したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

バトルロワイアルぺティー

310ノア </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/06/21(月) 01:05 ID:2KqO5TgA

 雪燈はもう一度海貴に近寄って、言った。「あのねー、ここ、もうすぐ禁止エリアなんだ」

海貴は、えっ、と言うように、振り向いた。
「移動しなきゃ……」うわ言のように呟く海貴の目は、赤くなっていた。

雪燈は言った。「愛希……残念だったね」

海貴は雪燈の方を向くと、無言で頷いた。

雪燈は後悔した。もっとマシな言い方はないのかよ。慰めにもなりゃしないじゃん。
こういう時に、何と言っていいのかわからなかった。何しろ、雪燈に道徳を教えてくれる人など、誰もいなかった。

それでも、何かを言って、慰めてあげたかった。
よくわからないけど、こいつ、今にも死にそうな顔してる。
でも、あたしには無理。国語苦手だし。


縦一列で移動していたが、不意に、海貴は、雪燈の隣にきた。
しかし、何も話さなかった。


雪燈はまた思い出した。ラブホ事件から一ヵ月後、海貴に偶然あったことを。


たまたま入ったファーストフード店で、海貴を見つけた。
あれ、姫城だ。微妙に気まずかったが、まあどうでもよかったので、そのまま入った。向こうは電話をかけていて、自分には気づかないようだったし。

「何でお前はいつもそうなんだよ。来れないなら早めに連絡してくれよ。よりによって、何で二時間も――」海貴は苛ついた口調で言っていた。どうやら、喧嘩をしているらしかった。雪燈はジッと、海貴を観察した。

ふと、海貴が携帯から耳を離して、恨めしそうな顔でそれを睨んだ。切られたらしい。

ぷ。雪燈は思わず笑ってしまった。

海貴は辺りを見回して、その時初めて雪燈に気づいたらしく、驚いた表情になった。
海貴は、雪燈の、笑いの形に広がっている口と、それを押さえている右手に視線を動かした。
……まずい。どうしよう。怒られるかな。気まずい思いが雪燈の頭を掠めた。

雪燈は少し頭を下げ、「ごめんね」と謝った。
顔をあげると、海貴はきょとんとした表情をしていた。「何謝ってんの?」

そう言って立ち上がると、あろうことか、雪燈の向かいの空いている席に腰を下ろした。
雪燈は言った。「いや、聞いちゃったから」
「ああ……」
海貴はわかった、と言うように相槌をうつと、冷たい表情になった。「別にいいよ」と、答えた。
それから、二人は沈黙した。

海貴が口を開いた。「すっぽかれちった」
雪燈はすっかり溶けてしまったシェイクを飲みつつ、訊いた。「さっきの電話……愛希?」
海貴は少し不機嫌な表情になって、頷いた。

「二時間も連絡しない、挙げ句の果てに来ないってどういうことだよ。昨日は一日中電話繋がんないし。この前だってさ……」海貴は愚痴をこぼしていた。どうやら、相当たまっていたらしい。
「あっ、ごめん。こんな話ばっかして」
雪燈は首を振った。別に聞くだけなら、話すよりも楽だし。毎度のことだし。

雪燈はにこやかな表情で言った。「でも、姫城君はそれでも愛希のことが好きなんでしょ?」
海貴はしばらく沈黙すると、答えた。「だから困ってるんだよ」ポテトを口に運ぶと、更に続けた。「わがままだし、時間も約束も守らないけど、いいとこもあるし……」
結局好きなんじゃん。雪燈は心の中で苦笑した。

「だったら仕方ないよ。本人に言ってみるしかないね」
勝手に海貴のポテトを摘んだ。ちょっと語彙がきつかったかな。雪燈は少し反省した。
「そうだよな。聞いてくれてありがと」
雪燈は無言で首を振った。

それから、くだらない話をして、すぐに別れた。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板