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【長編SS】鬼子SSスレ@創作こそ至上【短編SS】
1
:
ヤイカガシ
:2020/03/17(火) 04:07:20 ID:soZACVY.0
1 : 名無しさん@避難中 sage 2019/12/30(月) 18:53:51
,,,,,A__A、
r彡リリリリリリリミハ、
/:::::::::::::ハ::::::::::::::::,ミ!`了
[ンリリリリHノ ミテ〒テテヲ ノ ここは創作発表板です!
_rrrr、_ノlリリリ= =リハ川} マ オリジナル・二次創作問わず
「::/ ゙̄"ヽ::::i!川人''┌┐''ノリミ川!!J 様々なジャンルの作品を好きな方法で自由に創作し、
|:/ 注 r-、!リl州>ニ-イ彡ハ川| 発表して評価・感想を貰う創作者のための場所です!
|:{ 意 r〈rミYリi ( Vクリリク;:;ヽリ!、
|:{ 事 }:::ハソ !、;:;:ハ/クィ⌒:;:;}リハ、 こちらのスレで扱っているのは、
|::, 項 ノ:::|:;r ヘ/;:/:;:;:;:;:;:;イリリ,ハ 萌えキャラ 日本鬼子(ひのもとおにこ)ちゃんです!
|::ヽ _/_|人 ノ入Y:;*:;:;:;:;ノミリリリ、 みんなで楽しく鬼子ちゃんの作品を創作・発表し、
 ̄ ̄ヽ リ:;*:;(ソ/:;*:;:;:*;イ:;トヘミミハ、 存分に萌え散っちゃって下さい♪
|:;Y:;:;:;:;/[入:;:;:;:*;:;:;:;ノ回@)リリヽ
日本鬼子ポータルサイト
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関連スレ【飄々と】萌えキャラ『日本鬼子』製作33 【萌え】
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/3274/1577699631/
○まとめwiki
http://www16.atwiki.jp/hinomotooniko/
あとはよしなに
34
:
黒幕
◆1WsTPNJ.62
:2020/06/23(火) 17:28:46 ID:8OgEHYkc0
『鬼子外伝 -ショウキ- 2章 疫鬼退治 』
一般に、霊力(れいりょく)や法力(ほうりき)、神通力といわれる超常の力にも様々ある。
これらは厳しい修行の末に手に入れることができる異能の力だが、これらの力は大きく二つに分けられる。
ひとつは体の中に流れている生命の力(オーラとか気ともいわれる)を制御して、常人以上の力を発揮する方法。
もうひとつは自ら信仰する神や仏(対象は悪魔や邪神でもよい)に祈りを捧げ、その身に異能の力を借りる方法だ。
この「祈り」というのはある種の比喩表現である。正確には、この世界に満ちているエネルギー(霊気、マナ、エーテルなどとも呼ばれるもの)を自分の身体に流し込んで使う技術だ。この技術に「祈り」という言葉が使われたのは、かつては神仏に祈りを捧げることで、超人的な力が得られると考えられていた時代の名残である。
わが国においては修験者や法力僧を中心にその技術が確立されてきたし、諸外国でも修道士やシャーマン等の宗教家たちにより使用されてきた。
彼らの様に神仏を信じる者たちは、この現象を「信仰」あるいは「信仰の結果」という言葉で表現・説明してきた。
この様に呼ばれた理由には、その理論体系や技術手法も強く影響していると考えられる。つまり、世界に満ちているエネルギーには実体がない。
実体がないものを操作するにあたり、まずエネルギーを形あるものとしてイメージする。そして自らの気を媒介にして具象化する必要があった。
無いモノを有るかの様に強烈なイメージを形作ることで、有るはずのないモノを利用、もしくは実体化させる。
形ないエネルギーを「神仏の姿」という形でイメージして具象化し、それらを操作する技術として確立されていったのだ。
この世は「色即是空、空即是色」、実体の有るモノと実体の無いモノは全て表裏一体で紙一重の存在であり、何かのきっかけで姿を現しているだけに過ぎないのだ。
これはなにもこの物語の中だけの架空の話ではない。最新の物理学である量子力学の領域でも「分子や原子の全く存在しない真空中」において、極微量のエネルギーの揺らぎが観測された。
