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【マハ=ディヤルニ】 ルザナイ教 【バーフルード】

1言理の妖精語りて曰く、:2010/12/09(木) 15:16:58
唯一神マハ=ディヤルニを信仰するチャカ大陸発の宗教・ルザナイ教を記述するスレッドです。

56言理の妖精語りて曰く、:2014/11/28(金) 07:35:18
ルズ・アナイ・ィ・アナイは「教えという(名の)教え」「教えたる教え」を意味する。
これが縮まってルザナィアナイ、すなわちルザナイ教となる。

57言理の妖精語りて曰く、:2014/11/28(金) 18:12:36
ルズ・バーフルード・ィ・バーフルード

「天使という(名の)天使」「天使たる天使」の意。
他の天使(バーフルード)達と異なり、人間(の信仰者)としての前身を持たない、唯一神が最初から天使として創造した天使。
最初の天地が創造される前に彼女は誕生しており、それ故「被造物の長子」の異名を持つ。
「彼女」と書かれることが多いが、神は創造するにあたって彼女に性別を与えておらず「女性格の天使」ではない。
唯一神を「彼」と呼ぶのと同じ便宜的なものである。

58言理の妖精語りて曰く、:2014/11/30(日) 00:08:25
ティナ・ガラブグルン

男性格のバーフルード(天使)。名前は
「豊かで強壮な鬣のティナ」の意。ティナとは「獅子」という意味である。
緋苦魔を思わせる巨大な体躯を鎧の様な筋肉で覆った姿で描かれる。
宗教画等では「普通の天使や人間の三回りくらい体格が大きい男性の戦士や力士」といった風情であるが、
これでもかなり簡略化した描写である。実際は筋肉で出来た巨木のような姿、という域にまで達している。
異名のもとになっている「豊かで強壮な鬣」とは、髪の毛でも体毛のことでもなく、
討伐した堕天使達の翼を引き千切って繋げた一種の首飾りである。
あらゆる武器の扱いに通じるが、基本的に素手を武器とし、他には戦場でひっ掴んだ敵を振り回したり投げたりして戦う。

「強靭さ」「勇敢さ」「群れ(仲間)と共に協力する」や「統率力」といった「獅子の徳」を体現し、逆に
「子殺し」「(特に雄獅子に見られる)同性愛」といった「獅子の悪徳」を戒める天使として聖典や伝承に登場する。

子供を大切にする性格で、たとえ王侯貴族であっても、そうすれば後継者争いを防ぐ事ができるとしても断固として子供を殺す事に反対する。
そうやって命が助かった子供も多いが、一方で助けた子供の一人が成長して同性と結ばれた時、
その恋人を彼が殺すか、離縁して信仰に戻るかを迫り、分かれさせてしまう顔も持つ。
異伝ではその要求を拒んだ相手の目の前で恋人を引き千切ってしまったとも語られる。
どちらにおいても、相手は「信仰を取り戻す」という、異様な結末となっている。

彼が持つ仲間意識や統率心とは、相手を人格の底まで干渉・掌握し、そして体を傷つけ心を折ってでも、
自分が正しいと思うほうへ「正してやる」という、「思いやり」と表裏一体である。
天使法術においても扱いが難しい天使とされるが、生半可な術者では制御困難なほどパワーもさることながら
その精神干渉の強さによるところも大きい。強大なパワーを持つティナも、複数の術者による儀式法術という形をとれば
難度は下がるのだが、一度強烈すぎる精神干渉を受けると、その術者は仲間の「不正さ」「堕落的な部分」と映った面が
我慢ならなくなってしまう。相手を支配してでも矯正しようとしたくなる。この特徴により
術者間の人間関係が崩壊し、儀式法術のチームを維持できなくなった事例すら存在する。

59言理の妖精語りて曰く、:2014/12/21(日) 13:57:46
北方にはラースタローシェが統べる稲穂の如く黄金色のアウルス、
地中にはアェルサムが統べる死と未知を内包するモルスが存在する。
この二つは異教的な偽りの楽園として、憧憬と忌避がない交ぜとなった感情を向けられている。

60言理の妖精語りて曰く、:2015/01/02(金) 23:06:13
不法な商人たちが荒らし回っている。

61言理の妖精語りて曰く、:2015/02/11(水) 21:28:32
最悪のブマズであるェウィリリェムイオテシュは十七万四千五百七十一もの聖典を記した。
もちろんそこに真理はない。

62言理の妖精語りて曰く、:2015/02/15(日) 08:54:35
ヌナィ・ミオテは、熱心なルザナイ教の家庭の女の子である。
三歳のミオは、今日も両親と共にお祈りをしていた。
またおいのりのじかん。へんなうごき、つまんない。たいくつ。あそびいきたいな。
それでも、最後までやれば、大好きな父と母が褒めてくれるのだ。
ミオは、頑張って二人を真似して、祈りを捧げていた。

不意に、ミオは落下した。

闇と寒気。どこまでも落ちる。誰もいない。光、家、父母、祈りの声、全て無い。
目を開けているのに何も見えない。全身が総毛立つ。恐ろしい。
まだ落ちる。底へ落ちる。もう、どれだけ落ちたかもわからない。
ここはどこ?ぱぱとまま、いない。さむい。くらい。おうちに、かえりたい。たすけて。
もう何もわからない。そして、何かが聞こえてくる。意識はもうない。
闇の底より響き渡るは、怨みと怒り、悦びの混ざった悪魔の唄――

……ヌナィ・ミオテとは「信心深き者」の意であるが。その彼女が、わずか三歳で、
ブマズの一柱「底より深き底」ェシュリェムリェミシュに
魅入られてしまったのは、皮肉というしかない。

悪魔の祝福に、目に見える効果はなかった。
ヌナィ・ミオテは、表向きは、両親と同じ敬虔な信者として成長した。
しかし、心のどこかで、ルザナイの教えへの違和感と、悪魔への興味が膨れ上がっていく。

やがて家を飛び出したヌナィ・ミオテは、悪魔への崇拝と研究を深めていく。
その成果は、あるいは聖典という形でまとめられ、あるいは布教という形をとった。
幾度もの焚書と弾圧を物ともせず、むしろ呪力と信仰を深めていく。
幾万の信者を得た彼女は、ェウィリリェムイオテシュと名を改め、宗教国家を樹立した。
ブマズと呼ばれるようになった彼女は、しかし、気づいているのだろうか。
かつて、ェシュリェムリェミシュが目論んだ通り、彼女自身が、
悪魔の中の悪魔、魔王と呼ばれる存在に変化してしまったことに。

63言理の妖精語りて曰く、:2015/02/16(月) 09:52:04
ルムダー・ヅットゥフィ「悪魔には二種類がある。堕天使としての悪魔、
もうひとつは思想としての悪魔である。そしてこの二つはしばしば、明瞭に区別できるものではない」

