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虐厨いじめスレ
100
:
未知とのコミュニケーション 2/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2017/08/19(土) 23:29:00 ID:9YBXPKIg0
「てめぇら!!この始末どうする気だ!!?」
長老の息子は里の前で逃げ込もうとした生き残りの虐厨たちを鉄拳で止め、怒鳴りつけた
伝承では「ソレ」は、なにもしない、放っておけばまたどこかへ消える
しかし一発でも矢を放つなり攻撃を加えれば・・・「ソレ」は攻撃を倍返しする
過去、「ソレ」は何度も人前に姿を現していた
血の気の多い領主がそれを排除しようとしたことがあるが・・・
結果、領主の軍隊と一族は全滅、領土は「ソレ」によって焦土と化したという
だから、長老は止めたのだ、「触らぬ神に祟りなし」と
しかし虐厨たちは聞く耳を持たなかった
彼らが人の話に耳を傾ける理性の持ち主なら、利己的行動を控えていたら、こうはならなかっただろう
「ほざけw臆病風に吹かれたアイゴwwwww」
この期に及んでまだ虐厨は反省すらせず、さらに「ソレ」を殺す気だった
虐厨の一人がそう言い放つと同時に、手のトランクから武器を取り出す
グレネードランチャー、榴弾を放つ武器だ
「もうやめろ!!!これ以上被害をでかくするんじゃない!!!!」
「クソアイゴはそこで無力さを噛みしめながら憤死してろwwww」
グレネードランチャーは一本だけではなかった
多数の虐厨がそれを構え、やってくる「ソレ」を待ち構える
もう付き合っていられない、人ですらない害獣どもの身勝手と心中する義理も義務も長老の息子にはない
長老の息子は里の反対側の出入り口で手を振って避難完了を合図する妻と合流し、
里からできるだけ離れるべく車両を走らせた
そして・・・・・・
「くらえ!!」
グレネードランチャーが火を噴き、「ソレ」に直撃した
次々とグレネードが「ソレ」に着弾し、「ソレ」は動きを止める
「やったか!」
煙が晴れた時・・・虐厨たちは絶句した
そこにいたのは、先ほどの鈍重そうな亀のようなものではない
派手な装飾の鎧を思わせる禍々しい体を持った・・・二足歩行の「怪獣」だ
「・・・キェェェェェ!!」
「ソレ」は一声鳴くと、火炎放射器の時と同じように「お返し」をした
無数のグレネードが怪獣の体の穴と言う穴から一斉に放たれる、虐厨たちめがけて
当然、背後の人里にも榴弾は降り注いだ
田畑は無残に焼かれ砕かれ、収穫間近の農作物は灰へと姿を変えた
里の名物だった古くから続く伝統的家屋も例外なく破壊され、火柱を上げて燃え上がる
長老の指示でいち早く住人は避難していたため、幸い住人たちの犠牲は皆無だった
「親父・・・」
「無駄じゃ・・・ああなったあの御方はもう・・・誰にも止められん・・・奇跡でも、起きぬ限り・・・」
なお、この惨禍から奇跡的に逃げ延び命を拾った虐厨が何人かいた
が、彼らへの里の住人の態度は絶対零度であったことは言うまでもない
101
:
未知とのコミュニケーション 3/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2017/08/19(土) 23:33:42 ID:9YBXPKIg0
日が暮れた
「ソレ」は自問自答した
この星には多くの生物がいた、挨拶をされた
挨拶には挨拶を、本能がそう告げる
だから挨拶を返した・・・なのに、もう誰もいない
自分は間違っていたのか?
「ゆゆゆ、ゆっくりしていないトカゲさんだね!」
「ソレ」は、自分に声をかけた存在に目をやった
少女の生首のような、頭にリボンをつけたものがそこにいた
「・・・・・・・・・?」
首をかしげて見つめるそれに、れいむは自己紹介した
「れいむはれいむだよ! トカゲさんはなんていうの?」
「ソレ」は困惑した、「ソレ」に名前など無い
しかし「ソレ」は、かつて「光の巨人」が自分をこう呼んだことを思い出し、言葉にした
「・・・・・い・ふ・・・」
「イフさんっていうんだ!よろしくね!・・・ねぇ、何であんなに暴れたの?」
「・・・・・・・・あばれて、ない・・・”あいさつ”・・・かえしただけ・・・」
「そっか・・・でもね、あれは悪いゆっくりできない人間さんたちの暴力だから、もうやっちゃだめ!」
「う・・・・わるい・・・?」
「そうだよ!」
「わるいこと」そのような概念を「ソレ」は持ち合わせていない
しかし、目の前の生物の口調から、自分がこの星の生命体にとって
とんでもない間違いをしでかしたかもしれない事は分かった
自分は、この星に、もういるべきではない・・・
「ねぇねぇ、おうたって知ってる?」
「うた・・・?」
「そうだよ、歌ってあげる!れいむは歌が得意なの!ゆ〜ゆゆゆ〜♪」
「ゆ・・・・・・うゆ・・・うゆゆ・・・ゆ・・・」
うまく「あいさつ」を返せない・・・この体では、ダメだ
榴弾を放つ穴も、炎を放つ筒も、相手を叩く触手も、邪魔だ
こんなもの、もういらない
「ソレ」は、あっさりと今まで身に着けた武装を捨てた
体が変化していく
体中に「音」を出す器官を生やす
あの時、あの少女が聞かせてくれた音、あの時に出したアレを、また生やす
顔は、歌を歌っている目の前の生命体と同じものに
「ゆ〜ゆゆゆ〜♪」
「ゆ〜ゆゆゆ〜♪」
いつしか、そこにいたのはあの禍々しい怪獣ではなかった
「女神」、そう形容するにふさわしい、神々しい輝きを放つものだ
「ソレ」は、れいむの歌を歌いながら空へと浮かび上がった
「もう行っちゃうの?」
「イフ・・・帰る・・・あるべき場所へ・・・」
「そっか・・・またね!”イフ”さん!」
102
:
未知とのコミュニケーション 4/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2017/08/19(土) 23:37:33 ID:9YBXPKIg0
「おおおおおおおお・・・」
長老は手の杖を落とした
様子を見に里の有志達と共に「ソレ」を見に来た
すると・・・奇跡は起きていた
たった一匹のゆっくりれいむ、彼女の歌によって
空へ帰っていく「ソレ」へ、長老は涙を流しながら手を合わせた
「なんだあれは?・・・武器はもうないみてぇだな?」
虐厨たちも来ていた、その手には大砲(RPG)
「よしw今度こそあいつを堕とすぜ!あの糞饅頭も潰し・・・」ドズ!!
「あへ?」
指示を出そうとした虐厨は、自分の胸に刺さる竹槍を見た
それは、長老の息子が手にしている竹槍だった
「みんな、手筈通り頼む!」「まかせろ!」
長老の護衛でついてきていた里の男たちは、それぞれの得物を構えた、虐厨に向かって
「な・・・何をする気だ!?」
「害獣の駆除だ!神様を怒らせ里を焼いただけでなく、せっかく生き残ったオレたちをも殺そうとしてるバカどもを殺す!!」
そして・・・「駆除」が始まった
元より ゆっくりなどの「自分たちの方が圧倒的に強く、抵抗されても問題ない生き物」しか相手していないクズ相手である
時として里に来る熊の相手をもする事がある男たちの敵ではない
それに、近距離すぎてせっかくの大砲も使えない、砲弾をこめる暇もない
あっという間に虐厨たちは全滅した
後日、「ソレ」のいたところには社が建てられた
「畏怖神社」、そう名付けられたその神社とその周囲は ゆっくりたちの楽園になった
そこでのゆっくりへの手出しは厳禁、破った者は追放や処刑を含む厳しい処罰が下される
しかし、同時に周辺地域の虐厨も、二度と同じことが起きないように徹底して駆除されたため、
迷い込んできた何も知らない虐厨がやらかした例を除き、この不可侵が破られたことは無い
103
:
未知とのコミュニケーション 5/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2017/08/19(土) 23:52:36 ID:9YBXPKIg0
その神社は今もそこにある
かつては「神」が放った榴弾の破片だけだった御神体だが、
今の主な御神体は、神を鎮めた ゆっくりれいむ、その墓石でもある大きな白い石
その石は、いつの間にか神社の敷地内に落ちていたもので、いつどうやってそこに来たのかすら不明だ
奇しくもその日、神社の長老となっていた件のれいむは多くの子孫に見守られながら天寿を全うした
「神が恩人を迎えに来てくれた」「あのれいむは今、あの神と共に天にいる」
そう囁かれるのに時間はかからなかった
「神」への信仰は今も厚い
奇跡はこれだけではない
後年、神社の近辺に落下すると思われていた巨大隕石が宇宙空間で突如崩壊した
破片は全て小石ほどに分解、大気圏ですべて燃え尽きた
隕石の崩壊の原因は不明だが、隕石が崩壊する寸前に何者かが隕石に接近し、直後に隕石が分解したという記録映像がある
不鮮明な映像であるため「隕石が大気圏突入直前に別の隕石と衝突、ダメージで突入に耐えられず自然に崩壊した」とする説が有力だが
その神社の周囲の人々は「神が守ってくれた」と口々に言った
そして・・・時々、夜空が綺麗に晴れ渡り星々の光の一つ一つがはっきり見える時
「白い石」は音を出す
生前のゆっくりれいむが歌う歌、それに似た音を
音は実際に記録され、あらゆる角度から解析された
しかし、それは「何かの歌声に似た音」であることこそ判明すれど、
音を出すメカニズムや、音がどうしてその時にだけ出るのか・・・といった謎は
今も解明されていない
(おわり)
104
:
死神通り 1/2 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2017/09/13(水) 03:23:22 ID:K5zF4j5E0
「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
飼い主の右ストレートが、飼いミニイカ娘を虐待死させた虐厨の顔面を砕いた
虐厨は絶命しきれず地面に倒れて痙攣していたが、
股間を踏みつぶされて動かなくなる
飼い主はゴミ袋に虐厨の死骸を入れるとゴミ捨て場に放り込み、
ミニイカ娘の死体を持って去っていった
ここは、かつて「しあわせストリート」と呼ばれた通り道
しぃ、実装石、ミニイカ娘、ゆっくりetc・・・の生命が行き来する通りだった
飼い・野良・野生を問わず、彼らは平和に暮らしていた
そこが人間に似た害獣「虐待厨」に見つかるまでは
彼らに常識は通じない、良識もない
野良・野生を問わず、虐厨は襲い掛かり各々のやり方で嬲り殺しにした
飼いであっても、飼い主が近くにいないと容赦なく襲い掛かった
先ほどの虐厨のように、心配して探しに来た飼い主と鉢合わせ
その場で報復される虐厨は後を絶たないが、
それで手を休めるほど彼らは賢くない
いつしかその通りは「死神通り」と呼ばれるようになり
忌避される道になった
それでも、知らずに迷い込んだ個体や、道に迷って入り込んでしまった飼いなどがおり、
被害は継続した
頭を抱えたのはその通りの先の商店街である
「死神通り」の名前定着後、客足が激減した
貼り紙で注意を呼び掛けても虐厨に剥がされあるいは落書きで汚された
パトロールをしても虐厨は知恵が回った
パトロールから隠れながら、あるいはその場からかっさらって別の場所で虐待を続けたのだ
「やむをえんな・・・」
商店街の老舗ペット専門店の店長は会合で「提案」を行った
そして・・・
「ゲショ、ゲショ〜!」
「げへへへへへへwまてまてwww」
明らかに「飼い」と分かるリボン付きのミニイカ娘を追いかける虐厨が3匹
彼らは「飼い」専門の虐厨だ
痛みに弱い「飼い」を襲う事に特化し、飼い主の悲憤を何よりの好物とする
虐厨の中にあってすらクズの中のクズだった
「けけけけけwもう逃げられないぞw」
3匹はミニイカ娘を囲い込んだ
そして・・・
105
:
死神通り 2/2 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2017/09/13(水) 03:26:02 ID:K5zF4j5E0
バショ!
「へ?」
1匹の虐厨の頭がスイカのように割れた
「お・・・おい、どうし・・・」
倒れた仲間に声をかけたそいつも、 バシュ!
頭が砕けて倒れる
「な・・・なんだよ!?何が起きて・・・」ビシュ!
最後の1匹は心臓を撃ち抜かれて倒れた
「ゲショ?」
ミニイカ娘はキョトンとしていたが、危機が去ったことを悟ると
飼い主の待つ自宅へ駆け戻っていった
「標的の殲滅を確認、オールクリア!」
ここは「死神通り」を全体的に見渡すことができる商店街の建物の最上階
スナイパーライフルを構える男は雇い主に無線で報告した
彼は、虐厨対策企業「虐厨バスターズ(虐バズ)」の社員である
今回、商店街に依頼されて派遣されてきた
スナイパーの上司は「飼い」が襲われていると知ると、二つ返事で依頼を引き受けた
なぜなら、「虐バズ」は人に直接間接物理精神を問わず危害を加える虐厨の存在そのものを
決して許さないからだ
派遣されたスナイパーも同じ気持ちだった
彼にはかつて家族同然兄弟同然に一緒にいたミニイカ娘がいた
しかし彼の家族の平穏は、一匹の虐厨によって終わる
虐厨は家に侵入し金品を奪っただけでなく、ミニイカ娘を誘拐し身代金を請求した
要求通り大金を振り込んだ結果、帰って来たのは絶望と苦痛に満ちた表情で事切れている
ズタズタになったミニイカ娘の死骸だった
だから・・・彼は虐厨を許さない
特に「飼い」にまで手を出すクズは、それだけで駆除対象であることは当然であるとすら考えていた
その後、「死神通り」はかつての賑わいを取り戻した
虐厨はそこで被虐生物を襲うだけでなく、入り込むだけで遠距離からの狙撃で殺されるのだ
噂は広まり、そこへ入り込む虐厨はほぼいなくなった
時折、事情を知らぬ虐厨や、スナイパーを軽視して虐待をしに来る虐厨がいたが
スナイパーは彼らから容赦なく領域侵犯のツケを徴収した
一人二人の時はわざと足を狙って殺さずに置き、
助けに来た仲間を「釣る」事も忘れない
こうして「死神通り」は名前こそ変わらぬものの、別の意味の「死神通り」に生まれ変わった
「やめて!れいむちゃんに酷い事しないで!」
「やだよwwwば〜・・・」バシュ!
今日も死神通りで愚かな虐厨たちはその命を無意味に無価値に散らす
(おわり)
106
:
虐矢の日常 1/3 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2017/09/13(水) 03:33:29 ID:K5zF4j5E0
虐矢は目の前の女をうっとうし気に見た
足元には潰れたミニイカ娘---目の前の女の〝飼い”である
「返せ!あたしのミニちゃんを返せ!!」
「うっせぇwwwゴミはてめぇで片づけとけ!!www」
虐矢はミニイカ娘の死骸を蹴飛ばした
女が踵を返して走り去るのを見ながら、虐矢は公園に向かった
「オラ!」
足元の野良ミニイカ娘を蹴飛ばし殺す
虐矢にはいつものことだ
虐厨の彼にはミニイカ娘など「オモチャ」にすぎない
たとえそれが人様の「飼い」であっても
だから・・・・・
「てめぇ!!!!」
SNSに夢中になっている飼い主の隙をついてミニイカ娘を殺した時、
どうして気づいた飼い主が激怒しているのか、全く分からなかった
そして、飼い主が鉄製のごみ箱を持ち上げた時、初めて命の危機を知り
虐矢は逃げた
公園から逃げ出して5分後
タタタタタタタタ
「あん?」
虐矢は息を整えながら足音を聞いて振り返る
鬼のような形相の黒い袋を持った女が走り寄ってきていた
公園に行く前に踏みつぶしたミニイカの飼い主だったと思い出したところで
「しねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
女性の渾身のタックルが虐矢に直撃した
否、タックルだけではない
女性は家から持ってきたであろう出刃包丁をその手に握りしめていた
そして全体重を乗せてそれを虐矢の腹へねじ込んだ!
「いぎゃああああ!?」
虐矢は女性と共に倒れ込む
「な・・・なにしやがるクソアイゴ・・・!?」
とっさに女性を突き飛ばす
虐矢の腹には深々と包丁が刺さっていた
そう、あの時女性は逃げたのではない
ミニイカ娘の亡骸を入れる袋と・・・虐厨へ復讐できる武器を探しに家に帰っただけなのだ
虐矢は包丁を抜こうとしたが、柄がぬるぬるして抜けない
包丁の柄は、ミニイカ娘の体液にまみれていた
「大丈夫ですか・・・・・あ!!」
虐矢の悲鳴を聞きつけて人が駆け付ける
107
:
虐矢の日常 2/3 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2017/09/13(水) 03:37:18 ID:K5zF4j5E0
しかし駆け付けたその人物は・・・
「てめぇ・・・オレのミニイカ娘だけでは飽き足らず、人間の女にまで手を上げたのか!!!!」
「ち・・・ちが・・・助けてくれ・・・!刺された・・・!」
「助けろだ? ふざけるな!!!」
男は女性を背後に庇うと、虐矢の腹の包丁の柄を蹴飛ばした
「おぎゅあああああああああああ!!!?」
当然、包丁はさらに深く刺さり虐矢の腹の中へ入っていく
「てめぇみたいなクズは生きてちゃいけねぇんだよ!!人の飼いは殺す!挙句に女に手を出す!!
見下げ果てたクズだな!!」
「ま・・・まて、オレはやってない、その女がオレを刺したから・・・」
「そうよ!こいつはあたしのミニちゃんを・・・あたしの妹同然だったミニちゃんを殺したのよ!!
だから、家に帰ってミニちゃんを入れる遺体収容袋と・・・その包丁を持ってきたのよ!」
「なん・・・だと!?・・・てめぇ、オレの子だけじゃなく、この人の子も・・・」
男は虐矢を睨む
「ひ・・・ま・・・まてよ・・・オレが殺したのはミニイカだけだ・・・人は襲ってねぇ!」
「いいや、野生ならまだしも、てめぇは”飼い”・・・人様の家族に手を出した
ゆっくりで言えばてめぇは”ゲス”だ!!ゲスは駆除するのが、てめぇら虐厨どもの常識だったよな?」
「よ・・・よく考えろ、たかがミニイカと虐厨様の命、どう考えても・・・」
「どう考えてもてめぇら虐厨の命が釣り合うのはせいぜいゴキブリかハエくらいだ!!
ミニイカ娘と比較するなどおこがましい!!」
虐矢は逃げようとしたが、足に力が入らない
腹からの出血は酷い、明らかに内臓と血管がやられているのが分かっていた
「お願いだ、死にたくない・・・医者を・・・救急車を呼んでくれ・・・」
「そうやって命乞いした奴を何人殺したと思ってるんだてめぇは!!!?」
虐矢は絶望した
何を言っても目の前の男の怒りの火に油を注ぐだけである
だから・・・
「へ・・・たかがミニイカ風情にマジになんなよセンソークン!ゴミを片付けて何が悪い!」
最後の望みをかけた虚勢、これで納得しない相手はいないだろうという身勝手な思い込みから
彼は最悪の一言を言い放った
その結果・・・男は虐矢の腹の包丁に手をかける
そして・・・それを思い切りひねった
「あぎゅおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
虐矢が叫ぶのも構わず、今度は真一文字に横に引く
虐矢の腹は切り裂かれ、内臓があふれ出した
男の手が虐矢の腹に突っ込まれる
「や・・・やめろ・・・」
「命乞いならてめぇが殺したこの人とオレのミニイカ娘たちにでも乞いな!!」
男は虐矢の内臓を引っ張り出した
引き出した内臓を地面に叩きつけ、思い切り踏みつける
「あぎゃあああああああああああああ・・・・・・!!!!」
虐矢は突っ伏した、もう手に力はない
地面に血が広がっていく
「さて・・・ごみを片付けるか」
男はポケットから「虐厨ごみ」とプリントされた大き目のごみ袋を出す
女性の協力の元、男は虐矢をゴミ袋に入れた
そして、ゴミ集積所の中にそれを投げ入れる
「だ・・・ずけ・・・だじ・・・・」
「包丁はどうします?」
「家に別のがあるんでいいです、こいつで汚した包丁なんてもう使えませんし」
虫の息で助けを求める虐矢を残し、二人は去った
108
:
虐矢の日常 3/3 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2017/09/13(水) 03:55:16 ID:K5zF4j5E0
「ガアー」「ガアー」「ガアー」
カラスがやって来た
彼らは路上に散らばる内臓の残骸を食べた後、血の匂いのする袋に気づく
「ガアー」
一羽が虐矢の入った袋をつついた
そこは、もろに包丁で切り開かれ内臓を露出された場所だった
「!!!!」
虐矢は体を激しく動かした
結果、彼の体はゴミの山から転げ落ち、地面に叩きつけられる
「ガアー!!!」
虐矢の一連の行動を「攻撃」と認識したカラスたちは、「敵」への攻撃を開始した
つついては離れるヒット&アウェイ
虐矢はつつかれる度に悶え苦しんだ
「ガァ!」
たっぷり6時間後、カラスたちは突如攻撃を中止し飛び去って行った
代わりに車のエンジン音が聞こえてくる
「ったく、カラスどもめ、またゴミを荒らしやがったな」
ドアが開く音がして一人の男が近くに来たことを虐矢は知った
「だずげで!!ごごにいるよ!!」
「・・・・・・・・・・・・」
「保健所」の腕章を付けた男は顔をしかめた
彼はこの「虐厨遺棄専用ゴミ捨て場」担当の職員である
「またかよ・・・トドメくらい刺して欲しいぜ」
男は他の「ゴミ袋」を車両後部の貨物スペースに放り込んだ後、
わざと乱暴に虐矢の入っている袋を放り込んだ
「いぎいいいいいい!!」
どうせ「飼い」を襲って飼い主に報復されたかしたクソだろう
そう男は虐矢の事を推測して結論付けた
実際その通りである
虐厨という、最底辺の中の最底辺の害獣の事だ、珍しくもない
この男もそういった虐厨を嫌と言うほど見てきたし、
今日も昼休みに受付窓口担当の同僚から、警察に殺処分のために連れてこられる虐厨が多いと愚痴をこぼされていた
だが、彼はこの道のプロである
仕事に私情を挟むことはない
それに彼がしたことは、ただの仕事であり、何ら咎められる点はない
虐矢にはもう声を出す力もなかった、ただ残った力の続く限り動いてアピールするだけだ
しかし、それを見ても職員のやることは変わらない
そもそも虐厨の薄汚さを散々見てきた彼がコレを野放しにするなど、ありえないことだ
「ついた・・・っと」
職員は職場の焼却炉の前に車を停車した
ちょっとしたごみ焼却場程度の規模のあるそれの中へ、次々と「回収物」を放り込んでいく
虐矢も例外ではない
虐矢はまだ生きていたが、炉に火が入り他の虐厨と共に燃やされて灰になる事で
やっとこの世からいなくなった
(おわり)
109
:
河原にて 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2017/10/16(月) 00:34:54 ID:w8Pi2z4Q0
「すいません」
「あん?」
虐厨の虐輝は振り返る、虐輝を呼び止めたのは見知らぬモララー種だった
「お聞きしたいのですが、虐輝さんってご存知ですか?」
「オレがその虐輝だよ」
「そうでしたか」
モララーはぺこりと頭を下げて続けた
「三日ほど前にベビしぃが河原で虐待されて瀕死なのを発見されましてね・・・その件についてお聞きしようかと」
「ああwあれはオレがやったwww楽しかったなwww最後なんてゲリグソ噴出して痙攣してやがんのwww」
「そうですか、あなたでしたか・・・間違いないですね?」
モララーの口調・・・というか声が、最後の方で変わった
大きく右腕を後ろに下げ、拳を作る
「今からてめぇを痛めつける事になるが、間違いないんですね?」
ボグ!!
虐輝の顔面にモララーの拳がめり込み、その体を大きく吹き飛ばした
「な・・・なにじやがる、おでは・・・」
「なにしやがる・・・はこっちのセリフだよ!散歩させてただけのオレのミィ子をあんなにしやがって!!」
「だで・・・首輪も無かった・・・・・」
「てめぇが外して踏み躙ったんだろうが!!あの子の近くに落ちてたぜ!!」
「捨てられた野良だと・・・そうだ、オデは悪くないw目を離したお前が悪い!www」
「ったく・・・”ごめん”の一言も言えねぇのかよ・・・」
モララーの中で何かが音を立てて切れた
「ああ、そうだな、オレが悪い・・・てめぇみたいな目が開いて間もないベビを平気で虐待する害虫がウロウロしてるのに
目を離した俺が悪い、反省した、だから・・・」
モララーは足を振り上げると、虐輝の右膝を破壊した
「ひいぎゃ!?」
「もう二度とあんな事が起きないように、害虫は早めに駆除しねぇとな!!」
モララーは虐輝の左足をつかむと、渾身の力で引っ張り出した
「いぎあああああ!!ちぎれる!!ちぎれる!!」
「ん、頑丈だな・・・アフォしぃは一発でもげるんだがな」
ブチィ!!
「あ」
「うぎゃああああああああああああ!!!」
虐輝の左足は解放された、足首から先を犠牲にして
「脆いのか頑丈なのかどっちかにしろよ」
モララーはちぎれた左足首を投げ捨てると、這って逃げようとする虐輝の背中に乗っかった
「あの子はでぃ化するほど痛めつけられて苦しんだんだ・・・てめぇもげろ吐くくらい苦しめやオラァ!!」
力任せに虐輝の両腕を肩ごと引っ張る
「いでええええ!!!ちぎでる!!!ちぎでづううううう!!!!」
「人の飼いを襲う腕なんざ・・・ねぇ方がいいだろ!!」
ブチィ!!
音を立てて虐輝の両腕は胴体から千切れてします
「いぎゃあああああああああ!!!!おでの・・・おでのうでえええええええええ!!!!」
「腕がどうした? あの子はもっと苦しんで痛い目にあって・・・今も苦しんでるんだぞ・・・」
モララーは悶える虐輝を見下ろす、その目に同情の色はない
「だのむ・・・だずげで・・・」
「そうだな、オレはてめぇら虐厨どもと違ってクズじゃない・・・」
モララーは虐輝のそばで屈みこんだ
助けてもらえる、と虐輝がその顔に喜色を浮かべた次の瞬間、
モララーは傍にあった大きな石を両手で抱え、高々と持ち上げた
「な・・・なにを・・・」
「言ったろ、オレはてめぇらみたいなクズじゃないって・・・解放してやるよ苦痛から、永遠にな!」
グシャア!!!!
モララーが落とした石は虐輝の頭を正確に砕いた
虐輝はしばらく痙攣した後・・・動かなくなる
「・・・さて、あの子に好きなものでも買って行くか・・・」
死体の処理を電話で保健所に依頼した後、モララーはその場を後にした
数十分後、病院に大量の甘味を持ち込んだモララーは看護師さんらに
めちゃくちゃ怒られたという
(おわり)
110
:
秩序の崩壊 1/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2017/10/16(月) 00:39:37 ID:w8Pi2z4Q0
※連作の第一部になります
そこは、ゆっくりの楽園だった
一匹の大きなドスまりさによって統治された平和な山
最初のドスはまず人間たちと「協定」を結んだ
「人間に迷惑をかけない」と言う他に「山に入る時は手伝う」「害虫駆除はまかせて」といった
人間側にメリットの大きい提案だったため、すんなりと協定は成立した
代々ドスがリーダーになり、楽園の噂を聞いて、あるいは飼い主からそこに運ばれて捨てられて
ゆっくりたちは数を増やした
中には「ゲス」もいたが、それらは即座に排除されたため問題が大事になることは無かった
しかし・・・・・・・・・・
「この群れが全ての元凶だ!!」
議会で虐厨議員たちは口をそろえて主張した
議題は畑の農作物が野生動物から受ける被害についてである
ただ、どれもイノシシや猿、鹿といった動物による痕跡こそあれど
ゆっくりがやったという痕跡は今のところない
ほぼ皆無と言ってもいい
しかし、虐厨議員たちは主張を曲げなかった
群れの駆除は反対多数で否決されたが
それで諦める虐厨たちではない
「・・・・・・・・・・・」
群れの一匹であるれいむが、透明な箱の中にいた
彼女の家族は一人一人目の前で嬲り殺された
「群れの本隊を教えれば助けてやる」
そう言った虐厨は、最後の一匹
れいむの末の子が殺されかけた時に れいむが本隊の情報を吐いた
その瞬間、子を殺した
「ぎゃははははw饅頭ごときとの約束なんざ誰が守るかwww」
「・・・・・・ひとでなし」
れいむは、ゆっくりにはありえない恨みのこもった目で、声で、そう言った
「じゃあなwお前も後で嬲り殺してやるからそこで震えて待ってろwww」
虐厨は仲間に情報を報告するべく部屋を後にした
「ひとでなし!!!」
その背中へ、れいむはありったけの声で罵声を浴びせた
111
:
秩序の崩壊 2/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2017/10/16(月) 00:41:44 ID:w8Pi2z4Q0
「ヒャッハー!!」
駆除案の否決からわずか1週間後、虐厨たちは虐厨議員から金と武器を貰い「楽園」に襲い掛かった
無実を訴えるゆっくりも、狼藉の真意を問うゆっくりも、命乞いをするゆっくりも殺された
「どうしてこんなことするの! ドスたちは人間さんに迷惑かけてないよ!!」
「はw楽しいからに決まってるだろ!www」
「なんで!協定が・・・」
「協定wどうせ腑抜けを脅して無理やり結ばせたんだろw無効だ無効w」
「そうそうw迷惑だってこれからかけるかもしれねぇからなwだから今のうちに潰さなきゃwww」
長年続いたドスの群れは、たった一日で壊滅した
リーダーのドスまりさは絶命するまで虐厨たちに訴え続けた
しかし、虐厨たちにとってそれは甘美な旋律にすぎなかった
群れの全滅はただちに他の議員の知る事になり、虐厨たちへの非難は相次いだ
しかし、虐厨たちはどこ吹く風
それどころか、「害獣を潰してやったんだ、褒められる覚えはあっても非難される謂れはないwww」と
開き直る始末だ
「協定は終わった・・・農作物に手を出すゆっくりが出るかもしれん」
「そんなの潰せばいいだろwどうせまた群れを作るんだから、そこを潰すwww」
国民からも非難の声が上がったが、結局謝罪すらされなかった
虐厨たちの中では、ゆっくりはただの「しゃべる饅頭」であり、
人より弱く、頭も弱く、お人好しで、たまにゲスがいる程度の被虐生物だった
ようするに、「舐めていた」と言っても過言ではない
それはあくまで虐厨たちが自分たちの脳内で作り上げた「設定」だ
現実がそれに合わせる義理など、どこにもないのである
112
:
秩序の崩壊 3/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2017/10/16(月) 00:54:38 ID:w8Pi2z4Q0
「これからは、これも食べて生きてくんだぜ」
左目に傷のある隻眼まりさは、逃げ伸びた先で数匹の同胞たちの前に「餌」を転がした
彼女たちはそれぞれが各グループのリーダーであり、あの虐殺をかろうじて逃れたドスの弟子だ
隻眼まりさ以外の彼女らは、隻眼まりさが出してきたものに目を剥いた
ナス、トマト、大根・・・どれも明らかに人間が育てた野菜である
「まりさ・・・これ、どうしたの?」
れいむが問いかける、まりさは答えた
「人間どもの畑から奪ってきたんだぜ」
「そんなのよくないよ!」
れいむの反論に、隻眼まりさは毅然として答えた
「これまではそうだったのぜ・・・けど、もう今からはこれまでとは違うんだぜ
野菜を食べる害虫を食べていればお目こぼしもされてたけど、そいつももうないんだぜ
オレたちは人間に見つかったらすぐ殺されるんだぜ、しかも苦しめられて・・・
害虫を食べても同じなんだぜ、良識派になっても人間どもは”ゆっくり”と見れば殺しに来る!
