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バトルロワイアルぺティー

339ノア </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/07/07(水) 17:44 ID:2KqO5TgA

 ここはH=2。学校だ。たくさんのコンピューターが置かれている、冷房がガンガン利いたパソコン室の中で、北川哲弥は忙しくペンを走らせていた。

「えーっと、今、新井美保が死んで、死亡時刻が九時十二分……」

ペンを走らせながらも、頭は違うことを考えていた。
加奈。あいつ――運強いな、と思っていた。

哲弥は、近くにいた横山豪に話しかけた。「横山さん、今回のトトカルチョ。人気は誰なんですか?」

横山は、パソコンから目を離すと、近くにあったプリントを見た。「ああ、えーっと、一位大迫治巳、二位中西諒、三位梁嶋裕之、四位新島敏紀、五位仲田亘祐。この五人は結構僅差だよ」横山は言った。
「全員男子ですね」
「今のところはね。高校生じゃ身体能力の差もあるし、どうしても男子に人気が集まりやすいんじゃねーかな」

哲弥はふと気になって、訊いてみた。「大迫が一位って意外だなあ。確かに運動神経はいいけど、頭は普通だし、他に変わったところも――」
「何だ、生徒資料見てないの?」

見てない。北川はムッとして、訊き返した。「大迫は何で人気なんですか?」


「ああ。プログラムの統計をとったらね、過去に何らかの傷を受けた人間は、こういう命の危険に晒されたゲームで、突然力を発揮するんだ。その場合、多くは殺人マシーンになる」
「大迫……何かあったんですか?」


横山はじらすように間を空けると、ゆっくりと言った。
「六年前、こいつの家族が全員、殺されたんだよ」


哲弥は驚いて、それでも思い出した。随分前に、世間を騒がせた事件。

「その話、聞いたことあります」
「だろ?」横山は少しだけ笑んで、更に続けた。「大迫をいれて五人家族だったっけ。暴漢に襲われてさ。犯人はすぐに逮捕されたらしいんだけど、明らかに精神的な異常があったから、罪に問われなかったって奴だよな」
「へー……」


――S県一家殺害事件。十歳の次男を除き、全員が惨殺。犯人は母親(三十五歳)と、父親(三十八歳)の腹を執拗に裂いた後、火をつけて逃走。学校から帰宅した長男(十五歳)は家族を助けるために自宅へ入り、焼死体となり、発見された。

その事件は、昔、テレビでよくやっていた。

そのころ哲弥はまだ中学一年生だったのだが、子供心にも、世の中はぶっそうだな、と思ったものだ。


哲弥はまた訊いた。「大迫治巳は、何で助かったんですか?」
横山は、傍にあったブルーマウンテンを飲みながら、言った。「友達の家に遊びに行ってたらしい。実際、帰宅して、自分の家族が無惨に殺されてたら、もの凄いビビるだろうな」


そりゃそうだ。

哲弥はその光景を思い浮かべた。その時、大迫はどんな気持ちだったんだろう。それは、俺にはわからない、計り知れない苦痛だったに違いない。

「だからその事件は大迫には責任ないんだけどさ、どこからかそういう噂が流れてくると、自然にトトカルチョの人気が集まってくるわけだよ」


……悪趣味な奴らだ。北川はそう思ったが、すぐに自分のことを思い浮かべた。
俺も、同じか。

「子供のころに嫌な思い出があった奴は、心に傷が残る。それがある瞬間に、狂気になって発散されることを期待して、ここまで人気が集まったわけだ。オレは中西が一番だと思ったから、正直意外だったよ」横山はそう言って、更に続けた。「まあ、こいつよりずっと新島や井上の方が怖いけどな」
「そうですね……」


哲弥は思った。中学の時、プログラムに選ばれなくてよかった。もし選ばれていたら、自分はゲームに乗るのだろうか。それとも、仲間を探して、逃げだそうとするのだろうか。それとも、諦めて、自殺するのだろうか。まあ、それはわからない。

大迫のことで、まだ何かを忘れていたような気がした。でも、大したことではない気がした。哲弥は更にペンを進めた。

そういえば、こいつ、今千嶋といるんだよな。

千嶋和輝(男子九番)の、先ほどの絶叫告白を思い出し、北川は苦笑した。
あーあ、若いっていいねー。俺にはそんな力はないや。

でもまあ、頑張れよ。俺は助けてやれないけど――頑張れ。
【残り15人】


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