したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |
レス数が1スレッドの最大レス数(1000件)を超えています。残念ながら投稿することができません。

他人が書いた小説の一部を批評するスレ

1604イラストで騙す予定の名無しさん:2006/08/07(月) 19:32:33
最近書き始めました。よろしかったら批評して下さい。


思った以上の痛みはなかった。かなりの勢いで全身を地面に叩きつけられたはずなのに。その代わり、左足だけがただ熱かった。
ゆっくりと瞼を上げると、ピントの合わないレンズ越しに、ねずみ色の地面が広がっているのが見えた。由利康介は地面に両の手をついてうつぶせで寝転がり、熱板のようなアスファルトの感触の中を泳いでいた。
その康介の頭の先、手を伸ばせば届きそうな位置で、甲高い子供の泣き声が聞こえる。その泣き声は、康介を安心させるには十分であった。
良かった。助かったんだ。
康介は自分の体から急激に力が抜けていくのを感じ、一旦大きく息を吐いた。すると切れた唇から鉄臭い液体が流れ込んでくるのが分かり、それを口からはきだした。
それは僅か一瞬の出来事であったのだが、その間に子供の泣き声が消えている。そこら中で喚き散らしていた蝉の声さえ消えたような気がした。ただ、いつの間にか集まった野次馬の息を飲む音。本来なら聞こえるはずのない、その音が康介には確かに聞こえた。
不審に思い、何とか起き上がろうとしたのだがまるでろうで固められたかのように動かない。仕方なくかろうじて動く顔だけを上げた。
本来ならそこに子供の姿が見つけられるはずだったのだが、残念ながら障害物がそれを邪魔している。康介は相変わらず幕がかかったかのようにボヤける視線を障害物に向けた。
それは、見慣れた白い康介のスニーカーであった。それが康介に靴底を見せる形で転がり、視線を遮っている。
車に衝突した衝撃で脱げたのだろうか?
体が動かないため、それをどうにもできない自分に苛立ちつつ、康介はその白いスニーカーを睨みつけた。
変化は山頂の天気のように唐突に訪れた。いつもの見慣れた白いスニーカーが変わって行く。もう白ではない。赤だ。
その赤に比例するように、スニーカーを中心に赤い水溜りが広がっていく。
あれは何なのか。そんな事は考える必要もなかった。体温が、熱がアスファルトに吸い取られていく。その中で、左足だけは未だに熱を発し続けていた。




掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板