害虫を食べて畑をきれいにすれば、オレたちがそこにいると知らせるようなものだぜ
雑草をきれいにしても同じだ
だから、野菜を少しずつ奪って食いつなぐ方が安全なんだぜ」
まりさはそう言うと、ナスにかじりついた
「・・・美味いんだぜ、草や虫よりも上等の味わいだぜ、お前らも食え」
他のゆっくりたちは恐る恐る野菜を口にした
そうして、彼女たちは野菜の味を覚えた
「オレと違う生き方を、これまで通り善良な生き方をしたいなら止めはしないぜ
けどな・・・人間どもに殺されるのは、地獄より苦しいぜ」
まりさは言った、ドスの子である彼女は他のゆっくりよりも飛びぬけて頭が良かった
そして目の前で親であるドスと自身の左目を失った彼女は、
ゆっくりだけでなく人間のためにも使うとかつてドスに誓った知識を、
今は亡き姉貴分パチュリーから授かった知識を、同胞のためだけに使う事を決意した
そして誓いを改めた、生き延びるために「人間の敵になる」と・・・
113
:
秩序の崩壊 4/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2017/10/16(月) 00:58:50 ID:w8Pi2z4Q0
こうして、群れから逃げたゆっくりたちは生き延びた
群れの崩壊からしばらくは、かつてのように畑の害虫を食べ、人間と対立しないようにする良識派ゆっくりもいた
しかし、それらは善良虐待派の虐厨に狩られていき、ついにはその姿を消した
農家の人々が声を大にして反対を訴え、時にゆっくりを殺す虐厨に拳を叩き込んでも虐厨はやめなかった
これまでのゆっくりたちの代わりに台頭したのは「新体制のゆっくり」たちだ
群れを作らず、多くても最大10匹前後の小さなグループを作り、
山野に、都会に潜み、生ごみや農作物や干してある食料、
時として家畜や生け簀にまで手を出す、
それまでタブーとされてきた行為を自らが生きるために平気で行う存在だ
各グループ間の連絡を密にし、時として協力して食料の調達を行う事もあった
捕まった個体は即座に見捨てられ、その個体もすぐ「おたべなさい」をして自害するため
人質を取っての交渉すらできない
「ひでぇ話だぜ・・・」
古参の議員は「被害報告会」の帰りに新人に愚痴った
それまでは虐厨たちのでっち上げによる「ゆっくりによるのうさくぶつへのひがいほうこく」を
欠伸や仮眠をしながら聞くだけの退屈な、会議と言う名の茶番
それは今や、ゆっくりによる農作物への、今度こそ本当に生じた損害を報告する場となり
それについて議論し対策を話し合う場になった
これは当然の帰結で生じた被害であり、それについてあれこれ議論するなど経緯を知る彼には噴飯ものだった
「虐厨どもは”善良”までも潰したがる、何の落ち度もない良識派ゆっくりを自身のエゴのために殺したがる、まさにクソどもだ」
「やつらとしては珍しくもないですね」
「珍しくもねぇ・・・そこが問題だ、だってそうだろ」
古参議員は一息ついて続けた
「善良であることが殺される理由になるなら、そんなもの捨てるに決まってるだろ・・・あいつらは、ゆっくりはそうしたんだ」
「つまり・・・自らゲスになったと?」
古参議員はかぶりを振った
「違う、ゆっくりは”悪”であることを選んだんだ・・・分かりやすく言うと、”人間の敵”に、な
これから大変な事になるぜ、今まで時々出ていた”頭の弱いゲス”どもの相手とは訳が違うんだからな」
古参議員の予測は現実化する
表舞台に目立って出ることは無く、ひっそりと「害虫」として生きる事を選んだゆっくりたち
人の社会に寄生し、収穫を略奪し、「悪」であることを自認する
人間たちの明確な「敵」
その彼女たちの脅威を人間たちが思い知ることになるまで
そう時間はかからなかった
(つづく)
114
:
善を捨てよ、悪を取れ 1/6 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2017/11/25(土) 01:15:42 ID:3s0ztWHA0
※連作の第2部になります
※前作「秩序の崩壊」の続きです
「人間が来たよ!」
「逃げるよ!」
れいむ、まりさたちが野菜を咥えて跳ねながら茂みに向かっていく
その先は山だ、そこへ逃げ込まれればもう探し出すのは困難である
「待っとくれ!!ワシらの話を聞いとくれ!!」
「ワシらは今まで仲良くやっとったじゃねぇか!頼む!」
追いかける里山の人々の手には何もなく、その口調は怒りよりむしろ悲しみが滲んでいた
ぴたりと、一体のれいむが足を止める
「・・・そうだね、お話だけならするよ!」
人々の顔に笑みが浮かぶ、それは野菜を取られた被害者の顔ではない
長年の友を呼び止める事に成功した人間の顔だった
「ひゃっはー!!」
しかし、対峙する両者の間へ駆け込んできた虐厨が全てをぶち壊した
虐厨はれいむを乱暴にひっつかむ
「何をするだ!!」
「お前ら虐厨には用はねぇ!!その子を離せ!!」
人々の怒りの声を、虐厨は拒否した
「はんwwwこれだからアイゴはwww」
虐厨は里山の人々を鼻で笑うと、れいむをギリギリ締め上げだした
「言え!てめぇらの巣の場所を!言えばお前だけでも助けてやる!」
決して守られることのない約束を虐厨は口にした
そして・・・彼は気づいていない、人々の顔が温和なものから敵を見るそれに変わっていることに
「おたべなさい!!」
れいむは自ら割れ、瞬時に絶命した
「けwwwまたかよwwwま、いいや!害虫がまた一匹潰れたと報告しよっとwww」
虐厨はれいむの死骸を地面に叩きつけて踏み躙り、里山の支部へ歩き出した
その足に人々の一人が足を引っかけ、虐厨を転倒させる
「いでぇ!!なにしやがる!!・・・・・へ?」
虐厨はようやく、自分に向けられる敵意と殺気に気づいた
「こいつらの巣、どうするべ?」
「出入口塞いで農薬を入れちまおう」
「それで全滅しなきゃ、焼くべさ」
その虐厨は仲間が襲撃される情報を耳にしながら、髪をつかまれて後ろに倒された
虐厨は最期に、自分の顔めがけて振り下ろされる大きな石を見た
115
:
善を捨てよ、悪を取れ 2/6 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2017/11/25(土) 01:17:30 ID:3s0ztWHA0
「お前ら、こうなることをちゃんと予測してあの群れを壊滅させたのか!?」
ここは、国の議会、国会
今回の議題”も”、急増するゆっくりによる被害についてである
かつて虐待厨たちが主張した「ゆっくりは農作物に被害を与える害虫」
「ドスまりさの群れを壊滅させればゆっくりの被害はゼロになる」
それらは全くのデタラメだった
ドスの死後、ゆっくりたちは大きな群れをつくることはなくなった
代わりにリーダーを戴かない少数派グループを多数形成
人間社会に潜伏し、人間社会を盾にし、人間の領域を気付かれぬように目立たぬように侵す
そして群れの崩壊から一年、ゆっくりたちはその数を増やし、被害は徐々に顕著になりだした
新体制の彼女たちは生きるために畑など人間の食料にまで被害を与えるようになった
害虫の発生した畑であっても、ゆっくりは害虫をスルーして農作物だけを狙う
被害がナス一個や大根一本といった小さいものであるうちは野生動物の仕業と思われていた
しかし、時間の経過とともに畑の野菜への被害は大きくなった
彼女たちは時として各グループで連携して畑や畜舎に襲い掛かる
捕らえようにも仕掛けた罠はスルーされるか破壊され、捕らえられた個体がいてもその場で即座に自害した
そのため人質作戦はおろか、情報を得る事すら困難を極めた
一斉駆除でも1グループがそもそも少数なのだから、相手の損害は微々たるものであり、
中には一つのグループが決死隊になって他のグループに警告を発し逃がした後
保健所職員に刃物を咥えて向かっていき死ぬまで戦った例もあった
職員に負傷者が多数生じた事が、それまでの「駆除」とは全く異なる事を示していた
今まではほぼ人間側の一方的勝利だった、だが「新体制のゆっくり」たちに代替わりしてから
彼女たちは明らかに変わった
餌を得るため手段を選ばず、かといって足を掴ませることもせず
その上抵抗すれば人間にも痛手を負わせ、あっさり捕らえられた仲間を見捨て、捕らわれた者は即座に自害
まるで「ゆっくり」そのものが種の存続のため、一つの生き物として動いているかのようだ
第一、彼女たちはもう公園や広場などの、かつてゆっくりがたむろっていた場所には近づかない
だから駆除しようにも探すのにすら一苦労だ
山の中に駆除に行く者たちもいたが、ゆっくりたちの仕掛けた罠や想定外の反撃で
死者こそ出ないものの痛手を負わされ逃げ帰った例が多数報告された
今の彼女たちは今までとは明らかに違った
刃物やガラス片といった凶器を当たり前のように使い、噛みつく力も人間の皮膚を破るには十分すぎた
そもそもゲスといった連中を除き、ゆっくりは基本的に「平和主義、非暴力」のはずだった
争いを極力避け、殴られても抵抗せず、暴力に訴えるのは家族や友人らに危害が及んだ時などくらいだった
だから、このような事は今までなかったのだ
少なくともあのドスが群れを統治している時代は
畑に現れたとしても農作物には一切手を出さず、害虫や雑草だけを食べてくれていた
農作物に手を出す「ゲス」は、他のゆっくりが制裁してくれた
そもそも、虐厨どもの主張した「ゆっくりによって起きた被害」そのものが眉唾である
各情報がソース・時系列共に曖昧な上、良く調べたら猿やシカなどの
ゆっくりとは全く関係ない野生動物による被害だった例が相次いでいた
だから、虐厨か虐厨に迎合する虐待派以外は、その主張を気にも留めなかった
116
:
善を捨てよ、悪を取れ 3/6 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2017/11/25(土) 01:25:19 ID:3s0ztWHA0
その上、虐厨が好んで行ってきた「善良種虐待」も事態の悪化に拍車をかけていた
ドスの群れ壊滅後も良識派ゆっくりはいた
だが、彼女たちは虐厨の暴走の犠牲になった
当然、農家の人たちと揉めに揉めたが話は平行線、乱闘に発展した例も少なく無い
「このままじゃ、畑はしまいじゃ・・・」
虐厨が一笑に伏したその危惧は現実化する
害虫を食べてくれる良識派ゆっくりが全くいなくなり、害虫による被害も深刻化
特に無農薬栽培を旗印にしてきた農家は大打撃を受けた
そして・・・彼らは皆、ゆっくりたちに同情的だった
それもそのはず、今まではお互いがお互いを支え合うパートナー的存在だったのだ
それが自分らの与り知らぬうちに狂人どもに決定され実行された
虐厨の暴走で全ては破綻した
「ゆっくりを虐待しろ」などという元凶の狂人どもの言った対策法など噴飯ものだ
「お前らのせいでオレたちは友を失った!!」「これから誰が害虫を取ってくれるんだ!?」
そう言って怒り狂い、調査に来た政府職員を追い返す農家は少なくない
「いいじゃねぇか、これでゆっくりを潰す大義名分できたんだからw」
対して責を問われた虐厨の主張はこうである
そこに一切の反省はない
怒り狂った農家の人にマウントを取られボコボコにされた虐厨もいたが
改心することはなかった
そしてついにこの間、「地方の里山の支部が全滅」という報告が為された
火災で支部は全焼、そこで住み込みで働いていた虐厨全員が死亡した
その後の調べで、事前に近くに止めてあった農薬散布車の農薬が建物内に流入
何故かドアにも窓にも塞がれた痕跡があり、これにより建物内の虐厨は一人を除き死亡したとみられている
虐厨の残りの一人は里山の山に向かう道の真ん中で頭を潰されて死んでいた
事件を報告してきた里山の長曰く、「これは事故であり、里山の人々に何の責任もない」
その一点張りだった、死んだ虐厨たちへの同情などない
当然である
彼らにしてみれば虐厨たちなど「余計な事をして農業と周辺との関係を破たんさせた」憎い相手であり
敵意以外に与えるものなど無いのだ
『これ以上余計な真似するなら、あんたらもやる』
そんな顔で目で睨みつけてくる里山の人々を前に、調査団は逃げるようにして帰還した
しかし、これでもなお虐厨たちは反省しない
当然、議会も荒れに荒れた
「お前らが余計な事しなけりゃ今の被害は出なかったんだよ!!」
「うるせぇwwwゆっくりを潰せばいいだけだろうがwww」
このままでは次の選挙を戦えないと危惧する議員たちと虐厨の快楽しか考えない虐厨議員ら
噛みあうはずもなく話は平行線のまま、会議は終了した
虐厨とそうでない者たちの間には深い溝が生まれ、それは日に日に大きくなっていった
117
:
善を捨てよ、悪を取れ 4/6 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2017/11/25(土) 01:42:11 ID:3s0ztWHA0
与党会議室、そこには重苦しい空気が漂っていた
「言ったはずだよな・・・こうなるって、だからオレはあれだけ反対したんだ」
ベテラン議員は会議場で困った顔をする同じ与党党内の仲間たちに言った
「・・・まさか・・・こんなことになるとは・・・」
「総理、今更それはなしですよ」
ベテラン議員は呆れていた、仮にも与党である
虐厨どもの狂った提案など突っぱねてしまえばいいものを、他の法案を通す票欲しさに彼らの提案を一度飲んだ
いわば、「魂を売った」のだ
その結果、調子に乗った虐厨は次々要求をふっかけ・・・今に至る
今や虐厨の法案は素通り状態だ
さすがに「愛護の飼う飼いを殺しても許される法案」などというバカげた犯罪法案は却下されたが
それでも虐厨の力が強い今は、国を牛耳るのは虐厨たちと言っても過言ではない
先のバカげた法案も通る日は遠くないだろう
が、それはすなわち国民の大多数を敵に回すも同じである
あくまで民主主義国家であり、主権は国民にある上に「選挙」で政治生命を保っているのが国会議員だ
このままでは誰も与党に投票などしない・・・それが分からぬほど彼らは愚かではなかった
しかし、虐厨を止める決定打もないまま、時間だけがすぎているのが現状だ
「ゲスゆっくりは今までもいたが、ここまでする奴はいなかったぞ」
ベテラン議員はその発言に頭を抱えた
「だから、何度言えばわかる・・・あいつらはゲスゆっくりじゃない、ただの、普通のゆっくりだ!」
この説明ももう何度目になるか・・・ベテラン議員は20を超えたところで数えるのをやめた
「まだ認識が足りないようだからもう一度言わせていただく!あいつらはゲスでもアホでもない!
普通の、一般的なゆっくりなんです!
だから、人並みの・・・もしかしたら人以上の知能を持つのもいるかもしれません!」
「だったら、なぜ人間に敵対する事をするんだ?」
この質問に、ベテラン議員は苦笑した
「彼女たちに敵対宣言をしたのは誰か? 彼女たちから長を、住処を奪ったのは?
非戦的な善良派を駆逐したのは? ・・・・・胸に手を当ててみてください」
「あれは・・・虐厨の仕業だ」
「それは私でなく彼女たちに言ってくださいよ
彼女たちに人間と虐厨の区別がついているか分かりませんし、あの法案を飲んだのは外ならぬ人間ですからね」
ベテラン議員の言葉に、沈黙が降りた
人間ですら虐待派と虐厨の区別が難しいのだ、ゆっくりたちにできるかどうかなど火を見るより明らかだった
「なんとか・・・できないか?」
「オレならできます」
ベテラン議員は言った、皆が彼に注目する
「あの保護区を担当していたのはオレの部下でした・・・だからオレも彼女たちと面識はあります
彼女たちはオレの事を覚えているはず・・・」
「説得・・・できるのか?」
「簡単にはいかないでしょうが不可能ではありません、やる価値はあります
ですが・・・これはおそらく最後のチャンスです、我々にも彼女たちにも」
ベテラン議員は暗に言った、「これが失敗すれば人間とゆっくりたちの関係は修復不能だ」と・・・
「・・・よろしく頼む」
総理はベテラン議員へ頭を下げた、他の議員たちもそうした
しかし・・・彼らの中に密かに会議室内の会話を外へ漏らしていた者がいた事には
最後まで誰も気づかなかった
そして、総理ですら知らなかった
虐厨たちは彼らが思っていた以上に狂っているということに
118
:
善を捨てよ、悪を取れ 5/6 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2017/11/25(土) 01:46:52 ID:3s0ztWHA0
翌朝からベテラン議員は行動を開始した
まず総理から取り付けたお墨付きを虐厨たちに見せ、
「自分への妨害行為は国家反逆に問われる」と警告した
頭の弱い虐厨と言えど、「国家反逆罪」は怖い
まして、総理に面と向かって逆らえる気概のある者は彼らの中にはいない
そう、面と向かって言う者はいない
それを「渋々ながら従っている」と解釈したこと
それが、彼らの最大のミスだった
与党内の議論から3日後
ベテラン議員はあの山の麓にいた
かつてドスの統治の元で平和にゆっくりたちが暮らしていた「楽園」のあった山だ
しかし今は虐厨に荒らされて見る影もない
虐厨はゆっくりを探して草木を刈り、動物を追い立てた
それで見つからないと悟ると腹立ちまぎれに火をつける、岩を爆破するなどの
破壊行為を憂さ晴らしとして行った
これが発覚したのはほんの数週間前のことだ
さすがに警察が動き破壊活動を行った者たちは逮捕されたが
一度破壊された自然が元に戻るには長い年月がかかるだろう
ベテラン議員は山に向かって呼びかけた
あの、ドスの傍に常にいたドスの子であるまりさに
今は人間と争う道を選んだゆっくりたちのリーダー格と言われている彼女に会い
話をするために
「・・・人間たち、話って何?」
拡声器で呼びかけ続けて3日、ようやくゆっくりは姿を現した
しかしそれは、生まれてまだ3年も経ってない小柄なまりさ一体だけである
しかし議員は感じていた・・・山の中から注がれる視線を
そして、まりさは相手を「お兄さん」でも「お姉さん」でもなく、「人間」と呼んだ
ベテラン議員はこの時点で、まりさたちと自分たちとの間に大きな壁がある事を感じた
恐らくこれが最後のチャンス、ゆっくりと人間が歩み寄る最期の機会だと
ベテラン議員は長年の経験から悟った
「まりさはリーダーじゃないし、代わりはいくらでもいるから潰しても無駄だよ」
「まて、話、というのはな・・・お前たち、なんでこんな事したんだ?
以前まで・・・ドスが生きてた頃は違っただろ」
「ドスはもういないよ、だからまりさたちだけで生きてかなきゃいけないんだよ」
「だからよ、今まで通り害虫を食べて農作物には手を出さず・・・」
「そうやって生きてたのにドスと群れはどうなったの?」
古参議員はまりさの言葉に思わず絶句した、返す言葉などあるはずがない
ドスは人間との「協定」を守って群れを統治していた
だが、それは虐厨たちのエゴによって無残に壊されたのだ
「人間はまりさたちの敵だよ、敵の畑や野菜や家畜の被害を気にするなんてバカバカしいよ
人間がまりさたちの生存を認めないなら、認めなくていいよ
まりさたちはまりさたちの、ドスとは違う生き方で生きてくから」
古参議員は、まりさの拒絶を感じ取った
彼女たちは人間を「敵」だとはっきり言った
「話は終わり? じゃあ、まりさは帰るね」
「ま・・・待ってくれ!頼む、もう一度だけでいい・・・人間を信じてくれ!」
まりさは古参議員に背を向けて言った
「人間を信じてドスは殺された・・・まりさたちはもう二度と、人間を信じない」
119
:
善を捨てよ、悪を取れ 6/6 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2017/11/25(土) 01:48:42 ID:3s0ztWHA0
ボン!
次の瞬間、まりさの体は爆ぜた
「な・・・」
何故撃った!!と怒鳴ろうとして背後を見ると、見知らぬ者たちがいた
服装から虐厨の手下の戦闘員だと分かる
そいつらが自分が連れていた護衛を拘束して、自分にも銃口を向けていた
「ここまでです、あなたを”対ゆっくり特別処置法”違反の現行犯で逮捕します」
ベテラン議員が留守の間、国会では「対ゆっくり特別処置法」なる法律が通過、可決施行された
それは、「ゆっくりはすべからく人類の敵である」という法律だった
駆除対象には飼いゆっくりも含まれ、ゆっくりの飼育は許可はされてはいるが
飼い主たちは虐厨にゆっくりを殺されても文句は言えない
抵抗すれば現行犯で逮捕される
そんな悪法だった
かくて・・・国中で「ゆっくり狩り」が横行した
「対ゆっくりガス」が街で野山で撒かれ
飼いゆっくり諸共、潜伏し生活していたゆっくりたちは死んでいった
大喜びの虐厨や彼らに迎合する虐待派たち
しかし・・・その足元では徐々に「マグマ」が溜まっていた
彼等は、自分たちが外の人間をも敵に回したことをまだ重大視していない
そして・・・・・・・
「みんな聞いて!この山にこの国のゆっくり全員を集めるよ!
そして・・・・・・人間たちと戦争をするよ!!」
(つづく)
120
:
汝、敵を侮るなかれ 1/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2017/11/25(土) 02:07:58 ID:3s0ztWHA0
※2「善を捨てよ、悪を取れ」
※1「秩序の崩壊」の続きです
「殺せ殺せ殺せえええええええ!!!」
「ま、まて、俺たちは政府の許可を得て・・・」
「やかましいわ殺人鬼どもが!!!」
「クリア!次の部屋に行く!」
虐厨議員らによる「対ゆっくり特別処置法」が制定されて1か月
ゆっくり虐待、たとえ飼いゆっくりであろうと問答無用で殺傷可能と言うお墨付きを
政府から得た虐厨たちは、暴れに暴れた
散歩中のものはもちろん、飼い主もろとも襲ったり金品を奪ったり
家のドアや窓を破壊して中で震えている飼いゆっくりを殺すなどもう当たり前だった
その上、飼いゆっくりがいないとなると彼らはミニイカ娘らにまで矛先を向けた
飼い犬飼い猫などにまで危害は及んだ
当然、警察への通報や司法への苦情はうなぎのぼりに増えたが
法律として制定されている以上、門前払いが関の山だ
虐厨たちは高笑いしながら「アイゴ」を迫害した
しかし、それは「法」の話のみである
「人の心」までそう単純にはいかない
日に日に虐厨・虐待派への人々の怒りや不満は高まっていった
そしてこの日、ついにそれは爆発したのだ
老ゆっくりれいむと二人ぐらしだった老婆の死がきっかけだ
彼女は虐厨に自宅を襲撃されて目の前でれいむを殺された
ショックで心臓麻痺を起こしたが虐厨はせせら笑い、彼女を足蹴にしながらバカにした
3日後、連絡が取れない事に不安を覚えた彼女の息子によって
死後3日経った死体は発見された
息子は即座に警察と司法に殺人罪で訴えた
しかし上からの圧力で捜査は打ち切られ、逆に息子は「対ゆっくり特別処置法違反」で告訴された
息子はあっさりと金を払い和解した
虐厨たちは拍子抜けしたが、「アイゴに勝った」と湧きたつ声が大きかった
老婆の息子が歴戦の傭兵であり、どうすれば相手を油断させることができるかなどを知り尽くしたプロだと
知らぬまま・・・・・・
息子は密かに仲間たちに連絡を取った
国籍などない、しかし世界各国の傭兵たちのみが知るホットラインだ
仲間たちは即座に応じて国に入った
自分たちにも良くしてくれた息子の母の死を嘆き、彼女を嬲り殺しにした虐厨へ憎悪を募らせた
法律が頼りにならない以上、報復は一つだけだ
「暴力」は彼らの得意科目である、遊びと趣味でやっている虐厨らと異なり彼らは「プロ」だ
件の虐厨のアジトを特定、行動パターンを割り出し「いつ全員集合するか」まで調べ尽くした
そして・・・冒頭に至る
街の虐厨のアジトが壊滅、虐厨は皆殺しにされアジトの建物は爆破され瓦礫と化した
虐厨たちの間に衝撃が走った
一方、市民たちはこの事件を大歓迎して大喜びだ
警察も声にこそ出さないものの、犯人を褒め称えた
だから・・・傭兵たちが報復を終えて国外に逃げるまで捜査を理由を付けて遅らせた
彼らの逃亡後は密かに証拠を隠滅し、彼らに結びつかぬよう、国際手配されぬよう手を回した
公僕といえど「人間」である
人間が人間を助けるのに理由など要らない
まして、人を襲うバケモノどもを動けぬ自分たちに代わり見事退治してくれたのだ
感謝こそすれど捕まえる気など起きないのは当然である
121
:
汝、敵を侮るなかれ 2/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2017/11/25(土) 02:21:26 ID:3s0ztWHA0
ここは、かつてドスの楽園のあった山
ここは手を出されていなかった
否、敢えて出されなかった
全国各地でゆっくり狩りが横行していたが、
この山へ逃げ込むゆっくりは黙認されていた
周囲の警戒を緩くし、逆に手を出す奴は罰を受けた
どうしてそこまでして矛盾する事をしたのか?
それは、ゆっくりを完全に絶滅させる意図で行われていたのだ
各グループの連絡が密になっていた事で、ゆっくりたちは現状を知った
彼女らはゲスではない、どうすればいいかを考える頭は持っている
結論として、唯一の安全地帯である「楽園の山」へ逃げ込むことを誰もが決定した
わざと警戒を緩くした事で、「このルートは安全だ」と彼女たちは警戒しつつも思い込んだ
そうして、ほぼすべての生き残りが山へ逃げ込んだところで・・・
虐厨たちは戦闘部隊による総攻撃を決定した
山に入った虐厨の目に、集団で固まっているゆっくりが目に入った
「ひゃっはー!!」
先頭の虐厨が駆けだす、しかし彼は・・・否、彼らは重大な見落としをしていた
まず、隠れもせず見晴らしの良い原っぱに何故いるのか?
次に・・・集まっているゆっくりは、どれも「れみりあ」「ふらん」ら・・・
「空を飛ぶことができる」ゆっくりばかりであること
見落としのツケ、油断が招いた打撃はすぐに来た
先頭の虐厨が広場の真ん中付近まで来たのを見計らい、ゆっくりたちは一斉に空へ飛び立った
一瞬、虐厨達の視線は空に向く
その隙をついて・・・小さな影がいくつも虐厨たちに突進してきた
「いでえ!?」
虐厨の一人が、ゆっくりが咥えた凶器に足を刺されて転倒する
それは、木の枝ではない・・・ガラスの破片だ
他のゆっくりたちも、動物の骨を加工したものや金属片、中にはナイフを咥える者もいた
そして、どのゆっくりもゲスが浮かべる嘲りの顔や、調子に乗った笑みを浮かべる者は一人もいない
あるのは、不倶戴天の敵に対するそれ、侵略者に向ける敵対的な顔である
「この、くそ饅頭が!!」
踏みつぶそうとするが、ゆっくりたちは素早く足元を動き踏みつぶしから逃れる
「う・・・ううううううう・・・」「!?おい、どうした!?」
ゆっくりに刺され倒れた者たちは起き上がらなかった
それどころか、口から泡を吹いて痙攣している
毒だ・・・!
誰もがそれを見て確信した
「一旦退け!態勢を立て直す!!」
リーダー虐厨は号令し、倒れた仲間を見捨てて退却しようとしたが・・・
彼らが来た方向はすでに多数の武装したゆっくりが塞いでいた
「もう逃げられないよ」
先頭の、左目に傷のある隻眼まりさが言った
「人間たちがこういう事をすると、まりさたちが予測してないとでも思った?」
「うるせぇ!大人しく潰されろ!!」
「まだ自分たちが勝つつもりでいるの? バカなの?」
「り・・・リーダー・・・」
部下の虐厨がリーダー虐厨へ声をかけた
そちらを見ると・・・どこに隠れていたのか、多数のゆっくりがそこにいた
皆、口に凶器を咥えて武装している
虐厨の攻撃部隊は完全に包囲されていた
「まりさたちはね、何の特別な力もない、普通のゆっくりだよ
そんなまりさたちごときにさえ、人間たちは皆殺しにされるんだよ
まりさが言おうとしている意味、分かるよね?」
リーダー虐厨は周囲を見た
れいむ、まりさ、ありす・・・戦闘に参加したのは、スタンダードなゆっくりばかりだ
まりさは「特別な力もない」と言った
つまり、ここにはいない、まだ別のゆっくりがいるのだ
「特別な力」を持ったゆっくり
リーダー虐厨は噂でしか聞いたことがないが・・・
不老不死、「隙間」、そして発火能力など危険な能力を持ったゆっくりの存在があるという
「命乞いは聞かないよ、命乞いしたドスを、人間たちは苦しめて殺したからね
だから・・・お前らも死ね!!」
122
:
汝、敵を侮るなかれ 3/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2017/11/25(土) 02:23:55 ID:3s0ztWHA0
3日後、討伐から戻らない攻撃部隊を探しに来た捜索隊によって彼らの遺体は発見された
彼らはすんなりと山奥まで来て遺体を回収するストレッチャーに乗せたところで
ゆっくりたちに囲まれたが・・・
彼女たちは「その人たちを連れて出て行ってね」と
敢えて捜索隊を見逃した
生還した捜索隊は、リーダー虐厨の記録カメラも回収していた
リーダー虐厨の記録カメラに残された まりさのメッセージと
彼女たちがやった殺戮は、議会を戦慄させた
彼女たちは「群れ」を作らないのではない、「作る必要がない」のだ
少数のグループは必要となれば即座に集結して大軍となる
そして、かつてのゆっくりにあった「やさしさ」「臆病さ」は彼女たちには一切ない
その上・・・
「この、特別な力・・・とは?」
「はい、ゆっくりの中には特殊な力を有している者もいまして・・・
確認されているだけでも、発火能力を有する”もこう”、レーザーを放つ”おくう”、
”すきま”を操作する”ゆかり”などがいます」
質問した議員はそれを聞くと、目を閉じた
冗談ではない
そんな能力を持った人の頭サイズの饅頭が街に侵入してテロでも起こせば、どんな被害が出るか・・・
昔話にこんな話がある
一人の村人虐厨が「もこう」の赤子をさらって虐待死させたために火に包まれた虐厨一家
河原で休んでいた「にとり」を村人が殺したために後日、鉄砲水に呑まれた村
山の「りぐる」を駆除して毒虫に全滅させられた村・・・など
その上、ゆっくりは「小さい」
ドスのような極端に大きな個体を除けば、せいぜい人の頭くらいの大きさである
はねるだけでなく、這って進むこともでき、小さい穴でもあれば侵入も可能
実質、彼女たちがテロを計画した場合、それを防ぐことは・・・・・・
「そうだ・・・山を焼いてしまえばいい」
虐厨議員の一人が口にした
直ぐに作戦が立案され実行に移された
山の麓に戦闘部隊のための簡易基地が作られ、
次々と火器や食料、そして虐厨戦闘員が送り込まれた
しかし・・・
「・・・ん?」
基地ができて五日後、
ベースで歩哨に立っていた虐厨兵士は空の星が増えたことに気づいた
否、それは星ではない
「もこう」という、炎を放つ能力を持つゆっくりの群れだった
彼女たちに交じって「おくう」もいた
「て・・・敵襲!!」
彼は気づくのが、遅かった
その声を上げた次の瞬間、ベースのテントは次々と燃え上がった
食糧庫はもちろん、武器弾薬庫にも、虐厨たちが寝ている兵舎にも
容赦なく火柱は上がった
「うわああああ!!」
火だるまの虐厨が兵舎から飛び出してくる
武器弾薬に引火し、その爆発で食糧庫や兵舎が吹き飛ぶ
戦闘開始数分で、ベースは地獄と化した
どうにか無事に飛び出した虐厨は空のゆっくりを堕とすべく銃を構えるが
「おくう」のビームが彼らを容赦なく消し炭に変換していった
翌朝、総攻撃のための最後の援軍は、かつてアタックベースだった焼野原を目にすることになる
生存者はゼロ
そこかしこに炭化した虐厨だったものが転がり、テントは骨組みすら飴のように溶けていた
「あの伝説は、本当だった・・・」
誰もがこの結果に戦慄した
簡易基地と同じことを、もし住宅地などにやられたら?