現在の科学で観測できない範囲の世界から、何かしらのエネルギーを取り出したり、物質を生じさせるということはもはや夢物語ではないのだ。
さて、世界に満ちているエネルギー(霊気)の操作や制御には、相当なイメージトレーニングが必要となるが、理論上ではほぼ無限の力を得ることが可能となる。
(ただし、術者の能力や人間の肉体には限界があるため、実際には無限にエネルギーを使うことは不可能である)
娯楽が発達した現代においては、神仏どころか「自分の好きなアニメの巨大ロボット」のイメージを使い、世界に満ちているエネルギーの制御を行っている「魔術師」もいるが、それについては閑話休題。
なお、将魔たちの寺院においては「体の中に流れている生命の力」と「世界に満ちているエネルギー」は、両方とも区別することなく「霊気」(もしくは気)と呼んでいる。
しかし、それではこの物語を編纂するにあたり判別がつきづらく、文章的にも煩雑となってしまう。
よって本物語においては筆者の判断で「体の中に流れている生命の力」を「霊気(オーラ)」、「世界に満ちているエネルギー」は「霊気(マナ)」と、仮に呼称し以下の様に記述させていただく。
将魔と魔希のふたりは「霊気(マナ)」の制御はできないが、「霊気(オーラ)」を制御する才能はあった。
「じゃあ、はじめるわよ」
魔希は将魔に向かって言った。
二人とも普段の服装とは違い、服の上に上着だけは白い装束を羽織るという服装に着替えていた。背中にはランドセルのような木の箱を背負っている。
この白い装束は、修験者たちが纏う正式な装束に比べるとかなり簡易な服装である。
これは茅原老人が「子供用白装束」と称して二人に渡したもので、二人とも喜んで着用しているものだ。
35
:
黒幕
◆1WsTPNJ.62
:2020/06/23(火) 17:41:57 ID:8OgEHYkc0
ただこれは白装束などではなく、本来は神職が掃除用に使う「白作務衣」であった。
この「白作務衣」という商品の特徴として、ほうきや熊手を扱った時に袖が引っ掛からないように丸袖となっている。
さらに身体が汚れないように両の袖口にはゴムが縫い込んであった。掃除をするにも動き回るにも快適な衣装ある。
しかしこれらは子供用とはいえ、寺社用カタログ通販「オニクル」で正規に購入すると少々割高な商品である。
そこで茅原老人は「般ニャフーオークション」で同じ品物が7割引きで出品されているのを見つけ、落札することにした。
新古品ではあるが、70%オフの一着4,000円で購入できたお値打ちの品である。
このことはもちろん、将魔と魔希には内緒にしてある。
ただ、下衣まではセットで落札できなかったので、アンダーについては将魔は半ズボン、魔希は肩ひもがついたプリーツのスクールスカートを着用していた。
「がんばろうね、魔希ちゃん!」
そういうと将魔と魔希は人差し指と中指、二本の指を立てて刀印を結んだ。
将魔は左手、魔希は右手でそれぞれ印を結び、印を結んでいない方の手でお互いを強く握り合う。
そして、二人は口の中で呪文のようなものを唱えると、その身体がわずかに発光したように見えた。
異能の力のひとつ、「霊気(オーラ)」は通常、体の表面を数ミリから数センチの範囲で覆っている炎の様な不定形のモノである。
この「霊気(オーラ)」は普通の人間の目には見ることはできないが、場合によって空気中の水分と反応して光って見えることが稀にあった。
二人の身体から「霊気(オーラ)」が炎の様に揺らめき、光の半球状のモノを形成する。これは「霊気(オーラ)」で作られた膜のようなものであり、一種の結界だ。
二人の周囲がそれらにふわりと包まれたかと思うと、シャボン玉が空気で膨らむかの様にふわふわっと広がる。
やがて「霊気(オーラ)」の膜が巨大なドーム球場の様なサイズにまで達する。その時点で一瞬膨張が止まったかにも見えたが、すぐにまた広がりだしそのまま街を包む様にすーっと広がり、消えていった。
「駅の方に2つ、総合運動公園に3つね……」
「自転車でいく?」
「走っていくに決まってるじゃない!」
魔希はそういうと軽く2、3度ジャンプをして、準備運動の様なそぶりを見せた。
先ほど将魔と魔希が行った術は「霊気(オーラ)」の使い方のひとつであるが、これは「霊気(オーラ)」を身体の外に放出させる技術の応用だ。