64言理の妖精語りて曰く、:2015/02/19(木) 09:38:09
異邦の悪魔を恐れる大僧正は、ツァククームモルスに銀の破城槌を撃ち込むことを決定した

65言理の妖精語りて曰く、:2015/02/19(木) 21:27:20
銀を銀たらしめる主要な要素がツァククームモルスであることは周知の事実である

66言理の妖精語りて曰く、曰く、:2015/02/22(日) 12:23:00
ツァククームモルスに物体を浸すと、その物体は霊的な意味で銀となる。
銀製のものを浸した場合、二重の意味で銀となり破魔の効果は絶大となる。
しかし問題はツァククームモルスもまた、悪魔――アェルサムの封土である事だ。

67言理の妖精語りて曰く、:2015/02/22(日) 13:10:38
ツァククームとは悪徳を許さぬ悪徳のことだ

68言理の妖精語りて曰く、曰く、:2015/02/22(日) 13:43:10
悪魔の世界にも治安が要るのだ

69言理の妖精語りて曰く、:2015/02/22(日) 13:45:30
ツァククームモルスの大地は傾いでいる

70言理の妖精語りて曰く、:2015/02/22(日) 13:49:47
微妙に傾いた家のようなもので、無意識では気付いているが、意識では気付けない傾きでいる。

71言理の妖精語りて曰く、:2015/02/22(日) 14:04:35
大工は銀を恐れる

72言理の妖精語りて曰く、:2015/02/22(日) 17:47:40
世界最初の大工は錆びてしまう銀に破魔の役割を持たせることに不安を覚えたという

73言理の妖精語りて曰く、:2015/02/22(日) 20:46:30
地を据え、天を広げドームのように丸めて固めたルズ・バーフルード・ィ・バーフルードは大工の守護天使とされる。

74言理の妖精語りて曰く、:2015/02/25(水) 01:31:40
金は永遠であるが故に停滞をもたらす。黄金による破魔は用いる者をやがて魔に変える。
錆びないことは安穏に繋がり安穏は堕落に繋がる。破魔には錆びることが要求される。

75言理の妖精語りて曰く、:2015/02/25(水) 02:38:47
金は魔に通ずる。経済もまた、魔物である。
よって、ルザナイの教えが、金貨崇拝を異端として戒めていることは、驚きに値しない。
金貨の魔力は、破滅と悲劇を手際よく呼び寄せるだろう。

76言理の妖精語りて曰く、:2015/02/25(水) 22:49:41
金貨には蝿のたかる糞を刻印すべきだ、とある神官は言った。

77言理の妖精語りて曰く、:2015/02/26(木) 00:09:19
蝿の蝿たる所以を知らぬがために神官は言った
今も語り継がれている

78言理の妖精語りて曰く、:2015/02/26(木) 10:32:08
蝿は縄神の騎獣なのだ。ガンディスシャニティアの有力ではないが強力な偶像背後霊《縄神》の騎獣なのだ。
神殿を持たぬこの異教神の祈祷域は蝿がいるところ、そして蝿の形があるところだ。
流通する通貨に蝿を刻印する事はやつ等めに祈祷域を作ってやるのと同じことだ。
と、ある祭司は言った。

79言理の妖精語りて曰く、:2015/02/27(金) 00:33:52
縄神、束ねられたグレイシス
眷属たる蝿の足に結びつき至る所に忍びよるという

80言理の妖精語りて曰く、:2015/03/01(日) 22:41:09
ブマズは甘味を好む

81言理の妖精語りて曰く、:2015/03/01(日) 22:50:15
ブマズは猫舌

82言理の妖精語りて曰く、:2015/03/01(日) 23:24:32
ブマズの舌は異界に繋がる

83言理の妖精語りて曰く、:2015/03/01(日) 23:57:35
縄神は束ねられてもいないし、グレイシスという名前でも無い、というわけでもない、わけがない、ということはない、というはずもない、という……(以下略

ブマズの舌はこのように何度も裏返っている。巻貝のような巻き舌構造である。
構造をつくることでそこに大量の言葉を収納できる。

84言理の妖精語りて曰く、:2015/04/22(水) 14:02:43
巻貝をブマズの眷属と信じる地方では淡水海水問わず、巻貝を根絶やしにする。
しかしかたつむりは例外なのである。かたつむりは天使の角笛だからである。

85言理の妖精語りて曰く、:2015/04/22(水) 21:40:02
天使の角笛と賛美されるゆえんは語るまでもない
かたつむりの鳴き声の美しさのためである

86言理の妖精語りて曰く、:2015/04/24(金) 10:45:39
かたつむりの対極にいる存在、それはうまびるである。

87言理の妖精語りて曰く、:2015/04/25(土) 08:29:26
うまびるは蛭だが血を吸わない。ブマズもまたそうなのだ。

88言理の妖精語りて曰く、:2015/04/27(月) 18:38:41
「ブマズは我々の脳を吸うのだ」
「家畜の脳を捧げれば、その年は満腹して助かるらしい」
邪教の中には、ブマズを神の如く恐れ、また崇めるようになった一派もあるという。
エーラマーンも残酷な仕打ちをするものだ。

89言理の妖精語りて曰く、:2015/04/27(月) 19:24:22
>>88
ブマズの伝承はかの吸脳鬼ザッハークを思い出させる。
あるいは、同じ起源を持つのかもしれない。

90言理の妖精語りて曰く、:2015/04/27(月) 22:21:13
ブマズはまず南より来たる
ザッハークは南に棲む
ツァククームモルスは南に輝く星の名だ

91言理の妖精語りて曰く、:2015/04/28(火) 09:39:05
ツァククームモルスは「点」ではなく「面」の星である。
だから広げて他の何かを包み込むこともできるのだ。

92言理の妖精語りて曰く、:2015/04/28(火) 21:14:22
ツァククームモルスと17回ほど(個人差があります)唱えてみると言葉がいいかんじに千切れて結晶化しがち
これはツァククームモルスの星と呼ばれ珍味として珍重される

93言理の妖精語りて曰く、:2015/05/12(火) 05:35:41
ツァククームモルスの星を口づけを形容する言葉として使うことは禁忌である。
これはプフェリの伊達男たちの間では常識なのだ。葡萄酒を血に例えるのと同じである。
君の瞳に乾杯と同じである。それはあまりにも使い古され過ぎて「愛茄子すら枯れさせる」のだ。

94言理の妖精語りて曰く、:2015/05/12(火) 21:26:40
近所のブマズに茄子漬け貰ってしまった
たぶん毒が盛ってあるんだけど食べないわけにはいかんから仕方なく食べたよ
美味かった

95言理の妖精語りて曰く、:2015/05/13(水) 23:03:03
ブマズの話ばっかりしてるとブマズになっちまうよ。気をつけな。

96言理の妖精語りて曰く、:2015/05/15(金) 20:38:08
マハ=ディヤルニはブマズにならない
世のすべてがブマズになればマハ=ディヤルニの明白さが際立ち幸福なのでは?

