
残ったメンバーは再び他愛のない話に興じた。
やがて、衣梨奈がふと何かに気がついたような顔になる。
「・・・あれ?」
「どうしたの、えりぽん」
「いや、大したことじゃないっちゃけど・・・」
衣梨奈が思い返しているのは、先日の戦闘の後と先程の会話の記憶。
あの日自分は確かに、その場に居合わせなかった仲間に闘いの顛末を聞かせた。
が、“使われなかった”能力についてまで言及した覚えはない。
それなのに彼女はなぜ、敵をはっきり『イカカニ』と称することができたのだろう。
「えり、この前倒した敵がイカ以外にカニの手も持ってたこと、はるなんに教えたっけ?」
596
:
名無しリゾナント
:2012/06/22(金) 21:54:55
= =
“女”は、携帯電話で誰かと連絡をとっている。
「はい、そうです。今日は非常時の取り決めだけで特に連絡事項は、えっ・・・ああ、鞘師ですか?
鞘師は鈴木とペアになりました。・・・・・・そうですね、その時に仕掛ければよろしいかと。・・・はい、ではまた」
一拍、二拍、三拍と間を置いて、無機質な電子音。
接続が断たれたことを確認し、女は通話終了のキーを叩いた。
例外的な場合でない限り、こちらから通話を切ることは認められていない。
女は小さく溜息を吐いて空を見上げた。
物憂げだったその表情が、次第に諦念的なものへと変わっていく。
「『私が身を置く組織は破綻する運命にある』。初めにそう忠告したじゃないですか、譜久村さん・・・」
自嘲気味に呟く“春菜”の顔は、仲間の誰にも見せたことがない深い哀しみに包まれていた。
597
:
名無しリゾナント
:2012/06/22(金) 21:55:32
――――――――――――――――――――――
「また神様ごっこ?」
その一言が、今回の箱庭世界に蓋をした。
声をかけられたことで集中が途切れ、中澤裕子の作り上げた“箱庭”が霧消する。
中澤の身に現実(リアリティ)が帰ってきた。
瞼の裏で群像劇を繰り広げていた少女たちの姿は、影も形も見えない。
あるのはテーブルとソファと、コーヒーの入ったカップを片手に持った飯田圭織の姿だけだった。
「よく飽きないよね。何をそんな熱心にシミュレーションしてるの?」
「シミュレーションやない。再構築や。この世界の構成要素を全部バラして組み立て直したらどうなるんかなぁ思ってな」
「ふうん」
わかったようなわからないような曖昧な返事をして、飯田は踵を返す。
おそらく、わかってはいないだろう。
飯田は中澤の能力を把握している数少ないメンバーの一人だが、彼女とてその能力の全容を理解しているとは言い難い。
598
:
名無しリゾナント
:2012/06/22(金) 21:56:11
自らの持つ空間移動能力によって、中澤は並行世界に起こるすべての事象を把握することができる。
あらゆる並行世界に共通して発生する要素と一定の条件下でしか発生しない要素とを区別し、それらを再度組み直して今までにない世界を頭の中に構築する。
中澤はその作業を“箱庭作り”と呼んでいた。
つい先程まで見ていたのは、高橋愛以下九名のリゾナンターがこの世に存在せず、
まったく別の少女たちが高橋らの立場に成り代わって存在している世界である。
「で?再構築したらどうなったの?」
「興味深いことがわかった。色々とな」
今回高橋らの代わりとして用意した少女たちは、敢えて高橋らと同じ能力を持つよう調整した。
念動力や治癒といったオーソドックスな能力だけではない、傷の共有や獣化といった変わり種まで用意したのだ。
それなのに。
「・・・いっこだけ、どうしても作れへんかったモンがあるんや」
共鳴増幅能力の使い手、田中れいな。
彼女の代わりだけはどうしても再構築することができなかった。
新垣里沙のスパイ要素や、ジュンジュンとリンリンのような神使と庇護者の関係にある者などは配置できたというのに。
「とっておきのイレギュラーやな、アレは」
“田中れいな”は、完全に世界から独立した要素だった。
神の真似事では生み出せない絶対的な存在。
唯一無二の“個”だ。
599
:
名無しリゾナント
:2012/06/22(金) 21:56:41
中澤は家具から距離をとり、何もない空間を切り裂く。
「おでかけ?」
「ああ。実地調査に行ってくる」
「なんだ。せっかくおいしいコーヒー持ってきてあげたのに」
「マジか」
「テーブルに置いてあるやつ。お中元にもらったの」
「はよ言ってよ」
「置いたからわかると思って」
コーヒーをすすりながら飯田が言った。
よく見れば、テーブルの上には見慣れないコーヒー豆の袋が載っている。
「惜しいことしたなぁ」
「賞味期限は再来年の七月だってさ」
「ならええわ。それまでには帰ってこれるやろ」
「あれ、飲むの?圭織、持って帰ろうと思ったのに」
「飲むわアホ。あたしの机の一番下の引き出しの中に入れといて」
「オッケー。一番下の引き出しの仕切り板の奥の隠しスペースだね」
「ちょ、待って。なんであんたがあたしの机の秘密を知ってるん」
奇しくも、いつまでに答えを出すべきかの期限が定まった。
遅くとも再来年の七月。
その頃までには、この世界における田中れいなというイレギュラーの扱いが決まっているはずだ。
含み笑いを漏らして、中澤は裂けた空間の中へ足を踏み入れた。
600
:
名無しリゾナント
:2012/06/22(金) 21:58:49
>>587-599
『Reconstructed Resonantor 〜箱庭の少女たち〜』です
リゾスレと910期の融合を真面目に考えたらこんな形になりました
=====
以上を、スレの間が空いた時で構わないので代理投稿お願いします
一度で投稿できない場合は
>>591
までを前半として二回に分けてくださるとありがたいです
601
:
名無しリゾナント
:2012/06/23(土) 19:04:58
すみません上がってるの気付いてませんでしたが…すごくおもしろい…!