いや、今この瞬間に自分たちの真上からレーザーや炎が降り注ぐかもしれないのだ
その上、相手は「ゆっくり」である
ドローンや戦闘機を相手するのとは訳が違う
熱源は戦闘機以下、金属ですらない饅頭だ
何を頼りにロックオンして射ち落とせばいいい?
そもそも、人の頭より小さいものが遥か高空から攻撃してくるのだ
ショットガンで射ち落とすなどできるはずもない
「山を空爆しましょう!!」
破れかぶれで虐厨議員は策を口にした
「なんだこいつら!」
虐厨航空部隊は山の上空で「ふらん」「もこう」「おくう」の群れに遭遇した
機銃とミサイルに対して向こうは火炎放射器とレーザー、そして
どういう理屈か分からない「破壊の力」が武器である
勝てるはずもない
それでも隊長機は対地ミサイルを一発だけ山に放つことに成功した
「よし、もういいだろう」
ミサイルは爆炎を上げる、さすがにゆっくりも被害は出ただろうし、
ミサイルには発信器もついていた
数か月は電池が続く限り誘導ビーコンとなってくれるだろう
あとは、わざわざ戦闘機を出さずとも巡行ミサイルなどで遠くから攻撃すればいいい
生き残りの虐厨航空部隊は空爆の成功を確信し命からがら基地に帰投した
こっそりと戦闘機を尾行していた「ふらん」に気づかぬまま
結果、その日の夜に虐厨航空部隊は「もこう」「おくう」の襲撃を受け
灰塵と帰すことになった
123
:
汝、敵を侮るなかれ 4/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2017/11/25(土) 02:25:44 ID:3s0ztWHA0
「ドスの娘のまりさからの伝言を伝えるよ!
”人間達の考えはよくわかった!
どうしてもまりさたちを滅ぼしたいんだね!
でも、まりさたちは生きていたい!
そもそも関係を壊したのは人間達の方だから、悪いのは人間!
滅びるのは悪い奴であるべきだよね!
だから・・・まりさたちは人間を滅ぼす決心をしたよ!
仕方ないね、そうしないとまりさたちは殺されちゃうから!
10日したら総攻撃を始めるから、それまでに逃げるか戦うか決めてね!
以上だよ!”・・・以上だ!」
「どうして・・・こうなった・・・?」
隻眼まりさからの伝言が録音された航空基地の残骸から回収された記録装置を前に
議会の議員たちは誰もがうなだれていた
虐厨議員たちは、すでにこの場にはいない
逃げてしまったのだ
・・・そもそも、誰が彼女らを虐待するなど考えた?
彼女たちが「無力な饅頭」などと吹聴したのは誰だ?
どこが「無力」だ・・・彼女たちは神に等しい能力を持つ怪物じゃないか
誰もがそう思っていた
虐厨に踊らされ言われるままになり、奴らを増長してさせるがままになった結果がこれだ
怒らせてはいけない怪物を追い詰めてしまった
追い詰めなければ決して牙をむいてこなかった大人しい怪物
むしろ、近隣の人々と共存可能なパートナーになっていた者たち
しかし・・・さすがに自身の生存を脅かされてまで牙をむかないなどという
非暴力主義者ではなかった
今や人間社会の存続は風前の灯だ
今度は人間がゆっくりに狩られる番・・・その時は刻一刻と迫っている
目の前の記録装置を公開して国民の助力を仰ぐなどと言う考えはなかった
当然である
そんな事をすればパニックになるだろう、そして国民の怒りは国会に向かう
ただでさえ日頃虐厨どもの横暴に泣かされているのだ
加えて先の「対ゆっくり特別処置法」施行である
あのバカげた悪法で家族を失った国民の何割かは地下に潜り、虐厨にテロを行うようになった
警察も警察で、一般人に被害が及ばない限りはテロを黙認し、被害をもみ消した
誰もが虐厨を恨み、その不満はあちこちですでに噴出を始めている
音声の公開など、爆発のための決定打でしかないだろう
「そうだ・・・一人だけ、あの隻眼まりさを説得できる人間がいる!!」
「先生!」
突然釈放されたベテラン議員は秘書に迎えられた
そして彼に案内されるまま、もう二度と来ることは無いと思っていた国会へ案内される
そして彼は、自分に人類存亡の有無がのしかかる事を知るのだった
(続く)
124
:
不祥事とその責任 1/7 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2017/12/26(火) 00:04:06 ID:mKUP1NHw0
「なんてことをしてくれたんだ!!!」
ここは社長室、社長の怒声が一人の男へ注がれていた
男はこの会社「ミミカンパニー」の課長である
「タブンネ部門」、タブンネを捕獲し売りさばく部門だ
・・・というのは表向きであり、裏ではタブンネを肉として処理したり
虐待用に裏に流したりしていた、つい5年前まで
そういうわけでこの男---虐二もまた「タブンネは虐待するもの」と認識していた
それが当たり前だと思っていた
しかし、その考えが世間に受け入れられず
また、タブンネを可愛がるトレーナーから敵意を向けられる行為だと理解していた
過去に起きた「タブンネ狩り」の嵐の中でタブンネ持ちのトレーナーは変わった
無法者たちのルール無視・人心を踏みにじって憚らない暴挙は
彼らを生粋の強靭な戦士へと変えた
今の彼らは必ずタブンネ以外の強大な戦闘用ポケモンを何体も用意していた
戦闘用ポケモンと共に修行に励み、戦闘力をも身に着けた
また自身もマーシャルアーツをはじめとする格闘技術を身に着けている場合もある
格闘技を身に着けていない者であってもボウガンやスタンガンなどで必ず武装しており、
このため舐めてかかった虐厨は次々と彼らによって逆に狩られていった
今や「タブンネ(持ちのトレーナー)に睨まれる」という言葉は虐厨にとって死刑宣告に等しい
彼らは自らが味わった苦痛を、屈辱を、辱めを決して忘れてはいない
目の前で死んでいった野生タブンネ、全滅した巣を前に悔し涙を流した日々、
そして・・・心無い虐厨に殺されたかけがえのないパートナータブンネたち
彼らに浴びせた虐厨の嘲笑は彼らの心の怒りと憎悪の燃料と化し、今もその火は燃えているのだ
彼等の目の前でタブンネを、あるいはポケモンを虐待する事はすなわち「死」を意味した
そういうわけなので5年前、「ミミカンパニー」はタブンネへの積極的な虐待の手を止めた
今はタブンネを含む他のポケモンも「肉」として流用している
一見悪化したように見えるが、
「うちは昔から肉を扱っています、タブンネを虐めてるわけではありません」という
苦しい言い訳に見えない事もない
だがしかし今も虐二は日々こっそりとタブンネ狩りをしていた
彼だけではない、彼と同じ趣味の「虐待派」「虐待厨」は会社内に少なく無い
同じ場所で続けているとタブンネ持ちに睨まれるため、場所を変えながら
タブンネ持ちに「狩場」と予定した場所を先回りされていた時は諦めた
もし、タブンネ持ちと交流のあるタブンネを殺傷したとしたら
それは自身の死亡証明書にサインしたことに他ならない
タブンネ持ちに限らず、トレーナーとって交流していたポケモンを殺されることは
この上ない挑発であり宣戦布告なのだ
ましてそれがタブンネ持ちと交流のあるタブンネともなれば・・・・・・
虐二は彼らの恐ろしさを分かっていた
何度か遭遇し、問い詰められたこともあった
うっかり虐殺の現場に来られて追い回されたこともある
それでも虐二は「タブンネ狩り」をやめられなかった
125
:
不祥事とその責任 2/7 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2017/12/26(火) 00:05:58 ID:mKUP1NHw0
「シルフカンパニーとの取引がある」
社長は喜色満面の笑みである日の朝礼で社員全員にそう告げた
たちまち誰もが顔を見合わせ朝礼の場はざわついた
「シルフカンパニー」、カントー地方にあるその企業の名を知らぬ者は世界にはいない
かつてその知名度のせいでロケット団なるポケモンマフィアに狙われたこともあるが・・・
その時に立ちあがった名もなきトレーナーたちをはじめとした
強力なトレーナーたちを雇う事で、カンパニーは警備体制を盤石にした
彼らのネットワークもまたカンパニーの役に立ち、シルフカンパニーはますます大きくなった
そして、虐二の会社のある地方にもその支社はできた
その「シルフカンパニー」と虐二の会社「ミミカンパニー」の取引
これが社運を賭けた大きな契約になるだろうことに誰もが気を引き締めた
「そこで・・・シルフカンパニー様から取引の条件を掲示された、心して聞いて欲しい」
ミミカンパニーにシルフカンパニーが示した条件
それは虐二に寝耳に水だった
「ポケモンへの虐待行為を一切やめる事」
「やむを得ない食肉には牛や豚などの従来の家畜を充ててポケモンをむやみに殺す真似はしない事」
「野生のポケモンであっても無意味な殺生は禁止する事」
カントーではごく当たり前の事(そもそも殺傷自体が禁止)ではあるが、
ポケモン虐待が当たり前だったここでは違う
しかし、シルフカンパニーはこれを飲まなければ取引には応じないと言う
社長は承諾し条件を飲んだ、そして全社員へそれを徹底するよう朝礼で命令した
全員が一応従ったが不満な者もいた、虐二もその一人である
「くそったれ!なにがシルフカンパニーだ!!」
朝礼のあったその日のうちに虐二はさっそく腹いせに草むらに入り、出てきたタブンネを襲った
近くに巣があると知るとそこへ向かい、襲ったタブンネの目の前でその家族を痛めつけた
その時・・・・・・
「なにをしてるんだ!」
タブンネを夢中で狩っていた彼は背後から声をかけられた
『しまった!』
虐待に夢中になるあまり、別の存在の接近に全く気付かなかったのだ
かつてタブンネ持ちに追い回された記憶がよみがえる
しかし・・・振り向いた先にいたのは
10歳前後と思われる少年だった
その手持ちはレベルが低そうなフシギダネ
虐二は言い訳を考える前に咄嗟にシャンデラを繰り出した
そして少年の手持ちを全滅させ、その目の前で堂々と
タブンネ親子を殺した
「楽しいぞ、お前もやらないか?」
形勢逆転を確信した虐二は言い訳どころか己の行為を正当化していた
少年は首を振り、泣きながら帰っていった
虐二はほっと一息ついた
少年はタブンネ持ちではない、ただの駆け出しだ
対して虐二はこれでも20年以上のベテラン、勝てない理由などなかった
ただ一つ懸念があるとすれば・・・
あの少年が会社の顧客だった場合である
それでも虐二は「顔さえ見合わせなければ大丈夫」と自分に言い聞かせた
相手の価値観など知る由も、知る努力もせず
知ったとしても踏み躙りあざ笑う虐厨の論理だ
後日、彼は自分がしでかしたことの意味を嫌と言うほど思い知ることになる
126
:
不祥事とその責任 3/7 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2017/12/26(火) 00:07:39 ID:mKUP1NHw0
少年との対戦から3日後の昼休み、外食で気分転換しようとした虐二は
会社の外へ出た
「おい、てめぇ・・・」
虐二は会社の前で屈強な男に声をかけられた
筋骨隆々、露出した腕は虐二の腕よりはるかに太い
「オレの甥が世話になったそうじゃねぇか・・・」
その言葉に虐二は思い出した・・・あの少年を
あの少年は声をかける前に、スマホを手にしていた
つまり・・・虐二のタブンネ狩りの写真を撮っていた
今頃になって虐二はその可能性に思い至り、青くなった
少年がその写真を証拠として家族に見せないわけがない
虐二はあれだけの事をしたのだ
そして・・・少年の肉親がもしタブンネ持ちだったら・・・
彼らが肉親の制止を無視して追い払ってまで虐待を続けた奴を放っておいた例などない
逆に、タブンネ持ちの身内と知らずに愛護扱いし、後日報復を受けた例はごまんとあった
「甥っ子の出した写真でどっかで見た顔だと思ったら・・・
虐二さん、あんたこの会社の重役さんだったな?」
殴られることを覚悟して身構えていた虐二は面食らった
重役の顔を知っている・・・!? 自分の名前までも目の前の男は言い当てた!
会社の顧客か? 社長の知人か? 重要株主か・・・?
虐二の頭の中をあらゆる可能性が駆け巡る
「ちょうど社長に用があったんだ、来いよ・・・三者面談といこうぜ」
虐二は男に右手を掴まれ、会社の中へ戻っていった
「いらっしゃいませ・・・あ、これはこれは」
受付嬢は丁寧に男へお辞儀をした
「社長につないでくれ、手間は取らせない、”取引について話がある”とだけ言えばわかるだろう」
男はぶっきらぼうに受付嬢にそう言った
「あ、はい・・・社長、強志様が受付にいらしております・・・」
受付嬢は従来なら断られてもおかしくない男の要求をあっさりと呑んだ
そして電話で社長に直に通話していた
虐二は目の前の男を信じがたい思いで見た
受付嬢に顔パスな上、アポなしで社長に面会しようとしている・・・!?
しかし、男の顔に虐二は見覚えはない・・・
「これはこれは、よく来てくださいました」
応接室で社長は強志へ腰を低くして挨拶した
顧客や相手の大企業以外にこんな腰の低い様を見る社長を虐二は見たことがない
強志と言う男はただのトレーナーではないのか?
もしかしたら、会社のお得意様か?
しかし、虐二の考えはまったく甘いものだった
「今日はどのようなご用件で・・・? シルフカンパニーとのこの前の取引の件で問題でも?」
知らぬ者の無い大企業「シルフカンパニー」の名前が出たことに虐二は驚きを隠せなかった
3日前の朝礼を思い出す、「シルフカンパニーとの取引がある」と
・・・虐二は青くなった、今、どういう状況なのかを頭が理解し始めた
「ああ、取引は・・・なしだ、白紙にする、そしてもう2度としない」
きっぱりと男は、会社が全てを賭けた取引の白紙撤回を言い放った
虐二が予測していた、最悪のパターンだ
そして社長は・・・見たことも無いほど蒼くなった
「な・・・なぜですか!?」
「前に言ったな・・・シルフカンパニーとの取引の条件を
ポケモンへの虐待行為を一切やめる事、
やむを得ない食肉には牛や豚などの従来の家畜を充ててポケモンをむやみに殺す真似はしない事、
野生のポケモンであっても無意味な殺生は禁止する事・・・
あんたら全然守れてねぇじゃねぇか」
男は社長が朝礼で示した条件を、取引した相手同士しか知らぬ話を告げた
虐二が目の前の男「強志」がシルフカンパニーの正式な使者であると理解するに十分な証拠だった
社長は虐二を見た、「お前は何をした?」そう言いたげな顔で
「虐二さん、あんたは知らなかったようだから教える
オレはシルフカンパニーに世話になってるトレーナーだ、用心棒としてな
きっかけはロケット団というポケモンマフィアが街ごとシルフカンパニー本社を占拠した事件だった
俺たち街のトレーナーはロケット団と戦った
ロケット団は赤い帽子の少年が退治したらしいが、社長は少年だけでなく街を人々を守るため
立ち上がったオレたちを忘れてはいなかった
だから、ちょくちょく仕事を貰って報酬を受け取っている・・・
今回のおたくの会社との取引もそれだ、虐待に手を染めている連中に碌な奴はいない
中には出向いた社員を暴力で脅して言う事を聞かせようとするアホもいる
だから、オレみたいな用心棒にお鉢が回ってくるのさ」
社長は冷や汗をハンカチで拭きながら、問いかけた
「あの・・・虐二が何か?」
虐二は「タブンネ狩り」の件を糾弾されるものと覚悟した
しかし・・・男はもっと別の重大な事を口にした
127
:
不祥事とその責任 4/7 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2017/12/26(火) 00:09:06 ID:mKUP1NHw0
「こいつのせいで俺の甥はポケモントレーナーを辞めた」
沈黙が降りた、部屋の空気がこれ以上ないくらい下がった
冷房のせいだけではない・・・虐二は自分のキャリアが完全に終わったことを悟った
そして・・・社長の自分を見る顔がみるみる怒りを帯びたものになっていくのを見る
「こいつが取引条件を破ってタブンネ狩りをやってるとこに甥はでくわしてな・・・
ポケモン勝負の結果は甥の負け・・・それは別にいい、それはあいつも分かってる
勝負の勝ち負けはポケモン勝負につきものだと・・・けどな
そいつに生き物の命がかかっているとなると話はまた違う
小さな命一つ守れなかったこと、目の前で無残に好きなポケモンのタブンネを殺されたこと
そして・・・こんなゲス一匹に負けたことがよほど堪えたんだろう
甥はその日のうちに故郷の家に帰って来た
そして二度と旅には出ないとオレの弟夫婦・・・あいつの両親に告げて
今は地元のスクールに通ってる」
虐二も社長もすっかり蒼くなっていた
取引相手を怒らせただけではない
この世界、ポケモンと生きるこの世界の「禁忌」を犯してしまったのだ
「駆け出しのトレーナー」はこの世界において「宝」に等しい存在だ
その成長を見守り、かつてのロケット団のような悪の道に入らないよう育てるのは
世界共通の大人の「義務」である
成長した彼らはやがて立派なベテラントレーナーになる
彼らが旅で得た知識や経験、そして何より戦闘力や強力なポケモンは
誰もが喉から手が出るほど欲しがる得難い人材だ
その人材の卵たる「駆け出しのトレーナー」を潰してしまった
これはマフィアの犯罪行為に値する重罪と世間では捉えられる愚行だった
事実、駆け出しトレーナーを襲って半身不随にした20代の暴走族が
その日のうちに地域のベテラントレーナー総出で袋叩きにされた上に逮捕され、
裁判で終身刑、残る一生を刑務所で過ごす事になった事件は記憶に新しい
だから「これが公になる」、それだけでもこの会社をつぶすには十分すぎるのだ
「申し訳ありません!!」
社長は虐二をひっつかんで自分の側に引き寄せ無理やり正座させ、
頭をつかんで床に押し付け、自身も頭を下げて共に土下座した
「決してやってはならないことしてしまいました!! 慰謝料は支払います!
だから、だからどうか・・・このことだけでも内密に・・・・!」
「謝罪も賠償も必要ねぇ」
強志はそう言って社長の土下座を切って捨てた
話は終わったとばかりに二人に背を向け応接室のドアの取っ手に手をかける
「あんたらが謝罪したり金を弟たちに払ったとこで、甥が守ろうとした命は帰ってこねぇ
だから甥が立ち直れるわけでもねぇ・・・
あんたらは取り返しがつかねぇ事をしちまったんだよ」
それだけを言い放ち、強志は出て行った
128
:
不祥事とその責任 5/7 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2017/12/26(火) 00:10:37 ID:mKUP1NHw0
その1時間後、シルフカンパニーから正式に取引の中止と
二度と取引はしないという絶縁宣言のメールが届いた
社運を賭けた大きな取引は一人の重役の不祥事によってパァになった
メールも電話も受信拒否され、菓子折りを持って出向いた社員は警備に追い返された
「駆け出しのトレーナー」を潰してしまった件は瞬く間に広がり
世界中から抗議の声が殺到した
男が抗議に来たその日から会社のメールボックスはパンク、電話も鳴りやまなくなった
そして冒頭の社長のきつい叱責に戻る
事はもはや虐二一人の首で済む話ではなくなっていた
この世界における「大罪」を犯してしまったのだ
怒っているのは社長だけではない
叱責が終わり廊下に出た虐二を待っていたのは全社員からの冷たい視線と敵意だった
虐二のせいで自分たちのキャリアどころか仕事までも失うかもしれないのだ、彼らの怒りはもっともである
目に映る男は「課長」ではなく、自分たちの人生を狂わせた「疫病神」に社員たちには見えていた
シルフカンパニーとの取引失敗から1週間後・・・一つの企業が終わりを告げた
「駆け出し潰し」のレッテルのある企業と取引しようなどと言う会社はない
たとえ虐厨の会社であっても、それをすることが自身の会社の「死」を意味する事を分からぬほど愚かではない
まして最近「RR団」なる謎のマフィアが「エーテル財団」で暴れたばかりなのだ
「RR団」と同じ無法者と同一視されるなど、リスクこそあれど利益など無い災難である
下手をすると、国際警察かポケモンマフィアを狩るトレーナーに睨まれかねない
その中に「タブンネ持ち」がいたら・・・それは「終わり」を意味していた
「ミミカンパニー」は経営難に陥り破産倒産した
社長は一家を連れてどこかへ消え、社員たちも他の地方へ逃げるように去っていった
129
:
不祥事とその責任 6/7 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2017/12/26(火) 00:12:00 ID:mKUP1NHw0
さらに1週間後、町はずれの小道
「ちくしょう・・・なんでこんな事に・・・」
着たきり雀のボロボロのスーツを着た男がふらふらと歩いていた
虐二である
彼は叱責されたその場で解雇された
建物の外に出れば待っていた警察に捕縛されてきつく叱責された上に罰金を払わされ、
手持ちのポケモンもすべて没収された
自宅に戻った彼を待っていたのは離婚届と子供を連れて出ていくという妻からの手紙だった
彼は1日で地位も名誉も財産も妻子すら失ったのだ
「テュテュ!」
その目の前に、小さなタブンネが歩いてきた
毛並みの良い、一目で誰かのポケモンと分かる子だ
しかし今の虐二にはどうでもいい、この憂さを晴らせるタブンネであればそれで良かった
むしろ、自分のいまの窮地はタブンネのせいだと、虐厨じみた思考をしていた
「常識」など頭から消えていた
他人のポケモンを虐めてもせいぜい捕まって牢に入れられるだけ
むしろ彼には飢え死にも凍える心配もない牢の中こそ望む場所だった
だから、あっという間にタブンネを捕まえその胴体を締め上げた、躊躇など無い
飼い主に怒られようと一発殴り返せばいい、そんな事を想っていた
「なにするのよ!?」
「うるせぇ!!!」
そう怒鳴り拳を振り上げた先・・・目の前いたのは抗議の声を出したタブンネの主の少女だけではなかった
燃えるような目で虐二を睨みつける、屈強な大柄の炎ポケモン「リザードン」
その力を知らぬ虐二ではない・・・上げた拳は力なく下がった、下げざるを得なかった
虐二が本気で殴ったところで、目の前のリザードンは痛くもかゆくもないだろう
そして今頃になって虐二は失念していた「常識」を思い出した
「タブンネ持ちに睨まれるな」「喧嘩を売るな」「絶対に怒らせるな」
虐厨との争いで精鋭無比な戦士と化した彼ら彼女らを侮るな怒らせるな恨みを買うな
彼らは今も虐待の嵐を覚えているし、その恨み怒りを忘れてはいない
だからその矛先を向けられたくないなら絶対に喧嘩を売るな、手を出すな
誰もが知っている「常識」、破った虐厨や虐待派は即座に命を落とす絶対のルール
しかし・・・・・今頃思い出しても、もう後の祭りである
虐二はせめて命乞いをしようと手の中のぐったりしたタブンネを差し出そうとした
が・・・それより早く、少女の手持ちのマニューラが虐二の手からタブンネをひったくった
マニューラは母か姉のようにタブンネを介抱し、息があると分かるとほっとして・・・
虐二を殺意のこもった目で睨みつけた
「うちの可愛い子になにしやがる?」
少女の手に子タブンネを渡し、マニューラは「フゥゥゥゥ!!」と唸りながら爪を構えた
虐二はこのマニューラが殺しに慣れていることをその動きで悟る
一体何人の虐厨がそのツメにかかったことか・・・
少女は冷たい目でその様子を見ている・・・マニューラを止める様子はない
そして本気で怒ったマニューラのその力を知らない虐二ではない
虐二の首などあっという間に胴体と泣き別れるだろう、文字通り
「ぐるるるる」「ミャウ?」
そのマニューラへリザードンは鳴き声(虐二には唸り声にしか聞こえなかったが)でささやいた
「お前はその子とご主人を頼む、こいつはオレに任せろ」
長年の経験でそういう会話をしているのだと虐二はなんとなく分かった
だからといって事態が好転するわけでもない
「そいつの始末は任せるわ、いつも通りにお願いね」
少女は虐二にはっきりと死刑を宣告した
リザードンは頷くと虐二をくわえ、空高く飛んだ
130
:
不祥事とその責任 7/7 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2017/12/26(火) 00:13:10 ID:mKUP1NHw0
その日、虐二は姿を消した
しかし「駆け出し潰し」の大罪人を心配する声など無く
むしろ「逃げたのではないか」と怒りを上げる声が上がる始末だった
1年後、ボロボロのスーツを着た男の白骨死体が数キロ沖の小岩で発見された
ここは船の座礁が相次ぐ魔の海域で、そのためよほどの用事でもない限り
誰もが避ける難所だった
その日たまたま近くを通りかかった個人所有の小型船が白骨に気づき、通報した
骨はどれもバラバラで、死ぬ前に何があったのか無事な骨は一本もない有様だった
唯一無事だったのは死体のスーツの内ポケットにあった身分証だった
これでこの死体が元ミミカンパニー課長の虐二と分かった
しかし、死体の発見と同時に当時の事件までもぶり返され
世間は犯人よりも虐二への怒りで沸き上がった
犯人の追及はされず、それどころか目撃情報から
「少女を襲ってその手持ちポケモンに仕返しされた」という自業自得の最期に行きつき
正当防衛だと判断した警察も捜査を打ち切った
どこの墓地からも埋葬を断られた虐二の骨は、やがて行方知れずとなった
ボロボロのスーツを着た男が骨壺を抱えてさまよう姿が目撃されるようになったのは
それから間もなくである
(おわり)
131
:
最後の協定 1/6 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/01/26(金) 02:41:34 ID:LAKHO0.M0
※3「汝、敵を侮るなかれ」
※2「善を捨てよ、悪を取れ」
※1「秩序の崩壊」の続きです
4「最後の協定」
「頼みがある・・・ワシ一人の首で済ませてくれんかね?」
「何を言ってるの?」
ここは、山の近辺の里山の一つ
今も時々ゆっくりが出没している稀有な土地だ
人々の手で彼女らを脅かす虐厨は
密かに葬り去られてきたため、数少ない安全地帯となっていた
そんなある日、虐厨基地の壊滅から2日後、
里山の長は散歩していたれいむをつかまえて話をしていた
「腹を括ったのだろう? 人間と敵対する決意をしたのだろう?
・・・その事で責めはせんよ、当然じゃ・・・あいつらは、やり過ぎた
だから、お前さん達が人間を憎む気持ちも理解できる・・・そこで頼む
人間を滅ぼすなら、ワシらも滅ぼす気なら・・・ワシの首を差し出す
その代り、里山の者たちは助けてやってくれ・・・!」
長は頭を下げた
「・・・なんのお話? 滅ぼすなんてしないよ」
長は顔を上げる、れいむの声に嘘や方便の響きはない
「人間にはいい人も悪い人もいる、だからいい人まで殺すのは
悪い人と同じことをする事になっちゃう、それがまりさの考えだよ
そして・・・おじいさんたちは、悪い人じゃないよ」
長はその場で泣き崩れた
そして、れいむが山に消えるまでその背に向かって手を合わせ拝んだ
132
:
最後の協定 2/6 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/01/26(金) 02:45:06 ID:LAKHO0.M0
「・・・そんなことが・・・」
会議室でベテラン議員は一部始終を聞いた
「・・・こんなことになると、彼女たちがこんな力を持っていると知っていたら・・・
ドスを殺させるような馬鹿な真似はあいつらを殺してでも止めていた・・・!」
総理は机をたたいて悔やんだ・・・しかし、もうどうしようもない
完全に立場は逆転した
誰が「無力な饅頭」など最初に吹聴したのか?
