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【マハ=ディヤルニ】 ルザナイ教 【バーフルード】

1言理の妖精語りて曰く、:2010/12/09(木) 15:16:58
唯一神マハ=ディヤルニを信仰するチャカ大陸発の宗教・ルザナイ教を記述するスレッドです。

2言理の妖精語りて曰く、:2010/12/10(金) 18:08:44
「唯一神というからには崇める作法も一つきりなのだろうな、そいつは楽でいい。
こっちの大陸じゃ、いろんな教団領の関所ごとに数珠やら十字架やら『通行手形』を見せにゃあいかんからなあ。
じゃらじゃらと重かったのが一つになりゃあ肩の凝りも大分良くなりそうだw」

そんな期待をしていた個人旅商の俺は、さあチャカの港に着いたぞ入国だ、という際に絶句した。
司教補佐を兼ねた通関吏が、携帯するよう指で指し示した『通行手形』。
大人でも一抱えせねばならない大きさ、屈強な荷運夫が両手でやっと持ち上げる重さ、
摩擦などほとんどないツルンとした手触りのそれは、ルザナイの唯一神よろしくとらえどころのない形であり、
要は「携帯」という言葉からはほど遠いものだった。
まるで「余所者を好き勝手に旅行などさせるものか」とでも言わんばかりに・・・。

どうにも肩凝りとはまだしばらく付き合うことになりそうだ。

3言理の妖精語りて曰く、:2010/12/11(土) 12:16:11
四方の大天使も大地を担いでいるのだから、人もまた何かやんごとなき何かを担ぐべきなのだ。

4言理の妖精語りて曰く、:2010/12/12(日) 10:06:35
エブグルブとは「鷹匠」を意味する。彼は南極から名前通り【鷹】を遣わす。

5言理の妖精語りて曰く、:2010/12/16(木) 12:36:38
聖都ラヒュリンにある聖天使エブグルブ寺院は石造りの【鷹】だらけである。
本当に、これでもか、とばかり【鷹】にあふれている。

6言理の妖精語りて曰く、:2010/12/17(金) 01:46:49
【ルォディン】
神が終わらせたかつての世界。全ての天使(バーフルード)たちの故郷。
ここから【被造物の樹】(ルォディン=イオ)が伸びているとされる。

7言理の妖精語りて曰く、:2011/01/09(日) 00:27:34
いくら宇宙が膨らもうとも、ルォディンの枝の届く範囲から外に出ることは無いといわれている。

8言理の妖精語りて曰く、:2011/01/09(日) 14:22:31
(切断)すると世界は膨張限界から解放されるのか
それとも寄る辺を失い宙中分解してしまうのか
神学者たちは議論したものである

宇宙卵学派はルォディンは世界を支えていると考え、
原人学派はルォディンは世界を押さえつけていると考え、
両陣営の意見は平行線をたどった。

9言理の妖精語りて曰く、:2011/01/12(水) 12:19:22
【プフェリのサリデグ】

羽子として生まれた聖人。彼が生まれたのはプフェリの法術大家の一族であった。
当時この部族は、異民族との闘争を行っており、羽子としての体質から術を使うことの出来ない
サリデグは、法術の力の源たる天使と祖霊から憎まれた子とみなされ、
疎まれ、やがて乳母とともに追放された。乳母は、サリデグが術をロクに使えない
羽子として生まれてしまったことの責任を押し付けられてしまった。
この乳母は産婆もつとめており、出産時に妖術をかけたことにされたのである。
追放後しばらくは乳母はサリデグの面倒を見ていたが、やがて共に居ることを拒むようになり
サリダグを捨ててしまう。その後のサリデグはまさに生き地獄を味わう。
迫害され、好奇の目で見られ、人として扱われなかった彼は、神のみを心の支えとし、
自身の出自も相まって、やがて法術すらも否定し、ただマハ=ディヤルニのみを崇拝することに
専念する境地に至る。ルザナイ教の一派「唯信派」のおこりである。
彼が起こした宗派は彼の名をとってサリデガーラ(サリデグ派)とも呼ばれる。

羽子は高度な術を使えない代わりに、何かしらの強大な力を秘めている、と
言われるが、サリデグがどのような「力」を備えていたかは不明である。
唯信派の信者たちは「神を肉眼で見ること」「神を直視できること」であったと信じている。
これは「霊が見える」「人とは違う世界が見える」といったレベルの話ではなく、
高位の天使や大聖ですら霊眼、天眼を介して見なければ視覚だけでなく命までも焼き尽くされるという
神の輝ける御稜威をありのままで直視できたという意味である。

10言理の妖精語りて曰く、:2011/01/13(木) 15:43:07
サリデグはその出自から初歩の法術さえ手をつけるのを拒んだと言われる。
その代り彼は己の肉体と知恵を鍛え、難局をくぐりぬけようとした。
後代においても、彼の信者たちは一切の法術を使用しない。
やがて唯信派の共同体は、体術や技術の巧者を輩出するに至る。
恐竜避けにすら法術を使わない生活は、彼らの結束と生存能力を高めている。

術や魔力すら用いない純粋な勘と感覚、知識と技術と鍛え上げられたその肉体から、
彼らは傭兵としての才覚も発揮するようになる。知力と武力の提供は唯信派と
その開祖の名をチャカ大陸外にまで広めることになる。

11言理の妖精語りて曰く、:2011/01/13(木) 15:59:45
法術は使用しない。が、術は使用する。
しかし天使や祖霊の力を借りるものではない。
彼らが用いるのは自分たちの魔力である。
彼らが頼りにするのは神と己だけであり、
母なる大地ですら手を借りる対象ではない。
たとえ魔力が乏しかったり、術への適性が足りない場合も、
効率化と術者同士の組み合わせによって補う。
火の玉や氣を発射するような余裕を持たせることができないため、
身体能力や反応速度の強化にまわされることになる。
強者ともなれば、その身のこなしは恐竜のそれを凌駕すると言われている。

12言理の妖精語りて曰く、:2011/01/17(月) 08:09:49
法術でない術の使用は、彼らが妖術師扱いされる原因となり、迫害も行われた。
それでも彼らが生き延びられたのは、結束の強さと、使おうとすれば相手側にとって
有用であることを示してきたためである。

13言理の妖精語りて曰く、:2011/01/25(火) 02:37:15
彼らは墓を持たない。墓を作っても冒涜される時代があったからである。
この慣習をボレヤンヤ、と云う。これは「空中の墓」という意味である。
天(来世)と地(現世)との間という意味での「空中」であり、
地上のものには手が届かず荒らすことができない、という意味合いも込められている。

14言理の妖精語りて曰く、:2011/01/25(火) 03:20:15
ガドリ、グサドリ、ベッラーンドリ、これらは唯信派でも数少ない「墓」である。
とはいえ、記念碑というほうが正確である。実際、遺骨やその他遺骸が収められているわけではない。

サリデグの死後、居場所を奪われ、迫害者から逃走する信者たちの前に
サリデグの霊が表れ、信徒が大事に持っていた自分の遺骨を追っ手に向かって撒け、と三度命じたと伝わる。
その場所がガドリ、グサドリ、ベッラーンドリの「三丘」である。

骨が撒かれると、追っ手は信徒たちの事など忘れたかのように、骨を砕き、
撒かれた土地をほじくりかえすのに躍起になったという。
そうして信徒たちは逃げ延びた。

ガドリ、グサドリ、ベッラーンドリは「丘」と呼ばれてはいるが(実際に行ってみるとわかるが)
思いっきり平地である。これは追っ手たちが狂ったように削るうちに丘そのものが切り崩されたためだという。

15言理の妖精語りて曰く、:2011/01/25(火) 04:36:12
「五十五(アダフィト=フィトイ)」。
さる古い宗派における正典の巻数であり、
新異端運動、と総称される邪教運動を引き起こした悪魔どもの人数である。

その出現は北東の異教大陸にて、第二の地獄開門が起こったのと前後する。
異教徒たちは地獄の解放を許し、その災禍は神の大陸にまで及んだのである。

かつて葬られたはずの、「聖人派」と誤って称する異端者どもが
冒涜的な汎神論と超神思想を携え、日の照らす地上に返り咲こうと試みた。
奴らめを自身付けたのは、悪魔。悪魔以外にいない。

16言理の妖精語りて曰く、:2011/01/26(水) 02:05:33
「五十五」は「大奸婦」の配下である「四十四」に敗れ、死んだ。
地獄開門に乗じ、やっとのことで魂だけを地上に逃がしたのである。

17言理の妖精語りて曰く、:2011/01/26(水) 02:52:05
「五十五(アダフィト=フィトイ)」の主「一(ムァフ)」は地上に来ることはできなかった。

18言理の妖精語りて曰く、:2011/02/01(火) 06:13:11
だから何だというのだ。いま彼はオルタですくすく眠っている。

19言理の妖精語りて曰く、:2011/02/01(火) 22:38:15
イゾイツノヒト(五十五乃一)からイゾイツノハタミ(五十五乃二十三)までの20と3主の魂は地獄を逃れた
しかし地上にはそのうちの一つも現れていない
五十五を監視する観測庁の部署では、現在もそれら未把握魂を探索している

20言理の妖精語りて曰く、:2011/02/04(金) 01:08:06
自称「五十五」がけっこういる。彼らは撹乱のために撒かれたブラフである。
しかし自称すること自体が忌まわしいので、異端狩り黄金期には
それはもうたくさんの自称者が殺されたものである。

通念に反し、各宗派の教団が、こうした「五十五」狩り自粛を働きかけたこともあるのだが、
熱気が逆輸入される形で、自称者狩りをドンドン後押ししてしまったこともある。

その教訓もあってか、観測庁は特定の宗派に依存しない超教派組織であり、
ただただ観測と分析のみを行う。実際に対処するのは彼等ではない。

21言理の妖精語りて曰く、:2011/02/11(金) 22:56:41
とはいうものの、その実態は象牙の塔に籠るのが好きなオタク達の楽園だ。
彼らは自分たちの置かれた手段をこよなく愛し、手段を守るために
それらしい目的を安置したわけだ。

22言理の妖精語りて曰く、:2011/02/17(木) 23:54:55
一(ムァフ)とは、要するに法王である。
塔の上から放たれた聖鳥がとまった家に生まれた子を法王、
教団と共同体を総べる長とする。そういう宗派がかつてあった。

一(ムァフ)がまとうローブにあしらわれたマークは、
足裏に朱を塗った鳥が屋根にとまる際につく跡を図案化したものだ。

この宗派は遠い昔に途絶えた。歴代最後の一(ムァフ)も「大奸婦」に呑まれてしまった。

23言理の妖精語りて曰く、:2011/02/18(金) 00:32:25
信徒が住んだザニの谷は盗掘者によって何世紀にもわたって荒らされ続けた。
谷に入った者の五人に一人が悪霊憑きとなっても、それでも魅力的な財宝がそこにはあった。
かつて遠方からも運ばれてきた寄進の品々。現代でもその一部はかの「盗品博物館」でも見ることができる。

盗掘の勢いを弱めたのは皮肉にも、最後の一(ムァフ)と「五十五」たちの汚名であった。
「五十五」が異端運動を興しまくった時、谷に近づく者はその関係者に違いない、と
時の有力宗派が強く主張したのだった。悪霊憑きは悪魔憑きとなり、
そうでない帰還者も、谷の奥で秘儀参入した異端者、ということになった。

