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繰り返される悪夢【長編】

33よこせう:2004/05/02(日) 22:12 ID:Zl9P6ezM
No:8 猛火

だんだん暑くなってきた。それもそのはず、ここまで全力疾走で来たのだから。
「ふぅー、暑い暑い」
男、秋宮慧(男子)、は懐から愛用の扇子を取り出すと、大きく広げて、自らを仰ぎだした。
身体中が火照っている。かなり走った。自分がこんなに無我夢中で走ったのは初めてかもしれない。
まぁ、自分の命という、この世で1番大切な物を守らなくてはならないのなら、当然だ。
毛穴から汗が滞りなく吹き出てくる。気持ち悪い。
汗というものは本当に気持ち悪い。何故、こんな無駄で意味の無い物が体内から溢れ出て来るのだ?
全く、嫌になる。現代のチャラチャラした野郎はこれを【キモい】という。
そう、言っている奴が、本当に気持ち悪いんじゃねぇのかよ。馬鹿みてぇ。

でも、勝手に噴出して来る物だからどうしようもない。どうしようもない物はしょうがない。
仕方無いが、その汗ばんだ右手で、ディパックのチャックを開けた。
中に見えたのは―――・・・当たり。
見ればわかる。銃火器だって。でも、銃じゃない。まさに当たり。

火炎放射器。慧は、あの教室で、わざと大きめなディパックを手にした。
でかいもんだから、それなりに良い物が入ってるんじゃないかと踏んだが、まさにその通り。
ディパックから出した。だが、驚いた。
重い。・・・いや、重すぎる。なんだこれ?7、8kgはあるんじゃねぇのかよ。
普通に持つには重過ぎるので、先に、ベルトを上半身に通した。それで、一気に持ち上げた。
「こりゃぁ、いい。素晴らしい」
銃なら、何度かテレビや映画で目の当たりにしたが、火炎放射機など初めてだ。
重いのが玉に傷だが、まぁ、そんな事はどうでもいい。
・・・・・・試したい。

辺りを見渡した。眼に、あるものがついた。
―――猫。猫だった。白色と茶色の小さい猫。手だけでその身体を壊せそうなその、
華奢な猫に、銀色に光る銃口を向けた。
「あばよ」
それで、一気にトリガーを引いた。銃口からは、物凄い勢いで炎が放出した。
持っている慧の身体にも、熱が響いた。
―――熱い・・・汗が・・・・・・気持ち悪い・・・・・・。
一端、トリガーを引くのを止めた。炎が、ピタッと止まる。猫を見てみた。
そこには、焼け爛れて、微妙に前足をぴくぴく動かす事しかできない小さな猫の姿があった。
もう、猫とはわからない位、真っ黒。
「ふふふふふふふふっ」
腹の底から笑いが込上げてくる。なんて、残酷なんだろう自分という人間は。こんなに、こんなに恐ろしい・・・。
「あははははっ!」
その瞬間、後ろから声が聞こえて来た。

「あんた、馬鹿ね。死ねば」
途端、慧の背中に激痛が走った。今まで味わった事の無い痛み。
後ろを向いた。そこにいるのは、烏丸遥(女子)。

【残り48人】


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