通常は自分の身体から離れた時点で消えてしまう「霊気(オーラ)」であるが、体から離した状態で維持できるようにする。
これを極めると「霊気(オーラ)」を弓矢や銃弾のように発射して攻撃することができ、質量のある分身を作ることもできるという。
現在の将魔と魔希にはそこまではできないが、「霊気(オーラ)」の塊を身体から離れたところで維持して簡易な結界を作り、風船のように膨らませる。
この「霊気(オーラ)」の結界が広がったときに、結界に触れたものたちを感知することができる。
これは、レーダー(電波探知機)が電波を飛ばし、その反射で航空機や艦船の数や位置を測定する原理に似ていた。
36
:
黒幕
◆1WsTPNJ.62
:2020/06/23(火) 17:43:45 ID:8OgEHYkc0
そして、人間に「霊気(オーラ)」がある様に、疫鬼や妖怪たちの様な者には「妖気」というものが存在する。
「妖気」は「霊気(オーラ)」と対を為す存在であり、これは負の「霊気(オーラ)」と考えて良い。
また同様に、負の「霊気(マナ)」も存在しており、こちらの方は「瘴気」と呼ばれていた。
つまり将魔と魔希は薄い結界を広げ、それに触れた妖気の数や強さ(妖力ともいう)を感知し、遠く離れた駅や総合運動公園に疫鬼を見つけたというわけだ。
将魔はこの結界を広げて妖気を感知することが不得手で、感知できるのは通常半径4メートルくらい。これに対して魔希は半径100メートルほどを感知することができた。
ただし、二人で協力して結界を広げた場合、半径300メートルまで感知することができた。
普段は将魔のことを疎ましく思っている魔希が、渋々ととではあるが協力する理由はここにあった。
半径100メートルの感知と半径300メートルの感知では効率がまったく変わってしまう。
小さいながらも一つの街を隅々までを探索するのであれば猶更だ。魔希ひとりでは朝までかかっても終わらない可能性があった。
さて、この異能の力「霊気(オーラ)」の使い方や特性には様々あるが、術者の生まれ持っての資質や技量によって得手不得手が存在する。
将魔たちの寺院では「霊気(オーラ)」を効率的に運用していくにあたり、陰陽五行思想に基づいて「霊気(オーラ)」の特性を木・火・土・金・水の5つに分類し、技術体系化していた。
以下に、その技術理論の一部を記す。
【木】
木とは、エネルギーそのものであり気力のシンボル。
大地の「霊気(マナ)」が固まり形を成したモノが木だという考えから、木という文字が充てられている。
「霊気(オーラ)」の本質に一番近いモノ。
現代物理学に置き換えると電気に近い特徴があり、人間の身体を動かしているのも微弱な電気である。
木の「霊気(オーラ)」の特性を使う技術としては、電気(電撃)に近い性質からモノの持つ働きや身体の力を「霊気(オーラ)」で高める術に用いる。
【火】
火とは、熱量であり熱量のシンボル。
熱であり光でありるモノが火だという考えから、火という文字が充てられている。
現代物理学に置き換えると炎(物質の第四の状態プラズマ)に近い特徴があり、常に激しく動き回っている性質のモノである。
火の「霊気(オーラ)」の特性を使う技術としては、本来身体から離れたら霧散してしまう「霊気(オーラ)」を動き回る性質を利用し、身体から離した状態で維持・固定する術に用いる。
【土】
土とは、物質の根源であり具象のシンボル
土とは、全てのモノを形作っている大本だという考えから、土という文字が充てられている。
「霊気(オーラ)」でありながら「霊気(マナ)」の性質に近いモノ。
現代物理学に置き換えると「対生成」という状態に近い特徴があり、状況により形「霊気(オーラ)」が実体化する。
土の「霊気(オーラ)」の特性を使う技術としては、「霊気(マナ)」の性質に近いことから「霊気(オーラ)」を物質として顕現させる術に用いる。
【金】
金とは、純粋のシンボル
金には不純なモノを取り除きできたモノが金であるという考えから、金という文字が充てられている。
現代物理学に置き換えると磁気(磁力)に近い特徴があり、「霊気(オーラ)」でありながら「霊気(オーラ)」を反発させる性質がある。
金の「霊気(オーラ)」の特性を使う技術としては、物質や生物に「霊気(オーラ)」を定着させ、操る術に用いる。