97言理の妖精語りて曰く、:2015/05/18(月) 01:52:47
ブマズにならない = 陳腐化しない
マハ=ディヤルニが唯一神であるのは、永遠性を獲得した者が他にいても全て陳腐化し世界に食べられてしまうからである。

美味しかった

98言理の妖精語りて曰く、:2015/05/21(木) 21:26:57
未然 ブまず
連用 ブみて
終止 ブむ
連体 ブむ時
已然 ブめども
命令 ブめ

99言理の妖精語りて曰く、:2015/05/21(木) 21:56:40
"ブ・む"
古ルザナイ教において重要な観念であったようだが、現代にその意味するところは伝わっていない

100言理の妖精語りて曰く、:2015/05/21(木) 22:02:34
忌まれし未然形
否定と可能性とどちらが忌まれているのかは未だに神学的決着はついていない

101言理の妖精語りて曰く、:2015/05/22(金) 03:25:17
恐竜林で隠者として暮らした神学者ジャルバテャスル・ルムディンガは、否定こそが忌まれるべきとした。
しかしこの時彼はすでに恐竜に皮を剥がれ、人の皮をかぶった恐竜が彼になりかわり人心を惑わすために断言を行ったという。

102言理の妖精語りて曰く、:2015/05/22(金) 21:05:55
病みてもブまずが合言葉

103言理の妖精語りて曰く、:2015/05/22(金) 22:47:56
ディヤルニの響きに猫を感じる

104言理の妖精語りて曰く、:2015/05/24(日) 09:46:28
"ブ(※1)・む"
古ルザナイ教(※2)において重要な観念であったようだが(※3)、現代(※4)にその意味するところは伝わっていない(※5)

105<<妖精は口を噤んだ>>:<<妖精は口を噤んだ>>
<<妖精は口を噤んだ>>

107言理の妖精語りて曰く、:2016/03/16(水) 15:09:04
チャカ大陸以外では恐竜は絶滅したとされるが、実際にはチャカ大陸でも恐竜は一度絶滅したのである。
現生する恐竜とは、堕天使の術で蘇った屍に他ならない。恐竜が死ぬと砂糖となって崩れ落ちるのがその証拠である。

108言理の妖精語りて曰く、:2016/03/16(水) 17:39:19
それぞれのひとの寿命は「大いなる皿」に記されていることはルザナイ教徒にとっては常識である。
宗派によって動物の寿命も「皿」に記されていると信じている人もいるだろう。

ある宗派では、それぞれの動物だけでなく、その「種」の寿命もまた「皿」に記されていると信じている。
恐竜という生物群はいちど終っていると上代口承集成教典に明記されている。「皿」の余白は使い切られ、ディフワによって叩き割られた。
そしてその破片は何ぴとの手にも渡らぬようエブグルブによって南極に運ばれたと続いている。

しかしどういうわけか恐竜は現れた。巨人ルジャマント=ガプを協力して討ち取った「教皇」と「法王」がそれぞれ勢力をまとめ、
争いが始まったとき「法王」側の法術師に導かれ、肉食恐竜の群れが「教皇」軍の人馬を食い散らかした。
戦が終ると恐竜どもは新たな肉を求めて大陸全土に散った。

109言理の妖精語りて曰く、:2016/04/13(水) 01:47:12
天体は天霊の体である。地上の人々に最も影響を与えている天霊は、五つの月を天体とする五人である。

110言理の妖精語りて曰く、:2016/04/23(土) 03:13:39
「鷹匠」エブグルブは夜月を天体とする天霊である。彼によって「皿」の破片が運び込まれたのは南極ではなく夜月であるとする説もある。
この説をとる宗派では、それが行われたとされる日を祝日とし、破片をつかんで夜月へと飛んでいった彼の隼に見立てて足に白い糸を巻いた雀を放鳥する。

111言理の妖精語りて曰く、:2016/05/03(火) 07:45:37
皿は陶器製というより、茣蓙のような植物の繊維を編んだものとしてイメージされている。
植物の繊維を編み、表面を樹液で固めたものが皿として用いられる文化圏ならではの発想である。
このルクートゥミ=トゥーイブ(「寄り合わせた草の皿」)の製法を人間に教えたのもエブグルブだという。

112言理の妖精語りて曰く、:2016/05/11(水) 10:03:14
七狡人が「法術の自由化」によって体現したのは「普遍ルザナイ教」とも言うべきものである。
それは宗派に縛られず、と言えば聞こえはいいが、各宗派からのいいとこ取り、とも言える。
便利な法術は抜くが、その宗派の別の事は信じない。同性愛が悪である、女性は祭司等になれない。
こうしたことは支持しないが、それを説く宗派の使える部分は活用する。

各宗派からすればたいへんにフラストレーションの溜まる状況であった。
法術の使用限定は、信徒を繋ぎ止める手段としてそれまで機能していた。
古来より、他宗派からの布教はギリギリ容認しつつも、多宗派の法術を加工として自宗派のものとすることは、
暗黙の了解としてしないことになっていた。

もしも行えばやり返され、応酬がはじまれば互いの宗派を融解させ共倒れにさせてしまう。
そうして倒れた両宗派から流出した法術は、アンダーグラウンドな妖術と化した事例もあった。
そのため、まさに宗教に危機をもたらす事として「それだけはやってはならぬこと」と同意されていた。

113言理の妖精語りて曰く、:2016/06/22(水) 01:38:46
この世には宗教・天使・悪魔の三すくみが存在する。
悪魔は天使に弱く、天使は宗教に弱く、宗教は悪魔に弱い。

114言理の妖精語りて曰く、:2016/07/18(月) 20:03:52
悪魔は、悪ゆえに善には勝てない存在として産み出されており、一方、善なる存在の天使は、それを産み出す宗教に弱い。
そして、宗教は、善悪を弁別し、悪を遠ざけるために逆に悪に弱いのだ。
悪とは、ただそうラベリングされた己の一部、一つの姿に過ぎないというのに。
斯くして、恐怖より産まれし信仰/心象の輪は巡るのであった。

115言理の妖精語りて曰く、:2016/07/26(火) 12:19:55
ルザナイ教では宗教が天使を作った、という言い回しがある。
これは天使を架空の存在とみなしているのではなく、神の御業そのものを宗教に含めた発想である。
神の御業によって人間は創造され、その中で信仰篤き者はさらに天使へと再創造された。

