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バトルロワイアルぺティー

273リズコ </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/06/02(水) 21:39 ID:2KqO5TgA

 梁島と博巳は、その家を出て、元来た道を戻ろうとしていた。

梁島が言った。「昼はあんなに暑かったのに、夜になると冷えるんだな」
でも、おれはこれくらいがちょうどいい。頬をくすぐる風が、心地良かった。

「おれ、暑いのが嫌いだからこれぐらいでいい」博巳は言った。

遠くで銃声が聞こえた。もう深夜なのに、まだ殺し合いをしてる奴らがいるのか。そういえば、おれ達誰にも会わなかったな。ラッキー。博巳はほくそえんだ。

梁島はポケットから煙草を出して、ライターで火をつけた。

博巳は、ふと気になったことを聞いてみた。「お前、彼女とかいるの?」

梁島はその言葉に、少し驚いたように目を丸くした。
「何だよ、突然だな」
「いや、何となく気になってさ」


梁島は少しの間沈黙すると、ぶっきらぼうに「いるよ」と答えた。
博巳は興味津々で「へー、誰? どんな人?」と訊いた。
「どんな人って言われても……普通の女だよ。気が強くてわがままで。でも優しい奴」
「へー」
のろけやがって。博巳は笑みを浮かべた。

「同じ年?」また質問をした。
「ああ、今は新潟にいるけどな」梁島は言った。
博巳は早口で捲くし立てた。「何で? 遠距離恋愛なの?」
梁島は博巳を見やって、答えた。「おれ、十六の時に家を出たんだ。東京に行きたい!って思って。それで、置いてきた」
ふーん。何か事情があるのかな、と思い、博巳は深く問いたださなかった。

「どれくらい付き合ってんの?」何か訊きすぎかも。ま、いっか。
梁島は少し考えた後、「……二年半くらい?」と言った。
「へー、随分長いんだな。いいなー。おれも彼女欲しくなってきた」博巳は言った。

「いないのか?」梁島は訊いた。
いないって言うか、なんて言うか。恋人だった女の子の顔が思い浮かんで、また心臓が萎縮した。

「まあね。こんなことなら作ればよかったよ!」博巳は明るく(表面上だけだが)言った。

その後は二人とも黙っていたのだが、梁島がぽつりと言った。「人間って、何で後悔ばっかしてるんだろうな」
「さあ。何でだろう」少し考えてみたが、博巳にもよくわからなかった。


でも、いきなりこんなことを言い出すなんて、もしかして、彼女と何かあったのかな? または、会いたくなったとか。博巳はそう予想したが、それ以上は聞かなかった。
梁島の顔が、少しだけ深刻そうに見えたので。



そのころ、初島勇人は、腕に巻いてある時計の針を見て、もうすぐ、おれが見張りの番になるな……と思った。

少し怖かった。暗闇の中、一人で門の前に立っていて襲われたらどうしよう。勇人は不安な気分になって、頭をガリガリと掻いた。

でも、怖いからやらない、なんてわけにはいかない。みんなしっかりと見張り役を務めてるんだ。博巳だって……


博巳の顔が浮かんだ。柔らかそうな薄茶色の髪をかき上げる仕草。努力家で、実は誰よりもバスケの練習を頑張っていたのを、勇人は知っていた。

勇人は絶望で笑った。何でおれはあんなことを言ったんだろう。これからもいい友達でいたい。それなら言わない方がよかったってもんじゃないのか? おれは、無駄に博巳を苦しめただけだ。

それと同時に、自分も苦しかった。嫌われたよな、当然。喉の奥から、掠れた声が出てきた。
「ハ、ハハハハ……」無理矢理笑った。本当は泣きたかった。でも、涙は出なかった。


バカ野郎。自分で言うって決めたくせに、今更後悔してんじゃねーよ。こんなことになるのなんて、最初から予想はついただろ?
それでも言おうと思ったのは、何も知らないで、自分に笑いかける博巳を見て、辛くてたまらなかったから。
勇人は嘘をつき通せない性格だった。

だから、むしろ肩の荷が下りた。博巳には、あとでもう一度謝ろう。そう思っていた。

勇人はその場に横になった。やばい、眠くなってきたかも。


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