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バトルロワイアルぺティー
207
:
リズコ </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>
:2004/05/04(火) 15:45 ID:1Nf1VncU
誰かが、公園の階段を登ろうとしているのが見えた。
――代々木信介(男子二十一番)だった。
信介は和輝に気づかれてビクッとしたようだったが、銃を装備した。
色白で、どことなく繊細さを感じる信介の顔が、今は引きつっていた。
そして、信介の小柄な体には、いささか大きすぎるショットガン(レミントンM31)が握られていた。
まずい。和輝は呟いた。「笹川、逃げるぞ」
「へ?」加奈は和輝の方を向いて、それから信介の存在に気づいた。
震えていた。「和輝……」
和輝は痛む左手で加奈の手を掴むと、必死で逃げだした。
信介も、重い銃を持っているので足がもつれていたが、必死の形相で追い掛けてきた。
逃げる途中、和輝が振り返ったその一瞬、信介が銃口を和輝に向けるのが見えた。
――撃たれる!
和輝は、加奈を庇いながら地面に転がり込んだ。
大きな音が聞こえたかと思うと、近くの地面に大きな穴が空いた。
近くに銃弾が当たった衝撃で、和輝と加奈は、丘をたっぷりと転げ落ちた。
加奈は顔をあげて、訊いた。「和輝……平気?」
「ああ、大丈夫だよ」和輝は苦い顔で、信介を見た。
昨日の朝、和輝に謝ってきた時の様子とは大違いだった。
和輝は片手で加奈を庇いながら、ジャケットの胸ポケットに入っている銃に手をかけた。信介は次の弾を装備するのに手間取っていた。
今だ。和輝は屈んだ姿勢のまま、撃った。
予想を上回る大きな破裂音と衝撃に、二人とも驚いたが、和輝は更に撃った。信介の手に狙いを定めて。辺りに二発の銃声が響いた。
一発目は信介の手に当たり、銃が地面に落ちた。
そして、二発目は信介のすぐ近くを掠めたようだ。
すげえ。あたった。和輝は少しばかり、感動していた。
信介は手を真っ赤に染めながら、悔しそうな顔で「ぐー」と、声を出した。
諦めたのか?
和輝がそう思った瞬間、信介はショットガンを拾い上げ、こちらに向けて走ってきた。
「うわっ」和輝は急いで立ち上がり、走り出した。
加奈の手を握り、丘を走り抜けた。
信介は、今度は利き手とは反対の手で銃を必死で装備し、和輝に向けて撃とうとしていた。
和輝は信介を威嚇するために、もう一度撃った。
信介は一度ビクッとしたように足を止めたが、撃った。
ドン。
和輝は無意識のうちに、一瞬、身を反らした。
近くで爆音がしたかと思うと、和輝のデイバックがはじけ飛び、中身がバラバラとこぼれて、ぐちゃぐちゃになっていた。
チクショウ。和輝は信介を睨んだ。
信介自身は、その衝撃に耐えきれず、近くでよろけながら手を抑えていた。しかし、撃ち終わった銃弾をポンプから出した。そして次の弾を、不慣れな手つきで装備していた。
今撃たないと殺られる! 深く考えている余裕などなかった。
和輝はもう一度狙いを定めて、撃った。
もう一度大きな破裂音が鳴った。
和輝の撃った弾は、信介の体に穴を空けた。大きく痙攣して、信介は、後方へ下がった。
ボーっとどこか遠くを見ているように見えた。そのままゆっくりと、崩れ落ちた。
スローモーションのようだった。
和輝は、不思議な気持ちで、その光景を見ていた。心臓の動悸が治まらなかった。
……終わったのか?
さっきの激しい銃声が嘘だったかのように、辺りは静まりかえった。
深く、息をついた。終わったんだ。
和輝は、後ろで身を屈めていた加奈に声をかけた。
「大丈夫?」
加奈は、ホッとしたように「うん!」と頷いた。
和輝はささやかな喜びを感じた。よかった。俺達、生きてる。
二人は手をとって、丘の上にあがった。
「さっさと降りよう」そして、階段を下るために、足を踏み出そうとした。
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