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繰り返される悪夢【長編】

72よこせう:2004/05/13(木) 17:15 ID:5vJj5egU
No24

朝日がさんさんと薄汚いコンクリートの上に注がれた。
殺人とは無縁という浮かれた表情をした猫がひょっこり建造物の陰から現れ過ぎ去っていく。
三杉龍一(男子)は、その光を手で遮ると、ポケットから携帯電話を取り出した。
最新型の携帯電話。誕生日と所属するバスケ部の試合で大活躍したご褒美に買って貰った。
派手に光り輝く液晶画面には「圏外」と映っていた。
試しに時報の番号を押した。ここは日本の間裏側、ブラジルの辺り。聞けなくて当然だった。
そもそも、ここらの携帯電話とは訳が違う。日本はハイテク化が進んでいるが、ブラジルは未だに・・・・・・。
日本企業が進出していれば、万が一使えたかも知れない。
携帯をいじくり、電話帳に辿り着く。そして、上杉千裕(男子)の所にカーソルを合わせた。
実際、上杉千裕とまともに話すのはこの龍一だけかも知れない。「あいつは気難しすぎる」
ピッ、と音がした。画面が一瞬に変わり―――そして、親指で通話ボタンを押した。
トゥルルルルル―――――ガチャ。
誰かが受話器を取った。おっ、以外と通じるんじゃ・・・・・・・・・。
「はいはい、誰ですか、携帯なんてかけたバカモンは」
耳を疑った。受話器を取ったのは、立花だった。そのとき、想い出した。立花が、実の息子を殺した場面を。
その息子、立花雄吾の胸から噴き出た血が、今も龍一の学生服の袖口に付着している。
「ったく携帯は使えませんからね。そこんとこわかっといてね」
早口で言うと、立花は電話を切った。

「畜生!」
龍一は携帯を地面に叩き付けようとした。けど、躊躇い、これを買ってくれた両親を回想した。
今ごろ何をしているのだろうか。政府のお宅訪問で反抗して只の肉の塊と化していないだろうか。
けど、俺は帰る。必ず。このクソゲームから絶対抜け出してやる。絶対、絶対・・・・・・。
だが、生還と簡単に言うけれども、それにはまず仲間が要る。
戦闘、脱出―――には、必ず仲間が要る。俺と同じ考えを持つ仲間と言う者を。それを探さなくては。
龍一は、支給武器のM66を右手に握り締め、弾薬の入った箱を、ポケットに捻じ込み、
走り出した。向う先は民家の建ち並ぶ、島の東部。いわゆる集落。
まず、連中は腹が減ってる。腹が減ってるってことは民家に侵入し、食い物を奪う。
よし、それだ。
目指すはここから離れた集落。だが、看板を見る限り、ここからは6kmも離れている。
おいおい、6kmって言ったら俺の家から学校までの6倍じゃねぇかよ。
部活でも6kmなんて走った事ねぇぞ。っていうか、学生服じゃ重い。それに、銃まで。
M66を右ポケットに移した。途端、学生ズボンの右端がずるりと下がる。
ぶつぶつ言いながら集落へ走り出した。
コンクリートからカツカツという龍一の足音が聞こえる。

【残り44人】


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