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バトルロワイアルぺティー

295リズコ </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/06/15(火) 17:11 ID:2KqO5TgA

「高田さん、高田さん。大丈夫?」
可愛らしい声が聞こえた。鈴のように愛らしい。聞き覚えのある声。

――伊藤。

望のぼやけた視界が、愛希を捉えた。

「何で、あんたがいるのよ」
「何となく。ってかお腹が凄いことになってるよ。苦しくて死にそうでしょ」

バカにしてんの? この女。

愛希はゆっくりと言った。「もっとちゃんと手当てしなきゃ駄目だよ。バカじゃないの」
「黙れ」
「どう思う? 荒瀬くん!」
望の視線は、そこで左に移った。

達也は気まずそうに頭を掻いた。「うーん。医者じゃないからよくわかんないけど」

「何よ、二人して、あたしを……バカにしてんの?」望は声を荒げた。苦しかったが、とにかく。「消え、てよ……どうせ、死ぬんだから!」

「バーカ。まだ死なないよ」愛希はそう言って、望の肩に巻かれていたハンカチを取った。
「あたし達、消毒液と包帯持ってるの。気休めにしかならないかもしれないけど、まだ助かるかもしれないよ」

望は驚いて、愛希の顔を見た。「いらな、いよ、そんなもの。あた、しは、あんたを、殺、そうと、したの、に」


愛希が自分の傷に触れる。血が固まったハンカチを取り除かれ、柔らかいガーゼの感触が、腕を包んだ。
「あんなんで殺せると思ったの? 甘いにもほどがあるね」そう言って、愛希は達也に話しかけた。「やっぱ、銃弾取り除かないと、やばいかなあ」
「でも、おれ達じゃ無理だろ」
「まあ、仕方ないよね」

消毒液が傷口にかけられ、望は顔を歪めた。
「大丈夫?」愛希に訊かれた。


意味がわかんない。何であたしを助けようとするのか。そんなんでつられるとでも思ってるの? バカみたい。

「あん、た、性悪のくせに、何いい人ぶってんのよ」
「別にー。理由はないけど、あたしが死ぬのが怖いから、他の人も同じように怖いだろうと思って」愛希はそのまま、続けた。「あたしが死ぬ時は、一人で死ぬのなんて嫌だし」


おせっかい。くだらない。そんなんで、あたしがつられると思ってるの――


望の小さな目から、薄く涙が滲んだ。


自分が醜いのは生まれつきで、変えようがないと思っていた。体型も生まれつきだし、整形したところで、不細工が伊藤のように可愛くなれるはずなんてない。

でも、あたしの醜い心が、余計に、あたしを醜く、惨めにしていたのかもしれない。



望はかすれた声で、言った。「ありが、とう。伊藤さん」


愛希が優しげな笑みを浮かべているのが、見えた。



それから後、望は眠りこけるようにして、死んだ。



達也が訊いた。「何でこんなことしようと思ったの」
「別にー。死ぬ前に、何か一つでもいいことしとこうかなーと思って。でも、本当に意味なかったけどね」
「そんなことないよ」達也は少々沈黙して、言った。「それが伊藤の本性なら、おれは嬉しいよ」


愛希は思った。だって、死ぬ時は、一人ぼっちじゃ寂しいもん。人間は死ぬ時は一人だって言うけど、それでも、一人じゃないフリをしていたい。


「荒瀬くん」
「何?」
「オレンジジュース飲みたい」
「……そんなものどこにあるんだよ」
「買ってきて」
「アホか」


夜は、完全に明けようとしていた。
【残り19人】


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