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バトルロワイアルぺティー

291リズコ </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/06/14(月) 01:12 ID:2KqO5TgA

「つーかーれーたー!」
既に聞きすぎた、伊藤愛希(女子五番)の言葉に、荒瀬達也(男子一番)は、うんざりした。


「座ってるのに疲れたって何だよ」
「こんな森じゃ息をするだけで疲れるのー。綺麗な場所に連れてって」
「面倒だから嫌だ」

愛希は怪訝な顔をした。「何よ。あたしの言うことがきけないって言うの?」
「動くと他の人間に会うかもしれないから、我慢してください」
「バーカ。役立たずー」
達也は無視した。



何よ、せっかくちょっと見直してあげたのに。間違いだった、こんな男。ふーんだ、ふーんだ。

愛希はそっぽを向いて、空を見上げた。


――湿った空気が漂う森の中は、木々が自由に伸びていて、愛希達を見下ろしていた。そして、ただただある静寂。時折聞こえる鳥の鳴き声。全て折り重なって、美しいと思わせることが出来た。

残酷だと、思った。死んでしまえば、二度と、この風景を見ることができないのだ。


「何か、殺し合いの途中だってことも、忘れちゃいそうだよね」愛希は言った。「このまま、嫌なことも、怖いことも忘れて、こうしていられればいいのにね」

達也は少々驚いたような顔をして、愛希を見た。
「そうだね。殺し合いなんて、バカげてるよ」と、呟いた。


愛希は黙り込んで、思った。まだ、死ぬかどうかはわからない(死ぬ可能性の方がうんと高い)けど、あたしはこの瞬間を失いたくない、と思った。過去も、今も、未来も、全て含めて、愛おしいと感じていた。今までは、気づかなかったけれど。


「荒瀬くん、あたし、死にたくないよ」
「……おれも」


それでも、この時間は、愛希にとって最後の、穏やかで、幸福な時間だったのかもしれない。



高田望(女子十八番)は、怪我をした足と肩をかばいつつ、必死で歩いていた。

チクショウ、死ぬ前に、誰か、女子を殺さなきゃ。
でも、こんな森に人なんているのか? とりあえず、探さなきゃ。


ガクッと両足をついて、高まる鼓動を抑えようと試みた。手当てをした(と言っても、ハンカチを巻いただけだが)から、どろどろと血が滲んでいくのがわかった。動くたびに、痛みが襲ってくる。

チクショウ。まだ死んでたまるか。


そんな望の耳に、誰かの話し声のような音が、届いた。
女だ。あたしの嫌いな女。
その声らしきものを聞くと、望の中の力が奮い立たせられるようだった。


望は腰に差していたカマを取り出した。



一組の男女。あたしの一番嫌いな輩。男子生徒は、話したことはないが荒瀬達也であるとわかった。そして、女子生徒は自分に背を向けていた。しかし、望には誰であるかわかった。


「――あたし、死にたくないよ」


その鈴のような愛らしい声に聞き覚えがあった。クラスで一番嫌いな女。伊藤愛希だ。
望は痛む肩を押さえ、足を引きずりつつも、近づいた。

これが最後になっても、かまわない。


望は渾身の力を込め、走り出した。


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