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アメリカ軍がファンタジー世界に召喚されますたNo.15

1名無し三等陸士@F世界:2016/10/03(月) 01:41:59 ID:9R7ffzTs0
アメリカ軍のスレッドです。議論・SS投下・雑談 ご自由に。

アメリカンジャスティスVS剣と魔法

・sage推奨。 …必要ないけど。
・書きこむ前にリロードを。
・SS作者は投下前と投下後に開始・終了宣言を。
・SS投下中の発言は控えめ。
・支援は15レスに1回くらい。
・嵐は徹底放置。
・以上を守らないものは…テロリスト認定されます。 嘘です。

144 ◆3KN/U8aBAs:2016/12/14(水) 19:32:12 ID:zU2dDR3c0
ホスト規制テスト

145 ◆3KN/U8aBAs:2016/12/14(水) 19:33:27 ID:zU2dDR3c0
ご無沙汰してます。嵐のとばっちりでホスト規制がかかってました。
ホスト規制等の事情がない限り、NATO軍の物語を土曜日あたりに投下できるかと。

146名無し三等陸士@F世界:2016/12/15(木) 02:11:35 ID:lEy5xQPg0
NATOの人ktkr

147名無し三等陸士@F世界:2016/12/15(木) 09:22:30 ID:mY4vpw5s0
おまちしていましたー

148名無し三等陸士@F世界:2016/12/15(木) 10:59:02 ID:ZGTTPISs0
おお!楽しみです

149 ◆3KN/U8aBAs:2016/12/18(日) 10:16:47 ID:0xR8NsRQ0
トラブル発生につき来週に延期いたします…

150名無し三等陸士@F世界:2016/12/18(日) 14:12:37 ID:ZAkhsEYY0
ttp://ux.nu/BUXbG

ねばっくだいすき

151外パラサイト:2016/12/23(金) 18:03:26 ID:aAVaobf60
年末イラスト支援

ttp://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=60504968

152名無し三等陸士@F世界:2016/12/23(金) 22:51:11 ID:OSvAK6TE0
>>151

ワロタ
いいぞもっとやれ

153名無し三等陸士@F世界:2016/12/24(土) 07:45:01 ID:zo6RNBpc0
皮膚病にかかった犬の治療やぞ

154名無し三等陸士@F世界:2016/12/26(月) 13:00:43 ID:ZAkhsEYY0
htp://ux.nu/qLYUx

これでむりなら、もうw

155名無し三等陸士@F世界:2017/01/03(火) 11:45:57 ID:fvyoHNpY0
あけましておめでとうございますm(_ _)m
今年も皆さんの作品を楽しみにさせていただきます

156 ◆3KN/U8aBAs:2017/01/08(日) 20:18:13 ID:PoTorK9M0
どうも、ご無沙汰してました。
また規制かかってたよ(呆れ)

あけましておめでとうございます。今年も自由と正義のために蛮族をつるしながら過ごしましょうね
早速投下します。

157 ◆3KN/U8aBAs:2017/01/08(日) 20:22:32 ID:PoTorK9M0
11月1日 テンペルホーフ空港 格納庫
1989年の事件の後、テンペルホーフ空港はアメリカ軍が軍用として完全に接収し、物資・兵員の空輸や臨時の兵舎などとして利用されていた。
この日、空港の格納庫には第3歩兵師団の指揮官が集められていた。

「さて、これまでの訓練と準備の成果を見せる時が来たぞ。すでに把握していると思うが、今回の作戦はブランデンブルク門から異世界に突入、門を確保しベルリンの安全を確保することである。
突入に際し、我々の大隊が先鋒を務めることとなった。それに伴い、我が第2中隊は異世界に最初に突入する。」

テンペルホーフ空港のドイツ第4装甲擲弾兵旅団の臨時指揮所にて、ミハイル大尉が隊長である中隊のブリーフィングが行われていた。
偵察で作成された簡単な地図(軍用としても粗末なものだったが・・・)を基に部隊の展開や陣地の配置について討議を重ねる。
と言っても地図によれば周辺はただの平原のため、教本に忠実な配置となるまでそれほど時間はかからなかった。
こちらの火力を十分に発揮すればほぼ確実に勝利するとわかっていても、小隊長や分隊長の表情は真剣そのものである。

11月9日 テーゲル空港
「大統領の演説だ。政治屋さんもご苦労なことだな。」
「まったくだ。自由だの権利だの言ってるが連中がそんな言葉を理解してるとも限らねえからな。」
拡声器から響き渡る大統領の声を聴きながらイギリス軍の兵士は悪態をついていた。
「ブラック、ルイス、口を慎め。我々も連中と戦うことになるんだぞ。」
「しかし軍曹殿、交渉する気があるなら出会って早々こんにちWarしたり『歩兵師団』を先頭に立てる必要もないでしょうよ。」

アメリカ第3歩兵師団は名前こそ「歩兵師団」であるが、その編成は国によっては機甲師団と言っても差し支えない編成となっている。
5個の歩兵大隊、戦車大隊を主力に、当面は投入されないが砲兵、ヘリコプター旅団を持ち、そのほか防空などの各種大隊を保有する。
このような重装備の編成なのはソ連の戦車軍団の突撃を正面から迎え撃つためであるが、ただし、今回の作戦では主に兵站の都合から戦車大隊を1個削り、
代わりに旧ベルリン防衛部隊を中心とした軽歩兵大隊(IFVやAPCではなくトラックやハンビーで行動する歩兵)が追加されている。
それでも、その強力な火力は異世界でも十分に発揮されるであろうと期待されていた。
しかし、門に最初に突入することになっていたのはアメリカ軍ではなくドイツ装甲擲弾兵旅団である。
これは「ドイツのベルリンを守るための行動」である建前から、まずドイツが事態の収拾を図り、その過程でNATO各国に助力を乞う、という体裁にしておくためである。
もっとも、アメリカ側としては自国軍を先頭に立たせないことで「異世界のリスク」を軽減する目的もあったのだが。

態度の悪いイギリス兵が軍曹にしごかれていたころ、その歩兵師団はすでに準備を整え命令を待っていた。
そして、大統領の演説が終わり、マスコミのカメラがブランデンブルク門を映しているところを確認すると、指揮官はその命令を下したのである。

ミハイル大尉の中隊のマルダーを先頭にドイツ軍の車列は次々と異世界に侵入していく。異世界の草原に入った部隊は事前の計画に従い車両や歩兵を展開させて周囲を警戒する。
幸いなことに、異世界に突入した時点で、敵との接触は起こらなかったが、それでも次の部隊のために道を守らなければならないことに変わりはないのである。

158 ◆3KN/U8aBAs:2017/01/08(日) 20:24:19 ID:PoTorK9M0
NATO軍が本格的な動きを開始して数時間が経過したころ、門の周りにいるNATO軍本隊から離れた場所にある森で動く影があった。

「ジミー、ビンゴだ。長い間監視しておいたかいがあったな。」
「ああ。半年も全く家畜の動きのない遊牧民のテントがあるわけがないだろ。ウィル、報告しろ。」
「センター、こちらクォーターバック、ブラウンズのコインは表、ダイブを継続・・・」

先行して異世界に侵入し、門の北部にある遊牧民のテントを監視していたSEALsの部隊はテントの間を動き回る統一化された衣装や鎧をまとった兵士たちが動き回るさまを確認していた。
そしてこの光景は他の村落や遊牧民の宿営地などで同様に見られていた。

「どうやら連中はこっちが斥候を送ってることには気づいてたようですね。兵士を遊牧民のテントに隠すとは・・・いや我々が異世界人だからこそテントでごまかせると思っていたのか・・・。」
「どちらにしろ、連中の偽装はよろしくない。外見は遊牧民を装っても肝心の家畜がいないんじゃあどのみちばれるだろうさ。」

センターことNATO軍本隊の前線指揮所では部隊の取りまとめや周囲に散らばる特殊部隊からの通信で喧騒に包まれていた。
「現在地周辺の村落などで、敵武装勢力が活動を開始したとの報告あり。偽装された野営地のようです。現在各部隊が監視を継続中です。」
「地図に敵対勢力の村や野営地を書き込め。あと展開した部隊の陣地構築を急がせろ。下手をすると明日にでもやってくるぞ。」

11月13日 0930 シエラ・ポイント指揮所
「こちらシエラ、現在多数の敵兵が接近中、人間の兵士及び多数のモンスターを確認、指示を乞う。」
『こちらホテル・シックス、敵航空戦力は確認できるか?』
「シエラ、こちらは10機以上のドラゴンを確認している。」
『こちらホテル・シックス、了解。交戦を許可する。ただし発砲は防空部隊の攻撃を待ってから行え。現在戦車1個小隊がそちらに向かっている。』
「了解した。交戦を開始する。」

門から見て南側にあるシエラ・ポイントに展開したミハイル中隊は現在の状況を司令部に送っていた。
現状では2個大隊と先行投入された戦車中隊しかなく、戦力も潤沢にあるとはいいがたかったし、肝心の陣地も歩兵用のタコツボがある程度で鉄条網といった障害物もほとんどなく、
また陣地として使えるような地形や地物もほとんどない。陣地とその背後にある門を除けばただひたすらに平原が広がるのみである。
後方から発射されたローランドミサイルが敵のドラゴンに炸裂した。

159 ◆3KN/U8aBAs:2017/01/08(日) 20:27:42 ID:PoTorK9M0
とりあえずここまで。
次回は異世界側の軍隊からNATO軍を見る予定。

この時代のヨーロッパは兵隊の数も装備の質も贅沢極まりないものですね。

160名無し三等陸士@F世界:2017/01/08(日) 21:29:32 ID:hWFIE.hw0
乙でした
>この時代のヨーロッパは兵隊の数も装備の質も贅沢極まりないものですね。

当時の我が国のそれとは比べ物にならないレベルでしたなあ
そして異世界での初の大規模戦闘は戦場が平原なので火力に勝るNATOが有利かな?
ただドラゴンの能力次第ではNATO側もただでは済まないような…

161名無し三等陸士@F世界:2017/01/09(月) 22:17:10 ID:in4VDZn.0
久しぶりに来ました 何年ぶりかな・・・

星がはためくときだったかな?
今どうなりました?

162名無し三等陸士@F世界:2017/01/09(月) 22:53:52 ID:3him67MY0
>>161
2016年は更新多かったため進みました。
シホールアンル帝国の帝都空爆
シホールアンル帝国の制空権と制海権はアメリカが完全に抑えてる状態
シホールアンル帝国は旧日本軍の末期状態でマジやばい。

163ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/01/11(水) 21:45:27 ID:X3jR6OQc0
皆様、新年あけましておめでとうございます。
遅ればせながらレスをお返しいたします。

>>122氏 ありがとうございます!

>>123氏 ありがとうございます!いやー、10年も続いてしまったと言った方が正しいですね……
毎年毎年「目標は完結!」と一念発起するんですが……ここ数年は特に浮気癖が酷くなってるのがアカンですね

>ノイマン博士
彼も加われば鬼に金棒ですな!

>裁判ネタ
死刑待ったなしでしょうなぁ

>>124氏 ありがとうございます。長い間書いてないと、SS作成なんて・・・と思ってしまう事もありましたが
やはり自分はこの作品を書くのが一番好きなので、気が付いたらまた書いている、と言うのが多いですね
今年こそは完結に持っていきたいですが……はてさて(ヲィ

>星がはためくときの地図をHoi2の世界に
おお……それはまた…ありがとうございます。
機会があれば見たいですね。

>終末の○ゼッタとエルフェン○ートを混ぜたような感じの魔法強化兵
彼らは戦場で活躍することが出来るのか
はたまた歴史の影に消えていくのか

アメリカが暗号を解読できなければ、前線での味方部隊の被害がどえらい事になりますね。
解読できるか否かは、彼ら次第です。






デ・モイン級三銃士「その仕事!わしらにや(ry」

おっと、意味不明な電波が入ったのでここまで〜(平気で攪乱情報を流すSS作者の屑

164ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/01/11(水) 21:46:07 ID:X3jR6OQc0
>>125氏 オールフェス自体、フェイレの能力を利用する気満々でしたからね。

>魔導系列はより厳しく制限されそうで……
間違いなく制限されます。いや、場合によっては軍用魔法の使用自体を禁止する事もあり得ますね

>>126氏 ありがとうござます!ちょいと情けない10周年になってしまいましたが、これからもよろしくお願いします。

帝国内部も一枚岩ではないですからなぁ
ですが、強化魔導兵が前線で暴れ、それでシホールアンル軍が態勢を立て直しでもしたらアメリカ側としても不味い事になります。
特に、47年以降は、アメリカの経済的にそれまでのように行けないですから……

>>127氏 首都に対する相次ぐ攻撃は講和派の拡大を確実に助長する物となっていますね。
ですが、未だに抗戦を主張する声が少なくないのも事実。
ホーウィロとウリストは、シホールアンル継戦派の急先鋒と言っても過言ではないでしょう。
なかなか厄介な物です。

>あの科学者たちは今
電子兵器開発等の軍事部門に協力する者もいれば、民間で活動している者もいますね。
オッペンハイマー博士やアインシュタイン博士等は、魔法通信傍受機の開発がきっかけとなって、魔法技術の研究を行っており、
時折、南大陸各国の名門魔導院や魔道学校等を訪れて日々研究に励んでおります。

まぁ……その裏ではこっそりと、ある研究も進められていますけどね(ニヤリ


>>128>>130氏 うーむ、パーシングでも無双状態なので、T29も前線に配備されるか微妙な所です
シホールアンル兵「パーシングで白目状態なのに、更に新しいの送るのはやめろぉ!(絶叫」

>>129氏 131氏 やっぱり制空権奪取は……最高やな!(ヘブン状態
なお、雨が降られるとヤバい模様

とはいえ、常時雨と言う事は無いですから、魔導兵が無双しても、それは結果的に連合軍側の進撃を鈍らせるだけで、押し戻す事は
非常に難しいでしょうな

>>132氏 現状では工作員としてしか使えないですが、完調状態だと大隊規模の部隊でもヤバイので、発覚が遅れれば遅れるほど
不味い事になります。

>>133-135氏 そもそも、突破目標としていた場所すら無いですから、開発すらされてないです。
ロマンに欠けててスンマセンした!

>>136氏 無事GETしました!サラトガはいいですぞ(ヤメイ

>>137氏 言ってやってもいいんですぞ

>>138-139氏 勿論、この後も色々と出てくる予定です。
まだあの兵器やあの兵器の活躍も書いてないですからな……
いやはや、シホールアンル軍の苦しむ姿でめしが上手い!(鬼

>>140氏 シホールアンル南部領や中部付近ではすっかり馴染みとなった光景ですね。
今や帝国臣民にとって、上空に多数の白い雲を引き延ばしながら飛行する戦略爆撃機は恐怖の象徴です。

>>143氏 アメリカ海軍の要請で、初期型コンピューターを用いて解読を試みようという話は出ています。
2月初旬あたりからはコンピューターが使用できますが……それを用いて解読できるかどうかはまだわかりません

>>外伝氏 イラスト支援ありがとうございます!

ハルゼー「という訳の分からん夢見たんだが……あり得んよなぁ?」
ラウス「あー……あのネコ女王ちゃんならガチでやりかねんですから注意っすよ」
ハルゼー「ヒェッ」

>>153氏 あながち間違いとも言い切れんのがw

>>155氏 あけましておめでとうございます。
今年も更新していきますので、ごゆるりとお楽しみください。

>> ◆3KN/U8aBAs氏
投稿お疲れ様です!
尖兵を務める事となった独軍が遂に戦闘開始ですな。
火力の差は歴然としていますから、敵軍は酷い事になりそうです…

>>161氏 おお、数年ぶりに来られたとは
拙作を覚えていただきありがとうございます。
>>162氏の言われる通り、昨年は幾分話を進める事ができました。
自分がいらん浮気さえしなければ、今年中には必ず終われますね。
今後とも、このしがないSSをどうぞよろしくお願いいたします。

165 ◆3KN/U8aBAs:2017/01/14(土) 23:24:27 ID:fWfJXzYU0
>>160 >>164
NATO軍の「火力」をどうにかしないと平野部での戦いは一方的になりますね。
まあこれから色々と試行錯誤を始めるわけですが。

あと80年代の軍用機はレーダーや赤外線装備で夜中や悪天候でも飛べるのでシホールアンルのように吹雪に乗じて決戦、というわけにもいかなかったり。
あとヨークタウン氏、「年内に終わる」と言って出征した兵士たちはどうなりましたかね・・・?

166ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/01/16(月) 18:53:16 ID:X3jR6OQc0
◆3KN/U8aBAs氏

>80年代の兵器
冷戦期に限らず、GATEやルーントルパーズを見ていると、武器の性能が良すぎて本当に羨ましいなと思いますね。
1940年代型軍隊を中心に活躍するSSを書いていると、特にそう思ってしまいます。
ですが、その分、艦隊決戦等にも注力できたのでそこは±0かなと思ってたりも……

>「年末消化」
アカン、その言葉は呪われてますぞ……

167名無しさん:2017/01/20(金) 12:35:59 ID:.95/zsvg0
オロシヤ産のゲーム「You are Empty」とかやってると、生体強化兵なんて滅亡の片道切符だと思える
パワードスーツみたいなのとか装備して強化兵なら兎も角、人格も身体もアレな感じにされたのを見てどう感じるかと
自国の兵士達ですら壊して兵器にしちゃう政府に、何時まで従えるかという事です
そしてそんな兵器を創り出す国に対して、敵対国が殺るべき事は文字通りその国を焼きつくして徹底的に粉砕する事です
追い詰められた軍事国家が倫理観の崩壊しきった兵器を作るのはある意味お約束ですが、同時に滅亡フラグなんですよね……
自ら落とし所を消してしまうわけですので

168名無し三等陸士@F世界:2017/01/21(土) 22:51:14 ID:Pbx6.li60
論理感すら失った状態で勝ってどうするつもりなんでしょうね…
政府への不信感もありますし

169外パラサイト:2017/01/23(月) 19:24:59 ID:lbvRe/9E0
あけましておめでとうございます(今更)
投下させていただきます

170外パラサイト:2017/01/23(月) 19:26:15 ID:lbvRe/9E0
ニポラ・ロシュミックが司令官から呼び出しを受けたのは新品のドシュダムの慣らし運転を済ませた直後だった。
ニポラが所属する第653飛行戦隊は12月9日から断続的に続いた首都防空戦で搭乗員の半数と機材の3分の2を失う損害を出した後、人員と飛行挺の補充を受けて再び最前線拠点に派遣されていた。
ちなみにドシュダムの配備数は定数の八割強、補充されたパイロットの大半は養成所を出たばかりのヒヨコである。
実際あらゆる物資の補給が滞っているなか、いくら生産効率を重視した簡易飛行挺とはいえドシュダムだけはなんとか損失に追いつくペースで補充の機体が―しかも改良型が―供給され続けているというのはちょっとした奇跡である。
「どうですか調子は?」
「悪くないわね」
寄ってきた機付き整備員に手渡された書類に書き込みをしながら答えるニポラ。
彼女がテストしていたのは補充として届いたドシュダムの中でも最新モデルのタイプ31で、この型は性能向上よりも生産工程の省力化に主眼が置かれている。
言うなれば“大概な安物”から“究極の安物”への進化。
あえて言おう、シン・ドシュダムであると。
具体的に説明すると、従来のドシュダムは金属フレーム―金網で編んだネズミ獲りのカゴを連想していただきたい―に合板製の外殻を貼り付けるという方法で製造されていた。
この方式なら機体だけなら町の家具屋レベルの設備で充分製造出来るワケだが、タイプ31では機体の外板に更に安価で加工の容易な段ボールに似た厚紙を採用している。
紙といっても魔法で強化されているので耐熱・耐過重性能において合板に比べさほど劣ることはない。
そのうえ構造材の変更によって機体重量が10%ほど軽減されているので機動性もいくらか向上している。
引き替えに曳光弾で簡単に火が着くという弱点が追加されてしまったが。
「残りの機体の試運転をお願いね」
「了解しました」
「了解しました」
ニポラは新しく配属されたちょっと―というかかなり―特殊な生い立ちをした二人の部下に、滑走路に並んだ最新式“紙飛行機”の試験飛行を代行するよう言いつける。
どちらも15〜6歳にしか見えない初々しさと枯れた雰囲気が奇妙に同居した二人の少女飛行兵のうち、茶髪のショートカットで変なヌイグルミを集めていそうなのが「55号」、灰色の髪をセミロングにしたハンバーグが好きそうなのが「69号」という。
二人とも元は捨て子であり、物心ついた時には軍の特務兵養成機関に居た。
そして飛行挺部隊に出向を命じられるまでひたすら殺しの訓練と上官の“夜の接待”をやらされていたという。
新しい部下と打ち解けようと身の上話を振った際にそんなエピソードを聞かされたニポラはかなり真剣に(もうやだこの国)と思ったものだった。

「ニポラ・ロシュミック少尉、出頭しました」
「ご苦労さま、ちょっと待ってて」
第653戦隊司令フラチナ・カルポリポフ中佐は机の上を占拠した書類の山陰から顔を覗かせ、トレードマークの瓶底メガネを光らせながら手近な椅子を指さした。
まだ二十代前半でかなりの美人といっていいフラチナは、積み重なった心労と睡眠不足の相乗効果で奇妙な色気を発散している。
もとはケルフェラクのエースパイロットだったフラチナは被弾した愛機から脱出する際に頭部を強打し、後遺症として空間認識力に深刻な障害が残ってしまった。
今は感覚補正の魔法が掛けられたメガネのお陰で日常生活には支障ないが、それでもちょっと気を抜くと何も無いところで転んでしまう。
そんな訳で再編された653戦隊に新指揮官として二週間前に着任したばかりのフラチナとニポラ以下古参搭乗員の関係は、幸いなことにおおむね良好である。

171外パラサイト:2017/01/23(月) 19:27:12 ID:lbvRe/9E0
「よっこいせっと」
書類との戦いに一区切りを付けたフラチナは年寄り臭い動きで机から離れると部屋の中央に置かれたテーブルに地図を広げ、ニポラを呼び寄せた。
「新しい任務があるんだけど」
「今度はスモウプみたいな事はないでしょうね?」
そう言い返されてフラチナは、“チーズと思って口に入れたら黄色いチョークだった”と言わんばかりの表情になった。
4日前、ニポラ率いる小隊はカレアント軍が侵攻したスモウプの街を爆撃した。
事前情報では街には敵軍しかいないはずだったが、実は味方の第108師団の一部が後衛として街に残っていただけでなく、情報の混乱からドシュダム隊に攻撃目標として指示されたのは味方の立て籠もっていた工場だった。
そして昨日、街を脱出した生き残りが私用で基地を出たニポラを襲い、あわやというところで駆けつけた55号と69号が初代プリティでキュアキュアな二人組のごとき大立ち回りを演じて暴徒と化した敗残兵の一団を撃退したのである。
「ホント二人が来なかったら埋められて殺されて犯されてましたよ」
「正直スマンカッタ」
頭を下げるフラチナ。
「まあいいです、済んだことですから」
負けが込んで来てからのシホールアンル軍は万事につけ余裕が無い。
朝出された命令と正反対の命令が夕方に下されるなんてことは当たり前。
司令部の理不尽な命令に理路整然と反対意見を述べた前線指揮官が抗命罪に問われて裁判抜きで処刑!なんてケースも少なくないことを知っているだけに、ニポラも中間管理職の重圧に身が細る思いをしている―実際顔は良いが顔色はあんまりよくない―飛行隊司令をそれ以上追求する気にはならなかった。
「それで任務というのは?」
ニポラが話題を変えたことで露骨にホッとした顔になるフラチナ。
「目標はミウリシジの鉄橋よ、ここを取られると北部戦線の側面に大穴が空いてしまうの」
両軍の配置が書き込まれた地図で見てみると、なるほど敵にとっては格好の侵入路である。
「攻撃目標の鉄橋ですがドシュダム用の小型爆弾で破壊できますかね?」
「まず無理ね、そこで今回は海軍の対艦用爆裂光弾を使うわ」
ニポラは露骨にイヤそうな顔をした。
ドシュダムはそれなりの出力を持つ魔道機関と小型軽量な機体の組み合わせによって比較的良好な運動性能と加速性能を持ち、アメリカ製の戦闘機と互格とまではいかないがある程度は戦える実力を有している。
が、所詮は間に合わせの簡易飛行挺であり、対艦爆裂光弾のような大型兵器を搭載して飛び上がった場合、妊娠した雌牛のように鈍重になってしまう。
「わかってるわ、本来ならケルフェラクかワイバーンがやる仕事だけどケルフェラクの123飛行隊もワイバーンの99空中騎士隊も連日の防空戦闘で大損害を出しているうえに新しい部隊を手配する余裕は無いのよ」
いかにも済まなさそうにフラチナが言う。
「やるしかないワケですか」
「そゆこと」
司令官はハアッと重い息をつくと自分に気合いを入れるかのようにパンと膝を叩いて立ち上がった。
「今度の作戦では私も飛ぶわよ!」
「でも司令は……」
「大丈夫、ケルフェラクに比べればドシュダムは乳母車みたいなものよ」
ちなみに戦後ドシュダムをテストした米軍パイロットは「サルでも飛ばせる」と証言している。
「書類仕事はもうウンザリ!大空が私を呼んでいる♪」
フラチナは両手を広げてクルリと一回転し、次の瞬間、盛大にコケた。

172外パラサイト:2017/01/23(月) 19:28:22 ID:lbvRe/9E0
その日の正午過ぎ、第653戦闘飛行隊から選抜された6機のドシュダムが前線飛行場を飛び立った。
対艦爆裂光弾が6機分しか用意できなかったのだ。
最近のシホールアンル軍は何事もこんな具合である。
「遅すぎる、そして少なすぎる」そう恨み言を吐いて死んでいく兵士が一日に何人いるかは神のみぞ知るといったところか。
よたよたと離陸する飛行挺の主翼には一斗缶を連結したような爆裂光弾の発射筒が吊り下げられている。
今回は鉄橋が標的なので生命探知魔法の術式は解除してあり、使い方は無誘導のロケット弾と変わらない。
6機の特別攻撃隊は第一小隊の3機をフラチナが、第二小隊の3機をニポラが指揮し、小隊長機を先頭にした二つの逆V字隊形を上下に重ねた形で進撃する。
ニポラの小隊で一緒に飛ぶのは55号と69号である。
ドシュダムでの飛行時間は55号が7時間、69号が10時間しかないが、適正を認められて暗殺部隊から転属してきただけあって、二人とも無難にドシュダムを乗りこなしている。
フラチナが指揮する第一小隊には公認撃墜3機と4機のベテランがいて、撃墜数は二人を足した数より多いものの、イマイチ飛びっぷりが心配な戦隊司令に寄り添っている。
樽めいた太短い胴体にほとんど上反角の無い分厚い主翼を組み合わせた飛行挺が特徴的なエンジン音を唸らせて飛ぶ様は、航空機の編隊というよりは羽虫の群れを連想させる。
幸い―と言っていいのかどうか―敵の航空隊は東部で行われているバルランド軍の攻勢にまとめて投入されているらしく、敵戦闘機との遭遇はない。
特別攻撃隊がミウリシジの鉄橋に到着し、攻撃の前に上空を旋回して周囲の確認をしていると、普段はぽややんとしているくせにここぞという時にはニュータイプ並に勘が働く55号が線路上を南下してくる列車を見つけた。
高度を下げて列車の上空をフライパスすると、その列車は前線から負傷兵を後送してきたものらしく、無蓋貨車に寿司詰めにされた包帯姿―赤い染みが広がっているもの多数―の兵士たちが盛んに手を振っている。
特別攻撃隊のドシュダムを自分たちの上空援護に来たものだと思っているのだろう。
『司令――』
『分かっている、列車が通過するまで攻撃はしない』
だが現実は非情である。
『敵です!』
69号が反対の方角から道路を北上してくる戦闘車両の一群を見つけた。
「ドチクショーッ!」
品の無い罵声が口を突いて出るのも致し方なし。
傷病兵で満杯の貨車を引いてノロノロと線路上を進む列車より、道路上をすっ飛ばす機械化部隊の方が鉄橋に先に到達することは確定的に明らか。
彼らは戦線に突破口を穿つため快速車両で編成されたカレアント軍の偵察/襲撃部隊であり、全員が某狂せいだー乗りに勝るとも劣らないスピード狂である。
『第一小隊、敵車列を攻撃!第二小隊は上空で待機!』
三機のドシュダムはV字編隊を解き、緩やかな角度で降下しながら道路を爆走する車列に襲いかかる。
フラチナのドシュダムが先頭を走るM18戦車駆逐車に狙いを定めて射撃開始。
タイプ31の装備する重魔道銃は実体弾換算で25ミリ級の威力がある。
対して高速だが軽装甲のM18は主砲防楯の厚さが1インチ(≒25.4ミリ)であり、その他の主要部は0.5インチしかない。
あわれM18はブリキ缶のごとく撃ち抜かれて爆発炎上!

173外パラサイト:2017/01/23(月) 19:29:49 ID:lbvRe/9E0
攻撃を終えたフラチナ機が機首を引き起こすと同時に二番機が射撃開始、さらに三番機が後に続く。
第一撃でM18二輌とハーフトラック三台、機関銃と装甲板を追加した強襲用ジープ一台が炎に包まれた。
だがカレアント軍は諦めない、燃える車両を体当たりで道路から突き出してひたすら橋を目指す。
『列車は!?』
上空で旋回を続けるニポラが答える。
『いま鉄橋を渡り始めたところです!』
『くっ!』
フラチナは唇を噛んだ。
すでにカレアントの車列は川に沿った堤防上の直線道路に達している。
「あああもう!」
フラチナは堤防に向けて対艦爆裂光弾を発射した。
爆発によって路肩が崩れ、カレアントの戦車は急停車を余儀なくされる。
堤防の右側はかなり流れが急なカナリ川、左側もぬかるんだ湿地になっている。
道路を迂回して橋に向かうには1マイル近くバックして回り込むしかない。
そのとき一人の兵士がM6装甲車から飛び降りた。
堤防道路は川側が長さ6メートルに渡って崩落しているが完全に不通になったわけではなく、陸側にギリギリ車一台通れるだけの道幅が残されている。
徒歩の兵士に誘導され、旋回砲塔に37ミリ砲を装備した重装甲車はそろそろと今にも崩れそうな土手道を進んでいく。
『続けて攻撃!』
フラチナの命令を受け、第一小隊二番機が降下していく。
当然カレアント軍もやられっ放しではなく、車両に搭載された火器だけでなく、ライフルや拳銃まで動員して撃ちまくる。
激しい対空砲火が浴びせられるが、両翼にかさばる荷物を吊り下げたドシュダムの動きは鈍い。
二番機を仕留めたのは砲塔を失ったスチュアート戦車に不時着したP-39から取り外したオールズモビルのM4機関砲を載せた改造自走砲だった。
37ミリの榴弾が魔道エンジンを直撃し、パイロットが脱出する暇も無くドシュダムは爆発四散!
『三番機逝け!』
非情なる命令!
だが兵士は黙って従うのみ。
三番機は撃ち落とされる前に対艦爆裂光弾を発射し、堤防道路は完全に不通となった。
『列車が渡り終えました、これより鉄橋を攻撃します』
ニポラ率いる第二小隊は横一線になって川下から接近し、それぞれ右端、中央、左端の橋桁を狙って対艦爆裂光弾を発射する。
発射された6発のうち2発が橋を直撃、残りも至近弾となって鉄橋は大きく揺らいだ。
だがそれだけだった。
『……ダメみたいですね』
『まあ最善は尽くしたわ、引きあげましょう』
軍用列車の通過に耐えられるよう特に頑丈に作られた鉄橋を完全に破壊するには、ドシュダム三機分の爆裂光弾では火力が足りなかったのだ。。
橋に到達したカレアント軍はまず軽装備の歩兵を渡らせて対岸に橋頭堡を築くとともに橋の修理と補強を迅速に行い、翌朝の日の出とともに最初の戦車がカナリ川を渡った。
飛行場に戻ったフラチナとニポラ、55号、69号はドシュダムから降りると同時に武装した兵士に取り囲まれた。
「貴様等を叛逆罪でタイホするのである」
ハゲでヒゲで脂ぎった中年太りの大佐が横柄な口調で宣言した。
「待ってください話を――」
一歩踏み出し小石一つ落ちていない滑走路でコケるフラチナ。
その背中をハゲヒゲ固太りが踏みつける。
「黙れ罪人」
それを見て飛び出そうとした55号と69号が鳩尾に銃床を叩き込まれて膝を折る
「司令部に連行してじっくりねっちょり尋問するのである」
どこか背徳的なポーズで緊縛された四人は囚人用の馬車に乗せられ、基地を後にした。