【水】
水とは、無形のシンボル。
水には常形が無いという考えから、水という文字が充てられている。
現代物理学に置き換えると無形というよりも、低温(分子振動が少なく「熱的な擾乱が小さい状態」)に近い特徴がある。
水の「霊気(オーラ)」の特性を使う技術としては、分子振動や状態の制御が可能であることから「霊気(オーラ)」の性質や形状を変化させる術に用いる。
これらの技術体系に基づき、将魔は木気の「霊気(オーラ)」を利用した身体能力の向上。魔希は金の「霊気(オーラ)」を利用し、呪符等に「霊気(オーラ)」を定着させて操る術に長けていた。
また、先ほど二人が使った結界を広げて妖気を感知する術は、火の「霊気(オーラ)」を利用した術の応用である。
身体から離れた「霊気(オーラ)」を薄い膜状に維持し、広げることで妖気の感知に利用したものだ。
将魔が得意とする木気の「霊気(オーラ)」は、五行相生の作用で火気を補助する効果がある。将魔が魔希に協力したことで、火気の術である結界が強化・増幅され感知できる範囲が広がったという理屈だ。
37
:
黒幕
◆1WsTPNJ.62
:2020/06/23(火) 17:44:35 ID:8OgEHYkc0
「じゃあ将魔、チャッチャと終わらせるわよ。明日は土曜なんだから」
「まあ学校もずっと休校だし、土曜とか関係ないけどね」
「うるさい!バカ将魔!」
魔希がそう叫ぶと、二人は日が暮れたばかりの夜の闇に消えていった。
✳︎
「30匹か、まあまあね」
照道さんが用意してくれたおにぎりを頬張りながら魔希は言った。
照道さんは普段から寺院の手伝いに来てくれている役僧である。現在、寺院には将魔と魔希しかいないので、朝夕のお勤めの他、二人が食べる朝昼の食事の世話をする為に毎日通いで来てくれている。
夜は疫鬼退治に出かけるので、お弁当の用意もしてくれていた。
今日はおにぎりと甘く焼いた卵焼き、そして鶏の唐揚げだ。
「でも、おかしくない?」
将魔はドッヂボールくらいの大きさの疫鬼に『七星剣』を突き刺しながら、魔希に疑問の声を投げかけた。
『七星剣』に触れた疫鬼は、黒い霧が霧散する様に跡形もなく消滅する。
「何がよ?」
「結界で感知した疫鬼の数と、実際に倒した疫鬼の数が合わない」
「状態が不安定で、ワタシたちが来るまでに瘴気に戻ったのかもね」
「そうなのかなぁ……」
腑に落ちない、という表情の将魔を余所に魔希はケラケラと笑っている。
「次は商店街、ライブハウスの近くね。少し数が多いわ。大きめの疫鬼が7、小さな疫鬼が1ね……今日はこれで終わりにしましょう」
38
:
黒幕
◆1WsTPNJ.62
:2020/06/23(火) 17:46:52 ID:8OgEHYkc0
おにぎりを食べた手をウエットティッシュでキレイに拭き取ると、魔希は将魔に白い歯を見せた。
✳︎
この街にはアーケード商店街がある。これはかつて商店街に活気があった時代の名残だ。当時の商工会と商店会が資金を出し、商店街の歩道が風雨に当たらない様、アーチ状の屋根で覆ったモノだ。
いくつかの店舗が閉め、小売店の並びが櫛の歯が抜ける様な状態になってしまったが、このアーケードだけは街の象徴として維持し続けてきた。
「まず、商店街の入り口に少し小さいのがひとついるはずだから、それを片付けるわよ」
「はいはい……」
「将魔、『ハイ』は一回!」
魔希はそう叫ぶと『すずらん通り』という商店街の看板をくぐり、小走りで商店街のアーケードに入っていく将魔と魔希。
疫鬼を見つけるために魔希が刀印を結び、感覚を研ぎ澄ます。
「あのドラッグストアのごみ箱のところに小さな疫鬼が隠れ……」
魔希がそう言いかけた瞬間、将魔と魔希は背筋が凍り付いた。
「なに……これ……」
ごくり、と唾を飲み込む魔希。
そこには確かに疫鬼がいた、しかし……二人が事前に察知していた小さな疫鬼などでは無かった。
そこには大きな黒い肉の塊の様なモノが有った。いや、正確には肉塊の様な疫鬼である。
将魔と魔希の視線の先に、中型の犬くらいのサイズの疫鬼が倒れていたのである。しかも瀕死の状態で、である。
これほど迄大きな疫鬼を、将魔と魔希は見たことがなかった。
通常の疫鬼は牡丹餅くらいの大きさで、大きくてもドッヂボールくらいの大きさである。疫鬼の身体からは細い枝のような手足が何本か生えている。大きな疫鬼には眼球のような器官が現れることもあった。