ゆっくりたちは最初から人間社会を壊滅させるに足る力を持っていたのだ
ただ今まではその必要性もなく、人間への敵意など限りなく薄く、
それぞれのグループで掟に従って生きていたから力をふるう必要が無かっただけだ
だが、今は違う
はっきり「敵味方」に別れ、両者が不倶戴天だと認識した
彼女たちは自分たちが生き延びるために人間を滅ぼすと決定した
これまで人類が敵対者にしてきたように
宣言がされてすでに3日目・・・あと一週間で人間社会は崩壊するのだ
「・・・ところで・・・ずいぶん数が少なくなりましたね」
その場に、あれほどうるさかった虐厨議員の姿はない
「みんな逃げたよ、ま、そのおかげでこうしてキミを助け出せたわけだ」
総理は微笑を浮かべて答えた
「なるほど」
皮肉なことに、虐厨の卑怯な保身と臆病な心は、残された者たちに大きな利益となった
彼らが逃げ出し隠れた事で、国会はその機能を虐厨から取り戻したのだ
まず「対ゆっくり特別処置法」を含む虐厨議員主導で作られた法律は
ことごとく廃止された
そして総理はこれを機に一気に攻勢へと転じた
虐厨議員の議員資格を軒並み廃止(理由はいくらでも用意できた上にすべて真実であるため事欠かない)
各地の公務員から虐厨を追い出すことも忘れていなかった
さらに、街で狼藉を働いた虐厨やそのシンパを割り出して全国指名手配
その上で「虐厨議員によるクーデター未遂」という罪状を上げ、
「対ゆっくり特別処置法」などの虐厨主導の法律は過去にさかのぼって無効とされた
虐厨法律の下で行われた行為を含む数々の好き勝手が全て非合法であり犯罪行為であると発表した
警察は大喜びで一斉に検挙を開始
あちこちで虐厨の事務所や自宅が家宅捜索を受け、次々と犯罪者は逮捕された
飼いゆっくりを誘拐した現場を押さえられるなどの不埒者も少なく無かった
そういった者たちのほとんどは常習犯であり、警察から逃れた者もいたが
被害者飼い主たちに取り押さえられて「行方不明」になった
虐厨議員たちが潜伏先で事態を知った時には彼等のコネは全て失われ、
すでに彼らの居場所は国会には無かった
彼等になびいていた者たちは身に危機が及ぶのを恐れてしり込みし、
なぁなぁで済ませた中立派も土壇場で逃げ出す醜態を見てそっぽを向いたのだ
133
:
最後の協定 3/6 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/01/26(金) 02:57:46 ID:LAKHO0.M0
「・・・久しぶり」
期限まで残り3日となった日、ベテラン議員は例の山の麓にいた
彼の呼びかけに、今度はあの隻眼まりさが応対した
「見ての通りオレは一人だ、今度こそ、な・・・だからオレを殺してもお前が死ぬことは無い」
もちろん護衛はいるが、彼らは遠くにいる
そしてその警戒対象はゆっくりではなく、今のこの場をぶち壊しかねない虐厨どもだ
今回は射殺許可も出ているが、彼らは虐厨は見つけ次第射殺するつもりだった
「オレに何があっても絶対にゆっくりには手を出すな」との厳命もされていた
あの時議員を守り切れず虐厨の暴挙をみすみす見逃すことになった事を悔いる彼らは命に従った
「まりさもメッセンジャーにすぎないよ、まりさを殺しても議員さんはすぐ報復はされない」
「お互い様・・・か」
二人は旧知の友のようにひとしきり笑った
否、実際二人はもう旧知の友だ
ゆっくりは人間とはもう分かり合えないと理解し、人間はゆっくりたちの人知を超えた力に怯えていた
お互い歩み寄って話し合うなど、現段階ではもはや夢物語なのだ
この二人を除いて
そして、まりさは提案した
一つ、今のゆっくりたちの拠点の山をゆっくりたちの居住地として認めること
一つ、山に人間は立ち入らない事、立ち入ったら命の保証はない
一つ、ゆっくりは山に入ることはできても山から出ないこと
一つ、人間からの仕事の依頼は今後一切受けないこと
「話は・・・以上だよ!」
「・・・それだけで・・・いいのか?」
ベテラン議員は可能な限りまりさの我儘を聞いてやるつもりだった
それで許されるとは思っていない
しかし、それだけの事を自分たちはゆっくりにしたのだという反省と謝罪は胸にあった
たとえ要求が「虐厨議員の首を持ってこい」であったとしても、彼は喜んで奴らを探し出し
その首を差し出すつもりだった
しかし・・・まりさの要求は復讐でも、まして食べ物ですらなく・・・それはまるで・・・
「それは・・・新しい協定か?」
まりさはその言葉に、かぶりを振った
「違うよ、これは・・・まりさたち”ゆっくり”から人間への絶縁宣言だよ!」
こうして・・・人類とゆっくりとの最後の対話は終わった
圧倒的な力の差を見せつけられた人間側はいかな理不尽な要求だろうと呑むしかないと身構えていたが
この結果に拍子抜けした
大きな山一つ、代償はそれだけ
これまでの人間(主に虐厨とそのシンパ)からの対応を考慮すれば、破格の条件である
交渉を成功させたベテラン議員は英雄になった
しかし、虐厨たちはこの結果に不満を持った
その後も虐厨たちは虐待目的で山に侵入した
が、彼らは一人として生きて帰ることは無かった
134
:
最後の協定 4/6 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/01/26(金) 02:59:47 ID:LAKHO0.M0
最後の話し合いが行われて10年後・・・
今や「ゆっくりの住む魔の山」とされ厳しく立ち入りが禁止された山の麓に一台の車が停車した
「ここでいい、ありがとう」
年老いたかつてのベテラン議員は、長年の付き合いである専属運転手に別れを告げた、最期の別れを
元ベテラン議員はスーツではなく、全身を白い着物で覆っていた
「死に装束」である
運転手は泣きながら、山へ向かう彼を見送った
その姿が消えてなお、彼は議員の背中へ深くお辞儀をしたまま動かなかった
山へ入ったかつての元ベテラン議員は、あちこちから視線を感じた
しかし、攻撃はない
彼は事前に、「予告状」を送っていた・・・そのせいかもしれない
彼は何事もないまま見晴らしのいい斜面に出た
そこは野原で、きれいな花がそこかしこに咲いている
彼はそこで腰を下ろした
「なにしにきたの? ここ、立ち入り禁止って10年前に決めたでしょ?」
あの隻眼のまりさが、いつのまにか彼の背後にいた
「・・・お前か、10年ぶりだな」
「議員さんこそ、久しぶりだぜ」
「元・議員だ、オレはとっくに後進に道を譲った身でな・・・」
「じゃあ、元・議員さん、条約を破ったのはなんでなんだぜ? あと、その恰好はどういう意味だぜ?」
それが人間の死体を包む衣類だと知らぬ隻眼まりさではない
だからこその問いかけだった
元議員はゆっくりと息を吸い・・・告げた
「オレの我儘だ、オレはここで死ぬ」
「ゆ?」
隻眼まりさは目を丸くした
「オレの体は末期の癌に侵されていてな、余命はあと数日あるかないかなんだ
で、どうせ死ぬなら心残りを解消しようと思って来たのさ」
「・・・・・・・・」
まりさはかつて、亡きパチュリー姉から聞いていた
強い人間にも勝てぬ病があると、それに罹れば人間であっても死ぬ
そのリストの中に「癌」はあった・・・
そして「末期の癌」はもう助からないものだとも聴いていた
「安心しろ、遺体は探すな回収するなときつく言ってある・・・オレを捜索しに来る奴はいないさ」
「でも、虐厨たちはどうなんだぜ? あいつらにとっては良い口実だぜ?」
「そうそう、そいつらの事も教えに来たんだ・・・虐厨どもは人権をはく奪された」
「ゆ?」
まりさはまたも目を丸くした
「分かりやすく言うと、あいつらはもう人間じゃねぇ、ただのケダモノ、害獣扱いだ」
元・議員は「最後の話し合い」の後の経緯を語った
野生の「ゆっくり」に手を出せなくなった虐厨たちは、そのストレスと欲望のはけ口を失った
ゆっくりが滅亡しても同じことではあったが・・・彼らは新しい「おもちゃ」を求めた
溜まりに溜まったその欲望の矛先は、飼いゆっくりやミニイカ娘ら、
そしてその飼い主の人間たちへと向けられた
つまり、虐厨はその牙を剥く先を本格的に人間に変更し、人間へ襲いかかったのだ
結果、虐厨による事件の被害者数と犯罪件数はうなぎのぼりに増加した
しかし虐厨たちは完全に失念していた
まず、虐厨議員が追放されている国会や警察、司法は彼らを助ける事はない事
次に、「自分より弱く反撃される恐れが無い生き物」ばかり狙う彼らは一部を除き戦闘面では一般人に劣る事
最後に・・・そんなことになれば人間社会は黙っていないと言う事を
135
:
最後の協定 5/6 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/01/26(金) 03:02:55 ID:LAKHO0.M0
たちまち虐厨は取り締まりの対象になった
虐厨はこの国が法治国家であることを忘れていた
「法」が許さぬ不埒を虐厨が許すからなどと言う理由で許される道理はない
最初は拘束で済ませていたが、再犯率の圧倒的高さと日々エスカレートしていく凶悪さのため
その場で殺処分もやむなしとなった
元虐厨議員は当然異を唱えた・・・が、
「たかがアイゴの命を奪ったくらいでガタガタぬかすな!」などと口走ったのが運の尽き
世論は一気に虐厨の排斥へと傾いた
そして、取り締まりや新たな法の制定を繰り返しても虐厨の暴走は止まらなかったため・・・
しびれを切らした人々により、ついに虐厨はその人権をはく奪された
今や虐厨は「人の姿をした害獣」であり、見かけ次第の駆除が推奨されている
「ま、そういうわけさ・・・もっと早くやつらの異常さに気づいていれば良かったんだけどな・・・」
元・議員は懐から煙草の箱を出した
「いいか?」
「構わないぜ」
まりさの了承を得てからライターを出し着火しようとしたが・・・
「くそ!ガスが切れてたか・・・」
「もこう、火を貸すんだぜ」
「ゆ!?」
茂みの中から声をかけられた一体の「もこう」が出てくる
「まりさ、この人が人間さんだよね?」
その「もこう」は、まりさよりはるかに小さく、生まれてまだ一年にも満たない事が分かる
恐らく「人間」を見るのは生まれて初めてだろう
「・・・そうだぜ、どんな目に遭ってもまりさたちの事を考えて行動してくれた
人間さんの中の人間さんなんだぜ!」
「もこう」だけではない、れいむ、まりさ、ありす、にとり・・・
あらゆる「ゆっくり」が、茂みの中から出て来ていた
そして、彼は・・・
この言葉を聞いた最後の人間になった
「ゆっくりしていってね!!」
136
:
最後の協定 6/6 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/01/26(金) 03:23:13 ID:LAKHO0.M0
(エピローグ)
一年後、元ベテラン議員の息子はヘリを飛ばしていた
父から「遺体は探すな」ときつく言われていた
が、「母の遺体を持ってくるな」などとは言われていないためだ
だから、彼は母の遺骨の入った壺を胸に抱いていた
ベテラン議員が山へ消えてしばらくして、彼の母は虐厨の襲撃に遭い倒れた
「こいつの夫が余計なことしなけりゃ、オレらは殺人も許される身分だったんだよ!!」
虐厨は警察官に射殺されるまで身勝手な主張を喚き散らした
息子が面会に行った時、母は集中治療室の中だった
昏睡と覚醒を何度か繰り返し、そしてつい数日前に病院で自宅に帰ることなく亡くなった
「あの人のいる山で眠りたい」
それが死ぬ前に最後に目を覚ました時に呟いた、彼の母の遺言だった
だから・・・散骨を行うべく彼は山へ飛んだ
山の上空で、彼は一体のもこうと遭遇した
彼女はヘリの中を見ると・・・ひどく驚いた顔をした
そして大慌てで山に急降下、木にぶつかりながら消えて行った
「・・・? どうしたんでしょうね・・・?」
ヘリのパイロットはさすがに訝しんだ
警戒される、それは覚悟していたが、あの反応は想定していない
「燃料はあるか?」
「あ、はい、満タンですから・・・」
「なら、しばらくこのあたりをホバリングしてくれ」
5分後、おくうに抱えられた隻眼まりさが先ほどのもこうの先導でやってきた
議員の息子はドアを開けた
「ゆゆゆゆ〜!!!!!!?」
彼女は、ベテラン議員にすら見せたことのない驚きの表情と声を出した
「元議員さん!?どうして!? 永遠にゆっくりしてお墓も作ったはずだよ!!?」
議員の息子は納得した・・・彼はよく、父親に似ていると言われる
彼女たちは彼を父親と間違えたのだ
「オレは、その元議員の息子だ」
そして、胸の壺を差し出した
「これは、その元議員の妻であり、オレの母親の遺骨だ・・・」
「ゆ・・・」
隻眼まりさは、元議員と過ごした最後の数日を思い出した
たしか、「妻と子がいる」という事を口にしていた
目の前にいるのが、その妻子なのだ
「頼む、この人を・・・オレの母を、父と共に眠らせてくれ・・・」
「・・・まってて」
隻眼まりさはもこうに何事かを言った
もこうは頷くと山へと飛んで帰った
しばらくして・・・山からものすごい数の もこう、ふらん、れみりゃ、おくうらが
飛んできた
「みんな!!元議員さんの奥さんを息子さんが連れて来たんだぜ!
みんなで元議員さんの所へ連れて行くのぜ!!」
「「「「お〜!!」」」」
今も、虐厨と戦い人類を破滅から救った男とその妻は
同じ墓で眠っている
男の息子はその後の生涯を虐厨との戦いに捧げた
当初は父への仕打ちや母を襲撃された件を水に流して
虐厨との橋渡しになろうと考えていたが
虐厨の身勝手さのあまり、時を経ずして「共存不能」と断じる他なかった
彼の功績によって虐厨は国中から一掃され
今では隔離区域内でのみ存在が許されている
余談だが、
これにより国に蔓延っていたあらゆる犯罪が極端に激減したのは
言うまでもない
(おわり)
137
:
上げて落っこちて 1/6 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/02/06(火) 00:25:28 ID:v3uX7dRo0
「・・・飽きたな」
ここは、ミニイカ娘の集落だった海辺
今はたった一人の男によって地獄と化した地であるが
たしかについ数時間前までそこに生命の営みはあった
しかし、地獄を創った当の本人は不満げだった
飽きたのだ
もっと刺激が欲しい
だが、この集落が最後の「被虐生物」の生息地であった
あとは「飼い」を襲うしかないが、それはすでに誰もがやっている
「ぎゃあああああ!!」
今もどこかで、飼い主に逆襲された虐厨の断末魔が上がっていた
男---虐島は飼い主の報復など恐れないが、侮ってもいない
事実、何度か銃を向けられ、あるいは庭先の罠にかかり
命を落としかけたこともある
考えた末に彼は、「上げ落とし」を実行する事にした
幸せを味わわせ、その後で地獄に落とすという手口だ
彼の手には唯一残った卵があった
彼は頭の中でいくつかの「アイゴ」の家をピックアップし・・・
表札に「愛木」とある大きな家の前に置くことに決めた
瓶に入れ「拾ってください」と書いて放置すれば完璧だ
近くの看板の陰に隠れて数十分後、
一人の少女が通りかかり、瓶を持って屋敷の門をくぐった
虐島は小さくガッツポーズをした
しかし、彼にとって誤算が生じた
狙った家があまりにも大きすぎたのである
昼は黒服の男たちが警備し、夜は獰猛な番犬が敷地をうろついている
さらに悪い事に、彼が置いたミニイカ娘を狙って敷地へ侵入し
警備に袋叩きにされて肉塊になる虐厨が後を絶たなかった
彼等の中には虐島も所属する虐待愛好会メンバーもおり・・・
「絶対に人様に迷惑をかけるな、守れないなら出て行ってもらう!」という厳しい命令が
上から出されることになった
ただでさえ日頃、虐待厨や自称虐待派による迷惑行為が多発しているのだが
虐島は・・・否、虐島を含む「行儀のいい虐待派」は気にもしなかった
彼等にとっては「アイゴ」は無力で文句を言うだけの存在だった
暴力に訴えない以上、怖くはない
最悪訴えられても組織が守ってくれると過信していた
事実、虐待関連の訴訟は虐待愛好会が出て被告を庇う弁護をすることは少なくなかった
虐待愛好会は組織を守るためにやったことだが・・・
虐島らすら知らぬ間に、虐待愛好会への不満は人々の間で積もりつつあった
138
:
上げて落っこちて 2/6 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/02/06(火) 00:27:34 ID:v3uX7dRo0
卵を置いて1年後、少女がミニイカ娘を連れて外へ出た
その格好から、どうやら友人との待ち合わせにでも行くようだ
これが数少ないチャンス・・・そう思った虐島は
大胆な行動に出た
「そいつは俺のだ!!!」
少女を後ろから殴り倒し、ミニイカ娘を強奪したのだ
「やめ・・・返して・・・」
必死に虐島の足を掴む少女を
虐島は嗜虐的な笑みを受けベてその顔を蹴飛ばした
血の海に沈む少女を背に、高笑いしながら虐島は走り去った
その後の3時間、虐島は幸せだった
苦痛を苦労を知らないミニイカ娘を痛めつけるのは
彼にこの上ない至福をもたらした
もちろん、少女の家への電話も忘れない
身代金目当てである
最初は5万だったそれは、3時間で20万に膨らんだ
誘拐から6時間後
「ひゃははははははwww」
指定した場所へ「箱」を置き、代わりに置いてあった金をふんだくって
虐島はアジトへ帰還した
「箱」の中身はミニイカ娘の死骸と、虐待の様子を撮ったDVDが入っている
飼い主だった少女と「アイゴ」どもへのメッセージ付きだ
「これだからやめられねぇ!!」
139
:
上げて落っこちて 3/6 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/02/06(火) 00:30:22 ID:v3uX7dRo0
翌日、早朝に虐島は愛好会からの会合を知らせる緊急連絡を受け取った
「おっはようございま〜す!」
虐島は虐待組織の会合の場に顔を出した
が・・・明るいあいさつで消えぬほど
その場は重く沈んでいた
「・・・全員揃ったな・・・始めるぞ」
「どうかしたんすか?」
虐島はこの空気の理由を問いかけた
幹部の一人が口を開く
「愛来ファイナンスって知っているな?」
虐島はもちろん知っていた、否、この地に住む者でそれを知らぬものはない
「愛来ファイナンス」、それは合法非合法を含めた巨大金融企業だ
先代会長が一代で築き上げ、今はその娘が会長を務めているという
「融資の話でも来たんすか?」
「ちがう、我々の中の誰かが・・・愛来の顔に泥を塗った」
「は?」
「先代の孫・・・現会長の娘を傷つけた上に飼っていたミニイカ娘を殺害したんだと
無事に返すと約束して身代金を20万ふんだくった上で、だ・・・」
「奴らはカンカンだ、すぐに犯人を差し出さなければ総攻撃を行うと言ってきた・・・」
虐島は幹部たちの情報に・・・自分の記憶の情報との合致を感じた
「あの〜・・・会長の名前って・・・?」
「ああ、愛木美奈子って名前だったなたしか、旦那は婿養子だから苗字は替えてないはずだ」
「あの目立つでかい家、あそこに住んでるんだよ・・・ったく誰だ喧嘩売ったバカは?
あんなでかい屋敷ならだれが住んでるかすぐ分かるだろう」
虐島は蒼くなった、そして自分がしでかしたことを悟った
彼がミニイカ娘を置いた家、それこそが会長の家だったのだ
ミニイカ娘と一緒にいた飼い主の少女
それは会長の娘であり先代の孫である
その少女に、自分は・・・・・・・
140
:
上げて落っこちて 4/6 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/02/06(火) 00:32:39 ID:v3uX7dRo0
虐島は幹部たちが話し込む隙に、そっと外へつながっている窓へ近づいた
このままでは自分の首が差し出されるのは目に見えていた
疑われるリスクを冒してでも逃げるべきだと考えたのだ
「おい!なにをしている!?」
虐島はビクリとして止まった
しかしそれは、虐島への言葉ではなかった
虐島が出ようとしている窓とは別の窓、そこへ何者かが鈍器を叩きつけていた
ガシャン!!
窓が割れて手が突っ込まれ、鍵が開けられる
「動くな!!」
蹴り破られたドアからも黒服の男たちが現れた
「どういうことだ!!約束はまだ・・・」
「お前らの事を信用する奴がいると思うか? どうせ逃げる準備をしていたんだろう!?」
黒服たちと愛好会メンバーとの間に口論が始まった
「虐待」への不信感は、愛好会が知らぬ間にものすごく膨らんでいたのだ
それが「愛来ファイナンス」側の強硬手段へとつながった、そして・・・
「うるせぇ!!俺たちがやった証拠もねぇ!!」
「そうだそうだ!!たかがミニイカ一匹とアイゴ一匹!殴られたくらいで大げさなんだよ!!」
メンバーの中の虐厨寄りの者が言い放った一言
愛好会は敢えて黙認していた、それ
しかし、この場においてはそれは・・・彼ら自身への死刑宣告に他ならなかった
「やれ!!」
リーダーの黒服の号令と共に、黒服全員が懐からナイフを取り出した
「一人も生かすな!」
「冗談はやめ・・・」
冗談ではなかった、黒服たちは手近のメンバーを次々と屠る
愛好会は知らなかった、すでに不満は許容範囲を超えていたという事に
「うわぁ!!?」
「愛来ファイナンス」がここまですると思っていなかった虐島は・・・
足元の消火器を思わず蹴飛ばした
偶然それは破裂し、室内に煙幕が焚かれる
その混乱の中、虐島は逃げ出した
141
:
上げて落っこちて 5/6 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/02/06(火) 00:35:59 ID:v3uX7dRo0
虐島はアジトへ戻って着替えをし、貴重品と衣服をトランクへ詰めた
この町にはもういられない
彼は少女に顔を見られているのだ
遠からず彼の事は指名手配されるだろう
「愛来ファイナンス」の根が張り巡らされているこの国で生きていくことはもうできない
彼は海外へ逃げる決意をしていた
「動くな」
女性の声と共に後頭部に硬い何かを押し付けられ、虐島は止まった
両手を上げて無抵抗を示す
「へぇ、聞き分けいいわね・・・でも、遅いわ」
ちらりと後ろを見る
「愛来ファイナンス」の会長がそこにいた
ただ、テレビやポスターで見る普段の彼女と異なり
黒いボディスーツで彼女は身を固めていた
戦闘服の各所にはナイフや拳銃といった装備があちこちに見える
「自分ひとりだけ逃げるつもりだったんでしょ? バカ?
私の娘に手を出したあなたを逃がすと思った?」
会長はサブマシンガンを向けていた
「オレのことを・・・?」
「ええ、知ってるわよ。私の娘にミニイカ娘を渡して残酷なやり方で奪った憎い男だもの。
すぐに調べさせたわ・・・まさか顔も隠さず襲撃するとは驚いたけど」
「愛来ファイナンス」は愛好会に問うまでもなく、犯人は虐島と特定済みだったのだ
「じゃあ、なんで襲撃を・・・」
「あら? 害虫の巣を潰すのに理由が必要?」
さらりと会長は言ってのけた
「あなたの仲間とそのシンパが日常的にどれだけの被害を出してると思ってるの?
私の顧客にも、あなたたちにすべて奪われて借金する羽目になった人は少なく無い。
飼いへの手出しに加えて、自然破壊、保護区の破壊と保護生物の殺戮、詐欺、誘拐・・・
例を上げればきりがないし、その度に被害者がいれば謝罪どころか挑発して
それを愛好会が庇うんだから・・・いつかこうなるって思わなかったの?」
「わ・・・分かった!反省する!」
「あなたたちが約束を守ったことが一度でもあった?」
「服従する!あんた・・・あなた様へ忠誠を誓います!!」
「どうせ裏切る気でしょう?」
「誓約書にサインします! 全財産を・・・いえ、欲しいものはなんだって・・・」
「あらそう、じゃあ、聞いてもらおうかしら」
虐島は会長が銃口をどけたのを見て、思わず目を疑った
目の前にいるのは、この国でも1,2を争う富豪である
そんな彼女が欲しい物とは・・・?
「望みは・・・なんでしょう?」
好奇心から出たその言葉に、彼女は答えた
「ミニイカ娘よ」
虐島は拍子抜けした
「いやですね〜、そんな事で許されるなら100匹でも1000匹でも・・・」
「一匹でいいわよ」
会長は笑顔で続けた
「あなたがあの子・・・私の娘から奪ったミニちゃんの命、今すぐ返してくれれば許すわ」
「・・・・・・・・・・・・へ?」
虐島は笑顔のまま凍り付いた
よくよく見ると、会長の顔は・・・目が、笑っていない
「どうしたの? 何でも言う事聞いてくれるんでしょ? もう約束を破るの?」
銃口は再び虐島へ向けられた
そして弁解する前に、引き金は引かれた
142
:
上げて落っこちて 6/6 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/02/06(火) 00:47:42 ID:v3uX7dRo0
会長---愛木美奈子は反省した
目の前で炎を上げて燃える虐厨のアジトを見ながら
そもそも、家を留守がちにして子育てを使用人に任せきりにした自分の落ち度だと
彼女は思っていた
愛情に飢えた彼女の娘は家の前に置かれたミニカ娘の卵を拾い、育てはじめた
どうせいつもの無責任な飼い主だろうと思い、
ミニイカ娘の引き取り手を探そうとした彼女へ娘は
「この子は自分が育てる」と頑として譲らなかった
彼女を次期会長にするつもりの会長は、承諾した
娘に初めて反抗されて驚いたというのもあったが
組織の長には愛情と寛容さが必要である
冷徹・真面目だけでは部下はついてこないと、先代会長である父は言っていた
彼女もそれを納得していたが・・・
しかし立場上、娘と一緒にいる時間は多く無かった
会社が大きくなるにつれ、ただでさえ少ない時間はどんどん削れていった
「たまにはお母さんと一緒にいたいと愚痴られたよ」
苦笑交じりに父がボヤいていたことを思い出す
いつしか夫と共に隠居した父も子育てに参加していたが
母親である彼女自身はろくに会えずにいた
こんな自分を娘は愛しているだろうか?
そんな疑問がいつしか頭をもたげ、気づけば娘を避けていた
母子が疎遠になりつつあった時だった、あの事件が起きたのは
「お願い!!私はいいから!!ミニちゃんを!!あの子を・・・!!!!」
半狂乱になって泣きわめく娘を
仕事を部下に放り出して駆け付けた彼女はただ抱きしめる事しかできなかった
同時に、自分よりもミニイカ娘を思いやる娘の心に彼女は驚いた
娘の負った怪我も軽い物ではない、よりによって顔に負った傷である
なのに、この子は・・・
しかし、こういう事に慣れていなかった会長は逆探知を使いつつも
ただただ犯人の要求に従い・・・事件は最悪の結末を迎えた
さらに悪い事に、「箱」の発見者も最初に開けたのも、娘だった
幸いなのは、彼女はミニイカ娘の死骸を見た瞬間に気を失い
悪趣味な「動画」までは見ていないことだった
「いぎゃあああ!!あづい・・・あづい・・・!!」
炎の中から聞こえる苦悶の声を会長は冷めた表情で聞いていた
銃弾は虐島の手足を撃ち抜き、移動能力を奪ったのみだった
動けない彼の前で会長は用意していたガソリンを撒き・・・外へ出て火を付けた
虐島が長く苦しむよう、わざと彼の周りだけガソリンは撒いていなかったが
この火勢ならじき中毒か熱で死ぬだろう、それも苦しみながら・・・
「クズでも役に立つことはあるわね」
会長はつぶやいて踵を返した
後始末は部下にやらせる
自分にはそれよりも仕事よりも、もっと大事な事があった
明日から仕事を他人に任せてでも減らそう
できるだけあの子の傍にいてあげよう
母親としてできる事を、今までできなかったこと
逃げていたことをやろう、と彼女は決心していた
その日、一つの町から虐待組織は姿を消した
寝たばこによる失火で全滅
それが公式発表だ
しかしそれは、ほんの序章に過ぎない
国の全土でやがて、虐待組織への報復・反抗は相次ぎ始める
そして時がたち、会長が引退し・・・彼女の娘が新会長に就任した
かつて虐厨に付けられた顔の傷、それを旗印に活躍した
彼女は虐待組織を国から一掃した女傑として
歴史に名を残すことになる
(おわり)
143
:
むしのていこう 1/6 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/02/14(水) 02:21:05 ID:Dp6XUYqQ0
その村は、平和だった
近辺のゆっくりや のんたぬ、ミニイカ娘たちとはうまくやってたし
彼女たちも人々と争うよりも融和策をとっていた
畑の手伝いをすれば野菜を含む食べ物などを報酬としてもらえたから
盗む必要もない
愛護団体や愛護組織も村を支援した
人に役立つ能力を持った生き物を村のために無償で貸したりもしていた
ただ、村長たち一部の者らは金をもっと欲しがっていた
そんなある日・・・背広の男が村へとやってきた
「私はこういうものです」
男は村長へ名刺を差し出した
【被虐生物加工組合組員 虐街好夫 】
男は村長にこの村の近辺に加工施設を建てる計画を話し始めた
勿論ただではない、村に土地代や利益を含む大金を分け前として支払う条件付きだ
「オレは反対だ!!」
加工組合の男が帰ったその日の会合で村長が加工施設の話を切り出した時
先祖代々、周辺の生き物たちと接触し仲を取り持つ役についていた男
相太は反対した
彼は生き物たちを「被虐生物」などと名付け卑下すること自体、我慢できなかった
出向いた先で虐厨の狼藉やそれに泣かされる人々を見てきた経験もあった
議論は1か月続いた、その間に村長たちは反対派を切り崩した
金を与え待遇を良くし、時には脅して手を引かせた
やがて相太は孤立したがそれでも主張は変えなかった
村長一派のやり方に我慢がならないというのもあったが
先祖代々の役目に誇りも持っていたし、村人たちもまだ迷っているはずだとそう思ったからだ
「それに、加工施設から出る死臭をあいつらは嫌がると聞く・・・
そうなったら、あいつらはこの村の周囲からいなくなるぞ」
「それは困るな・・・」
144
:
むしのていこう 2/6 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/02/14(水) 02:24:04 ID:Dp6XUYqQ0
次の瞬間出た言葉に、相太は面食らった
「加工すべき被虐生物がいないんじゃ、施設を作っても意味ねぇ」
「いなくなる前に、みんな捕まえちまえばいいんじゃね?」
「そうだな!そうするべ!」
「何を言ってんだお前ら!!?」
相太は悲鳴に近い声を上げた
「今まで世話してきただけじゃない!世話にもなっただろう!?
畑の害虫や雑草は!? 村の食糧庫の警備は!? 山から薬草や山菜を持ってきてくれたのは誰だ!?」
しかし、相太の必死の訴えを彼らは冷めた目で見ていた
「山菜は、あいつらがいなくなった後ならいくらでも採れるべ」
「だな、むしろあいつらがいるせいで山に入れねぇんだ」
「けど協定はどうする?」
「こっそりあいつらの巣に芋でも乾物でも放り込んどけ、そいつに口付けたらそれで終わりだ」
相太はそれを言い放った村人へ掴みかかった
「てめぇ!!それでも人間か!!金に魂売って魔物になり下がったか!!」
周囲の村人は相太を取り押さえにかかった
「村長!!あんただけは人の心を失わないでくれ!!あいつらは・・・」
「やかましい!!」
必死に訴える相太に対し、村長はその顔を杖で殴りつけた
「あんな動物どもがどうなろうと知るか!ワシは村長じゃ!村の発展こそ第一なんじゃ!
何故それが分からん!?」
相太は周囲を見た
誰もが相太をうっとうしげに眺めていた
相太は首を横に振った
「もういい勝手にしろ・・・オレは村を出る、それでいいだろ」
吐き捨てるように相太は言った
「何するか分からんからしばらく家の中にいろ、用が済んだら出してやる」
相太はその村長の言葉にうなだれ無力感に襲われた
村を追放されてでもゆっくりたちに危機を伝えるつもりだったのだ
しかしそれを見透かされ、もう打つ手はない
万事休す
145
:
むしのていこう 3/6 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/02/14(水) 02:26:28 ID:Dp6XUYqQ0
その3日後、村人の一人が言い放った策は実行され「協定」は破棄された
協定を結んでいたゆっくりやのんたぬはもちろん、ただそこに住んでいただけ
たまたま近くに来ただけの「被虐生物」も狩り尽くされた
加工施設が建つ話が会合で決定して6日後、相太は拘禁から解放されてすぐ村を去っていった
厄介者となった彼を引き留める者は誰もいなかった、同情も罪悪感すらない
やがて村には加工施設が建った
それまで村に協力してきた愛護団体や組織には寝耳に水だった
村長は彼らから借りていた「被虐生物」のうち、希少種をペット部門へ
その他を加工に回した
返却を求める声には二束三文の金を示し
それでも食い下がる者には金で雇った虐厨をけしかけて黙らせた
村は愛護派共有のブラックリストの
最も危険かつ信用できない輩を分類する「第一項目」へ分類されたが
村長と村人たちはどこ吹く風だった
村にはそれまでとは比較にならない金が舞い込むようになり
村人の羽振りも良くなった
しかし、生態系の重要地位を占めていた生物の突然の損失と
守護者がいなくなったことによる村人たちの無計画な乱獲
そして加工施設の企業による搾取は村の周囲の自然環境をめちゃくちゃにしていった
そんなある日、爆音を上げながら車とバイクの群れが村に向かって走っていた
物見台からそれを見た村人は慌てて村長に報告に走った
「そ、村長大変だ・・・!”殺し屋”どもがここに向かってる!!」
「なんじゃと・・・?」
「殺し屋」とは、通称である
正式名称は「アラシ」
この国に巣食う強大な武装勢力であり、国家権力ですら彼等を対処できない
当然、村に彼らを迎撃する術など無い
たとえ先発隊である彼らを迎撃したとしても、
その後に続く攻撃部隊本隊に波状攻撃されて滅ぼされるのが落ちである
村長は無抵抗を示して彼らと話し合う事に決めた
「あんたが村長か?」
アラシ代表のサングラス男は、村の入り口に出てきた村長へそう切り出した
「は、はい・・・なんでしょうか?」
「どういう理由で我々の港町支部へ攻め込んだ?」
「は?」
寝耳に水である
そもそも組織の支部の場所など村長は知らない
たしかに港町はここから近い所にあるが
知っていたとしても、わざわざ竜の尾を踏みに行くほど愚かでもない
「それは、何かの間違いでは・・・」
精いっぱいの媚びへつらいの笑みを浮かべ下手に出る村長へ
サングラスの男は背後の手下に「あいつを連れて来い!」と指示した
手下たちは麻袋を頭に被せられ、荒縄で縛られた男を持ってくる
そして両者の間に転がし、麻袋を外した
146
:
むしのていこう 4/6 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/02/14(水) 02:29:21 ID:Dp6XUYqQ0
「!?お、おまえは・・・!!」
「へへ・・・久しいですね村長さん!」
麻袋の男は、相太だった
理想と正義に萌えていたあの若者はしかし、薄汚れた衣服を身にまとい
下卑た表情を浮かべて村長を見ていた
「・・・やはり知り合いか」
「ま、待ってください!こいつはとっくに村を出てった奴で・・・」
「そうですぜ、”アラシの支部を襲ってクスリと金品を奪え、
足がつかぬようにあらかじめ引っ越しておけ”と言われまして
村長、俺は指示した通りやりましたけど・・・ドジ踏んじまいまして・・・」
村長はその言葉に青くなった、そんなことを言った覚えなど無い
否、たとえどれほど酒に酔ったとしてもそんな指示は出さないだろう
対して相太は村長が見たこともない媚びへつらいの笑みを浮かべている
「黙れ!!・・・代表さん、こいつの言う事は嘘でたらめですじゃ!」
「そりゃないですぜ村長!!オレに分け前くれるって言うから乗ってやったのに!!」
村長は相太が理解できなかった
どうして今頃になってのこのこ戻ってきたのか、なぜアラシの金に手を出したのか
そして、何故出て行った村に庇護を求めた上に災害に等しい連中を連れて来たのか・・・
代表は双方を見て黙っている、手下たちも経緯を見守っていた
「相太!!貴様は追放された身じゃ!!ワシらを巻き込むな!!」
「そんなぁ!オレを最初から見捨てるつもりで計画したんですか村長!!ひでぇじいさんだ!!」
村長が無関係を主張しても、相太は「村長たちの指示でアラシの支部を襲った」などという
村長には身に覚えのない事を頑なに主張して譲らない
「もういい」
口論を黙ってみていた代表は口を開いた
「村長、あんた本当に醜悪だ・・・俺たちだって荒事もやって来たし汚い手も使ってきたが・・・
仲間を捨て駒にするような真似は俺らの間ですらも論外だぜ?」
村長は絶望の表情で代表を見た、周囲の手下たちを見た
誰もがあきれ顔で村長を見ている
「ま、待って下され代表さん!ワシらが嘘ついてると言われるのですか!?」
「あんたらこの前、加工施設を建てたな?」
代表は呆れ顔でそう切り出した
「そ、それが何か?」
代表はため息をついて、続けた
「施設を営業してる企業の口車に乗って大金と引き換えに方針転換したんだって?」
「は、はい、ですがそれは村の発展を想って・・・」
「それまで手を組んできた愛護団体や組織を虐待派に売り、共生関係だった周辺の生物を閻魔に売ってか?