悪魔とは自由意志によって悪を選び堕落した天使が自身を邪悪なものへと作り替えたもの、とされる。
人を天使とする再創造の歪んだ模倣であるとされる。

116言理の妖精語りて曰く、:2016/09/04(日) 01:10:19
フーノイッドー

「医天使」の別名を持つバーフルード。あらゆる医学、医師の守護天使であるだけでなく
罪や苦しみを病とみなし、これを治療することで善と信仰に寄与する、という思想を体現する。
彼にとって最大の病とは不信仰である。しかし彼は大罪でもある不信仰に対して、憐みの念も忘れない。
医師としての冷静な視点と態度、そこからくる適切な処置が「患者」を快癒に導くこともある。

117言理の妖精語りて曰く、:2016/09/07(水) 01:39:23
マハ=ディヤルニという語は、ルザナイ教徒が用いるいかなる言語にもない。
「大いなる神」「天地の創造主」「唯一の神」を意味する言葉はある。
しかしマハ=ディヤルニという言葉はない。
これは、「前の世界」からバーフルードが持ち込んだ語なのだ。
この世界がつくられる前、今は存在しない「前の世界」でバーフルードたちが人間だった頃から呼ばれている神名、
それが「マハ=ディヤルニ」である。

118言理の妖精語りて曰く、:2016/09/13(火) 13:57:07
ルムダー・カノピ(メレッタ県ヌッシル地区の宗教師)

「かつて栄え、今は亡き、名を呼ぶこともはばかれる異教帝国、七狡人はそのスパイでありました。
ルザナイ教を武力によって迫害していた帝国はやがてもう一つの攻撃を思いついたのであります。
ルザナイ教の紛い物を信徒の中に吹き込む事であります。
七狡人の悪魔的夫婦は「同性結婚」と称される、忌々しい”同性間結合”の儀式を行いましたが、
これはまさに帝国に蔓延っていた男色を制度化したものであります。
七狡人は帝国の悪徳を宗教の皮で包み、われわれの古い兄弟姉妹を腐らせるために遣わされたのであります。
「七先駆」という自称は、帝国が自称していた「先駆せる国家」からきていることは明らかであります。

ところで皆さん……七狡人の害は、あの時代に終わったとお思いでありますか?
デュキュローンの信仰防衛隊やノサイタンの審問兵団が全てを終わらせたと……
記録上はたしかに七狡人は全て討たれた、とありますな。名前も残らぬ「七人目」すらも討った後、その死体は隠滅されたと……
悪魔夫婦の仔どもを介して、連中の邪説が「偉大なる四峰」の内外に広がりました。
異教徒もルザナイの法術の真似事を始め……しかしながら、ルザナイの宗教圏においては
信徒たちは慎みを持ち、諸君主と宗教界の努力もあって混淆法術は地上からは一掃され、地下に潜ったのであります。
ここまでは皆さんご存知の通りであります。

しかしいま我々の社会で起こっていることは、七狡人の害が終わってないことを示しているのであります。
千年以上の時を経て息を吹き返したというべきか?

みてくださいこの社会を。現代を。安物の呪術が蔓延り、
「新しい宗教」を名乗る諸々の低俗運動によってルザナイの諸天使と諸聖人が異教の神々の列に加えられ、
婚外交渉がまるで洒落たことのように語られ、
同性間結合を結婚であると、国家――あまつさえ宗教が認める事が「先駆的」と呼ばれるこの現状を!
我々は直視して、その背後にある悪魔と悪霊と悪人の力を見据えなくてはならないのであります。
見比べましょう。そしてこの現代そのものが邪説そのものと化した七狡人の支配下にあること、
我々の国、故郷が、霊的には異教帝国の領土にされていることを知るべきであります……」

119言理の妖精語りて曰く、:2016/09/24(土) 21:50:13
デュキュローンの信仰防衛隊が用いた法術は、獅子天使ティナ・ガラブグルンを源泉とした。
異端・ジュバルディェゥィタムシャィャース宗との戦いが終結した後、彼が地上で眠りにつく前に残した言葉に従い、
眠れる獅子天霊から力を引き出し、それによって目覚めの日までティナと正当信仰を衛る。
初代総隊長がこの天使と結んだこの約束がデュキュローンの信仰防衛隊の起源であった。
信仰防衛隊は様々な悪魔、悪霊、悪獣、悪人、敵対的な異教徒、異端者と戦い続けてきた。
天霊ティナ・ガラブグルンの加護により、何度となく訪れた壊滅の危機を乗り越えてきた。

しかし、最悪の首領たち「七狡人」に率いられた最大最凶の異端、自称「七先駆派」の残党狩りの時代に、
その勢力は急速に失われ、やがて解散することになる。

120言理の妖精語りて曰く、:2016/09/25(日) 07:38:59
【ルザナイの階(きざはし)】
「偉大なる四峰」の一つトケルヒガには、「ルザナイの階」と呼ばれる登山道がある。
これは、ルザナイ教の暗黒期を代表する聖地の一つであり、その難易度にも関わらず参拝客が絶えない場所として知られている。

そしてまた、ここはルザナイ教唯信派と七先駆派両方の聖地でもあるのだ。
その成立には、ちょっとしたエピソードがある。

121言理の妖精語りて曰く、:2016/10/11(火) 01:08:20
ルムダーは「オヨ・キッタ・ラーティン(真上に投げる者、の意)」の異名を持つ。
処刑するための道具や突き落とすための建物や崖が無い所では、罪人を真上に投げたからである。
雲に届くほど高く投げ飛ばされた罪人は、落ちれば当然死んだ。
しかしただ一人、収納式の凧を利用して逃げ去った学者がいた。

122言理の妖精語りて曰く、:2016/10/13(木) 01:40:52
シン

天霊(バーフルード)の一人。シンとは「死」を意味し、「武天使」の異名を持つ。
天使としては再下級の「神の従者」 位階の天使であるが、伝統諸宗派に伝わる武術、兵法の大祖と仰がれる。

彼が伝えた「武」には格闘技や武器、用兵だけでなく、武器、要塞の作り方や毒薬の調合法も含まれる。

武術には長けるが正面から殴り合った場合、ルムダーやティナ・ガラブグルン等には絶対に勝てない。
しかし間接的には彼こそが最も多くの人間を殺した天使とも呼ばれる。

123言理の妖精語りて曰く、:2016/10/13(木) 10:52:14
シン=グロークス

「千術のシン」の意。ルザナイ教に伝わるそれぞれの「武」の派は、千の術によって構成されている。
武術の所謂「型」だけでなく、掃除や食料の調達方法なども含み、
これら千の術から1つの武が成立する、という考え方である。