しかしこの疫鬼は今まで見てきた疫鬼よりもはるかに大きく。中型の犬くらいのサイズがあった。そして眼球と共に大きく裂けた口と、口の中には人間の歯のようなモノが生えていたのである。そしてその胴体からは、まるで人間の成人男性の腕の様なモノが三本生えていた。
39
:
黒幕
◆1WsTPNJ.62
:2020/06/23(火) 17:47:36 ID:8OgEHYkc0
その疫鬼の様なモノは、ギッギギィ……と気味の悪い泣き声を上げ、口元からは泡を吐き、全身を小刻みに震えさせている。
時折ビクンビクンと身体を痙攣させていることが、この疫鬼がまだ生きているということを示していた。
しかし、何よりも二人を驚かせたのはその体の中心部分である。
人間で言えば腹部にあたると思われる部分が、何者かに喰いちぎられたかの様に切り取られ、臓物の様なモノが体外に飛び出していた。
その周囲には黒くドロッとした様な液体が飛び散っている。これは疫鬼の体液だろうか。疫鬼の倒れている身体の下には、黒い血溜まりの様なモノができている。
まるで何者かに喰い散らかされた後の様な、という表現がぴったりであった。
あまりのことに言葉も出ず、その場に立ち尽くす将魔と魔希。
しばらくの沈黙の後、将魔が口を開く。
「これ、疫鬼だよね?」
将魔はポツリと呟いた。魔希は無言である。
二人は今日が初陣であるが、今まで何度か法力僧たちの疫鬼退治に立ち会ったことがある。
よって、これが如何に異常なことかすぐにわかった。
疫鬼は瘴気が凝り固まり、生き物の様に振る舞う存在である。
つまり疫鬼は負の「霊気(マナ)」の塊の様なモノで、人間に害を為すが実体は有って無い様なモノなのだ。
普通の人間や道具では、疫鬼を傷つけることはできない。疫鬼を退治するには強い「霊気(オーラ)」をぶつけるか、『七星剣』の様な「霊気(オーラ)」を纏った道具を使用しなければ疫鬼にダメージを与えることができない。
そして、「霊気(オーラ)」を使用して疫鬼を滅ぼそうとしても、この様なことにはならない。
疫鬼を、実際の生き物同様に引き裂き、喰いちぎることのできる存在は……
「妖(バケモノ)に……やられた?」
魔希の言葉に、将魔が驚く。
妖(バケモノ)は、疫鬼よりも高位の存在である。
疫鬼は能動的に動き回ることができるが、あまり知能というモノが無い。しかし妖(バケモノ)は人間の様に意思を持ち、時には人間よりも優れた知能を獲得している者さえもいた。
ただ、この妖(バケモノ)は先の大戦で大幅にその数を減らしていた。平成・令和の時代にはほとんど姿を消していったが、千原老人の言によると時折この街には妖(バケモノ)が姿を現すことがあるという。
「…………」
将魔は無言で、この疫鬼の様なモノに『七星剣』を突き立てる。すると、他の疫鬼同様に黒い霧の様なモノになり、霧散して消え去った。
「やっぱり、これは疫鬼みたいだ……」
将魔が独りごちる。先程までヘラヘラとしていた将魔の表情が、ガラリと変わり、険しい眼差しを湛えていた。
「気をつけよう、この疫鬼を食い散らかした妖(バケモノ)がまだ近くに居るはずだよ」
将魔がそう言ったその時……
(……十年……百年……)
アーケードの奥から、若い女性の声が響いてきた。
(……姉三……六角……)
まるで、何か歌でも歌っている様にも聞こえた。
それは人のいない通路に美しく響く、物憂げな女性の声だった。
そして、魔希は何かに気づく様に息を飲む。魔希はこれらの言葉に聞き覚えがあった。
「姉三、六角、蛸錦」は京都の通りの名前で、これは京都の子供たちが通りの名前を覚える数え歌である。
今でも京都の子供たちは「丸竹、夷二、押尾池(まるたけ、えべすに、おしおいけ) 姉三、六角、蛸錦(あねさん、ろっかく、たこにしき)」と歌うのだと、小さい頃「小学生が探偵をするアニメ」の映画で観たことがあったのだ。
「……行くわよ、将魔」
魔希の言葉に将魔はコクリと頷き、歌声のする方向に足を向ける。
二人が向かった先には、先程多くの疫鬼がいると察知したライブハウスがあった。
疫鬼をこの様にした犯人が、茅原老人のいう「鬼子」では無いことを祈るばかりであった。
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