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繰り返される悪夢【長編】

56よこせう:2004/05/07(金) 22:25 ID:KHQAVtM2
No:17 一目散

「卯月!もっと速く!克己が・・・来てる!」
細川竜司(男子)、は今にもぶっ倒れそうな卯月由香(女子)の手を取って、後ろから猛然と追いかけて来る、
大原克己(男子)の魔手から逃れようと必死だった。
差をつけてもつけても追い付いてくる。何なんだこいつは。こんなに執念深いのか、それとも、負けず嫌いなのか。
どっちでもよかった。とにかく相手は拳銃を持っている。逃げなければ銃殺。地獄or天国。そんなもの、天国の方が良い。
だから、走る。今ここに、プールとゴムボートがあったら、迷わずゴムボートの上で昼寝でもしているだろう。
現実は違う。今にも死にそうに、鈍足の女子というお荷物と一緒に、走る。それも、物凄い勢いで。
それでも、竜司は決して由香を置いて行こうとはしない。
ホント、俺ってA型だよなぁ。何と言うか、優しすぎると言うか。御人好しと言うか。

だが、もう限界だった。スピードが徐々に落ちて行くに連れて、追跡者、克己はスピードをどんどん上げて行く。
もう、十分頑張ったじゃないか。もう、ここらで倒れてもいいんじゃないのか、竜司。
女子を見放さずにここまで走ったのはたいしたもんだよ。ここで逝っても、誰も文句は言わない。
横にいる女子の寿命を伸ばしたという事で、英雄、英雄。ハイハイ、頑張りました、丸、っと。

後ろから追いかけて来る克己を無視して、その場に立ち止まった。そして、膝に手を付き、苦しく息をした。
もう駄目だ。今にも吐きそうだ。女子が横にいるのに、ウッ、みっともねぇ・・・様ァねぇな・・・。
横にいる由香が、心配そうに声を掛ける。
「大丈夫・・・っていうか、後ろから・・・・・・」
女ってのは、以外と丈夫なんだな。俺がリードして死にそうになってるってのに、こいつはピンピンしてる・・・。
「これ・・・・・・・・・」
由香はディパック(まだ持ってたのか。荷物になるぞ)から赤い筒を取り出した。
それに見覚えがあった竜司は、それを由香の手からひったくった。
【発煙筒】
「お前なぁ、何でこんな物先に出さねぇんだよ!ったくよ・・・・・・」
その発煙筒の蓋を開けた。中からしゅーしゅーと不気味な音を立てて、真っ白な煙が立ち込めてきた。
「走れ!」
2人は、今度は手を繋がずに、別々に全力で走った。当然、克己も喰らいついてくる。
走りながら、竜司は後ろを向いた。たっぷり40m。よし、こんだけあれば・・・。
その発煙筒を後ろに投げた。その衝撃で、筒の中に入っていた煙が全て吐き出された。
一気に煙が狭い街路路に充満した。その隙に、一気に横へ曲がった。
そして、一目散に逃げ出した。


「ハァ・・・ハァ・・・」
どれだけ走ったろうか。もうわからない。けれど、追跡者は撒いた筈だ。
それを確認すると、竜司は一気にコンクリートの上に横たわった。それで、改めて大きく息を吸った。
久々の休息。由香は、コンクリートのわずかに浮き出ている所に腰を下ろした。
「何とか、撒いたな・・・・・・」
息も絶え絶え、やっと喋る事が出来る様になった。
「うん・・・・・・」由香は軽く頷くと横たわった。
こうして、長い長い鬼ごっこに終止符が打たれた。

【残り46人】


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