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繰り返される悪夢【長編】

97よこせう:2004/05/27(木) 22:15 ID:QT6Rj4Nk
No:35

桂弘典(いや、【兄さん】)は、手に持っている拳銃、M8000をこちらに向けた。
「覚えておきましょう・・・・・・調子に乗る物、万物の裁きを受ける」
呆気に取られている瞬間に、もう【兄さん】が引き金を器用そうな手で引き絞った。
ぱん、ぱん、ぱん、という間隔が少ない音がし、直後、頬が焼ける思いをした。
「ぐぅぅぅぅぅぅぅぅっ!」っと、呻き声をあげる。頬からゆるゆると赤黒い血が流れ出す。
それを手で拭った。真っ赤とは言えない半鮮血が掌に付着する。
その血を見た瞬間、身体中の血が身体中を四方八方に駆け巡る感じがした。
冷や汗が一気に噴出す。すぐさま手に持っているPPKの撃鉄を倒そうとした、が、
倒れない。親指に渾身の力を込めても、ハンマーはぴくりとも動かない。

悪銭苦闘している途中に、もう【兄さん】が発砲してきた。今度はどこにも当たらない。
怖気ついたのか、後ろへくるりと向き直すと、猛然とした勢いで昼間の町内を疾走した。
全力で走っている途中、何度も撃鉄とガチンコ勝負する。圧倒的に、撃鉄が勝った。
逃げ惑う上杉千裕は覚えていた。短距離50m走の記録を。自分、6,5。【兄さん】―――6,0。
僅か零コンマ5の差。されど零コンマ5の差。記録はいつも結果と完璧に比例してくる。
つまり、後ろから迫る【兄さん】との差は、もう既に50mも無い。
さっきは先手必勝、逃げるが勝ち戦法たっぷり100m離れていた。それも―――もう。

脚に全身全てのパワーを注いだ。少し、ほんの少しだけスピードが上昇する。
それでも、殆ど変わりは無い。迫り来る【兄さん】の姿がだんだん大きくなって来る。
そして滞り無く飛来してくる弾丸の数々。流石にあの奇妙奇天烈な【兄さん】でも、
走りながら50m先の動く標的に当てる事は難しかった様だ。
瞬間、相手のスピードが遅くなった。というより、止まった。
大方、マガジンの取替えでもしているのだろう。ありがてぇ。時間をくれてよ!
その隙に俺は変態二重人格野郎ともおさらばってわけよ。

ぱん、という音が痛みと供に身体を貫いた。叫び声を高々とあげると、その場に倒れ伏した。
正座を崩した様な体勢。よくクラビア嬢等のするセクシーポーズみたいな格好。
違うのは、その脚元に今度は真っ赤な鮮血(頬と脚で血の色違うってどんな人間だ俺!?)が小池を作る。
眼を見開き、脚を見た。

――――――穴。
そこには小さな、ほんとに小さな穴が空いていた。それでも、自分の脚に穴が―――。
そしてそこから流れ落ちる真紅の血液。全ての源、それが、今、眼の前で、アスファルトの上に―――。
血はすぐに熱気で蒸発した。だが、【兄さん】は、確実にこちらに歩んで来る。
【兄さん】が眼の前に迫ってきた。痛みで顔を確認する事が出来ない。
【兄さん】はうっすら笑うとこう欺いた。
「走って狙うのは無理ですね、だから、止まって撃ったまでですよ」
先程と打って変わって冷静、平静を取り戻した。【兄さん】は、にこにこしながら、
こちらに銃口を向けた。
「ハイ、死ねー」
ぱん、という乾いた音が、果てしなく続く街路に木霊した。

上杉千裕(男子)死亡
【残り42人】


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