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アメリカ軍がファンタジー世界に召喚されますたNo.15
1
:
名無し三等陸士@F世界
:2016/10/03(月) 01:41:59 ID:9R7ffzTs0
アメリカ軍のスレッドです。議論・SS投下・雑談 ご自由に。
アメリカンジャスティスVS剣と魔法
・sage推奨。 …必要ないけど。
・書きこむ前にリロードを。
・SS作者は投下前と投下後に開始・終了宣言を。
・SS投下中の発言は控えめ。
・支援は15レスに1回くらい。
・嵐は徹底放置。
・以上を守らないものは…テロリスト認定されます。 嘘です。
875
:
ヨークタウン
◆oyRBg3Pm7w
:2025/02/28(金) 22:22:57 ID:t0EWw3k.0
彼は、予想される敵の激しい対空砲火に、思わず身が震えそうになった。
そんな中、先行していた対艦攻撃役のワイバーン隊が敵機動部隊へ向かい始めた。
メリヴェライカ大佐の率いる954空中騎士隊は、早くも攻撃を開始するようだ。
「こちら隊長機だ。これより、敵機動部隊に対して攻撃を開始する。各機、低空に下りて目標へ接近せよ。我が隊の目標は……輪形陣中央に位置する
敵エセックス級正規空母だ。先頭の大型空母は硬すぎるから無視しろ!護衛隊は敵艦隊の至近まで雷撃隊の援護に務めよ!」
「「了解!」」
ハウルストの命令を聞いた各機が、次々に行動を開始した。
ハウルストの率いる第4攻撃飛行団36機は、メリヴェライカ隊を追うように機首を敵機動部隊へ向けていく。
眼前に敵機動部隊の輪形陣が見え、徐々に接近しつつある中、唐突に前方やや遠くを行くメリヴェライカ隊が幾つかの小編隊に別れ始めた。
「隊長!954隊がいきなり分散し始めました!」
「何だと?」
ハウルストはケルシクニの報告に思わず耳を疑った。
まだ敵艦隊との距離は開いており、編隊を分けるのはまだ早い。
しばらくは各隊と纏まったまま飛行を続けるのかと思っていたのだが……
ハウルストの疑問は、瞬時に打ち払われた。
これまた唐突に、敵輪形陣の一角から発砲炎が煌めいたのだ。
それから程なくして、分散しつつあるメリヴェライカ隊の周囲に幾つもの空中爆発が起こった。
爆発光は計9個であり、それぞれが爆炎と共に無数の濃い白煙を噴き出していた。
それまでには、大編隊を解いて幾つもの小編隊に分散していたメリヴェライカ隊であったが、それでも運の悪い小編隊が2つ巻き込まれてしまった。
「畜生!ありゃ敵戦艦から放たれた対空弾だぞ!」
「え!?敵戦艦からですか!?」
「敵との距離はまだ8ゼルド(24キロ)以上もある。あんな遠距離から届く弾は戦艦の主砲弾しかない」
ハウルストの答えを聞いた部下は、思わず絶句してしまった。
そして、ハウルストもまた、背筋が凍り付く感覚に襲われていた。
(敵はメリヴェライカ隊に続いて飛行している俺達も見つけている。もしかしたら、未だに纏まった編隊を組んでいる俺達に狙いを定めている可能性が……!!)
「各機に告ぐ!敵機動部隊の戦艦が遠距離対空射撃を開始した。敵はこちらの編隊も目標にする可能性がある。今のうちに各中隊は小隊ごとに分離し、
敵の遠距離射撃を回避せよ!」
「「了解!」」
各機から素早い応答があり、ハウルスト隊もメリヴェライカ隊に習って編隊を解き始めた。
魚雷を抱いた攻撃型ケルフェラクが重々しそうに機体を傾け、右や左に下降し始める。
876
:
ヨークタウン
◆oyRBg3Pm7w
:2025/02/28(金) 22:23:34 ID:t0EWw3k.0
それぞれの中隊が3機1組の小編隊に別れつつあったが、その半ばで恐れていた事態が起きてしまった。
ハウルストの直率する第1中隊と、その隣を飛行していた第2中隊の間に次々と空中爆発が沸き起こった。
強烈な爆裂音と共に無数の白煙が四方八方に飛び散ってきた。
ハウルストの第1中隊には、3発が15〜30メートル離れた地点で炸裂し、ハウルスト機を含む複数の機体が弾片を浴びてしまった。
ハウルストは炸裂の瞬間、無意識のうちに機体を右に傾けたが、幾つかの白煙が機体にぶち当たった。
その瞬間、主翼や胴体に強烈な金属音が鳴り、操縦桿越しに強い衝撃が伝わり、思わず手を離しかけてしまった。
「くそ!バランスが崩れる!」
ハウルストは必死に耐えて、操縦桿を離さず、機体のコントロールを維持し続けた。
何とか水平飛行に戻ると、彼はすぐさま機体の状況確認に入った。
「大丈夫だ……何とか操縦はできる。致命傷は避けられたようだ」
ハウルストは愛機の損傷具合を確かめたが、操縦には何ら影響がない事が確認できたため、一瞬安堵した。
その後、彼は部下達の安否確認に移った。
「各隊!被害状況知らせ!」
「隊長!第2中隊は4機が被弾しました!うち1機に被害大!何とか飛べていますが、攻撃に参加できるかどうか……」
「こちら隊長機、戦闘行動に大きく支障を来たしているのならすぐに引き返せ。無駄に死ぬ事はない」
「了解。該当機には帰還を命じます」
ハウルストと会話を終えた部下の第2中隊長は、損傷の激しい1機に帰還を命じた。
この他に、ハウルストの直率中隊でも1機が撃墜され、ハウルスト機も含む3機が損傷していたが、損傷機は攻撃行動に参加可能と判断されたため、
残存の雷装機22機は敵機動部隊へ向けて前進を続けた。
敵戦艦からの遠距離対空射撃は、ハウルスト隊も大きくバラけた甲斐もあってか、その1回のみで終わりであった。
だが……ハウルスト隊の苦難はまさに、ここから始まるのであった。
「隊長!上方に新たな戦闘機!コルセアとヘルキャットです!」
ハウルスト隊の護衛役を務める戦闘隊の指揮官から別の報告が入った。
戦闘ケルフェラク12機は、ハウルストの攻撃隊24機から離れた上方で警戒に当たっていたのだが、そこに米艦載機の新手が現れたのだ。
数は総計で10機前後であり、戦闘隊を攻撃隊と誤認したのか、まっしぐらに突っ込んできていた。
戦闘隊も機首を翻し、真っ向からF6F、F4Uに向かい始める。
ハウルスト隊からは、護衛隊と米戦闘機群がひとしきり正面攻撃に入った後、即座に乱戦に移る様が見えていた。
「頼むぞ、護衛隊……俺達に敵を寄せ付けないでくれよ」
877
:
ヨークタウン
◆oyRBg3Pm7w
:2025/02/28(金) 22:24:09 ID:t0EWw3k.0
彼は護衛隊の奮闘を心の底から祈っていた。
敵機動部隊との距離は更に近くなっており、距離は7ゼルドもない。
「各機に告ぐ。これより低空に下り、雷撃態勢に入る」
ハウルストが各隊に指示を送っている最中、別の知らせが飛び込んできた。
「隊長!左下方より新たな敵機接近!数は10機前後です!」
「何!?」
彼は、敵が思わぬ方向から現れた事に驚愕してしまった。
すぐに視線を右方向に向ける。
そこには、F6FやF4Uとは違う変わった形の敵戦闘機がいた。
主翼の左右に発動機2つを抱え、大きな機体サイズにしては異様に小さく、細く見える胴体。
「タイガーキャットだ!」
ハウルストは、敵機の名前を叫んだ。
異形とも言えるその姿は、正に死神と呼ぶに相応しい。
敵機の数は10機どころか、20機前後にも上り、半分は途中で分離してメリヴェライカ隊に向かい、残った半数がハウルスト隊に突進しつつあった。
「敵機接近!右側面から来るぞ!」
敵戦闘機はの速度はジェット機ほど早くは無いものの、距離はあっという間に縮まり、200グレル(400メートル)ほど離れた位置から機銃弾を発射してきた。
「回避しろ!」
ハウルストは魔法通信機にそう叫びながら、愛機の姿勢をずらして敵機の狙いを狂わせようとした。
機体を左下方に横滑りさせた直後、それまでいた位置に敵機から放たれた機銃弾が注がれ、虚空を切り裂くのが見えた。
「危なかった!」
ハウルストは思わず叫んでしまったが、すぐに悲報が飛び込んできた。
「5番機がやられました!」
彼は5番機……第1中隊第2小隊の2番機の位置を見たが、自分の機体の影に隠れて見えなかった。
敵機が爆音を響かせながらハウルスト機のすぐ上方を左方向に向けて飛び去って行った。
両翼に付けられている大馬力エンジンの音は思った以上に大きい。
10機のタイガーキャットはハウルスト編隊を飛び去ったと思いきや、すぐに引き返してきた。
878
:
ヨークタウン
◆oyRBg3Pm7w
:2025/02/28(金) 22:25:16 ID:t0EWw3k.0
「ケルフェラクより大きい筈なのに、意外と旋回半径が小さいぞ」
彼はタイガーキャットの旋回を見るなり、その運動性能の高さに驚きを隠せなかった。
以前よりタイガーキャットという機体が、その外見の割に運動性能が良好な事は、知り合いのワイバーン隊指揮官や飛空挺乗り達から聞いていた。
その機動性は決して侮れる物ではなく、ワイバーン乗りであっても、経験の浅い未熟な竜騎士では対処が困難であり、ベテランでさえタイガーキャットとは
あまり戦いたくないと思う者が多いほど、運動性能が良好であった。
その敵機が猛然と攻撃を繰り返そうとしているのだ。
元は軽快な戦闘飛空挺とはいえ、攻撃用に改装され、重い魚雷を抱いたままのハウルスト隊では、タイガーキャットの前では大人と赤子程の差があると言えた。
「左側方から続いて来ます!」
「敵機3機、後方から迫ります!」
タイガーキャットは途中で分離し、今度は2方向から攻撃を仕掛けてきた。
先に接近したのは後方に分離した3機であった。
ハウルスト隊の各機はそれぞれが小隊ごとに分離しているため、後部座席の魔道銃を用いた相互射撃がやり辛くなっていた。
それでも、各機は後部銃座を撃ちまくって敵機を迎撃する。
しかしながら、タイガーキャットは機敏に機体を横滑りし、または上下に動かして狙いをずらし、やがて200〜100グレル(400~200メートル)の距離に
迫ってから機銃を撃ちまくった。
第1中隊第4小隊の2番機が20ミリ機銃4丁、12.7ミリ機銃4丁の猛射を受けてしまった。
攻撃型ケルフェラクは、低空での地上攻撃も行う事を念頭に防御力にも重点を置いて再設計されたため、機体の装甲板がある程度の数の機銃弾にも耐えていたが、
流石に多数の機銃弾を受けては堪え切る事は出来ず、被弾から10秒ほどで、機体の各所を穴だらけにされて撃墜されてしまった。
次に第4小隊1番機も同様に撃墜され、機首を下にして海面に突っ込んで行った。
後方からの攻撃が終わると、息つく暇も与えずとばかりに左側面から回ったタイガーキャットが、それぞれの目標に向けて機銃弾を放った。
「第2中隊にも敵機が襲い掛かっています!あっ!2機やられました!」
「第1中隊第2小隊にも敵機襲撃!小隊長機被弾!」
敵機の攻撃によって、新たに3機が被弾した。
うち、2機はこれまで同様に撃墜されたが、第2小隊の小隊長機だけは、白煙を引きながらも編隊に続行していた。
敵機は再びハウルスト隊を飛び去ると、今度は後方に旋回し、後ろ上方から迫ってきた。
「くそ!敵機動部隊まで後少しと言うところで!」
(このままじゃ全滅する!)
