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【大正冒険奇譚TRPGその6】
95
:
倉橋冬宇子 ◇FGI50rQnho :
:2013/09/02(月) 22:52:22
>>81-88
>>91
石柱が立ち並ぶ通路を抜けて入った広間は、意図的に照明が落とされているのか、薄暗かった。
部屋の最奥は、緩やかな階段を経て壇上に玉座。
両脇に据えられた灯篭が、揺らめく陰影を落とし、玉座の主の霊験神秘な雰囲気を高めている。
灯る炎には火行の術式が施されているのが判った。
灯篭だけではない。この広間だけに留まらず王宮の敷地全体に、冬宇子程度の三流術士には
存在も気取られぬほどの複雑高度な五行の術式が、幾重にも張り巡らされている筈である。
清国宮廷――謁見の間。
対面した清王は、北方騎馬民族の血筋によるものか、薄金色の髪を持つ大柄な体躯の持ち主だった。
年齢は四十手前だろうか。柔和な表情と、砕けた口調。
一国の王たる身分にはおよそ不釣合いなほどの飄々とした態度も相まって、厳しさを感じさせない。
けれど、表層の軽さだけでは覆い切れない、何処か底知れぬ気配を醸し出している人物だった。
生還屋とあかね……さらに鳥居の問い掛けに応える清王の言葉を、冬宇子は黙って聞いていた。
―――数百年の生を経た吸血鬼―――
そう称する鳥居の正体を見極めようとするかのように、見詰める王の虹彩が金色に輝く。
身体に帯びていた火氣と金氣が、一瞬、鋭さを増した。
仕事の取り消しを口にした清王に対し、立て板に水の勢いで繰り出される武者小路頼光の弁解。
おべんちゃらが途切れると、冬宇子は、頼光を見遣って口を挟んだ。
「安心おしよ。"仕事を取り消す"なんて、心にも無いことなんだから。
ええ?そうじゃないのかい、国王様?」
腕を軽く上げて、親指で鳥居を指し示し、
「あんたは、この生成り小僧とは違う――"完璧な不老不死"を望んでいる。
おや、失礼…じきに大陸を統一する、清の国王陛下に対する口の利き方じゃなかったねえ。」
鳥居呪音の不死性は特殊だ。
ちょっとした精神の変調や外的要因で、生身と不死の狭間を行き来する不安定なものである上に、
何より、鳥居には、年を経たものならば樹木や動物すら醸し出している、あの独特の深淵な気配が無い。
端的に言うと――"死の匂い"がしないのだ。
彼の託つ孤独や寂しさは、まるで、大人に思うように構って貰えない子供が捏ねる駄々のように浅薄で、
数知れぬ死を見送ってきた者の寂寥、達観の如きものが感じられない。
江戸初期の生まれだと言う彼の身の上を、冬宇子は、妄想か催眠暗示による思い込みではないか、と疑っていた程だ。
十歳児の外見よりも幼い印象。
生の辛苦とは無縁の、甘やかされて育った子供のように我侭で、汚れを知らない。
永遠に無垢なまま――変化することのない、人形めいた不死性とでも言おうか。
おそらくそれは、彼の幼児性に起因するものであろう。
幼児は感情も思考も曖昧だ。我が身に起きた事象に対し、感情を定め、分析し、整理することが出来ない。
自我の未熟さゆえに、ただ、起きた事を受け止め、受け流すだけ。経験による智の積み重ねが生まれない。
清王は、金行を宿した眼で、そんな鳥居の本質すら見抜いているようだった。
彼が目指しているのは、人形のような不老不死ではない。
肉体も、智性も、完璧な形での『永遠なる生』である筈だ。
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