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繰り返される悪夢【長編】

92よこせう:2004/05/24(月) 22:12 ID:6V45GAyQ
No:33

だんだん辺りが蒸し暑くなってきた。Tシャツを着ていない素肌にYシャツ(要するに肉シャツというもの)が、
ビショビショに汗で濡れている。
堪らず真っ黒の学生服を脱ぎ捨てた。それを側にあった石段に投げ捨てた。名札が岩肌に当たり、カツッと音がした。
名札には「上杉」の二文字。

学生服を脱ぎ捨てた上杉千裕(男子)は、さも嫌そうな顔をして、Yシャツを脱いだ。
それほど厚くは無い胸板が露になる。それでも、全然寒くはない。やはりブラジル方面、暑い。
それをディパックの中に入っていた水が入ったペットボトルで更に湿らせた。
こうする事で、汗の臭いや感じを少しでも消す事が出来る。
それ、Yシャツを絞った。ジャーッ、と石段に水が滴り落ちる音がした。
その水もまた、すぐブラジルの猛暑で乾き切る。濡れたYシャツに腕を通す。うっすらと湿った袖口が、
脇に当たり、一瞬、ひやっとしたが、すぐに馴染んだ。

水が蒸発した石段に腰を下ろした。硬い岩肌が臀部に当たる。
腕を膝に置き、辺りを見回した。何処かの公園。BRというクソゲームが行われている物とは思えない程静か。
許されるのならずっとこうしていたい。こう、ずっと、のんびり、のほほんと。
まぁそれが許される事があっても、その後生きていられるという保障は神さんしか知らない。
人間の生き死には神さんが決める。今自分がどれだけ努力し、最善な行動を取ったとしても、生き残る為には、
誰かと出会い、そして殺さなければいけない。そう、殆ど。

死ぬ位なら生きる方が何百万倍もいい。死んだら何もかもパー。生前に人を傷付け様と傷付けまいと、
人を殺そうと殺すまいと死んだらもうどうでもいい。一家の恥?その一家も死んだらどうでもいい。
お互い死んだらもう全て終わり。名誉も恥も全て無に還る。神という者の手によって。全て―――

だったら生き残ってやろうじゃんかよ、まずは三十人。今、何人死んだのか知ったこっちゃねぇ。
ただ三十人になったらフィールドが変更される。そして、二十人―――
止めた。先の事を考える事は大嫌いだ。ぶっつけ本番。行き当たりばったり、それでいいじゃないか。
どうせ先の事を考えても、それと同じ結末が自分を迎えているのなら考えるのが面倒臭い。
とにかく分かっているのは、今自分がぽつんとした公園の石段に腰掛、手には拳銃を握っているだけ。
そう、それだけの事。他の何物ではない今。全てが自分を取り込み、活力とする。

そのときであった、ピーンポーンパーンポーンという甲高い音が聞こえたのは。
聞こえてきたのは脱ぎ捨てた学生服。慌ててそれを拾った。携帯か―――?
いや、こんな着信メロディでは無い。じゃあ、何―――――?
『ごめんごめん、先生言い忘れてたよ。毎回、6時間毎に死亡者のリストを放送するからな、
 それはこの学生服に取り付いているインカムから流されまぁす。あぁ、女子は腕の裾ね。
 だから、学生服は絶対に脱がないでください。情報が聞こえなくなりますよ。
 それじゃあ死亡者リストを報告しまぁす。
 男子3番、秋宮慧君、男子19番、久保宗鑑君・・・男子―――・・・』
その後も延々と死亡者のリストが挙げられた。それを、一つ一つ自分の脳に記憶させる。
それにしても学生服に何時の間にかインカムなんて取り付けられているなんて驚きだ。
ホント、何時の間につけたんだ?
『・・・・・・・・・以上です。皆頑張れよぉ。次回の放送までに沢山死んでいる事を、
 先生は心から望みます!以上!』
すぐさまブツッと機械的な音で切られた。放送では6人の死亡者。
驚いた事に戦力が高い男子が既に5名。女子は蒼火遠音1人。これは驚いた。
確かに今年の女子は可愛らしくないし、何処か冷めた大人の様だ。まぁ、どうでもいい。
拳銃を握る手に力が入る。手触りがおかしいと思ったら、汗が掌に滲んでいる。

臆している―――俺が―――?まさか―――・・・・・・。
瞬間、がさっと音がし、その音に千裕の身体が反応された。音がした方に拳銃を向ける。
そこから現れたのは―――桂弘典(男子)。弘典は満面の笑みを浮かべると、どこか不気味な様子で、
千裕の方に大胆不敵に歩んできた。それに圧倒されている自分が居る事に気付いた。

【残り43人】


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