その後、特別攻撃隊が渡河を援護した列車に皇族の親戚筋に当たる某陸軍大将の跡取り息子が乗っていたことが判明し、あっちこっちで圧力の掛け合いやら裏取引やらがあって最終的に四人は放免されるのだが、監禁されている間ナニが行われていたのかはご想像にお任せする。

174外パラサイト:2017/01/23(月) 19:30:26 ID:lbvRe/9E0
投下終了

ttp://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=61077160

175名無し三等陸士@F世界:2017/01/23(月) 21:33:04 ID:ZszJvMjg0
外伝超乙
いい話であった

176ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/01/28(土) 01:05:07 ID:X3jR6OQc0
>>167-168氏 国の上層部が視野狭窄に陥ると、本当にろくな事にならんものです

>>169-174
遅ればせながら、外伝氏投稿お疲れ様です!
こちらこそ、あけましておめでとうございます。

ただでさえアレなドシュダムがより進化(退k…げふんげふん)しているのがなんとも
そして、劣勢な状況下でも必死に目標にかじりついて行く様勇敢ですが、せっかくのベテランがまた
消えていくのは何とも悲しいところです

そして……ニポラ達が分からず屋共にアレやらナニやらが行われている最中に無罪放免になりましたが、
その時の妄想が捗りますn(検閲されますた

177名無し三等陸士@F世界:2017/01/28(土) 02:17:47 ID:9R7ffzTs0
色々投下乙

>>157
ヨーロッパで一番強いのはアメリカ軍なんて話もありますが
冷戦当時からそうだったのかな

>>163
Hoi2で星はたの世界をとりあえず表示しようと色々やってうまくいかなかったんですよね
持ってるバージョンが一番厄介な手法が必要なやつだったぽいので
もう少し粘ってみるか別のバージョン買って試してみようかな

シホールアンル上層部は国家総力戦が初体験だからね
色々あるのは仕方ないねと
国が消えるならどうせとヤケになるのが一番怖いという

>>170
ドシュダムのT-34化が激しい
モスキートなんて目じゃない紙製の奇跡(悪い意味で)かな?
橋を狙って壊すのは難しいですからねWW2の誘導爆弾AZONなんかも橋に向けて使われたし
ベトナム戦争では無駄に頑丈に作った橋(タンホア鉄橋とロンビエン鉄橋)がハリネズミと化して大変な被害を与えたりと

現代のアメリカ空母なんかは女性兵士も乗っていることもあり航海の途中で妊婦になるなんてことがありますが
妊娠して戦線離脱を狙う人も出てきたりして、そして子どもたちが戦後のシホールアンルを支えていきます
しかし現実世界ではソ連で兵士が死にすぎて人口ピラミッドおかしくなったけど
女性兵士が多いと将来的にどれ位影響が出たものか

178名無し三等陸士@F世界:2017/01/28(土) 19:17:50 ID:hWFIE.hw0
乙でした
新型ドシュダム、魔法で強化してあるとはいえ金属フレームに紙張りとは…うーむ
史実では似たような構造(紙じゃなく布ですが)のハリケーンやウェリントンなんかがWWⅡを戦い抜いてましたが
彼らは途中から新型に役目を譲って第二線に下がることができた
でもドシュダムはケルフェラクとともにこの戦争の最後まで第一線で戦わなければならないことはほぼ確実…
過酷な扱いを受け続け、挙句の果てにそんな機体に乗せられて戦わせられるうら若きパイロットたちの苦労はいかばかりか
そしてカレアント軍、あんたらどんだけ37ミリ機関砲が好きなんだ(呆れ)
この調子だと前線の航空隊がビーラーから23ミリを取っ払って37ミリを無理やり取り付けた魔改造機なんかを作ってそうだ

179 ◆3KN/U8aBAs:2017/01/29(日) 12:43:14 ID:m2j84wJc0
>>170
新型機はエンジン付きのモックアップだ、というジョークが生まれそうですね・・・
個人的にはドシュダムの新型よりスチュアートとP-39の合体技SPAAGのほうが気になります

>>177
参考
ttps://togetter.com/li/317542
戦いは数だよ兄貴!と言わんばかりの圧倒的戦力差。少なくとも当時のNATO軍の戦術が「核ありき」だったのはこのためです。
あと地味に(西ドイツ戦域内では)戦車やヘリの数では西ドイツがアメリカと拮抗し、火砲の数では優越しています。
ただし装備の質や予備戦力考えるとやはりアメリカに軍配が上がるかと。

結論:ソ連最強(ちがうそうじゃない)

180名無し三等陸士@F世界:2017/02/17(金) 22:39:56 ID:9R7ffzTs0
>>179
やっぱりヨーロッパ最強軍(西側)は昔からアメリカなのか
本土から戦線までの距離を考えると陸戦はソ連が有利な感じがあるし
とりあえず航空戦力を使って陸上戦力をまとめて叩き潰そうとすると核だらけになるのはわかるけど

冷戦が冷戦のまま終わってくれてほんとに良かった

全面核戦争を避けるために段階的抑止で最初は通常戦力でなんとかしようっていう戦略もあったけど
あんなとこで戦火が飛び交ったらもう停められないの前提の核にも見えるし

181名無し三等陸士@F世界:2017/02/19(日) 19:15:43 ID:XiyVDv5E0
35:54

10:40
ttps://www.youtube.com/watch?v=WTdY7h129Mk

ttps://www.youtube.com/watch?v=8R0luOy8ce8

182ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/02/21(火) 16:50:37 ID:VAFeLvik0
皆様お待たせいたしました。これよりSSを投下いたします。

183ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/02/21(火) 16:51:10 ID:VAFeLvik0
第283話 海上交通路遮断作戦(前編)

1486年(1946年)1月1日 午前0時5分 シェルフィクル沖南西390マイル地点

「ハッピーニューイヤー!」
「イェア!めでたい年明けだ!!」

狭い艦内のあちこちで、新年を迎えた事に歓声を上げる声が響き渡る。
配置についていた強面の兵曹が、淹れたてのコーヒーの入ったカップを部下に手渡し、はにかみながら新年の挨拶をしていく光景は、
なんとも微笑ましい。
潜水艦キャッスル・アリス(S-431)の艦長であるレイナッド・ベルンハルト中佐は心中でそう思い、横目でその光景を見つめながら
クスリと笑った。

「皆も、無事に新年を迎えられた事を喜んでいるようですな」

ベルンハルト艦長の隣にいた、副長のリウイー・ニルソン少佐が話しかけてくる。

「そりゃそうだ。乗員の中には、万が一にも撃沈されたら……と考える奴もいる。それだけに、生きて新年を迎えられる事は実に喜ばしいもんだ」
「艦長の言う通りです」

ニルソン副長は相槌を打ってから、右手を差し出す。

「コーヒーのおかわりを頼みますか?」
「うむ、頼むよ」

ベルンハルト艦長は頷きながら、空のコーヒーカップをニルソン副長に手渡した。
ベルンハルト艦長は、ドイツから移民した父と母の間に生まれたドイツ系アメリカ人である。
頭の金髪は短く刈り揃えられており、顔つきは堀がやや深い物の、理知的ながら、柔和な雰囲気を醸し出している。
今年で35歳になるベルンハルト艦長は、開戦時には潜水艦学校の教官として後進の育成に当たっていたが、1942年4月からはガトー級潜水艦
2番艦であるグリーンリンクの艦長に任命され、43年初旬まで大西洋方面の哨戒任務に従事し、43年初旬から44年12月までは太平洋方面で
哨戒任務に当たった。

184ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/02/21(火) 16:52:15 ID:VAFeLvik0
この間、ベルンハルト艦長のグリーンリンクは5隻の艦艇を撃沈している他、敵駆逐艦の攻撃を何度も受けたが、その度に生き延びてきた。
44年12月からは、本土で休養を取った後、翌年1月には最新鋭の潜水艦であるアイレックス級5番艦、キャッスル・アリスの初代艦長に任命され、
それから4カ月の完熟訓練を経て、艦の特性や、その独特の癖を掴む事ができた。
キャッスル・アリスの第1回哨戒任務は1945年7月より始まり、それ以降は3度の哨戒任務に就いている。
12月初旬の第2次レビリンイクル沖海戦時には、キャッスル・アリスはリーシウィルムの浮きドックにて機関部の修理を行っていたため、
この大海戦に参加する事はできなかった。
12月14日に修理を終えたキャッスル・アリスは、2日間の試験公開の後、所属部隊である第64任務部隊司令部より、シホールアンル帝国北西海岸から、
ルキィント、ノア・エルカ列島間の哨戒任務を命ぜられ、各種消耗品を慌ただしく積み込んだ後に、未だ足を踏み入れた事のない新海域へと向けて出撃した。
そして、出撃から2週間が経った今日……ベルンハルト艦長と、彼の指揮するキャッスル・アリスのクルー達は無事、1946年を迎えるに至った。
(この世界では1486年であるが)

「艦長、コーヒーです」

部下の水兵が淹れたコーヒーを、ニルソン副長が受け取り、それをベルンハルト艦長に渡す。

「ありがとう」

ベルンハルトはにこやかに笑みを浮かべてから、カップを手に取り、ミルクコーヒーを一口啜る。
片手にカップを持ったまま、彼は後ろの海図台で海図を見据えながら部下と話す航海長の背後に近付いた。

「やあレニー」
「これは艦長。あけましておめでとうございます」
「おめでとう。去年は何とかくたばらずに済んだな」
「はは。今年も去年と同様、無事に生き残りたいものです」

キャッスル・アリス航海長を務めるレニー・ボールドウィン大尉は、伸びた無精ひげを撫でながらベルンハルトに答えた。

「今はどの辺だ?」
「この辺りですな」

ボールドウィンは、海図の一点をコンパスで指す。

185ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/02/21(火) 16:53:03 ID:VAFeLvik0
キャッスル・アリスは、シェルフィクル沖を通り過ぎ、西に向かって航行しつつある。
位置はシェルフィクルより方位260度、南西390マイル。
目標海域であるポイントDまでは、あと400マイル(640キロ)はある。
キャッスル・アリスは、昼間は潜行し、夜間は浮上しながら航行しているため、一日に平均200キロ。調子の良い時には、300キロほどは移動している。
このまま何事もなく進み続ければ、早くて明後日。遅くても4日以内には作戦海域に到達できるであろう。

「シホットの連中は、主力部隊が壊滅したとはいえ、警戒用の哨戒艦や駆逐艦はたんまり残っているようで哨戒網は未だに厚いですが、シェルフィクルを
過ぎた辺りからは警戒も手薄になっていますな」
「敵はどうやら、シェルフィクルから東側付近を重点的に警戒しとるようだ。哨戒艦の数からして、第5艦隊所属の空母機動部隊への警戒か、あるいは、
俺達潜水艦部隊に対する対潜哨戒だろう。沿岸航路は是が非でも守り通さんと行かんからな」
「とはいえ、敵さんも遠洋哨戒を行うほど余裕が無いのか……沿岸から300マイル近く離れた沖には哨戒艦がおりませんね」
「情報によると、シホールアンル海軍は少なからぬ数の哨戒艦艇を北方航路沿いに東海岸へ向けて回航したとあった。沖まで哨戒網を張ろうにも、
艦艇不足で満足に哨戒出来ない事は、確かにあり得る話だ」
「出航前に伝えられた敵状報告では、12月15日から16日未明にかけて、駆逐艦を主体とした小型艦多数がシェルフィクル沖を通過し、シュヴィウィルグ運河へ
向けて航行中とあります。シホールアンル海軍の意図は不明ではありますが、敵はその数日前に、第3艦隊所属の空母機動部隊によってシギアル港所属の艦艇に
多大な損害を受けているため、その補填として本土領西岸部に駐留する海軍部隊の一部を、東海岸防衛に転用した事は容易に想像できますな」

ボールドウィン航海長が言うと、ベルンハルト艦長も無言で頭を頷かせた。

「とは言え、油断は禁物だ。今まで通り、警戒を厳としつつ、目的地に向かうぞ」

ベルンハルトが自分を戒めるかのようにそう言った時、背後から別の士官に声を掛けられた。

「これは艦長。明けましておめでとうございます」
「やあ飛行長。無事に新年を迎える事ができたな」

振り向いたベルンハルトは、キャッスル・アリスの飛行長を務めるウェイグ・ローリンソン大尉にそう返した。

「機体の調子はどうだね?」
「今の所、異常はありません。パイロット達も無事に年を越す事ができて喜んでおりますよ」
「ふむ。意気軒高といったところか」

186ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/02/21(火) 16:53:55 ID:VAFeLvik0
ベルンハルトはローリンソン大尉に返事を送りつつ、2名の艦載機搭乗員の顔を思い出した。
キャッスル・アリスが搭載するSO3Aシーラビットを操る2名のクルーはいずれも若く、実戦経験も豊富だ。
今度の哨戒作戦では、キャッスル・アリスと、同型艦であるシー・ダンプティの艦載機が重要な役割を担う事になる。
作戦開始時期が近い事もあって、次第に士気も高まりつつあるようだ。

「遅くても、明後日には作戦海域に達するだろう。その時には、よろしく頼むぞ」
「承知しております。うちのクルーは必ず成し遂げますよ」

ローリンソン大尉は自信満々に答えた。

「飛行長がああ言うのならば、次の作戦は楽勝でしょうな」
「そうなるといいんだがね」

ベルンハルトがそう言うと、ローリンソンとボールドウィンは互いに顔を見合わせて苦笑し合った。

「潜水艦乗りは常に慎重に……だ。何しろ、防御力に関しては最も脆いからな。慎重に過ぎる事はないさ」
「その通りですな」

艦長の戒めの言葉に対し、ボールドウィンが相槌を打った。

「おっと…年始早々無駄に緊張させてすまんな。そういえば、飛行長の所の部下達は今どうしてるかね?」
「飛行科員は総出で新年の祝いをやっとる所です。耳をすませば聞こえてきますよ」

ローリンソンは、耳を傾ける仕草を交えながらベルンハルトに答えた。

「皆、概ね楽しんどるようだな」
「酒が飲めん事に関して、少しばかり不満を言っていましたが、それ以外は充分に満足しているようです」
「そこは仕方ないさ。合衆国海軍は禁酒だからな。今ある物で我慢してもらおう」

ベルンハルトはそう言うと、海図台から離れた。

「ひとまず、飛行科員の宴席に顔を出してみるか」

彼はニヤリと笑みを浮かべつつ、飛行科員のいる居住区画に向けて足を進めていった。

187ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/02/21(火) 16:54:39 ID:VAFeLvik0
1月3日 午前9時40分 ノア・エルカ列島ロアルカ島沖東方60マイル地点

第109駆逐隊の属する駆逐艦フロイクリは、同じ隊に所属する僚艦3隻と、輸送船30隻、他の護衛艦8隻と共に
帝国本土西岸部にあるホーントゥレア港に向けて8リンル(16ノット)の速力で航行していた。
フロイクリ艦長ルシド・フェヴェンナ中佐は艦長席に座って、副長と会話を交わしていた。

「今の所、本土西岸部は天候不順のままのようですな」
「こっちとしては好都合の状況と、言いたいではあるが……空母機動部隊に襲われなくても、海中の敵潜水艦からの
攻撃は十二分に考えられる。私としては、もっと多くの護衛艦が必要だと思うのだがな」
「やはり、12隻では足りませんか?」