24言理の妖精語りて曰く、:2011/02/21(月) 10:30:57
悪魔憑きは理性を失った。薬物濫用のような状態である。
もしその悪魔憑きが犯罪組織の一員であったなら、破門されるか消される。
もし一人で行動する犯罪者だったなら、野垂れ死ぬしかない。

25言理の妖精語りて曰く、:2011/02/23(水) 00:32:27
水面が壁のようにたちふさがり、そこから大量の水鳥の首が突き出される。
かれらは騒音のようにがなり立て、鼓膜が破れるかと思うほど五月蠅い。
水面は徐々に迫り、水鳥の首がまわりを通過していく。頭上だけでなく
脇だけでなく、足元だけでなく、こちらの体まで通り過ぎていく。
水鳥が体を通った時の音量といったら、まるで悪夢のようだ。
こうして盗掘者は精神の均衡を失っていくのだ。

26<<妖精は口を噤んだ>>:<<妖精は口を噤んだ>>
<<妖精は口を噤んだ>>

27<<妖精は口を噤んだ>>:<<妖精は口を噤んだ>>
<<妖精は口を噤んだ>>

28言理の妖精語りて曰く、:2011/04/27(水) 00:48:24
クァドゥース・ヘーは仙人である。神から山に上げられた人である。
山に上げられ、山となり、仙となる。

29言理の妖精語りて曰く、:2011/04/27(水) 00:56:26
クァドゥース・ヘーは一際高みにいたる山であった。
故に周囲に刻まれた谷が目立った。
彼の周りにあるのは平地ではなかった。
多くの仙々と倶であった。彼は山々を友とし、伴とし、朋とし、
やがて伴とするに至った。彼は大山、聳え立つ大仙である。

30言理の妖精語りて曰く、:2011/04/29(金) 21:37:15
クァドゥース・ヘーとは「あなたに祈ります」という意味である。

31言理の妖精語りて曰く、:2011/05/03(火) 01:02:46
山は死んだ後、谷に埋葬された。やがてこの地にはジュバルディェゥィタムシャィャース宗が栄えた。

32言理の妖精語りて曰く、:2011/05/04(水) 00:54:31
聖者が肥やしとなった土地が栄えぬはずもない。
谷底の村長は富豪となり、傭兵と法術師たちを集めて守りを堅固にした。
護られた谷底で村長は聖者を祀りあげた。聖者の遺体から声を聞くと称して
村長は富豪からさらに教主に変じた。聖仙の死体の導くままに
商業も統治も上手くいった。敵は多かった。しかし村長かつ富豪な教主は
彼らの陰謀をも、聖者の遺体から教わり徹底的に潰した。

クァドゥース・ヘーを崇敬する者数知れず。彼を取り戻したい者数知れず。
数多の崇敬者が谷に集う。はじめは確固撃破されていた彼らもやがて
一つの集団となり、機を伺うのであった。富豪かつ教主な村長、この時齢71歳。
大仙の遺体を得たのは40の頃、その年から一年ごとに妻を迎え今年71になって子供の数は100に届かんばかり。

誰を後継者にするべきか……

33言理の妖精語りて曰く、:2011/05/15(日) 00:54:41
ある日、教主な富豪が、遺体を修めた洞穴に入ってみると、
聖者の手に卵が握られていた。洞窟の先は吹き抜けになっており、
そこから鳥か蛇が入ってきたのだろう。
はじめはどこかへやってしまおうと思っていたが、
遺体の指がやわらかく卵を包み込んでいるのを見ているとためらわれた。
聖者と卵がかわいそう、と老獪(自称)な彼には似合わない気持ちが少し芽生えたのである。

34言理の妖精語りて曰く、:2011/05/15(日) 14:46:39
後のコカトリスである

35言理の妖精語りて曰く、:2011/05/15(日) 20:04:30
ジュバルディェゥィタムシャィャース宗が伝える終末論によると、
やがてコカトリスはオオカトリスに成長し、世界を滅ぼす、とある。

それまでは小さい鳥の姿で、法王を選出する役割を担うのである。
コカトリスがオオカトリスへと成長を遂げた時、オオカトリスは
それまでの【法王】の代わりに、【法皇】を選出する。一宗派、一地域の王に留まらず、
全ての異教他宗を支配し、己が宗門に染め上げ、全世界の皇帝となるべき存在。
それがジュバルディェゥィタムシャィャース宗の説いた法皇である。

36言理の妖精語りて曰く、:2011/05/19(木) 00:16:48
コカトリスは予言の書に記された予兆……教祖である富豪の目にはそう映った。
神から選ばれたことを告げる聖なる鳥。ジュバルディェゥィタムシャィャース宗の聖伝承によれば
それは事実であった。しかし教組である村長は初代法王となることは出来なかった。
自分を聖なるものとしたいという欲望を邪悪と判断した(らしい)コカトリスに
嘴で突かれて石になってしまったからだ。その後、コカトリスが現れても
大人は反応するな、と説かれるようになる。欲望を検知されて石化する羽目になるに違いないからだ。
なので歴代法王のほぼ全てが、赤子のときにコカトリスのしるしを受けている。

37言理の妖精語りて曰く、:2011/05/30(月) 19:06:26
法王は死ぬと、その胴体から四肢と頭を切り離され、金属化の法術をかけたうえで
それらを剣のかたちに鍛え直された。そうして次の代の法王の守り刀として
受け継がれていったわけである。遺された胴体は「胴塚」に葬られた。
この塚はジュバルディェゥィタムシャィャース宗でもっとも貴い聖地のひとつとされた。

38言理の妖精語りて曰く、:2011/05/30(月) 23:30:39
護り刀は五十五本になった。それを受け継いだ十一代目の法王は、それらを
五十五人の護衛に与えた。これが「五十五(アダフィト=フィトイ)」である。

十一代目の法王はジュバルディェゥィタムシャィャース宗を滅亡に導いた。
「外への布教」を試みることによって。他のルザナイ教宗派と比べると
なかなかに個性的なジュバルディェゥィタムシャィャース宗は、要するに異端である。
それでもその活動範囲を『ザニの谷』に限定することで、外部のお目こぼしを頂いてきた。
来る者は拒み、去る者は追わず。内部の人口増加と結束によってこの宗門は維持されていた。

「しかし、今までと同じようでは、立ち行かなくなってしまった」

39言理の妖精語りて曰く、:2011/06/04(土) 08:27:03
子供の出生率が激減した。原因は『ザニの谷』で発見された鉱脈のせいだと言われている。
鉱脈から算出されるその鉱物は共同体を潤したが、安全対策が万全ではなかったため、
空気や水、土壌に鉱物の毒がまじってしまったのだ。

40言理の妖精語りて曰く、:2011/06/11(土) 01:49:24
ナンバラカン、パドカンニ、ヌュルテモンでこっそりと布教を行い、協力者を増やしていった。

41言理の妖精語りて曰く、:2011/06/13(月) 02:26:27
後の大弾圧者トゥユル・ヤッコピは父であるナンバラカンの町長に言おうとした。
「ジュバ公(ジュバルディェゥィタムシャィャース宗信徒への蔑称)が
うちの裏道で集会してたけど、いいの?」
しかし、言葉は音節ごとにハエとなってどこかに飛び去ってしまった。
時すでに法王の本気の法術が作動していたのである。

42言理の妖精語りて曰く、:2011/06/13(月) 02:31:10
後の大迫害者ジャッカヴォマド・ピュンタムは父であるパドカンニの町長に言おうとした。
「ジュバ公(ジュバルディェゥィタムシャィャース宗信徒への蔑称)が
うちの地下道で集会してたけど、いいの?」
しかし、言葉は音節ごとにアブとなってどこかに飛び去ってしまった。
時すでに法王の本気の法術が作動していたのである。

43言理の妖精語りて曰く、:2011/06/29(水) 02:49:37
しかしヌュルテモンに貼られていたハチの法術は
そこの町長の息子に焼き切られてしまった。

宗門にとって危難を呼ぶ言葉を散らす法術が失われたことで、やがて、
古い条約によって禁じられていた行為――布教活動が露見することになる。

44言理の妖精語りて曰く、:2011/06/30(木) 18:46:50
町長の息子オッカリトテマー・ホノボチはもともと法術に長けていたわけでもない。
それに手習い程度で、誕生直後から英才教育を施される法王の敵でもない。
そこにはスェレンヴェレン・ノタマヒャという裏切り者の協力があった。彼はコカトリスに
目をつけられ、その来訪を受けた過去がある。普通なら戒めの通りに、
法王になることを選択肢に入れることなくやり過ごすのが常だ。
しかしスェレンヴェレンは、ふと心中に沸いた野望に駆られ手を差し伸べてしまった。
彼の腕に止まり、手のひらをクチバシで一突き。しかし案の定彼には法王の資格は無かった。
徐々に石化していく腕を壁に叩きつけて砕いた。死こそ免れたが周囲の目は冷たい。
分不相応に法王の位を求め、失敗しておいて生きている彼を周囲は差別した。
スェレンヴェレンはやがてザニの谷から姿を消した。
復讐心に染まった彼は各地を回りながら、コカトリス、法王選抜の儀、またその土台である
ジュバルディェゥィタムシャィャース宗を滅茶苦茶にすべく力を蓄え、様々な技を身に着けていった。

45言理の妖精語りて曰く、:2011/12/09(金) 03:57:24
【ディフワ】
バーフルード(天霊)の一人であり、天使達の武器を造り鍛える鍛冶師としての顔と、
戦士としての顔を持つ。鍛冶師のときのディフワはハンマーを持ち、
戦士としてのディフワは棍棒を持つ。この区別は厳格に分けられており、
鍛冶に使うハンマーを彼が戦場で使うことは絶対に有り得ないとされる。

彼は堕天使やその他の悪魔たちと戦うほか、自らの商売道具で不当な殺人を犯した者を罰するという。
例えば包丁で人を刺した料理人や弓矢で人を射た狩人などである。
殺害が正当であった場合でも、天国でその道具を本人に修理させると言われている。

46言理の妖精語りて曰く、:2011/12/09(金) 04:56:22
地獄の四隅を支える四大天使
大地の四隅を支える四大天使
天空の四隅を支える四大天使
天国の四隅を支える四大天使
神の玉座の四隅を支える四大天使
合計20名の偉大な天使たちが存在する。
彼らの階級は天霊の最上位たる「神の道具」である。

47言理の妖精語りて曰く、:2011/12/22(木) 23:08:07
ディフワはあらゆるものを熱する手を持つ。
ディフワには凍りついた流水を出す口がある。

48言理の妖精語りて曰く、:2012/05/10(木) 02:18:16
世界にはただ一人だけ、鼻をほじる天使がいる。

49言理の妖精語りて曰く、:2012/10/16(火) 02:11:41
その鼻糞は砂金となって地面や床に転がる。
それは困窮者の手と試されるべき者の手に渡る。
試されるべき者はそれを困窮者を救うために用いなくてはならない。
用いなければ、それは彼、彼女をさらなる試練に引きずり込む。

