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バトルロワイアルぺティー

294リズコ </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/06/15(火) 17:10 ID:2KqO5TgA

 どたどたと音が聞こえた。達也は振り向いて、すぐにその人物の存在を見とめた。

「伊藤!」

愛希の手を引っ張って、自分の方に引き寄せた。



愛希の髪の一部が、ぱらっと落ちた。


愛希は思わず言った。「ひっ、化け物!」
「おい、そういうこと言うなよ」


高田望は震えていた。太目の足は取れかけのハンカチでぐるぐる巻きにされており、肩にも同じような手当てが施してあった。そして、ハンカチが赤黒く染まっていた。


「ばっ、化け物とは何だー!」


望はよろついた足で、二人に向かってきた。


達也は言った。「伊藤、逃げるぞ!」
「うん!」

二人は走り出した。



チクショウ、いちゃつきやがって。伊藤、あんたには彼氏がいるだろ。
身を襲ってくる嫉妬心と怒りを燃料としながら、望は必死で走った。明らかにふらついた足で、追いつくはずもないことに気づきながら。それでも、殺したかった。



しばらく走った後で、達也は望が追ってこないことに気づいた。

達也は立ち止まって、言った。「あの怪我じゃ、立ってるのも精一杯なはずだよ」

愛希は何かを考えているようだった。


やがて、言った。「ねえ、荒瀬くん、戻ってみない……?」
「えっ」達也は意外に思った。「戻ってどうすんの?」
「デイバックの中にあたしの化粧品が――」

そんなことかよ。まあ、伊藤らしいけど。

「さっきの子がいるかもしれないだろ」
「大丈夫だよ。怪我してるし、誰が見てもふらついてたじゃない」愛希は何かの強い意思を感じさせる目で、言った。
「――わかった。戻ろう」

愛希は笑顔になった。



望は追いかけようと思ったが、足ががくがくと震え出して、走るどころか立っているのも困難になった。

チクショウ。殺せなかった。チクショウ。

望は膝を落として、しばらく、はあはあと息をついていた。突き上げる痛みに我慢できずに、地面に横たわった。


――誰かが、あたしを覗いてる。黒髪にショートカットの女。猫みたいな顔をした、あたしの嫌いな女。


井上聖子(女子五番)は無表情で、望の腹をナイフでえぐった。


「ぐはっ……」
望は腹が引き千切れるような(まさしくそうなのだが)痛みに、顔を歪めた。


聖子は何も言わず、去っていった。



チクショウ、何なんだあの女。チクショウ。
苦しくて、息をしているだけで、自分の口から声とは違う音が漏れてくる。


望は思考回路が閉ざされそうになっていたが、とにかく、考えた。


今までの自分の人生。楽しかったか、苦しかったか。いろいろ。

この外見のせいで、苦しいことの方が多かったかな。あたしも、他の女子みたいに可愛ければ、もうちょっとマシな人生だったかもしれないのに。

恨むのはお門違いだとわかっていた。でも、止められなかった。


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