ハウルストの心中には悔しさが満ち溢れていた。
護衛の戦闘隊は敵戦闘機との空戦に拘束され、こちらを援護する余裕がない。
その間、既に5機を失ったハウルスト隊を、敵のタイガーキャットは高速で通過する度に確実に減らしていく。
そして、ほぼ全機が後ろ上方に回ったと言う事は、狙いやすい方向から一気に数を減らすべく、確実に仕留める事に集中しているのだろう。
879
:
ヨークタウン
◆oyRBg3Pm7w
:2025/02/28(金) 22:25:59 ID:t0EWw3k.0
にわかにタイガーキャットの速力が緩んでいるが、それはハウルスト隊が後部銃座で反撃する以外、何も出来ない事を分かって、敢えて速力を緩めているのだろう。
「せめて護衛隊が拘束されていなければ……!」
「隊長!タイガーキャット2機が向かって来ます!」
後部座席のケルシクニがそう叫んだ後、魔導銃を撃ちまくった。
光弾は急速接近する敵機に注がれるが、敵の腕も上手く、ひらりひらりと交わしていく。
敵機との距離はすぐさま縮まった。
「敵機、更に接近!距離90グレル!(180メートル)」
ハウルストはとてつもない殺気を感じ、心中でもうダメだと諦めかけたが、それでも体は反応し、機体を横滑りさせようとする。
だが、敵機はすぐそこまで迫っており、愛機をずらしても機銃弾に捉えられ、撃墜される未来しか脳裏に思い浮かばなかった。
唐突に、後方にオレンジ色の光が灯ったのはその時であった。
「あ、タイガーキャットが!」
ケルシクニの声が先とは打って変わって、喜びすら混じった物に変わった。
ハウルストは後ろに振り返ろうとしたが、機体のすぐ右横を、右主翼から炎と黒煙を吹きながら下降していく敵機がいた。
「隊長!味方がやりました!」
「味方だと!?」
ハウルストは思わぬ援護に一瞬、これは夢かと思ったが、この直後に見た光景が、彼をより一層混乱させた。
ハウルスト機の左方向を、小ぶりな機体が飛び去っていった。
一瞬ながらも、胴体に赤い機体番号を描いたその機体は、紛れもなくドシュダムであった。
「ドシュダム!?なぜあの機体がここに!?」
ハウルストは更に頭を混乱させてしまった。
ドシュダム隊はケルフェラク同様に、敵機との乱戦に拘束されてしまい、大半は自分の身を守るだけで精一杯の筈であった。
だが、どういう訳か、弾除け以外に期待できなかった筈のドシュダムが10機前後もハウルスト隊の至近におり、タイガーキャット相手に空戦を挑んでいる。
あり得ない光景だ。
だが、現に、ドシュダム隊はタイガーキャットに空戦を挑み、その注意をハウルスト隊から逸らす事に成功していた。
「ここは引き受けました!ケルフェラク隊は敵機動部隊への攻撃へ向かって下さい!」
魔法通信機にやや甲高い女性兵の声が響いた。
880
:
ヨークタウン
◆oyRBg3Pm7w
:2025/02/28(金) 22:26:33 ID:t0EWw3k.0
その直後、ハウルスト機のやや左斜め上方に付いていたドシュダムが機体を翻し、タイガーキャットとの空戦に殴り込んで行った。
「……隊長、今のドシュダムを見ましたか?ありゃ噂の赤の12番ですぜ」
「赤の12番……まさか、あれが……」
ハウルストは半ば信じられなかった。
だが、一瞬見えたドシュダムの胴体には、確かにその12番という数字が入っていた。
どのタイミングでやって来たかは定かではないが、それでも分かった事はある。
それは、件の赤の12番が、ハウルストを襲おうとしていた2機のタイガーキャットのうち、1機を撃墜してハウルストの窮地を救った事だ。
「隊長!敵機動部隊の至近にまで迫りました!あ、敵艦からの対空砲火です!」
唐突に、ハウルスト隊の周囲に対空弾炸裂の黒煙があちこちで湧いていた。
どうやら、ハウルスト隊は敵艦隊の至近に到達したようだ。
「ありがとう、ドシュダム隊!後は、こちらの仕事を果たすまでだ!」
正規空母グラーズレットシーの甲板上からは、低空から輪形陣に突入した敵ワイバーン群が、護衛艦艇から猛烈な対空砲火を受けつつも、輪形陣中央に
迫りつつある姿がハッキリと見えていた。
「敵ワイバーン群、尚も接近中!一部はロアノークに向けて突入を開始!」
グラーズレットシーの右舷側中央部の20ミリ機銃群を指揮するジョナサン・ホイック少尉は、間も無く敵ワイバーンが巡洋艦の防衛ラインを突破すると予想し、
指揮下の20ミリ機銃群にいつでも射撃に移れるように準備を整えていた。
「敵編隊は回避機動を行いながら巡洋艦部隊の突破を試みている模様!」
ホイック少尉は、ヘルメットと共に装着したヘッドフォンから逐一情報を聞き入れつつ、射撃開始の時期をじっと待ち続けている。
グラーズレットシーと巡洋艦インディアナポリス、ロアノークは互いに2000メートル程の距離を開けながら航行している。
米海軍の標準的機銃の1つであるエリコン20ミリ機銃は射程距離が2000メートルであるため、敵編隊が巡洋艦を飛び越えたら、すぐに射撃開始となる予定だ。
「さあ来い、シホット共。1騎残らず叩き落としてやるぞ」
彼はそう呟きながら、敵が接近するのを待っていたが、この時、ロアノークに幾つもの爆炎が吹き上がった。
「な、ロアノークが!」
ロアノークは、右舷側と後部甲板から爆炎が吹き上がり、その直後に濛々たる黒煙を引き始めた。
881
:
ヨークタウン
◆oyRBg3Pm7w
:2025/02/28(金) 22:27:10 ID:t0EWw3k.0
敵ワイバーンの攻撃を受けたのだ。
「くそ!ロアノークがやられたぞ!」
「シホット共め!調子に乗りやがって!」
待ち構える20ミリ機銃座から次々と罵声や、悔しがる声が上がる。
そこに、ワイバーン群が次々に巡洋艦の上空を飛び抜けてきた。
「敵ワイバーン群、10騎ほどが突破!敵の目標は本艦の模様!」
「各機銃群、射撃開始!」
耳元のヘッドフォンから命令が伝えられた。
「射撃開始!シホット共を叩き落とせ!」
ホイック少尉が命令を伝えると、待機していた20ミリ機銃群が一斉に射撃を開始した。
それとほぼ同時に、40ミリ機銃座も同様に対空射撃を行った。
各機銃群の射撃音が合わさり、グラーズレットシーの甲板上は轟然たる騒音に包み込まれた。
これに加えて5インチ連装砲4基8門も連続射撃を行い、接近しつつある10騎のワイバーンを圧倒的な弾幕に絡め取ろうとした。
高角砲弾が敵の周囲で炸裂し、多量の機銃弾がワイバーン群に注がれていくのだが……
「おい!シホット共の動きがおかしいぞ!」
「なんだあのメチャクチャな動きは!?」
機銃座の部下達が言葉は違えど、困惑した口調で叫び始める。
敵ワイバーンは明らかに動きが異常であった。
機銃員が狙った位置に射撃を加えるのだが、その次の瞬間には、ワイバーンの姿はそこにはなく、そこからやや下や上の辺りに敵が現れるのだ。
機銃員は自分の目がおかしくなったのかと思い、狙いを修正して機銃弾を撃つのだが、そこにいた筈の敵がまた消え、別のやや離れた位置に姿を表す。
その繰り返しで敵は機銃の狙いを狂わせ、機銃弾の大半は敵を逸れてしまい、命中する弾も虚しく敵の魔法防御に弾き飛ばされてしまう。
(まさか、あれが噂に聞いていた、幻影魔法とやらを利用した戦術機動か!)
ホイック少尉は戦闘前のブリーフィングで、敵ワイバーン隊の一部が新しい戦術機動を使用したとの情報を聞いていた。
この情報は、第3艦隊からもたらされた戦闘詳報を基に説明された物であり、暫定的ながらも、対策も講じられていた。
「各銃座!敵は例の幻影魔法を用いた超機動でこちらの狙いを外しにかかっている。ここは事前に説明した通りの射撃を行え!レーダー上では”動きは変わらない“!
その空域にありったけの弾をばら撒け!」
882
:
ヨークタウン
◆oyRBg3Pm7w
:2025/02/28(金) 22:27:44 ID:t0EWw3k.0
ホイック少尉はレシーバー越しにその命令を受けるや、すぐさま20ミリ銃座に付いている部下達の元に駆け寄り、大声で命令を伝えた。
「おい!敵は例の幻影魔法とやらを使っている!ここは大雑把に狙って辺りに弾をぶちまけろ!いいな!」
彼は立ち止まっては説明し、また立ち止まっては説明しを繰り返し、各機銃の部下達に命令を伝え終わった。
その間にも敵ワイバーン群は接近しつつあったが、敵ワイバーン1騎の至近にVT信管付きの高角砲弾が炸裂した。
高度15メートル程の低空を飛行していたワイバーンは、超機動を行いつつ前進中の所、唐突に起こった砲弾炸裂に巻き込まれてしまった。
ワイバーンの姿は炸裂煙に覆い隠されてしまった。
その直後、炸裂煙の真下に無数の破片が散らばり、海面に雫となって落下する。
夥しい水煙で海面が泡だったが、その中で幾分大きめの水飛沫が沸き立った。
炸裂煙から出てくるワイバーンはおらず、その無数の水飛沫がそのワイバーンと竜騎士だった物の成れの果てであった。
「敵機撃墜!いくら幻影魔法と言えど、電子の目からは逃れられんぞ!」
ホイック少尉がそう言ったのがきっかけのように、敵ワイバーンに被撃墜騎が増え始めた。
あるワイバーンは超機動を行っている最中に40ミリ弾の集束弾を受けて突如砕け散った。
別のワイバーンは20ミリ弾を被弾して動きが鈍くなった所を、他の20ミリ弾、40ミリ弾を集中して受けて瞬く間に撃墜された。
5インチ砲弾の戦果も1騎のみではなく、2騎、3騎と次々に戦果を挙げて言った。
「いいぞ!その調子だ!」
ホイック少尉は対空砲火陣の快調ぶりに喝采を叫んだ。
だが、敵のスピードは思いの外早く、残り2騎となった時には、グラーズレット・シーの右舷600メートルにまで迫っていた。
機銃座が残り2騎中、やや先頭にいる側のワイバーンに狙いを定めた時、敵騎は両翼から2つの筒を投下した。
その筒はすぐに緑色の発光体となって猛スピードでグラーズレット・シーの右舷側に突っ込んできた。
「敵弾だ!」
2発の対艦爆裂光弾は、時速700キロ以上のスピードで瞬時に迫った。
1発が40ミリ弾の集束弾を受け、舷側から100メートルほど手前で撃墜され、派手に空中爆発を引き起こしたが、残った1発が右舷後部側の
40ミリ4連装機銃座に命中し、ド派手な爆炎を吹き上げた。
グラーズレット・シーの右舷後部舷側付近から黒煙が流れ始めた時、やや後方で飛行を続けていた2騎目が対艦爆裂光弾を発射。
こちらは対空弾幕を潜り抜け、1発が右舷前部の20ミリ機銃座付近に命中した他、もう1発が右舷中央部舷側に設置された、40ミリ4連装機銃座
2基のちょうど間に命中してしまった。
爆発の瞬間、20ミリ、40ミリ機銃座に少なからぬ損害を負ったグラーズレット・シーは、右舷側に指向できる対空火力の3分の1を失ってしまい、
対空防御網に大穴が開いてしまった。
残った機銃座と両用砲が、2騎のワイバーンに火力を集中し、うち1騎が即座に撃墜された。
883
:
ヨークタウン
◆oyRBg3Pm7w
:2025/02/28(金) 22:28:14 ID:t0EWw3k.0
残った1騎は損傷を負っているのか、ワイバーンから夥しい体液を流しながらも、なぜかまっしぐらに突き進みつつあった。
「残る敵ワイバーン、尚も接近中!距離200を切りました!」
「撃て!必ず撃ち落とせ!敵はブレス攻撃を行って本艦と差し違えるつもりだ!」
ホイック少尉はけしかけるように命令を飛ばし、20ミリ機銃座は全力で敵の撃墜を試みた。
もはや満身創痍と言っても良い筈なのに、敵ワイバーンは尚も自慢の機動力でこちら側の狙いを外そうとした。
そのため、一瞬ながら、機銃弾は敵に命中し辛かった。
「くそったれ!弾がなかなか当たらん!命中弾が出たとしても、ワイバーン自体も硬いからすぐに撃墜となり難い!」
敵の思わぬ粘りに、ホイックは焦る。
距離はすぐに100メートルを切り、よく目を凝らせば敵ワイバーンと、竜騎士の顔が分かりそうなほどであった。
一瞬ながら、敵竜騎士が長い長髪を振り乱しながら、何かを振り上げて思い切り投げつけたように思えた。