副長のロンド・ネルス少佐は眉をひそめながら聞いてくる。

「足りんな。アメリカ軍の潜水艦は、同盟国の魔法技術のお陰で隠密性に優れている。その影響でこちらの生命反応探知装置が
役立たずになってしまった。そうなると、護衛艦を増やして海の見張りを強化する必要がある。30隻の輸送船を護衛するなら……
せめて、護衛艦は16隻。欲を言って20隻は欲しいところだ」
「本国では、新式の金属探知魔法の開発に成功し、順次実戦配備が予定されているようですが」
「前線に行き渡るには、最低でもあと半年か1年は必要と言われているぞ。急場には間に合わんよ」
「半年か1年ですか……」
「とにかく、俺達は今ある物でやっていくしかない。出航前にも言ったが、特に対潜警戒は厳となせ」
「はっ。重ねて通達いたします」

副長はそう答えてからフェヴェンナの傍を離れた。

「それにしても……レーミア湾海戦から今日に至るまで、よく生き残れたと思ったが……こうして見ると、生き残れた事が
良かったかどうか分からなくなるな」

188ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/02/21(火) 16:55:16 ID:VAFeLvik0
駆逐艦フロイクリは、1483年12月にスルイグラム級駆逐艦の14番艦として竣工し、以降は竜母機動部隊の護衛に従事した後
、昨年1月のレーミア湾海戦では第109駆逐隊の一員として米駆逐艦部隊と激しい砲撃戦を行った後、撤退中の味方戦艦部隊の
援護を行い、追撃するアイオワ級戦艦2隻を相手に、僚艦と共にシホールアンル海軍初となる水上艦による統制雷撃を行い、魚雷を
複数命中させて2隻とも大破させるという戦果を挙げた。
その後は再編に取り掛かった第4機動艦隊の護衛艦として任務をこなし続けたが、第2次レビリンイクル沖海戦が始まる前、機動部隊と
共に出航する直前になって機関不調となり、フロイクリは修理のため港に留まった。
その後、第4機動艦隊はアメリカ第5艦隊との決戦に敗北し、港には傷ついた竜母や護衛艦群が帰ってきた。
12月16日に、機関の修理が完了したフロイクリは、僚艦と共にノア・エルカ列島-本土西岸の航路護衛の任を受け、一路ロアルカ島に
向けて出港した。
同駆逐隊は12月20日にロアルカ島のリヴァントナ港に入港した後、護衛対象である輸送艦がロアルカ島に集結し、同島にて生産された
各種物資を積み込むまで洋上にて訓練を行った。
第109駆逐隊は、第2時レビリンイクル沖海戦で壊滅した同部隊を再建したものであり、元々は最新鋭のスルイグラム級で構成されていたが、
海戦後はガテ級駆逐艦やマブナル級駆逐艦といった比較的旧式の駆逐艦と共に隊を編成しているため、文字通り寄せ集めの部隊となっている。
このため、艦隊運動に関しては幾分不安が残っており、敵の攻撃を受けた場合、効果的に迎撃できるか分からなかった。
とはいえ、各艦とも就役してから数年は経ち、実戦経験も積んでいるため、連携さえ取れれば何とか任務をこなせると考える者も居る。
第109駆逐隊の旗艦である駆逐艦メリヌグラムに座乗するタパリ・ラーブス大佐はそう確信しているが、フェヴェンナ中佐はそれでも
不安を拭えなかった。

「しかし、敵さんは今後、この航路にも多数の潜水艦を派遣するかもしれませんな」
「ラーブス司令は出港前の会議で、敵潜水艦の襲撃は、少なくとも1月中旬までは行われないであろうから、それまでは気楽に護衛任務を
こなせられるが、それ以降は気を引き締めてかかろうと言われていた」

ネルス副長に対して、フェヴェンナ艦長は眉間に皴を寄せながら言う。

「だが、司令は楽観的過ぎると私は思っとるよ」
「そういえば、司令は今回がこの戦争での初の実戦でしたな……」
「一応、実戦経験が無い訳ではないのだが、それも北大陸統一戦の頃の経験だ。ラーブス司令はアメリカが戦争に加わる直前になって本国の
地上勤務に転属され、それが昨年の12月中旬までずっと続いていた。対米戦に関して言えばただの新米に等しい。着任前には色々と資料を
見て勉強したようだが、私からしてみれば全く足りんと思うな」

フェヴェンナ艦長はそう言うと、深く溜息を吐く。

189ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/02/21(火) 16:56:25 ID:VAFeLvik0
「既に海軍の主力部隊を失った帝国は北岸以外、すべての制海権を敵に奪取されたに等しい。それはつまり、敵はいつでも、各地の航路を
襲撃できる態勢を整えたという事だ。この航路だって、敵の潜水艦部隊が進出を終えて俺達を待ち伏せているかもしれんぞ」

ネルス副長は艦長の言葉を聞いた後、しばし黙考してから口を開く。

「確かにそうでしょうが……潜水艦の襲撃だけで済みますかね」
「………済まんだろうな」

フェヴェンナは自虐めいた笑みを浮かべながら、副長に返した。
帝国本土西岸部の制海権を失った以上、潜水艦の襲撃のみで済むはずがない。
むしろ、潜水艦の襲撃は破局の手始めに過ぎず、その後は、主力部隊を葬った敵の高速機動部隊が周辺海域に跳梁し、航路を往来する護送船団を
片端から食らい尽くしていくであろう。

「せめて……残りの竜母が使えればな」
「第4機動艦隊の残存竜母に戦闘ワイバーンを満載してくれれば、せめて防衛だけは出来そうなものですが。上層部はいったい何をしているんですかね」

ネルス副長は眉をひそめながら不平を言うが、フェヴェンナは頭を振りながらそれを否定する。

「竜母はあっても、使えるワイバーンと竜騎士が絶対的に足りんのだ」

フェヴェンナは人差し指を上げながら言う。

「12月の決戦前、第4機動艦隊のワイバーンは960騎あったが、海戦後は270騎にまで減らされている。その損失を首都や後方に
待機していた予備部隊で補う筈だったが、その予備の一部が首都攻防戦でほぼ壊滅して、第4機動艦隊のワイバーン戦力は400騎しかおらん。
そして、海軍全体で保有しているワイバーンは、育成中の個体も含めて800騎にも満たない。そして何より……」

彼は人差し指を収めた後、両腕でバツ印を描いた。

「練度が圧倒的に足りない。今や、海軍ワイバーン隊はその大半が素人で、玄人なんかほんの一握りしか残っておらん。腕のいい奴は、
大半が戦死したか、再起不能にされてしまったよ」

190ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/02/21(火) 16:58:45 ID:VAFeLvik0
「と言う事は……出したくても出せないという訳ですな」
「そういう事さ」

フェヴェンナは諦観の念を表しながらそう返す。

「それに、残存竜母が総力出撃し、全力で護衛してくれたとしても……強大なアメリカ機動部隊の事だ。圧倒的な艦載機数でもって味方竜母を
全滅させようとし、現に全滅するだろう」
「……負け戦ここに極まれり、ですか」
「認めたくないが、そうなってしまっているな。でなきゃ、艦隊型駆逐艦として作られたフロイクリが、輸送艦の護衛に付くはずがない。
船団護衛には哨戒艦で事足りる事だ」

フェヴェンナは再びため息を吐きながら、ネルスにそう語った。

「とはいえ……任務はこうして与えられた訳だ。敵はこうしている間にも、手ぐすね引いて待っているかもしれん。愚痴を言っている場合ではなさそうだ」
「確かに……あ、そう言えば」

ネルスは何かを思い出した。

「航海長が今後の道程について意見を申し述べたいと言っておりました」
「ふむ……航海長はいつもの場所か?」
「はい」
「よろしい。会って話をするか」

フェヴェンナは艦長席から立つと、航海艦橋に向かった。
程なくして、彼は海図台の上で航路を確認する航海長に声を掛けた。

「航海長」
「艦長……副長からお話は聞いたようですな」

駆逐艦フロイクリ航海長を務めるハヴァクノ・ホインツァム大尉はあっけらかんとした表情でフェヴェンナの顔を見据えた。
ホインツァム大尉は今年で29歳になる海軍士官だ。
顔は年齢の割に皴が多く、目が細くて小さいため、傍目では常に目を閉じていると思われている。

191ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/02/21(火) 16:59:24 ID:VAFeLvik0
しかし、実際には柔和な表情を浮かべる事が多く、実戦経験も豊富なため、とても頼りになる士官でもある。

「今後の事で相談があるようだな」
「ええ。そうです」

ホインツァム航海長は、ずれた略帽を直しながら、海図上にペン先を向けた。

「現在、我が船団は帝国本土西岸部にあるホーントゥレア港に向けて8リンル(16ノット)の速度でジグザグ航行をしております。
現在の速度で行くなら、予定では4日後の1月7日夜半にホーントゥレア港に到達できます。ただし、それは……敵潜水艦の妨害を
受ける事無く、順調に進んだ場合の話です」

ホィンツアム航海長は、無言でペン先を右に走らせる。
そして、航路の中間海域で止め、そこに大きな丸い円を描いた。

「もし敵の潜水艦が進出した場合、恐らくは、この辺りの海域まで進出し、網を張っている可能性があります」
「…この辺までか。となると、明日の夜半頃からは対潜警戒を厳にして備えるべきか」

フェヴェンナはそう言いつつ、顔をホィンツアム航海長に向ける。

「それで、君は私に意見を申し述べたいそうだな。となると、私に艦隊の針路を変えるよう、意見具申を行うようにと言いたいのかね?」
「いえ、私が懸念しておりますのは、もっと別の問題です」
「別の問題……それはどういう事だね?」

ホィンツアムは目線を海図に移しながら質問に答え始める。

「我々は、海の中だけではなく、空も警戒するべきではないでしょうか」
「空……だと?」
「艦長は出港前におっしゃられていましたな。アメリカ海軍は、偵察機を搭載した新型潜水艦を就役させたと海軍情報部から前線部隊に
通達があった……と」
「ああ……確かにそう言ったが」

192ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/02/21(火) 17:00:11 ID:VAFeLvik0
フェヴェンナは、ロアルカ島の西方方面艦隊司令部で行われた出港前の会議で、司令部の魔道参謀より米海軍の動向や敵新型艦の
配備状況などを一通り聞かされた。
その中に、

「米海軍は航空機搭載の新型潜水艦を複数就役させ、完熟訓練を行っている模様」

と、素っ気ない一文が混ざっていた。
それをフェヴェンナは艦の主要幹部らにも伝えたが、フェヴェンナ自身は通達しただけで、その未知の新型艦の存在をすっかり忘れていた。

「だが、例の新型艦は前線で発見されたという報告が上がっていないと聞く。それに、新型艦は完熟訓練の真っ最中のようだから、俺達が
その艦の心配をする必要はないと思うが」
「本当にそう思われているのですか……正直申しまして、私はその情報を真に受ける事はできませんな」

ホィンツアムは険しい表情を浮かべながら、艦長の言葉を否定した。

「海軍情報部は時折、情報分析が満足にできていない事があります。艦長も知っとるでしょう?リプライザルショックの事を」
「それなら無論知っているよ。エセックス級のガワだけ大きくしたと思われていた新型空母が、実際はガワだけではなく、戦艦顔負けの
驚異的な防御力を有していた事。そして、それを知った竜騎士の一部が出撃を拒否した事もな」
「表には出ていませんが、竜騎士達の衝撃と憤慨ぶりは凄まじい物だったと聞き及んでおります。そんな情報部がもたらした情報を完璧に
信じ込むのは危ないのではありませんか?」
「しかしだな、航海長。情報部も常に間違った情報を伝えている訳ではないのだ。そう目くじらを立てる事もあるまい」
「……確かに、そうでしょうな」

ホィンツアムは顔を頷かせてそう返すが、尚も言葉を続ける。

「ですが、その新型艦が前線に出ていないとしても……そういった類の新型艦は存在するのです。航空掩護の無い護送船団にとって、
これは非常にきつい事だと思いませんか?」
「……言われてみれば。確かに」

フェヴェンナは、ホィンツアムの言わんとしている事を理解し始めた。

193ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/02/21(火) 17:00:50 ID:VAFeLvik0
「元々、護送船団を監視する潜水艦は、海中からこちら側の陣容を確認しているようですが、それは潜水艦が襲撃地点に到達するやや前の海域で
行われる事。それはつまり、直前までこちらの数は把握できていないという事です。ですが……航空偵察が事前に行われてしまえばどうなります?
敵は襲撃を行う遥か前から、航空偵察によって船団の艦数をほぼ正確に突き止める事が可能になり、それによってある船団は駆逐艦が多いから
襲わなくていい。ある船団は護衛が少ないから襲撃に最適……と言う事を予め判断できるのです。これは大事ですよ」
「ああ……よくよく考えてみたら、とんでもない事になるな」
「しかも、これは敵が制空権を持っていない海域でも、こちら側に航空掩護が全く無ければ、その新型艦1隻混じるだけで、先ほど言った事が
間違いなく可能になります。今日のように、複数の護衛艦を付けて船団を形成する事を、我が帝国は毎時のようにできる訳ではありません。
時には護送船団を送り出す傍ら、輸送艦数隻だけで同時に外洋へ送り出す事もありますから……」

ホィンツアムは無意識のうちに頭を抱えていた。

「下手すると、敵機動部隊が暴れ込むまでもなく、輸送艦は片端から沈められてしまう恐れがあります」

彼はそう言いながら、持っていたペンの後ろで海図を数度叩く。

「この航路は、敵の新型艦の性能を試すには最適な航路と言っても過言ではありません。もし敵が新型艦を実戦投入していた場合、我が軍の
対潜作戦はより厳しい物になります」
「潜水艦に偵察機を搭載……か。まったく、とんでもない国と戦争をおっぱじめやがったもんだ」

フェヴェンナは渋面を浮かべたまま、顔を海図に近付ける。

「……航海長。もし、敵が新型潜水艦を投入していた場合、我が艦隊はどの辺りから対空警戒を行った方がいいかね?」
「すぐに行うべきです。今から1分後……いや、1秒後にでも」

ホィンツァムは、海図上に書き込んだ敵潜水艦の予想位置を中心に、コンパスで円を描いた。

「敵潜水艦が搭載している艦載機の性能は判明しておりませんが、機体の形状からして敵機動部隊が搭載しているアベンジャーやヘルダイバーを
ベースにして作られていた場合、航続距離もそれと同等か、やや劣る程度と考えた方がよろしいでしょう。となりますと……この円の中範囲内が
敵偵察機の行動半径内であると推定できます」
「半径250ゼルド(700キロ)……護送船団は、間もなく敵の索敵範囲内に入る、と言う事か」
「そうなります。私が即座に対空警戒を行うべきと申したのも、こういう推測に基づいているからです。艦長……」

194ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/02/21(火) 17:01:36 ID:VAFeLvik0
ホィンツァムはフェヴェンナの横顔をまじまじと見つめる。

「ラーブス司令に意見具申を」
「しかしだな、航海長。君の意見も理解できる。だが、敵新型潜水艦は前線に投入されたという情報は入っておらんのだ。もしかしたら、
この情報は敵の欺瞞工作であり、見えぬ新型艦の情報を流して我が方を混乱させることを考えているかもしれない」
「情報部が新型潜水艦の実戦投入に気付けていない可能性もあり得ますぞ」

フェヴェンナはホィンツアムに翻意を促そうとするが、ホィンツアムは頑として譲らない。

「我々は満足に敵状把握を行えず、煮え湯を飲まされ続けてきています。そして、それは今も続いているかもしれないのですぞ。恐れながら……
司令に意見具申を行い、全艦に対空警戒を促す事が、これから予想される敵潜水艦部隊の襲撃を回避、あるいは、損害軽減に繋がるかと、私は思います」
「………」

ホィンツアムの口調は異様に鋭い。
フェヴェンナはしばしの間黙考する。

(ホィンツアムは、開戦以来、アメリカ海軍と戦い続けた数少ない猛者の1人だ。これまでの経験でホィンツアムの培った勘が、この護送船団に
危機が迫っていると確信させているのだろう。最も、多少怯えすぎのようにも思えるが……)