50言理の妖精語りて曰く、:2014/10/26(日) 21:51:53
「【ハーツァブラール】

ルザナイ教における天使の一人。女性格の天霊(バーフルード)。名前は「礫を蓄えるもの」の意。

ルザナイ教の全ての宗派における「天使表」に名を連ねる代表的な天使である。天使としての位階は第四級(最下級)の「神の従者」。
『終わりと始まりを標すの書』において、終末の迫った「一つ前の世界」に降り立ち、その終わりと、次の(現在の)世界の創造に立ち会った者として名が挙げられている。
第四位階でありながら唯一神から天を飛び交う流星の五分の一と噴火する火山から飛び出す岩石の三分の一を支配する権威を与えられており、
「一つ前の世界」の終末においては天と地からの礫により罪人たちを打ち据えたという。
「神の従者」階級としては破格の権能であり、ものを破壊することに限定するなら第三階級「神の奴隷」どころか、第二階級「神の家畜」の中の上位者にも匹敵する。

もとは「一つ前の世界」の人間であり、幼くして疫病で亡くなったが、天に引き上げられ育てられる。
世界の終末と創世(神による世界の作り直し)を経ずして天使へと変質した彼女は、自分を失った事が切っ掛けで神を呪い続けるようになり、
それどころか聖地を冒涜さえしようとした両親の頭を神の命令に従い石を叩き付けて砕いた。
唯一神マハ=ディヤルニは彼女の信仰心と妥協の無さを評価し、彼女の位格にそぐわぬ程の権能を与えたとされる。」

--ソルダ・アルセスタ・ミォレー『世界の神話事典』

51言理の妖精語りて曰く、:2014/11/17(月) 22:56:40
ギョウ・ダラゥ・ブマズ

異端の神官による宗教、という意味。他宗派のことを指す蔑称としても用いられる。
かなり強烈な意味を含み、実社会で面と向かって言えば、時代と場所によっては刃傷沙汰は避けられない。

この神官(ブマズ)とは、もともとは原始ルザナイ教のライバルであった多神教の
影響を受け、ルザナイ教の異端ないし派生宗教を生んだ一群の聖職者たちのことであると推測されている。

「神官」と訳せる名称の聖職者・宗教者がいるルザナイ教宗派はあるが、
そのものずばり「ブマズ」という名称を用いている宗派は存在しない。

ブマズをルザナイ教圏に数多ある蔑称の中でも最大限に危険なものとしている理由として、
悪魔の中の悪魔、魔王の名称でもある、という事情がある。
ブマズは「偽りの宗教の設立者」ェウィリリェムイオテシュの名前の一つでもある。

52言理の妖精語りて曰く、:2014/11/22(土) 10:11:22
アヤ・イーザラク

「鉄剣アヤ」の意味。アヤとは苦魔を指す。
苦魔を操作する天使法術において招請される天使である。
彼は天使であり、つまり人間として、古い世界の出身である。
このことは「過去の世界」にも苦魔が棲息していたことを暗示する。

53言理の妖精語りて曰く、:2014/11/23(日) 00:19:20
アヤは天における戦いにおいて、グラ=バルガウルに食べられた天使将の副官であり、彼女と彼女についた全ての堕天使たちへの復讐を誓っている。
彼は上官が目の前でバラバラにされ、宴に供されるのを目の当たりにしながら何もできず、恐れに駆られて逃げ帰っている。
彼が剣を向けたところで勝てる相手ではなく、逃げ帰った彼がもたらした情報も価値あるものであったが、
それでも深い負い目を感じている。彼の復讐心の大部分が、この負い目と「後に引くわけにはいけない(引けない)」という
自分を追い込んだ結果嵌まり込んだ一種の恐怖であり、不安定さも抱えている。
悪魔からこの弱点を突かれる事も少なくないが、心が折れそうになる時もマハ=ディヤルニへの祈りが彼を救うのである。

54言理の妖精語りて曰く、:2014/11/23(日) 22:56:45
グラ=バルガウルが、天使将ユウィッラタを解体し、最初に食べ、配下たちに供したこの宴は、「この世界で最初の異教的なるもの」とも呼ばれる。
女性が最初に食事に手をつけてから他の者の皿に分けていくことを忌む文化があるが、これはこの出来事に結び付けられる。

55言理の妖精語りて曰く、:2014/11/26(水) 03:57:53
女性は自分が手をつける前に他の者の皿に分けるか、男にやらせなければならない。
分け終えた後、いちど手をつけたなら、他の者の皿に注ぎ分けるわけにはいかない。
もしおれを女にやらせるなら、グラ=バルガウルの真似事をさせることになり、
皿に受けるほうにも配下の悪魔の真似事をさせることになる。

56言理の妖精語りて曰く、:2014/11/28(金) 07:35:18
ルズ・アナイ・ィ・アナイは「教えという(名の)教え」「教えたる教え」を意味する。
これが縮まってルザナィアナイ、すなわちルザナイ教となる。

57言理の妖精語りて曰く、:2014/11/28(金) 18:12:36
ルズ・バーフルード・ィ・バーフルード

「天使という(名の)天使」「天使たる天使」の意。
他の天使(バーフルード)達と異なり、人間(の信仰者)としての前身を持たない、唯一神が最初から天使として創造した天使。
最初の天地が創造される前に彼女は誕生しており、それ故「被造物の長子」の異名を持つ。
「彼女」と書かれることが多いが、神は創造するにあたって彼女に性別を与えておらず「女性格の天使」ではない。
唯一神を「彼」と呼ぶのと同じ便宜的なものである。

58言理の妖精語りて曰く、:2014/11/30(日) 00:08:25
ティナ・ガラブグルン

男性格のバーフルード(天使)。名前は
「豊かで強壮な鬣のティナ」の意。ティナとは「獅子」という意味である。
緋苦魔を思わせる巨大な体躯を鎧の様な筋肉で覆った姿で描かれる。
宗教画等では「普通の天使や人間の三回りくらい体格が大きい男性の戦士や力士」といった風情であるが、
これでもかなり簡略化した描写である。実際は筋肉で出来た巨木のような姿、という域にまで達している。
異名のもとになっている「豊かで強壮な鬣」とは、髪の毛でも体毛のことでもなく、
討伐した堕天使達の翼を引き千切って繋げた一種の首飾りである。
あらゆる武器の扱いに通じるが、基本的に素手を武器とし、他には戦場でひっ掴んだ敵を振り回したり投げたりして戦う。

「強靭さ」「勇敢さ」「群れ(仲間)と共に協力する」や「統率力」といった「獅子の徳」を体現し、逆に
「子殺し」「(特に雄獅子に見られる)同性愛」といった「獅子の悪徳」を戒める天使として聖典や伝承に登場する。

子供を大切にする性格で、たとえ王侯貴族であっても、そうすれば後継者争いを防ぐ事ができるとしても断固として子供を殺す事に反対する。
そうやって命が助かった子供も多いが、一方で助けた子供の一人が成長して同性と結ばれた時、
その恋人を彼が殺すか、離縁して信仰に戻るかを迫り、分かれさせてしまう顔も持つ。
異伝ではその要求を拒んだ相手の目の前で恋人を引き千切ってしまったとも語られる。
どちらにおいても、相手は「信仰を取り戻す」という、異様な結末となっている。

彼が持つ仲間意識や統率心とは、相手を人格の底まで干渉・掌握し、そして体を傷つけ心を折ってでも、
自分が正しいと思うほうへ「正してやる」という、「思いやり」と表裏一体である。
天使法術においても扱いが難しい天使とされるが、生半可な術者では制御困難なほどパワーもさることながら
その精神干渉の強さによるところも大きい。強大なパワーを持つティナも、複数の術者による儀式法術という形をとれば
難度は下がるのだが、一度強烈すぎる精神干渉を受けると、その術者は仲間の「不正さ」「堕落的な部分」と映った面が
我慢ならなくなってしまう。相手を支配してでも矯正しようとしたくなる。この特徴により
術者間の人間関係が崩壊し、儀式法術のチームを維持できなくなった事例すら存在する。

59言理の妖精語りて曰く、:2014/12/21(日) 13:57:46
北方にはラースタローシェが統べる稲穂の如く黄金色のアウルス、
地中にはアェルサムが統べる死と未知を内包するモルスが存在する。
この二つは異教的な偽りの楽園として、憧憬と忌避がない交ぜとなった感情を向けられている。

60言理の妖精語りて曰く、:2015/01/02(金) 23:06:13
不法な商人たちが荒らし回っている。

61言理の妖精語りて曰く、:2015/02/11(水) 21:28:32
最悪のブマズであるェウィリリェムイオテシュは十七万四千五百七十一もの聖典を記した。
もちろんそこに真理はない。

62言理の妖精語りて曰く、:2015/02/15(日) 08:54:35
ヌナィ・ミオテは、熱心なルザナイ教の家庭の女の子である。
三歳のミオは、今日も両親と共にお祈りをしていた。
またおいのりのじかん。へんなうごき、つまんない。たいくつ。あそびいきたいな。
それでも、最後までやれば、大好きな父と母が褒めてくれるのだ。
ミオは、頑張って二人を真似して、祈りを捧げていた。

不意に、ミオは落下した。

闇と寒気。どこまでも落ちる。誰もいない。光、家、父母、祈りの声、全て無い。
目を開けているのに何も見えない。全身が総毛立つ。恐ろしい。
まだ落ちる。底へ落ちる。もう、どれだけ落ちたかもわからない。
ここはどこ?ぱぱとまま、いない。さむい。くらい。おうちに、かえりたい。たすけて。
もう何もわからない。そして、何かが聞こえてくる。意識はもうない。
闇の底より響き渡るは、怨みと怒り、悦びの混ざった悪魔の唄――

……ヌナィ・ミオテとは「信心深き者」の意であるが。その彼女が、わずか三歳で、
ブマズの一柱「底より深き底」ェシュリェムリェミシュに
魅入られてしまったのは、皮肉というしかない。

悪魔の祝福に、目に見える効果はなかった。
ヌナィ・ミオテは、表向きは、両親と同じ敬虔な信者として成長した。
しかし、心のどこかで、ルザナイの教えへの違和感と、悪魔への興味が膨れ上がっていく。

やがて家を飛び出したヌナィ・ミオテは、悪魔への崇拝と研究を深めていく。
その成果は、あるいは聖典という形でまとめられ、あるいは布教という形をとった。
幾度もの焚書と弾圧を物ともせず、むしろ呪力と信仰を深めていく。
幾万の信者を得た彼女は、ェウィリリェムイオテシュと名を改め、宗教国家を樹立した。
ブマズと呼ばれるようになった彼女は、しかし、気づいているのだろうか。
かつて、ェシュリェムリェミシュが目論んだ通り、彼女自身が、
悪魔の中の悪魔、魔王と呼ばれる存在に変化してしまったことに。

63言理の妖精語りて曰く、:2015/02/16(月) 09:52:04
ルムダー・ヅットゥフィ「悪魔には二種類がある。堕天使としての悪魔、
もうひとつは思想としての悪魔である。そしてこの二つはしばしば、明瞭に区別できるものではない」

64言理の妖精語りて曰く、:2015/02/19(木) 09:38:09
異邦の悪魔を恐れる大僧正は、ツァククームモルスに銀の破城槌を撃ち込むことを決定した

65言理の妖精語りて曰く、:2015/02/19(木) 21:27:20
銀を銀たらしめる主要な要素がツァククームモルスであることは周知の事実である

66言理の妖精語りて曰く、曰く、:2015/02/22(日) 12:23:00
ツァククームモルスに物体を浸すと、その物体は霊的な意味で銀となる。
銀製のものを浸した場合、二重の意味で銀となり破魔の効果は絶大となる。
しかし問題はツァククームモルスもまた、悪魔――アェルサムの封土である事だ。