諸流派のうち古いものほど法術の占める割合が少なくなる傾向にある。
法術を用いない唯信派の千術は最古の形を残していると言われる。
唯信派においてはシンは特に重要な天使であり、「シン=グロークス」は戦士の家系において人名としてよく使われる。

124言理の妖精語りて曰く、:2016/10/16(日) 18:31:30
その性質上、【シン=グロークス】にまつわる武芸譚は、数えきれないほど存在する。
ただし、倭国においては、【二万五千手返し】の逸話こそが、最も有名であることは異論を待たないところである。

かの有名な武芸者・閃樹は、その時は、まだまだ若かった。
しかし、彼の所業は、それを言い訳に使うには、あまりに恥ずべきものであったと言えるだろう。
彼は「オレの作った新流派『千手一脚』は、一手で並の流派における二十五手の動きに匹敵する。どんな相手も一撃で倒してやる!」と豪語して、ルザナイ教の武人に他流試合を申し込んだのだ。
それも、各流派で【シン=グロークス】の名乗りを許された二十五人と、同時に戦おうとしたのだ。
当初は、そんな勝っても不名誉になるだけの勝負を受ける者は、誰も居なかった。
だが、結局のところ、閃樹は、見事この異様な勝負を成立させることに成功したのだ。
その陰には、川で溺れかけた子どもを救ったり、年寄り連中の面倒を看たり、奥様方の手伝いをして媚を売ったり、浮気相手と間違えられて殺されかけたり、演説したり、石を投げられたり、ハングリーストライキしたり、栄養失調で倒れたり、噂を流して既成事実化したり、泣きついたり、夜通し土下座して門を塞いだり、と紆余曲折の経緯と苦労があった。
こうした苦労だけで、商人なら十分自慢出来る逸話なので、もう満足して帰れば良いのではないか、と誰もが思った。
しかし、ただ一人、当の閃樹だけは、対決に執着し続け、決して諦めなかったのだ。

そして、ついに決戦の日が訪れた。

125言理の妖精語りて曰く、:2016/11/08(火) 13:36:03
デュキュローンの信仰防衛隊は長子派、ノサイタンの審問兵団は法典派、
フドウィギの倫理騎士団は正塔派、ピィケマの善悪峻別会は歩守派、
そして「雷の蛇」は唯信派の武僧集団である。

それぞれにシン=グロークスが存在し、シン=ユロフイデルが存在し、シン=ァトロベスが存在した。
各宗派が擁する武僧集団は歴史の各所で活躍した。

特に「最悪の異端」を率いる七人の怪人とその門弟どもに挑んだ五つの武僧集団の事跡はやがて伝説となり、
おとぎ話のように語られ、それ自体が多種多様なバリアントを生みながら、
チャカ大陸ばかりでなく他の大陸、やがてその先の先にも届いたのだ。

閃樹は幼い時から馴染んでいた物語を反芻しながら、胸を高鳴らせ、血液が沸騰するような想いを味わっていた。

126言理の妖精語りて曰く、:2016/11/13(日) 07:52:30
そう、閃樹は、若者らしく憧れと感動で、胸をいっぱいにしていた。

しかし、その時、憧れの対象である当のシン=グロークスたちにとっては、それどころではなかった。
この「決闘」が、ルザナイ教武門の一大事となっていたからだ。

この場合、問題となっていたのは、何よりも名誉であった。
もちろん、ルザナイ教に限らず、あらゆる武術家は名誉を重んじる。
それは、丁度商人が信用を重んじるのと等しいことだと言える。
信用を無くした商人が、商機を失ってしまうように、名誉を失った武人は、武人として生きる機会を失ってしまう。
だが、今回の場合、それにルザナイ教という宗教が絡むのだ。
戦時下ならいざ知らず、平和の世に武力を濫用することを好む宗教など無い。
あったとしても、そのような宗教がある国は、やがては滅びてしまうだろう。
恐怖や殺戮と、繁栄は相容れないからである。

そう、今回集った「シン=グロークス」達は、武人であると同時に、皆、ルザナイ教という宗教の代表者であったのだ。
当然ながら、彼らは、チャカ大陸で最も名誉を重んじる人々であった。

だから、そんな彼らにとって、この「決闘」は、のっぴきならない大苦境であったのだ。

そう、あの閃樹という若者に勝つのは、さほど難しくは無いだろう。
それは、疑う余地が無い。
よしんば、あの若者が、予想外にとてつもない達人であったとしても、こちらも、誰もが一派を背負う達人ばかり。
それが、二十五人も揃っているのだ。
仮に、彼が、かの伝説の魔人達の生き残りであったり、顕現した邪神そのものであったとしても、これだけの戦力を前にして、「シン=グロークス」の勝利を疑う者など、誰一人として存在しないだろう。
そう、今まさに、その敗北が確実な戦いに挑まんとしている、当の閃樹本人を除いては。

だが、この場合、負ければもちろん問題だが、迂闊に勝ってしまうのも、また問題なのだ。
まず、現状のルザナイ教武門における各流派の最強である「シン=グロークス」が、どこの馬の骨とも知れない若者の挑発に乗ってしまったという、この「決闘」だけでも、不名誉にとられかねない事態である。
最強の存在には、それに相応しい重々しさと、自身の武力を制御する心構えが求められるからだ。
そんな最強の存在である「シン=グロークス」が、多人数でよってたかって「馬の骨」を叩きのめしてしまった日には、重大な不名誉となるのは、避けられない。

そして、最後に、一般的には些細な事だが「シン=グロークス」にとっては、重大な問題があった。
この「馬の骨」の若者は、既にルザナイの里に受け入れられつつあったのだ。
「決闘」を準備する過程で、彼が溺れかけた子どもを助けた影響も大きかったが、その主な原因はこの若者の心根にあった。
この若者は、無駄に善人なのだ。
その功名心を考えれば、もっと悪どい手段に出た方が効率的だというのに、この若者は、そうした手段を一切採ることが無かったのだ。
「決闘」の準備中、彼は、ただひたすらに、愚直なまでに、己の目標に向かって懸命なだけであった。
率直に言えば、ただの馬鹿であった。
そう、何よりも問題だったのが、当の「シン=グロークス」達でさえ、この馬鹿を好きになりつつあったということだ。

「シン=グロークス」の一人、法典派の「シン」は、いかなる時も法典にのみ従うはずの同胞が「馬の骨」の応援団らしきものを形成しているのを横目で眺め、妥協的な溜め息をついた。
この「決闘」は「シン=グロークス」にとっては、面倒な事態であるとしか言い様が無かった。