「艦長……意見具申はできませんか?」

フェヴェンナは、ホィンツアムの怜悧な声で思考を止めた。

「そこまで言うのであれば、いいだろう」
「では……」

ホィンツアムの引きつり気味であった表情がやや緩んだ。

「ラーブス司令に、私の名で意見具申を行おう」
「ありがとうございます!」

195ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/02/21(火) 17:02:37 ID:VAFeLvik0
フェヴェンナが了承すると、ホィンツアムは張りのある声音で礼を言った。
だが、そこでフェヴェンナは右手を上げた。

「ただし……司令が私の具申を聞き入れてくれるかは分からんぞ。もしかしたら、その必要はなしとして一蹴されるかもしれん。私もやれるだけ
やって見るが」
「聞き入れてくれないのならば、致し方ありません。そこは覚悟の上です」
「よろしい。それでは、私は旗艦に意見具申を行う事にする。あとは任せろ。引き続き頼むぞ」
「はっ!」

フェヴェンナはホィンツアムの肩を軽く叩き、ホィンツアムも短く返事をしてから、元の任務に戻った。


魔導士に自ら起草した通信文を送らせた後、フェヴェンナは艦橋に戻りながら、航海長が海図に記した円を思い出していた。

「敵の潜水艦部隊が航路の中間地点に居座った場合……例の新型潜水艦……航空潜水艦と呼ぶのが正しいだろうが、そいつが同行していれば、
半径250ゼルドの範囲が敵索敵期の範囲内に収まる。それはつまり、450ゼルドに渡る本土との連絡線、その半分以上が敵航空機の監視下に
置かれるという事か……」

フェヴェンナは、その冷徹な現実の前に、本気で憂鬱になりかけていた。
海中の潜水艦部隊も恐ろしい。
そして、圧倒的な破壊力を有する敵機動部隊は更に恐ろしい。
だが……一番恐ろしいのは、数少ない安寧の航路さえも、たった1機の偵察機で白日の下に曝け出す例の新型潜水艦ではないのだろうか。
安全海域だと思い、安心して航行していた輸送船は、唐突に表れた偵察機にその素性を調べられ、その情報を基に、敵潜水艦部隊は、より自由に活動できる。
そして、敵潜水艦の魔の手は、いずれは北岸付近にも及んでしまうかもしれない。
彼はそう思うと、背筋が凍り付いてしまった。

「それでも……それでも続けねばならんのか。この戦争を…」

フェヴェンナの諦観の混じった声は、艦体に吹き上がった波しぶきの音で搔き消された。

196ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/02/21(火) 17:03:42 ID:VAFeLvik0
1月5日 午前6時30分 ノア・エルカ列島東方600マイル地点

ベルンハルト艦長は、潜望鏡で周囲の海域を慎重に眺め回していた。
やがて、周囲に敵影が無い事を確認すると、ベルンハルトは頷きながら潜望鏡を収めさせた。

「浮上する!メインタンク・ブロー!」
「メインタンク・ブロー、アイ・サー!」

ベルンハルトの指示の下、クルーが手慣れた動きで各種機器を操作し、キャッスル・アリスの艦体を海面へと誘っていく。
海面に長い艦首が現れると、そこから瞬く間に艦体が波飛沫を受けながら洋上に姿を現す。
キャッスル・アリスはその黒い船体を完全に浮かび上がらせると、10ノットの速度で洋上を走り始めた。
艦橋に装備されている対空レーダーと対水上レーダーはひっきりなしに電波を飛ばし、視認範囲外に脅威となる物が居ないか探る。
甲板には我先にと見張り員が躍り出て、艦橋や甲板に陣取って索敵を始めた。

「艦長。対空レーダー、対水上レーダー、共に敵の姿は映っておりません」

報告を聞いたベルンハルト艦長は、微かに頷く。

「よし。索敵機を出そう。飛行科員は直ちに発艦準備にかかれ!」

ベルンハルトが命令を下すと、飛行科員が待ってましたとばかりに、航空機格納庫に取り付く。
程無くして、格納庫の扉が左右に開け放たれ、中から折り畳まれた水上機が、カタパルトの上に押し出された。
小振りながらも、ほっそりとした機体に、5名の機付き整備員が機体の各所を点検していく。
点検が一通り終わると、ある者は燃料タンクに燃料を入れ、ある者は機銃弾を装填していく。
操縦席に座った整備員はエンジンを始動し、暖機運転を始めた。
アイレックス級潜水艦の艦載機であるSO3Aシーラビットは、胴体の燃料だけで最大1800キロの飛行が可能だが、今回は両翼に2個の
増槽タンクを取り付けている。
増槽を取り付けて飛行した場合、航続距離は2400キロまで伸びるため、パイロットは余裕をもって索敵に専念できる。
浮上から2分後に、艦橋に上がったベルンハルトは、空と洋上の波を交互に見て満足そうな表情を浮かべた。

197ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/02/21(火) 17:04:59 ID:VAFeLvik0
「ほほう、これは絶好の索敵日和ですなぁ」

すぐ後ろに付いてきたローリンソン飛行長が、顔に満面の笑みを表しながらベルンハルトに言った。

「多少は荒れた天気が続くかと思っていたが、素晴らしいほどの冬晴れだ。空気がかなり冷たい事を除けば、満点の天気と言えるだろう」
「これなら、索敵もやりやすいでしょう。お、来たか」

ローリンソン大尉は、艦橋のハッチから上がってきた2人の飛行服姿の部下に顔を向ける。
部下2人は、ベルンハルト艦長とローリンソン飛行長に対して敬礼を行う。

「うむ、ご苦労」

ベルンハルトは、短くそう返してから答礼する。

「ロージア少尉、クライトン兵曹長。待ちに待った出番だ。今日はしっかり働いてもらうぞ」
「「はい!」」

キャッスル・アリス搭載機の機長を務めるニュール・ロージア少尉と、パイロットを務めるトリーシャ・クレイトン兵曹長は、気合いの
籠った口調で返事をする。

「先ほど、僚艦であるシー・ダンプティも艦載機の発艦準備を終えつつあると通信が入った。諸君らは、先の打ち合わせ通り、母艦から
西方300マイル(480キロ)まで進出し、洋上を航行していると思しきシホールアンル軍輸送船団を発見し、その詳細を母艦に伝えて
貰いたい。万が一、敵船団に竜母が居た場合、または、機位を見失った場合は即座に索敵を中止し、母艦へ戻って貰う。機体に何らかの
トラブルが発生し、索敵に支障が来す場合も同様である。いいか……必ず帰還するんだ。決して、変な気は起こすなよ?」
「無論です!何しろ、このロージアが指揮しますからな。飛行長……そして艦長。必ずや、敵船団を発見し、母艦へ戻ります」
「私も、機長と同じであります」

ローリンソンから出撃前の訓示を受けた2人の搭乗員は、自信に満ちた口調でローリンソンとベルンハルトに強く誓った。

「よろしい。では、かかれ!」

198ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/02/21(火) 17:05:50 ID:VAFeLvik0
2人は無言で敬礼を行うと、足早に艦橋を下り、整備員に取り囲まれた愛機に向かっていった。
整備員から機体の状況を確認したロージア少尉とクレイトン兵曹長は、何度か顔を頷かせてから機体に乗り込んでいく。
ロージア少尉は偵察員席に、クレイトン兵曹長は操縦席に座ると、機付き整備員が一斉に離れ、整備班長がローリンソンに合図を送った。
カタパルト上のシーラビットが、エンジン音をがなり立てる。
整備の行き届いた機首の1350馬力エンジンは快調な音を鳴らしていた。

「いやぁ、遂に発艦ですか」

唐突に、後ろから別の声が聞こえてきた。
振り返ると、フード帽を被った臙脂色の服を着た男性士官が立っていた。

「やぁロイノー少尉。君も艦載機の発艦を見に来たのかね?」
「それだけならまだ良かったんですが」

ロイノー少尉は頭のフード帽を取る。すると、そこから白い犬耳が湧き出てきた。
フィリト・ロイノー少尉は、カレアント海軍から送られてきた魔導士で、相棒のサーバルト・フェリンスク少尉と共にキャッスル・アリスに
搭載されている生命反応探知妨害装置の管理と操作を任されている。
年は22歳と若く、その長い白髪とカレアント人特有の獣耳はキャッスル・アリス乗員にとってある種の癒しとなっているが、本人はいたって
生真面目であり、暇な時は他の乗員の手伝いもするため、頼りになる居候という地位も確立していた。
ベルンハルトは、ロイノー少尉の含みある言葉が気になり、すぐに問い質そうとしたが、

「艦長、発艦準備完了しました!」

飛行長の報告で、ロイノー少尉との会話が途切れてしまった。

「OK。風も良し、波も良し。発艦に必要な条件は全て揃ったな」

ベルンハルトは、周囲を見回しながらそう呟く。
キャッスル・アリスの艦首に波が飛び散り、前部甲板が濡れるが、波はさほど高くなく、揺れも許容範囲内だ。

199ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/02/21(火) 17:06:31 ID:VAFeLvik0
「索敵機、発艦せよ!」

ベルンハルトは命令を下した。
甲板にいた飛行科員がフラッグを振る。その次の瞬間、小さな爆発音と共にカタパルト上のシーラビットが前部甲板を駆け抜ける。
一瞬のうちにシーラビットは大空に舞い上がり、機体を載せていた滑車台が甲板前縁部よりやや離れた位置に落下して水しぶきを上げた。
発艦を終えたシーラビットは、キャッスル・アリスの上空をゆっくりと旋回する。
両翼の下と、胴体下部に付けられた大小3つのフロートが、シーラビットの飛行する姿をより一層、優雅な物へと引き立たせていた。

「これはまた……気持ちよさそうに飛びますねぇ」

発艦風景を見つめていたロイノー少尉は思わず感嘆し、無意識のうち尻尾を左右に振っていた。

「いいだろう、飛行機ってモンは」

ローリンソン飛行長が、ロイノー少尉に向けて自慢気に語り掛けた。

「飛行長の言われる通りですよ。自分もまた乗ってみたいものです」
「お、そう言えばロイノー君」

ふと、先ほどの含みある言葉を思い出したベルンハルトが、ロイノー少尉に顔を向けながら問い質す。

「ここには、発艦風景を見守る目的で来た訳ではないだろう?」
「ああ、そうでした。危うく忘れる所だった……」

彼はすまなさそうに頭を下げてから、ベルンハルトに話し始めた。

200ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/02/21(火) 17:09:59 ID:VAFeLvik0
SS投下終了です

最近はそこそこ面白いアニメ、ドラマがあってちょいちょい楽しめてます。

毎週ケモノフレンズ→幼女戦記→バイプレイヤーズの順で見れるので、なかなかいいもんです。

てか、よく考えたらこの作品も地味にケモノ成分がありますなぁ・・・
最も、ここのケモノさん達は機関銃や戦闘機等を使いこなすおっかない方々ですが

201名無し三等陸士@F世界:2017/02/21(火) 21:06:54 ID:AgTU8Bps0
ケモナー系なのは最近少ないですからね。
狐とかは前はよくあったような・・

それにしても日本の潜水空母のことを指してるのか、弾道ミサイル搭載型の潜水艦を指してるのか楽しみですねw
現実的に潜水空母を運用させるには原子力潜水艦でせめて1万5千トンの排水量でオスプレイやアパッチぐらいじゃないと大量に搭載は不可能ですよね・・それはそれでフルメタルパニックのあれですねw

202名無し三等陸士@F世界:2017/02/21(火) 22:34:00 ID:S16I66PE0
投稿お疲れ様です。
海上護衛戦は地味ですが、ハラハラしてとても楽しめます。

ところで作中の1946年現在ではマオンド共和国では軍事裁判は行われているのでしょうか?

203名無し三等陸士@F世界:2017/02/22(水) 10:31:15 ID:CUVgi81g0
おおお・・・・・潜水艦物・・・これはこれでまた良いですな・・・

204名無しさん:2017/02/22(水) 14:02:14 ID:.95/zsvg0
お疲れ様です
まるで1944年の日本商船団を見ている感じがします
まだ駆逐艦などの護衛戦力はある程度あるものの、空戦力は枯渇状態
しかし、本当に酷い有様ですね、本土防空すら覚束ないじゃないですか
防御力が満足でないまま、魔の海域にさしかかる船団……BGMはジョーズのテーマでしょうか


>前線に行き渡るには、最低でもあと半年か1年は必要と言われているぞ

その頃になって、搭載出来る戦闘艦がどれほど残ってるんでしょうかね……(震え声

205名無し三等陸士@F世界:2017/02/22(水) 20:02:05 ID:hWFIE.hw0
ヨークタウン氏乙です

ファンタジー潜水艦ことアイレックス級、またまた登場
今度はどんな戦果を挙げるのだろうか
その艦載偵察機の機長、ニュールということはもしかしてあの後席員のニュール君?
そしてロイノー少尉の言おうとしたこととは?

続き、待ってます!

206名無し三等陸士@F世界:2017/02/23(木) 01:33:28 ID:9R7ffzTs0
投下乙です

大型機が存在しないシホールアンルは陸からの哨戒線があまり伸びないだろうからこれから大変なことになりそうだ
対潜哨戒能力不足と撃沈されたあとの救助がほぼ不可能という意味で
なんとか空母を護衛につけても空母につける護衛も必要だしむしろ機動部隊を呼んでしまう餌になりかねない状況
この時期だとレーダーの発達で夜間に雷撃してくることもあるだろうしなぁ

>海軍全体で保有しているワイバーンは、育成中の個体も含めて800騎にも満たない。
そういえば米海軍ってどのぐらいパイロット居たのか気になって調べたら
1945年8月時点で6万人いたとか恐ろしいものを見た
空母勤務の人数まではわからなかったけど
五大湖に浮かんでた練習空母の2隻で1万人以上が着艦資格を得たらしいとの情報もあるので
とてもいっぱいいることはわかった

207名無し三等陸士@F世界:2017/02/23(木) 19:39:53 ID:Wkj.POYs0
 第四機動艦隊は壊滅し、首都近郊の第6艦隊は壊滅…
現状のシホールアンル海軍の残存戦力ってどれ位残ってるんですかねぇ?