しかも団体から借りてた生き物まで加工したって話じゃねぇか・・・」
これでも信用しろと? そう言いたげに代表は肩をすくめた
「そ、それは・・・・・・」
村長は相太を見た
「オレじゃねぇっすよ」
相太もこの話は想定外だったのか、目を丸くしていた・・・嘘をついてる様子はない
「そうだ、こいつから聞いた話しじゃない・・・オレたちは暴力組織だが暴徒じゃねぇ
事前に情報を集めて判断する頭くらいあるさ」
話は終わった、とばかりに代表は右手を掲げた
村長は周りを見た、バイクと車と武装した男たちは移動を開始した
村はバイクと車と武装した男たちに囲まれ、逃げ場など無い
「誤解ですじゃ・・・後生じゃ、やめてくれ・・・」
代表は首を横に振った
「お前らは信用に値しないんだよ!・・・やれ!!」
代表は右手を振り下ろした、武装集団は一斉に村へ突入した
147
:
むしのていこう 5/6 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/02/14(水) 02:31:53 ID:Dp6XUYqQ0
3時間後、村だった場所は死体と燃えカスと化した家屋だったものが立ち並ぶ廃村になっていた
村人は全滅した
単なる雇われだった加工施設の外部の職員はアラシに刃向かわない事を条件に村の外へ出された
その後、加工施設は爆破され瓦礫の山と化した
ここに村があった痕跡こそあれど、もう再建は不可能だろう
刃向かった奴は徹底的に潰す、それがアラシの基本方針であり彼らが恐れられる理由だった
村長は生きていた、いや殺されなかった
「てめぇの愚行で終わりを迎える村の最期を見届けろ」
代表は相太の隣に村長を縛って並べ、破壊と殺戮を見せつけた
「さて、片付けも終わったし、あとはてめぇらの始末だけだ・・・言い残す事はあるか?」
「相太・・・貴様のせいで・・・!」
目の前で孫まで殺された村長は相太を睨みつけた、相太は・・・さわやかな笑顔を浮かべ叫んだ
「今行くぜお前たち!待たせたな!」ガリ!
相太は奥歯を噛みしめた
何かをかみつぶす音、その後で突然相太は口から血を吐いて倒れた
「!?どうした!?」
代表が初めて驚愕の表情を浮かべた
手下の一人が相太に駆け寄り、調べる
「・・・代表、こいつ毒を奥歯に仕込んでいたようです・・・
妙ですね、そんなものあるならなんで今頃になって・・・?」
満足な笑みを浮かべ事切れた相太を前に、手下は首を傾げた
それもそのはず、奥歯に毒を仕込む奴は捕まったその時に自決するのが目的で仕込むのだ
散々命乞いした挙句にあらかた終わった今頃になって死ぬなど、訳が分からない
「く・・・ははははははははは!!!」
手下の報告を聞いた代表は、突然大笑いを始めた
「だ、代表?」
「やられた!!俺たち全員!!こいつにやられたんだよ!!」
ひとしきり笑い、代表は満足げな笑みを浮かべた
「大した男だぜ!愛した生き物たちの仇討ちのためにここまでやったんだ!
自分に力がない、だから刃向かえる力を持つ奴を巻き込んだんだ
自分の命を最初から捨てるつもりでな・・・!」
その言葉に、村長は晴れやかな笑みを浮かべた
「な、ならワシの無実は証明されたんで?」
「ああ、もう用はない」
「ならこれをほどいてくだされ!」
「その必要もねぇ、あんたはこのまま海に捨てる」
「は・・・?」
村長は信じられないという顔で代表を見た
「こいつは命を代償に俺たちへ依頼したんだ・・・命を捨てて筋を通し
命と言う対価を支払った以上、俺たちはその依頼を遂行しなくちゃならん
それが”プロ”だ!」
148
:
むしのていこう 6/6 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/02/14(水) 02:34:44 ID:Dp6XUYqQ0
村長は散々泣きわめきながら海中へ沈んだ
あらかじめ撒いておいた魚の血肉は、サメを呼び寄せるだろう
村長の体は文字通り胃袋に収まって消滅するのだ
その時、村長が生きているか死んでいるかは彼の運次第だし
代表にはもうどうでもよかった
「よしお前ら!!男気ある依頼人をこのまま野ざらしにするな!
アラシの誇りにかけて葬儀を行うぞ!!」
村長が沈んだことを確認した代表は、手下たちへ命令した
全てを見届けた依頼人が自決するのは、彼らにとっては珍しいことではない
彼等に依頼に来るその時点で、依頼人は全てを失っているのだ
代表の亡き姉もまた、その一人だった
自分の生命保険と全財産、そして体と弟である彼を組織に売って彼女は死んだ
弟を道具扱いしたわけではない
虐厨に命を狙われ生きるよりも
暴力組織の構成員になった方がまだ生き延びる確率が高いと判断したためだ
弟である彼も幼いながらにそれを理解していた、だから組織の奴隷になる事を承諾した
そして組織の力で両親の会社と両親を亡き者にした虐厨が滅び、全てを見届けた時
彼は姉の頼みで姉を手にかけた
自殺では保険は降りないからというのと、体をできるだけきれいなまま提供するため、
そして臓器をできるだけ組織に提供するためだ
しかし組織は金は受け取ったが姉の体は受け取らなかった
火葬して丁重に弔い、墓まで作った
「虐厨の暴挙で弟を守って殺された」という理由を警察に提供し
弟を「姉殺し」の罪から逃れさせた
弟である彼も下っ端とはいえ組織の構成員に加えられた
学校にも行かせてもらい、学費も組織が出した
疑問に思った彼はある日、それを教育係の幹部に口にした
幹部は微笑して言った「俺もお前と同じだった」
その一言で彼は悟った、この組織の構成員は
そのほとんどが社会から見捨てられ生きる場を失った者たちであることを
訓練は厳しかったが決して彼を使い捨ての道具にはせず、
高い水準の教育をしてくれたその理由を、彼は知った
山奥にある村人たちの菩提寺に事情を話して相太の墓を作り、
十分な永代供養の費用を支払って「アラシ」は引き上げた
「金目当てで支部を襲った武装した盗賊村一つの殲滅任務、完遂」
それが今日の報告である
「おじちゃんたち!」「どうした嬢ちゃん?」「おい、この子酷い怪我だ!」
「・・・みんなの仇を取って!!」
世界から「恨み」が消えない限り、彼らの仕事に終わりはない
(おわり)
149
:
愛寇 1/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/02/25(日) 18:59:29 ID:7bx291KQ0
「愛寇って知ってるか?」
「は?」
虐厨の虐太は、目の前の仲間に突如切り出されて反応に困った
この町は「愛護派」の排除に成功した町の一つ
レッテル貼りをはじめとしたネガキャンや住民の買収などの数々の手を使い
今や「飼い」を殺しても被害者は泣き寝入りするしかないという町だ
すでに「愛護狩り」も横行しているが、「虐待許可証」に守られた彼らは
殺人を犯したとしても法の裁きを受ける事はなく、
逆に殺された被害者の遺族は「愛護禁止条例違反」により厳しい罰が課された
しかし、いつの頃からか「愛寇」という襲撃事件のウワサがささやかれていた
それは、愛護派のなれの果てと言う
それは、うるさい音を鳴らしながら意味不明の念仏を唱え行進する集団だという
そして・・・ソレの情報は恐ろしく少ない
「眉唾だな、誰もそれ見たことないんだろ?」
そう、目撃者が虐待派や虐厨の間にないのだ
非虐待派やその他の住民の間でのみそれは囁かれていた
だから、単なるアイゴの苦し紛れの威嚇だろうと思われていた
愛護派は無力て弱気で怒らせても何の反撃もしないというのが、彼らの常識だったし
実際に愛護派からの反撃事例は少ない
「愛護禁止条例」制定後はその数も極端に減った
「どうせゴミクズアイゴどもの醜聞だろw無力なカカシの分際でwww」
「そうだなwww」
ギャハハハハハ!とひとしきり笑った後、彼らは
「愛護派」の縄張りに赴き、公園で遊んでいた飼いゆっくりや飼いゴマら
そしてその飼い主の子供たちで「遊んだ」
目の前で我が子と家族を惨殺された「アイゴ」を散々罵倒した後で
一人ずつ始末し、彼らは保健所へ連絡を入れて帰った
この非道な行いまでも「是」とされる、これが「虐待許可証」と「条例」の力なのだ!
150
:
愛寇 2/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/02/25(日) 19:06:26 ID:7bx291KQ0
その日の夜、虐太は「音」で目を覚ました
「なんだ・・・?」
ジャンジャンジャンジャンジャンジャン!!
ドンドンドンドン!!
シャンシャンシャンシャン!!
真夜中だというのに、通りに面した窓の外からそれは聞こえた
虐太はカーテンを開けて外を見た
人々が行進をしていた
シンバルや太鼓・・・ドラム缶に鍋蓋にバケツといった
各々がバラバラの得物を叩いて音を出していた
全員私服、年齢もばらばらで誰もが無表情のまま行進をしている
やかましいぞ!と怒鳴る前に彼らの前に虐厨の一人が飛び出した
「うっせー!!今何時だと思ってんだ!・・・あん、お前らよく見たらアイゴじゃねぇか!!
一体どこの・・・・・・・・・は・・・う、うそだろ・・・?」
その虐厨は、相手の顔を見た途端、青くなって後ずさった
一方、それまで騒音を出していた人々は・・・
虐厨を見た直後に黙し・・・
無表情の仮面を剥ぎ、狂喜の笑みを浮かべる
「打楽器」を地に落とし、代わりにナイフや包丁や棍棒、ハンマーといった
各々がバラバラの、しかし明らかに相手を殺傷する事が目的の凶器を出す
そして、殺戮は始まった
まず目の前の虐厨へ彼らは飛びかかった
チームワークなどない、思い思いのやり方で考えで彼らはそいつを肉片に変えた
それだけでは終わらない
どうやって察知するのか、彼らは虐待派や虐厨の家のドアを叩き、叩き壊し
あるいは窓を破壊して中へ侵入する
中がどうなったかは、時折聞こえる断末魔や窓に飛び散る血しぶきが物語っていた
151
:
愛寇 3/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/02/25(日) 19:33:05 ID:7bx291KQ0
どん!どん!!
「まずい!!」
虐太の家のドアや雨戸が激しい音を立て始めた
奴らがこちらへ狙いをつけたのだ!!
虐太は慌てて窓の外へ飛び出し、屋根へよじ登った
ガシャン!!バタン!!
同時に窓が破壊される音、ドアが破られる音が響く
家の中に破壊音が響く中、虐太は悟った
今まで「愛寇」に出会った虐厨からの報告がないのではない
「愛寇」に出会ったら殺されるから情報の報告や収集のしようがないのだという事を
「おかしいな・・・留守か?」「いや、確かにこの家の窓についさっきまであいつはいた」
その声を虐太は思い出す・・・散歩中の所を蹴り殺したゆっくりたちの飼い主だと
裁判の結果、「ゆっくりを散歩させる愛護が悪い」となり被告人から逆転で損害賠償を得た
その記憶は新しい
「金はくれてやる!!代わりにこの恨み必ず晴らす!!」
飼い主たちのその叫びを心地よく聞きながら帰った日を虐太は思い出していた
そして後日、新聞で・・・・・・・・・
「・・・あれ?」
おかしい、記憶と現実に辻褄が合わない
あいつらは、たしかに・・・・・・
思考するうちにやがて破壊音は止まり、家から出ていく足音が聞こえた
虐太は屋根の上でほっと安堵した
同時に逆恨みに等しい怒りが沸き起こる
たかがアイゴの分際で虐厨様を脅かすなどあってはならないと
「記憶と現実の齟齬」など消えていた
明日になったら弁護士に電話して・・・
そう考えていた時だった、焦げ臭いにおいがしたのは
「なんだ・・・?」
みるみる、黒い煙が立ちのぼり始める
他の家からではない、虐太の足元、つまり虐太の家が燃えているのだ!
他の家の屋根に移ろうとした次の瞬間、炎は屋根を突き破って虐太の周囲を囲んだ
虐太は運を天に任せて屋根から飛び降りた
こういう時のため虐太は、自宅に低木を植えていた
低木のクッションは機能し、虐太は落下の衝撃に顔をしかめながらも命の無事を確信した
「・・・へ?」
その虐太は、3人の人影に囲まれていた
誰もが各々バラバラの凶器を持ち、歓喜の笑みを浮かべている
目の前にいるのは、飼いゴマ諸共池に沈めてやった少女
その右隣は、孫とそのペットを目の前で失い心臓発作で死んだはずの老婆
左隣は・・・あの事件の飼い主の一人で
虐太に報復を宣言した翌日、別の虐厨に車で轢き殺されたじいさん
そう、虐太の記憶では彼ら彼女らはとっくに死んでるはずなのだ
なら、目の前にいるのは?
その疑問が頭を巡る中、ぞくぞくと人影が虐太の周囲に集まり始める
「なんだよ・・・お前ら、死んだはずじゃ・・・」
その言葉に彼ら彼女らは顔を見合わせ・・・ニタリと笑った
「ウラミハラサデシヌモノカ」「ジョウブツナドデキルモノカ」「コロス、コロシツヅケル、ネダヤシニシテヤル」
そして・・・・・・
152
:
愛寇 4/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/02/25(日) 19:40:45 ID:7bx291KQ0
翌朝、警察は静まり返った町の一角へたどり着いた
死の街だった
どこも家屋はドアや窓が破壊され、あるいは焼かれていた
中には血の跡しかない
しかし、襲撃者たちの姿は影も形もなく指紋などの証拠すら無かった
死体も残っていなかった
監視カメラを仕掛けていた家もあったが・・・
何故かその時間帯はノイズだらけでとても見られる映像ではなかったが
残された血痕とその出血量から、被害者は生きているとは到底思えず
殺人事件として捜査本部が設けられた
しかし・・・わずか3日で捜査本部は畳まれた
ひそかに呼ばれた霊媒師が発作を起こしたり
高名な神主ですら匙を投げたからだと噂されているが定かではない
「おみやさんファイル」
不可思議な出来事や超常現象を記録するファイルに「また」一つ収録案件が増え
事件は「また」終わった
「あの愛護の顔見たかwwwぎゃはははははwww」
「ああ・・・ところで、愛寇って知ってるか?」
今日もまたどこかで彼らは噂される
しかし、その実態を知る者はいない
(おわり)
153
:
環境への適応と種の進化 1/8 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/03/19(月) 03:43:01 ID:DXIOX2960
「やめてくれぇぇぇ!!!」「住み分けしろ!!」
「うっせぇアイゴw」
かつて、「ゆっくり」というキャラクターが産声を上げた
「実装石の時の愚行を忘れたか!!また繰り返す気か!!」
「そんなこと言ってたら二次創作なんてできませんwwwギャハハハハwww」
しかし、それは半年たらずであらゆる場所から姿を消すことになる
理由は、「虐待ジャンル」に目を付けられたことだった
当初こそ「実装の二の舞はしない」と頭を下げて同居を希望したり
その存在を黙認するよう説得して回っていた彼らはしかし
定着するとその時の約束はすっかり忘れられた
違反者が出ても「無関係」の一点張りで追い払い
同居先のスレやサイトは虐待一色に染まった
「ゆっくり」は「実装石」同様の「荒らし御用達」「被虐キャラ」のレッテルを貼られ
あちこちで追われることになる
これは、虐厨たちに自分たちの無敵を認識させるに十分すぎる戦果だった
彼らは次々と新しい場所が生まれる度に攻め込み、蹂躙した
ルールがあろうと関係ない
自分たちこそ正義であり優良種であり絶対存在であるのだ
愛護派と言う「異端」など恐るに足りない
「ペナルティ」も怖くない
瞬く間にそれは大火となって世界中を飲み込んでいった
現状を改変しようとする声は即座に叩き潰された
やがて、声を上げる者はいなくなった
そして・・・・・
「なぁ、どうして法律やルールを守らなきゃいけないんだ?」
「そりゃお前・・・法と秩序を守るためだろ」
「どうして法や秩序を守らなきゃいけないんだ?」
「それがないと無法地帯になるからだ、オレたちを守るものもなくなる」
「じゃあ聞くけど・・・法と秩序が守ってくれたことがあったか?」
「・・・・・・・・だな」
「最近、愛護派のやつらはまた増えてないか?」
ここは、虐待派のアジト
定期的に集会が行われ情報交換がされる場でもある
「また叩き潰せばいいだろ」
「そーそー、愛護が怒ったところでたかが知れてるし」
もはや「住み分け」を含むルールなど存在しない
誰もが自由にネタを持ち込み布教していた
拒む場は攻撃され潰された
そんなことが当たり前だった
誰も止めるものなどいないからだ
「よし!全員でやつらに目にもの見せてやれ!!」
154
:
環境への適応と種の進化 2/8 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/03/19(月) 03:48:00 ID:DXIOX2960
愛護派が何かしたわけではない
向こうから接触してくることは全くなくなっていた
しかし、「愛護派」は存在自体が罪なのだと
彼らは認識していた
虐厨の虐男もまたその一人だった、彼は若い虐厨だ
生まれた時すでにこの惨状は「当たり前の日常」であり
愛護派はしゃべるサンドバッグだと教えられた
先人たちの虐待厨英才教育の結果、彼は他人の飼いすら殺す一人前の虐厨に育った
「鬼威惨再び!!」
おりしもSNS上でゆっくり虐待の風が吹き始めていた
彼はターゲットをゆっくりに決めた
久しぶりの「狩り」に彼は心を躍らせた
虐男は公園に来た、他の仲間も一緒だ
下調べの通り、公園にはゆっくりを連れた飼い主や
公園に住むゆっくりと遊ぶ人々でにぎわっている
虐男たちはずかずかと公園の真ん中に歩いて行った
そして、手持ちの武器を掲げて叫んだ
「ひゃっは〜!!虐待だぁ!!」「はい、動くな」
声を上げた虐男はこめかみに冷たい金属を押し付けられて止まった
「両手を上げて、地面に這いつくばってね、変な事したらすぐ殺すからね」
金属を持った男に従い虐男は両手を上げて頭の後ろで組み、地面に伏せる
「ぎゃあああ!?」
従わなかった血の気の多い仲間の一人が、少女に石で頭を砕かれ倒れるのが見えた
「ああなりたくはないだろ? 大人しくしてりゃ命は保証するからね?」
「な、なんだよお前ら・・・」
虐男は周囲の惨劇を視界に収めながら、絞り出すように聞いた
「我々か? お前たちが言う所の”アイゴ”だよ」
「ばかな・・・これはお前らが嫌う暴力だぞ?」
「嫌う? なんの話だ?」
「へ?」
155
:
環境への適応と種の進化 3/8 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/03/19(月) 03:55:33 ID:DXIOX2960
気が付けば制圧は終わっていた
周囲にあるのは死体か無力化された虐待派や虐厨だけだ
しかもこれをやったのは・・・
会社帰りらしいOLに学生服の少女、スーツ姿のサラリーマン、買い物帰りの主婦・・・
みんな「どこにでもいる一般市民」だった
「ひょっとして、我々を先代と間違えてるのか?」
「先代・・・?」
虐男は「アイゴ」たちを見た・・・みんな若者ばかりだ
「そういえば先代が言ってたな、かつて非暴力平和主義をルールに掲げてたと・・・」
「そ、そうだ!それがお前らだろ!」
虐男の声に、全員が冷ややかな視線を送る
「だから、オレたちは先代じゃないって・・・」
「その非暴力主義の結果、オレのいた故郷は滅んだ」「あたしのタブンネは殺された」
「ミニイカ娘と暮らしてただけの俺は全てを失った・・・」
誰もが、受けてきた仕打ちの数々を恨みと共に吐き出した
「け、けどよ・・・ここってこういう事はルール違反じゃないか?」
自分がしたことを棚に上げて虐男は問いかけた
が、誰もがそれを一笑に付した
「じゃあ聞くが、ルールを守る目的はなんだ? 秩序か? 平和か? ペナルティが怖いからか?」
「その全部だな」
「けど、守ったところで守られなかった、秩序も平和も、俺たちさえも」
「破った奴らにはペナルティなんてなかったし」
「だったら、わざわざ守る必要なんざないよな? いや、そんなルールの存在自体が必要ない」
虐男は悟った
今まで愛護派にしてきた仕打ちの数々が彼らを変えてしまった事を
暴力もルール違反も、虐厨だけの専売特許では決してない
愛護派も自由に手にして振るう事ができる武装なのだ
ただ、今までの彼らは「虐厨と同じになりたくない」という嫌悪と
「ルールは守るべき」という彼らの持つ常識からそれをしなかっただけだ
しかしその常識も良識もルールすらも、虐厨たちは壊した
その結果が今、目の前に広がっている
156
:
環境への適応と種の進化 4/8 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/03/19(月) 03:57:29 ID:DXIOX2960
虐男はかつて、仲間の一人から長年活動していた愛護派を殺した時の事を聞いた事があった
「昔の事をねちねち持ち出してwwwきもかったwww」
愛護派だけではない
「愛護はルールを守るおりこうさん」という昔の常識にこだわっていたのは
虐男たち虐厨や虐待派も同様だったのだ
しかし愛護派は「変わった」
通じなくなった常識を、ルールを守るという良識を、役立たずのルールを捨てた
非暴力を捨て武力を身に着けた
虐待がはびこるこの環境変化に適応するために
これはこの公園だけの出来事ではなかった
別の公園で
「ひゃは」パンパンパン! 「害虫が視界に入るな!」
道端で
「潰れろy」グシャリ!! 「てめぇが潰れろ!」
河川敷で
「害獣に餌やるなクソアイg」ドブン!!バシャバシャバシャ・・・ビクンビクン・・・
「まりさとおちおち散歩もできねぇな、ったく・・・このゴミは一応埋めとくか」
あらゆる場所で虐待を行おうとした者たちが殺された
彼等は愛護派が武装して反撃を越えた攻撃をするなど
まして向こうから襲い掛かってくるなど微塵も予測していなかった
157
:
環境への適応と種の進化 5/8 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/03/19(月) 03:59:52 ID:DXIOX2960
「やめるんだお前たち」
「うるせぇ!!!」
暴行を止めに入ろうとした警察官は面食らった
今まで罵声を浴びせられたことは何度もある
しかしそれは、全て虐待派かその虐厨たちだった
今、彼に罵声を浴びせたのは・・・愛護派だった
「オレたちはあんたらの言うように法を守った!ルールも守った!マナーも守った!
なのに・・・結果はどうだ!? もう何年も状況は変わらない!
それどころか余計に悪化しちまってるじゃねぇか!!」
「し、しかし・・・これは・・・」
「・・・あんたらも、”あっち側”の存在なのか?」
反論しようとした警察官は相手に一言ではたと気づいた
その場にいる、虐厨を除く全員がこちらを見ていた
誰もが殺意と敵意・・・そしてやりきれなさをその目に宿していた
「・・・退くぞ」
一緒にいた先輩警察官は硬直した後輩の肩を叩き、一言つぶやいた
「で、ですが」
「もう俺たちの出る幕じゃないし、俺たちの力で止められる状態でもない」
無表情で先輩警察官は言った
渋々ながら従う後輩警察官は
「もっと早くなんとかしてれば、こんなことには・・・!」
小さいが、しかし力強い感情のこもった先輩の悔しそうな言葉を確かに聞いた
先輩警官の判断が正しかったことを、後輩警官は警察署へ戻って知る
「いてて・・・」
頭に包帯を巻いた同僚がそこにいた
なんでも、虐厨と愛護派の争いを止めようとしたら
愛護派に襲われたという
そちらがかかってくるとは全く思っていなかった彼は
命からがら逃げだすのが手いっぱいだった
「どうなってんだよ・・・なんで暴力なんか・・・」
「おい、襲ってきた愛護派の中に知ってるやつはいたか?」
「・・・あ、いえ・・・」
先輩からの問いかけに、彼はとっさに応えた
「誰もが見た顔ではないです・・・全員、10代から30代の若い連中ばかりでした」
「そうか、やはりな・・・」
先輩は「署長に話をしてくる」とだけ言い残し、その場を去っていった
158
:
環境への適応と種の進化 6/8 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/03/19(月) 04:03:42 ID:DXIOX2960
一方で解放された虐男たち生き残りは、即座に集合をかけてアジトに集まった
「アイゴのくせに生意気な!!」「やつらのアジトを襲おうぜ!!」
警察ですら手を焼く状態になってるとは露知らず、彼らはまだ戦闘を続けようとしていた
「だな、どうせまた愛護団体の本部とか作ってるだろ・・・場所は知らんが」
「調べりゃすぐわかるさ!」
しかし・・・・・1週間経っても「愛護派のアジト」は見つからなかった
むしろ勘違いして学校や企業に襲撃をかけた同胞が次々と討たれ被害は増えた
「は?」「だから!お前らのアジトはどこだよ!?」
業を煮やした虐男は、れいむを抱えて歩いていた少女を捕まえて詰問した
「あいごだんたいほんぶ? なにそれ? 今どきそんなものあるわけないじゃないの」
「いまどき?・・・・・まてよ・・・!?」
少女の言葉に、虐男は自分たちの勘違いに気づいた
「アジトをどこかに隠している」のではなく、「アジトそのものがない」のだとしたら?
元々ない物をいくら探しても見つかるわけがない
虐男は即座に虐待派アジトへ走って帰り報告した
「まて・・・じゃあ、あのアイゴどもは、たまたまあの場に居合わせただけと言う事か?」
「何のやりとりもしないで、ごく当たり前のように暴力をふるったのか?」
「おいおいおいまてよ・・・そんな事、聞いたこともないぞ?」
ピロリン!
幹部の携帯にメールが届く、警察からだ
いつも問題を起こすため、彼は警察から情報のラインを渡されていた
そしてバカが何かするたびに身柄の引き取りや叱責を受けるハメになる
今度はどこのバカがやらかしたのか、うんざりとした気持ちでその内容を見た幹部は・・・
目を見開いた
「し、新世代・・・だと!!」
メールの内容は、今起きている状況の分析だった
今、虐待派に牙を剥いている愛護派は、今までの世代とは違う「新世代の愛護派」であり、
虐待派や虐厨による暴力が横行している状況下で育ってきた者たちだと
ルールを守っていた愛護派が敗北していく様子を目にしながら育った彼等にとって
暴力はこれまでの愛護派が忌避してきた禁忌でなく、「より有効な優れた手段」の一つにすぎない
暴力が当たり前の日常である彼らには、襲われても反撃しない事は「バカバカしい事」であった
そしてそれを、非暴力平和主義が謳われたこの長い間に事態は好転せず
より悪化しているという現実が裏付けていた
「・・・お前ら、講和の用意をしろ」
幹部のメールを見た支部長はそう告げた
「そんな・・・愛護どもに屈するのですか!?」
「あいつらは今まで俺たちが相手してきた愛護どもでも
まして時々現れるババァみたいな愛誤でもねぇ、
全く別の、いまの環境に適応した連中だ・・・!」
その時だった
ドアがノックされ、「お届け物です〜」という声が続いた
「お、誰かの荷物か?」
虐待派の一人がドアのカギに手をかける
次の瞬間、ドアが勢いよく蹴り破られ、応対しようとした虐待派の男は吹っ飛んだ
「こんにちは〜!虐待派と虐厨の皆さんの巣で間違いないですね?」
そこにいたのは、手に各々が得意とする得物を持った人々だった
「な、何だお前ら!?」
「何って・・・お前らを始末しに来たに決まってるだろうが」
さらりと先頭のサラリーマンは言ってのけた
虐男はここで、己の迂闊さを悟った
あの時、虐男は少女に背を向け走り出した
彼女が尾行してるなど、全く気づかないまま
結果、彼は自分たちのアジトを逆に愛護派に知らせてしまう事になったのだ
さらに、「アイゴは積極的に攻撃してこない」という先入観もまた油断に拍車をかけた
愛護派が「変わった」事をすっかり失念していたのだ
支部長が「話し合おう」と声をかけるのと同時に、彼らは飛び込んだ
159
:
環境への適応と種の進化 7/8 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/03/19(月) 04:07:21 ID:DXIOX2960
「ち、ちくしょう・・・!!!」
殺戮の場と化した支部から命からがら虐男は逃げ出すことに成功していた
しかし、行く先々で凶器を持った愛護派に出くわし追い回された
どうしてこんなことになったのか・・・
それが自分たちが長い事続けてきた無法の結果だとは信じたくない
しかし、現実はこれだ
何年も十何年も事が続けば、それは一種の「環境」として定着する
そして生物は常に環境変化に適応して進化をしてきた
環境変化に適応したものは生き残り、適応できなかった種は姿を消した
それが今なのだ!
今の環境に適応し暴力をも是とする「新しい愛護派」
今の環境に適応できず消えたのは、虐厨たちが消し去ったのは
非暴力と平和を訴えてきた従来の愛護派だった
そうとは知らず「新しい愛護派」に対して今までと同じ対応をしようとしたのは
大きな間違いだった
彼等、虐待派は虐厨は「無毒の蛇」に慣れ過ぎた
「毒蛇」がいるなど考えもせず、それに出会った時の対処法も噛まれた時の応急処置すら考えてなかった
そのツケはあまりにも大きかった
そして、今更それを立て直すには遅すぎた
「知らん!」
元々愛護派で平和主義非戦主義を貫いていた人間の家の戸を虐男は叩いた
年老いてなお屈強な男である彼の説得なら、虐厨との戦闘経験者なら
説得できるだろうと考えてのことだった
が、事情を説明して返って来たのはこれである
「あいつらを止める事はもうできん!諦めて帰れ!」
にべもない
「このままだと、愛護の立場が悪くなるぞ?」
「ほう・・・どんなふうに?」
男の返しに虐男は返答に詰まった
「お前さん方が散々こき下ろして声を封殺可能なまでに評判下げて・・・
これ以上、どう悪化するのか聞きたいものだな?」
「まてよ愛護のじいさん!あんたしかあいつらを説得できねぇんだよ!」
「・・・ワシらの声など届かん、そうしたのは他ならぬお前らだろうが!」
男はピシャリと戸を閉め鍵をかけた
「いたぞ!!」「あの野郎!!爺さんを人質にする気か!!」「ぶっ殺す!!」
誤解から余計に殺気立った愛護派が虐男の前に現れた
虐男は逃げるしかなかった
その後も逃げながら、知っている愛護派や元愛護派を訪ねて回ったが
どこも門前払いだった
彼らの評判を醜聞で下げて人々に声を届かなくしたのは誰か?