127言理の妖精語りて曰く、:2016/12/31(土) 16:43:14
法典派には二種の王の概念がある。
血による「血王」と法による「法王」である。

128言理の妖精語りて曰く、:2017/01/01(日) 07:51:06
そして「二万五千手返し」の事件は、ちょうど「血王」と「法王」の両者が、歴史的な和解を遂げた時代に起きた。
そうなると、当然、各宗派の武力の象徴であるシン=グロークスも「法典派」の代表としての一人だけにならねばならなかった。
そう、唯一の代表を決める「血王派」と「法王派」の二人のシン=グロークスの戦いが、両派の最後の争いになるはずだったのだ。
…………あの閃樹という少年さえ居なければ。

旧「法王派」であり、今は「法典派」のシン=グロークスとなった男は、閃樹の応援団の中に、旧「血王派」のシン=グロークスだった己の妻の姿を見かけ、更に深いため息をついた。
彼女は、この「決闘」が準備された時の騒ぎで、死んだ弟の代理にならんとする義務感から解放され、幼馴染みだった自分に告白してきたのだ。

129言理の妖精語りて曰く、:2017/01/16(月) 19:16:45
【ルザナイ教聖典派】と一口に言っても、その内実は様々である。
聖典を枕にして神託を得ようとしたり、聖典を料理混ぜ込んで福音と一体化しようとするなど、霊感派の方に分類される者たちの事は、まあ、ここでは、ひとまず置いておこう。

やはり【聖典派】と言えば、聖典の解釈や、読み方を重視する教派を分類するべきではないだろうか?

例えば、ある地方では【双賢平理】といって、信者の中から二人の賢者を選び、その二つの全く異なる解釈を、どちらも良しとして受け入れる者たちが居る。
また、別の地方では【回読聖拝】と言って、一冊の巨大な聖典に、各々の信者がひたすら自分の解釈を書き込みながら、聖堂で回し読みを続けるのだ。

このような者たちこそ【聖典派】の名に相応しいと言うべきではないだろうか?

130言理の妖精語りて曰く、:2017/03/04(土) 02:51:18
ルザナイ教最大の異端王エブグルブ・バフォウを討ち取ったのは、「鷹匠殺しのシン=グロークス」と伝わる。

七人の異端の「鷹」七狡人を統べる者としてのエブグルブ・バフォウは、「鷹匠」と呼ばれた。
彼の名前が鷹匠天使エブグルブからとられていることにちなんでのものであった。
首領の高弟を「鷹」と呼ぶネーミングは、彼が「鷹匠」であることから着想されたのだろう。

「鷹匠殺しのシン=グロークス」は「真の鷹匠」たる大天使エブグルブから加護と奥義を授かったことで、「贋の鷹匠」たる異端王エブグルブを殺す事が出来たのだとされる。
一説によれば、その力は授けた天使エブグルブをも殺しう得るものであったとか。
首領討伐という偉業をなしがらも「鷹匠殺し」は多くを語ることなくそのまま姿を消した。
異端王を葬った技は後世に残されることはなく、彼を欠いた残党狩りは辛酸を極めた。

131言理の妖精語りて曰く、:2017/03/13(月) 13:17:42
ミハエル・イエスマンが予告したXデー。

全世界英雄協会から離脱した英雄たちは、『黄金倫理圏』を皮切りに現れた五つの過激派集団に合流した。
それらはルザナイ教の五つの宗派「長子派」「唯信派」「法典派」「正塔派」「歩守派」の過激派であり、
七先駆派と闘争を繰り広げた時代のシン=グロークスたちや他の名だたる猛者たちを中心としていた。
しかし、こんどの彼等は手を取り合うことはなかった。むしろ互いを敵と宣言した。

かつて彼らは他宗派の「誤った解釈」に触れないようにして団結し、異端と闘争した。
結果、七先駆派を表の世界からは一掃したが、それ以後
互いへの批判も布教も以前より更に減り、自宗派内で完結してしまった。
少なくとも離反者たちにはそう見えた。

あげくの果てに七先駆派は壊滅しておらず、地下で生き延び、表の世界を生きる主流宗派の有力者の少なくない人数が
彼らの禁忌の改竄法術の利益を得、自宗派内では許されない戒律違反を彼らと共に行った。

そして近代、七先駆派は表の世界に返り咲き、その思想とやたら共通項のある「万民友和」なる価値観が
国際的なスタンダードとしてチャカ大陸を含む世界中に広められていった。

132言理の妖精語りて曰く、:2017/03/14(火) 17:19:46
彼らはその原因をかつて自分たちがした「妥協」に求めた。

ヅアート英雄協会に召喚された時代はそうでもなかったが、なかなか異教的な方法での召喚であったが、
同じ信仰を持つ人々を悪魔や怪物の魔の手から守れるなら、と召喚を受け入れて活躍した者もいた。

全世界英雄協会に召喚された時代、既に各国の民は『万民友和』を当たり前の価値観としてうけいれていた。

それは聖職者たちも例外ではなく、彼等は人工妊娠中絶を可能とする法に対抗せず、
寺院や聖域で自ら同性結婚式を執り行ったりしていた。
しかしそれをやめさせることはできない。英雄を召喚する協会は、被召芯という召喚において核となる装置を緊急停止させることで、
彼らをこの世、地上から万傑殿や「あちら側」へと強制的に送り返すことができたからだ。
たとえ万傑殿であろうと、休眠処理をされれば、外を出歩けなくなる。
新しい時代の信徒と会えなくなること、ただそれだけでも苦しいものがあった。

133言理の妖精語りて曰く、:2017/03/15(水) 15:17:10
新史歴2290年に起こった大規模な堤防決壊事故に対し、協会はトスカアン・ヴァルギャイリを派遣した。
「雨粒刺しのシン=グロークス」の武号を得た彼の術のひとつが凍結の法術であり、
応急処置として氷で固めた土砂をおき、そこに他の英雄が他の材質の壁も建てる。
豪雨が止んだあとには復旧のための技術者がやってくる。この流れで堤防が修復されるという任務だった。

最初の応急処置をやり終わり、他の英雄にバトンタッチした後、トスカアンは周囲の警備に移った。
その土地は魔獣や猛獣が多い。英雄なら自衛できても、全世界英雄協会や支部の職員、
現地の医療スタッフや土木技術者たちにはなすすべもない。

しかし雨粒を凍らせ、しかも刺しはしても砕けはしない、そんな突剣の技を持つトスカアンが心臓を一突きすれば
どんな巨大な獣も倒れ伏す。そうやってこの派遣期間中で十五体目の巨獣を倒したとき、

