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バトルロワイアルぺティー

201リズコ </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/05/02(日) 22:37 ID:1Nf1VncU
 黒川明日香(女子十二番)は、G=4にいた。

なだらかな丘陵を下ると、小さな休憩所があったので、明日香はそこでしばらくすごそうと思った。

ペンキが剥げてしまった椅子に座り、明日香は、三条楓(女子十五番)を見た。楓は突っ立ったまま、そこでジッとしていた。
「座りなよ」
明日香は言ったが、聞こえているのか聞こえていないのか、楓は全く応じようとはしなかった。

何なんだろ。イライラしながら、自分の握りしめている武器を見つめた。
「こんな物で、銃とか持ってる奴に太刀打ち出来るわけないよね」明日香はそう呟いた。

明日香の武器は、フォークとシーナイフだった。ご丁寧に、セットにしてくれたらしい。
……ちっとも嬉しくない。

明日香はため息をついた。「フランス料理でも食べろって言うのかよ。ねえ?」
語尾を大きめにして、楓に話しかけてみたが、何も答えなかった。

何なの、もう。腹が立っていた。私がせっかく話しかけてやってるのに、ちっとも聞いちゃいない。私だって、本当は一人で行動したかったのに、泣いて頼むから一緒にいてあげてるのに――。
楓は小刻みに震えていた。

まあ確かに、怖いのはわかるけど。明日香はテーブルの上に肘をついた。
椅子から、長い足を放り出した。頬杖をついてため息を漏らした。
退屈だった。じれったい思いで楓を見ると、いつの間にか、並行に並んだテーブルの、明日香から二つほど向こうの椅子に座っていた。

それについては、特に何も思わなかった。楓と自分は大体このくらいの距離を、常に保っていた。とっくの昔からそうだったので、不快な気分になることもなかった。

二人は友人だったが、特別仲がいいわけではなかった。二人とも大きな中間派グループに属していて、決して話さないわけでもなく、友達と言えば、そうだったと思う。
しかし、こんな状況で一緒にいるのは、何となく不自然なことのような気がした。少なくとも明日香にとっては。

現に、二人は殆ど口をきいていない。いや、さっきから明日香が話しかけても、楓は答えてくれなかった。

怖いのはわかる。でも、だからこそ私がこうして気を遣って話しかけてるんじゃない。それを何よ。最初から何も話さないなら、いない方がいい。明日香はそう思った。

明日香と楓は、容姿も性格も、全く正反対だった。明日香は背が高く、少し細めだが均整のとれた体つきをしていた。頭が良く、運動神経も良く、何をやらせても割と出来た。

それに対して、楓の成績は、いつもクラスで下の方だ。背が低め、それにしてはぽっちゃりとした体形で、足が短い。異様にでかい目や、大きなかぎ鼻。
とても美人とはいえない顔の造形だが、その顔や体形が何かのマスコットのようにも見えて、可愛らしく見えることもあった。表情がくるくる変わり、見る者を飽きさせない。そして楓は特別な才能がない代わりに、人を楽しませる術をよく知っていた。

日ごろから、あまり感情を表に出さない明日香とは裏腹に、明るく、面白くて、いるだけでその場が明るくなるような子だった。プライドの高い明日香と違い、捨て身のギャグもお手の物だった。
そして、どちらが人間的に好かれるのかと言ったら、後者だった。

明日香は時に、怒りにも、焦りにも似た感情を抱くことがあった。特にそれは楓の周りに人が集まっている時。皆楽しそうに笑っていた。会話に加わろうと思えば出来るのだろうが、明日香はいつもそれをためらっていた。私の方が優れてるのに――。ついそう思ってしまう自分に呆れ、嫌気がさした。

……今こんなことを考えてても仕方ないか。
明日香は長い茶色い髪を掻きあげ、ひっそりとため息をついた。


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