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バトルロワイアルぺティー

283リズコ </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/06/08(火) 23:04 ID:2KqO5TgA

 おっそいなー。蚊に刺されるじゃないのよ。美保はイライラして、時計を見た。
あれから約七分。トイレにしても、そろそろ帰らなくっちゃ私も疑われるかもしれない。

美保はドアに耳を押し当てて、中の様子を窺った。
がたごとうるさい。まだどっちも生きてるっぽいな。何やってんのよ、仲田。まさか、おじ気づいたとかじゃないでしょうね。美保はぎりっと歯ぎしりをした。

入ってみよう。美保はそう思った。
ポケットに入っていたグロックに触れた。残酷な決断を、下すかもしれなかった。


美保は少しだけドアを開け、中を覗いた。


二人は転がって、殴り合っていた。まるっきり子供の喧嘩。足を引っ張ったり、髪を引っ張ったり。美保がいることには全く気づいていないようだった。

何よこれ。ちゃんとやってよ。美保は唖然として、その光景を見ていた。



強烈な蹴りを喰らわされて、諒がうずくまった。短く息をつきながら、自分の腹を押さえた。苦しそうだった。
「腹は反則だろ……」諒は震える声で言った。

亘佑も激しく息をついた。座り込んで、諒の胸倉を掴んだ。
「もう終わりか? 随分腕が落ちたな」そう言って、諒の顔を見た。ぐちゃぐちゃに乱れた髪、赤く腫れ上がった顔。額に血が滴り落ちていた。

多分、自分も相当酷い顔をしているのだろう。亘佑はフッと笑んだ。



何で自分が諒を殺そうとしているのか……それは新井に言われたから。
そこに、自分自身の意思はあったのか……あったよ。じゃなきゃやらない。
何で新井美保の頼みを聞こうと思ったのか……よくわかんねー。でも、多分、一目惚れだった。あいつが腹の内で何を思っていようが、かまわないと思った。
何でゴルフバッドで殺さないのか……だってそんなの卑怯じゃん。
何でとどめをささないのか……だって、オレに負ける諒なんて、諒じゃない。殺す価値もない、ただのクズだ。


自問自答を繰り返しながら、亘佑は思った。オレは、心の底では諒に憧れていた。喧嘩が強くて、何も言わなくてもなぜか温かい人間だと、気づいていた。だから余計に腹が立った。自分には一つもないものだったから。



ガッ、と力強い音がして、頬に衝撃が走った。殴られたのだ、と気づいた。
血の味がして、口の中が切れたのだとわかった。


「ぼーっとするなよ」諒はそう言って、更に続けた。「まだ終わってねーぞ」


下を向いた。声があふれ出そうになったが、何を言っていいのかわからなかった。



美保は、二人を見ていた。遠くを見ているような、何を考えているかもよくわからない表情で。ふっくらとした唇は、何かを言いたげに開いていた。

彼女は静かに握り締めている銃を見た。それから、背後に誰もいないことを確認すると、もう一度二人に視線を戻した。

立ち上がって、静かにドアを開けた。



亘佑は諒の肩に手を置いて、ごくごく静かな声で言った。「お前は、オレなんかに殺されるような人間じゃないだろ……」

「……」


諒は思った。仲田は、やっぱり仲田だった。友情なんてものに、案外こだわって、仲間というものを、案外大切にする奴。

ゲームに乗ったって、人を殺したって、中身はまぎれもなく仲田で、本質は変わってない、そう信じたい。いや、信じられるはずだ。


「仲田、おれのこと嫌いっていうのは、嘘だろ?」

「……本当に決まってるだろ……」



それが、仲田亘佑の最期の言葉になった。


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