その直後、その人影に20ミリ弾が連続して流れて行き、人影が赤い飛沫と共に大きく仰け反ったと思いきや、その前面で両用砲弾の炸裂煙が湧き上がった。
ワインバーンは竜騎士ごと四散したらしく、VT信管炸裂の飛沫と共に無数の破片となって海面にばら撒かれたが……
その直後、機銃座に向けて小さな何かが高速で向かってきた。
「なっ」
短い言葉が発せられたその刹那、ある機銃員が危険を感じてその場に伏せた。
甲高い金属音と共に、20ミリ機銃座の背後に赤い剣が突き刺さったのはその直後であった。
「な、剣!?」
「おいなんだこれ……煙を吹き上げながら点滅してやがるぞ……」
機銃座の兵達は、機銃座と飛行甲板を繋ぐ壁に突き刺さった剣を恐る恐ると言った様子で見つめたが、ホイック少尉はハッとなって、部下達に大音声で命じた。
「近付くな!敵の投げた爆弾かもしれんぞ!爆発する前にすぐこの場から退避しろ!」
先発隊が敵と激戦を繰り広げている最中、ハウルスト隊は対空砲火を受けながらも、輪形陣に突入を開始した。
既にワイバーン隊の攻撃で被弾し、損傷して黒煙を上げる3隻の駆逐艦の上空を突破した17機のケルフェラクは、高度を10メートルほどにまで
下げて輪形陣中央を目指して突き進んでいく。
「隊長!メリヴェライカ大佐の部隊が敵艦を攻撃してくれたお陰か、幾分進みやすいですな!」
「ああ!なんだかんだ言って、大佐の隊は強いぞ」
ハウルストは、自らを犠牲にしつつも、対空火力を減殺し、血路を開いてくれたメリヴェライカ隊に心の底から感謝していた。
884
:
ヨークタウン
◆oyRBg3Pm7w
:2025/02/28(金) 22:28:52 ID:t0EWw3k.0
出発前は大佐を含めて、ベテランながらもガラの悪い女竜騎士達の集まりといった印象しか持たなかったが、その動きはやはり見事としか言いようが無かった。
現に、ハウルスト隊の進路上にある護衛艦……特に、ウースター級と思しき防空巡洋艦が少なからぬ手傷を負って炎上している様は驚かされていた。
だが、その代償として先発隊の損害も甚大のようであり、現に敵艦攻撃に成功したワイバーンは、悉くが撃墜されており、帰還に移るワイバーンはほんの
僅かしか見受けられなかった。
「敵巡洋艦の上空を突っ切る!前を行く二番艦は損傷して煙を上げているが、まだ対空砲を盛んに放って来る。注意して進め!」
ハウルストは、魔法通信機越しに部下に指示を飛ばしつつ。視線を敵一番艦に向けた。
敵艦は後方の二番艦と違う形をしており、どちらかというとやや古い艦といった印象が強かった。
艦の特徴からして、ポートランド級巡洋艦であろう。
(ポートランド級はポートランドとインディアナポリスの2隻がいると聞いている。あいつはそのどちらかだな)
彼が心中でそう呟いている最中、敵艦はその主砲と思しき物をケルフェラクに向けていた。
「まさか」
ハウルストが言いようのない不安感に駆られた時、懸念は現実の物となった。
唐突に、敵一番艦の艦前部と後部付近に主砲発砲の閃光が現れた。
「敵艦発砲!」
彼は大声で叫びつつ、咄嗟に機体を右に振った。
愛機が右に避けるのと、海面に水柱が立ち上がる瞬間はほぼ同時であった。
この時、敵巡洋艦一番艦とハウルスト隊との距離は3000メートルを切っており、軍艦の主砲発射の距離としてはほぼ目と鼻の先といっても過言ではない。
普通に高角砲や機銃で対処した方が効果的で、米巡洋艦の搭載主砲で高速で動き回る飛行物体を撃つなど、非常識極まる行為と言える。
だが、敵艦はそれを承知で敢えて主砲で対空射撃を行ったのである。
非効率極まる対空射撃は、効果0で終わらなかった。
「1機が水柱に巻き込まれて墜落しました!他にも、水柱を避けるために各小隊がバラバラになってます!」
「畜生!奴のせいで、隊形が崩れちまった!」
ハウルストは悔しさの余り歯軋りした。
敵戦闘機襲撃時には、ハウルスト隊は大きく隊形が崩れていた物の、敵機動部隊の輪形陣に進む前にはなんとか編隊を組み直し、第1中隊9機、第2中隊8機の
2個中隊を臨時に再編成し、第1中隊9機が扇形に展開し、そのやや離れた後方に第2中隊8機が同様に続く隊形で攻撃を行う予定だった。
だが、敵巡洋艦の主砲は第1中隊の隊形をバラバラにしたばかりか、第3小隊の1機が水柱に巻き込まれて撃墜されてしまう結果となってしまった。
885
:
ヨークタウン
◆oyRBg3Pm7w
:2025/02/28(金) 22:29:32 ID:t0EWw3k.0
敵巡洋艦一番艦からは、高角砲の他に機銃も交えた激しい対空射撃も加わった。
敵艦からの対空射撃は、量としては少ないように感じられた。
しかし、狙いは正確であった。
唐突に、第2小隊長機が真正面から大口径機銃弾を食い、瞬時にコントロールを失って海面に突き刺さった。
更に第2小隊2番機が右主翼を吹き飛ばされ、もんどり打って海面に叩きつけられた。
「くそ!敵艦の狙いは正確だぞ!」
ハウルストは、相次ぐ味方機の被害に、敵対空要員の練度の高さを思い知らされたような気がした。
ハウルスト隊にも敵艦から対空射撃が加えられ、機体の周囲を機銃弾が通り過ぎ、その近場で砲弾が炸裂する。
時折機体に衝撃が伝わり、ハウルストは身を縮こませてしまうが、機体は異常を来すことなく前進を続けた。
敵艦の至近に来ると、ハウルストは行き掛けの駄賃とばかりに敵巡洋艦に両翼の魔導銃を撃ちかけた。
元が戦闘飛空挺である攻撃型ケルフェラクには、自衛用として主翼に2つの魔導銃が搭載されており、ハウルストのように、すれ違い様に敵艦に掃射する機もあり、
敵艦目掛けて大雑把な狙いで光弾を撃ちかけた。
彼の視点からは2条の光弾が敵艦の艦首や第1主砲塔に注がれて火花が飛び散るのが見えた。
前部甲板の2基の主砲についている3本ずつ、計6本の砲身は依然としてケルフェラクに向けられており、ハウルストはすれ違う寸前に発砲して来るのではないかと、
一瞬不安に思った。
だが、敵艦の上空を通り過ぎるまで主砲から火を吹く事はなかった。
ポートランド級巡洋艦の上空を通り過ぎたハウルスト機は、遂に主目標との対面を果たした。
「見えたぞ……敵エセックス級だ!」
彼は思わず声を張り上げた。
戦場で、敵空母とやり合うのはこれで2度目だ。
1度目は、第1次レビリンイクル沖海戦時にレキシントン級空母相手に、今日と同じく攻撃型ケルフェラクに乗って攻撃に参加している。
あの時は爆弾を搭載し、急降下爆撃で敵艦に打撃を与えることに成功していた。
今日は前回と違い、魚雷を抱いて攻撃を行おうとしている。
アメリカ海軍と違って、艦爆乗りは爆撃機のみ、艦攻乗りは雷撃機のみという区分(最近はA-1Dの導入によってその境界が無くなりつつあるが)が
シホールアンル軍にはなく、急降下爆撃も艦艇雷撃も行えるように訓練が施されている。
今回は敵空母への爆撃はワイバーン隊が担当する事になった為、攻撃用のケルフェラクは全機が魚雷を装備して出撃していた。
「敵艦が損傷している。どうやら、メリヴェライカ大佐が激しく叩いたようだな」
ハウルストは、目の前の米空母が損傷し、黒煙を引いている様子を見て、心中でメリヴェライカ隊に感謝の念を表していた。
「後続する機はいるか!?」
886
:
ヨークタウン
◆oyRBg3Pm7w
:2025/02/28(金) 22:30:10 ID:t0EWw3k.0
「うちの直率小隊は2番機、3番機ともに健在!第2小隊は1機のみ、第3小隊は2機残っております!」
「第2中隊は⁉︎」
「第2中隊、残存機は4機です!」
ハウルストは一瞬、悲しげな表情を浮かべた。
第2中隊はウースター級巡洋艦の後方を通り過ぎる形で通過していた。
傍目から見たら、手酷く叩かれたように見えたウースター級であったが、思いのほか健在の対空砲が多かったためか、第2中隊は残存8機から4機に
まで撃ち減らされていた。
「いや、悲しんでいる暇はない。残った全機であいつを片付けるぞ!」
ハウルストはすぐに気を取り直し、そのまま低空飛行を続けて敵空母への接近を試みた。
この時、敵空母の動きが大きく変わった。
それまで、高速で前進を続けていた敵空母が、仄かに右へ回頭し始めたのだ。
「艦首を向けて対抗面積を減らそうという訳か。やるな……!」
ハウルストは、絶好に射点を外された事に怒りを感じつつも、敵前回頭を強行する敵艦の練度の高さを素直に褒めていた。
この時、敵艦との距離は既に700グレル(1400メートル)を切っており、魚雷投下までの時間はあまり残されていなかった。
「だからこそ、アメリカ海軍は強いという訳か。ならば!」
ハウルストは即座に作戦を変更した。
「第1中隊は敵の左舷側に回り込む!第2中隊は右舷に回って魚雷を串刺しにしろ!幸運を祈る!第1中隊は俺に続け!!」
彼は魔法通信機越しにそう命令を伝え終わると、躊躇う事なく愛機を右に向けた。
敵の対空砲火は依然激しく、目標の敵空母のみならず、護衛の巡洋艦や空母の前を航行するアイオワ級戦艦からも、ひっきりなしに砲弾や機銃弾が浴びせられてくる。
その最中、ハウルストの第1中隊は大きく右旋回に入った。
重い魚雷を抱いているケルフェラクの機動性は良好ではなく、敵艦に対してほぼ機体全面を晒す形になるため、対空砲火の被弾率は格段に上がってしまう。
現に、第3小隊の1機が機体全体に機銃弾を受けてバラバラになってしまった。
ハウルスト機にも胴体に数度、被弾音が響くが、彼はそれを敢えて無視する形で機体を操作し続けた。
更に第2小隊最後の1機が撃墜され、残るは直率小隊3機と、第3小隊1機のみとなった。
永遠に感じられた機体の旋回は、彼が思っていたよりも比較的短時間で終わった。
空母グラーズレット・シーの艦橋からは、左舷と右舷方向に展開したケルフェラクが、共に2500メートル程の距離から再び向かいつつある様子がはっきりと見えていた。
「敵雷撃機、急速接近!距離2300!」
「撃ち続けろ!シホット共を近づけるな!」
887
:
ヨークタウン
◆oyRBg3Pm7w
:2025/02/28(金) 22:30:45 ID:t0EWw3k.0
グラーズレット・シー艦長であるディキシー・キーファー大佐は双眼鏡を両手に保持したまま指示を飛ばし続けていた。
左舷からは5機、右舷方向からは4機が超低空から迫りつつある。
高度は10メートルもなく、5インチ砲から放たれる砲弾は、VT信管が海面からの乱反射を捉えてしまい、思うような位置で炸裂してくれなかった。
残る40ミリ、20ミリ機銃座が懸命の対空戦闘を繰り広げているが、ここまで近距離に迫られては、全機の撃墜は難しいと言えた。
(くそ!ならば、こうするまでだ!)
キーファー艦長は別の命令を伝え始めた。
「操舵手、取舵一杯だ、急げ!」
「取舵一杯、アイ・サー!」
彼の命令が伝わると、操舵手はあらん限りの力で舵輪をぶん回した。
先の緊急操舵で右舷側に回頭した艦が、今度は左舷側に回頭を行おうとしている形になるが、艦はすぐには回ろうとしない。
「畜生……敵の雷撃隊の裏を掻こうと、艦首を相対させたのだが、タイミングが不味すぎたか」
キーファー艦長は自身の判断ミスを悔やんだ。
彼は敵雷撃隊の指揮官が、先の回頭を受けても、そのまま雷撃を強行するだろうと思っていた。
だが、敵雷撃隊の指揮官は、犠牲を覚悟で急旋回を行って射点の設定をやり直し、再びグラーズレット・シーに迫ってきたのだ。
ここに至っては、彼が打てる手は一つしかなかった。
「敵機の多い左舷側に再び艦首を向け、魚雷を回避しなければ。決して、諦めんぞ!」
彼は、グラーズレット・シーを決して沈めまいと、心の中でそう覚悟を決めていた。
彼の想いは対空砲火陣にも伝わったのか、右舷方向から迫る敵1機を撃墜し、更に左舷方向の敵1機にも命中弾を与え、海面に叩き付けた。
グラーズレット・シーの艦首がようやく左に回り始めた。
大型艦にしては機動性の良いエセックス級空母は、回頭を始めれば後はすんなりと艦体が回っていく。
(よし!いいぞ!)
