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皇軍(明治〜WW2)がファンタジー世界に召喚されますたvol.26

237303 ◆CFYEo93rhU:2019/11/09(土) 12:06:34 ID:IEHUhI4I0
そしてリンド女王はそういう諸々に気づいている。
だから皇国式の制度や製品を積極的に導入し、ユラ神国と皇国との戦争で低下した
列強国の首席としての威信を、以前よりも隔絶した国力を以て取り戻すつもりなのだろう。
このまま皇国との関係が順調に進めば、リンド女王は“列強リンド王国の中興の祖”になる。
だが、こちらのセソー大公がそれを分かってリンド女王を引き摺り下ろそうとしたとは思えない。
単に血筋的により正統な(と勝手に思っている)自分が選ばれなかった腹いせ以上のものが見えない。
マルロー国王が手を引いてもセソー大公が手を引かないのは、そういう事なのだろう。

ロマディアという前線に赴いて、現場の空気を感じて、フェリスはそれを一層強く感じる。

兵士は勿論なのだが、主に大隊長以下の中級、下級将校の士気の低下が著しい。
相手が皇国の事となると、荒唐無稽な話も噂話なのか事実なのか判断が付きかねる。
それで本来兵士たちを宥めたり叱咤して秩序を維持する側の将校たちすら疑心暗鬼になっているのだ。
流言を取り締まる側である憲兵すらも及び腰になっている。
「近々、ロマディアが大規模な空襲を受けて瓦礫の山になる」
という噂話に対して、そんな事ある筈なかろうと否定出来ない。
現に、リンド王国のベルグに対しては“やろうと思えば可能だった”けれど、皇国の自主的な配慮で“やらなかっただけ”なのだという話だ。
実際、空襲によってリンド王国軍の陸上部隊と洋上艦隊は壊滅したし、石造りの頑丈な建造物の代表格である飛竜基地や
対艦要塞すら徹底的に破壊している事から、都市を爆弾で破壊するのは不可能というこの世界の従来の常識は通用しない。
ロマディアより巨大なベルグすら焼き尽くせるなら、ロマディアなら簡単に焼き尽くせるだろう。
防火上の理由から石材や煉瓦造りを徹底している軍施設と違って、
むしろ大都市である程に木造建築も多いから良く燃えるだろう。

なまじ皇国軍の鉄竜を討ち取った! という朗報を耳にしたから、一瞬でも希望を
感じてしまったから、反動でその後の連敗に絶望を感じている気がしないでもない。

北方諸国同盟に派遣されていた第三国の観戦武官達がそそくさと帰還し始めている。
死んでしまっては観戦結果を報告出来ないし、事実上解散した実体のない同盟とやらと運命を共にするのは馬鹿らしいだろう。

軍人ですらこうなのだ。
問題は何よりロマディア市民である。
ロマディアに度々飛んでくる皇国軍の飛竜――飛行機というらしい――の羽音に怯え切っており、毎日百数十人という単位で逃げ出して行くのだ。
都市に残るのは逃げ出す資金さえ用意できないような出稼ぎ労働者、身寄りのない老人や子供など。
元々この都市は“王位以外は何でもある”と言われるくらい、大陸北方で豊かな都市だった。
市場は活気に溢れ周辺の村落も潤っていた。
それが今では食糧すら満足に入って来ない。

つまりセソー大公の言葉は市民たちに全く届いていないという事だ。
当然だろう。皇国軍が首都上空を遊弋するのを全く防げていないのだから。
大公宮が市民に留まれと命令しても焼け石に水。

この辺りの反応の違いは列強といっても大国と中小国の差だろう。
よもや王都に攻め込まれる事態など夢にも思っていなかったリンド王国の王都民は、逃げ出す事は無かった。
皇国軍の本格攻撃が始まってさえ、逃げ出す者は多くなかったと聞く。
後の言葉で言えば“正常性バイアス”と言うのだろうが……。
それが逆に、皇国軍が無秩序に逃げ惑う民衆を誤射せずに済み、戦後の関係修復にも大いに役立ったらしいから、どう転ぶか分からないものだ。


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