67言理の妖精語りて曰く、:2015/02/22(日) 13:10:38
ツァククームとは悪徳を許さぬ悪徳のことだ

68言理の妖精語りて曰く、曰く、:2015/02/22(日) 13:43:10
悪魔の世界にも治安が要るのだ

69言理の妖精語りて曰く、:2015/02/22(日) 13:45:30
ツァククームモルスの大地は傾いでいる

70言理の妖精語りて曰く、:2015/02/22(日) 13:49:47
微妙に傾いた家のようなもので、無意識では気付いているが、意識では気付けない傾きでいる。

71言理の妖精語りて曰く、:2015/02/22(日) 14:04:35
大工は銀を恐れる

72言理の妖精語りて曰く、:2015/02/22(日) 17:47:40
世界最初の大工は錆びてしまう銀に破魔の役割を持たせることに不安を覚えたという

73言理の妖精語りて曰く、:2015/02/22(日) 20:46:30
地を据え、天を広げドームのように丸めて固めたルズ・バーフルード・ィ・バーフルードは大工の守護天使とされる。

74言理の妖精語りて曰く、:2015/02/25(水) 01:31:40
金は永遠であるが故に停滞をもたらす。黄金による破魔は用いる者をやがて魔に変える。
錆びないことは安穏に繋がり安穏は堕落に繋がる。破魔には錆びることが要求される。

75言理の妖精語りて曰く、:2015/02/25(水) 02:38:47
金は魔に通ずる。経済もまた、魔物である。
よって、ルザナイの教えが、金貨崇拝を異端として戒めていることは、驚きに値しない。
金貨の魔力は、破滅と悲劇を手際よく呼び寄せるだろう。

76言理の妖精語りて曰く、:2015/02/25(水) 22:49:41
金貨には蝿のたかる糞を刻印すべきだ、とある神官は言った。

77言理の妖精語りて曰く、:2015/02/26(木) 00:09:19
蝿の蝿たる所以を知らぬがために神官は言った
今も語り継がれている

78言理の妖精語りて曰く、:2015/02/26(木) 10:32:08
蝿は縄神の騎獣なのだ。ガンディスシャニティアの有力ではないが強力な偶像背後霊《縄神》の騎獣なのだ。
神殿を持たぬこの異教神の祈祷域は蝿がいるところ、そして蝿の形があるところだ。
流通する通貨に蝿を刻印する事はやつ等めに祈祷域を作ってやるのと同じことだ。
と、ある祭司は言った。

79言理の妖精語りて曰く、:2015/02/27(金) 00:33:52
縄神、束ねられたグレイシス
眷属たる蝿の足に結びつき至る所に忍びよるという

80言理の妖精語りて曰く、:2015/03/01(日) 22:41:09
ブマズは甘味を好む

81言理の妖精語りて曰く、:2015/03/01(日) 22:50:15
ブマズは猫舌

82言理の妖精語りて曰く、:2015/03/01(日) 23:24:32
ブマズの舌は異界に繋がる

83言理の妖精語りて曰く、:2015/03/01(日) 23:57:35
縄神は束ねられてもいないし、グレイシスという名前でも無い、というわけでもない、わけがない、ということはない、というはずもない、という……(以下略

ブマズの舌はこのように何度も裏返っている。巻貝のような巻き舌構造である。
構造をつくることでそこに大量の言葉を収納できる。

84言理の妖精語りて曰く、:2015/04/22(水) 14:02:43
巻貝をブマズの眷属と信じる地方では淡水海水問わず、巻貝を根絶やしにする。
しかしかたつむりは例外なのである。かたつむりは天使の角笛だからである。

85言理の妖精語りて曰く、:2015/04/22(水) 21:40:02
天使の角笛と賛美されるゆえんは語るまでもない
かたつむりの鳴き声の美しさのためである

86言理の妖精語りて曰く、:2015/04/24(金) 10:45:39
かたつむりの対極にいる存在、それはうまびるである。

87言理の妖精語りて曰く、:2015/04/25(土) 08:29:26
うまびるは蛭だが血を吸わない。ブマズもまたそうなのだ。

88言理の妖精語りて曰く、:2015/04/27(月) 18:38:41
「ブマズは我々の脳を吸うのだ」
「家畜の脳を捧げれば、その年は満腹して助かるらしい」
邪教の中には、ブマズを神の如く恐れ、また崇めるようになった一派もあるという。
エーラマーンも残酷な仕打ちをするものだ。

89言理の妖精語りて曰く、:2015/04/27(月) 19:24:22
>>88
ブマズの伝承はかの吸脳鬼ザッハークを思い出させる。
あるいは、同じ起源を持つのかもしれない。

90言理の妖精語りて曰く、:2015/04/27(月) 22:21:13
ブマズはまず南より来たる
ザッハークは南に棲む
ツァククームモルスは南に輝く星の名だ

91言理の妖精語りて曰く、:2015/04/28(火) 09:39:05
ツァククームモルスは「点」ではなく「面」の星である。
だから広げて他の何かを包み込むこともできるのだ。

92言理の妖精語りて曰く、:2015/04/28(火) 21:14:22
ツァククームモルスと17回ほど(個人差があります)唱えてみると言葉がいいかんじに千切れて結晶化しがち
これはツァククームモルスの星と呼ばれ珍味として珍重される

93言理の妖精語りて曰く、:2015/05/12(火) 05:35:41
ツァククームモルスの星を口づけを形容する言葉として使うことは禁忌である。
これはプフェリの伊達男たちの間では常識なのだ。葡萄酒を血に例えるのと同じである。
君の瞳に乾杯と同じである。それはあまりにも使い古され過ぎて「愛茄子すら枯れさせる」のだ。

94言理の妖精語りて曰く、:2015/05/12(火) 21:26:40
近所のブマズに茄子漬け貰ってしまった
たぶん毒が盛ってあるんだけど食べないわけにはいかんから仕方なく食べたよ
美味かった

95言理の妖精語りて曰く、:2015/05/13(水) 23:03:03
ブマズの話ばっかりしてるとブマズになっちまうよ。気をつけな。

96言理の妖精語りて曰く、:2015/05/15(金) 20:38:08
マハ=ディヤルニはブマズにならない
世のすべてがブマズになればマハ=ディヤルニの明白さが際立ち幸福なのでは?

97言理の妖精語りて曰く、:2015/05/18(月) 01:52:47
ブマズにならない = 陳腐化しない
マハ=ディヤルニが唯一神であるのは、永遠性を獲得した者が他にいても全て陳腐化し世界に食べられてしまうからである。

美味しかった

98言理の妖精語りて曰く、:2015/05/21(木) 21:26:57
未然 ブまず
連用 ブみて
終止 ブむ
連体 ブむ時
已然 ブめども
命令 ブめ

99言理の妖精語りて曰く、:2015/05/21(木) 21:56:40
"ブ・む"
古ルザナイ教において重要な観念であったようだが、現代にその意味するところは伝わっていない

100言理の妖精語りて曰く、:2015/05/21(木) 22:02:34
忌まれし未然形
否定と可能性とどちらが忌まれているのかは未だに神学的決着はついていない

101言理の妖精語りて曰く、:2015/05/22(金) 03:25:17
恐竜林で隠者として暮らした神学者ジャルバテャスル・ルムディンガは、否定こそが忌まれるべきとした。
しかしこの時彼はすでに恐竜に皮を剥がれ、人の皮をかぶった恐竜が彼になりかわり人心を惑わすために断言を行ったという。

102言理の妖精語りて曰く、:2015/05/22(金) 21:05:55
病みてもブまずが合言葉

103言理の妖精語りて曰く、:2015/05/22(金) 22:47:56
ディヤルニの響きに猫を感じる

104言理の妖精語りて曰く、:2015/05/24(日) 09:46:28
"ブ(※1)・む"
古ルザナイ教(※2)において重要な観念であったようだが(※3)、現代(※4)にその意味するところは伝わっていない(※5)

105<<妖精は口を噤んだ>>:<<妖精は口を噤んだ>>
<<妖精は口を噤んだ>>

107言理の妖精語りて曰く、:2016/03/16(水) 15:09:04
チャカ大陸以外では恐竜は絶滅したとされるが、実際にはチャカ大陸でも恐竜は一度絶滅したのである。
現生する恐竜とは、堕天使の術で蘇った屍に他ならない。恐竜が死ぬと砂糖となって崩れ落ちるのがその証拠である。

108言理の妖精語りて曰く、:2016/03/16(水) 17:39:19
それぞれのひとの寿命は「大いなる皿」に記されていることはルザナイ教徒にとっては常識である。
宗派によって動物の寿命も「皿」に記されていると信じている人もいるだろう。

ある宗派では、それぞれの動物だけでなく、その「種」の寿命もまた「皿」に記されていると信じている。
恐竜という生物群はいちど終っていると上代口承集成教典に明記されている。「皿」の余白は使い切られ、ディフワによって叩き割られた。
そしてその破片は何ぴとの手にも渡らぬようエブグルブによって南極に運ばれたと続いている。

しかしどういうわけか恐竜は現れた。巨人ルジャマント=ガプを協力して討ち取った「教皇」と「法王」がそれぞれ勢力をまとめ、
争いが始まったとき「法王」側の法術師に導かれ、肉食恐竜の群れが「教皇」軍の人馬を食い散らかした。
戦が終ると恐竜どもは新たな肉を求めて大陸全土に散った。

109言理の妖精語りて曰く、:2016/04/13(水) 01:47:12
天体は天霊の体である。地上の人々に最も影響を与えている天霊は、五つの月を天体とする五人である。

110言理の妖精語りて曰く、:2016/04/23(土) 03:13:39
「鷹匠」エブグルブは夜月を天体とする天霊である。彼によって「皿」の破片が運び込まれたのは南極ではなく夜月であるとする説もある。
この説をとる宗派では、それが行われたとされる日を祝日とし、破片をつかんで夜月へと飛んでいった彼の隼に見立てて足に白い糸を巻いた雀を放鳥する。

111言理の妖精語りて曰く、:2016/05/03(火) 07:45:37
皿は陶器製というより、茣蓙のような植物の繊維を編んだものとしてイメージされている。
植物の繊維を編み、表面を樹液で固めたものが皿として用いられる文化圏ならではの発想である。
このルクートゥミ=トゥーイブ(「寄り合わせた草の皿」)の製法を人間に教えたのもエブグルブだという。

112言理の妖精語りて曰く、:2016/05/11(水) 10:03:14
七狡人が「法術の自由化」によって体現したのは「普遍ルザナイ教」とも言うべきものである。
それは宗派に縛られず、と言えば聞こえはいいが、各宗派からのいいとこ取り、とも言える。
便利な法術は抜くが、その宗派の別の事は信じない。同性愛が悪である、女性は祭司等になれない。
こうしたことは支持しないが、それを説く宗派の使える部分は活用する。