彼は心中でやや安堵したが、その頃には、敵機は距離1000メートルを切るどころか、600メートルすら切るほどの至近距離で魚雷を投下していた。
魚雷を投下したのは、左右ほぼ同時であり、左舷方向から3機、右舷方向から2機が迫り、グラーズレット・シー目掛けて魚雷を投下していた。
「左舷方向より3本接近!」
「右舷方向より2本!急速接近中!」
見張員の報告が艦橋に飛び込んで来た。
888
:
ヨークタウン
◆oyRBg3Pm7w
:2025/02/28(金) 22:31:20 ID:t0EWw3k.0
回頭中のグラーズレット・シーに5本の魚雷が左右から迫ってくる。
スピードは35から40ノット程と、思いの外速い。
「どうだ……かわせるか!?」
キーファー艦長は藁にもすがる思いで魚雷の回避を願った。
そして、艦橋から左舷方向を見た時、彼は表情を凍り付かせてしまった。
魚雷の航跡は、無慈悲にもグラーズレット・シーの舷側付近に突き進んできた。
「……総員!衝撃に備えよ!」
彼は無意識のうちに艦内電話を引ったくり、大音場で命じていた。
その10秒後、グラーズレット・シーの艦体は、まず左舷方向より突き刺さった2本の魚雷によって激しく揺れ動いた。
左舷方向の魚雷は3本中、1本が艦尾方向に逸れて行ったが、2本が左舷中央部、並びに左舷後部付近に命中し、高々と水柱を噴き上げた。
それから僅か5秒後に、右舷方向から進んできた魚雷2本中、1本が右舷側艦橋手前の前部付近……5インチ連装両用砲座2基の手前付近の舷側に命中し、
これまた天に突き刺さらんばかりの勢いで水柱が立ち上がった。
もう1本の魚雷は、グラーズレット・シーが左舷に急転舵した事で右舷艦首部付近をスレスレで通過して行ったが、計3本の魚雷を受けてしまったグラーズレット・シーは
今や瀕死の状態に陥っていた。
「両舷停止!両舷停止だ!」
キーファー艦長は艦の振動が収まるのを待たずに、声を枯らしながら命令を伝えた。
「各所、被害を知らせ!ダメコン班は被害箇所が判明次第、すぐに応急修理にかかれ!」
攻撃終了後、なんとか敵機動部隊の輪形陣から脱出を果たしたハウルスト隊は、遠ざかりつつある敵艦隊を眺めながら帰途に付いていた。
「疲れた……おい、まだ生きてるな?」
「生きてますよ、隊長」
ハウルストは、後席のケルシクニに声をかけ、彼もまた疲れの滲んだ声音で返答する。
ハウルスト機の周囲には、敵機動部隊への攻撃を終えた4機のケルフェラクが集まっていた。
攻撃前は、24機いたハウルスト隊だが、今では(脱落して避退した1機を除き)たったの4機にまで激減してしまっている。
先発したメリヴェライカ隊が敵艦の対空砲を幾らか制圧したお陰で、彼らは敵の正規空母に魚雷攻撃を成功させたが、それでも敵艦隊の抵抗は激烈であり、
ハウルスト隊は壊滅状態に陥っていた。
「隊長、右上方から味方機が接近してきます」
889
:
ヨークタウン
◆oyRBg3Pm7w
:2025/02/28(金) 22:31:56 ID:t0EWw3k.0
「おう、帰りの護衛か」
ケルシクニからの声を聞き、ハウルストは味方機の方向に顔を向ける。
味方機と思しき機影は、15、6機ほどがゆっくりと迫ってきた。
それらの味方機は、程なくしてハウルスト隊を取り囲むようにして護衛位置についた。
「おいおい、これは驚いた……味方の戦闘ケルフェラクに混じってドシュダム隊が付いてくるとはな」
ハウルストは、右側面に並行するドシュダム隊を見るなり、驚きを隠せなかった。
彼の攻撃隊に付いてきた護衛のうち、9機は戦闘ケルフェラクであり、残りの7機はドシュダムであった。
ハウルストはケルフェラクならまだしも、ドシュダム隊はタイガーキャット相手に圧倒的な性能差を付けられているため、全機撃墜されるか、2、3機
生き残れれば良い方であると考えていた。
だからこそ、彼は自らの身を犠牲にして、攻撃隊の進路を開いてくれたドシュダム隊に深く感謝していたのだが……
「てっきり、タイガーキャットに一方的にやられているかと思ったが、どうも違ったようだな」
「隊長、ドシュダム隊の1機がずっとこっちを見てますよ。近い方です」
後席のケルシクニがふと、ドシュダム隊の搭乗員がずっとこちら側に視線を送ってきている事に気がついた。
ハウルストもそのドシュダムをすぐに見つける。
「そこのドシュダムの搭乗員、聞こえるか?私は指揮官のハウルスト・モルクンレル大尉だ。先の援護はとても有難かった。お陰で、敵の正規空母に致命弾を
浴びせることが出来た。皆、君達に深く感謝しているぞ」
「……お役に立てて光栄であります」
胴体に赤の12番と描かれたドシュダムの搭乗員は、沈みがちな口調でハウルストに返答する。
「そんな暗い口調で言われても、少し困ってしまうな。もう少し明るめな口調で言ってもらいたい物だが」
「……差し出がましいお言葉になりますが、敵艦隊に対する攻撃では、毎回このような被害が出るのでしょうか?」
「私は敵機動部隊への攻撃は今日も含めて2回しか無いが、毎度ああいう感じと聞いている。敵艦隊の対空砲火は恐ろしく強力で、今日のように味方に多大な
犠牲が出る事を分かった上で、攻撃を実行しているんだ。最も、今日の対空砲火は前回以上に激しかったがね……」
「………」
ドシュダムの搭乗員は、言葉が見つからないのか、暫しの間押し黙ってしまった。
ハウルストはそれに構わず、言葉を放ち続けた。
「どうやら、君は敵機動部隊の迎撃を見るのは初めてのようだな。言葉を無くすのも無理はない。それに、俺達の隊も、大分やられちまったからな。機体もボロボロだ。
これでは、戦場から逃げ戻った敗残兵も同然だ」
「いえ、決してそんな事は……」
890
:
ヨークタウン
◆oyRBg3Pm7w
:2025/02/28(金) 22:32:43 ID:t0EWw3k.0
ドシュダムの搭乗員は、やや強い口調で言い返してきた。
「今の戦況で、生きて帰れば勝ちだと、自分は思います……」
「生きて帰れば勝ちか……なるほど、確かに!」
それを聞いたハウルストは、何故か心が晴れた気がした。
「良い言葉を聞かせてもらった。確かにその通りだ。それに、いつまでもクヨクヨしていては、先に逝った戦友や部下達に怒られてしまうな。ところで、
君の名前を聞いていなかったが、ここで聞かせてもらえないかな」
「は……自分はニポラ・ロシュミックと申します。階級は少尉です」
「ほう、やはり……君の名はよく知っている。ドシュダム乗りの中では最も優れたエースで、ケルフェラクに乗っていれば文字通り無敵とも言われているな。
ひょっとして、さっきのタイガーキャットは君が……?」
「……すいません、無我夢中で動いていたので、イマイチ覚えていなくて」
てっきり肯定の言葉を聞けると思ったハウルストは、思わぬ回答に気が抜けてしまった。
ただ、彼自身はハッキリと覚えていた。
「まぁ、戦場だからな。仕方がない。あと、君達の指揮官と話したいのだが、どこにいるかね?」
「指揮官は……撃墜されました」
「なんだと……」
ハウルストは思わず絶句してしまった。
「今、生き残りのドシュダムを率いているのは、自分であります」
ニポラから新たな回答が伝わると、ハウルストは申し訳ない気持ちで一杯になった。
「無神経な事を聞いてしまってすまなかった」
「いえ、お気になさらずに。これも戦場の常です。それに……指揮官は、こういう事はあまり気にしない変わった人でしたので」
「そうか……では、貴官のいう通りにしよう」
ハウルストはそこまで言った後、語調を変えて彼女に尋ねた。
「所属基地は違うが、それまでの道中、改めて護衛をお願いしたいのだが、良いかな?」
「勿論です。敵機動部隊からはまだあまり離れていません。辺りには帰り際を狙う敵戦闘機がうろついている可能性が高いので、少佐の隊を全力でお守りいたいます」
「ありがとう。その心意気に励まされるよ」
ハウルストは感謝の言葉を伝えると、合同で編隊を組みながら、所属基地へ帰投していった。
891
:
ヨークタウン
◆oyRBg3Pm7w
:2025/02/28(金) 22:33:36 ID:t0EWw3k.0
午後2時 第5艦隊旗艦インディアナポリス
第5艦隊司令長官を務めるレイモンド・スプルーアンス大将は、インディアナポリス艦内にあるCIC内で、両腕を組んだまま対勢表示板を見つめ続けていた。
「長官、敵航空部隊は全部隊が撤退を開始、帰路に着きました。恐らく、搭載していた爆弾、魚雷を全て使い果たした模様です」
第5艦隊参謀長のカール・ムーア中将が、スプルーアンスに報告を伝えた。
「TG58.3のみかね?TG58.2を襲撃した敵部隊はどうなっている?」
「TG58.2を攻撃した敵部隊も同様に、残存騎が帰還を開始したと、同任務群司令部より報告が入っております」
「ふむ……損害はどうなっているかね?」
「損害報告につきましては、TG58.3、TG58.2両任務群より本艦へ伝えられております。まずTG58.3からですが……」
ムーア参謀長は幾分、重い口調で報告を伝え始めた。
「空母グラーズレット・シーが対艦爆裂光弾4発と魚雷3本を被雷しました。グラーズレット・シーは被雷後に航行を停止しました。グラーズレット・シー艦長からは
目下、火災の延焼、浸水拡大の阻止に務めているとの事です」
「艦は救えそうかね?」
「……艦の保全に務める、との報告を繰り返し受けておりますが、今の所はどう転ぶか、まだ分かりません。この他に、駆逐艦3隻、軽巡洋艦ロアノークが被弾し、
駆逐艦3隻中、1隻は航行不能に陥り、先程、艦長が総員退艦令を発令致しました。ロアノークに関してですが、敵ワイバーン多数を撃墜するも、舷側の5インチ
連装両用砲全てと艦後部の5インチ連装砲2基を失い、対空戦闘能力を大きく削がれました。ロアノーク艦長によりますと、残る5インチ砲を用いて対空戦闘の続行可能。
艦隊行動に支障なし、と伝えて来ております」
「明らかに状況は悪化しているな。駆逐艦1隻が沈没確実になった事や、ロアノークの対空能力が大幅に減殺されたのもかなりの痛手だが、特にグラーズレット・シーが
大破したのが非常に応える。艦長はグラーズレット・シーを救う事に心血を注ぐ覚悟でいるようだが……TG58.3司令部には、私からグラーズレット・シー乗員の努力は認め、
支援用に駆逐艦を派遣する事を伝えつつ、あたら無理をして乗員の犠牲を増やさぬようにするべきと伝えよう。TG58.2はどうかね?」
「TG58.2も状況は似ており、敵攻撃隊は空母リプライザルとキティホークへの爆撃、並びに雷撃を成功させ、リプライザルが魚雷3本、爆弾1発、キティホークが魚雷2本、
爆弾3発を受けました。通常なら、リプライザル級の強固な防御力で敵の攻撃を軽減できた筈ですが、今回ばかりはそうも行かず……リプライザルは左舷に受けた魚雷3本の
うち、1本が水線装甲の薄い左舷前部付近に命中。高速で航行していた事も影響して艦内に大量の海水を引き込んだ為、現在は艦首部の喫水を沈めた状態で艦を停止させて
おります。また、キティホークも2本中1本が艦後部の主要防御部と、非装甲部の境目に命中したため、想定以上の浸水が発生しており、こちらもまた、浸水の拡大を
防ぐため、速力を大幅に落としております」
「なんと、世界最大最強と謳われた大型装甲空母が2隻とも深手を負ったのか……」
これまで、冷静さを崩さなかったスプルーアンスも、この報告には動揺を隠せなかった。
「艦首部に大浸水を起こしたリプライザルは予断を許しませんが、キティホークに関しては、浸水拡大は阻止可能であり、修理後は艦載機の運用が再開できる見込みとの
追加報告も上がっております」
「そうか。キティホークはまだ使えるか」
「TG58.2は、この両空母の他に、戦艦ミズーリが魚雷1本を受けて小破、重巡ボルチモアと駆逐艦1隻がそれぞれ爆弾1発を受けております。迎撃戦闘に出た戦闘機隊の
損害ですが、詳細はまだ分かっておりません」
892
:
ヨークタウン
◆oyRBg3Pm7w
:2025/02/28(金) 22:34:09 ID:t0EWw3k.0
「ふむ……戦闘機隊も消耗しているはずだ。また、脱出したパイロットの救出は引き続き継続し、可能であれば、敵の搭乗員の救助も行ってもらいたい。
貴重な情報源だ。それから航空参謀、この攻撃における敵の損害はどれぐらいになりそうかね?」
スプルーアンスは航空参謀のジョン・サッチ大佐に質問を投げかけた。
「今回の攻撃でも、従来と同様に敵航空部隊はかなりの数のワイバーンや飛空挺を失った物と推測されます。TG58.3の輪形陣に突入してきた攻撃ワイバーンや飛空挺は、
合わせて80前後と見られていますが、輪形陣を脱出した敵は20にも満たないと報告されています。戦果を話半分に見積もっても、敵はその半数近く、または過半数を
失ったと見て間違い無いでしょう。これはTG58.2で行われた戦闘でも同様であり、輪形陣突入を果たした敵飛空挺やワイバーンは、その大半を撃墜したと言われています。
恐らくは、敵機撃墜は最低でも100は下らぬかと思われます」
「うむ。実によろしい」
スプルーアンスは、首を深く頷かせた。
「作戦参謀。君の案の通り、敵は大幅に航空戦力を消耗させている。恐らく、敵はここ2、3ヶ月で失ったよりも遥かに多くのワイバーン、飛空挺をたった1日で
失う羽目になった。これで、シホールアンル軍航空部隊の継戦能力は大幅に弱体化する事は確実な物となったぞ」
「長官の言われる通りであります。ですが……我が方の損害も少なくありません」
作戦参謀のジュスタス・フォレステル大佐は強張った表情のまま、スプルーアンスに返答していく。
「TG58.2、TG58.3の2個任務群合わせて軽空母2隻、重巡1隻、駆逐艦4隻が沈没、または沈没確実となり、正規空母3隻、巡洋艦4隻、駆逐艦13隻が損傷し、
うち、正規空母リプライザルは艦首部への大浸水でほぼ大破状態であり、グラーズレット・シーに至っては未だに損失が危ぶまれる程です。巡洋艦も4隻中3隻は落伍し、
駆逐艦は半数がこれまた艦隊から落伍している状況です。この損害は、1個空母群が丸ごと戦闘不能にされたも同然と言えます。戦闘機の損失も、判明しているだけでも
100機以上に上り、今次空襲で撃墜された機や、修理不能機も含めれば、その数は更に増えます。今日の夜までに、TG58.2、TG58.3に残された戦闘機は、恐らく、
