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バトルロワイアルぺティー

406ノア </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/08/24(火) 15:59 ID:igZ3kd.k

「あっ、おはよう。気分はどう?」
 井上聖子は場違いなほど明るい声で言った。
「……最悪だよ」海貴は答えた。

自分はこれからどうなるんだろうか。予測がつかなかった。聖子が何を考えているのかが、全くわからない。
――その前に、何で生きてるんだ、こいつ。


海貴の無言の問いに答えるように、聖子は言った。「ふふ、私が死んだと思ってたでしょ。甘いな――」

聖子がブラウスのボタンを外し始めたので、海貴は驚いた。
誘ってんのか? こんな時に?


「じゃーん! 新井さんの死体にあったから、とってきちゃった!」
聖子の華奢な体には、防弾チョッキが巻かれていた。

「ツメが甘かったね」聖子はそう言って、海貴の頭を撫でた。
「やめろ」海貴は頭を逸らした。
そして、訊いた。「何でこんなとこに繋いでおくんだよ。これから何する気なんだよ」

聖子は微笑した。
「うーん……」と言うと、続けた。「ただ殺すだけじゃつまんないでしょ。時には娯楽もないと」


……娯楽? 嫌な予感がした。

「娯楽って?」
聖子はニッと笑うと、深緑色の箱――イングラムを持ち上げた。
「これで姫城君の体を風通しよくしてあげる!」


びくっとした。縄をどうにかほどこうとするが、ビクともしない。

「無駄だよー。ナイフか何かで切らなきゃ外れないと思うよ」
クソッ。海貴は聖子を睨みつけた。

「殺すなら殺せよ!」海貴は叫んだ。
「まあ待って」聖子はイングラムを下ろして、ベランダから外を見た。
「ここまで連れてくるの、凄い大変だったんだからね。制服が水吸っててかなり重いし。幸い荷車があったからよかったけど。そんな苦労したのに、簡単に殺しちゃつまらないじゃない」

聖子は正面に向かって指をさした。
「まあ見てみなよ」

海貴は不審に思いながらも、少しだけ横を向き、外を見た。

「……何もないじゃん」
「目悪いな!」

聖子は双眼鏡を取り出して、海貴の目の近くに持ってきた。
「……見える?」

海貴が目にしたのは、自分達から二百メートルほど離れた場所にいる、雪燈の姿だった。
腕を手錠で繋がれていて、背の丈よりやや高い枝に繋がれていた。
何とか外そうと、必死で腕を引っ張っていた。


「あーあ、あんな無茶したって無理なのに」
隣にいた聖子がくすっと笑った。海貴は全身から血の気が引いていくのを感じた。
何てことを。

「何であんなこと……」海貴はかすれた声で、言った。

このままだと、間違いなく首輪が爆発する。逃げることも出来なくて死の恐怖に怯えるしか、雪燈に残された術はなかった。

……俺が、井上をちゃんと始末してれば――


「冬峯、冬峯っ!」海貴は雪燈の名前を叫んだ。


どこからか、聖子の声が聞こえた。

「あと五分で時間切れね。あんたには、自分の好きな女の首が吹っ飛ぶ様を、見てもらうから」

乾いた笑いが聞こえた。海貴には、聖子の愛らしい顔が悪魔のように見えた。


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