めちゃくちゃゾクリときました
まだもし上がっていなければ今夜にでも代理します
602
:
名無しリゾナント
:2012/06/23(土) 23:04:28
代理と感想ありがとうございます
603
:
名無し募集中。。。
:2012/06/26(火) 03:15:32
>>385-389
の続き。
「かのんちゃんも気付いたんだよね、あの不気味な"音"」
「りほちゃんも分かったの?」
「あの"音"の正体、知りたくない?」
「待ってよ、なんでりほちゃんが分かるの?あたしと同じなの?」
「私はかのんちゃんみたいに絶対音感は持ってないよ。
けど、私もかのんちゃんも、『共鳴』してるから」
「きょう、めい…?」
「私だったら教えてあげれるよ?かのんちゃんに起こってる事」
物音を聞きつけてすぐに警備員達が近くまでやってきた。
鈴木は生徒の机よりも大きく隠れやすい教卓にまず鞘師を押しこみ
次に自分も身体をねじ込んだ。
すぐ傍の廊下では警備員の照らすライトが教室の中に侵入してくる。
「今、物音しましたよね?」
アルバイトらしき若い男性の声。
「念のため、中も調べてみよう」
ベテランといった感じの中年男性の声。
直後に、二人が隠れた教室のドアが開かれる。
鈴木は祈るように目を閉じ、鞘師に身体を密着させた。
懐中電灯の光は教室中を照らす。
大量の汗が体中から噴き出した。冷や汗だ。
もうダメだとなかば諦めている。と。
604
:
名無し募集中。。。
:2012/06/26(火) 03:16:27
「何もないみたいだな、他を見に行こう」
中年男性が言って、ピシャっとドアが閉められた。
二人分の足跡がやがて遠ざかって行き、鈴木は大きく深呼吸をした。
無意識に息を止めていたらしい。同じように鞘師も息を吐いた。
「今のは完全にアウトだと思った…」
鈴木は笑顔を引きつらせながら言う。
鞘師も予想外のことが起きてただ笑った。
すぐに出てしまわずにしばらくの間そこで隠れることにする。
ようやく気持ちも呼吸も落ち着いてきた頃になって、二人は教室を出た。
「かのんちゃんなら来てくれると思ってた」
「あんなのがずっと続くのが嫌だから行くだけだよ。出てくるのに苦労したし。
今もほら、また耳がじくじくしてきた」
「大丈夫、私がなんとかしてあげるよ」
「本当は早く行きたいんだけど、このフェンスの穴を使おう」
「え、忍び込むの?」
「うん、かのんちゃん守ってね」
「は?」
「私こういうのダメだから」
周囲に十分注意を払いながらも鞘師は手を引かれ、足早に廊下を進んでいた。
月が雲に隠れたまま出てこない。闇がいっそう濃くなっていた。
非常灯の赤いランプがやけに目に入る。
鈴木は教室を出る少し前からそわそわし始め、何かを強く感じていた。
鞘師にしてみれば、その何かが問題だ。
605
:
名無し募集中。。。
:2012/06/26(火) 03:19:01
周囲に十分注意を払いながらも鞘師は手を引かれ、足早に廊下を進んでいた。
月が雲に隠れたまま出てこない。闇がいっそう濃くなっていた。
非常灯の赤いランプがやけに目に入る。
鈴木は教室を出る少し前からそわそわし始め、何かを強く感じていた。
鞘師にしてみれば、その何かが問題だ。
走る。走る。鈴木に聞こえる"音"は、闇の中で静かに啼いている。
闇の中にある"色"は、もっと色濃い闇。
闇の闇の闇の闇の闇。黒と黒と黒と黒。
「最初から見てたって事か」
南棟の屋上。勿体ないほどの広さがある其処。
その柵の傍がぽっかりと空間が喰われた様に、【闇】になっていた。
誰かが静かに佇んでいる。
鈴木は彼女の顔に見覚えがあった。
鼻歌が聞こえたかと思うと、じくじくしていた疼きが強くなる。
「大丈夫?」
「これが大丈夫そうに見える?」
「そうか、あの子自身がサブウーファーなんだよ」
「サブ…なに?」
「「『共鳴振動 -サブウーファー-』、低周波音って分かる?」
「分かんないってばっ、説明はいいからなんとかしてっ」
「…しょうがない、か」
パチンッ――
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板