戦闘前の半数を割り込む可能性もあります」
「まさに大打撃……と言っても過言ではないな」
沈痛な面持ちで説明するフォレステル大佐に、スプルーアンスもまた、小声で相槌を打った。
「作戦参謀。戦争とは相手がある事だ。本気で殺しにかかる敵相手に、こちらも無傷のままである事は極めて難しい。だが……その難しい事を想定しつつ、しっかりと
対策を講じれば、その難易度も何とかコントロールできる。貴官の発案した対策の1つは現に有効に働いている。それに、パイロットは全員が戦死した訳ではない上に、
失った航空機は数日以内に、護衛空母から補充する事ができる。敵はこちらを誘い込んだ積りだったかもしれないが、そのうち、逆だった事に気付くだろう」
スプルーアンスはそう言いながら、自らの腕時計に視線を移した。
「よし。頃合いだな……諸君、反撃の時間だ。敵には、我が艦隊の上空だけではなく、ホームでも痛い目に遭ってもらおう」
893
:
ヨークタウン
◆oyRBg3Pm7w
:2025/02/28(金) 22:34:42 ID:t0EWw3k.0
「ジャッキーブルーよりヘイスティングへ、聞こえるか?」
空母ランドルフより発艦した、とあるS1Aハイライダーを操るヘルマン・ヴィーゼル大尉は、遠くに見えるそれをじっと見据えながら、
無線機の向こう側に尋ねた。
「こちらヘイスティング、感度良好だ。状況を知らせ」
「敵攻撃隊の全部隊が帰途に着いた。本機は予定通りに行動を開始していいか?」
「ジャッキーブルー、予定通り行動を開始しろ」
「了解!」
ヴィーゼル大尉はそう返事すると、敵攻撃隊の追撃を開始した。
「機長!やっとうちらの出番ですか!」
後部座席に座るジャン・ペイジン兵曹が喜色ばんだ声音で言葉を発した。
「おう、やっとだぜ。幾らこの偵察機が航続力に優れているとはいえ、1時間半何もせずに、低空でただ待機状態はちとキツかったが……
これからが本番だ。こっからもっとキツくなるぜ」
「大丈夫です!じっとしているのは慣れっこですぜ」
後席の部下は、中国系アメリカ人らしい熱のこもった口調で彼に答えた。
「いいねぇ、その心意気だ。さて、これから反撃の下準備だ。味方空母群を痛めつけた借りはきっちりと返してもらうぞ」
894
:
ヨークタウン
◆oyRBg3Pm7w
:2025/02/28(金) 22:35:36 ID:t0EWw3k.0
午後2時40分 シホールアンル帝国西部 トゥラポン
所属基地であるトゥラポンの秘密基地に帰還したのは、出撃から3時間以上経った、午後2時40分を過ぎてからであった。
敵戦闘機の機銃弾や、敵機動部隊の対空砲火でボロボロになった愛機は、往復200ゼルド(600キロ)の飛行を終え、ようやく飛行場へ辿り着いた。
待機していた地上要員が、出撃時と同じ待機場所まで誘導してくれた。
元の位置に着いた後、ハウルストは愛機の発動機を停止し、機体の外に飛び降りた。
「しかし、予想以上に酷い有様だな。よくこんな状態で帰って来れたものだ」
彼は、改めて愛機の状態を見渡したが、左右の主翼は機銃弾や高角砲弾の破片を受けて満遍なく傷が付き、所によっては拳が丸々突っ込める程の風穴が開いている。
更に、胴体後部に至っては、後少しで大の大人が潜り込めそうな程の破孔が穿たれており、尾翼は天辺のあたりが一部欠けており、もう少し下まで破損していれば、
操縦不能に陥っていた可能性が極めて高かった。
ただ、防弾装甲を重点的に張り巡らせた発動機付近や操縦席回りだけは、比較的傷が少ないように見えた。
「隊長、装甲部付近は案外傷が小さいですね。見た感じ、多少の引っ掻き傷などは見られますが……!」
ケルシクニはこの時、胴体部分に一際大きな傷が付いている事に気がついた。
「隊長、これを見てください」
「ちょ……なんだこれは……」
ハウルストはケルシクニに勧められるがまま、右側の機体胴体部分に目を向ける。
それは遠目でも見てもわかる程、深く抉れた傷が彼の愛機に付けられていた。
「そういや、敵エセックス級を雷撃して、避退している途中、異常に大きな衝撃を感じたな。もしかして、あの衝撃の正体は……」
「おそらくはそうですね。そしてこの傷の深さと大きさ……こりゃ明らかにボフォースを食らってますね。傷の形からして、弾は浅い角度で当たって別方向に
跳弾となったようですが……それでもケルフェラクの装甲板をここでも曲げるとは」
ケルシクニは被弾痕から、この機体が受けた機銃弾の通り名を口にした。
「ボフォースだと!?おいおい……よく生きて帰れたな……」
彼は背中に冷たい物を感じつつ、自らの強運に深く感謝するばかりであった。
部下が口にしたボフォースという言葉は、その名の通り、アメリカ海軍自慢の大口径機銃、ボフォース40ミリ弾から取ったものだ。
シホールアンル軍ワイバーン隊や飛空挺隊に取って、米海軍艦艇に標準装備されているボフォース機関砲は悪魔的な破壊力を有しており、地上に降りれば、
その硬い皮膚と強力な魔法防御で無敵になるワイバーンを容赦なく叩き落とし、魔法防御に頼らずとも、その硬い装甲で一定の強さを手に入れたケルフェラクも
たった数発浴びれば撃墜は避けられぬほど、ボフォースは非常に厄介な存在であった。
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:
ヨークタウン
◆oyRBg3Pm7w
:2025/02/28(金) 22:36:12 ID:t0EWw3k.0
その悪魔的な機関砲から浴びせられた射撃に、奇跡的とはいえ愛機は耐えたのである。
もし敵弾の射入角度が少しでも深ければ、彼ら2人は生きては帰れなかったであろう。
「こんな装甲に守られたケルフェラクでさえ、敵輪形陣に突入した17機中、生還したのは僅か4機。魔法防御が切れば、生身の体で突入を継続するワイバーン隊が、
空中騎士隊丸ごと全滅するのも仕方がない気がする」
「メリヴェライカ大佐の隊が実際そうでしたな……」
ケルシクニは沈んだ声音でハウルストに言う。
現に、954空中騎士隊の43騎のワイバーンは1騎も基地に帰還しておらず、司令部ではメリヴェライカ大佐を始めとした43騎全てが撃墜されたと推定している。
また、敵のジェット戦闘機を引き受けたグヴォン大佐の921空中騎士隊もまだ帰還騎がおらず、こちらも954隊と同じ憂き目にあったのではないかと言われていた。
それだけの犠牲を払って得た戦果が、エセックス級正規空母1隻撃沈、護衛艦4、5隻撃破である。
割に合わなすぎると、ハウルストは大声で叫びたくなったが、無理やり気持ちを切り替える事にした。
「そう言えば、もう1つの敵機動部隊はどうなったんだ?」
「さあ、まだ情報が入っておりませんので、何とも……」
「もう片方の敵機動部隊なら、別の部隊から戦果報告が入ったようです。なんでも、リプライザル級大型空母2隻に爆弾、魚雷多数を命中させて大破炎上させたようですぞ」
話を聞いていた整備兵が、横から入ってきた。
それを聞いたハウルストは、整備兵の言葉が信じられなかった。
「おい、それは本当か?」
「ええ。確かな情報です。なんでも、第19混成飛行隊の生き残りが大戦果として司令部に報告したようです。この他に戦艦を含む護衛艦6隻を撃沈、または撃破したようですね」
「第19混成飛行隊ねぇ……いい情報をありがとう」
ハウルストは整備兵に感謝の言葉を伝えつつ、ケルシクニと共に愛機を離れた。
「隊長、どうも素っ気ない返事ですね。まぁ、味方の損害がかなりの物ですから嬉しさが薄れるのも分かりますが」
「そうじゃない。俺が不安に思ったのは、第19混成隊の連中が戦果を過大に見積もっていないかだ。連中、戦力は戦闘ケルフェラク48機、攻撃型36機と、
うちよりも豪華だが……練度ははっきり言ってうちの方が格段に上だ。なんせ、うちは搭乗員の大半が米機動部隊攻撃の経験者で、地上攻撃の場数も踏んだ
熟練者ばかりだが、あちらは実戦経験といえば、数度の嫌がらせの地上攻撃ぐらいで、対艦攻撃は大半が未経験な奴ばかりだ。昨年1月のヒーレリ沖航空戦の
ようになっている可能性は高いぞ」
「それはまた……」
ケルシクニはそれ以上言葉が出せなかった。
その時、飛行場の南からワイバーン群が帰還してきた。
基地の地上要員は慌ただしく動き始め、飛行場に降り立つワイバーンの周りに取り付いていく。
「隊長、あのワイバーンは921隊ですね」
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:
ヨークタウン
◆oyRBg3Pm7w
:2025/02/28(金) 22:36:59 ID:t0EWw3k.0
「グヴォン大佐の隊だな。数は……ざっと見て35騎か。敵のジェット戦闘機と戦っていたようだが、結構な数が残ったな」
「ですが隊長、921隊は確か、54騎いましたよ。35騎という事は、残りの19騎はジェット戦闘機にやられたという事に……」
「マジか」
ハウルストは言葉に詰まってしまった。
グヴォン大佐の隊は、メリヴェライカ大佐の954隊と同様に幻影魔法を用いた特殊機動を会得した数少ない隊の1つである。
ハウルストは、いかにジェット戦闘機とはいえ、10機程度でグヴォン隊の54機を相手取るのは大分荷が重いし、もしかしたら、特殊機動で敵を幻惑して撃墜してくれるのでは?
と言った期待も胸の内に抱いていた。
だが、如何に特殊機動を行えるとはいえ、圧倒的な速度差が付いていては多少狙い辛い程度でしかなく、敵の素早い一撃離脱戦法の前には対処するのが精一杯であり、それどころか、
幻影魔法を発動する前に被弾するワイバーンが相次いだ。
現実は、非常に残酷な結果をもたらしていた。
帰還した歴戦のワイバーン乗りは、誰もが顔面蒼白となっていた。
「酷い戦いだったようだな。皆顔が死んでやがる」
「大分一方的にやられたようですね。ジェット機が相手じゃなかったら、今頃はあんな状態じゃなかったようですが……隊長、あれを」
異変に気が付いたケルシクニが、ハウルストの肩を叩き、その先に手を向けた。
帰還したばかりのワイバーンの周りに、一際多くの兵が群がっている。
ワイバーンは全身が血まみれであり、今にも息絶えそうな程に弱り切っているが、兵士達はその手前に集まって、しきりに声をかけていた。
「ちょっと行ってみよう」
ハウルストはケルシクニと共に、その人だかりの中に入って行った。
「おい、一体どうしたんだ?」
「これは大尉殿!実は、搭乗していた竜騎士が負傷しておりまして……」
「負傷しただと。誰なんだ」
ハウルストは、そのまま分け入り、負傷した竜騎士の側に歩み寄った。
「な……グヴォン大佐……!」
地面に横たわり、医療魔術師の介抱を受けている竜騎士は、954隊の指揮官であるグヴォン大佐であった。
グヴォン大佐は右腕を失い、胴体は血で染まっていた。
大佐の顔からは血の気が失せており、既に意識は無かった。
「おい、大佐は生きておられるのか?」
ハウルストは、介抱している魔術師に聞いた。
「大尉殿……大佐は死亡されました」
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:
ヨークタウン
◆oyRBg3Pm7w
:2025/02/28(金) 22:37:39 ID:t0EWw3k.0
「え……死亡、された……?」
「はい。ワイバーンから降り立った直後、急に地面に倒れられ、我々が駆けつけた頃には……もう既に……」
「なんてこった……」
ハウルストは、思わず絶句した。
「あいつらのせいだ!307隊が敵のジェット機小突かれたぐらいで逃げ出していなければ、数の差で敵を動きに難く出来たはずなのに……!」
大佐の傍らで立っていた、ある竜騎士が悔しげに叫んだ。
第921隊の第3中隊長であるヘリメ・ウィザントブ大尉は、憎しみの混じった声音で307隊の怯懦を厳しく批判した。
「307隊が逃げ出した?それはどういう事だ?」
ハウルストは思わず質問してしまった。
「どういう事だ?そんなの簡単さ。連中は初めて見るジェット機にビビり通しで何も出来なかっただけでなく、さっさと逃げちまったんだ!
それに対して、私達は必死に対応しようと頑張った。大佐なんて、最後の最後で敵のジェット戦闘機に痛打を浴びせて撃墜できた。なのに……
大佐は直後に、敵の攻撃で致命傷を負って……」
彼女は悔しさの余り、涙を流しながらその場から走り去ってしまった。
気まずい雰囲気流れる中、医療魔術師が恐る恐ると言った口調で、ハウルストに声をかけた。
「大尉殿、我々はひとまず、大佐のご遺体を移動致します」
「別部隊の人間が言うのも何だが……よろしく頼む」
ハウルストは医療魔術師にそう言うと、そそくさとその場から離れた。
「隊長、今日の戦闘では、自分達は余りにも多くの物を失っています。こんな状況で、明日以降はまともに戦えるんですか?」
「こんだけ頭数がやられまくったら、大規模な作戦は無理かもしれん。コソコソ動き回るぐらいならできるだろうが」
ハウスルトはケルシクニの質問に答えつつ、心中では、この作戦では敵の掌で踊らされていたような気がしていた。
確かに、帝国軍のワイバーン隊と飛空挺隊は、分散して突出してきた敵機動部隊に全力を集中して叩きまくった。
だが、間抜けな筈の敵は、その割には多くの備えを施していたように思えた。
ハウルストが参加した攻撃だけでも、最初から敵はこちらの動きを読んでいるかのような行動ばかりが見受けられていた。
序盤の敵戦艦の遠距離対空射撃から始まり、ジェット戦闘機の投入、低空で待ち伏せていた別働の敵戦闘機隊に、なぜか2隻も配備されていた重対空防御艦のウースター級。
また、輪形陣中央にも重防御を誇るリプライザル級大型空母が居座るなど、敵航空戦力の減殺だけを主目的に据えたと思しき対策が、これでもかという程に施されていた。
そこにシホールアンル側が真正面から突っ込んでしまったのだ。
そう、敵の罠とも知らずに……
「もしかしたら、間抜けだったのは敵じゃなく、俺達だった……というオチになるのか、これは」
ことの真相に気が付き始めたハウルストだが、その思考も、唐突に響いた空襲警報によって中断された。
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:
ヨークタウン
◆oyRBg3Pm7w
:2025/02/28(金) 22:38:11 ID:t0EWw3k.0
