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バトルロワイアルぺティー

378ノア </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/08/01(日) 14:33 ID:2KqO5TgA

 内博美(女子七番)は、I=4の片隅にいた。こんな草むらにいて大丈夫なんだろうかと思いながら、足早にここを通り抜けようとしていた。

昼の放送では生徒が着々と死んでいることが分かっていた。その放送が来る度に、博美の中の抑えていた感情が、溶け出すように降りてきた。

クラスメイトだった人達が死んでゆく。それはまるで、小学校のころ、予防注射を待っている時のような感じだった。前に並んでいる子達が泣きながら帰っていくのを見て、余計に怖くなったものだ。

今回の順番待ちは、あのころとは比べ物にならないほど長く、怖い。あの時、わたしに、大丈夫よ、と言ってくれたママも今はいない。
独りぼっち、とても孤独だった。


死ぬことは、神様のお傍へ行けること。そう考えれば、怖いことなどない。
でも、殺しあうということ。それは、何も生まない。遺された人達が悲しむだけ。
そのために死んでゆく人達を見るのが、辛かった。
そして、それに巻き込まれて死んでいく自分のことも。

本当は、怖くないはずなどないのだ。


博美は自分の人生を思い出した。悪いことはしてない。勉強も精一杯頑張ったし、ママの言うことだって守ってきた。中学の時に苛められた時も(準鎖国性のこの国で、毛色の違う自分が奇異の目で見られることは、よくわかっていた)、嫌なことがあったって、誰にも泣き言は言わなかった。誰にも恥じない人生を送ってきたと思っている。
なのに、何で――

博美はそこまで考えて、自分を恥じた。


人を憎んだり、責めてはいけません。自分が誰に見られても恥ずかしくないように生きていれば、いつかは必ず報われる、神様は全て見ているのよ。
――ママは昔、わたしにそう教えてくれた。

博美は空を見あげて、手を組んだ。

主よ、わたしがもしここで死ぬとしたら、無残に殺されるとしたら、それはわたしの罪が重いからですか? わたしは自分でも気づかないうちに、他の人を傷つけたり、嘘をついたり、よくない行いをしていたのかもしれません。
でも――


「それでも死にたくない、と思うことも、罪なのでしょうか」
博美は天を仰ぐように祈った。

くすんだ空からは、今にも雨が降り出しそうだった。



新島敏紀(男子十四番)は、ふと辿り着いた場所に腰を下ろした。

そういえば、ここは梅原ゆき(女子八番)を撃った場所に近い。あれからもう一日経つのか、早いな。

「誰かいないかな」敏紀は呟いた。
こんなことなら、あの時、梅原を殺しとくんだった。まだいいと思ったんだ。情けない。


「……動くか」敏紀は立ち上がった。

足の痛みはだんだん酷くなっていた。早めに全員死んでもらわなきゃ、こっちの体調だって悪くなる一方だ。


弾を詰め直したウージーをしっかりと持ち直し、敏紀は歩き出した。



……疲れた。博美は静かに呟いた。でも歩かなきゃ。向こうの森に行けば、休めるかな。いや、でも禁止エリアがどこからかわからないからやめよう。
博美はそう思い、反対方向に歩き出した。



人間らしきものを見つけて、立ち止まった。


ん? 人が倒れてる。死んでるのかな……。誰なんだろう。博美はその人物の元に近寄った。


ウエーブのかかった黒髪、色白の顔。眠るようにして、梅原ゆきは死んでいた。季節柄、その死体からは特有の、嫌な臭いがした。
博美はしゃがんで、ゆきの冷たい頬に触れた。


「人は死ぬと、全ての罪から解き放たれるのです。だから死を怖れてはいけません」

これも、母親が言った言葉だった。母親はイギリスのハーフだった。厳しく、また優しい、美しかった母は三年前に死んだ。博美は母を尊敬していた。

ママは今、天国にいるんだ。そこは争いもない、悲しみもない。
「神がもし、こんなに醜い私を天国へ送ってくださるというのなら、私はどんな痛みでも恐れずに、喜んで息絶えるでしょう――」
ママはそう言って涙を流しながら、死んでいった。ママは最期まで美しかった。

いつかママのような素晴らしい人間になる。博美はそう思っていた。


「……ママ、わたしも恐れないよ」博美は呟いた。
まだ少し怖いけれど、きっと大丈夫。


博美はゆきの死体に手を合わせ、冥福を祈った。


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