各宗派からすればたいへんにフラストレーションの溜まる状況であった。
法術の使用限定は、信徒を繋ぎ止める手段としてそれまで機能していた。
古来より、他宗派からの布教はギリギリ容認しつつも、多宗派の法術を加工として自宗派のものとすることは、
暗黙の了解としてしないことになっていた。

もしも行えばやり返され、応酬がはじまれば互いの宗派を融解させ共倒れにさせてしまう。
そうして倒れた両宗派から流出した法術は、アンダーグラウンドな妖術と化した事例もあった。
そのため、まさに宗教に危機をもたらす事として「それだけはやってはならぬこと」と同意されていた。

113言理の妖精語りて曰く、:2016/06/22(水) 01:38:46
この世には宗教・天使・悪魔の三すくみが存在する。
悪魔は天使に弱く、天使は宗教に弱く、宗教は悪魔に弱い。

114言理の妖精語りて曰く、:2016/07/18(月) 20:03:52
悪魔は、悪ゆえに善には勝てない存在として産み出されており、一方、善なる存在の天使は、それを産み出す宗教に弱い。
そして、宗教は、善悪を弁別し、悪を遠ざけるために逆に悪に弱いのだ。
悪とは、ただそうラベリングされた己の一部、一つの姿に過ぎないというのに。
斯くして、恐怖より産まれし信仰/心象の輪は巡るのであった。

115言理の妖精語りて曰く、:2016/07/26(火) 12:19:55
ルザナイ教では宗教が天使を作った、という言い回しがある。
これは天使を架空の存在とみなしているのではなく、神の御業そのものを宗教に含めた発想である。
神の御業によって人間は創造され、その中で信仰篤き者はさらに天使へと再創造された。

悪魔とは自由意志によって悪を選び堕落した天使が自身を邪悪なものへと作り替えたもの、とされる。
人を天使とする再創造の歪んだ模倣であるとされる。

116言理の妖精語りて曰く、:2016/09/04(日) 01:10:19
フーノイッドー

「医天使」の別名を持つバーフルード。あらゆる医学、医師の守護天使であるだけでなく
罪や苦しみを病とみなし、これを治療することで善と信仰に寄与する、という思想を体現する。
彼にとって最大の病とは不信仰である。しかし彼は大罪でもある不信仰に対して、憐みの念も忘れない。
医師としての冷静な視点と態度、そこからくる適切な処置が「患者」を快癒に導くこともある。

117言理の妖精語りて曰く、:2016/09/07(水) 01:39:23
マハ=ディヤルニという語は、ルザナイ教徒が用いるいかなる言語にもない。
「大いなる神」「天地の創造主」「唯一の神」を意味する言葉はある。
しかしマハ=ディヤルニという言葉はない。
これは、「前の世界」からバーフルードが持ち込んだ語なのだ。
この世界がつくられる前、今は存在しない「前の世界」でバーフルードたちが人間だった頃から呼ばれている神名、
それが「マハ=ディヤルニ」である。

118言理の妖精語りて曰く、:2016/09/13(火) 13:57:07
ルムダー・カノピ(メレッタ県ヌッシル地区の宗教師)

「かつて栄え、今は亡き、名を呼ぶこともはばかれる異教帝国、七狡人はそのスパイでありました。
ルザナイ教を武力によって迫害していた帝国はやがてもう一つの攻撃を思いついたのであります。
ルザナイ教の紛い物を信徒の中に吹き込む事であります。
七狡人の悪魔的夫婦は「同性結婚」と称される、忌々しい”同性間結合”の儀式を行いましたが、
これはまさに帝国に蔓延っていた男色を制度化したものであります。
七狡人は帝国の悪徳を宗教の皮で包み、われわれの古い兄弟姉妹を腐らせるために遣わされたのであります。
「七先駆」という自称は、帝国が自称していた「先駆せる国家」からきていることは明らかであります。

ところで皆さん……七狡人の害は、あの時代に終わったとお思いでありますか?
デュキュローンの信仰防衛隊やノサイタンの審問兵団が全てを終わらせたと……
記録上はたしかに七狡人は全て討たれた、とありますな。名前も残らぬ「七人目」すらも討った後、その死体は隠滅されたと……
悪魔夫婦の仔どもを介して、連中の邪説が「偉大なる四峰」の内外に広がりました。
異教徒もルザナイの法術の真似事を始め……しかしながら、ルザナイの宗教圏においては
信徒たちは慎みを持ち、諸君主と宗教界の努力もあって混淆法術は地上からは一掃され、地下に潜ったのであります。
ここまでは皆さんご存知の通りであります。

しかしいま我々の社会で起こっていることは、七狡人の害が終わってないことを示しているのであります。
千年以上の時を経て息を吹き返したというべきか?

みてくださいこの社会を。現代を。安物の呪術が蔓延り、
「新しい宗教」を名乗る諸々の低俗運動によってルザナイの諸天使と諸聖人が異教の神々の列に加えられ、
婚外交渉がまるで洒落たことのように語られ、
同性間結合を結婚であると、国家――あまつさえ宗教が認める事が「先駆的」と呼ばれるこの現状を!
我々は直視して、その背後にある悪魔と悪霊と悪人の力を見据えなくてはならないのであります。
見比べましょう。そしてこの現代そのものが邪説そのものと化した七狡人の支配下にあること、
我々の国、故郷が、霊的には異教帝国の領土にされていることを知るべきであります……」

119言理の妖精語りて曰く、:2016/09/24(土) 21:50:13
デュキュローンの信仰防衛隊が用いた法術は、獅子天使ティナ・ガラブグルンを源泉とした。
異端・ジュバルディェゥィタムシャィャース宗との戦いが終結した後、彼が地上で眠りにつく前に残した言葉に従い、
眠れる獅子天霊から力を引き出し、それによって目覚めの日までティナと正当信仰を衛る。
初代総隊長がこの天使と結んだこの約束がデュキュローンの信仰防衛隊の起源であった。
信仰防衛隊は様々な悪魔、悪霊、悪獣、悪人、敵対的な異教徒、異端者と戦い続けてきた。
天霊ティナ・ガラブグルンの加護により、何度となく訪れた壊滅の危機を乗り越えてきた。

しかし、最悪の首領たち「七狡人」に率いられた最大最凶の異端、自称「七先駆派」の残党狩りの時代に、
その勢力は急速に失われ、やがて解散することになる。

120言理の妖精語りて曰く、:2016/09/25(日) 07:38:59
【ルザナイの階(きざはし)】
「偉大なる四峰」の一つトケルヒガには、「ルザナイの階」と呼ばれる登山道がある。
これは、ルザナイ教の暗黒期を代表する聖地の一つであり、その難易度にも関わらず参拝客が絶えない場所として知られている。

そしてまた、ここはルザナイ教唯信派と七先駆派両方の聖地でもあるのだ。
その成立には、ちょっとしたエピソードがある。

121言理の妖精語りて曰く、:2016/10/11(火) 01:08:20
ルムダーは「オヨ・キッタ・ラーティン(真上に投げる者、の意)」の異名を持つ。
処刑するための道具や突き落とすための建物や崖が無い所では、罪人を真上に投げたからである。
雲に届くほど高く投げ飛ばされた罪人は、落ちれば当然死んだ。
しかしただ一人、収納式の凧を利用して逃げ去った学者がいた。

122言理の妖精語りて曰く、:2016/10/13(木) 01:40:52
シン

天霊(バーフルード)の一人。シンとは「死」を意味し、「武天使」の異名を持つ。
天使としては再下級の「神の従者」 位階の天使であるが、伝統諸宗派に伝わる武術、兵法の大祖と仰がれる。

彼が伝えた「武」には格闘技や武器、用兵だけでなく、武器、要塞の作り方や毒薬の調合法も含まれる。

武術には長けるが正面から殴り合った場合、ルムダーやティナ・ガラブグルン等には絶対に勝てない。
しかし間接的には彼こそが最も多くの人間を殺した天使とも呼ばれる。

123言理の妖精語りて曰く、:2016/10/13(木) 10:52:14
シン=グロークス

「千術のシン」の意。ルザナイ教に伝わるそれぞれの「武」の派は、千の術によって構成されている。
武術の所謂「型」だけでなく、掃除や食料の調達方法なども含み、
これら千の術から1つの武が成立する、という考え方である。

諸流派のうち古いものほど法術の占める割合が少なくなる傾向にある。
法術を用いない唯信派の千術は最古の形を残していると言われる。
唯信派においてはシンは特に重要な天使であり、「シン=グロークス」は戦士の家系において人名としてよく使われる。

124言理の妖精語りて曰く、:2016/10/16(日) 18:31:30
その性質上、【シン=グロークス】にまつわる武芸譚は、数えきれないほど存在する。
ただし、倭国においては、【二万五千手返し】の逸話こそが、最も有名であることは異論を待たないところである。

かの有名な武芸者・閃樹は、その時は、まだまだ若かった。
しかし、彼の所業は、それを言い訳に使うには、あまりに恥ずべきものであったと言えるだろう。
彼は「オレの作った新流派『千手一脚』は、一手で並の流派における二十五手の動きに匹敵する。どんな相手も一撃で倒してやる!」と豪語して、ルザナイ教の武人に他流試合を申し込んだのだ。
それも、各流派で【シン=グロークス】の名乗りを許された二十五人と、同時に戦おうとしたのだ。
当初は、そんな勝っても不名誉になるだけの勝負を受ける者は、誰も居なかった。
だが、結局のところ、閃樹は、見事この異様な勝負を成立させることに成功したのだ。
その陰には、川で溺れかけた子どもを救ったり、年寄り連中の面倒を看たり、奥様方の手伝いをして媚を売ったり、浮気相手と間違えられて殺されかけたり、演説したり、石を投げられたり、ハングリーストライキしたり、栄養失調で倒れたり、噂を流して既成事実化したり、泣きついたり、夜通し土下座して門を塞いだり、と紆余曲折の経緯と苦労があった。
こうした苦労だけで、商人なら十分自慢出来る逸話なので、もう満足して帰れば良いのではないか、と誰もが思った。
しかし、ただ一人、当の閃樹だけは、対決に執着し続け、決して諦めなかったのだ。

そして、ついに決戦の日が訪れた。

125言理の妖精語りて曰く、:2016/11/08(火) 13:36:03
デュキュローンの信仰防衛隊は長子派、ノサイタンの審問兵団は法典派、
フドウィギの倫理騎士団は正塔派、ピィケマの善悪峻別会は歩守派、
そして「雷の蛇」は唯信派の武僧集団である。

それぞれにシン=グロークスが存在し、シン=ユロフイデルが存在し、シン=ァトロベスが存在した。
各宗派が擁する武僧集団は歴史の各所で活躍した。

特に「最悪の異端」を率いる七人の怪人とその門弟どもに挑んだ五つの武僧集団の事跡はやがて伝説となり、
おとぎ話のように語られ、それ自体が多種多様なバリアントを生みながら、
チャカ大陸ばかりでなく他の大陸、やがてその先の先にも届いたのだ。