そんな自分たちの声など今更届くはずもない
「この結末は、あんたらが望んだ事だろ? 責任とって受け入れたらどうだ?」
最後の一人に至ってはこんな捨て台詞を吐いて虐男を叩きだした
唯一愛護派の暴走を止められただろう先達の声
しかしそれはすでに虐厨たちによって無力化し、彼等もまた己の無力を受け入れたのだ
当初は嘲笑と優越感と共に喝采したこの結末が
今、洪水を止める水門を機能しなくした結果となって虐厨たちを襲っていた
160
:
環境への適応と種の進化 8/8 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/03/19(月) 04:13:50 ID:DXIOX2960
虐男はとうとう行き止まりに追い詰められた
必死で塀をよじ登ったがその先は民家である
そこにも愛護派がいたらどうしようもないが、背に腹は代えられない
虐男は塀を越えた
「それは大変でしたね〜」
民家には一人の女性がいた、彼女は一人暮らしだ
夫と子供に先立たれ、今は亡き両親の遺産で生活してるらしい
女性は虐男を見ると悟り、彼を匿った
「まぁ、ゆっくりしていってください」
女性が出したお茶を、喉が渇いていた虐男は一気に飲んだ
次の瞬間
焼けるような痛みが喉を襲い、体内から血を吐き出す
「・・・いい気味ね」
女性はそんな虐男を見下ろして呟いた
「苦しんで死ぬといいわ、あんたたちが殺した夫と娘、そして私の両親の分も」
虐待派も虐厨も、不特定多数の人間に恨みを買っていた
その数は把握しきれず、また頭の軽い末端の暴走で日に日に増えていた
だから・・・たまたま入った家が被害者宅など、珍しくもないのだ
一つの街から生じた火種
それは次々と伝播、伝染していき・・・
やがて国中を巻き込んだ大規模な内戦になる
争いは時間とともに鎮まっていったがしかし、
一度歪んだ「環境」は元に戻る事は無かった
(おわり)
161
:
イシイユの興亡 プロローグ 1/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/04/04(水) 03:21:49 ID:P8zlkMbc0
「もうやめて!タブちゃんが死んじゃう!!!」
「誰がやめるかwば〜かwww」
ここは、「イシイユ」
ポケモンが住む地方の一つ、しかし・・・
ここにもまた「タブンネ虐待」の嵐が吹き荒れていた
「この野郎!!」
「!?よせ!手を出せばお前も捕まるぞ!」
「ぐ・・・ちくしょう・・・畜生!!!!」
タブンネから貰える多くの経験値、それはいつしかタブンネを狩る大義名分となり
やがてタブンネをはじめとしたポケモンたちへ、「ミニイカ娘」「ゆっくり」「のんたぬ」ら
他の生命体へとその対象は広がっていった
当初は「住み分け」を主張し迷惑をかけないと誓った虐待派
しかしその誓いはいつしか「オレがした約束じゃないもんね」という発言で反故にされ
非虐待派が気づいた時には虐待派の数は当初の倍以上に膨らんでいた
彼等は「人権」を盾に暴れまわった
かつてポケモン保護を名目にイッシュ地方で異変を起こした「プラズマ団」の存在もそれに拍車をかけた
「愛護はみんな悪党だ!だから退治してもいい!」
こんな事が平然と叫ばれるようになり・・・
保護区であろうと人のポケモンであろうと、経験値目当てですらなくただ甚振り殺すことが常態化した
対話による平和的解決を非虐待派はいきり立つ人々を抑えながら続けようとしたが
帰ってくるのは悪質なレッテルと誹謗中傷に罵詈雑言、そしてさらなる暴力だけだった
それでも説得を続けようという人間は、他の人々の無関心と悪意に潰された
やがて、誰も対話を言い出すことはなくなり・・・
そして・・・
すべては最悪の形で結実することになる
162
:
イシイユの興亡 プロローグ 2/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/04/04(水) 03:23:44 ID:P8zlkMbc0
ここは、とある町
夜中だというのに外には多数の人間がいた
その誰もが手に棍棒や包丁などの凶器を持っている
ガシャン!!
店の出入口が割られ、中に暴徒化した人々がなだれ込む
「やめてくれ!」
「うるせぇ厨房!!」
止めようとした店員は殴り飛ばされて床を転がった
人々は「すごいきずぐすり」「なんでもなおし」を棚から出し・・・
床に投げ捨て踏み躙って使用不能にする
「な・・・なにを・・・?」
略奪が目的と思っていた店員は、人々の行動に面食らった
「もう必要ないから捨ててるんだよ・・・ポケモンがいないんだから・・・必要ねぇだろ?」
そう答えた男の顔は・・・泣きはらした目と噛みしめたのか血がにじむ唇
その顔でニタリと、歪んだ笑みで彼は笑った
「こんなことを・・・世間は許しちゃくれないですよ・・・」
店員の言葉に、男はヘラヘラ笑って答えた
「世間ねぇ・・・あいつらがオレたちの味方だったことあったか、みんな?」
男の問いかけに、他の者たちは頷いた
「ポケモンを傷付けるなと言っただけで、オレは町を追われた!」
「あたしのタブンネちゃんは、リボンを付けてたのに殺された、保健所に連れてかれて!」
「虐待派の犯罪を告発したらオレは冤罪を着せられた!つい昨日出所したばかりさ!!」
「ひひひ・・・傷ついたポケモンを助けただけで、それだけでオレの家は焼かれた!」
「ゆっくり と のんたぬと暮らしてた・・・それだけで仕事を失った!奴らにあの子たちを殺された!」
「世間の奴らは犯罪を犯すクズどもの味方はしても、
法律を守ってたこっちの味方はしちゃくれねぇ!!」
「今じゃもうどこも”数年も昔のこと持ち出すな”って聞いちゃくれねぇよ!!」
「げげげげげ!!こんなことなら、あん時派手に暴れて、みんなぶち殺すべきだったぜ!!」
「ブワバババババババ!!!」
男は仲間の返事に満足げに頷いた
「これが現実だ! 虐待派との共存なんて理想論でしかねぇ!!
それでもオレたちの生きる余地があったならこっそり生きてやったさ・・・
けどな、長年待って悪化しかしなかったんだよ!!
話すら聞いちゃくれねぇ!!
お前らが我慢しろと、あの時言った結果がこれだってのに!!
昔の事を持ち出すなだと!!!!
だからもういい!!
昔の事をいつまでも恨む根暗と思いたいなら思え!!
昔の事を持ち出すアホと断じるならそうしろ!!
そんなに悪党にしたいなら、悪党になってやる!!
犯罪者扱いしたいなら、犯罪者になってやる!!
強盗でも窃盗でも暴行でも破壊でも放火でも・・・好きにリクエストしろ!
お前らの望む極悪人に! 自分のことしか考えないゲスになってやるよ!!ぎゃはははは!!」
ゲラゲラゲラ! 男と仲間たちは狂った笑いを始めた
いや・・・彼ら、彼女らは狂っていた
「どうしてこんなことに・・・」
店員は自問自答しようとして・・・やめた
自分も含めて目を背けてきた自分たちの責任だからだ
いつかこうなる日が来ると、頭の隅ではわかっていた
虐げられている彼等にも心があり、我慢もいずれ限界が来ることを
分かっていながら止めなかった、だからこうなった
そして・・・一度こうなったら、止められない
誰にも・・・
163
:
イシイユの興亡 プロローグ 3/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/04/04(水) 03:28:22 ID:P8zlkMbc0
店員は、ほんの3日前の事を思い出していた
目の前で暴徒化した人々を率いて暴れている男
彼は、その時はまだ温厚で平和を愛する「愛護派」だった
店のある町にもちょくちょくやってきて、買物や人助け、ポケモンの救助をしていた
彼の所属する団体は今も「非暴力」「非虐待」を訴え
数年前から虐待厨の非道を糾弾してきた
だから、彼がいくら善行をしても町は冷ややかだった
3日前、彼はこの町にパートナーのラルトスと共に逃げてきた
所属している愛護団体を虐待派組織に潰され、元居た街にもいられなくなった
しかし・・・そんな彼に町は冷たかった
「アイゴどもが悪い」「虐待派を否定する奴は犯罪者同然」「昔を蒸し返す厄介者」
そんな虐待派のレッテルを鵜呑みにした人は多くはない
が、誰もが自分たちと無関係の男が持ってくる厄介事を嫌った
身に火の粉が降りかかるのを嫌った、
男が街で為してきた無報酬のボランティアを忘れ、彼を追い出しにかかった
店員もその人々と同じ気持ちだった
「せめてこの、ラルトスだけでも!」
そう懇願する男をラルトスごと店から追い出した
街から追い出されて十分後、男は虐待派に捕まり連れていかれた
彼がその後どうなったか、彼のポケモンがどうなったか
気にはなったが、もうイシイユではこれは「いつものこと」と常態化していた
愛護派が過激な事をするはずがない、犯罪に走れば犯罪者だと分かってるだろう
それを嫌うあいつらがやるはずはない
何をされても非暴力、怒っても怖くはない
そんな「甘え」もあった
その「甘え」に甘えたツケを今、この町は受けていた
ごうん!! 店の正面の家が炎を上げて燃え上がる
「やめてくれ!家が・・・火を消させてくれ!!」
「うるせぇ!!」
懇願する住人が引きずり倒されて袋叩きにされていた
そんな様子を
非暴力平和主義者をやめ、自ら暴力を是とする暴徒になると誓った彼らを
店員はやりきれない顔で見ていた
彼に、彼らにしたことを心底悔いた
一人でもいい
もしも誰か一人でも彼らの話に耳を傾け、彼らを手助けしていたら・・・
話し合いで済むうちに、なんとかなっていたら・・・
だが、それはもはや先に立たぬ後悔
すべては後の祭りなのだ
164
:
イシイユの興亡 プロローグ 4/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/04/04(水) 03:32:08 ID:P8zlkMbc0
その日を境に、イシイユ地方は暴力が吹き荒れた
元々、限界を超えて膨らんだ風船のようなものだったのだ
穴が開けば、当然「破裂」する
暴力の嵐は瞬く間に地方全体に行き渡った
警察の制止など聞くはずもなく、さらにポケモンマフィアですら
この大嵐は手に負えなかった
虐待派組織は当初こそこの想定外の嵐に劣勢だったが
態勢を立て直して反撃を行った
しかしそれは、地方をさらに混迷させ「内戦状態」へ導いた
移動手段を持つ人々は地方から離れる道を選んだが
残って戦いへ参加する者も少なく無かった
そして・・・地方荒廃の決定打は密かに起きた
ここは地方の「イシイユ発電所」
核融合エネルギー炉で発電を行う最新の発電所だった
「あれ?・・・ちょっと見てきます」
「ああ」
部屋を出ていく”元”愛護派の同僚を虐待派の同僚は見送った
3日ほど前、発電所のベッドタウンの彼の自宅で
タブンネの親子が見つかった
休日にアポなしで行った所長が見つけたのだ
即座に彼は「仕事かポケモンか」を選ばされた
タブンネを手持ちにしてはいけないなどと言う法律はない
発電所の規則にもない
しかし、虐厨である所長の命令は絶対だった
彼は涙ながらにタブンネ親子を手にかけ、土下座して所長に詫びた
「・・・さすがに、あれはやりすぎかな」
虐厨である同僚にも所長の行為は常軌を逸したものだった
今の所長は、一か月前に本社から赴任してきたばかりである
そしてタブンネが見つかったのは自宅であり、彼は休暇中だった
どこにも彼を咎める点はなく、むしろ所長の行為こそが明確な違法行為だ
しかし、それを指摘する勇気は同僚には無かった
165
:
イシイユの興亡 プロローグ 5/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/04/04(水) 03:39:38 ID:P8zlkMbc0
「彼ら」は洗脳されたわけでもない、かといって正気と言うわけでもない
彼らにとって、タブンネたちは全てだった
家族であり生き甲斐だった
「親切な虐厨様のおかげで仕事まで失わずに済んだ」
だからどうした?
彼女たちがいないのなら、これ以上仕事を続けても仕方ない
生きていても仕方ない
だから彼らは、昨日一晩相談して・・・実行した
彼らにとって「世界」は「敵」だった
かつては違ったが今はそうだ、ここへ流れついたのも故郷が虐待一色に染まったためだった
そして、ここでもつまはじきにされて大切な家族を
唯一の生きる理由を壊された
彼等の一人が核融合発電所に勤務している「人間」であったこと
彼なら融合炉の室内に行ける事
それに・・・誰もがポケモンに頼っていることが
計画を成功に導いた
「炉心に異常あり!」
彼のついた嘘を疑う者はなく、防護服を着て自ら行く彼を怪しむ者はいなかった
念のためと、「プログラムを簡単に操作できるロトム」が
制御指令室に残って彼の「バックアップ」を行い
「発電所に欠かせないマルマイン」が彼のお供に付いていった
だから・・・
誰一人避難できないように非常警報を殺すことも、
本当の異常を知らせる警告をOFFにすることも造作もなかった
固唾を飲んで監視窓から彼を見ていた他の職員も最後の最後まで気づかなかった
集音マイクがオフになっていることも、彼がジェスチャーで「故障」と示せば誰も疑わない
だから・・・マルマインが炉心近辺で「だいばくはつ」をする計画はすんなりと成功した
彼がマルマインを炉心へ掲げた時、やっと職員たちは気づいた
事の異常さに
炉心の様子を見に行くなどと言う誰もが敬遠し、くじ引きで決めるのが慣習になっていた仕事を
彼が率先して引き受けた事の真相に
「やめろ」と怒鳴る者、慌てて部屋から飛び出し遠くへ逃げようとする者、
何が起きているか把握できず呆然とする者・・・
それらをすべて、彼と彼のポケモン諸共、光は飲み込んでいった
発電所の爆発は周囲の街を飲み込んだ
ベッドタウンはもちろん、本社のビルのある町にまで爆風は届いた
地方はこれだけでも大打撃を受けたのだが、続く狂った人々の暴走がとどめを刺した
「矯正」と称して愛護派の人々の脳に「チップ」を埋め込み、
虐待派マインドを強制セットアップする狂気の手術
かつて別の地方でポケモン保護区の職員を狂わせ保護区壊滅へ追い込んだ、非人道的手段
その「被験者」の人造虐厨が爆発によって生じた電磁パルスで本当におかしくなったのだ
船のエンジンに砂糖をぶち込み、ガソリンスタンドにマグマッグを投げ込み、
飲み水を供給するダムにベトベトンが放り込まれ、農作物に除草剤がぶちまけられる
港でもスーパーでも、あちこちで破壊的な暴走は始まった
止めようとする人々は殺された
壊す物がなくなった時にたまたま近くにいただけの人間までも殺された
「おい!!早くあいつらを止めろ!!あるだろ止めるはずのプログラムが!!」
「ダメです!!先ほどの電磁パルスで機械は全ておじゃんです!!止められません!!」
手術を施した虐厨たちにもどうしようもない
人造狂人の暴走は、彼らが全員餓死するまで続いた
しかし、その暴走が終わっても事態が好転するわけでもなく
発電所の全損、そして狂人の暴走によるライフラインの壊滅は
イシイユを地獄に叩き落とした
イシイユ地方が許可なく渡航禁止の危険エリアに指定されるのに
時間はかからなかった
(第一話につづく)
166
:
イシイユの興亡 ① 1/7 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/04/13(金) 18:12:56 ID:LFRbc.EQ0
第一話:あいごの帰還 1/7
「ギャハハハハ!!」「くやしかったらいじめられっ子やめて暴力で返してみろwww」
カチリ
釘バットの男はテープレコーダーを止めた
そしてニンマリと、目の前の虐厨たちへ笑みを浮かべる
「た・・・助け・・・」 グシュリ!!
足元に倒れ伏していた虐厨を、男は頭を踏みつぶして黙らせる
「まて、こんな事したら、お前たちが一連の事件の犯人と言っているようなものだぜ?」
虐厨はそう言って制止を試みた
この町では、度々トレーナーが襲撃される事件が相次いでいた
しかし、虐厨たちによってそれは愛護派の仕業と宣伝され
愛護派への攻撃の口実にされていた
その上、街の他の住民も面倒事を嫌い、暴力沙汰にならないように徹底していた
愛護派が声を上げても聞く者はなく、一方的に彼等は嬲り者だった
そう、昨日までは
「いいよ、それで」「どうせ何言っても聞いちゃくれねぇし」
「そーそー、どうせ犯罪者になるんなら自分で犯罪やって納得した上で捕まりてぇよな」
「それに、お前らのリクエストだろ? 暴力で返せって言うのは?
よかったじゃねぇか願いが叶って」
話は終わりとばかりに、凶器を持った人々は・・・
かつて愛護派に属し羊のようにおとなしかった人々は・・・虐待派側に牙を剥いた
「・・・・・なんだ・・・これは?」
彼は相太、かつて3歳のころまでイシイユ地方に暮らしていた少年だ
彼は引っ越し先の別の地方でトレーナーとなり、先輩トレーナーとの数々の激闘
ポケモンマフィアやライバルたちとの戦いを経てその地方のチャンピオンとなった
そんな彼への記者のインタビュー、それが彼が生まれ故郷に足を運ぶきっかけだった
「イシイユ・・・ですか? あそこは、もうタブンネは・・・」
かつて幼い頃に人懐っこいポケモンと遊んだ記憶を懐かしげに語った彼に
その記者はそんなことをひきつった顔でつぶやいた
それを訝しんだ彼は逆に、記者に質問をすることになった
彼女とはかつてポケモンマフィアとの戦闘を共に戦い抜いた仲である
インタビュー後に喫茶店で記者と話しをした彼は
今、イシイユがどうなっているかを彼は知った
「ごめんなさい、隠すつもりはなかったの・・・あなたがイシイユの出身と知らなかったから」
「いいえ、教えてくれてありがとうございます」
「!まって!・・・帰る気なの、あそこに?」
「・・・はい、オレの友達があそこに残っているんで・・・」
かつて彼が住んでいた家、引っ越す時にその地のポケモンに譲った家屋は・・・
焦げた柱が立つ焼け跡となっていた
「う・・・・・うわああああああああああああああ!!!!!!」
引っ越しの時、一番仲の良かったタブンネにあげた宝物のバッヂ
地面に落ちている焼け焦げたそれと、その近くで野ざらしになっている
大小さまざまなタブンネの骨
「せめて生きていて欲しい」その願いが無残に打ち砕かれた証拠だった
167
:
イシイユの興亡 1 1/7 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/04/13(金) 18:14:42 ID:LFRbc.EQ0
第一話:あいごの帰還 2/7
彼は骨を集め、埋葬した
「おいおいwゴミの片づけかwww」
そんな彼へ、背後から3人の男が声をかける
「・・・・・・」
相太は振り返って会釈をした
「ボクはかつてここに住んでて・・・10年ぶりに帰って来たんです」
「!?・・・そ、そうか・・・じゃあ、悪かったな・・・」
「もう戻ってこないと思って焼いちまって・・・」
「死体まで放置したのはさすがに悪かった、すまん!」
相太は3人に気づかれないよう、腰のウエストポーチに手を伸ばした
「・・・あなたたちが、やったんですか?」
3人はギクリと顔をこわばらせた
「ま、まて!まだ人に所有権があると知らなかったんだ!」
「ここの一家は引っ越して、そのあとをクソブタどもが勝手に占拠して・・・!」
「ここの害獣はオレらが退治してやった!それで勘弁してくれ、な?」
3人は口々に言い訳をしたが・・・タブンネたちを殺したことに対する罪悪感は微塵もそこになかった
むしろ、タブンネたちを害獣と罵り、それを殺したことを正当化した
相太にはそれだけで十分だった
「グルルルルルル!!!」
相太は3歳の引っ越しの日、自分についてきてくれたかつての「ヨーテリー」
今はレベル100の「ムーランド」へと進化した無二の相棒を繰り出した
「お、おいまてよ・・・謝ってるじゃねぇか・・・!」
「・・・他に、謝るべきことがあるでしょう・・・あのタブンネ一家はボクの友達でした」
「はwwwお前アイゴかよwww」
相太の答えに3人は豹変してそれぞれポケモンを繰り出した
「ムーランド、ポケモンは殺さず戦闘不能にしろ!・・・ただしあの3人には手加減無用だ!!」
3分後、かつて虐厨だった肉塊が3つそこに転がっていた
そもそも最初から相手になどならないのだ
虐厨たちは平和非暴力主義の愛護派や弱いポケモンばかりを狙っていた
自分たちより強いどころか、互角の相手とすら戦った事はなく
手持ちとの相性が不利だったり強そうな相手とは敬遠していた
だから手持ちのポケモンはタブンネ狩りで皆レベルは高いものの、圧倒的に「強者へ立ち向かう気力」
そして「互角以上の実力者との戦闘経験」が欠けていた
その上、どのポケモンも無理やりこき使われてきたためなつき度は限りなく低かった
虐厨の死亡後、彼らの手持ちはあっさりと野生へ戻っていった
168
:
イシイユの興亡 1 3/7 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/04/13(金) 18:25:47 ID:LFRbc.EQ0
第一話:あいごの帰還 3/7
「愛護団体は悪の組織」「ポケモンマフィア以上の極悪人、愛護」
「害獣を保護しイシイユの生態系を破壊!奴らを許すな!」
スマホでイシイユの情報を漁ると、こんな記事がいくつも出てきた
これが今のイシイユの現状なのだろう
今後どうするか・・・まだ答えは出ない
「・・・ひとまず寝るか」
虐厨どもを始末したその日、相太は焼け跡にテントを張りそこで眠った
しかし明け方近くに物音で目を覚ます
獰猛な野生のポケモンへの警戒というより
ポケモンマフィアやトレーナーを狩るならず者への対処として身に付いた特性だった
そっとテントの外を確認する
ポケモンを連れた男が6人、できたての土饅頭を掘り返していた
それは虐厨どもを埋めたものだ
放置しても良かったのだが、
ここらにまだ住んでいるポケモンに迷惑がかかるといけないと思い
敢えて埋めて廃棄しておいたのだ
彼等は皆、一緒に埋めた虐厨の荷物を漁っていた
「・・・ちっ、しけてやがる」
「おいおい、オレたちは金目のもの取りに来たんじゃないだろ」
「しかし誰だろうな・・・こんなゴミ捨てずに埋めたのは?」
「アイツらの仲間・・・じゃねぇよな、この前も襲ったら仲間見捨てて逃げたし」
相太は考えた
どうやら虐厨と敵対している奴らのようだが・・・
言葉の端々から、かなり攻撃的であることが伺えた
相手の事も人間とか生物とかすら認識していないようだ
「・・・襲う・・・か、数年前までは考えもしなかったことだよな」
その中の一人がぽつりと言った
「ああ、けど仕方ねぇ・・・どうせオレたちは悪党であいつらは正義だからさ」
「そうだ!なら望み通り悪党として振舞ってやるだけさ!!全部あいつらが希望したんだ!」
「だな、我慢してれば調子に乗りやがって・・・散々譲歩してやったのに・・・」
「こんなことなら、あいつらの挑発に乗って最初から戦っておくんだった」
相太はスマホの情報を思い出した
目の前にいるのは虐厨ではない・・・愛護派だと悟る
しかし彼らはその誰もが荒み切り、彼らのポケモンもまた殺気立っていた
「ん? おい、あのテントは・・・」
うち一人が相太のいるテントに気づいた
「見ろ、タブンネの骨が片付けられて・・・いや、埋葬されている!」
彼等はタブンネの墓を見つけたようだ
墓前には相太によって花が植えられ、オボンの実が添えられてる
そして全員、その墓へ手を合わせた
「ああ・・・ポケモンの墓を拝むなんて、何年ぶりだろうな・・・」
「こんな立派な墓をポケモンに作ってくれる人間がまだいたとは・・・」
相太は驚いた、作ったのは墓石すらない土饅頭だ
しかし誰もが涙を流していた
彼等のポケモンも、殺気が嘘のように晴れ頭を垂れて拝んでいる
169
:
イシイユの興亡 1 4/7 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/04/13(金) 18:34:54 ID:LFRbc.EQ0
第一話:あいごの帰還 4/7
「ぎゃあああああああああ!!!」
その時だった、静寂を壊す悲鳴が響いたのは
「なんだ!?」
茂みから一人の男が飛び出す、ドンカラスに啄まれながら
そのドンカラスは相太のポケモンだ
寝込みを襲われないように万一を考えて警戒を頼んでおいたのだ
命令は一つ「マフィアか虐待派らしき奴が来たら知らせろ」だ
「襲え」とは言っていない
ということは、そいつは自分でドンカラスへ手を出したのだろう
ちゃんと相太は人のポケモンと分かるように目立つ場所へリボンを巻いたはずだが・・・
「た、助けてくれ・・・!」
「・・・分かった、その苦痛からは助けてやる」
次の瞬間、グシャリ!と何かが潰れる音が響いた
男の一人が、ドンカラスに襲われていた男の頭を踏みつぶしたのだ
「よしよし、もう大丈夫だ・・・安心しろ、悪い奴はたった今いなくなった」
「しかしこいつドンカラスを襲ったのか? 素手で勝てる相手じゃねぇだろ・・・」
「どうせいつもの”オレ最強妄想”とやらだろ」
「くぁー!」
ドンカラスは一礼して一声鳴くと、とことことテントへ歩み寄った、中の相太と目が合う
相太は頷き隠れるのをやめた
彼等はドンカラスを助けた恩人だ、礼も言わずに寝たふりなど相太はできない
相太はテントから顔を出した
「初めまして、ボクはここにかつて住んでいた一家の息子、相太です」
ドンカラスを助けてくれたことに礼を述べながら相太は自己紹介した
「ここに・・・じゃあ、キミはもしかしてあのボウヤか?」
「大きくなったな!・・・と言っても近所に住んでたオレ達の事覚えちゃいないか」
「だって、この子の父さんとは何度か会ったけどこの子とは初対面だし」
「そうそう!あの人が引越しの餞別にくれたオボン!あのおかげで生き延びられたよな・・・」
「すっかり様変わりしておどろいたろ・・・イシイユは今はどこもこうさ」
「そういえば・・・そのドンカラスはキミのか?」
相太は頷いた
170
:
イシイユの興亡 1 5/7 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/04/13(金) 18:36:37 ID:LFRbc.EQ0
第一話:あいごの帰還 5/7
森で親とはぐれていたヤミカラスを保護してここまで育てたのだ
相太は大きくなったら巣立たせようと思っていたが
ドンカラスはボールから出しても相太からは離れようとしなかった
「そうか・・・ポケモンを見ればわかる、キミがどんなトレーナーかがな」
「ポケモン勝負で歓迎したいとこだけど・・・ポケモンセンターすら使えない今は
むやみに戦闘はできないんだ」
「ショップもやつらに占拠されて傷薬どころか、虐待グッズしか売ってないからな・・・」
「悪いことは言わない、もうこの地方は見捨てて別の地方で旅をするんだ」
「イッシュは終わりだ・・・今ではオレら非虐待派こそ犯罪者だからな」
「犯罪者・・・?」
相太は思わず聞き返した
「そうだ、害獣を保護して繁殖させ、正義の虐待派にレッテルを張る愛誤と言われてるのさ」
「訴えてももう誰も耳を貸しちゃくれない、話をしてもすぐ奴らが来て話の腰を折っちまう」
「奴らに危害を加えられる事やオレらの仲間と思われることをみんな恐れてるんだよ」
「この前も隣町のじいさんが・・・」「!?よせ!!!」
相太は「隣町のじいさん」と言う言葉に記憶をよみがえらせる
かつてここに住んでいた時、ポケモンと遊ぶ自分の所へ老人が来たことがあった
出会ってから時々、木の実やお菓子を差し入れてくれる優しいお爺さん
「すいません、詳しく聞かせてください・・・ボクはあの人へ恩を返さなきゃいけないんです」
口止めした男とうっかり口を滑らせた男は顔を見合わせ、決意したように頷いた
「イッシュがこんなになってからも、虐待派からポケモンたちを守る運動はあったんだ・・・
もちろん、虐待派の連中とは何度も交渉して相互不干渉と決めてた
けど、それすら奴らは破った・・・自分がした約束じゃないと、次々と施設や家を襲ったんだ」
「隣町のじいさんもその交渉派の一人だったんだが・・・10日ほど前に襲われた」
「家の焼け跡から骨が見つかったんだ・・・あの人の相棒のサーナイトと一緒に」
「あの人は骨になってたけど、ポケモンは綺麗だった・・・死体とは思えないほどにな
きっと最期まであの人が庇ってたんだろう・・・」
「やつらに見つかるとまずい、キミは早々にこの地方から離れるんだ
もうここは、キミのいたかつてのイシイユじゃない・・・無法地帯さ」
171
:
イシイユの興亡 1 6/7 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/04/13(金) 18:40:13 ID:LFRbc.EQ0
第一話:あいごの帰還 6/7
6人と別れた相太は森の中の獣道を歩いていた
隣町とは一見逆方向に見えるが、これはポケモンが普段使う「隠し通路」だ
それは隣町の、人間は誰も知らないだろう隠し穴に通じている
隠し穴の先は掘っ立て小屋に通じていて、隣町にこっそり入ることができた
そっと小屋の壁の穴から外をうかがう
あちこちに焼けたままの家が放置され、ポケモンと・・・人間らしい骨が放置されていた
時折、笑いながらそれを蹴飛ばすクズも目の前を通る
相太はそいつを今すぐ叩きのめしたい衝動を堪えた
まだ、飛び出す時ではない・・・夜になるのを待つ・・・つもりだった
「おい!そこ何をしている!?」
突然の怒声に相太は飛び上がった・・・見つかったか!?
だが、虐待派と虐厨は相太のいる小屋とは別方向に走っていく
「テロだ!!」「愛護派の襲撃だ!!」
爆発音と戦闘音がやがて響き始めた
相太はこっそり小屋を出て・・・戦闘中の虐厨たちの背後からポケモンを繰り出した
「後ろからだと!?」「まさか・・・囲まれたのか!?」
相太はここぞとばかりに攪乱すべく声を張り上げた
「お前らは完全に包囲した!諦めて投降しろ!!」
「う・・・うわあああああ!!」「死にたくねぇ!!」
しかし次の瞬間、虐厨たちは我先にと逃げ出した・・・ポケモンを置いて
相太はなんとなく不穏を感じ、そっと小屋の中へ戻った
そして穴から外をうかがう
「ひぃ・・・た、たすけてくれ・・・!」
足を怪我したらしい虐厨が左足を引き摺りながらひょこひょこ駆けてくる
しかし、その背後からグラエナが飛びかかり、容赦なく首の骨をへし折った
「よくやったわグラエナ!」
グラエナは主らしい女性に甘えた声で走り寄り、甘えた
「ははは!!私の攻撃力がガクッと下がった!」
グラエナとじゃれ合う女性を見て、相太は思わず目を剥いた
その女性は・・・顔の左半分が火傷に覆われていた
そしてタブンネのものらしいピンクの毛皮のストールを首に巻いている
「おいおい・・・そいつは捕まえとけって言っただろ芽泥姉ぇ」
女性の後ろから、知己らしいタブンネのお面を付けた男が来た
「捕まえたでしょ、ほら」
女性は首の骨を折って絶命している虐厨の背を踏みつけた
ボキリ!と背骨が折れて虐厨の死体がおかしな動きをする
それを歪んだ笑みで、女性は見つめていた
「あいつらのアジトなら、もうじきメガヤンマが見つけてくるわよ」
「なら、いいが・・・」
172
:
イシイユの興亡 1 7/7 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/04/13(金) 18:47:39 ID:LFRbc.EQ0
第一話:あいごの帰還 7/7
男は虐厨の死体を踏み躙り始めた女=芽泥を見ながら言った
「まだ、奴らが憎いか?」
「憎い? そんなもんじゃないわよ・・・生理的にあいつらが生きてること自体受け付けないわ・・・
あの子たちは私を炎から庇って死んだのに、あいつらはのうのうと生きてるなんて・・・
しかも、何の咎めもされないまま、逮捕も裁判もされないまま・・・
そしてあの騒動で生き残ったタブ子も私の目の前で、あいつらに毛皮にされたわ・・・」
芽泥はその時の事を思い出したのか、苛立たしげに虐厨の死体を蹴飛ばした
「あいつらも!あいつらを甘やかした奴らも!あいつらを裁かなかった奴らも!!
