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バトルロワイアルぺティー

333ノア </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/07/05(月) 23:29 ID:2KqO5TgA

 中学時代のことだ。二年の冬、もうすぐバレンタインだ。しかし、北川先輩が卒業してしまったので、加奈にはあげる人がいなかった。
まあ、今年はどうでもいっか。そう思っていた。

ある日の帰り道、加奈は後ろから、千嶋和輝に呼び止められた。
「よう。久しぶり」
「あー、そうだね。クラス離れちゃったしね」
そう、クラス替えで、和輝と加奈は別のクラスになっていた。だから、こうして話すのは、久しぶりだ。
しばらく二人で話した後、和輝は言いにくそうに、でも、はっきりと言った。「今年、チョコあげる奴いるの?」
意外な質問だった。加奈はすっかり、バレンタインのことなど忘れていたのだから。

「んー?そうだなー。特にいないかも」加奈はそう答えた。
和輝は妙に間をあけて、「そっか」と言った。
何だ? 大して気にも留めなかったが、ふと、思いついた。あっ、さては……
加奈はニッと笑った。「わかった。和輝、チョコ欲しいんでしょー?」
「ちっ、違うよ! 違わないけど」
どっちだよ。
加奈はフフッと笑った。「よしよし。誰にももらえないと恥ずかしいから、私にもらおうと思ってたんだー! そうでしょ? どうしよっかなー……」
和輝は一瞬間を空けたが、言った。「そう、誰からももらえないと悲しいから、先に手回しとこうかなーと思って!」

少し意外だった。和輝はそういうことを気にするタイプには見えなかったからだ。
でも、何だかおかしかった。やっぱり誰からももらえないのは男として、プライドが許さないのか。
「やっぱり。じゃあ考えとくね!」加奈はそう言って、和輝と別れた。

そして、決戦の聖バレンタインデー。加奈は和輝にチョコレートを買っていた。三百円の安物だったが、中学生の小遣いの中でだから仕方ないだろう。
加奈は和輝の教室に行って、チョコを渡そうとした。
「ねーねー、和輝どこ?」和輝と同じクラスだった男子に訊いた。「あー? 和輝ならあそこだよ。何かモテてるぞ」

人差し指の指している方向に、和輝が見えた。女子三人組にチョコをもらっていた。
「あげるー! 絶対食べてね!」
「あ、ありがと……」和輝は照れながらも、礼を言っていた。
その目が加奈を捉えて、あっ! と言うような表情をした。

加奈はなぜだか腹が立って、そのまま教室を去ってしまった。何だ、もらう人いるんじゃん。買って損した。

背後から「笹川!」と言う声が聞こえたが、無視してズンズンと廊下を歩いていった。
「おい、待てってば!」和輝が加奈の手を掴んだ。
廊下を行く人々が、二人をジロジロ見ていた。
「……何?」加奈はぶっきらぼうに答えた。
和輝は息を弾ませながら、訊いた。「何か、用あったんじゃないの?」
加奈は気まずい気分になりつつも、まだぶっきらぼうに答えた。「別に、何も」
和輝が加奈の手荷物を見た。「それ……」

更に気まずい気分になった。ああ、もう! 加奈はズイッと、それを渡した。
「一応、持ってきただけだからね!」
和輝はしばらく、それを、茫然と見ていた。
何よ。不満なの? 加奈は不機嫌そうな顔で、和輝を見た。

不意に和輝の顔が、ほころんだ。「ありがとう」和輝は照れながらも、そう言った。
加奈は、何だかあっけにとられてしまった。そんな。三百円の安物に、そんな嬉しそうな顔されても――。
加奈は戸惑った。「ううん。気にしないで……」

気づくと、周りの人達がニヤニヤしながら二人を見ていた。はやしたてる生徒もいた。加奈は何だか猛烈に恥ずかしくなった。「じゃ、じゃあね!」

急いで立ち去った。何かが怖かったから。

何が怖かったんだろう? あのころは全くわからなかった。でも、今なら少し、わかる気がする。

私、ちょっと、和輝のことが好きだった。勿論北川先輩のことも好きだったけど、それとはまた違う感情。それに気づくのが、怖かったんだ。

そして今も――こんなに和輝に会いたいと思ってる。
そんな自分に、初めて気がついた。


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