閃樹は幼い時から馴染んでいた物語を反芻しながら、胸を高鳴らせ、血液が沸騰するような想いを味わっていた。

126言理の妖精語りて曰く、:2016/11/13(日) 07:52:30
そう、閃樹は、若者らしく憧れと感動で、胸をいっぱいにしていた。

しかし、その時、憧れの対象である当のシン=グロークスたちにとっては、それどころではなかった。
この「決闘」が、ルザナイ教武門の一大事となっていたからだ。

この場合、問題となっていたのは、何よりも名誉であった。
もちろん、ルザナイ教に限らず、あらゆる武術家は名誉を重んじる。
それは、丁度商人が信用を重んじるのと等しいことだと言える。
信用を無くした商人が、商機を失ってしまうように、名誉を失った武人は、武人として生きる機会を失ってしまう。
だが、今回の場合、それにルザナイ教という宗教が絡むのだ。
戦時下ならいざ知らず、平和の世に武力を濫用することを好む宗教など無い。
あったとしても、そのような宗教がある国は、やがては滅びてしまうだろう。
恐怖や殺戮と、繁栄は相容れないからである。

そう、今回集った「シン=グロークス」達は、武人であると同時に、皆、ルザナイ教という宗教の代表者であったのだ。
当然ながら、彼らは、チャカ大陸で最も名誉を重んじる人々であった。

だから、そんな彼らにとって、この「決闘」は、のっぴきならない大苦境であったのだ。

そう、あの閃樹という若者に勝つのは、さほど難しくは無いだろう。
それは、疑う余地が無い。
よしんば、あの若者が、予想外にとてつもない達人であったとしても、こちらも、誰もが一派を背負う達人ばかり。
それが、二十五人も揃っているのだ。
仮に、彼が、かの伝説の魔人達の生き残りであったり、顕現した邪神そのものであったとしても、これだけの戦力を前にして、「シン=グロークス」の勝利を疑う者など、誰一人として存在しないだろう。
そう、今まさに、その敗北が確実な戦いに挑まんとしている、当の閃樹本人を除いては。

だが、この場合、負ければもちろん問題だが、迂闊に勝ってしまうのも、また問題なのだ。
まず、現状のルザナイ教武門における各流派の最強である「シン=グロークス」が、どこの馬の骨とも知れない若者の挑発に乗ってしまったという、この「決闘」だけでも、不名誉にとられかねない事態である。
最強の存在には、それに相応しい重々しさと、自身の武力を制御する心構えが求められるからだ。
そんな最強の存在である「シン=グロークス」が、多人数でよってたかって「馬の骨」を叩きのめしてしまった日には、重大な不名誉となるのは、避けられない。

そして、最後に、一般的には些細な事だが「シン=グロークス」にとっては、重大な問題があった。
この「馬の骨」の若者は、既にルザナイの里に受け入れられつつあったのだ。
「決闘」を準備する過程で、彼が溺れかけた子どもを助けた影響も大きかったが、その主な原因はこの若者の心根にあった。
この若者は、無駄に善人なのだ。
その功名心を考えれば、もっと悪どい手段に出た方が効率的だというのに、この若者は、そうした手段を一切採ることが無かったのだ。
「決闘」の準備中、彼は、ただひたすらに、愚直なまでに、己の目標に向かって懸命なだけであった。
率直に言えば、ただの馬鹿であった。
そう、何よりも問題だったのが、当の「シン=グロークス」達でさえ、この馬鹿を好きになりつつあったということだ。

「シン=グロークス」の一人、法典派の「シン」は、いかなる時も法典にのみ従うはずの同胞が「馬の骨」の応援団らしきものを形成しているのを横目で眺め、妥協的な溜め息をついた。
この「決闘」は「シン=グロークス」にとっては、面倒な事態であるとしか言い様が無かった。

127言理の妖精語りて曰く、:2016/12/31(土) 16:43:14
法典派には二種の王の概念がある。
血による「血王」と法による「法王」である。

128言理の妖精語りて曰く、:2017/01/01(日) 07:51:06
そして「二万五千手返し」の事件は、ちょうど「血王」と「法王」の両者が、歴史的な和解を遂げた時代に起きた。
そうなると、当然、各宗派の武力の象徴であるシン=グロークスも「法典派」の代表としての一人だけにならねばならなかった。
そう、唯一の代表を決める「血王派」と「法王派」の二人のシン=グロークスの戦いが、両派の最後の争いになるはずだったのだ。
…………あの閃樹という少年さえ居なければ。

旧「法王派」であり、今は「法典派」のシン=グロークスとなった男は、閃樹の応援団の中に、旧「血王派」のシン=グロークスだった己の妻の姿を見かけ、更に深いため息をついた。
彼女は、この「決闘」が準備された時の騒ぎで、死んだ弟の代理にならんとする義務感から解放され、幼馴染みだった自分に告白してきたのだ。

129言理の妖精語りて曰く、:2017/01/16(月) 19:16:45
【ルザナイ教聖典派】と一口に言っても、その内実は様々である。
聖典を枕にして神託を得ようとしたり、聖典を料理混ぜ込んで福音と一体化しようとするなど、霊感派の方に分類される者たちの事は、まあ、ここでは、ひとまず置いておこう。

やはり【聖典派】と言えば、聖典の解釈や、読み方を重視する教派を分類するべきではないだろうか?

例えば、ある地方では【双賢平理】といって、信者の中から二人の賢者を選び、その二つの全く異なる解釈を、どちらも良しとして受け入れる者たちが居る。
また、別の地方では【回読聖拝】と言って、一冊の巨大な聖典に、各々の信者がひたすら自分の解釈を書き込みながら、聖堂で回し読みを続けるのだ。

このような者たちこそ【聖典派】の名に相応しいと言うべきではないだろうか?

130言理の妖精語りて曰く、:2017/03/04(土) 02:51:18
ルザナイ教最大の異端王エブグルブ・バフォウを討ち取ったのは、「鷹匠殺しのシン=グロークス」と伝わる。

七人の異端の「鷹」七狡人を統べる者としてのエブグルブ・バフォウは、「鷹匠」と呼ばれた。
彼の名前が鷹匠天使エブグルブからとられていることにちなんでのものであった。
首領の高弟を「鷹」と呼ぶネーミングは、彼が「鷹匠」であることから着想されたのだろう。

「鷹匠殺しのシン=グロークス」は「真の鷹匠」たる大天使エブグルブから加護と奥義を授かったことで、「贋の鷹匠」たる異端王エブグルブを殺す事が出来たのだとされる。
一説によれば、その力は授けた天使エブグルブをも殺しう得るものであったとか。
首領討伐という偉業をなしがらも「鷹匠殺し」は多くを語ることなくそのまま姿を消した。
異端王を葬った技は後世に残されることはなく、彼を欠いた残党狩りは辛酸を極めた。

131言理の妖精語りて曰く、:2017/03/13(月) 13:17:42
ミハエル・イエスマンが予告したXデー。

全世界英雄協会から離脱した英雄たちは、『黄金倫理圏』を皮切りに現れた五つの過激派集団に合流した。
それらはルザナイ教の五つの宗派「長子派」「唯信派」「法典派」「正塔派」「歩守派」の過激派であり、
七先駆派と闘争を繰り広げた時代のシン=グロークスたちや他の名だたる猛者たちを中心としていた。
しかし、こんどの彼等は手を取り合うことはなかった。むしろ互いを敵と宣言した。

かつて彼らは他宗派の「誤った解釈」に触れないようにして団結し、異端と闘争した。
結果、七先駆派を表の世界からは一掃したが、それ以後
互いへの批判も布教も以前より更に減り、自宗派内で完結してしまった。
少なくとも離反者たちにはそう見えた。

あげくの果てに七先駆派は壊滅しておらず、地下で生き延び、表の世界を生きる主流宗派の有力者の少なくない人数が
彼らの禁忌の改竄法術の利益を得、自宗派内では許されない戒律違反を彼らと共に行った。

そして近代、七先駆派は表の世界に返り咲き、その思想とやたら共通項のある「万民友和」なる価値観が
国際的なスタンダードとしてチャカ大陸を含む世界中に広められていった。

132言理の妖精語りて曰く、:2017/03/14(火) 17:19:46
彼らはその原因をかつて自分たちがした「妥協」に求めた。

ヅアート英雄協会に召喚された時代はそうでもなかったが、なかなか異教的な方法での召喚であったが、
同じ信仰を持つ人々を悪魔や怪物の魔の手から守れるなら、と召喚を受け入れて活躍した者もいた。

全世界英雄協会に召喚された時代、既に各国の民は『万民友和』を当たり前の価値観としてうけいれていた。

それは聖職者たちも例外ではなく、彼等は人工妊娠中絶を可能とする法に対抗せず、
寺院や聖域で自ら同性結婚式を執り行ったりしていた。
しかしそれをやめさせることはできない。英雄を召喚する協会は、被召芯という召喚において核となる装置を緊急停止させることで、
彼らをこの世、地上から万傑殿や「あちら側」へと強制的に送り返すことができたからだ。
たとえ万傑殿であろうと、休眠処理をされれば、外を出歩けなくなる。
新しい時代の信徒と会えなくなること、ただそれだけでも苦しいものがあった。

133言理の妖精語りて曰く、:2017/03/15(水) 15:17:10
新史歴2290年に起こった大規模な堤防決壊事故に対し、協会はトスカアン・ヴァルギャイリを派遣した。
「雨粒刺しのシン=グロークス」の武号を得た彼の術のひとつが凍結の法術であり、
応急処置として氷で固めた土砂をおき、そこに他の英雄が他の材質の壁も建てる。
豪雨が止んだあとには復旧のための技術者がやってくる。この流れで堤防が修復されるという任務だった。

最初の応急処置をやり終わり、他の英雄にバトンタッチした後、トスカアンは周囲の警備に移った。
その土地は魔獣や猛獣が多い。英雄なら自衛できても、全世界英雄協会や支部の職員、
現地の医療スタッフや土木技術者たちにはなすすべもない。

しかし雨粒を凍らせ、しかも刺しはしても砕けはしない、そんな突剣の技を持つトスカアンが心臓を一突きすれば
どんな巨大な獣も倒れ伏す。そうやってこの派遣期間中で十五体目の巨獣を倒したとき、

134言理の妖精語りて曰く、:2017/03/18(土) 08:15:16
彼らが現れた。

「正塔なる烈士トスカアン・ヴァルギャイリよ!同信の徒として貴方に問いたいことがある!」

鬱蒼とした密林の中でその声はよく響いた。

「貴君はこの世界の在り様が正しいと思われるか?聖なる法は蔑ろにされ、
異教も異端も正統信仰と同列にさせられるこの世が正しいと思われるか?
結婚と邪淫が同列にさせられるこの世が正しいと思われるか?
罰せられるべき者、死すべき者が処せられず野放しにされるこの世が正しいと思われるか?
それを諫めようとすれば英雄ですら、体内の装置で沈黙させられ、地上から追放されるこの世が正しいと思われるか?」

135言理の妖精語りて曰く、:2017/03/18(土) 16:08:13
何か答えようとしたトスカアンを別の声が制した。

「すぐに答えてください、とは言いませぬ。答えられるにしても、
もう少し胸の中で温めて頂きたい。我々はきっかけになればと思ってここに来たまで……」

不思議な事に英雄であるトスカアンですら、彼らの気配をたどることができない。
同じ英雄やそれなりの術者なら可能かもしれないが、彼らが口にするような主張をする者たちに
全世界英雄協会が英雄を派遣することはなく、英雄の感覚を誤魔化せる術者を擁するような
大きな主流派宗教団体は、各国の政府とひとまずの協力関係にある。

