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バトルロワイアルぺティー

315ノア </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/06/26(土) 12:11 ID:2KqO5TgA

 ここは、H=6の北東だ。G=6は既に禁止エリアになっていて入れないので、新井美保(女子二番)、中西諒(男子十番)、笹川加奈(女子十四番)は、そこで止まった。
境目になったこの場所は、古ぼけた、しかし大きな車庫になっていた。

「ここ、隠れ場所に最適じゃん」諒が言った。
「でも、襲われたら逃げられなくない?」
「その時はその時だよ」

なんてノーテンキな奴。美保は思った。つーかバカだ。絶対バカ。
――これから私に殺されるなんて知らないでさ。


美保はそう思って、後ろで黙り込んでいる加奈を見た。「……どうしたの?」美保は訊いた。
加奈は答えた。「えーっとね、私、さっきまでジュラちゃんと一緒にいたんだ。でも、柴崎君に襲われた時に……置いてきちゃって、今何してるのか気になって」
「へー……」
死んでるんじゃない? と言いたくなったが、やめておいた。

美保は加奈の手を握って、笑みを浮かべた。「仕方ないよ。笹川さんが悪いわけじゃないんだから、気にしないで」
「うん……」加奈は重苦しい表情のまま、頷いた。


「でも、頑丈だし鍵もかかるし、考えてみればいい場所かもね。誰もいないみたいだし……」

何も置かれていない無機質な空間。人の気配など全く感じさせなかった。
「さっさと入って鍵閉めちゃおう。見つかったら大変」美保はそう言って二人を促したが、加奈はそこで立ち止まったまま、動かなかった。
「……笹川さん、どうしたの?」怪訝になりそうになった表情を何とか抑え、美保は訊いた。
加奈は俯いていたが、顔をあげた。口をへの字に曲げていた。何かの決意を感じさせる表情。やがて、言った。「私、ちょっとだけ、見てくるね!」

美保は唖然とした。あんたが行ったところでどうなるって言うの? バカばっかり。


加奈は踵を返し、走り出した。


「笹川、一人じゃ危ないよ」
諒が言ったが、聞こえていないのか、加奈は振り向くこともしなかった。加奈を追うために走り出そうとした諒を、美保は止めた。

「駄目だよ。危ないよ」
「でも……あの子、銃も持ってかないで――」
この、バカたれフェミニスト男。

美保は言った。「中西君は行かなくていいよ。私が行くから」


美保は加奈を追いかけた。



「笹川さん」美保は加奈の後ろ姿を見つけると、肩に手をかけた。
「きゃああ!」加奈は驚いたように叫んで振り向いたが、美保だとわかると、ほっとしたようにため息をついた。

「あっ、ごめんね。ビックリして……」加奈は囁くように言った。
美保は辺りを見回すと、加奈の手にゴルフバッドを握らせた。
「早く帰ってきてね。はい、これ」
「うん……」加奈は頷いて、美保を見た。「新井さん、私、中西君のことは正直怖いと思うけど――」少し笑みを浮かべて続けた。「新井さんはいい人だし、信じるよ」

美保は半ば茫然として、加奈を見つめた。

「じゃあね」
加奈は美保の手を離して、森の奥へと走っていった。


――いい人だって。美保は自嘲的な笑みを浮かべた。


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