134言理の妖精語りて曰く、:2017/03/18(土) 08:15:16
彼らが現れた。

「正塔なる烈士トスカアン・ヴァルギャイリよ!同信の徒として貴方に問いたいことがある!」

鬱蒼とした密林の中でその声はよく響いた。

「貴君はこの世界の在り様が正しいと思われるか?聖なる法は蔑ろにされ、
異教も異端も正統信仰と同列にさせられるこの世が正しいと思われるか?
結婚と邪淫が同列にさせられるこの世が正しいと思われるか?
罰せられるべき者、死すべき者が処せられず野放しにされるこの世が正しいと思われるか?
それを諫めようとすれば英雄ですら、体内の装置で沈黙させられ、地上から追放されるこの世が正しいと思われるか?」

135言理の妖精語りて曰く、:2017/03/18(土) 16:08:13
何か答えようとしたトスカアンを別の声が制した。

「すぐに答えてください、とは言いませぬ。答えられるにしても、
もう少し胸の中で温めて頂きたい。我々はきっかけになればと思ってここに来たまで……」

不思議な事に英雄であるトスカアンですら、彼らの気配をたどることができない。
同じ英雄やそれなりの術者なら可能かもしれないが、彼らが口にするような主張をする者たちに
全世界英雄協会が英雄を派遣することはなく、英雄の感覚を誤魔化せる術者を擁するような
大きな主流派宗教団体は、各国の政府とひとまずの協力関係にある。

136言理の妖精語りて曰く、:2017/03/20(月) 05:31:29
「我々が悪魔、悪鬼でないことは、この通りですじゃ」

老人の声とともに、三人の男が茂みから出てきた。確かに人間である。
トスカアンの持つ判別機にも、人間種族の一つ、異教神話における人祖の名を冠した名称「ノローアー」が表示される。

しかしわかるのはここまでである。男たちの人種が「黒檀の民」であることはわかるが、
民族まではわからない。服装はこの土地のスタイルが取り入れられているが、旅行者か移民かもわからない。

トスカアンは犯罪捜査のためにここに来たわけではない。
現地統治機関による許可において、上位の捜査担当者に特例で支給される器具なら国民番号、市民番号も筒抜けであるが。

137言理の妖精語りて曰く、:2017/04/08(土) 18:29:08
法術の行使において唱えられ、記される祈祷文には、宗派への信仰が含まれる。
要約すると、唯一神のつたえた真のルザナイ教とは、うちの宗派ただ一つだ、という内容である。

そのため、法術を持たない唯信派の信徒は戒律上、他宗派の法術も使用できない。

138言理の妖精語りて曰く、:2017/04/22(土) 14:17:26
•シン=ユロフイデル

「統率のとれた運営のシン」の意。武天使シンの集団の指導者としての異名。
彼の天使の技を継ぐ各武僧集団のリーダーがこう呼ばれる。

「シン=グロークス」が武僧集団の最強とするなら、「シン=ユロフイデル」は最高の僧、と言える。
あくまで集団の運営上のリーダーであるため、「シン=ユロフイデル」が戦闘ではそこまで強くない、という事もあり得る。
しかし、統率に長け、武僧集団をより発展、活躍させるのなら、
その功績と栄誉はシン=グロークスに決して劣らない、と見做されている。

「シン=グロークス」の場合、極めた技や武器の名称、魔物等の討伐の功績が形容としてつくことが多いが、
シン=ユロフイデルの場合は、率いる武装集団の名称がそのまま前につくことがほとんど。

139言理の妖精語りて曰く、:2017/04/25(火) 20:25:07
シン=ユロフィデルは、砂漠や魔の森、奇跡の谷などの過酷な環境において、名声を博している。
それは、彼等が高度な生存技術を保有するだけではなく、その技術を惜しげもなく教授するからである。
彼等の名声は、ときにシン=グロークスをも上回る。

140言理の妖精語りて曰く、:2017/04/26(水) 18:46:05
「二万五千手返し」の時も、シン=グロークス側は、何も手をこまねいていたわけではなかった。
彼らも、彼らなりに無謀な決闘を防ごうと、様々な手段を講じたのだ。

その一例としては「雷」と「風」のシン=グロークスの兄妹による威嚇が挙げられる。
彼らは、決闘の約束を取り付けようとしていたセンジュを、得意の法術舞踏によって追い払おうと考えたのだ。

兄である「雷」のシン=グロークスは、一度狙いを定めた相手になら、どこからでも雷を降らせることが出来た。
しかも、その雷は、さらに複数の法術を重ねることによって、相手を傷つけないように威力を調整することも出来たのだ。
この術により、彼は「雷縛のシン」とも呼ばれていた。
聖なる像を盗んだ二十三人の盗賊を、法術によって、丸一晩に渡り縛り続けた「シン」というのは、他ならぬ彼のことである。
彼と戦うまでは無双を誇り、非情と謳っていた盗賊たちは、防ぐことも避けることも出来ない閃光への恐怖から、翌朝には、まるで幼子のように泣き叫んでいたという。

対して、妹の「風」のシン=グロークスは、名高い舞踏家であり同時に、義賊でもあった。
もっとも、彼女は通常の意味での盗賊でも、犯罪者でもない。
彼女が所属している宗派は、ルザナイ教において最も「喜捨」貧民への寄付の義務を尊ぶ宗派である。
そして「シン」である彼女は、当然ながらそこでの「武」の代表者であり、それゆえに、時にいざこざを招きかねない「喜捨」を催促する役目を率先して担っている、というただそれだけのことなのだ。
もちろん、専守防衛の教えを重んずる彼女は、その「武」によって、無理やり「喜捨」を迫ったり、財産を奪うようなことはしない。

しないのだが、そうなると今度は「義賊」としての彼女の出番が来る、とそういうわけだ。
法術を併用した彼女の舞踏は、風の天使を招き、偉大なるマハ=ディヤルニへ至る「天使の道」を拓く。
「天使の道」俗に言うところの「竜巻」である。
彼女は、その竜巻で人や物を傷つけることは無い。
彼女はただ、願い、祈るだけである。
どうか、我らの同胞が、正しき道を歩みますように。
悪しき行いを正しますように。
マハ=ディヤルニの偉大なる意志が、世の歪みを正し、貧しきものを癒しますように、と。
彼女は、真摯に祈り、真摯に踊る。
それは、方術となり、偉大なる神の御力を、その仲介者たる風の天使を世に招く。

そして、風の天使は、神の意志、すなわち「喜捨」を行わせるべく、不心得な者の元へと向かうのだ。
もちろん、不心得な者は、不心得であるからして、素直に風の天使に面会しようとしない場合も多い。
しかし、問題は無い。
そうした時にこそ、前述の「天使の道」が役立つのだ。
不心得な者が、たとえ鉄の城に引きこもったところで「天使の道」は、その城を砕き、その蔵から「喜捨」を行わせるであろう。
・・・・・・・・その結果として、不心得な者の家財一式が吹き飛んでしまうこともあるかもしれないが、まあ、大したことではない。
所詮は、歪んだ心で集めた穢れた私財。
貧しき者は「喜捨」によって、助けを得れば良い。
それだけのことである。