「な……空襲警報だと!?」
「あ、隊長!あそこに何かが!」
ハウルストの肩を叩いたケルシクニが、南の方角に指を向けた。
すぐに顔を振り向けると、ちょうどその方角から単発機が高速で飛行場に向かっていた。
「敵機だ!」
低空から迫ってきたその単発機は、そのまま高速で飛行場の上空を北に向けて飛び去っていった。
ハウルストは一瞬ながらも、単発機の特徴をハッキリと捉えていた。
「あれは、ハイライダー!アメリカ海軍自慢の高速偵察機だ!」
「ジャッキーブルーよりヘイスティングへ!敵飛行場を発見した!位置はシュヴィウィルグ運河北東から約38マイル!飛行場には帰還したばかりと思しき飛空挺、
ワイバーン多数が駐留している!数は50以上!」
「こちらヘイスティング、了解した!今よりそちらに進路を向ける!」
ヘルマン・ヴィーゼル大尉は短い交信を終えた後、愛機を上昇させた。
機首に搭載されたプラット&ホイットニー社製R-2800空冷18気筒2100馬力エンジンは、憎たらしい敵がようやく見つけられた事を喜んでいるかのように、
猛々しく唸りまくった。
「さて、お礼参りの時間だ。覚悟しよろ、シホット!」
午後2時20分 シホールアンル帝国西部トゥラポン上空
第58任務部隊第1任務群より発艦した第1次攻撃隊が目標に到達したのは、ハイライダーが目標を発見してから15分後の事であった。
空母ランドルフから発進した攻撃隊38機(F8F24機、A-1D16機)は、他の母艦航空隊と合同で目標の飛行場に接近しつつあった。
「こちらヘイスティングリーダー。目標の飛行場を視認した。この他に、西に5マイル離れた森林地帯より発進しつつあるワイバーンを視認!そのワイバーンの周囲にも
別の基地がある公算、極めて大!」
ヘイスティングリーダーこと、TG58.1第1次攻撃隊指揮官兼、空母ランドルフ攻撃隊指揮官であるボニー・ベンジャミン少佐は次々に命令を下し始めた。
「ランドルフ隊はハイライダーが発見した飛行場を叩く。ヴァリー・フォージ隊、ラングレー隊は新手の飛行場を叩け!全機突撃!」
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ヨークタウン
◆oyRBg3Pm7w
:2025/02/28(金) 22:38:42 ID:t0EWw3k.0
彼の命令が下るや、各隊がそれぞれの目標に向かい始めた。
TG58.1より発艦した攻撃隊は、ランドルフ隊の38機の他に、ヴァリー・フォージ隊の44機(F8F、F4U各16機、A-1D12機)、ラングレー隊の12機(F6F12機)の
計94機で構成されている。
この他に、第2次攻撃隊として3空母より発艦した86機が30分後に到達する予定となっている。
また、TG58.1とは別に行動しているTG58.4からも、送り狼の任を受けたハイライダーの後に第1次攻撃隊120機、第2次攻撃隊98機が出撃し、別地域で見つけた
敵秘密飛行場を捕捉、攻撃に移ろうとしていた。
ベンジャミン少佐は、直率する16機のA-1Dスカイレイダーに取り付いていたF8Fが増速し、一足先に飛行場に殺到していく様を後方から眺めていた。
敵の基地周辺には対空陣地が配置されていたらしく、迎撃の高射砲弾や対空魔導銃が盛んに発砲してきた。
この時、森の中に広がる飛行場の姿が、少しずつだが周りの景色と同化しつつある事に気付いた。
(ほほぅ、もしかして、敵は幻影魔法を使用して飛行場をカモフラージュしようとしているな)
ベンジャミン少佐は、敵の狙いが飛行場の隠匿にあると確信したが、それはもはや手遅れであると確信した。
何故なら、敵の対空砲火を潜り抜けたF8Fが、早くも敵飛行場に機銃掃射とロケット弾攻撃を見舞っていたからだ。
敵飛行場の片隅や真ん中辺りで爆炎が踊った。
ロケット弾が敵ワイバーンの列線や敵施設に命中したのだ。
F8Fは上空に敵の迎撃機が上がっていないため、思う存分地上掃射を行った。
F8Fに遅れる事10分、16機のスカイレイダーはようやく、敵基地の上空に到達した。
「これより緩降下爆撃で敵基地を攻撃する!新兵器の初実戦だ、開発スタッフに恥をかかさんように狙って落とせ!」
ベンジャミン少佐は高度1000メートルまで上昇させた愛機を、緩めの降下角度で高度を下げ始めた。
スカイレイダーに搭載されている3発の新式爆弾は、今日が初の実戦使用となる。
事前の話によると、敵地上部隊の集結地や飛行場、敵施設の密集地に、効果を発揮すると言われていた。
最初はナパーム弾と似たような物になるかと思ったが、詳細を聞くと、実際はナパーム弾のような焼夷弾では無いのだが、それでも撒き散らされた子弾の爆発や
断片で甚大な被害を与えられると言われている。
それが机上の空論であるか否かは、今日の空襲で明らかになるであろう。
基地周辺の対空陣地が迎撃の砲弾や、魔導銃を盛んに打ち上げてくる。
既に、F8Fに幾つかの対空陣地が潰されていたため、撃ち上げてくる砲弾や弾幕の量は薄いものの、精度は意外と良い。
(うかうかしていたら落とされるかも知れんな)
ベンジャミン少佐は心中でヒヤリとしつつも、愛機を敵飛行場に接近させていく。
16機のスカイレイダーは、8機ずつ楔形隊形、計2つを構成しつつ、時速250マイル(400キロ)で飛行場に突入してきた。
緩い角度で角度で降下している為、敵の対空陣地から迫る光弾や砲弾の破片が次々と機体に命中するが、ベンジャミン隊は1機の被撃墜機も出さぬまま、
飛行場の真ん中付近、高度600に達したところで次々と爆弾を投下した。
爆弾は滑走路やワイバーン、飛空挺の駐機する滑走路脇に降り注ぐと、高度50メートル付近で次々と空中で弾けた。
その直後、飛行場全体に夥しい数の小爆発が沸き起こり、飛行場は瞬時にして爆煙に覆い隠されてしまった。
900
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ヨークタウン
◆oyRBg3Pm7w
:2025/02/28(金) 22:39:18 ID:t0EWw3k.0
午後2時55分 シュヴィウィルグ北方35マイル地点
西部臨時航空集団の司令官であるスタヴ・エフェヴィク中将は、司令部の窓際から、空襲を受けて炎上する官舎を見つめている所に、新たな空襲警報を聞いていた。
「司令官!敵の新たな空襲です!」
「何!?敵はまだ艦載機を飛ばしていたのか!?」
彼は、この日何度目か分からない衝撃を受けていた。
彼の指揮する西部臨時航空集団は、投入可能な戦力全てを敵機動部隊攻撃に投入し、ようやく一息ついた所に突然として、別の敵機動部隊から発進したと思しき
艦載機の航空攻撃を受け、甚大な損害を被ってしまった。
これまでに、5つの秘密基地が、攻撃隊の帰還直後に爆撃を受け、少なく見積もってもワイバーン、飛空挺100前後が地上撃破されるという最悪の事態に見舞われていた。
この時点で、エフェヴィク中将は攻撃した2個空母群以外に、更に別の部隊が存在している事に気付いた。
敵の艦載機は、1隊が南東から出現し、もう1隊が南西側から基地に到達した事から、敵は新たに2個空母群が作戦行動中であると思われた。
エフェヴィク中将の司令部が置かれている秘密基地は、南西側から出現した攻撃隊に襲われており、帰還して地上に待機中であったワイバーン49騎中18騎が地上撃破の
憂き目に遭い、基地施設にも損害が出ていた。
敵が去った後、彼は今後の攻撃を続行するか否かを幕僚達と話し合っていたが、そこに新たな敵攻撃隊が姿を現したのである。
「敵は10分ほどでこちらに到達します!司令官、急いで防空壕に避難してください!」
「くそ!またか!」
エフェヴィク中将は部下に勧められるがまま、先程の空襲で避難した簡易防空壕に慌てて戻った。
(失敗した!まさか、俺達が戦っていた2個空母群以外に、別の2個空母群が待機していたとは……俺達は、まんまと敵に騙されてしまった!)
彼は目の前の2個空母群だけに攻撃を集中させた事を深く後悔していた。
今思えば、不審に思った事は無い訳ではなかった。
特に、敵が四箇所の味方拠点を目標に、朝一に一斉に航空攻撃を行った後、各拠点からの敵来襲の報告がパタリと止んだ時が一番不審に思った。
だが、眼前の1個空母群がなんの警戒もなく、悠々と洋上を航行し、その極上の餌を完璧に仕留め切るという誘惑が、ここ2、3ヶ月で培った筈の警戒心を
あっさりと吹き飛ばしてしまった。
そして、無警戒のまま油断した筈の餌は、実は大量の戦闘機と防空の充実した護衛艦を集中配備した対空専門部隊と言っても過言では無いほどの猛烈な対空防御を展開し、
こちら側の攻撃を非常にやり辛くし、結果的に、決戦部隊は戦力を加速度的に消耗してしまった。
そして、今や消耗し尽くしたワイバーン隊や飛空挺隊は、反撃に打って出た敵機動部隊に対して、成すがままにされているのである。
(これでは600騎どころか、半数以上を失っていてもおかしくはない。もはや、万策尽きてしまった……)
エフェヴィクは失意のうちに防空壕に辿り着くと、幕僚と共に豪内の椅子に腰掛けた。
やがて、味方の対空陣地が発砲を開始した後に、敵機の空襲が始まった。
901
:
ヨークタウン
◆oyRBg3Pm7w
:2025/02/28(金) 22:40:09 ID:t0EWw3k.0
先程の空襲では、30機ほどの米艦載機が来襲して、基地に損害を与えたが、敵は地上待機しているワイバーンを集中して攻撃したため、基地施設の損害は官舎3つが
破壊されただけで軽微なものであった。
だが、今度の空襲は先程の物より明らかに激しかった。
先の空襲では聞かれなかった、空を圧するかのような甲高い轟音が断続的に響き、それが鳴り止んだと思いきや、耳を擘くような轟音と強い衝撃が防空壕に伝わった。
「急降下爆撃機の攻撃ですな」
部下の幕僚が小声でエフェヴィクに伝えてくる。
「恐らく、ヘルダイバーの編隊が基地を攻撃中なのでしょう」
「そうか……」
エフェヴィクが素っ気無く返した直後、強烈な衝撃が防空壕に伝わり、豪内にいた全員が、衝撃で激しく揺さぶられ、天蓋から埃や土が夥しく舞い落ちた。
「直撃か!?」
「いえ、直撃ではありません。ですが、至近弾のようです」
エフェヴィクの叫び声に、部下が即座に反応する。
空襲はそれだけに止まらず、今度は連続した弾着音が伝わり、防空壕内は再び衝撃に包まれた。
空母ゲティスバーグより発艦した攻撃隊は、今しもエフェヴィク中将が司令部を置く秘密飛行場に猛攻を加えていた。
TG58.4より発艦した第2次攻撃隊は、空母レンジャーからF8F12機、F4U24機、空母ゲティスバーグからF6F24機、SB2C12機、TBF12機、
軽空母サンジャシントからF8F14機の計98機で編成されており、ゲティスバーグ隊はエフェヴィク中将の秘密基地に、レンジャー隊、サンジャシント隊は
制空を行いつつ、新たに発見した秘密飛行場を猛爆した。
ゲティスバーグ隊は、昨年初頭までによく見られたF6F、SB2C、TBF(実際はTBM)トリオというやや古めの構成であり、これは最新鋭機であるF8F、
A-1Dの配置が間に合わず、従来機の構成で航空団を編成していたが、この古めの組み合わせでも、既に手負いの秘密基地には充分過ぎるほどの打撃力を発揮した。
攻撃方法はこれまでに手慣れたやり方であり、まず高度4000付近にまで上昇したヘルダイバー隊が急降下爆撃で滑走路や官舎、ワイバーン格納棟と言った付帯設備を爆撃し、
その仕上げにアベンジャー編隊が水平爆撃を行うため、高度2500付近から基地上空に侵入し、基地施設を覆うような感じで満遍なく絨毯爆撃を行った。
この攻撃で、エフェヴィクが司令部置いていた司令棟を含む主要施設や、滑走路は軒並み破壊され、秘密基地は壊滅状態に陥った。
防空壕内に断続的に響いていた騒音は、徐々に収まり始めた。
午後3時20分には、敵機動部隊から襲来した艦載機は全て撤退し、基地上空は静寂に包まれていた。
防空壕から外に出たエフェヴィクら一行は、変わり果てた基地の姿を見て愕然となった。
「かなりやられたな……見ろ、司令部のあった2階建ての建築物が完全に爆砕されている。地上で魔力を回復中に、飛べなかったワイバーンも軒並みやられたか」
902
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ヨークタウン
◆oyRBg3Pm7w
:2025/02/28(金) 22:42:20 ID:t0EWw3k.0
「司令官!第51混成飛行団司令部より緊急信!敵の空襲により、上空退避した一部のドシュダム、ケルフェラクを除いた全てのワイバーン、飛空挺が地上撃破
されたとの事。被害数は60以上!」
「……もはや、これまでだな」
魔導士官から報告を受けたエフェヴィクは、何かの糸が切れたような感覚に見舞われた。
「諸君!残存する全ワイバーン隊、並びに飛空挺隊に命令!各隊は、可能な限り速やかに現所属基地より離脱し、北方に退避!以後は戦力の再編を行いつつ、
遊撃戦を主体とした戦闘に移行する、以上だ!」
「し、司令官!いきなりそのような命令を出されては混乱が生じます!それに、敵機動部隊への攻撃を中止するとなると、我が軍は敗北したと取られかねませんが」
「君!既に我々は敵機動部隊に敗北したのだ。見ろ、この秘密基地の惨状を。敵はこちらが知恵を振り絞って立てた作戦の、その更に上を行っているのだ。
第一、こちらにある筈だった地の利は、むしろ向こう側にあった。私は忘れておったよ……空母機動部隊とは、文字通り、ワイバーン基地や飛行場その物が自由に行動して、
好きな場所、タイミングで攻撃できる艦隊の事を指している、とな」
彼は自虐気味に苦笑しながら、部下にそう言い放った。
エフェヴィクは、眼前の敵を注視しすぎ、主目標以外の敵が分散したまま、ずっと所定の位置を攻撃し続けるであろうという、ある種の陸軍ワイバーン隊の常識を
当てた決めつけで部隊を動かした事が、この大敗北の始まりだったと、たった今確信したのであった。
午後4時30分 第5艦隊旗艦インディアナポリス
「長官、TG58.1、TG58.4より発艦した第2次攻撃隊が、今しがた全機帰還したとの報告が入りました。損害は被撃墜6、被弾20です。戦果に関してですが、暫定ながら、
敵秘密基地は第1次、第2次合わせて7箇所を攻撃し、敵施設の破壊と、敵ワイバーン、飛空挺多数を地上撃破し、迎撃に上がったワイバーン5機を撃墜したとの事です」