208外パラサイト:2017/02/25(土) 22:36:45 ID:uyohS25I0
空母が無ければ商船に飛行機を積めばいいじゃない

ttp://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=61635576

なおパイロットが水着なのは一度発進したら最後は着水するしかないから(完璧だ)

209ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/02/28(火) 20:15:49 ID:VAFeLvik0
皆様レスありがとうございます。

>>201 弾道ミサイル潜水艦ルートか、潜水空母ルートかはこの時点でまだわかりませんが、なんとなく弾道ミサイル潜水艦ルート
に進みそうな予感

>フルメタルパニック
あれはあれでヤバイですなw

>>202氏 海上護衛潜は通常の海戦と違ってじわじわとした恐怖感や緊張の連続ですからね。

>マオンドでの軍事裁判
まだ行われてないですね。今はまだその準備中になります。

>>203氏 シホールアンル護送船団が酷い目に遭う予定です。
これも戦争故、致し方なし……

>>204氏 陸軍の残存航空兵力はまだ多いのですが、それも連合国空軍の数の前では雀の涙程度……
特に、B-36が参加してからは、シホールアンル側は一方的に爆撃されるだけになりましたね。

>防御力が満足でないまま、魔の海域にさしかかる船団……BGMはジョーズのテーマでしょうか
恐らくはそうでしょうなぁ。嗚呼、シホールアンル船団の行方は如何に

>>205氏 >その艦載偵察機の機長、ニュールということはもしかしてあの後席員のニュール君?
そう、あのニュール君です。
操縦員も歴戦の搭乗員ですから、とても頼りになる存在と言えるでしょう。

>>206氏 艦隊に対する夜間攻撃は第2時レビリンイクル沖海戦で本格的に行い、まずまずの戦果を挙げていますから、
護送船団が空襲を受ければ大損害は必至でしょうな

>米海軍のパイロット数
この世界で前線にいる米海軍母艦航空隊のパイロットだけでも、シホールアンル海軍のワイバーン数より遥かに多いです。
戦力格差を考えたらホント、頭おかしくなりますね…

>>207 シホールアンル海軍は、主力艦は正規竜母1隻、小型竜母6隻(うち3隻は修理中、2隻は就役したばかりのヴィルニ・レグ級)
戦艦3隻、他、巡洋艦、駆逐艦多数と言ったところですが、巡洋艦、駆逐艦も修理中な物が多いですね。
あとは旧式駆逐艦改造の護衛艦や哨戒艦といった雑艦が総計で500隻ほどいますが、戦力としては当てになりません。
この補助艦艇500隻も首都近郊と本土西岸に別れている状況なので、アメリカ海軍が圧倒している事には変わらないでしょう。

>>208氏 支援イラスト感謝です!
あの……その水着着用は夏、または、暖かい海限定ですよね!?(現在の戦闘海域は殆ど北方&季節冬=極寒)
冬場では流石にそれはない……と信じたい(願望

210名無し三等陸士@F世界:2017/03/24(金) 19:38:46 ID:VCi5cZtk0
どうかんがえてもシホールアンル輸送船団が潜水艦で撃沈されまくりで旧日本帝国と同じ運命を歩むような気がしてならない。
軍や人口の規模が大きいと飢餓作戦はいちばん堪えますよねえ。

211名無しさん:2017/04/01(土) 11:59:13 ID:.95/zsvg0
>>210
ガトー級(機雷敷設タイプ)B29「港湾封鎖は任せろー(ジャブジャブ」
シホールアンル「やめてっ」

212名無し三等陸士@F世界:2017/04/03(月) 01:11:26 ID:4Ewy13lk0
資源地帯とのシーレーンがハルゼー台風で文字通り消滅した上に陸運が弱く沿岸航路の壊滅が致命的だった日本に比べれば、国内でもある程度資源が賄えて鉄道を始めとした陸路もあり、国土の縦深もあるシホールアンルはまだまだ戦えてしまいそう…

213名無し三等陸士@F世界:2017/04/08(土) 21:19:47 ID:VCi5cZtk0
陸路は空爆で鉄道や工場など重要施設などの戦略目標たたかれて 海は潜水艦が海上交通網破壊で麻痺 どうみても詰んでるなあ。
もう作戦は神風作戦かゲリラ抵抗しか選択ないよね。

214名無し三等陸士@F世界:2017/04/08(土) 23:17:08 ID:9R7ffzTs0
シホールアンルの南部を分断した部隊は事が進めばウェルバンルの包囲作戦に出るはずだったから
大陸に引きこもって徹底抗戦するならすぐにでも首都を移転する勢いじゃないと

しかし生命探知で潜水艦が見つけられなくなった以上
レーダーの逆探知機すらないシホールアンルはある意味日本より辛いかもしれん
・・・・・こんな状況で航跡ない電池魚雷とか使われたらシホールアンル司令部はどんな反応するんだろ

215名無し三等陸士@F世界:2017/04/24(月) 21:12:40 ID:fvyoHNpY0
機雷はお嫌いですか?

じゃなくって、機雷で沿岸航路封鎖されたらいよいよ物流がやばくなりそうだな

216名無し三等陸士@F世界:2017/05/04(木) 22:03:07 ID:uEA.LVEY0
やはりGW中に更新は厳しいか・・・

217名無し三等陸士@F世界:2017/06/04(日) 21:49:12 ID:SElSZ.AA0
シホールアンルの国の形状見ると北部が東西に長いから
南部に農業が集中してそうな形してるよね
分断された北部では食料配給制になったりしたりして
ケルフェラクの生産が遅れるのは工業地帯壊滅で遅れるのが目に見えてるけど
食料供給が減った場合ワイバーンやら軍馬の維持が難しくなりそう
シューティングスターのような輝かしい新兵器もありますが
橋を落とすためのAZON爆弾や命中率を5倍引き上げたK―14ジャイロ式照準器
小型でどこにでも落とせる焼夷カードなど新兵器は種類盛り沢山

島に取り残されたシホールアンル国民を本土に連れ帰るため難民船をやろうものなら沈められ
島に残る物なら食料不足の危機
行くも地獄帰るも地獄ですな
オールフェスじゃなくてリリスティが先に辛い決断をすることになるかも?

218ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/07/03(月) 19:50:41 ID:PM3/LMsM0
レスお返しいたします。

>>210氏 ルキィント、ノア・エルカ列島からの兵力転用も阻止したい米海軍としては、航路上にある船は全て標的ですから
軍民問わず沈めまくるでしょう。

>軍や人口の規模が大きいと飢餓作戦はいちばん堪えますよねえ
シホールアンルにもガッツリ効きますね。ほっとくと、餓死者が大量に出てエライ事になるでしょうね……

>>211氏 トドメを刺すのは当然ですよね(暗黒微笑

>>212氏 >>213氏も言われておりますが、まだ健在そうな陸上輸送路も、これからはアメリカ側が内陸部のインフラにも
徹底した爆撃を加えるでしょうから、遅かれ早かれ、陸上交通路も各所で寸断されるでしょう
そしてどんどんやせ細っていくシホールアンル軍……負け戦が込むと悲惨な物です

>>214氏 南部攻略は、連合側が持てる航空兵力をほぼ全力でつぎ込むでしょうから、3月半ばまでには片が付きそうです。
ただ、首都移転しても、加速度的に悪化するシホールアンルの国内状況を考えると、あまり効果が無いでしょうな

>>215氏 沿岸部から疎開する一般市民が激増するでしょうね。制海権もほぼ連合軍の手中にあるため、シホールアンル側は
連合側がいつでも上陸作戦を行う事ができると判断しており、戦々恐々としております
なんらかのアクションが加われば、沿岸部住民への避難命令も発せられる事でしょう。

>>216 更新できなくすみませんでした。今週中には行いますので、しばしお待ちを

>>217氏 大体そんな感じですが、農業地域は南部だけではなく、北西部や東部の辺り……大まかに言うと、南部地域に隣接していた
南寄りの地域が主な農業地帯です。
そして、その辺りは、近々戦火に巻き込まれるので……まぁ、食料自給率はこの年以降、大幅に下がる事になるでしょう

>オールフェスじゃなくてリリスティが先に辛い決断をすることになるかも?
最悪の場合
「降伏しても……構わんですか?」
というような判断が、現地司令官の権限で下されるかもしれないですね。

あと、掲示板のトップを見て驚いたのですが……
本家のスレができてて思わず幻を見ているのかと思いました。
どうしてまた…

219名無し三等陸士@F世界:2017/07/04(火) 22:29:51 ID:1cB0piDI0
返信乙です

シホールアンルはもういっぱいいっぱいですな(汗

220ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/07/04(火) 23:07:00 ID:PM3/LMsM0
こんばんは〜。これよりSSを投下いたします

>>219氏 それでも抗うシホールアンル。もっと痛めつけなければなりません

221ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/07/04(火) 23:09:14 ID:PM3/LMsM0
第284話 海上交通路遮断作戦(中編)

1486年(1946年)1月5日午前7時40分 ノア・エルカ列島東方540マイル地点

潜水艦キャッスル・アリスより発艦したSO-3Aシーラビットは、高度4000メートル付近を時速200マイルの
巡航速度で順調に飛行を続けていた。

「機長!機上レーダーの調子はどんな感じですか?」

キャッスル・アリス搭載機の機長を務めるニュール・ロージア少尉は、機体の左側下方の海域に目を凝らしていた所を、
ペアであるトリーシャ・クレイトン兵曹長に声を掛けられた。
ロージア少尉は顔をレーダースコープに向ける。

「バッチリ作動している。故障の心配は無いぞ」
「いいですね。このまま作動し続けて欲しいもんです」

クレイトン兵曹長の言葉に無言で頷いたロージア少尉は、レーダー範囲内に艦船の反応が無いか確認する。
彼らの機に搭載されている機上レーダーはAN-APS7と呼ばれる物で、米海軍の索敵機には標準装備となっている。
探知範囲は、水上目標なら最大で40キロ、航空目標なら最大で14キロとなっており、索敵範囲は前方160度方向に定められている。
ロージア機の任務は、機上レーダーも用いて、水上を航行しているであろう、シホールアンル軍護送船団を視認し、敵船団の編成を確認する事である。
敵船団索敵には、キャッスル・アリスの北方300マイルに位置するシー・ダンプティから発艦したシーラビットも参加しており、2機の索敵機が
南北から同時に獲物を探し求めている形になっている。
索敵範囲はキャッスル・アリスより方位230度方向の南西部を300マイルほど飛行した後、方位0度方向に反転し、100マイル北上。
その後、キャッスル・アリスが待機している元の海域まで飛行する。
総計700マイル(1260キロ)の長い索敵行であり、発艦から帰還に至るまでの経過時間は、最短でも3時間半、長ければ5時間はかかる予定だ。
とはいえ、これまでの経験でそれ以上の飛行時間を経験している2人には、慣れた索敵行であった。

「それにしても機長……2機のシーラビットで本当に敵の船団は見つけられますかね?」
「さあなぁ……俺としては、空振りに終わるように思える」

クレイトンの質問に、ロージアはさり気ない口調で答えていく。

222ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/07/04(火) 23:10:02 ID:PM3/LMsM0
「俺もお前も、このシーラビットに乗る前は母艦航空隊で経験を積んできているが、空母機動部隊が一度に放つ索敵機の数は、少なくとも10機以上だ。
ある時は、一度の索敵線に2機の索敵機を同時に飛ばして敵艦隊を探すこともあった。だが、時には索敵に失敗する事もある。10機以上の索敵機が
30隻以上の大艦隊を発見できん時もあるんだぜ?それを2機でやれと言うんだから、無茶にも程があるよ」
「機長の言う通りですね」

クレイトンは苦笑交じりの声でそう答えた。

「その索敵線の少なさを補うために、本国ではアイレックス級の同型艦が複数建造中と聞いています」
「今の所、公式には10隻のアイレックス級を揃える予定と言われているが……俺の知り合いから聞いた話だと、それより多い数の同型艦が
追加発注されたらしい」
「追加発注ですか……どれぐらいの数ですか?」
「さあ、正確にはわからんよ。知り合いも、同じく分からんと言って来たよ。だが……」

ニュールは頬を掻きながら言葉を続ける。

「俺達の国の事だ。最低でも20隻……いや、40隻作れと言っていても驚かんね」
「40隻ですか……アイレックス級はこれまでの潜水艦と違って建造工程が幾分複雑化してて、量産向きではないと聞いてますけど」
「それでも、量産しちまうのがこのアメリカだよ。エセックス級しかり、キトカン・ベイ級しかりだ」
「はぁ……」

クレイトンは生返事を返しつつ、実際にやりそうだと心中で思った。

「まぁ、実際に量産化されれば、潜水艦部隊の索敵範囲もぐんと広まりますし、作戦の幅も広がりそうですね」
「理にかなってはいるな。おっと、知り合いからはこんな話も聞いたな……なんでも、新型の巡洋艦が発注されたとか」
「えぇ……新しい戦闘艦がもう開発されるんですか?」
「ああ。なんでも、ウースター級をより強化した巡洋艦のようだな。手こずっていた新式主砲の開発が完了したから、それを主兵装にする
巡洋艦を早くも建造するらしい。」
「もしかして……デモイン級より強い巡洋艦ですか?」
「いや、主砲のパンチ力はデモイン級以下、それでいてウースター級以上とあるから、軽巡だとは思うがな」
「ふむ……あと、ウースターって、あの頭のいかれた対空艦ですよね。それの後継艦がもう……?」
「我が合衆国海軍は、先を読んでいるのかもしれんな」

223ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/07/04(火) 23:11:18 ID:PM3/LMsM0
ニュールの言葉を聞いたクレイトンは頭を捻りながら言葉を返す。

「先を読むにしても…わざわざ新しい軍艦を作る必要はあるんですかね」
「その辺りはお偉方しか分からん。造船所は船を作れと言われたら作り、俺たちのような下っ端は命令があれば、それらの兵器を操る。
それぐらいしか出来んさ」
「なにせ軍人だから……という事ですね」
「お、こいつ!俺の決め台詞をパクりやがって!」

ニュールは拳を振り上げて、目の前の防弾版を小突いた。
その音を聞いたクレイトンは笑い声をあげて、内心でしてやったりと喝采を上げていた。
取り留めのない会話を交わす2人だが、その間、彼らの目線は盛んに周囲に向けられる。
雑談を交わしつつも、2人は決して気を緩める事などはせず、針路上の敵護送船団を探し求めていた。


午前11時45分 ノア・エルカ列島東方540マイル地点

洋上に停止していた潜水艦キャッスル・アリスは、艦の右舷側に回り込んだ艦載機の着水を待っていた。
キャッスル・アリス艦長レイナッド・ベルンハルト中佐は、飛行長のウェイグ・ローリンソン大尉を隣に従えながらシーラビットの着水をじっと見守る。
シーラビットは充分に速度を落とすと、緩やかにフロートを海水に付け、1度は軽くバウンドするが、そのまま白波を蹴立てながらするすると減速していく。
やがて、シーラビットはキャッスル・アリスの右舷艦首側5メートルほどまで近づいてから洋上に停止した。

「何度見ても見事な着水だ」
「クレイトンは優秀な搭乗員ですからな。いつ見ても安心できますよ」

ベルンハルト艦長がそう評価すると、ローリンソンも幾分誇らしげな口調で相槌を打つ。
一見、愉快そうな口調で話す彼らだが、心の中ではやや不満足に感じていた。

「収容急げ!」

ローリンソン飛行長が指示を飛ばし、飛行科員がそれに従い、艦の乗員と共に艦載機の収容作業に取り掛かった。
格納庫から収容クレーンが出され、接舷したシーラビットを吊り上げるべく、機体の指定された箇所にワイヤーを括りつけていく。

224ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/07/04(火) 23:12:53 ID:PM3/LMsM0
準備が終わると、シーラビットはクレーンに吊り上げられ、慎重な動作でカタパルトの台座上へと運ばれて行った。


午後0時30分 キャッスル・アリス艦内

「ご苦労だった。下がっていいぞ」

ローリンソンはクレイトン兵曹長とロージア少尉から一通り報告を聞いた後、2人を下がらせた。

「飛行長、どう思うかね?」

ローリンソンは右隣に立っていたベルンハルトに声を掛けられると、溜息を吐きながら首を横に振った。

「予定された事ではあります。とはいえ……こうもあっさり空振りに終わると、ちと悔しい物がありますな」

ローリンソンは、海図台に置かれた海図を見据えながらベルンハルトにそう答えた。

「飛ばせる飛行機の数が多ければ、索敵の効率も上がるのですが」
「ま、案の定と言った所だな。それに、最初から敵船団が見つかる訳ではない。戦争をしているんだ……これも、結果の一つとして受け入れんと行かんさ」
「確かに」

ローリンソンはそう返しつつ、心中ではやれやれと呟いていた。

キャッスル・アリスとシー・ダンプティが行った航空偵察は、目標としていた敵護送船団を発見する事無く幕を閉じた。
2機のシーラビットは予定の航路を飛行したものの、目標は発見できぬまま母艦に戻ってきたのである。

「しかし……シー・ダンプティの艦載機が途中、機上レーダーの故障を起こしたのは痛いですな。おまけに、シー・ダンプティ機の針路上には
予想していなかった多量の雲が続いていたとも聞いています。もしかしたら」
「君の言いたい気持ちは分かる。だが、シー・ダンプティの艦載機は途中から雲の下まで高度を下げて偵察している。しかし、目標はそれでも
見つからなかった。やるべき事はやっているさ。だが……第1次索敵は誰が見ても失敗だよ」
「……索敵線を変更致しましょうか?」
「変更か……どれぐらいかね」

225ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/07/04(火) 23:13:35 ID:PM3/LMsM0
ベルンハルトが聞き返すと、ローリンソンは海図上に書かれた索敵線をやや北にずらした。