そう、無謀な決闘を挑むセンジュを止めんと立ちあがったのは、このような兄妹であったのだ。

141言理の妖精語りて曰く、:2017/04/27(木) 20:24:11
とはいえ、「風」と「雷」のシン=グロークスの兄妹も、別にセンジュを手酷く痛めつけようというつもりは無かった。
ただちょっと、あの無謀な若者を驚かせて、このルザナイの里から立ち去ってもらう。
二人は、それだけで済ませるはずであったし、そうなるはずであった。

ところが、そうはならなかったのだ。

142言理の妖精語りて曰く、:2017/04/28(金) 20:43:02
彼ら兄妹は、決して実力が不足していたわけでも、相手を見くびっていたわけでもなかった。
ただ、彼らは、少しだけ運が悪かった。
そして、何よりも、彼らは、センジュという男のことを知らなかったのだ。
そう、彼が、どれだけ突拍子もないことをやらかすのか、そして、彼のルザナイ教についての知識の不足が、どれだけの面倒事を巻き起こすのか。
武力で罰し、対処するべき『悪』との戦いが専門であった彼らには、まるで予測が出来ていなかったのだ。

143言理の妖精語りて曰く、:2017/05/04(木) 18:38:32
遠方から【ルザナイの里】に帰還して、すぐさまセンジュの排除にかかった二人の準備に、落ち度は無かった。

兄の雷は、センジュがどこへ逃げようとも、彼を確実に縛り上げるはずであったし、妹の風も同様に、目標を逃すことなど考えられなかった。
その認識は、彼ら兄妹にとってというより、法術に関わる者、いや、すべてのルザナイの民にとっての常識に近いものであった。

そして、事実、そうなるはずであった。
地上の人間は、いかなる者であろうと、その運命からは逃れられなかったであろう――――地上に留まってさえいたならば

144言理の妖精語りて曰く、:2017/05/11(木) 20:06:48
もちろん、センジュはただの武芸者である。
そして、無色人族(ノローアー)である彼には、飛行や浮遊を可能にする魔術や法術の心得は無く、翼や体内ガスジェットといった能力も無かった。
ましてや、単なる武芸者が、高価で不安定な飛行装備や、伝説の魔道具を持っているはずも無い。

だが、それでも、彼は確かに空を飛んだのだ。
それは、決して偉業では無かったが、ある特殊な事情から、後々までルザナイの里に語り継がれるようになった出来事であった。

そう、それは単なる偶然だったのだ。
そして、それは『不幸な』偶然でもあった。

その事件は、武芸者センジュが、無謀な決闘のため二十四人の【シン・グロークス】を説得しようとしたことが原因であった――――

145言理の妖精語りて曰く、:2017/07/22(土) 00:28:32
架空の物語に登場する架空の武僧集団に所属する架空のシン=グロークスを開祖とする武術が存在する。

使い手達のその佇まい、青き燕の如し。

146言理の妖精語りて曰く、:2017/07/31(月) 18:44:45
センジュの試みは、彼の視点からすれば、万全の準備が出来ていたはずだった。
二十四人の武の達人【シン・グロークス】
その中でも、なかなか会うことが出来ないうちの一人を、彼は、襲撃するつもりであった。

センジュは、村外れの沼へ走った。
そこに、彼の目当ての相手が居るはずだったからだ。
彼が、襲いかかり、挑発するつもりだった相手は、
その名は【沼のシン・グロークス】
「水」と「土」二種の術を使いこなし、音に聞こえる投げ技の達人。


その頃、ルザナイの里には「雷」と「風」の【シン・グロークス】たちの帰郷が近いという噂も届いていたが、センジュは、まずまっ先に「沼」を優先すると決めていた。
思い付きだけで、挑みかかった若武者には、短気だという「彼」を挑発し、決闘に誘い込むなど、容易いことに思えたのだ。
そうして、それが、若者の命運を決することになる。

こうして、センジュは走っていった。
己が先に、待ち受けている運命も知らずに。

147言理の妖精語りて曰く、:2017/08/28(月) 17:56:32
チャカ大陸では、既にカンディスシャニティアという独自の宗教が繁栄を謳歌していた。
そこで、布教に訪れたルザナイ教第一陣は、一時的な協力体制を結成した。
これが、【ルザナイ十天官会議】と呼ばれる布教組織の始まりである。

148言理の妖精語りて曰く、:2017/08/28(月) 19:37:03
彼等は南極から来た。

十の流星が彼等を北方の大地へと導いた。

149言理の妖精語りて曰く、:2017/08/30(水) 07:07:27
天体とは天霊の体であり、流星は天使の舟と呼ばれている。

流星が落ちた場所は天使の着地点である。

150言理の妖精語りて曰く、:2017/09/03(日) 20:35:57
また別の説によれば、流星とは、ルザナイの殉教者が天界にて生まれ変わった姿であるともされている。

151言理の妖精語りて曰く、:2017/09/05(火) 15:00:02
殉教者は流星となって地上に遣わされる。彼らは地霊(オロフルード)になって地上の信徒を助けるとも、
再び母の胎に宿り、ふたたび人として生まれるとも言われる。

152言理の妖精語りて曰く、:2017/09/05(火) 18:40:44
地霊(オロフルード)は、地よりルザナイの徒を助ける。
その霊験は、多くは豊作という形で現れるが、時には歩行を助けもするという。
山道を歩くとき、足取りがふと軽くなるのは、地霊のおかげであるというのだ。

153言理の妖精語りて曰く、:2017/09/08(金) 06:14:19
ルザナイ教には、天使が乗るという「天の舟」を模して儀式用の舟を作る専門の舟職人がいる

154言理の妖精語りて曰く、:2017/09/09(土) 15:44:08
この舟は修行者だけが住む島、聖地なる島に渡るものとしても使われる。

そして、水葬が認められる宗派においては、遺体を乗せて海に流す棺としても。

155言理の妖精語りて曰く、:2017/09/11(月) 23:56:32
人々を誘惑し、ときに天使すら堕落させる悪魔は鳥喰鰐に譬えられる。

鳥喰鰐は水上に鳥が飛んでいるのを確認すると皆底から矢の如く推進し、
水面から飛び出すと鳥を銛のような舌で突き刺し、そのまま水中に引きずり込んで食べてしまう。
この能力は水中の獲物を狙うさいにもいかんなく発揮される。

人の魂を魚に、天使を鳥になぞらえて呼ぶ観点においては、まさに悪魔の象徴としてふさわしい生き物と言える。


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