「素晴らしい。攻撃隊は見事に反撃を成功させたな」
カール・ムーア参謀長は、やや弾んだ口調で報告を伝えた。
報告を聞いたスプルーアンスは、満足気に深く頷いた。
更に、朗報は続く。
「長官!TG58.3司令部よりグラーズレット・シーに関する追加報告が入りました。同艦は浸水の阻止に成功、後部機関室も稼働できるため、あと1時間ほどで
低速ながら、航行が可能になるとのことです」
「そうか。グラーズレット・シーは救えるか」
「敵の魚雷が3本のみ命中した事と、片側に3本全てが集中して命中しなかった事が、同艦が生還する主な要因になったようです」
「なるほど。つまり、当たりどころが良かったと言う訳だな」
「そうなります」
「しかしながら、艦艇の損害も少なくありませんが、迎撃戦闘に出撃した戦闘機隊の被害もバカになりません。TG58.3、TG58.2の戦闘機損失数は、先の敵攻撃隊
迎撃時に失われた機と、修理不能機も含めれば300機前後にまで上り、戦闘機の稼働数は、現時点でTG58.3が120機、TG58.2が100機に減少しています。
無論、これは即時出撃できる戦闘機の数ですので、被弾損傷した機を修理すればこの限りではありませんが、それでも、出撃可能数は通常時の半数強しかありません。
損耗率は5割に達する勢いです」
903
:
ヨークタウン
◆oyRBg3Pm7w
:2025/02/28(金) 22:42:51 ID:t0EWw3k.0
航空参謀のジョン・サッチ大佐が、浮かれ気味の司令部内に冷や水を浴びせるように、戦闘機隊の実情を知らせてくる。
「パイロットの損耗も少なくありません。ですが、艦隊の前面に潜水艦部隊を配置したことが功を奏し、現在も脱出したパイロットの救助報告が上がり続けています。
報告の中には、敵側の搭乗員も共に救助したという物も含まれており、情報収集の点においても今後に期待できるかと思われます。それはともかく、我が方の戦闘機の
減少は見過ごせる物ではありません。ここは一時的に後方に下り、護衛空母から機体の補充を速やかに行うべきかと」
「戦闘機の補充については、私もそのように行うべきであると考えている。いや、そもそも敵はかなりの数の航空戦力を消耗した事から、今後は元のゲリラ戦的な
部隊運用にならざるを得ないであろう。それを強要させたと言う事は、この海戦は我々の勝利と呼んでも過言ではなかろう」
スプルーアンスがそう断言すると、ムーア参謀長を始めとする第5艦隊司令部一同は、誰もが深く頷いた。
「また、事前に各種対策を施した事も、艦隊の損耗率低下に大きく貢献している。特に、作戦参謀が提言した、作戦に参加する全駆逐艦の魚雷撤去は、艦艇の損失を
抑える点において、著しい効果を表した。もし魚雷を搭載したままであったら、今頃は駆逐艦の損失も増えていただろう」
司令部内の視線が、フォレスタル作戦参謀に注がれた。
今回の作戦で、第58任務部隊各艦は様々な対策を施したが、特に力を入れた物の一つが、各高速空母群に所属している、直衛駆逐艦からの全魚雷の撤去であった。
駆逐艦にとって、魚雷は大物の戦艦すらも撃沈できる、まさに伝家の宝刀とも言える大切な武器であるが、威力が大きい武器は、逆に自らの身も破滅させる事になりかねない。
これまでの海戦で、敵航空機の爆弾が魚雷発射管に命中し、一気に轟沈に至った事例が幾つも見受けられ、第1次レビリンイクル沖海戦では、損失した駆逐艦のうち、
半数以上が魚雷発射管の誘爆が原因で撃沈判定を受けていた。
また、アメリカ側が勝利した海戦でも、駆逐艦の損失要因の一つに魚雷の誘爆が必ずと言っていいほど上がっており、スプルーアンスは今回の作戦でも、魚雷の
誘爆が艦艇の損耗率を跳ね上げかねない現状を憂いていた。
そこに、作戦参謀のフォレステル大佐が思いがけない提案を持ちかけたのだ。
それが、参加予定の駆逐艦から魚雷を全て撤去するという、通常ではなかなか発案し難い代物であった。
ある意味、これはとんでもない提案であり、駆逐艦の艦長達からは、乗員の士気を大きく低下させる暴挙として猛反対にあった。
しかし、この提案は、今の状況を鑑みると、実情に合致したと言える物であった。
宿敵であったシホールアンル海軍残存戦力は、軒並み北海岸に撤退しており、昨年末まで行われていた艦隊決戦は、合衆国海軍が制海権を収めた事でもはや生起しない。
艦隊決戦が起こらなければ、魚雷はもはや無用でしかなかった。
その無用な魚雷が、場合によっては搭載している艦そのものを破滅させかねないのだ。
スプルーアンスは、高速機動部隊に所属する全駆逐艦の艦長達を集め、作戦の意図を説明したのちに魚雷撤去の理解を求めた。
こうして、各駆逐艦から魚雷を撤去したTF58は、敵航空部隊の猛攻の前に次々と被弾したが、損傷を受けた駆逐艦は殆どが魚雷発射管付近や、発射管自体に損傷を受けていた。
フォレステル大佐の案は図に当たり、艦艇損失の抑制効果が見事に発揮された他、余剰となった水雷科員がダメコン班の一員として活躍したという、思わぬ副産物も生まれていた。
「さて、これからは、損傷の大きな艦を後方に返し、残った艦で上陸部隊を援護しなければならない。まずは、グラーズレット・シーやリプライザルを始めと
する損傷の大きな艦を全て、後方に下げる。参謀長、キティホークは今どうなっているかね?」
「TG58.2司令部からの報告によりますと、キティホークは現在応急修理中ですが、浸水の拡大は既に防いでおり、修理が終われば28ノットまではだせ、航空機の運用も可能との事です」
「よし、TG58.2も何とか前線に踏み止まれるな。念の為、明日の正午まで様子を見て、敵航空部隊の大規模な動きが見られなければ、正午以後に待機していた上陸部隊に行動開始を命じる」
スプルーアンスの新たな命令が、司令部の幕僚らに伝わって行った。
「その後は、予定通り牽制行動を行い、第15軍にトヴァリシルィ上陸を行ってもらおう」
904
:
ヨークタウン
◆oyRBg3Pm7w
:2025/02/28(金) 22:43:24 ID:t0EWw3k.0
午後4時50分 シュヴィウィルグ沖南方215マイル
ハルフォード大尉は、低空飛行に移行中の敵雷撃隊を迎撃中、突然後方から猛烈な射弾を浴びせられた。
咄嗟の出来事に自らの失態を悔やむも、機体の状況は急速に悪化しつつあったため、彼は高度600メートルまで降下した所で脱出した。
愛機は右エンジンから右主翼部分に被弾が集中し、右エンジンから火を噴いたまま、機首から先に海面に叩き付けられた。
パラシュートで降下しつつ、愛機の最期を看取った彼は、悲しみに暮れたまま、冷たい海上に着水した。
その後、彼は色々な物を目にしたり、意外な者の登場に驚きつつも、午後4時20分には、ピケット任務から終えて艦隊に戻りつつあった、フレッチャー級駆逐艦の
ブレインに救助された。
ブレインの甲板上からタバコを吸って呆けていたハルフォード大尉は、後ろからブレインの航海長であるウェイズ・タンパート少佐から声をかけられた。
「これはこれは客人どの、調子は如何ですかな?」
「おお、タンパート航海長。おかげで元気でいられています。そう言えば……自分と一緒に救助されたあいつ……シホットの女性パイロットですが、名前は分かりましたかな?」
「今尋問中だが、分かった事だけ伝えとく。彼女の名前はフラチナ・カルポリポフ中佐で、第78戦闘飛行隊の指揮官のようだ。元々は第653戦闘飛行隊の指揮官だったが、
再編で名称が変更されたと、彼女はそう説明していた」
「あの若さで中佐ですか?しかも、自分よりも階級が上だったとは……」
「俺も驚いたよ。だが、彼女の身分証を見た限りでは紛れもなく本物だった。今日の出撃では、戦闘機の誘引を目的として上層部から出撃を強要され、渋々俺達の
艦隊付近まで出撃したそうだ」
「彼女の上司はなんとも無能ですな。性能的に劣るドシュダムを、こんな洋上遠くまで飛ばさせるとは……と、余り言いたい放題言えませんな。何しろ、自分はタイガーキャットに
劣るドシュダムに撃墜されてしまいましたから……」
「まぁ、あまり気落ちせんでもいいだろう。それに、戦闘機は元々消耗して上等な代物だ。一番大事なのは……君が生き延びた事にある。その点だけ忘れなければ良い」
「はぁ……そこは分かりますが、しかし、どうしても悔いが残ります。自分がもっと注意深く動き回り、敵の雷撃機を3、4機ほど阻止していれば、艦隊の損害も
抑えられたかもしれませんし」
ハルフォードはそこまで言ってから、再びタバコを吸った。
「その気持ちは分かる。ただ、戦争という物は、不確実な出来事が多く起こる。君を落としたドシュダムも、そこを狙ってきたんだろう。それは同時に、敵にも起こる事だ。
まぁ、今はともかく、ゆっくり休みたまえ。余りくよくよ考えすぎても、余計に疲れるだけだぞ」
タンパート航海長は微笑みながらそう返すと、ハルフォードの右肩をポンと叩きながら、館内に戻って行った。
「考えすぎかぁ……ま、それもそうか」
ハルフォードはそう一言呟いてから、際まで吸い切ったタバコを海に捨てた。
905
:
ヨークタウン
◆oyRBg3Pm7w
:2025/02/28(金) 22:45:59 ID:t0EWw3k.0
シュヴィウィルグ沖海戦 両軍損害比較
アメリカ海軍第5艦隊
損失 軽空母ノーフォーク ライト 重巡洋艦セントポール 駆逐艦4隻
大中破 正規空母グラーズレット・シー リプライザル 重巡洋艦ボストン 軽巡洋艦ロアノーク 駆逐艦6隻
小破 正規空母サラトガⅡ 戦艦ミズーリ 重巡洋艦ノーザンプトンⅡ 軽巡洋艦フェアバンクス
艦載機喪失312機
シホールアンル帝国軍
ワイバーン612騎 飛空挺82機撃墜
ワイバーン142騎 飛空挺67機地上撃破
損失数 903
秘密基地7撃破
906
:
ヨークタウン
◆oyRBg3Pm7w
:2025/02/28(金) 22:47:12 ID:t0EWw3k.0
シホールアンル帝国軍 作戦参加部隊戦闘序列
第129混成飛行団
第921空中騎士隊
ワイバーン54騎
第954空中騎士隊
ワイバーン43騎
第711空中騎士隊
ワイバーン44騎
第4攻撃飛行隊
攻撃型ケルフェラク24機 戦闘型18機
計183
第66混成飛行団
第456空中騎士隊
ワイバーン50騎
第452空中騎士隊
ワイバーン67騎
第307空中騎士隊
ワイバーン48騎
第668空中騎士隊
ワイバーン48騎
第78戦闘飛行隊
ドシュダム46機
第79戦闘飛行隊
ドシュダム36機
計295
第92海軍母艦飛行団
海軍第23空中騎士隊
ワイバーン36騎
海軍第4空中騎士隊
ワイバーン24騎
海軍第67空中騎士隊
ワイバーン62騎
海軍第9空中騎士隊
ワイバーン36騎
海軍第55空中騎士隊
ワイバーン48騎
計206
907
:
ヨークタウン
◆oyRBg3Pm7w
:2025/02/28(金) 22:47:48 ID:t0EWw3k.0
第51混成飛行団
第551空中騎士隊
ワイバーン54騎
第594空中騎士隊
ワイバーン45騎
第19混成飛行隊
戦闘型ケルフェラク 48機 攻撃型36機
第89戦闘飛行隊
ドシュダム 36機
第52戦闘飛行隊
ドシュダム 36機
計255
第229混成飛行団
第779空中騎士隊
ワイバーン48騎
第678空中騎士隊
ワイバーン52騎
第230空中騎士隊
ワイバーン44騎
第231空中騎士隊
ワイバーン56騎
第1020空中騎士隊
ワイバーン32騎
計232騎
第45混成飛行団
第8戦闘飛行隊
ドシュダム 48機
第9戦闘飛行隊
ドシュダム 32機
第919空中騎士隊
ワイバーン 48騎
第675空中騎士隊
ワイバーン61騎
第133空中騎士隊
ワイバーン48騎
計237
第51海軍母艦飛行団
海軍第44空中騎士隊
ワイバーン45騎
海軍第30空中騎士隊
ワイバーン21騎
海軍第48空中騎士隊
ワイバーン31騎
海軍第70空中騎士隊
ワイバーン48騎
海軍第8空中騎士隊
ワイバーン48騎
計193
第47混成飛行団
第239空中騎士隊
ワイバーン55騎
第469空中騎士隊
ワイバーン48騎
第900空中騎士隊
ワイバーン48騎
第849空中騎士隊
ワイバーン48騎
計199
908
:
ヨークタウン
◆oyRBg3Pm7w
:2025/02/28(金) 22:48:21 ID:t0EWw3k.0
第58任務部隊 各母艦航空隊航空機数
TG58.1
正規空母ランドルフ
F8F 72機 A-1D 24機 S1A 4機
正規空母ヴァリー・フォージ
F8F 36機 F4U 36機 A-1D 24機 S1A 4機
軽空母ラングレー
F6F 36機 TBF9機
TG58.2
正規空母リプライザル
F7F 36機 F8F 48機 A-1D48機 S1A 12機
正規空母キティーホーク
F7F 36機 F8F 48機 A-1D48機 S1A 12機
軽空母ノーフォーク
F8F 36機 TBF9機
軽空母タラハシー
F6F 36機 TBF9機
TG58.3
正規空母サラトガ
F8F72機 F7F36機 FH-1 16機 A-1D16機 S1A 5機
正規空母モントレー
F6F 50機 F4U 36機 SB2C12機 S1A 4機
正規空母グラーズレット・シー
F8F 48機 F4U 36機 SB2C15機 S1A 4機
軽空母ロング・アイランド
F8F 36機 TBF 9機
軽空母ライト
F6F 36機 TBF 9機
TG58.4
正規空母レンジャー
F6F 48機 F4U 36機 A-1D 12機 S1A 4機
正規空母ゲティス・バーグ
F6F 48機 F4U 24機 SB2C12機 TBF 12機 S1A 4機
軽空母サンジャシント
F8F 36機 TBF 9機
軽空母プリンストン
F6F 36機 TBF 9機
909
:
ヨークタウン
◆oyRBg3Pm7w
:2025/02/28(金) 22:48:55 ID:t0EWw3k.0
SS投下終了です
910
:
名無し三等陸士@F世界
:2025/03/01(土) 23:01:01 ID:qvr6pApI0
投稿乙!
911
:
ヨークタウン
◆oyRBg3Pm7w
:2025/03/01(土) 23:34:00 ID:t0EWw3k.0
>>910
氏 ありがとうございます!