「第1段索敵ではこの針路上に敵影は見つかりませんでした。なので、北に50マイルほどずらし、第2段索敵でこの針路上を索敵してはどうでしょうか」
「ふむ……悪くない考えではある。だが、シー・ダンプティ機の索敵範囲はどうなるんだ?」
「シー・ダンプティ機は、偵察高度を変えて先程とほぼ同じ範囲を偵察させてはどうでしょうか。シー・ダンプティ機が飛行高度を変えたのは偵察行の
半ばを過ぎてからです。針路上の天候が先程と同様ならば、雲の下を飛ばして偵察させればよいと思います」
「そうは言うがな……シー・ダンプティの飛行科将校の考えもあるし、第一、こっちは命令する側ではない。出来るとすれば、君の言った案を伝えることぐらいだな」
「……では、シー・ダンプティ機の第2段索敵の飛行計画がどのようになっているか問い質してみましょう。無論、こちらの索敵計画も伝えてからですが」
「それがいいだろう。早速打ち合わせに入るとしようか……俺達の背後にいる僚艦8隻に任務をこなして貰う為にもな」

2人はそう決めると、通信員を呼んで索敵計画の打ち合わせに入った。


午後1時20分 キャッスル・アリス艦内

打ち合わせが一段落した後、ベルンハルトは通信室の近くにあるこじんまりとした一室を訪ねた。
室内の小さなテーブルの上に置かれた魔法石を前に、険しい表情を浮かべながら会話を交わす2人のカレアント人士官は、ベルンハルトを見るなり
席から立ち上がった。

「これは艦長」
「ああ、そのままでいい……して、どうだね。魔法石の具合は?」

ベルンハルトが問うと、右側の白い犬耳の魔導士官……カレアント海軍所属の魔導将校であるフィリト・ロイノー少尉が口を開いた。

「魔法石の出力は、ひとまず安定の数値を出しているのですが、唐突に出力が不安定になる事が多くなっています。一応、このまま使うのならば、
2時間の連続使用には耐えられるでしょうが……」
「一応、持ってきた予備の魔法石が1つありますので、それを代わりに使う事も考えましたが、機能停止状態の魔法石は、活性化するまでに1日半の
時間を要すと、ミスリアル側から説明されています」

ロイノー少尉の隣にいる、茶色と黒が混じったまだら模様の長い猫耳のカレアント人士官、サーバルト・フェリンスク少尉も会話に加わった。

226ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/07/04(火) 23:14:20 ID:PM3/LMsM0
「恐れながら……小官としましては、不安要素を取り除くには、不具合のある魔法石は使用せず、予備の魔法石に取り換えてから作戦を継続するのが
よろしいのではないかと思いますが」
「……ロイノー少尉も同じ意見かね?」

ベルンハルトは真顔でロイノー少尉を見つめる。

「私も同じです。先ほどお話を聞きましたが、まだシホールアンル軍護送船団は発見できていないようですな。僭越ながら申し上げます。ここは
フェリンスク少尉の言う通り、魔法石を変えて、万全な体制で臨まれた方が良いと、私も思います」
「……参ったな」

ベルンハルトは渋面を浮かべ、左手で自らの後頭部を掻いた。

敵船団襲撃は、2隻のアイレックス級潜水艦と16隻の通常型潜水艦と共同して行う予定だが、事前の打ち合わせでは、シー・ダンプティを基幹とする
第1群とキャッスル・アリスを基幹とする第2群、それぞれ9隻に別れており、個別で敵船団を攻撃する事になっている。
この2個潜水艦隊は南北に300マイル離れており、群旗艦を務める司令潜水艦が定期的に連絡を取り合っていた。
キャッスル・アリスは、第2群の目として航空偵察を行い、敵船団を発見した場合は後方40マイルに展開している潜水艦8隻を付近に呼び寄せ、敵船団を
視認範囲内まで近づけた後は、キャッスル・アリスがまず敵船団に雷撃を行い、敵護衛艦の注意を引き付けたうえで、第2群本隊8隻で波状雷撃を掛けて
敵船団の漸減を図るという計画が立てられていた。

なぜこのような計画が立てられたのか。
それは、生命反応探知妨害装置の不足に起因していた。
ミスリアル側から貸与された生命反応探知妨害装置は、敵対潜艦の追尾を振り切れる画期的な魔法兵器であるが、生産数が少ないのと、魔法石の各種調整には
同盟国の魔導士が共に乗り組む必要があるため、一部の潜水艦にしか配備されていなかった。
アイレックス級は全艦が、同盟国の支援の甲斐あって探知妨害装置を搭載する事ができたため、同級に属するシー・ダンプティとキャッスル・アリスは、
今回の作戦では敵船団攻撃後に、護衛艦を一部なりとも誘引して本隊の負担を軽減する事が求められていた。
しかし、それを完璧にこなす為には、探知妨害装置が入力された魔法石が、予定通りに探知妨害魔法を発し続ける事が求められる。
もし、敵の生命反応探知魔法を妨害できなければ、キャッスル・アリスは複数の敵護衛艦に追い回され、最悪の場合撃沈されるであろう。

「魔法石がしっかり働いてくれないとまずいんだがなぁ……何しろ、この辺りの水深は何故か、あまり深くないから、深深度に潜って攻撃を回避する事も難しい。
魚雷も本隊の搭載している電池魚雷と違って、従来の尾を引きまくる奴を使っているからな……どうしたものか」

2人のカレアント軍士官は、目の前で渋面を浮かべ、喉を唸らせながら苦悩しているベルンハルトを見て、自然と悪い事をしてしまったと、心中で感じていた。

227ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/07/04(火) 23:15:09 ID:PM3/LMsM0
「……艦長、我らが付いていながらこのような様になってしまい、深く……お詫び申し上げます」

ロイノーはそう言いながら、相棒のフェリンスクと共に頭を下げる。
それを見たベルンハルトは、さり気ない動作で右手を振った。

「いや、別に貴官らが悪い訳ではあるまい。貴官らはよくやってくれているよ。普段から魔法石のチェックも欠かさず行い、本分を尽くしているばかりか、
うちの手伝いまでやってくれているからな。別段、謝る必要は無いぞ」

ベルンハルトは、快活さを感じさせる口調でひとしきり言った後、少しばかり表情を歪めながら魔法石を指差した。

「責があるとすれば、こんな危なっかしいモノを手渡したミスリアル側の責任者だろうな。これで事が起きたら、そいつをうちの艦に呼んでから、
魚雷発射管に詰め込んでやるさ」
「エルフを魚雷発射管に詰め込むのですか……それはまた……怖いですなぁ」

さらりと言ってのけたベルンハルトに対し、2人は顔をやや引き攣らせた。

「おっと……ここは笑う所だぞ?」

ベルンハルトが苦笑しながら言うと、2人も表情を和ませた。

「ひとまず、魔法石の状況は掴めた。引き続き、魔法石の監視と調整を行ってくれ」
「はっ。何かありましたら、すぐにお伝えします」

フェリンスクがベルンハルトにそう返答し、隣のロイノーはベルンハルトの顔を見ながら無言で頷いた。


同日 午後2時 キャッスル・アリス艦内

「飛行長、機体の状況はどうなっている?第2段索敵は出来そうか」

ベルンハルトは海図台の側で航海長とひとしきり話し合った後、目の前に現れたローリンソンを見るなり、おもむろに声を掛けた。

「機体の状況は万全です。帰還後に整備を行いましたからな。燃料補給も間もなく終わります」

228ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/07/04(火) 23:16:06 ID:PM3/LMsM0
「そうか。本日2回目の航空偵察は準備を終えつつあるな」

ベルンハルトは満足気に頷く。

「ところで艦長。群司令からは何か言われましたか?」
「ああ、魔法石の話か……」

ベルンハルトは、魔法石の状況を確認した後に、後方の潜水艦ベクーナに座乗する第2群司令ローレンス・ダスビット大佐に一連の報告と、
今後の動向についての指示を仰いでいた。

「司令からは、魔法石の動作が完全に停止する恐れが無いのならば、作戦を続行せよと命じられたよ。つまり、魔法石の交換はやらずに任務に当たれという事さ」
「それはまた……大丈夫でしょうか?」
「不安しか感じんが……まぁ、やってやれん事はないだろう」

ベルンハルトは腕組しながら、ローリンソンに言う。

「それに、万が一魔法石が使えなくなったとしても、戦えん訳ではない。あの便利な兵器が出る前は、もっと悪い環境で敵と戦った事もある。
その時の経験を活かして立ち回るだけさ」
「……いやはや、艦長は慎重なのか、大胆なのか分かりませんなぁ」

あっけらかんとした口調で言うベルンハルトに対し、ローリンソンは唖然としながらそう言い放った。

「まぁ……私の親戚がUボート乗りだったからな。爆雷攻撃に遭遇しやすい血筋を受け継いでいるのかもしれん」
「うちらクルーからしてみれば最悪な血筋かもしれませんな。潜水艦乗りにとって、爆雷攻撃を食らう事は死の一歩手前か……その先に直結するかの、
2つに1つですから」

傍で聞いていたボールドウィン航海長が、毒のある言葉で返した。

「言いたい事を言える部下を持てて幸せだよ」

ベルンハルトは苦笑交じりに、ボールドウィンへそう言った。

「艦長……時間ですな」

229ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/07/04(火) 23:18:06 ID:PM3/LMsM0
ローリンソンは腕時計を確認してから、艦載機発艦の時間が迫っている事を伝える。

「もうそんな時間か。よし、上がろう」

ベルンハルトは頷くと、ローリンソンと共に艦橋に上がっていった。
彼らが艦橋に上がるまでの間、キャッスル・アリスの甲板上では、早朝と同じように整備と燃料の補給を終えた艦載機がカタパルト上に引き出され、
暖機運転を開始していた。
艦橋に上がったベルンハルトは、上空を見渡してから、顔に渋面を浮かべた。
キャッスル・アリスの上空には雲が張っており、所々切れ間が見えてはいるのだが、航空偵察にはあまり不向きな天候に思えた。

「飛行長、どう思うね?」

彼は、空に指差しながらローリンソンに聞く。

「雲の量が多くなってますなぁ……朝と比べると、状況は幾分悪くなってます」
「……わが合衆国海軍気象部の予報官によれば、この海域の天候は2月辺りまで良好の見込みと言っていたが」
「この異世界の天候予測なんぞ、はなから当てにしとりませんぜ。何しろ、気象データの蓄積がまだまだ足りん上に、前にいた世界よりも天候の
変わり具合が異様ですから」

それを聞いたベルンハルトは、苦笑しながら肩を竦めた。

「ああ、まさにそれだ。晴れ間が見える分、天候は良好…と、言えなくもないがね」
「まぁ……そうとも取れますな」

ローリンソンも苦笑いしながら空を見上げた。
心なしか、風もやや強くなっているようであり、艦首方向からふぶく風の音も幾分大きくなっているように思えた。
程無くして、しばしの休息を終えた2名の搭乗員が艦橋に上がってきた。

「飛行長!」
「おう、ご苦労」

ローリンソンとロージア少尉、クレイトン兵曹長が互いに敬礼をする。

「これから第2段索敵に行ってもらうが、索敵の手順、飛行経路は先ほど話した通りだ。無事に帰還する事を祈っているぞ。艦長からも何かありますか?」

ローリンソンはベルンハルトに顔を向け直して言う。

「いや、私からは特にないが……私も飛行長と同じく、諸君らが無事に帰還する事を祈っている。よろしく、頼む」
「無論であります。それでは、行ってまいります」

ロージア少尉は、さり気ない口調でベルンハルトにそう返すと、敬礼を送ってから甲板に降りた。
そして、クレイトン兵曹長と共に艦載機に乗り、朝と同じようにカタパルトから射出された。
シーラビットはキャッスル・アリスの周囲を旋回した後、未だに見ぬ敵護送船団を求めて、一路、西方へ向かっていった。

230ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/07/04(火) 23:19:58 ID:PM3/LMsM0
同日 午後2時20分 ノア・エルカ列島東方沖150ゼルド(280マイル)地点

小休止のため、艦内の食堂に下がっていたネルス少佐は、小走りで艦橋に上がり、艦長席に座っていた駆逐艦フロイクリ艦長、ルシド・フェヴェンナ中佐に
やんわりと声を掛けた。

「艦長、今戻りました」
「やや遅めの昼飯は美味かったかな?」

フェヴェンナ中佐は、微かに笑みを浮かべながらネルス副長に聞く。

「ええ、美味でしたよ。空きっ腹には程よく効きましたな。本当なら、もう少し早い時間に昼食を済ませていたはずですが……」
「いきなり来たからな。ヤツが」

フェヴェンナ艦長は、右手の親指を上に向けながら言った。


今から5時間前……午前9時頃の出来事であった。
それまで、護送船団は5リンル(10ノット)の速力で東に向けて航行していた。
対潜警戒を行いながらの航海であるから、どの艦も一定の緊張を保ちながら航行を続けていたが、この海域にはまだ米潜水艦が跳梁していない事もあって、
ある程度のんびりとした雰囲気がどの艦でも流れていた。
しかし、その軽やかな空気は、船団の一番北側を航行していた第51駆逐隊の駆逐艦ギョナスチの緊急信によって瞬時に吹き飛んだ。

「緊急!船団の北東方面の空域に敵機らしきものを確認せり!敵機は現在、雲の中に隠れた模様!」

全艦に飛び込んだこの緊急信によって、護送船団の空気は一気に張り詰めたものとなった。
駆逐艦ギョナスチからは、更に

「敵機らしき物、再度視認!距離、10000グレル!(2万メートル)」

という通信が入り、その後も2度、敵機視認の報告が飛び込んできた。
最初の通信が伝えられてから5分後、護送船団旗艦から速力を12リンル(24ノット)に上げ、南東方面に一斉回頭せよとの命令が伝わり、
船団は針路を南東寄りに変えた。
最初の敵機視認の報が伝えられてから15分後、ギョナスチからの追加報告は入らなくなった。
この時点で、敵機と思しき機影は、東の彼方に向けて飛び去っており、船団の視認範囲内にはいないと判断された。

231ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/07/04(火) 23:20:28 ID:PM3/LMsM0
それから5時間ほどが経った今……護送船団の各艦艇では、殆どの乗員が緊張に顔を引きつらせており、このフロイクリの艦内でもピリピリとした
空気に包まれていた。

「副長。やはり、みんな緊張しとるな」

フェヴェンナは眉間にしわを寄せながら、ネルスに話しかける。

「無理もありません。我が艦隊は敵機に発見されたのですから」
「発見か……」

フェヴェンナは顎を撫でながら、喉を唸らせる。

「……どうも腑に落ちんな」
「と、言われますと……?」

艦長の発した意外な言葉を聞いたネルスが、すかさず問い質す。

「なぜ、敵機は船団の上空で旋回しなかったのだ?」
「旋回……ですか」
「そうだ。偵察機は、目標を見つけた時は、その目標の詳細をなるべく正確に母艦に伝える必要がある。そのためには、まずは船団にもっと接近し、
必要とあれば上空を旋回して規模と編成を確認するはずだ」
「そういえば……これまでに会った米軍の偵察機は、よく雲の外に出て、我が方の編成を調べていましたな」

ネルスは過去の経験を思い出しながら、艦長にそう返した。
竜母機動部隊の護衛艦として活動した時期が長いフロイクリは、よく輪形陣の外郭に配備されており、そこから米軍の艦上偵察機が偵察飛行を行う様子を
幾度となく視認している。
敵の偵察機は、護衛のワイバーンが迎撃に向かえばすぐに退散していったが、いずれもが雲の外に出て、念入りに艦隊の編成を調べていた。
偵察機がすぐ逃げるのは、長居すれば護衛のワイバーンに撃墜されるからであり、別の戦域では、護衛機を持たない船団が敵の偵察機に四六時中
張り付かれたという情報もある。

「敵が船団を見つけていれば、必ず雲の外に出て来ただろう。何しろ……丸裸なのだからな。でも……敵機は雲の外から出てこなかった」

232ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/07/04(火) 23:21:14 ID:PM3/LMsM0
「もしかして……敵機は船団を発見していない……と?」
「過去の経験から照らし合わせれば、必然とそうなる」