あいつらに迎合してみて見ぬ振りした奴らも!!みんな死ね!!死んでしまえ!!!!」
相太は生まれて初めて人間を「怖い」と思った
目の前の芽泥という女性は虐厨たちだけでなく、「自分たちを見捨てた全て」を憎んでいるのだ
「オレも・・・いや、オレたちも同じ気持ちだ・・・話を聞いて一緒に行動してくれてれば・・・
いや、せめて話を聞いてくれさえすれば、イッシュはここまで荒廃しなかった!
虐厨に罪があるなら、当然やつらにも・・・虐厨を放置した奴らにも
虐待派どもにも罪はある!!」
男は仮面を外した、その顔を見て相太はまたも驚いた
「男」ではなかった、仮面のせいで声がくぐもって低く聞こえただけだ
そして背の方も、女性よりかなり低い・・・自分と同じか少し低いくらいだ
しかしそれ以上に気づいたことが、相太に衝撃を与えていた
「・・・亜衣ちゃん・・・!?」
記憶が呼び起こされる・・・ポケモンと一緒に遊んでいたところに迷い込んできた
同い年くらいの、右目にほくろのある迷子の女の子
しかし今の彼女に当時の面影はない
あの愛くるしい笑顔のポニーテールの女の子は・・・
短髪でボーイッシュな・・・否、右頬に大きな傷のある狩人の顔をした少女に成長していた
その荒み切った目が、彼女がこれまで歩んできた道を物語っている
二人の所へメガヤンマが飛んでくる
二人はメガヤンマから何事か聞いた後・・・メガヤンマの先導で
メガヤンマが来た方向へ去っていった
相太はそっと小屋から出て町の様子を確認した
あちこちに虐厨たちの死体が転がっている
首が折れたり腰から変な折れ方をしたりと言った五体満足の者はまだいい方で
下半身のないもの、首から上がないもの、中には元が人型の生き物だったと思えないほど潰れた者もあった
彼女たちの憎悪の深さを物語る殺し方だ
ふと思い出す、自宅の焼け跡で出会った愛護派トレーナーたちの言葉を
『望み通り悪党として振舞ってやる』 『あいつらが希望した事だ』
そんなことを言っていた
周囲から「悪」と決めつけられたため、「悪」を自認して「悪」となる事を選んだ人々
誰にも話を聞いてもらえず怒りと恨みだけを募らせて鬼となった彼女たち
それを「心が弱い」と断じるのはたやすい
しかし、どれほどの人間が彼女たちと同じ境遇に身を置いた時
それでもなお己を貫けるか?
それも殺される事無く、だ
殺された老人は恐らく、「己を貫いた」ことで殺されたのだろう
虐厨に刃向かう不快な存在として
相太は決意を固めると、彼女たちを追って走り出した
(続く)
173
:
ヒギャクセイブツの森 1/3 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/08/09(木) 01:24:29 ID:Ib7BLTD.0
「ひぎ・・・いだ、いだい!!」
男は、クチートに襲われていた
タブンネの生息するという森をウロウロしていたところ
「クイモノ、ヨコセ」
そう言って飛びかかってきたのだ
「クイモノ、ヨコセ」
ガチン!ガチン!と後頭部に伸びる大アゴを鳴らす
「も、持ってねぇよ!!オレはここへタブンネを虐めに来ただけだ!!」
「・・・ウソツキ!!」
クチートは叫ぶように言うと男へ突進した
「ひ・・・ひぎあああああああああああ!!!?」
男の腹が食い割かれ、中身が引き出されていく
「ココニ、イッパイアルダロウ!!」
クチートは断末魔の痙攣をする男を見ながら二つの口で男を食い続けた
そのクチートは、父親がタブンネということ以外は普通のクチートだった
母親は人間に虐待を受け、飼い主を食い殺して逃亡してきたが
追手に深手を負わされ森の中で力尽きそうなところを
父親タブンネに助けられた
最初は傷が治ったら復讐の続きを始めるつもりだった彼女は
タブンネと過ごし、彼に説得を受けるうちに徐々に変化し・・・
子供たちを身ごもったことで「もう戦えないから」と言い訳をして
復讐をやめた・・・・・・はずだった
少なくともあの時までは
「やめてください!ボクたちはなにもしてない!!」
「あ? 被虐生物の分際で何言ってやがる?」
「そーそー、お前らはいじめられるのがお似合いなの!」
「生意気なんだよサンドバッグが!!」
「害獣らしく人を襲って食べ物奪え!媚びうるなよ気持ち悪い!!」
母親クチートが木の実を抱えて戻ってきたとき、父親タブンネはすでに重傷だった
彼らはすでに卵を一つ割っていた
174
:
ヒギャクセイブツの森 2/3 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/08/09(木) 01:26:24 ID:Ib7BLTD.0
「キサマラ!!ナニヲシテイル!!!」
どうして夫と子に手を出した、殺すなら自分を殺せ・・・
という意味で彼女は言った
彼女は目の前の人間たちが自分を追ってきた連中だと思っていた
彼らの同胞を殺して逃げたことを忘れてはいない
いつかこの日が来ると、とっくの昔に彼女は覚悟していた
「へ・・・え・・・へ? なんで?」
割った卵の中身が明らかにタブンネの胎児でない別のポケモンだったことと
怒り心頭で本気の殺意をぶつけてきた母クチートの出現に
人間たちは面食らった
が・・・すぐに虚勢を取り戻した
「あのな、こいつが俺らの木の実畑を荒らしたの!」
しかし、人間たちが言い出したのは彼女の想定と全く無関係の
身に覚えすらない罪状だった
「ウソヲツクナ!我ガ夫ハ森カラ一歩モ外ヘ出テイナイ!!!私モ森ノ中カラ出テイナイ!!」
「じゃ、じゃあ・・・証拠を見せろよ・・・そしたら助けてやるから」
「ソレハ・・・犯人ヲ、捕マエテコイ、トイウコトカ?」
クチートとは思えない凄みのある声に、人間も虐厨も気圧された
思わず彼らは頷いた
「・・・ヤクソク、ダゾ」
母クチートはそう言ってその場を離れ
わずか1時間で木の実畑を荒らしていた真犯人のポケモンを連れてきた
人間たちの匂いを辿って彼らの木の実畑に行き、
そこにあった匂いから犯人を特定し追跡、
あとは見つけ出して「狩る」、それだけである
血濡れた大アゴに咥えられた3mはある大型のラッタを見て
虐厨たちは想像以上のグロい光景にドン引きした
彼女が留守だった一時間の間に、約束を破り父タブンネを殺し、
タブンネのいる可能性に賭けて卵をすべて割ったことを忘れるほどに
「・・・ウソツキ!!!!」
割れた卵の破片とこぼれ息絶えたその中身を見て、母クチートは激高した
次の瞬間、殺戮の嵐が吹き荒れた
まず最初に全員の足の腱をかみ砕き・・・あとは一方的な嬲り殺しだ
父親の死体にしがみついて泣いていた娘クチートの目の前で
母親は彼女へ生まれて初めて彼女の知らない一面を見せた
久々の殺戮の快楽に酔いしれながら
愛する夫と子供たちを失った悲しみと
やっとつかんだ幸せを壊した者たちへの怒りと憎悪と
様々な感情を内に外に吹き荒れさせた
そして、全員をミンチに変えた後で父親タブンネに死体へ縋り付き
大声で血の涙を流して慟哭した
175
:
ヒギャクセイブツの森 3/3 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/08/09(木) 01:28:16 ID:Ib7BLTD.0
「ポケモン、特にタブンネを襲う奴は敵だから殺してもいい」
「食べ物を奪え、それが相手の望みだ」
「畑を見つけたら荒らせ、人間が出てきたら殺せ
ただし森からあまり離れるな、森の近辺のナワバリの中でだけやれ」
「奴らは私たちを”ヒギャクセイブツ”と見ている
だからこちらもヤツラを”ヒギャクセイブツ”と見て、それにふさわしい”もてなし”をしよう」
これが、母親クチートから事件の唯一の生き残りの彼女が教わった事だった
「ヒギャクセイブツ」
それが何を意味する言葉なのかは母子は分からない
だが、「殺してもいい存在」を示す言葉だと彼女たちは解釈していた
だから、人間たちを襲っても殺してもいい
「相手を殺しに来るということは
向こうは相手に殺される覚悟をすでにしている」
だから
お互いに殺される覚悟をし、相手を殺す
それが母クチートのいた世界の掟、血を流すことが当たり前だった彼女の小さな世界で
数少ない機能していた暗黙のルールの一つなのだ
今、母親クチートは別のポケモンと結婚した
新しい父親はペロリームだが、母親タブンネを殺されたことで
人間たちに対して深い憎しみを抱いていた
彼との間にできたいくつもの卵の中には
まだ生まれていない妹弟たちがいる
母親クチートは長女と同じことを妹弟たちにも教えるだろう
これから先、どんどん「ヒギャクセイブツ」は増えていく
森の中から外へ出る日もいつか来る
人間とポケモン
果たしてどちらの「ヒギャクセイブツ」が強いのか・・・
その勝敗の結末を見届けるまでは死ねない
彼女はそう思いながら、今日も明日も
「ヒギャクセイブツ」を虐待する「ヒギャクセイブツ」を襲い続ける
(おわり)
176
:
ヒギャクセイブツの森after 1/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/08/10(金) 03:44:01 ID:AvO7hgqk0
「けっ!」
男は虐待の末に息絶えたソーナンスに唾を吐きかけ
その遺体を蹴飛ばした
男はポケモンブリーダーだ
しかしその評判は良くはない
平然と人前でポケモンを虐待し、
咎める者には言葉と物理的暴力を見舞った
つい数年前も子ポケモンの目の前で育ての親の雌タブンネを虐待の末に殺した
その子ポケモンはその日以来行方不明だ
そんな男も預かったエーフィを「目が気に入らない」と言う理由で虐待死させ
怒った飼い主に射殺されそうになり、さすがに元いた町から逃げ出した
町の住人は誰もが飼い主に同情し、警察すらこの事件を見て見ぬふりで通したため
男は着のみ着のまま町を離れざるを得なかった
虐待組織のコネで森の近くに新しい店を構え商売を再開したが
時折出かけては捕まえてくるポケモンはどれもレベルが低かった
今死んだソーナンスのように他のトレーナーから盗んだポケモンですら
平和なこの地域では男が望むレベルではない
それより、他人のポケモンを誘拐して殺したのだ
またどこかへ去らなくてはいけない
「てめぇが使えねぇせいだ!!」
男はソーナンスの死体を蹴飛ばすと、引っ越しをいよいよ本気で考え始めた
その時だった、男の住居のインターホンが鳴ったのは
「なんだ? こんな夜中に?」
男はソーナンスの飼い主だったら文句を言ってやろう、
と確実に殺されるだろうことを考えながらドアを開けた
177
:
ヒギャクセイブツの森after 2/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/08/10(金) 03:45:04 ID:AvO7hgqk0
「コンバンハ〜!」
目の前にいたのは、クチートだった
男は青くなった
知り合いの、ポケモンを殺し合わせるコロシアムの関係者が
野生のクチートの群れに全員殺された事件は記憶に新しい
「夜分遅くすいません」
男は目をクチートの後ろへ向けた
まだ若い、赤いキャップの青年がそこにいた
クチートの飼い主=クチートは例の騒ぎのポケモンではない
と言う図が男の中で組みあがり安心感が生まれる
「ここに、ソーナンスがいると・・・」
同時に、男の中で先のソーナンスへの身勝手な怒りがぶり返した
「はぁ? てめーかよあの使えねぇクズポケの飼い主はぁ!!?」
男は素早く取って返すとソーナンスの死体を引きずり、青年にぶつけた
「ほらよ!今度はもっと使えるポケモンを育てるんだな!!」
青年が何か言うより早く男はドアを閉めてカギをかけた
青年が警察に連絡したら完全にアウトだが、今の男にはそんなことまで頭は回らない
もう寝ようと視線を家の中に向けた時・・・
ニタリと笑うクチートに気が付く
先ほど男が青年に目を向けた隙に屋内に入っていたのだ
1体だけではない、廊下の奥から、寝室から、次々と顔を覗かせている
「アンタ、”ヒギャクセイブツ”ナンダネ?」
「例のクチート」がお決まりのように言っていた言葉を、そいつらは口にした
暗がりで分からなかったが、明るい室内ならはっきりと見える
男の予測を裏付けるようにクチートたちの後頭部の顎は
どれも赤黒く染まっていた
男は慌ててドアに向かったが、ドアは鍵を開けてもびくともしない
向こう側から押さえられているのだ
やがて・・・男は両足に激痛を感じて倒れた
足の腱が両方とも食いちぎられていることを悟った時・・・
クチートの大顎は男の顔へ迫っていた
178
:
ヒギャクセイブツの森after 3/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/08/10(金) 03:46:35 ID:AvO7hgqk0
「オワッタヨ〜」
ドアの向こうからクチートたちが声で合図した
青年は傍らのペロリームとクチートの夫婦に目くばせする
二人は頷いた
青年はかつて、この地方に蔓延っていたマフィアを退治し
ポケモンリーグを制覇したチャンピオンだ
今は「なんでもや」をしている、主にポケモンがらみの事件の解決が仕事だ
知人からの依頼で「森を拠点にしている凶暴なポケモンの調査と退治」を請け負ったが
長らしきクチートが敗北後、自分の命と引き換えに子供と夫の助命を懇願してきた事で
「訳アリ」と判断し、話をじっくり聞いた
ポケモンたちは基本、「助け合い」だ
敗北しても命まで取られることは、まずない
そして、訳を聞いた彼は依頼を続行することにした
クチートたちを生み出した元凶を消去しない限り何度もこれは繰り返されると判断
彼女たちを情報源として手持ちに加え、リストを作成した
あとは順番に「片づける」だけである
命を奪わず、それどころか手持ちに加えてくれた青年にクチートは初めて心を動かされた
そして自ら青年に一族総出で協力することを約束した
そして・・・今に至る
ついさっき対峙した虐厨ブリーダーはお尋ね者だった
ブリーダーは世間を甘く見すぎだった
人に危害を加えて憚らない害虫を放っておくほど人間は甘くはない
ブリーダーはとっくの昔に指名手配されていた
「生死を問わず」の追加文章が、その罪の重さを物語っている
ただ青年にとって誤算だったのは、ブリーダーが予想以上に頭が悪すぎたことだ
結果としてソーナンスと言う犠牲者を出してしまった
さすがの彼も失われた命を元に戻す術はない
青年はソーナンスの遺体を綺麗に清め手を合わせると、担架へ乗せた
これからこの子の飼い主に遺体を届けなければならない・・・
「アレ」も含めて
179
:
ヒギャクセイブツの森after 4/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/08/10(金) 03:47:47 ID:AvO7hgqk0
虐厨ブリーダーは目を開けた
自分がまだ生きていることを確認したが、
同時に・・・周囲の怒れる人間たちにも気が付いた
「よくも、オレのソーナンを!!!」
「は? あのクズポケがなんだって?」
本来命乞いをすべき場面で虐厨の性質か彼は最悪の発言を選択した、
そしてその選択肢を選んだ結果はすぐにやってきた
飼い主の男は鉄パイプでブリーダーの右足大腿骨をへし折った
絶叫するより早く、隣の女性から次のバールが飛びブリーダーの左肩を砕く
もはや容赦などない、彼らにとって我が子同然に可愛がっていたソーナンスを誘拐した上
役に立たないという理由で殺したブリーダーは人ですらなかった
すでにクチートによって両足の腱を破壊されているブリーダーに逃げる術はない
ブリーダーが自業自得で最悪の死を迎えつつある一方で
青年はクチート一行とともに再び旅に出ていた
遺族は持ち帰ったのが遺体にも関わらず倍の報酬を青年へ出してくれた
ソーナンスの遺体を持ち帰ってくれた上、犯人を生け捕りにしてくれたことへの謝礼
そして、そいつにこれから加える制裁への口留め料だ
最初は多すぎると断ったが、それにかえって心打たれた遺族たちは
「どうしても」と譲らず、やむなく青年は折れた
数か月後、「恐怖の森」からクチートが一体残らずいなくなったことが明るみに出る
入れ替わりに、クチートの群れを引き連れた
虐待厨に対して容赦ない制裁を与える「なんでもや」のトレーナーの噂が
虐厨たちの間で流れることになる
(終わり)
180
:
行き違いと不幸な事故 1/3 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/09/04(火) 22:42:10 ID:rSy89sKo0
「お姉さん、おはよー!」
「・・・ん、おはよ」
胸の上でぴょんぴょん跳ねる大き目のゆっくりまりさに起こされる
彼女は優しくまりさを撫でた
その後、伸びをしながら起き上がり、朝食の準備をする
彼女は訳あって一線を退き、このアパートに住んでいる女性だ
お金は休職前に稼いだものがあった
無趣味だった彼女は生活費以外は貯金していたため
蓄えは豊富にあり生活には困っていない
毎月、休職手当てが銀行口座に転がり込むのもあって
切り崩しても貯金は減ることはなかった
その日も女は、まりさと一緒に外へ出かけた
日課の散歩と・・・公園の遊具を使ったトレーニングのためだ
しかし、その日はいつもと違った
いきなり目の前に武装した虐厨が現れ、銃口を女に向けた
タン!
反応が遅れた、うかつだった、長く修羅場を離れていたせいだ
しかし・・・
どこを撃たれたのかチェックしても、どこも撃たれていない
外したのか・・・そう安心した女性の目の前に
「お・・・ねえ・・・さ・・・」
最悪の現実が横たわっていた
「・・・まりさ・・・?」
まりさの額に穴が開いている、弾は中枢餡を貫き後頭部から抜けていた
「うそ・・・でしょ・・・神様、なんで・・・なんで撃たれたのが私じゃないの!!!」
「大丈夫ですか?」
女性はゆっくり後ろを振り向く
猟銃を手にした虐厨がいた
「いやぁ・・・野良ゆっくりの駆除をしていたんですが・・・
野良じゃないんですか、その糞饅頭は?」
「・・・何言ってんの・・・この子は私の飼いよ!!!」
撃たれた拍子に転がった金バッジを女は拾い上げ、虐厨に見せた
181
:
行き違いと不幸な事故 2/3 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/09/04(火) 22:43:47 ID:rSy89sKo0
「そうでしたか・・・」
女性はここで虐厨が普通に謝罪していれば、
少なくともこの場は丸く収めるつもりだった
しかし・・・
「でも通常種だから、慰謝料は1000円でいいですよね」
虐厨が虐厨たる所以か、女性の忍耐を一気に破壊する一言を、そいつは放った
ガッ!!
女性の右手は言葉を発した虐厨の顔面をつかむ
「ぎゃべ!?な・・・なにを・・・」
女性はただ一言言った
「死ね」
グシャ!!
女性は一気に右手を閉じた、必然的に握られていた虐厨の顔面は潰れ、中身が飛び散る
「き・・・貴様!」
他の虐厨が駆け付けてくる
女はまりさにそっと金バッジを取り付けると
猟銃を向けてきたそいつの懐に2歩で踏み込み、顔を潰した虐厨の持っていた猟銃の柄を
その下顎に叩き込んで頭蓋骨そのものを粉砕する
パニックになって猟銃を発射した虐厨には、頭を砕いた虐厨の体を盾にしつつ
そいつの持っていたナイフを投げて額を刺し貫いた
「ほ・・・本部!本部・・・ひぎゃ!」
通信を始めた虐厨を喉を掻っ切って仕留めると、
仲間を見捨ててワゴン車を発進させようとしていた
最後の一人のいるワゴン車の真上に飛び乗り、
助手席側のフロントガラスを猟銃の柄で砕いて車内へ体を滑り込ませる
おびえる生き残りに猟銃を向けて、つぶやくように女は言った
「本部へ案内しろ、この子の件で落とし前を付ける」
こと切れたまりさの遺体を脇にかかえた「鬼」の言葉に
抗う術などあるはずもなかった
182
:
行き違いと不幸な事故 3/3 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/09/04(火) 22:44:53 ID:rSy89sKo0
その日・・・虐厨で構成された、自称被虐生物駆除組織「ゆっくりんバスターズ」は壊滅した
前々から飼いゆっくりの捜索依頼で依頼主の飼いゆっくりを虐待死したり、
駆除活動中にたまたま近くを通りかかった散歩中の飼い実装を飼い主もろとも射殺するなど、
目に余る暴挙が山積みだった「ゆっくりんバスターズ」の壊滅は
歓迎の声こそあれど同情の声は無かった
女は警察に自首したが、状況と
日頃「虐待許可証」を盾に横暴を働いていた「ゆっくりんバスターズ」に
警察組織も手を焼いていた事情もあるため、
正当防衛が成立し数十分で女は釈放された
「・・・死のうかな」
誰もいない部屋の隅で、女は膝をかかえていた
目の前には、まりさの遺体の入った白い箱
まりさのいない部屋はあまりにも静かで広かった
「おねーさん、でんわだよ!」
「まりさ!?」
女はまりさの声に反応して顔を上げる
しかし、それはまりさの声ではなく、スマホの着信音だった
生前、まりさにお願いして録音させてもらったのだ
そして・・・電話の相手の名前の表示を見て、女の顔色が変わった
女はスマホを手に取る
「もしもし、私です」
「おお、良かった・・・着信拒否されるか、そのまま切られるかと思ったよ」
「たしかに、以前の私ならそうしていたでしょうね・・・」
電話の相手は、かつての女の雇い主だった
「キミが”ゆっくりんバスターズ”を壊滅させたと聞いてね・・・心底驚いた。」
「ええ、私はもう引退生活のつもりでしたから・・・あいつらが私のまりさを殺すまでは」
女はかつて、虐厨を狩る組織の一員だった
しかしとある事件の解決の際に、生まれたばかりのまりさを保護した
無理やり交尾させられ息絶えた子ゆっくりから生まれた
祝福されない命
自分が孤児院の出身であることと
何時までも終わらない駆除活動に嫌気の刺してきていた彼女は
まりさの保護育成を口実に休職
そのまま一線から退いて裏方に徹するつもりだった
「話と言うのは・・・君にもう一度、働いてもらいたい」
「いいですよ」
「実は後進の育成や増え続ける虐厨の処理に人手が追いつかなくて・・・え?」
「OKだと言ってるんです、ボス・・・私にもう一度、やつらを殺す機会をください」
こうして女は、戦場へと舞い戻った
まりさの金バッジを左胸につけたその女のために
多くの虐厨や虐待組織が潰されていくことになるが・・・
それはまた別の話
(おわり)
183
:
NTRのリスク 1/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/10/26(金) 23:17:35 ID:MHgk89p60
ブウウウウウンドドドドドド・・・
男は今日も腕の延長戦とも相棒とも言うべき道具を動かす、仕事を達成するために
「お前の言う事は大げさなんだよ」
「たかがXXXを傷つけられた程度でガタガタ言うなw」
「いやなら見るな、どっかいけw」
「小さいことで余計な事せずだまってろ!出なけりゃお前もヤツラの同類だ!!」
「ぷwまだそんな昔のことねちねち根に持ってんの?www」
奴らは反省しない、何をしようと相手が破滅しようと反省しない
周りの無理解な外野も同罪だ
こちらの痛みを、大切な存在が受けた痛みを理解しようともせず
自分のモノサシや価値観だけを押し付ける
何より度し難いのは審判面で訴えを握りつぶす身内のクズだ
文句ですらない説得もまた彼らにとっては「荒らし」でしかない
結果として被害報告はされず被害の全容は今も明らかではない
もうたくさんだ・・・これ以上奪われてなるものか!!
184
:
NTRのリスク 2/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/10/26(金) 23:19:25 ID:MHgk89p60
「やめてぇ!!」
しゃべるタブンネが一体、両手を天井のフックにつながる縄で縛られ無理やり立たされていた
ここは港に近い倉庫
虐厨3人がその明らかに誰かの手持ちと分かるタブンネを誘拐し嬲っていた
もちろんこれは犯罪ではあるが、彼らは「タブンネはこの扱いこそ本来の姿」と
自分勝手な脳内設定を根拠にしていた
「おい、こいつの鞄に何か入ってるぜ?」
一人がタブンネが持っていた鞄の中から金銭と一緒にピンクのスマホを取り出した
「だめ!それはご主人様の・・・!」
虐厨たちは懇願を無視してスマホを操作した
「はぁ〜いもしもし、この子のご主人様?」
「・・・そうだ、誰だお前は?」
野太い男の声がしたが、彼は構わず続けた
「おたくのタブンネちゃんはオレたちでいただいてま〜すw
悔しかったらここまでおいでwwwwww」
虐厨はあられもない姿のタブンネを写メにとって飼い主のスマホへ送信した
「・・・・・・・」
「いやぁ黙っちゃったねw見捨てられちゃったのかなwww」
「そ、そんな・・・」
虐厨たちは、スマホの向こうでする車両の音と同じものが
倉庫に接近していることに、この時点で気づいていなかった
その音が倉庫のすぐ外で止まったことも気づかず
「さぁてw所有権を放棄された豚を解体するとしますかwww」
男たちがナイフを取り出した時
「待たせたな」
あの野太い声がスマホの向こうと板一枚隔てた倉庫の外から響いた
ゴンゴン!ゴド!!
同時に、倉庫の裏口の方から何やら大きな音がした
「なんだ?」
訝し気に一人が裏口に向かう
「あれ? 開かないぞ?」
裏口の扉は力任せに引っ張ってもビクともしなくなっていた
そして、彼らが入ってきた出入口の方にも同様の音が響く
「・・・・・おい」
「だめだ!くそ!閉じ込められた!!」
男たちは青くなった
このタブンネの飼い主が彼らを閉じ込める理由と言えば
警察へ突き出すために、確実に逮捕してもらうためにそうしたとしか思えない
彼らは違法行為は平気でやるものの、いざ警察を前にすると萎縮していた
しかしすでに顔写真公開の全国指名手配がされているということを
彼らはその疎さゆえに気づいていない
185
:
NTRのリスク 3/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/10/26(金) 23:20:33 ID:MHgk89p60
「・・・おい、なんか音しないか?」
ブゥゥゥン…という低い音がした、まるでエンジンのような・・・
それは、通話しっぱなしのタブンネのスマホとすぐ外からだった
連動している音に男たちは顔を見合わせた
やがて、破壊音とともに表出入口の右側から何かが飛び出す
チェンソーの刃だ
突然の事態に、虐厨たちはただ呆気にとられてその破壊活動を見つめていた
刃は徐々に壁を切っていき、やがてドアの隣に
直径2m以上ある大きさの面積の円を切って引っ込む
バタン!と音を立てて壁が内側へ倒れた
外にいたのは、ピエロマスクを被った青いつなぎの筋骨隆々とした大男だ
「チェンソーピエロ・・・?」
巷を騒がせている、虐厨専門の殺人鬼の名前を一人がつぶやいた
「ご主人様!!」
タブンネが嬉しそうな声を出し、マスクの男が頷いたことで
虐厨たちは自分たちが何をしたのかを理解した
殺人鬼相手に言い訳すら聞かない程度に
過激な挑発をしたことを
命と引き換えの喧嘩を売ってしまったことを
チェンソーピエロはゆっくりと歩いて接近する
一歩一歩歩くごとに重量感のある足音が倉庫の中に響いた
タブンネを人質に脅すか、武器を捨てて命乞いするか、
隙をついて逃げるか・・・
3人はそれぞれ全員がバラバラの行動に出た
「おい!コイツの命が惜しあああああああああ!!!?」
タブンネにナイフを突きつけた男は
次の瞬間には急加速して接近したチェンソーピエロに突き飛ばされる
その隙にチェンソーピエロの脇を走り抜けようとした男は・・・
「いでぇ!!」
転倒した、立ち上がろうとしてさらに激痛に襲われ気づく
足首から先の感覚がないことに
「いぎゃああああああああああああ!!!!!」
彼の両足首はすれ違いざまに切断され、血液が切断面から噴き出していた
そいつを一瞥すらせずチェンソーピエロは、
たった今突き飛ばした男の両足を右足で踏みつける
「やめてたずげでゆるじぎゅああああああああああああ!!!!!!」
チェンソーを勢いよくその足の間に入れ、コンクリートの地面を切り裂きながら
ゆっくりと股間から腹へ、腹から胸へ刃を進めた
186
:
NTRのリスク 4/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/10/26(金) 23:22:52 ID:MHgk89p60
「ひ、ひぃひぃ・・・ご、ごべんなざい・・・」
無事だった最後の一人は、生きたまま真っ二つに切断された仲間を見ながら
失禁しナイフを床に放り捨てて土下座した
「・・・・・・・・・・・」
エンジン音が止まる、効果ありと見た男は続けた
「あなたの手持ちだと知らなかったんです!!許してください!!