912
:
名無し三等陸士@F世界
:2025/03/02(日) 19:03:32 ID:qkVv6QMo0
乗り遅れましたが投下乙です
まさかのドシュダム活躍、そしてカレーに続きサーターアンダギー?の登場、この世界の日系人は食の分野で大分アメリカに貢献してますね!
故郷の味の登場でイントレピッドの沖縄コンビの士気もますます上がるか!?
913
:
ヨークタウン
◆oyRBg3Pm7w
:2025/03/02(日) 20:47:33 ID:t0EWw3k.0
>>912
氏 ありがとうございます!
弾除け程度には役立つじゃろ……程度なドシュダムが、まさか雷撃隊を導いてくれましたから
ある意味大金星でした
>サーターアンダギーもどき
クラックドーナツですね。まんまそれですw
ただ、ドーナツよりもシンプルに作れますし、味も良いので人気上昇中です
沖縄系アメリカ人コンビに限らず、米軍兵士の士気を程よく維持してくれていますね
914
:
名無し三等陸士@F世界
:2025/03/05(水) 22:45:18 ID:pHU8Z2AY0
書いた本人が忘れていた8年前の外伝キャラを出してくれるなんて感謝しかない
ttps://www.pixiv.net/artworks/127899984
915
:
ヨークタウン
◆oyRBg3Pm7w
:2025/03/07(金) 21:24:35 ID:t0EWw3k.0
>>914
外伝氏!お久しぶりです!!
私は勿論覚えておりましたぞ。
「とても魅力的なキャラでしたので、この本編にちょろっと出て頂きました
扱い的には、戦争中の不幸に見舞われた形になったのでちと可哀想かなと思いましたが……
それはともかく、今後とも、拙作をどうかよろしくお願い致します!
916
:
名無し三等陸士@F世界
:2025/03/09(日) 07:59:01 ID:pHU8Z2AY0
つい筆が走って
ttps://www.pixiv.net/artworks/128012921
917
:
ヨークタウン
◆oyRBg3Pm7w
:2025/03/09(日) 20:38:13 ID:t0EWw3k.0
>>916
氏
良いものを見せて頂き、ありがとうございます!
個人的にはドシュダムの数少ないドヤ顔シーンを見れたのが一番嬉しかったです。
918
:
外パラサイト
:2025/03/14(金) 21:12:08 ID:pHU8Z2AY0
実に8年ぶりのSS投下
さすがに気分が高揚します
919
:
外パラサイト
:2025/03/14(金) 21:13:05 ID:pHU8Z2AY0
雲一つ無い青空に廃車寸前の旧型フォルクスワーゲンのような爆音が響く。
ここはシュヴィウイルグ近郊に設営されたシホールアンル軍秘密訓練基地の一つ。
その滑走路脇で大空を飛び交う無数のドシュダムを見上げる二人の少女の姿があった。
優しげな顔立ちをした茶髪の少女は特務機関の暗殺からドシュダム乗りに転向したもと暗殺兵の55号。
キツ目な顔立ちをした銀髪の少女はやはりもと暗殺兵の66号。
二人は「赤の12番」として名高いニポラ・ロシュミック少尉の653飛行戦隊時代からの部下だ。
「だいぶマシになってきた」
「マシになってくれなければケルフェラク乗りに好き放題された意味がない」
「楽しい時間だった」
「全面的に否定する」
無言で見つめ合ったあと、おもむろに服を脱いで組み手を始める55号と69号。
下着姿の少女二人が若い肉体を激しくぶつけ合う光景に集まった野次馬たちは一様に鼻の下を伸ばす。
だが特殊な育ちゆえ情緒面に問題のある二人はまったく気にしていなかった。
時に1486年(1946年)1月23日、秘密訓練基地に移動した653飛行戦隊は損耗した機材と人員の補充を受けるとともに78飛行戦隊に改名される。
そして来たる決戦に備えて搭乗員の錬成に努めよとの命令を受けたのだが-
「錬成と言われてもねえ…」
653飛行戦隊改め78飛行戦隊司令フラチナ・カリポルポフ中佐は補充要員の調書を見ながら溜息をついた。
全員が実戦経験なし、そのうえ揃って少年少女といっていい年頃だ。
「バルジ大作戦」のヘスラー大佐ならこう言っただろう
「子供です、役には立たない」
だが促成栽培の新米が乗っても戦闘機として最低限の仕事は出来てしまうからには戦力として活用せざるを得ない。
安く大量に作れて素人でも手軽に扱える。
そして秋の木の実のように簡単に墜ちる。
良くも悪くもそれがドシュダムだった。
「私が何とかしますよ」
「頼むわね」
戦隊指令であるフラチナが書類仕事と上級司令部との折衝を受け持ち飛行士の面倒はニポラが見る。
共に苦労を重ねてきた二人の連携に齟齬は無かった。
920
:
外パラサイト
:2025/03/14(金) 21:13:58 ID:pHU8Z2AY0
「傾注、これから君たちが乗るドシュダムの実戦での扱い方を説明する」
ニポラはまずドシュダムに出来ること、出来ないこと、やってはいけないことを経験豊富な飛行挺乗りの立場から懇切丁寧に説明することから始めた。
そして速度性能で勝る米軍機と速さで勝負してはいけない、ドシュダムの強み-というよりは唯一の長所-である低速域での変態的な運動性能を活かして戦うのだと訓示する。
「敵の攻撃をかわして離脱される前に狙い撃つ、一瞬のチャンスを活かさなくてはいけない」
新人達の生存率を少しでも上げるためニポラは知恵を絞った。
月月火水木金金の勢いで飛行訓練を課すとともに、飛行挺同士の模擬戦をより実戦に即したものにするため実弾射撃を取り入れることはできないだろうかと考える。
飛行隊のエースで4番から“お願い”されたフラチナはケルフェラクに乗ってブイブイ言わせていた頃に関係を持った軍の高官に連絡を取り、その高官がコネを持つ別の高官に連絡を取りといったなんやかやのすえ白髪頭の民間人がやって来た。
確かな腕前と面倒見の良さであっという間に整備員たちから「おやっさん」と頼りにされるようになった初老のエンジニアはニポラの要望を聞くと銃身に装着する減圧チューブ-口の悪い連中は「皮被り」と呼んだ-を一晩で作ってみせた。
これによって光弾の威力を下げ、標的機に損傷を与えず機体表面で花火のように弾けることで命中弾を確認できるようにしたのだ。
なお報酬については事前に何の取り決めもなかったが、おやっさんは55号が肩を揉んでくれればそれで十分だと言って笑った(死んだ孫娘に似ているのだそうだ)。
技術的な問題を解決したら次は訓練メニューの内容である。
模擬空戦に必要なのは練習相手、それも性能が米軍機に近い機体だ。
というわけで隣の基地に展開しているケルフェラク隊に協力を頼みにいったニポラは当然のごとく対価を要求された。
ごく一部の人間のできた連中を除いた大方のケルフェラク乗りにとって、ドシュダム乗りは見下して当然の下層民でありひと山幾らの消耗品だ。
そんな彼らがドシュダム隊の練度向上のために標的役をやって欲しいと頭を下げる器量よしなニポラに邪な感情を抱かないわけもなく。
「噂のエース様が相手してくれるなら考えてやってもいいぜ」
宿舎に連れ込まれたニポラの肢体に四方八方から手が伸びる。
「『赤の12番』の腕前、ベッドの上で確かめさせてもらおう」
のしかかってくる獣欲にギラついた顔。
すでに戦争の狂気にどっぷりと漬かっているニポラである、いまさら自分の肉体で取引することに何の抵抗もない。
(まあいいか…)
ニポラは押し寄せる牡津波に身を任せた。
やっぱり一晩で一個飛行隊全員を相手にするのは無茶でした。
921
:
外パラサイト
:2025/03/14(金) 21:14:54 ID:pHU8Z2AY0
翌日、体調不良を理由に飛行訓練を休んだニポラからナニがあったのかを聞き出した戦隊司令は当たり前のように「しょうがないわね、半分引き受けてあげる」と言った。
その日から訓練を終え基地に帰るケルフェラク隊に随伴するドシュダムは二機になり、翌日には話を聞きつけた55号と69号も志願して四機となった。
そして繰り返されるケルフェラク隊宿舎での夜の白兵戦。
そんなある夜、その日の“支払い”が早めに終わった-肌を重ねるうちに情が移ったのかケルフェラク乗りもニポラ達を丁寧に扱うようになっていた-ニポラとフラチナは滑走路脇の草地に並んで腰を下ろし、星空の下でのんびりと世間話に興じていた。
「思い返せばケルフェラクに乗ってた頃の私って性格悪かったわ」
「想像できませんね」
「天狗になってたのよ、一時期は撃墜数でケルフェラク乗りの上位十傑に入ってたし」
フラチナは照れくさそうに笑った。
「でもある日の空戦で被弾した愛機から脱出するとき尾翼で頭を打ってね、三日三晩生死の境を彷徨ったわ」
シリアスな表情のフラチナにつられてニポラも姿勢を正す。
「そのとき天使様に会ったの」
フラチナは真顔だった。
ニポラは宇宙の真理を悟った猫の顔だった。
「天井に逆さに張り付いた天使様は言ったわ、『神は言っている、ここで死ぬ定めではない』って」
フラチナは夢見る少女のような表情。
ニポラは「窓に!窓に!」と叫びだしそうな表情。
「そしてこうも言ったわ、『人にやさしくしなさい、それは貴女自身を助けるだろう』って」
「どんな天使様でした?」
「金髪アフロで褐色肌の筋肉モリモリマッチョマンだったわ-なぜ額に手を当てるの?」
「熱はありませんね、自我科いきます?」
「ひょっとしなくても正気を疑われている!」
そうして訓練の昼と乱交の夜を重ね、78飛行戦隊は3月16日を迎える。
922
:
外パラサイト
:2025/03/14(金) 21:15:50 ID:pHU8Z2AY0
死んでいく死んでいく。
17回目の挑戦で標的機に命中弾を出し「できました少尉どの!」と子供のように喜んでいた新人が。
「ハエは肥桶担ぎ-攻撃機型ケルフェラクの蔑称-に張り付いてな!」と言ってジェット機に突っかかっていった戦闘ケルフェラク乗りが。
かつて無垢な少女だったニポラが憧れた大空には炎と悲鳴が渦巻いていて、そこが今のニポラが生きる世界だった。
「ここは引き受けました!ケルフェラク隊は敵機動部隊の攻撃に向かってください!」
攻撃隊の一番機を狙うF7Fを一撃で仕留めたニポラは返す刀で8時方向から迫る新たな敵編隊に立ち向かう。
この時のニポラが操るドシュダムが見せた無茶苦茶な機動は珠海航空ショーでセルゲイ・ボグダンが操ったSu-57に引けを取らないものだった。
この時点で出撃時の3分の1まで数を減らしていた78戦隊のドシュダムはニポラ機の動きに追従できず次々と落後していく。
いつしか数と性能で勝る敵に四方を囲まれ、単機で戦い続けるニポラは襲い来る米軍戦闘機をかわして撃ち、かわして撃ち、またかわして撃った。
何機かに命中弾を与えたような気がしたが墜落するまで見届ける余裕などない。
視界の隅で爆発四散したワイバーン乗りが「験担ぎだ」と言って出撃前にニポラの尻をひと揉みしていったイケメン空中騎士団長だったことにもまったく気付かなかった。
「ハア…ハッ…ハア……」
攻撃隊が米機動部隊への対艦攻撃を終え戦場から離脱し始めた頃、3分に及ぶ格闘戦で手強いF8Fを退けたニポラは舌を突き出し、犬のように喘いでいた。
アドレナリンが全身を駆け巡り、湯気が立つほどに汗をかいている。
濡れた飛行服は肌に張り付き、極度の緊張から硬く尖った双球の頂はいまにも布地を突き破りそうだ。
「恐ろしい手練れであった…」
昔読んだ剣豪小説の主人公のようなセリフを口走ってしまったのは疲労からくるニューロンの混濁が原因だろう。
緩みかけた集中力を取り戻そうとした一瞬の隙をついてF6Fが迫る。
狙いを定めた6挺のブローニングが火を吹くかと思われたそのとき、進路上に滑り込んできたのは戦隊指令のドシュダムだ。
ニポラ機を追尾するF6Fとヘッドオンの体勢になったフラチナ機が短く発砲。
対地攻撃にも有効な重魔道銃は一撃でF6Fのエンジンを吹き飛ばした。
そのフラチナの背後に迫るF7F。
魔法でも使わない限りニポラのカバーは間に合わない。
そのときフラチナのドシュダムが二つに割れた。
最後まで克服できなかったドシュダムの構造的欠陥-連続して高負荷をかけると予兆なしに機体が破断する-がここで出たのだ。
F7Fの銃弾がオープンゲットしたままフラフラと飛び続けるドシュダムの前半分を引き裂いたときには、パラシュートを開いたフラチナは海面に向かって降下していた。
そしてニポラは見た。
純白のパラシュートの上に立つ筋肉モリモリマッチョマンな金髪アフロを。
その日焼けした顔に墓石のように輝く歯を剥き出しにした笑みを浮かべ、右手を挙げてサムズアップする姿を。
「そうだ、自我科に行こう」
923
:
外パラサイト
:2025/03/14(金) 21:16:46 ID:pHU8Z2AY0
投下終了
ニポラの所属部隊がヨークタウン様のSSでは「78戦闘飛行隊」拙作では「78飛行戦隊」となっていますがこれは洋書の訳者による差異を再現したものです。
「機甲師団」と「装甲師団」です。
924
:
ヨークタウン
◆oyRBg3Pm7w
:2025/03/16(日) 00:14:32 ID:t0EWw3k.0
>>外伝氏 投稿お疲れ様です!
二ポラ達の裏話、今回も楽しく読ませて頂きました!
作戦前の準備にかなり苦労されていたようで……
そんな苦労を経て徐々に練度を上げていった隊が、一度の決戦で無惨な姿になる場面はなんとも何とも言えぬ物があります
そして、上官が見たアレを見てしまった二ポラは今後どうなる事やら……
なお、米軍の捕虜となった彼女は、今後はいい面で数々のアメリカンな体験をする事になりそうです
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