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【デルタフォース】クラスの三バカの日常Part5

583:2011/09/29(木) 00:10:38 ID:irnSnP6o
数十分後、イギリスの日本人街

「ほう、ならばあなたの(義理の)妹の飾利さんも……」
「ええ!間違いありません!あの娘に渡した術式が役に立つとは!ああ!例え離れていても、私は飾利の役に…!」

 感極まって恍惚とした表情を浮かべる神裂を、綺麗な年増の女性が苦笑しながら優しく見守っていたが、やがて落ち着きを取り戻した神裂は、非常に真剣な面持ちでその女性に尋ねた。

「ところで神楽氏、これは魔術ですか?」

 その言葉に、神楽と呼ばれた女性は顔をしかめた。

「正直に言えば…科学…それも不慮であってほしいというのが私の見解ですね。」
「何故?」

 神楽と呼ばれた女性はそこではーっと息を突き、遠い所を見る目で言った。

「時間とは…現在の魔術でも触れることが許されない禁断(タブー)。神の領域……
 せいぜいできることといったら『予言』や『幻視』…それも、果たして当たるかどうか分からないような、その程度のもの。
 恐らく魔術、科学関わりなく、人が迂闊に手を出してはいけない宇宙の絶対的真理……時間の専門家である私ですら、できることといったらこの程度。」

 そう言って彼女は懐から取りだしたラットに手をかざすと、やがてそのラットが
みるみる小さく、幼くなり、やがて元の大きさの何分の一かという赤ん坊になったかと思うと、今度はみるみる大きく、やがて元の大きさを超え、動きが鈍くなった。
 ラットが完全に老化したと思ったらすぐ若返り、当所の若さを取り戻した。

「ごめんねボナフェテイーナ。見せしめのためとはいえ毎度毎度こんなことに使ってしまって。」

 文字通り実験動物(モルモット)にされたにも関わらず、ラットがよく懐いた様子で女性の懐に戻ると、女性は話を続けた。

「このように、物の時間を操ることと、あとは、時間を止めることくらい。今のように。」

 今。
 建宮が、五和が、浦上が、対馬が、諫早が、牛深が、香焼が、いつも通りの「日常」を送ったまま止まっている状態。
 「動き」を、「時間」を持つのが、ちゃぶ台で談笑している2人の女性のみという状態。
 神裂は、謙遜気味に言うこの女性の、現在の科学、魔術を以ってしても不可能とされている「時間」を操る力に底知れないものを感じつつも、
恐らくそのおかげでタイムスリップを逃れたのだろうといっていたこの時間のエキスパートの女性により、それまでの混乱状態とは段違いの心強さを感じた。
 神楽というらしき女性が立ち上がった。

「丁度いいじゃないですか。私と、貴方と、さっきまで私と話していた初春さんが大丈夫となれば、学園都市に行くことには何ら異議はありませんね。」
「ええ!予定が正しければ、この後数カ月もすれば学園都市に行く手はずになってありますし!」
「私は『本業』がありますのでこれで。『原因』を突きとめられることを心よりお祈りしてますよ。分かりましたら私にもお知らせください。」
「は、はい!本当に有難うございます!神楽玲於奈様!」

 ぺこぺこと頭を下げ続ける神裂を見て、女性、神楽は困ったように言った。

「あの、できれば私のことは誰にも、そう、飾利さんにも秘密でお願いできます?
 もしかしたら来年、貴方達と戦わなければなりませんから。ブレインの幹部、『ジャックポット』の一員として。」
「ええ!それはもう!」
「ふふ、信用していますよ。
 そうそう。私がここを出て帰る間、そう、10時間後位にはここの時間は動きますから。」

 そう言って帰りかけた女性は、ふと振り返って最後に言った。
 そして何気なくかけられたその言葉により、神裂は一気に絶望の底にたたき落とされる。

「ま。言っては何ですが、恐らくバック・トゥ・ザ・フューチャー(未来への機関)は無理でしょうね。過去にすらこのような『ズレ』が出始めているようでは。
 『原因』には興味はありますが……この『過去』の世界で生き続けることを早く受け入れた方がよろしいですよ。」


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