136言理の妖精語りて曰く、:2017/03/20(月) 05:31:29
「我々が悪魔、悪鬼でないことは、この通りですじゃ」

老人の声とともに、三人の男が茂みから出てきた。確かに人間である。
トスカアンの持つ判別機にも、人間種族の一つ、異教神話における人祖の名を冠した名称「ノローアー」が表示される。

しかしわかるのはここまでである。男たちの人種が「黒檀の民」であることはわかるが、
民族まではわからない。服装はこの土地のスタイルが取り入れられているが、旅行者か移民かもわからない。

トスカアンは犯罪捜査のためにここに来たわけではない。
現地統治機関による許可において、上位の捜査担当者に特例で支給される器具なら国民番号、市民番号も筒抜けであるが。

137言理の妖精語りて曰く、:2017/04/08(土) 18:29:08
法術の行使において唱えられ、記される祈祷文には、宗派への信仰が含まれる。
要約すると、唯一神のつたえた真のルザナイ教とは、うちの宗派ただ一つだ、という内容である。

そのため、法術を持たない唯信派の信徒は戒律上、他宗派の法術も使用できない。

138言理の妖精語りて曰く、:2017/04/22(土) 14:17:26
•シン=ユロフイデル

「統率のとれた運営のシン」の意。武天使シンの集団の指導者としての異名。
彼の天使の技を継ぐ各武僧集団のリーダーがこう呼ばれる。

「シン=グロークス」が武僧集団の最強とするなら、「シン=ユロフイデル」は最高の僧、と言える。
あくまで集団の運営上のリーダーであるため、「シン=ユロフイデル」が戦闘ではそこまで強くない、という事もあり得る。
しかし、統率に長け、武僧集団をより発展、活躍させるのなら、
その功績と栄誉はシン=グロークスに決して劣らない、と見做されている。

「シン=グロークス」の場合、極めた技や武器の名称、魔物等の討伐の功績が形容としてつくことが多いが、
シン=ユロフイデルの場合は、率いる武装集団の名称がそのまま前につくことがほとんど。

139言理の妖精語りて曰く、:2017/04/25(火) 20:25:07
シン=ユロフィデルは、砂漠や魔の森、奇跡の谷などの過酷な環境において、名声を博している。
それは、彼等が高度な生存技術を保有するだけではなく、その技術を惜しげもなく教授するからである。
彼等の名声は、ときにシン=グロークスをも上回る。

140言理の妖精語りて曰く、:2017/04/26(水) 18:46:05
「二万五千手返し」の時も、シン=グロークス側は、何も手をこまねいていたわけではなかった。
彼らも、彼らなりに無謀な決闘を防ごうと、様々な手段を講じたのだ。

その一例としては「雷」と「風」のシン=グロークスの兄妹による威嚇が挙げられる。
彼らは、決闘の約束を取り付けようとしていたセンジュを、得意の法術舞踏によって追い払おうと考えたのだ。

兄である「雷」のシン=グロークスは、一度狙いを定めた相手になら、どこからでも雷を降らせることが出来た。
しかも、その雷は、さらに複数の法術を重ねることによって、相手を傷つけないように威力を調整することも出来たのだ。
この術により、彼は「雷縛のシン」とも呼ばれていた。
聖なる像を盗んだ二十三人の盗賊を、法術によって、丸一晩に渡り縛り続けた「シン」というのは、他ならぬ彼のことである。
彼と戦うまでは無双を誇り、非情と謳っていた盗賊たちは、防ぐことも避けることも出来ない閃光への恐怖から、翌朝には、まるで幼子のように泣き叫んでいたという。

対して、妹の「風」のシン=グロークスは、名高い舞踏家であり同時に、義賊でもあった。
もっとも、彼女は通常の意味での盗賊でも、犯罪者でもない。
彼女が所属している宗派は、ルザナイ教において最も「喜捨」貧民への寄付の義務を尊ぶ宗派である。
そして「シン」である彼女は、当然ながらそこでの「武」の代表者であり、それゆえに、時にいざこざを招きかねない「喜捨」を催促する役目を率先して担っている、というただそれだけのことなのだ。
もちろん、専守防衛の教えを重んずる彼女は、その「武」によって、無理やり「喜捨」を迫ったり、財産を奪うようなことはしない。

しないのだが、そうなると今度は「義賊」としての彼女の出番が来る、とそういうわけだ。
法術を併用した彼女の舞踏は、風の天使を招き、偉大なるマハ=ディヤルニへ至る「天使の道」を拓く。
「天使の道」俗に言うところの「竜巻」である。
彼女は、その竜巻で人や物を傷つけることは無い。
彼女はただ、願い、祈るだけである。
どうか、我らの同胞が、正しき道を歩みますように。
悪しき行いを正しますように。
マハ=ディヤルニの偉大なる意志が、世の歪みを正し、貧しきものを癒しますように、と。
彼女は、真摯に祈り、真摯に踊る。
それは、方術となり、偉大なる神の御力を、その仲介者たる風の天使を世に招く。

そして、風の天使は、神の意志、すなわち「喜捨」を行わせるべく、不心得な者の元へと向かうのだ。
もちろん、不心得な者は、不心得であるからして、素直に風の天使に面会しようとしない場合も多い。
しかし、問題は無い。
そうした時にこそ、前述の「天使の道」が役立つのだ。
不心得な者が、たとえ鉄の城に引きこもったところで「天使の道」は、その城を砕き、その蔵から「喜捨」を行わせるであろう。
・・・・・・・・その結果として、不心得な者の家財一式が吹き飛んでしまうこともあるかもしれないが、まあ、大したことではない。
所詮は、歪んだ心で集めた穢れた私財。
貧しき者は「喜捨」によって、助けを得れば良い。
それだけのことである。


そう、無謀な決闘を挑むセンジュを止めんと立ちあがったのは、このような兄妹であったのだ。

141言理の妖精語りて曰く、:2017/04/27(木) 20:24:11
とはいえ、「風」と「雷」のシン=グロークスの兄妹も、別にセンジュを手酷く痛めつけようというつもりは無かった。
ただちょっと、あの無謀な若者を驚かせて、このルザナイの里から立ち去ってもらう。
二人は、それだけで済ませるはずであったし、そうなるはずであった。

ところが、そうはならなかったのだ。

142言理の妖精語りて曰く、:2017/04/28(金) 20:43:02
彼ら兄妹は、決して実力が不足していたわけでも、相手を見くびっていたわけでもなかった。
ただ、彼らは、少しだけ運が悪かった。
そして、何よりも、彼らは、センジュという男のことを知らなかったのだ。
そう、彼が、どれだけ突拍子もないことをやらかすのか、そして、彼のルザナイ教についての知識の不足が、どれだけの面倒事を巻き起こすのか。
武力で罰し、対処するべき『悪』との戦いが専門であった彼らには、まるで予測が出来ていなかったのだ。

143言理の妖精語りて曰く、:2017/05/04(木) 18:38:32
遠方から【ルザナイの里】に帰還して、すぐさまセンジュの排除にかかった二人の準備に、落ち度は無かった。

兄の雷は、センジュがどこへ逃げようとも、彼を確実に縛り上げるはずであったし、妹の風も同様に、目標を逃すことなど考えられなかった。
その認識は、彼ら兄妹にとってというより、法術に関わる者、いや、すべてのルザナイの民にとっての常識に近いものであった。

そして、事実、そうなるはずであった。
地上の人間は、いかなる者であろうと、その運命からは逃れられなかったであろう――――地上に留まってさえいたならば

144言理の妖精語りて曰く、:2017/05/11(木) 20:06:48
もちろん、センジュはただの武芸者である。
そして、無色人族(ノローアー)である彼には、飛行や浮遊を可能にする魔術や法術の心得は無く、翼や体内ガスジェットといった能力も無かった。
ましてや、単なる武芸者が、高価で不安定な飛行装備や、伝説の魔道具を持っているはずも無い。

だが、それでも、彼は確かに空を飛んだのだ。
それは、決して偉業では無かったが、ある特殊な事情から、後々までルザナイの里に語り継がれるようになった出来事であった。

そう、それは単なる偶然だったのだ。
そして、それは『不幸な』偶然でもあった。

その事件は、武芸者センジュが、無謀な決闘のため二十四人の【シン・グロークス】を説得しようとしたことが原因であった――――

145言理の妖精語りて曰く、:2017/07/22(土) 00:28:32
架空の物語に登場する架空の武僧集団に所属する架空のシン=グロークスを開祖とする武術が存在する。

使い手達のその佇まい、青き燕の如し。

146言理の妖精語りて曰く、:2017/07/31(月) 18:44:45
センジュの試みは、彼の視点からすれば、万全の準備が出来ていたはずだった。
二十四人の武の達人【シン・グロークス】
その中でも、なかなか会うことが出来ないうちの一人を、彼は、襲撃するつもりであった。

センジュは、村外れの沼へ走った。
そこに、彼の目当ての相手が居るはずだったからだ。
彼が、襲いかかり、挑発するつもりだった相手は、
その名は【沼のシン・グロークス】
「水」と「土」二種の術を使いこなし、音に聞こえる投げ技の達人。


その頃、ルザナイの里には「雷」と「風」の【シン・グロークス】たちの帰郷が近いという噂も届いていたが、センジュは、まずまっ先に「沼」を優先すると決めていた。
思い付きだけで、挑みかかった若武者には、短気だという「彼」を挑発し、決闘に誘い込むなど、容易いことに思えたのだ。
そうして、それが、若者の命運を決することになる。

こうして、センジュは走っていった。
己が先に、待ち受けている運命も知らずに。

147言理の妖精語りて曰く、:2017/08/28(月) 17:56:32
チャカ大陸では、既にカンディスシャニティアという独自の宗教が繁栄を謳歌していた。
そこで、布教に訪れたルザナイ教第一陣は、一時的な協力体制を結成した。
これが、【ルザナイ十天官会議】と呼ばれる布教組織の始まりである。

148言理の妖精語りて曰く、:2017/08/28(月) 19:37:03
彼等は南極から来た。

十の流星が彼等を北方の大地へと導いた。

149言理の妖精語りて曰く、:2017/08/30(水) 07:07:27
天体とは天霊の体であり、流星は天使の舟と呼ばれている。

流星が落ちた場所は天使の着地点である。

150言理の妖精語りて曰く、:2017/09/03(日) 20:35:57
また別の説によれば、流星とは、ルザナイの殉教者が天界にて生まれ変わった姿であるともされている。

151言理の妖精語りて曰く、:2017/09/05(火) 15:00:02
殉教者は流星となって地上に遣わされる。彼らは地霊(オロフルード)になって地上の信徒を助けるとも、
再び母の胎に宿り、ふたたび人として生まれるとも言われる。

152言理の妖精語りて曰く、:2017/09/05(火) 18:40:44
地霊(オロフルード)は、地よりルザナイの徒を助ける。
その霊験は、多くは豊作という形で現れるが、時には歩行を助けもするという。
山道を歩くとき、足取りがふと軽くなるのは、地霊のおかげであるというのだ。