フェヴェンナは空を見据えた。

「ギョナスチから伝えられた情報では、雲と雲の間を飛行していた敵機をたまたま視認し、それがあたかも、船団が敵機に見つかったという誤解を
生んでいるのかもしれん」
「しかし艦長……こちらが敵機を見つけたのならば、敵機もこちらを見つけたのではないでしょうか?」
「雲と雲の間を飛行しているだけで、船団の詳細が分かる筈がない。ましてや、敵機と船団の距離は、10000グレル(2万メートル)を割った
事が無く、最後の報告では15000グレル(3万メートル)まで離れていたと伝えられている」

フェヴェンナは顔をネルスに向けた。

「これは、“獲物を見つけた狩人”の動きではない」
「では……船団の存在は敵にまだ知られていない、という事ですか」
「そうなるな」

ネルスに対し、フェヴェンナはそう断言した。

「とはいえ、敵が第2の索敵を行う可能性もある。もしそうなれば、現針路を航行していたままの船団は、敵の第2次索敵で発見されてしまうだろう。
旗艦から命じられた進路変更は正しい判断だ」
「なるほど……では、船団は難を逃れたという訳ですな」

ネルスは安堵の表情を浮かべながらそう言ったが、フェヴェンナは真顔のまま言葉を返す。

「そうであると、いいのだがな」

233ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/07/04(火) 23:22:05 ID:PM3/LMsM0
午後4時 ノア・エルカ列島東方沖300マイル地点

キャッスル・アリスから発艦したシーラビットは、洋上に雲が多い事を考慮し、高度2500メートル付近を飛行していたが、目標である護送船団を
発見できぬまま往路の偵察行を終え、反転して母艦に引き返しつつあった。

「……まだ見つからんか」

後部席でレーダーに視線を送ったロージアは、依然として船らしき反応を捉えない事にやや苛立っていた。

「機長、やはり見つかりませんか?」
「ああ。レーダーにも反応が無い」

クレイトンにそう返したロージアは、無意識のうちに舌打ちする。

「母艦まであと240マイルか……あと1時間半以下の距離だな」

ロージアはそう言いながら、チャートに印を入れていく。
第2次索敵は、第1次索敵のよりも北側へ索敵範囲をずらして行われている。
これは、第1次索敵で機器の故障などにより、予定通りの索敵を行えなかったシー・ダンプティ機の補填として計画され、実行したものだが、
今の所、キャッスル・アリス機はこの範囲内で敵らしき船を発見できていない。

「参ったな……」

ロージアは眉間に皴を寄せながらも、目線は周囲を見回していく。
雲の下を飛行している水上機は、周囲に海を見渡せる事ができる。
だが、その四方には未だに、敵らしき船の影すらない。
今しも無線機から、シー・ダンプティ機が敵を発見したという朗報が入るかと期待するが、その期待が叶う事は、未だに無いままだ。
クレイトンとロージアが、悶々とした気分に苛まれながらも、時間は無情にも過ぎていく。
2人の搭乗員は、それでも完璧な動作で索敵を続ける。
しばらく時間が経ち、ロージアはレーダーから目を離し、目視で周囲の索敵を行っていく。
一通り、辺りを見回してから、レーダーに目線を移す。
機上レーダーには、依然として反応は映らない。

234ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/07/04(火) 23:22:43 ID:PM3/LMsM0
「機長。母艦まであと200マイルです」

耳元のレシーバーに、クレイトンの定時報告が入る。
チャートに目を移し、手書きで機位を記していく。

「あと1時間か……こりゃ、第2次索敵も空振りに終わるかもしれんな」

記入を終えると、彼はレーダーに目を移す。
レーダースコープには相変わらず影も形もなく、端にシミのような物が映った時には、目線を機の左側に向けており、そこから後方、右側と
視線を巡らせていく。

「機長、やはり……索敵は失敗ですかね」
「ああ。失敗だな。やはり……偵察機は多く揃えんと効率が悪いな」

クレイトンの質問に、ロージアは溜息混じりの声で答える。
ロージアは気持ちを改めるため、深呼吸をしてから索敵を続けようとした。
その時、彼の脳裏に先ほどの光景が思い起こされた。
レーダーから目を離した時……スコープが端に着いた時、一瞬だけシミのような光点が見えていた。
その後、ロージアは周囲を索敵した後に再度レーダーを見たが、反応は無かった。

(そう……“シミ”すら無かった……!?)

ロージアは心中でそう呟いた直後、急に目を見開き、機の左側……北の方角に顔を向ける。
北側の海域は一瞬、何も見えないように思えるが、よく目を凝らしてみると、その方角には、雲がより一層低く垂れ込んでいる。
周囲の雲は、大体3000メートルから4000メートルの間に浮いているが、その方角の雲は3000メートルから2000メートル付近まで降りているように見える。

「……クレイトン!燃料はあとどれぐらいだ?」
「いつも通り、増槽タンクのみならず、胴体の燃料タンクも満タンで出撃しましたから、あと500マイル(800キロ)は飛行できますが……どうかしましたか?」
「すまんが、北に針路を変えてくれ。方位は340度。急げ!」
「……!アイ・サー!」

235ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/07/04(火) 23:23:23 ID:PM3/LMsM0
先ほどから打って変わったロージアの口調に、何かを察したクレイトンは、言われるがままに機首を北に向けた。

「もしかしたら、目の錯覚かもしれん。だが……今まではあの微かな“シミ”すら無かった。燃料にはまだ余裕がある。例え何も無かったとしても、
母艦に帰れるだけの燃料は残る筈だ」

ロージアはそう呟きつつも、期待に胸を膨らませながら、その時が来るのを待った。




それから10分ほどが経った。

午後4時30分、機上レーダーが明確な反応を映し始めた。

「捉えたぞ。方位335度、距離25マイル!」
「機長、こっちも視認しました!雲の下に隠れてますぜ!」

高度2000メートルまで降下したキャッスル・アリス機は、前方の洋上を行く敵護送船団の姿を目視で確認していた。

「敵の数は……3隻ほど見えます!」
「レーダーの反応は既に10隻ほど捉えている。もっと近付くぞ!」

ロージアの指示に従い、クレイトンは速度を上げて、敵護送船団との距離を詰めていく。
敵船団との距離を詰める中、ロージアは敵船団発見の報告を母艦に伝え始めていた。
それからしばらくして、キャッスル・アリス機は敵船団の全容が明らかになる位置まで接近を果たした。

「機長、護衛艦が発砲してきました!」
「近付きすぎるな!撃ち落とされるぞ!」

ロージアは切迫した声でクレイトンに注意を促した。
敵弾はキャッスル・アリス機から300メートル離れた右側下方で炸裂し、黒煙が沸いた。

236ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/07/04(火) 23:24:13 ID:PM3/LMsM0
距離は敵船団の外周から13000メートルほどを開けているが、念のため、15000メートル付近まで下がる事にした。
敵艦は盛んに対空砲弾を放ってくるが、キャッスル・アリス機の至近で炸裂する弾は1発も無かった。
クレイトンは、敵船団との距離を保ちながら、ゆっくりと外周を回っていく。
最初は敵竜母が護衛に付いていると思われたが、見た所、敵船団には護衛艦と輸送艦しかいないため、敵ワイバーンの存在を気にする事無く、
敵船団の詳細を確認する事ができた。

「敵船団は駆逐艦、輸送艦総計40隻前後。そのうち、護衛艦は12隻、残りは輸送艦の模様。母艦との距離は200マイル、方位300度。
速力は約20ノット。敵船団は同針路を依然として航行中なり」

ロージアは、敵船団の編成と針路、推定速度を事細かく報告していく。
程無くして、報告を終えたキャッスル・アリス機は船団の上空を1周してから帰途に就こうとした。

「機長、やりましたね!」
「ああ。ビンゴだ。失敗に終わるかと思ったが……どうやら、運に見放されていなかったようだ」
「報告も終わりましたし、帰還しますか?」
「ああ……少し待て」

ロージアは即答しようとしたが、この時、頭の中で何かが閃いた。
しばし考えてから、彼はクレイトンに次の指示を飛ばし始めた。


午後4時50分 ノア・エルカ列島沖東方170ゼルド(318マイル)地点

「敵機、北東方面に遠ざかります」

駆逐艦フロイクリの艦橋では、フェヴェンナ艦長とネルス副長は、緊張に顔を強張らせながら顔を向け合った。

「副長、最悪の事態だな」
「ええ……旗艦からはまだ何もいって来んようですが」

フェヴェンナは眉を顰めながら、旗艦のいる方角に顔を向ける。

「なるべく早く命令を出して欲しい所だが……まぁ、司令も心中穏やかではないのだろう。昨今の経験が浅いのなら、今の心理状態で素早く
命令を下すのは、容易な事ではあるまい」

237ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/07/04(火) 23:25:00 ID:PM3/LMsM0
フェヴェンナは憮然とした表情のままネルスにそう返した。
この時、魔導士官が艦橋に入室してきた。

「艦長!旗艦より通信であります!」

フェヴェンナは手渡された紙を一読してから、複雑そうな表情を浮かべた。

「艦長、旗艦の司令は何と言われているのです?」
「全艦、別命あるまで現在の針路、並びに、速度を維持せよ、との命令だ」
「それは……」

ネルスもまた、眉間に皴を寄せつつ、艦長から差し出された通信文を手に取った。

「恐らく、敵の偵察機は水上機だ。そして、水上機という事は……例の航空機搭載の潜水艦がいるに違いない。これが敵の空母なら、偵察機の
下腹にあんなアシが付いている筈がない」
「船団の針路や航行速度を変更するように意見具申してはどうでしょうか?今のままだと、敵に先回りされる危険が大いにあるかと」
「一応、私もそうするつもりだ。だが……敵の偵察機は北東方面に向けて帰還していった。それはつまり、午前中に遭遇した同じ偵察機が
索敵範囲を変えて、こちらを追って来たという事になる。とはいえ、距離からして、敵もあまり近くにいるとは思えない」
「では……船団は……?」
「司令は北東に居る敵潜水艦部隊の追跡を逃れるため、1日程は南下を続けるかもしれんな」

フェヴェンナはネルスにそう言った後、一呼吸おいてから言葉を付け加えた。

「高速輸送艦様々と言った所ではある。偽装対空艦の元となった船体だ。こういった所で速さが生かせるのは流石だな」
「最高速力は13リンル(26ノット)まで出ますからね。おまけに量産向きの船体ですから数も多い」
「80隻の高速輸送艦は、この海上交通路維持には欠かせない存在と言える。最も……」

フェヴェンナは真顔のまま前方を見据える。

「敵にとってはただの餌にしか見えんだろうな」
「ひとまず、南下を続ければ敵潜水艦は振り切れそうですな」

238ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/07/04(火) 23:26:07 ID:PM3/LMsM0
「速度はこっちが速いからね」

ネルスにそう返答した後、フェヴェンナは艦長席を立ち、ゆっくりとした足取りで左舷側の張り出し通路に歩み出た。
通路には、冬の冷たい海風が強く吹いており、防寒着を着ているとはいえ、体が少しばかり震えた。
上空の太陽は、現在の時刻が夕方に近いとあって早くも傾きつつある。

「今日の日没は午後5時30分となっています」
「ふむ……それにしても、今日の夜も冷えそうだな」

後ろから声を掛けてきたネルスに、フェヴェンナは単調な声音で答えた。

「しかし、このまま現針路を維持してもいいのでしょうか。敵は潜水艦部隊のみではないような気がします」
「エセックス級空母を擁する敵機動部隊が近くにいるかもしれない、と思っているのだな?」
「このような大船団を一気に叩き潰すのであれば、空母機動部隊で殴り込む方が、効率が良いですからな」

それを聞いたフェヴェンナは頭を2度、横に振った。

「ま、成るように成れ、さ」


その後、船団は南下し続けたが、午後6時には偽装針路を取るため、一路南東方面に転舵し、10リンル(20ノット)の速力で航行し続けた。


午後6時20分 ノア・エルカ列島沖東方530マイル地点

護送船団を発見したキャッスル・アリス機は、一時北東方面に離脱したが、離脱から40分後には針路を母艦へ向けていた。
その頃には日が落ち、辺りは真っ暗闇となった。
母艦であるキャッスル・アリスは、艦載機を誘導するために電波を発信したため、クレイトンとロージアの乗る偵察機は、誘導電波に沿って母艦へ戻る事ができた。
午後6時には、機上レーダーがキャッスル・アリスを探知し、クレイトンはその艦影を目標に飛行を続けた。

「機長、前方下方に明かりが見えます!母艦です!」
「OK。こっちからも見えたぞ」

239ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/07/04(火) 23:26:49 ID:PM3/LMsM0
クレイトンが喜びの声を上げるのを耳で聞きつつ、ロージアは平静さを保ちながら次の指示を下していく。

「夜間着水になる。訓練通りに、慎重にやってくれよ」
「勿論です。では、行きますよ!」

クレイトンの掛け声とともに、機体が母艦の近くに向けて速度を上げていく。
程無くして、母艦上空に到達すると、クレイトンは愛機の速度を緩めつつ、上空を旋回する。
2度、3度と旋回を繰り返すうちに、速度は更に緩まり、クレイトンは慎重に期待を操りながら、着水準備に入った。
エンジンのスロットルを絞り、機体を水平に保ちながら、ゆっくりと下降していく。
着水の瞬間は最も緊張する時だ。
着水事故が起きた時のために、2人は風防ガラスを開ける。
外から冬の冷たい風が容赦なく吹き込み、2人の体が急速に冷えていく。

「今回も、上手く行ってくれよ」

ロージアは寒さに震えつつも、小声で着水成功を願う。
空母に乗っていた時は、着艦時に着艦フックがワイヤーを捉えてくれれば、強制的に減速する事ができた。
しかし、水上機は、常にうねりを伴い、安定しているとは言えない海上に降りなければならないため、着水は非常に難しい。
訓練中に、僚機が着水に失敗して全損事故を起こしたのを見ているロージアは、空母艦載機とは違った難しさがある事を、真に理解していた。
機体の右手に、母艦が見えてきた。
真っ暗闇の中にサーチライトで位置を知らせるキャッスル・アリスの姿は、心の底から頼もしいように思えた。

「着水します!」

クレイトンからそう伝えられると、ロージアは万が一の時に備えて、体を身構えた。
唐突に機体下部から突き上げるような衝撃が伝わる。周囲からは、フロートが海水を切り裂く音が響いて来る。
ドスンという衝撃が伝わると、次は機体が一瞬だけ浮いて軽やかな浮遊感を感じたが、すぐにまた下部から衝撃が伝わり、そこからこすり続けるような音と
振動が機体を震わせ続ける。

240ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/07/04(火) 23:27:35 ID:PM3/LMsM0
フロートから水しぶきが上がり、海水の一部は操縦席や後部席にまで振りかかってきた。
着水からそう間を置かぬ内に、2人の機体はキャッスル・アリスのほぼ右真横の位置で停止した。

シーラビットが艦の右側20メートルの位置に停止すると、ベルンハルト艦長が矢継ぎ早に指示を飛ばし始めた。

「艦載機収容急げ!見張り員、周囲の警戒を怠るな!ここで敵に襲われたらあっという間にやられるぞ!」

ベルンハルトの指示に急き立てられるかのように、艦載機の収容は順調に行われ、程無くして、シーラビットは艦内に収容された。
収容作業を見守ったベルンハルトは、艦橋から司令塔に降りた所で、通信員から1枚の紙を手渡された。

「艦長、群司令より命令であります」
「ご苦労」

ベルンハルトは、紙面に書かれた命令文を見た後、深く頷いた。

「さて、遂に本番か……この先どうなる事かな」

彼は、そうぽつりと呟いた後、艦内放送を行うため、マイクを手に取った。

241ヨークタウン ◆.EC28/54Ag:2017/07/04(火) 23:28:10 ID:PM3/LMsM0
SS投下終了です

242名無し三等陸士@F世界:2017/07/05(水) 16:49:27 ID:brS9mKss0
うおー待ってた甲斐があった
作者超乙

243名無し三等陸士@F世界:2017/07/05(水) 21:08:29 ID:dr5pgCdc0
大雨特別警報
num.to/814977904859


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