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バトルロワイアルぺティー

288リズコ </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/06/12(土) 17:20 ID:2KqO5TgA

 午前四時。夏は朝が早い。笹川加奈(女子十四番)は、H=7のうっそうと茂った森から、遠くにある空を見ていた。

そして、加奈の肩には、内博美(女子七番)が、もたれて目を閉じていた。規則正しい呼吸の音がかすかに聞こえたので、博美が眠っているのだとわかった。

加奈はため息をついた。何か、心が苦しい。やはり、刻々と近づいてくるタイムリミットが恐ろしかった。
もうすぐで死ぬかもしれない。それを考えただけで(常に心の中にあった)、胸がきゅうっと締めつけられるような憂鬱さに襲われた。


「笹川さん。眠いなら寝てもいいよ」
柴崎憐一(男子五番)は、ふと気がついたように言った。

加奈は首を振った。「大丈夫。眠れないみたいだし」

憐一はふっと笑って、言った。「もしかして、信用されてない?」
「微妙。まあこんなゲームの中でだから、仕方ないでしょ」
憐一は加奈の意外な答えに目を丸くした。「はっきり言うね」
「嘘ついたって、仕方ないもの」加奈は目を伏せて、続けた。「好きだった先輩に殺し合いをしろって言われて、仲のよかった子に銃突きつけられて、もう頭ぐちゃぐちゃだから」

大島薫(女子九番)の死体を思い出し、また言いようのない恐怖心に包まれた。

「意外にシビアなんだ」
「だって、誰が信用できるかなんてわかんないじゃない。私は博美ちゃんはよく知ってるし、信用できる、と思ってるけど、柴崎君のことは何も知らないし」
「そうだね」憐一は視線を上に持ち上げ、少々目を細めた。
「まあ、そんなの誰だってそうだよ」憐一は言った。


何だかいつもと雰囲気が違う。加奈はそう思った。いつもは、治巳君と一緒になって和輝をからかってる感じ。ぎゃーぎゃーうるさいし。
でも、今は何て言うか――大人しげっていうか、優しげ? うまく喩えられないけど。

「柴崎君、何か今日は大人しいね」加奈は言った。
「そう? まあね、実はつまんない人間だから」
「嘘だー」
「本当だよ」憐一は口元だけで笑みの形を作り、続けた。「まあこんなゲームに参加してるのにいつもどおりな人間の方が珍しいっしょ」
「……」
まあ確かに。でも、博美ちゃんはいつもどおりだな。あと、和輝も。いつもと同じ。


「和輝はいつもどおりだったよ」

加奈の言葉に、憐一は若干驚いた表情になった。「和輝と一緒だったの?」
加奈は頷いた。
「へー。まああいつはいつも暗いしな」
「そうだね。常にボーっとしてるもんね」
 憐一はぷっと笑って、続けた。「何で今は和輝と一緒にいないの?」
「えーっとね。代々木君と争って、それから色々あってはぐれちゃって……」
「そっか。俺も会いたかったな」
加奈は神妙に頷いた。


今ごろは何をやってるんだろう。死んではいない。生きてるはずだ、けど、会える保障なんてどこにもない。加奈は悲しくなった。


いつの間にか起きていた博美が、二人を見つめた。
「加奈ちゃん。わたしいいこと考えたの!」

博美ちゃんのいいことって、悪いけど、あんまり期待できなそう……
加奈は頬を掻いた。


「わたしが柴崎君を見張って、柴崎君がわたしを見張れば、加奈ちゃんはその間に寝てられるでしょ?」
「……まあ」

――でも、博美ちゃんのことだから、柴崎君が襲ってきても、「やめて。今なら神様はあなたのこともお許しになってくれるはずよ!」とか言うに違いない。


「加奈ちゃん目が真っ赤だし、クマもできて酷い顔よ!」


酷い顔って……
あんたの発言の方が酷いよ。加奈はそう思いながら、鏡を覗いた。

――本当だ。酷いわ。

「だから安心して眠ってよ。わたしにまかせて」
博美は加奈の手を取って、言った。

目の中きらきら光線に、負けてしまった。


「……わかった。ありがとう、博美ちゃん!」加奈はなぜか涙ぐんでいた。

「あっ、寝る前には歯磨きも忘れずにね!」博美はニコッと笑った。


憐一は、何だか変な二人だな、とでも思っていそうな表情で、加奈と博美を見ていた。


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