153言理の妖精語りて曰く、:2017/09/08(金) 06:14:19
ルザナイ教には、天使が乗るという「天の舟」を模して儀式用の舟を作る専門の舟職人がいる

154言理の妖精語りて曰く、:2017/09/09(土) 15:44:08
この舟は修行者だけが住む島、聖地なる島に渡るものとしても使われる。

そして、水葬が認められる宗派においては、遺体を乗せて海に流す棺としても。

155言理の妖精語りて曰く、:2017/09/11(月) 23:56:32
人々を誘惑し、ときに天使すら堕落させる悪魔は鳥喰鰐に譬えられる。

鳥喰鰐は水上に鳥が飛んでいるのを確認すると皆底から矢の如く推進し、
水面から飛び出すと鳥を銛のような舌で突き刺し、そのまま水中に引きずり込んで食べてしまう。
この能力は水中の獲物を狙うさいにもいかんなく発揮される。

人の魂を魚に、天使を鳥になぞらえて呼ぶ観点においては、まさに悪魔の象徴としてふさわしい生き物と言える。

156言理の妖精語りて曰く、:2017/09/15(金) 16:59:28
鳥喰鰐が狙うのは自分より小さい魚や鳥であるが、こいつが生息する海の海岸地域では棺舟に鳥喰鰐除けの法術がかけられる。
鳥喰鰐は死んだ生き物なら自分よりも大きいものも食べ、しかも嗅覚が良い。
そのため舟に浮かべて流すと舟の腹をしつこくコツコツと口で突くのである。
「魂を奪われない、地獄に連れられない」という象徴的な意味もあるが、生理的にマジで受け付けないという点も大きいと思われる。

157言理の妖精語りて曰く、:2017/09/16(土) 22:08:54
一方、【ルザナイ教海拝派】ては、鰐の類を冥界の使いとして崇めるという。
彼らが、鳥葬ならぬ【鰐葬】を行う所以である。

158言理の妖精語りて曰く、:2017/09/19(火) 19:38:49
ルザナイ教登段派は、特徴的な段を制作することで有名である。
水色、紫、薄桃色。
様々な色の布が被せられたその段は、祭壇であるとともに彼ら特有の工芸品でもある。

159言理の妖精語りて曰く、:2017/09/21(木) 18:56:54
武天使シンの説いた「武」の体系は「シン・アナイ(シンの教え)」と呼ばれ、縮めて「シナナイ」とも発音される。

シナナイは階段を意味する言葉との同音異義語であり、登段派においてはまさにダブルミーニングであると認識する。
「武」の階段の最上段は「無色の段」「不可視の段」と呼ばれ、「不死」へと通じているという。

160言理の妖精語りて曰く、:2017/09/28(木) 04:39:03
曰く、

武を窮めた者の前には「お迎え」があるという。

武の道を進む者もまた、武によって命を落し、「不死」すなわち死の無い来世に行くという。

武を修めた者の技は後進に受け継がれ、その意味で武人は受け継がれ続ける事で死なないもの、「武」そのものの一部となるという。

161言理の妖精語りて曰く、:2017/09/30(土) 04:35:30
護符の天使ジャルバテャスルは石や木や紙に、聖典の言葉や象徴を刻み、書き記した。
護符を作り、用いる術は、法術における一大ジャンルであり、法術を使用するほぼ全ての宗派が護符法術を持つ。

護符法術の基礎にして奥義、初歩でありなおかつ終着点にある技巧、それは「視線逸らし」である。

邪悪なる超常的存在の視線「邪視」のみならず、人々や動物の視線もまた、逸らされる対象となる。

猛獣の視線に留まれば食い殺され、悪人の視線に留まればそれより怖ろしい事態もありうる。
それを防ぐ術は、この天使の慈悲でもあった。

162言理の妖精語りて曰く、:2017/10/01(日) 20:09:58
ラゴヴヴァ・カハトゥ

七先駆派を迫害・鎮圧した伝統宗派側が編んだ記録『七狡人討伐記』
『最悪のブマズの徒どもについて』などで「死体泥棒の魔女」と呼ばれる人物。

七狡人の忠実な手下であり、ジャルバテャスルの護符法術を悪用し、
墓場や葬儀場に侵入し、死体を盗み出したという。
それは異端の首領なる「偽りの鷹匠」エブグルブ・バフォウの承認のもと行われた。

「意識逸らし」の護符法術を武術・戦法に組み込んでいたガフ・ダンリウの高弟であり、
戦闘能力も高かった。彼女を討ち取るために多くの犠牲者が出てしまった。

163言理の妖精語りて曰く、:2017/10/04(水) 11:06:19
「七先駆派」を自称する異端者たちとの戦いのなか、老年の聖職者は異端者となった我が子の死体を見出し、嗚咽した。

異端との大規模法術の撃ち合いのさなか、それに紛れ行われた
シン=グロークスの位にある拳法家の闇討ちにより、命を落したのだった。
彼の子は異端者側においても指導的立場にあり、幹部である七狡人の側近であった。

「なぜ惑わされてしまったのか……」父は涙を流し、伝統宗派側の指導層にあるお願いをした。

「息子を自分達の宗派の方式で葬儀させてほしい。息子はきっとエブグルブ・バフォウの妖術に魂を汚染され、正気を奪われてしまったのです」

これは程なくして承認された。

164言理の妖精語りて曰く、:2017/10/20(金) 22:50:15
遺体にかけられた布をとった父は目を背けた。

「ああやはり、そうなっていたか」

遺体には最小限の損傷しかなく、強張ってはいたが、その相貌にも汚れはない。

165言理の妖精語りて曰く、:2017/10/26(木) 20:59:13
問題は我が子の服装であった。彼の子は男、として育ててきた。
しかし遺体が着ていたのは女性の服装であった。

それを見て、父は声にならないうめき声をあげた。彼は
息子が異端宗団に渡る前にも、偶然、女装している姿を見ていた。

息子をなじり、問い詰め、宗教家や学者のもとに連れていこうとし、
我が子は姿を消した。

「あの時もう少しうまくやっていれば、息子はここにいなかったのか?」

166言理の妖精語りて曰く、:2018/01/01(月) 07:56:36
妻と共に息子の服を替え、火葬の場に遺体を運んだ夜、ラゴヴヴァ・カハトゥがやって来た。
赤い斑のある白鳥ほどもある雀の上に立ち、夜天を流星のように速やかに、地上からの警備をすり抜けて。

「男として葬るな。彼女は女だから」大音声でこう呼ばわり、雀の大群を巨人の腕のようにまとめ、横に凪ぐと
参列者は恐れに駆られ、椅子から転げ落ちた。

大きな腕が伸びてくる。しかし父は息子の遺体を守るため、火の中に身を乗り出して、そして覆い被さり
雀の嘴で突かれても物ともしない。父は彼女のことを知っていた。
異端者を異端の儀式に服させるべく、そのためにあらゆる手を尽くす魔女。
最悪の異端者どもを率いる「偽りの鷹匠」エブグルブ・バフォウ、
その腹心なる七狡人が一、「男と結婚した男」ガフ・ダンリウのおそるべき高弟、それがラゴヴヴァ・カハトゥである。

167言理の妖精語りて曰く、:2018/01/14(日) 05:24:02
老父はすぐさま鳶天使バダルカ=ディエンの助力を請う聖語をとなえ、
虚空から響いた猛禽の叫び声は雀の群れを霧散させた。

168言理の妖精語りて曰く、:2018/01/15(月) 06:48:41
それに対しラゴヴヴァ・カハトゥは風笛仕込みの錘をつけた紐を高速で回転させる。

もとは登段派に伝わる道具であり、この道具にはもう一つの顔があった。

169言理の妖精語りて曰く、:2018/01/24(水) 10:47:25
鎖鎌の、もう一方!

170言理の妖精語りて曰く、:2018/01/27(土) 15:42:29
猛禽の速さは、強弓から放たれた矢のようであったが、ラゴヴヴァの放った錘も負けてはいなかった。
それは、鎌首を持ち上げた毒蛇のように宙を飛び、天より来たりし猛禽に襲いかかったのだ。

171言理の妖精語りて曰く、:2018/04/07(土) 14:55:00
「ルザナイ教」の表記および発音は「ルズ・アナイ・ィ・アナイ」が縮んだものであり、チャカ大陸北方で用いられる。
本大陸と地理的に近かったため、マハ=ディヤルニ信仰全体を指す語として認識されるようになった。

これがチャカ大陸中部に来ると、発音は「ラーズ・ア・ナイン・イー・ナイン」となる。
基本的な世界観と主要な天使の面子はかなり共通しているが、正典リストや法術の体系に大きな違いが見られる。
この違いは他の地域でも同様に存在する。

「ルザナイ教をどう数えるかによって『チャカ大陸三大宗教』が『チャカ大陸四大宗教』や『チャカ大陸五大宗教』になる」と言われる所以である。

172言理の妖精語りて曰く、:2019/05/30(木) 09:33:12
ルザナイ教法典派は「匠人への祝福論争」を経て、新しい技術を積極的に認めていく方針へと転換した

この改革は、伝統の教団勢力と新興の科学勢力、その両方にメリットがあった
教団勢力は、改革によって、新しい技術によって変化する世の中から置き去りにされることを防げたし
なにより、急速に勢いを増してきている科学者・技術者たちやそのパトロンたちを教団に取り込むことが出来た

そして、科学者たち新興の科学勢力は、死体を解剖したり蒸気自動車を暴走させるなど、科学の発展に不可欠な怪しげな行為を教団によって庇護してもらうことが出来たのである
これはいわば、双方にとって幸福な婚姻であったといえよう

それにそもそも、ルザナイ教の中でも法典派は、無数の論文や資料を用いての論争を得意とすることで有名であった
Xという問題は、法典のYという部分を論拠として正当化することが出来、その解釈は論文Aに基づく
そしてその論文Aの解釈は、より昔に書かれた権威ある論文Bによって正当化され、その論文Bはさらに古代の聖人Cの書物の引用によって正当化される・・・といった形で、法典派は、延々と引用を繰り返した論争によってある行為が宗教的に正しいかどうかを立証するのである

そうした論争による正当化は、厳密な立証を不可欠とする科学技術ときわめて相性が良かったのである
二つの勢力が結びついたのは、当然の結果であると言えよう

173言理の妖精語りて曰く、:2019/05/31(金) 23:36:03
「法典派の神はテクストである」と巷では称されているが、その通説は実態とは大きく異なる
 神はテクストそのものではない
 神は人間と隔絶した偉大なる存在
 テクストはあくまでモノに過ぎない
 そのため、法典派にとって、法典を燃やす行為は侮辱とはならない
 砂地に水を捨てるような愚かな行為とみなされるだけである
 むしろ、法典派をはじめとするルザナイ教における聖者の逸話には、法典で船の穴塞いだり、法典を燃やして貧しきものを暖をとる話などが多いくらいだ
 法典派においては、人や法よりも法典を重んじるように振る舞うのは偽りの信者であり、そんな者は、嘲笑の対象となるのみなのである

174言理の妖精語りて曰く、:2021/11/26(金) 22:34:15
というわけで、我々は自分達が、歴史上の”原典”その人かをあんまり気にしていないのですよ。

事実上魔術や妖術の産物であろうと構わぬという者すらおります。

ただ神と人々のために”用”を果たすのみです。

175言理の妖精語りて曰く、:2022/07/14(木) 22:22:26
聖典学者ヒッリ・ウィドゥン。
ひとはかれを、旅する校訂者と呼ぶ。


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