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バトルロワイアルぺティー

307リズコ </b><font color=#FF0000>(A7.uY2s2)</font><b>:2004/06/20(日) 16:05 ID:2KqO5TgA

 荒瀬達也(男子一番)は、震える左手を伸ばした。伊藤愛希(女子四番)の腕に触れ、その震えに驚いた。

「い、とう……大、丈夫?」
訊いた後ですぐに、大丈夫なわけがないと、言ったことを後悔した。

すごく、とてつもなく辛かったが、起き上がろうとした。背中が焼きつくように痛かったが、ようやく、座りの姿勢になった。

愛希が倒れこんで、達也の脚の上に落ちた。腕をきゅっと握られて、愛希がまだ生きているのだと気づいた。

「いと……う」自分自身も声を出すのが辛かったが、どうにか呼びかけた。「ご、めん。番犬しっかくだ……」

 どうしようもなく、悲しかった。自分が重傷だということも少しはあったが、不甲斐なさと情けなさで、死にそうに、辛かった。


「そのまま、聞いて……」下を向いたまま、愛希が言った。「荒瀬くん、あたし、のこと、好きだった? 憧れじゃ……」
少しの沈黙後、蚊の泣くような声で、「なくて」と続けられた。

「うん。……すき、だよ」
「……そう」
愛希の右手が達也の肩を掴んだので、少々驚いた。愛希はか細く息をつきながら、達也に向き直った。

「あり、がとう」そう言って、口元を笑みの形に変えた。「あたし――」


達也は次の言葉が吐き出されるのを待った。


――が、いつになっても、愛希は何も言ってくれなかった。


「伊藤……」

達也の目からは、自然と涙が溢れていた。

――守れなかった。死んでしまった。

達也は痛む右手で(しかし麻痺してしまったのか、痛みはあまり感じなかったが)、愛希の肩を抱いた。命を失われて重くなった愛希の体を、それでも、力いっぱい抱きしめた。


時刻は、五時五十七分。二日目の朝の放送直前のことだった。
【残り18人】


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