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バトルロワイアルぺティー
396
:
ノア </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>
:2004/08/15(日) 20:46 ID:igZ3kd.k
「……何で?」雪燈は戸惑った。
「生き残れるのは一人だけなんだもん。色々あるでしょ。自殺するとか。殺しあうとか」
海貴は沈黙していた。雪燈は気まずい思いで、海貴を見ていた。
「うーん、そっちはどうしたいの?」
あ、あたし? あたしは――
一つ思い浮かんだが、言えなかった。
海貴が言った。「別に文句なしで殺しあえばいいんじゃない? 元々、偶然一緒になっただけなんだし」
「……そっか、そうだね」雪燈は髪をかき上げた。
そうだよね。所詮あたしと姫城の仲なんてそんなもの。何の友情も愛情もない。
でも、それが何だか寂しいと思うのは、あたしが欲張りだからなんだろうか。
「まあその前に、生き残るかどうかもわかんないけどね」海貴が言った。
「まあね」
何にしろ、もうすぐ自分が死ぬかもしれないということは確かだ。
雪燈は急に恐ろしくなってきた。
「ねえ、姫城」
「何だよ」
「マグダラのマリアって知ってる?」
「何それ。知らない」
雪燈は少々沈黙して、言った。「あたしもちょっと聞いただけだからうろ覚えなんだけど、元娼婦だったけど、キリストに罪を許されて、天国に行くことを許されるの」
ザーザー降りの雨の中、前にいる男の背中が遠く見えた。
「あたしも、許してもらえるかな」
海貴は言った。「は? 何だそれ。バカじゃん」
――あたしがちょっと真面目に語ったのに…… 雪燈は腹が立った。
神様、この男殺していいですか? つーかむしろ殺してください。
「許すとか許さないとかいるかいないかもわかんない奴に決められたくねーよ。本人の問題だろ?」海貴はそう言った後、続けた。
「何をやっちゃいけないとか押し付けすぎなんだよ。偶像崇拝は駄目だとか、占いは駄目だとか。好きにさせろよ」
……詳しいじゃん。
「……そっか」
姫城らしいや。
「くだらないこと言ってんなよ。まだ生きてんのに、死後の世界の心配とかすんなよ」
「そうだね。そうする」雪燈は頷いた。
「ねえ、今どこ?」雪燈は訊いた。
「今?」海貴は地図を広げた。「もうすぐD=6だよ。この山を抜けて道を歩いたらすぐ」
本当にもうすぐだ。ふもとに続く道が大分明るくなっていた。
「人、いるかな」雪燈は呟いた。
今残ってるのは大迫、千嶋君、と井上さんと笹川さん、吉野さんと、自分達。
大迫と千嶋君以外は、失礼だけど大したことなさそうな気がする。まあ人は見かけによらないって言うし、この中の誰かが殺しまくってる可能性もあるかも……
「誰かいるよ」雪燈は言ったが、海貴には聞こえていないようだった。
スタスタと山道を降りていった。
「ちょっと、姫城!」雪燈は海貴のワイシャツを掴んだ。
「何だよ」
「人がいるってば」
海貴は目を細めて、茂みを見ていた。「……いないじゃん」
雪燈はもう一度辺りを見回した。見たと思ったんだけどな――
細い砂利道の横にある茂みの中に、確かに人の頭があったと思ったのだ。
「見間違いかな……」雪燈は呟いた。
雨は土砂降りになっており、辺りは一層暗くなっていた。何かと見間違っても不思議じゃないかもしれない。
だが、雪燈はまだ納得できない気持ちで、茂みを見た。
もし相手が、自分達を狙っていたら――
そのことを思い浮かべただけで、胸にモヤモヤとした、悪寒のようなものが突き上げた。
「攻撃してこないってことは、やっぱ人間じゃないんじゃないの?」海貴が言った。
「そうかもしれない。でも、もし人間だったら――」雪燈と海貴は顔を見合わせた。
少しの沈黙の後、海貴が口を開いた。「見に行ってくるか、お前ちょっとここで待ってて」
その言葉に、雪燈は少しだけ不満を持ちつつも、頷いた。
一人になるのは、とても怖い。
海貴が三メートルほど下った時、雪燈は「あたしも行く」と、声を出して走った。
聞こえたかどうかはわからない。ただ、海貴は背を向けたまま茂みに向かっていった。
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