なんでも・・・何でもします!!」
「・・・なんでも・・・?」
チェンソーピエロは声を出して問い返した
「は、はい!!金でもポケモンでもなんでも差し上げます!!」
チェンソーピエロはゆっくりとひれ伏す男へ近づいた
その足がすぐ近くで止まる
「なんでも・・・だな? オレが欲しいものを・・・」
確認するように、チェンソーピエロは再度問いかけた
「はい!なんでも・・・」
助かった・・・! そう確信し顔を上げた男の顔面に、
ついさっき男が捨てたばかりの彼自身のナイフが突き立てられた
頭蓋骨などまるで苦にならないかのようにそれは男の両目の間に刺さり
後頭部へと貫通する
チェンソーピエロは約束を破ったわけではない
言われたとおりに欲しいもの---虐厨の命を貰っただけだ
その許可は奇しくも当の虐厨本人が出した
チェンソーピエロにとって何の不思議もない、異常行為ですらない
ごく当たり前の行動
「・・・・・・」
チェンソーピエロは最後の一人に目を向けた
そいつは両足首のあったところから大量の血を流しながら
チェンソーピエロの開けた穴へと這って行っていた
「ひぃ!!」
振り返った男とチェンソーピエロのマスクの中の目が合った
男は必死で、しかしチェンソーピエロからすればカタツムリより遅い速度で
這って進む
しかし、チェンソーピエロはそいつを放置してタブンネの拘束を解除した
「ご主人様、あいつ・・・」
「あれはいい、じきに死ぬ」
チェンソーピエロがいうのと同時に、最後の一人は穴から出たところで動かなくなった
止血もせずに強引に動いたせいで致死量の出血をしたのだ
187
:
NTRのリスク 5/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/10/26(金) 23:25:27 ID:MHgk89p60
「帰るぞ」
チェンソーピエロは軽々とタブンネを抱えると倉庫から出て行った
中には二つ、外には一つ
虐厨の死骸がそこに残るのみだ
チェンソーピエロがどうやって倉庫を見つけたのか
何のことはない、タブンネに持たせたスマホにはGPS機能があり、
チェンソーピエロ自身のスマホにその居場所を常に発信していた
電源を切ってもGPSは別機能として作動し続ける
たとえスマホを壊されたとしてもGPSが最後に信号を出した場所は
チェンソーピエロのスマホに記録される
つまり、タブンネに手を出した時点で居場所を特定され殴り込まれるのは
時間の問題だったのだ
あとは「仕事」と同じである
もう10分もすれば倉庫には仲間の「処理屋」が来るだろう
タブンネを誘拐した3人は跡形もなくこの世からいなくなるのだ
ポケモンセンターの帰り道
安心したのか助手席で寝息を立てるタブンネを男は赤信号で停止中
虐厨どもに向けたのとは全く真逆の慈愛に満ちた目で見た
かつて彼が姉のように慕っていた亡き両親の手持ちのタブンネの娘
少年だった彼を庇い死んでいった
周囲のクズどもに殺された、哀れな姉の忘れ形見で妹のような存在
パーキングエリアのポケモンセンターで治療を受けたおかげで
彼女は後遺症もなく完治しそうだ
ピピピピピピ・・・
男の運転席のドアポケットのスマホから着信音
男のものではない、さきほどの虐厨どもから奪ったものだ
何のためにかと言うと・・・・
「おい!愛護派の町を襲撃するってのに今どこにいるんだよ!?」
通話ONにしたスマホから聞こえてきた声に男は仕事モードに切り替わる
男のスマホにある追跡アプリと同じものをついさっきインストールしたため
声の主がいる場所は男に筒抜けだ
男はトラックの進路を自宅からそちらに変更した
念のため仲間の「駆除屋」にも連絡を入れよう
害虫を一匹も逃さないために
(おわり)
188
:
議論が終焉した世界での対策 1/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/12/27(木) 19:05:00 ID:ypebaDNI0
「なぁ・・・」
「ん・・・?」
二人の男が河原で転がっていた
彼らは虐厨と呼ばれる種族で、人に似るが人ではない
そして「被虐生物」やそれを保護する人々に襲い掛かる存在だ
彼らには法律など、ルールなど盾にもならないが
法律やルールを自分の身を守る盾にすることはあった
しかし・・・
ここ最近はそううまくもいかない
理由は簡単、「学習」されたのだ
「愛護」と侮っていた「被虐生物の保護者」たちは
ルールや警察に頼らず、己で自立を始めた
自分とパートナーを守れるに足るまで鍛え上げ、
もしくはポケモン修行をして強力なパートナーと共にいた
その結果
「幼稚園児を襲ったら傍にいたリザードンに黒焦げにされた」などという報告が
虐厨たちの本部に後を絶たなくなった
肝心のタブンネ狩りは今や完全に廃れていた
タブンネを持つトレーナーたちは過去の恨みを
先達が受けた屈辱を忘れてはいない
不意打ちをした虐厨がその場で3つに分割された、
あるいは襲撃部隊が返り討ちにされ
逃げた生き残りが追跡されて支部ごと黒焦げにされた・・・など
彼らの虐厨への対応は苛烈を極めていた
「タブンネ持ちに手を出す」「タブンネ狩り」は
今となっては「自殺」と同意義となっていた
189
:
議論が終焉した世界での対策 2/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/12/27(木) 19:05:43 ID:ypebaDNI0
河原で転がる二人も、ついさっきタブンネ持ちに手を出したばかりだ
トレーナーが幼稚園に通う幼女だから大丈夫だろうと
たかを括ったのが運の尽きだった
防犯ブザーを引かれて駆けつけたトレーナーたちに囲まれ
あっという間に袋叩きである
「愛護め・・・昔と違って手ごわくなったぜ・・・」
自分たちのしたことが世間一般の常識に照らし合わせても
「犯罪」であることに思い至るほどの知能は彼らにはない
大の大人が幼い児童を下卑た顔して取り囲んでいる時点で
第三者から見れば「よからぬことを企むクズ」とみられるのは当たり前である
そんな彼らのスマホへラインメッセージが届いた
「イーブイ肉が発売だってよ」
「マジか」
「ヒャッハー!!」
二人は顔を見合わせた
そうだ、何も被虐対象はタブンネだけではない
イーブイもまた被虐生物だ
「イーブイを持ってるトレーナーか・・・」
決意して彼らは獲物を探し始めた
そして一週間が経過した
「誰もいないじゃねぇか!!!」
とうとうキレた虐一はバールを地面に叩きつけて怒鳴った
彼らの住む地域にはイーブイを持つトレーナーなどいない
全員がブースターやニンフィアなどの
強力なポケモンに進化していた
かといって野生のイーブイに手を出す勇気は彼らにはない
子熊の傍に親熊が常にいるように
イーブイの傍には「両親」が必ず近くにいた
以前にもイーブイを蹴飛ばした虐厨が
ブースターとサンダースに波状攻撃をされ
すっかり炭になって転がったのを発見されたことがあった
「・・・あそこに、行くか」
190
:
議論が終焉した世界での対策 3/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/12/27(木) 19:07:24 ID:ypebaDNI0
「この先、GOの世界」
「暴力お断り」
そんな看板がずらりと並ぶゲートの前に二人は来た
「少し遠かったが、来てみるもんだな」
ゲートの向こうにはイーブイやピカチュウと戯れる愛護でいっぱいだ
「違反者は問答無用で消去します」
という看板を無視した二人は舌なめずりをしてゲートへ入り
「待ちなさい」
窓口の守衛に止められた
この先のGO世界の説明を延々とされた上に
入る目的や手にしてるバールや銃、ヘルメットなどの
所持理由を散々聞かれた上に
「誓約書」までサインさせられた
武装はあくまで自衛のためであること等を告げ
「誓約書」をろくに読まずにサインして通る
二人の目の前はまさに「楽園」が広がっていた
これから、ここが地獄と化すのだ
「我慢できねぇ!ヒャッハー!!」
「ちょっとなによこいつ!!?」
とっさに手持ちのイーブイを庇った少女が頭にバールを受けて倒れる
「邪魔すんなアイゴ!!」
少女の腹ごとイーブイを蹴飛ばし、
駆け寄ってきた少年と肩のイーブイへバールを振りかぶる
タタタタタタタタタ!!!!
次の瞬間、虐厨は全身を穴だらけにして倒れた
「キミ!大丈夫か!?」
「ったく、守衛の奴こんなの通すなよな・・・」
生き残ったもう一人は、相棒の死骸と
駆けつけた完全武装の男たちを交互に見た
男たちは少女の手当てをし、
「もう大丈夫だ」と少年に声をかけている
虐厨らがよく読まずにサインした誓約書には
「暴力行為は一切禁止
人にもポケモンにも危害を加えない事
上記を破った者は問答無用で消去します」
という文面がきちんと書かれていたのだが
ろくに読んでない彼は
何が起きたのかまだ把握できていない
とりあえずその場を離れようとした時
「動くな」
すぐ背後から声をかけられた
背中に硬い、銃口を感じて武器を落とし手を上げる
「案内してもらう、一緒に来い」
191
:
議論が終焉した世界での対策 4/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/12/27(木) 19:09:47 ID:ypebaDNI0
生き残り虐厨は、元来た道を引き返していた
ただ違うのは、背後から銃口を突き付けられていることだ
足音からして、来ているのは一人二人ではない
ゲートの向こうで解放されるだろうと思っていたが
彼らはゲートを抜けてからもまだ
生き残りについてきていた
やがて、虐厨の所属支部へたどり着く
「すいません、お聞きしますが」
隊長と思しき男が支部の窓口に駆け寄る
生き残りは「しめた!」と思った
愛護は愛護だ
自分を返した上で謝罪と賠償を要求するつもりだろう
だが、愛護に屈するほど虐厨は臆病じゃない
それより今回のことであの世界へ攻め込む口実ができた
仲間を集めて今度こそ荒らし潰してやろう
と、自分の方から手を出したにもかかわらず
生き残り虐厨は輝ける未来を妄想した
タン!!
しかし、それは銃声で砕かれる
顔を出した受付を、隊長は射殺した
死体を引きずり出して代わりに入り込み、
ゲートを大きく開く
生き残りを小突きながら部隊はゲートの中へ入り
全員が入ったところでゲートを固く閉ざした
「全ゲート封鎖完了だ! はじめ!!」
隊長をその場に残して部隊は散開した
数秒しないうちに銃声と悲鳴が支部から聞こえ始める
時折、爆発音がし炎がそこかしこで上がった
「お、おい・・・なにしてるんだ?」
「駆除だ」
隊長はさらりと言った
「駆除って・・・」
「害虫は巣ごと駆除するのが手っ取り早いだろ?」
言いながら受付にあった支部の地図を広げる
「A班、クリア!」
「B班、クリア!」
「C班、かたづけたぜ!!」
部下からの報告を受けながら、地図に赤いXを書き込む
すべての区域がXで覆われた時、
「よし、戻れ!」
撤退の命令を彼は出した
これで終ったと生き残りは思ったが・・・
戻ってきた部下たちは何やら作業を始めた
大きな塊を出して支部の中や外壁などに取り付け、
油臭い液体を撒き、赤く長いリード線を塊につなげて
それをまた隊長の傍にある装置へつなげていた
「何をする気だよ?」
「言っただろう、巣ごと駆除する、と」
隊長は生き残り虐厨を殴り飛ばすとその四肢の関節を外した
悲鳴を無視して部下が仕掛けた装置だらけの支部の中へ放り込む
支部の中にはあちこちに虐厨の死体が転がっていた
床は血と液体でまみれ
壁にも柱にも「塊」が張り付けてある
彼は近くで見て、やっとその「塊」が高性能爆薬であることに気付いた
慌てて支部の外へ這い出そうとする彼の目の前で無情にも扉は閉じられた
「きっちり3分、いつも通りだな」
大爆発を起こし炎を上げながら崩壊する虐厨支部を見ながら
隊長はつぶやいた
彼らは痕跡を消去すると「GOの世界」へ帰還した
この支部の再建は不可能だろう
datの海を探してもその痕跡すら残らない
それが彼らの仕事だからだ
長年の虐厨たちの活動は、彼らに対する寛容さも奪ってしまった
度重なる話し合いの誘いの門前払い
追い詰められた人々の訴えの妨害工作を重ねた結果
彼らが気付かぬうちに、危害を加えられる側の対応は先鋭化したのだ
今ではもう「手を出されたら即駆除すべし」が基本となっている
しかし生き残りを全く許さない対応のため
自分たちが今どういう現状に置かれているのか
当の虐厨たちは全く知る由もない
(おわり)
192
:
腐った果実の実る町 1/2 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/12/27(木) 19:31:58 ID:ypebaDNI0
ぷらぷら ぷらぷら
電信柱の上で
木の枝の先で
奇妙な果実が実っていた
誰も収穫する者がなく
ただ腐り果てるに任せるソレ
しかし人々はそれを遠巻きに見ながらも
ある者は無関心で
ある者は憎悪のこもった目で
ソレを見ていた
「じゃあ、10分くらい待っててね」
ここはスーパーの駐車場のペットコーナー
ちょうど空いている時間で
一人の少女が「チュンチュン」という鳥のような生物を
綱でつないで置いていた
綱は十分な長さで、その先は止まり木状の遊具につながっている
「なるべく早くかえってきてね」
少女は可愛いパートナーに手を振りスーパーの店舗に消えた
10分後
「いやあああああああああああああああああ!!!!」
チュンチュンは無残な姿で
スーパーの敷地内の木に吊るされていた
犯人の虐厨は、ちょうど背を向けて帰るところだった
少女がスーパーに入って3分後、
虐厨がやってきて虐待を始めたのだ
そして、今に至る
「どうしました・・・あ!!」
「そこの君!何か見なかったか!?」
悲鳴を聞いて駆け付けた店員と警備員は
少女と、悲鳴を聞いて思わず振り返った虐厨に向かう
「チュンちゃんが・・・わたしの・・・」
「へwあんなとこに繋げるからだよwwwwww」
その一言に少女は初めて虐厨の方を見る
「あなたが、やったの?」
「は?wwwオレがあのチュンチュンを殺した証拠でもあるのかよ?wwwww」
「じゃあ、どうしてお前はあのチュンチュンが
ペットスペースに繋がれていたことを知ってるんだ?」
腕組みをして訪ねる警備員に、虐厨は舌を出した
「いけねw」
193
:
腐った果実の実る町 2/2 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2018/12/27(木) 19:32:32 ID:ypebaDNI0
警備員は首を振った
「一緒に来てもらうぞ」
「いいぜwwwどうせ器物破損なんて大したことねぇからなwwwwww」
虐厨がそう言い放った次の瞬間
その首に鎖が巻き付き、一気に締め上げる
「死ねぇ!!!!!」
鬼の形相で少女は虐厨の首をきつく圧迫し始めた
背後からの鎖に、虐厨は手足をばたつかせる以外何もできない
尿が足元を濡らし、やがて虐厨は動かなくなった
少女は鎖を放り捨てるとスーパーへ駆け込み
10mはあるロープを買って出てくる
そして虐厨の首にそれを巻き付けると木の上によじ登った
「ごめんね」
愛するチュンチュンの亡骸を回収し、
枝を挟んで登ってきたのとは反対側に飛び降りた
「ぐええええええええ!!!!?」
ちょうど気絶から目を覚ました虐厨は、
今度は首のロープに締め上げられる
そしてそれは虐厨を後ろに引っ張っていき、
やがてその体が宙へ浮いた
虐厨の背後では少女がロープによじ登って体重をかけている
少女だけではない、店員も警備員も加わっていた
虐厨の体が十分な高さに浮き上がり足が届かないのを見ると
警備員はロープを少女と共に手にしたまま踏ん張り
店員は木の幹にロープを巻き付けて固定した
やがて、虐厨は苦しみぬいた末に絶命した
「申し訳ありません!!」
虐厨を始末した後、店長が出てきた
店長は少女に平謝りに謝った
「当店の敷地内に害虫の侵入を許した上に
ペットスペースでのこの失態、言い訳もできません!!」
「いいですよ・・・あの子を一人にしてしまった
私も悪いんですから・・・」
虐厨の死体を他所に、両者の話し合いは進められる
話し合いが終わり、事が示談で済んだ後も
出来立ての「果実」は木の上で揺れていた
この日、町にまた一つ
「腐った果実」が実った
誰も収穫する者がなく
ただ腐り果てるに任せるソレ
しかし人々はそれを遠巻きに見ながらも
ある者は無関心で
ある者は憎悪のこもった目で
ソレを見ていた
(おわり)
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196
:
神の賽子のままに 1/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2019/01/22(火) 19:28:44 ID:w8V2t.FE0
その男は、人でありながら妖怪になった
その男は人に危害を加えず静かに生きようとした
だが、「巫女」に退治された
何がいけなかったのか、残った思念は考えた
彼は時々見かける「ゆっくり」を見て思いついた
自分でもわからないなら、この仕掛けを使って
妖怪でも人間でもない存在に任せよう
すべてを神に委ねようと決意し、残る力で「外」へ転生した
「ゆっくりしていってね!!」
誤作は目の前のゆっくりをマジマジと見た
見たこともない、新種だ
「えきしゃは”えきしゃ”だよ、よろしく!!」
潰そうと思ったが、その前にふと
以前、ゆっくりもこうを潰した男が
後日、復活したもこうとその群れに村ごと襲われた話を
思い出して踏みとどまる
ゆっくりの特殊能力は侮れない
「お前は何ができるんだ?」
とりあえず聞いてみた
「えきしゃは占いができるよ!」
「じゃあ、オレのなくした財布の場所を教えろ」
えきしゃは口から八卦図を出し、考え出す
「お兄さんのお財布は、あっちの横穴の中だよ!!」
それは、すぐ目の前の段差の側面にある穴だ
「へびがいるからきをつけてね!」
忠告の通り、枝を持って突っ込む
「うわぁ!?」
太く長いマムシが枝に絡まって出てきた
うっかり腕を突っ込んでいたら命はなかっただろう
マムシを枝ごと遠くに放り捨て、再び別の枝で穴の中を探る
布のような手ごたえがした
引っ張り出すと・・・・・
先月落っことした財布が出てきた
中身も無事だ
「じゃあ、”えきしゃ”に用があったらまた言ってね!」
「えきしゃ」はそう言うと山の中へはねて消えていった
197
:
神の賽子のままに 2/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2019/01/22(火) 19:29:23 ID:w8V2t.FE0
占いをするゆっくりのうわさは国中に広まり
殿さまの耳にも入るようになった
虐厨の殿様はお供を連れて「えきしゃ」の駆除に乗り出した
理由はない
強いて言えば「珍しいゆっくりを虐待したかった」からだ
「残念だったな!ヒギャクセイブツのてめーらにそんな権利ねーよ!!」
誰にも危害を加えない、静かに暮らすと言った えきしゃへ、殿様は言い放った
刀で一刀両断され
断末魔を残し新ゆっくり「えきじゃ」は消滅した
文字通り、霧のように
それから一年後、山に出かけた者が行方不明になる事件が
続発するようになった
しかし、山での遭難は珍しくもなく
誰もがただの遭難、あるいは熊や狼による獣害
もしくは盗賊か野盗の仕業と思っていた
そんなある日・・・・・
国の端っこの農村で地揺れが起きた
ただの地震と思い誰もが表に出た次の瞬間
轟音と共に左右の山が崩れ、村は生き埋めになった
山に狩りに行った者も崩壊に巻き込まれた
川へ漁に行った者には土石流が襲い掛かった
唯一、たまたま隣の村に出掛けていた青年・誤作だけが助かった
誤作が村に帰る直前
目の前で山は崩壊し、家族や友人の待つ村を飲み込んでいった
「あれは・・・・・・?」
誤作は左右の山の頂上から紫色の煙が昇るのを見た気がした
「誤作どん!!!」
隣村の友人の伍平が駆けつける
「こ、これは・・・・・山が、なくなっちまってるだ・・・・・」
伍平は目の前の光景に戦慄した
ひとまず誤作をなぐさめ自分の村に誘おうと声をかけた次の瞬間
伍平の来た方角から巨大な火柱が上がった
「!?オラさ村が方角だ!!!」
と、いうのは
突然の地震の後、誤作の身を案じて伍平が村を飛び出していった直後、
村の井戸の水は使えなくなった
干上がったのではない、油が浮いてきたのだ
油は井戸だけではなく、畑にも田んぼにも浮いて出た
不運にも、畑仕事に出ている人々がいた
そして彼らの鍬が畑の中の石に当たり火花を散らした次の瞬間
火花は油=湧いて出た原油に着火した
目に見えている液体だけでなく、すでに気化した燃料で満ちていた木造の村は
たちまち1000度を超す炎と熱に包まれたのだ
村の生存者は、伍平だけだった
198
:
神の賽子のままに 3/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2019/01/22(火) 19:30:30 ID:w8V2t.FE0
この悲劇の後も国中で異変は相次いだ
突然地盤が崩れ村ごと深い割れ目に飲まれたり
落雷で起きた山火事が強風で麓の里まで火の壁となって押し寄せたり
また、突然村の中心に噴火口ができ隣の村まで溶岩に飲まれるといった具合だ
「祟りじゃないか?」
城の侍の誰かが口にした
思い出すのは、一年以上前に殺した「えきしゃ」とかいう新種ゆっくりだ
ゆっくりの中には特殊能力を持つものもある
人間に無害なものだけではない、人間をあっさり殺すことが可能なものや
中には村どころか国一つ滅亡に追いやりかねないものまで様々だった
「えきしゃ」の能力は「占う程度の能力」だと思っていた
しかし、もしそれが「本来の能力の延長線」にすぎないとしたら?
「陰陽術」、朝廷に仕えている陰陽師たちが会得している特殊な能力だ
中には「天気予報」「占い」そして「呪詛」などがある
「えきしゃ」が「陰陽術」を使えるゆっくりとしたらあり得る
そして「術者が死んだ後に発動する報復の呪詛」は確かに存在する
殿はすぐさま「えきしゃ」の死体、もしくは霊魂の捜索を命じた
弔い封じる以外にこの異変を止める術はないと思ったからだ
「えきしゃ、いるなら出てこい!!」
陰陽術に長ける虐厨侍は一年前に殿と共に出かけた場所で叫んだ
「えきしゃは、ここにいるよ」
あっさりと、探していた相手は出てきた
「ここ最近の異変はお前の仕業か?
「そうだね、えきしゃのしわざだよ
危害を加えない、は”前のえきしゃ”の使命だけど
えきしゃは人間さんたちに危害を加えなきゃいけない使命にあるんだよ」
えきしゃは、あっさりと認めた
しかしその言葉には違和感があった
「お前は殺された”えきしゃ”とは別の個体なのか?」
「ちがうよ、同じ”えきしゃ”だよ、でも”使命”は違うよ」
どうやら「えきしゃ」は「使命」という目的に沿って生きているようだ
そしてそれは、一度死ぬとリセットされる
だから今の えきしゃの目的は「人間たちに危害を加えること」
次にどうなるかは えきしゃ自身にも分からない
少なくとも今より悪くはならないだろう
そう考えた一行は えきしゃを潰した
そしてその場に要石を置き、祀り上げた
「えきしゃ」が退治されてから、異変は収まった
しかし国土も人口も半分以上に減少してしまった
さらに、行方不明者はまだ見つかっていない
それどころか、そちらの方はまだ収まっていなかった
捜索に行った者たちもまた行方知れずになるのだ
だが少なくとも天変地異が収まったことで
人々は元の生活に戻ろうとした
199
:
神の賽子のままに 4/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2019/01/22(火) 19:31:22 ID:w8V2t.FE0
それから半年後、異変は突如起きた
「こらぁ!!!」
伍平は誤作と共に新しく住み着いた別の村で百姓生活に戻っていた
ある日、畑を荒らす5匹のゆっくりたちに遭遇し怒声を上げた
しかし・・・彼女たちは意に介さず野菜を貪り続けていた
「なめるな!!」
伍平はゆっくりれいむに鍬を振り下ろした
あっさりと れいむは潰れた
しかし、ゆっくりたちは意に介さず食事を続ける
まるで、そんなもの意味はないと言いたげに
伍平は湧き上がる気味悪さを押し殺すように鍬を振るった
3匹目を潰したところで
ふと、伍平は異常さに気付く
目の前のゆっくりはせいぜい5匹だ
しかし、広い面積の村の畑はほぼ食い尽くされていた
目の前の5匹だけならありえない量だ
そして・・・「5匹いる」という事実に戦慄した
3匹潰したはずなのに、2匹ではなくまだ5匹いる
よくよく見れば、潰したはずのゆっくりたちが
何事もなかったかのように食事をしていた
「れいむたちは死なないよ、だって・・・」
「「「おまえにすでにころされてるからね!!!」」」
彼は思い出した
村に来た当時、村長に周囲のゆっくりの調査を依頼されたことを
「村の畑には手を出さない」「そんなことするのは悪いゆっくり」
そう言ったれいむたちだが
「今はそうでも将来手を出すかもしれない」と
伍平は一蹴し、群れを全滅させたのだ
「まりさたちは、畑に、お野菜さんに手を出さなかったから殺されたんだぜ」
「だから、畑に手を出してお野菜さんをむしゃむしゃするの」
「そうして欲しかったんでしょ? 理解したからあっち行ってね!」
伍平は大慌てで村長に報告に走る以外、なかった
最初は半信半疑だった村長も、伍平のただならぬ様子から
直接現場を見に出掛け・・・腰を抜かした
5匹どころじゃない
畑を埋め尽くさんばかりのゆっくりがそこにひしめいていた
そいつらは、畑の隣にある鶏小屋を破壊していた
鶏の断末魔で何が起きているのか村長は悟った
畑はもう野菜などない、だから鶏を襲ったのだ
だが、その次は・・・?
「たりない」「おなかすくね」「でもたべるものはもうないぜ」
そんな会話をしていた
村長は這いながらそっと離れる
「おい、まだ食べるものがあっちにあるのぜ」
それが自分にかけられた言葉かどうか確認する勇気は彼にはない
老齢の杖を突いて歩くはずの彼は
両足で立って全力疾走した
家に帰り人をやって村中に伝令する
畑の方の出入口は野武士や盗賊用のバリケードで塞がれた
最初こそ半信半疑で出立の準備をしていた人々だが・・・
どん!!どん!!!
バリケードを壊さぬばかりの打撃と
「おなかすいたのぜ!」「死んじゃうよ!」「早く食べられてね!!」
今まで聞いたことのない、おどろおどろしい声に
事態を悟った
村人たちは最小限の荷物をまとめ我先に村から出て行った
村を見下ろす小高い丘の上に一行がたどり着いたとき
村の中は、ゆっくりが跳ね回っていた
バリケードが破られたのだ
しかもゆっくりたちは
ただうろうろしているのではない
残された食料を貪り食い
家屋を体当たりで壊している
自分たちを探しているのだと村人たちは悟り恐怖した
残された家畜たちの小屋が襲われ、悲痛な叫びが断末魔が響き渡る
生まれて初めて、人々は「ゆっくり」に恐怖した
200
:
神の賽子のままに 5/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2019/01/22(火) 19:32:04 ID:w8V2t.FE0
別の村では、ドスまりさが暴れていた
彼女はかつて村の傍の山のゆっくりたちのリーダーだった
しかし村の虐厨が相互不可侵のルールを破り山狩りを勝手に行った
ドスまりさは直訴に向かった
生き残りを逃がし、向かってくる虐厨を跳ね飛ばし村に入る
しかし、その村の村長は「村人を傷つけた」という理由で
ルールを破った虐厨を軽い罰で済ました上に
生き残りを皆殺しにした
ドスは一番最後に殺された
そのはずだった
村長は目の前の光景が信じられない
しかし、一人、また一人と村人がその巨体で潰され
ドスパークで人の形の炭へと変わる
村人が逃げ込んだ家は火に包まれ、火だるまの人が転げ出て動かなくなる
しかし、ドスは村長が目に入らないのか無視して他の村人を攻撃していた
「お前を殺すのは一番最後じゃよ」
かつてドスに言い放った言葉を思い出した村長は
村人たちを見捨て一人だけ逃げようとした
が、村人を殺し尽くしたドスのドスパークを背後から受け
村の出口から少し離れたところで骨と化して転がった
城は、陥落しかけていた
国外の敵に攻め込まれたのではない
国内の敵に、正確には「敵と認定されたかつての民に」だ
「よおおおくもおおお!!やくそくをやぶってかぞくをころしたなぁあああ!!」
「お前も苦しめ!!しねえええええ!!!」
殿が「駆除」した「愛護」たちが攻め込んでいた
城の兵士は困惑した
相手は切っても突いても撃っても死なないのだ
それどころか時間が過ぎるにつれてその数はどんどん増えていく
「大変です!火薬庫に・・・!」
殿のもとに伝令が来て伝達をしようとした直後
城は火薬庫の爆発で跡形もなく吹き飛んだ
しかしよみがえった死人たちは死なない
彼らは次の標的を求め、城下町へ向かって行った
えきしゃは滅びゆく虐厨の国を山の上から眺めていた
新しく生まれ変わった時、「使命」もまた変更された
ルールは簡単
「使命のままに生きるべし」
「使命はその都度ランダムで変更される」
「ただし一度選ばれた使命は二度と選択されない」
この3つだ
今の彼の使命は
「無念の内に死んだ死人の好きにさせよ」だった
えきしゃはどうして自分がこんな生き方をするのか分からない
もっと平和的な考えをしていたと思う
だが、どうしてか今はもう忘れてしまった
えきしゃは死者だらけの国と化した国を去った
彼の行方は誰も知らない
(おわり)
201
:
神の賽子のままに おまけ 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2019/01/22(火) 19:33:12 ID:w8V2t.FE0
「な、なんじゃこりゃ!!!?」
行方不明者を特に多く出している山へ捜索に来た村の男たちは目の前の光景に戦慄した
かつてゆっくりの巣になっているとされていた洞窟の中
彼女らが一斉駆除で全滅し今は別のゆっくりが占拠しているそこは
地獄だった
あちこちに人骨が散らばり、乾いた血が壁にも天井にも地面にもこびりついている
人骨はどれも損傷が激しかった、頭蓋骨などは完全に砕かれ影も形もない
「骨を壊して中身を食った」のだと理解するのにだいぶかかった
同時に、人骨がここに大量にある理由も理解した
ここのゆっくりは、人を食うのだ
恐らく今までの行方不明者たちは、目の前のソレだろう
だが、今までこんなことはなかった
「ゆっくり」は野菜に手を出す個体こそいたが人間に手を出す奴はいなかった
駆除の時もただ逃げ回り命乞いをするだけだった
しかし夢ではない現実が目の前に広がっている
急いで帰り報告しようと最後尾の男は後ろを振り向いた
その目の前に、たくさんのゆっくりがいた
「ゆっくりしていってね!!」というお決まりのセリフはない
当然である
その挨拶は同胞か見知らぬ種族相手に行うものだ
これから狩る獲物にわざわざ挨拶をする奴はいない
そして彼女らの目は彼らの知るゆっくりのものではない
獲物を狩る狼や熊のそれだ
思わず後ずさりした男の真上から、何かが落ちてきた
それが天井に張り付いていたふらんであると知る前に
男の首は食いちぎられて血しぶきが散る
それを合図に洞窟の入り口、天井、奥の方から
次々とゆっくりが一行に襲い掛かった
こうして、「行方不明」はまた増えた
彼女らは「えきしゃ」とは関係ない
生きているゆっくりたちだ
だが、苛烈な迫害を受けて彼女たちは変わった
畑を荒らさなくても殺される
山奥に隠れ住んでも探し出されて殺される
そして人間に貢献してきたはずの「えきしゃ」の死が
決定打となった
人間との共存は不可能
人間と敵対する以外に生きる道はない
彼女たちはそう結論を出した
だから、山に入ってきた人間を積極的に襲った
最初は撃退できればそれでよかった
人間を殺せるなど、想定すらしていない抵抗だった
ところが・・・
襲った人間は、あっけなく死んだ
後ろに倒れた拍子に頭を石で割り、死んだ
「人間は殺せない」
今までの前提条件は消失した
自分たちでも人間を殺せる
ゆっくりたち全員の認識が変化するのに時間はかからなかった
徒党を組んで山狩りをする人間はともかく
単独で、あるいは2,3人で山に入る人間など
ゆっくりでも簡単に狩れた
いずれ来るだろう山狩りにも備えた
徒党を組み武装した人間たちが入ると
偵察の ふらんやもこうが空の上から見て知らせる
あとは身を隠し洞窟という「狩場」に入るのを待つだけだ
洞窟の中なら彼女たちの独壇場である
隠れる場所も死角も知り尽くしている
人間を獲物とした狩りを行うゆっくり
彼女たちの活動は徐々に広がっていくことになるが・・・
それはまた別の話である
(おわり)
202
:
新入社員「虐厨」 1/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2019/03/10(日) 13:38:41 ID:2LcVye3I0
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
ベテラン社員「辺手」の顔はこわばっていた
彼は以前、この会社の対虐厨部門にいたのだ
年のため後進に道を譲り、定年まで働くべく「生産部門」に異動を願い、受理された
「生産部門」は文字通り、農業やペット産業関連の部門だ
害虫を捕食する ゆっくりや収穫を手伝ってくれるミニイカ娘などを開発してきた
この部門が育てている「ゆっくりゆうかりん」は農家の心強い味方であり、
「ゆっくりゆかりん」は高級ゆっくりとして有名である
もちろん、虐待派経営の「加工所」と異なる
育成されている生物は全て野山で保護したものか、ブリーダーから預けられてきた子たちだ
政府とブリーダーたちとの信頼あってこそのものである
だから・・・・・・・
目の前にいる新入社員を辺手は今すぐたたき出してやりたかった
なぜなら、そいつは「虐厨」だからだ
「虐厨」は人間に似るが思考や趣味は全く異なる
常識は通じないしルールも自分に不都合となれば平気で破る
民家に侵入して飼われている生物を虐殺する事件は後を絶たない
その上、あの虐待派の「加工所」ですら、
販売用ゆっくりを遊び目的で大虐殺されて経営破たんに追い込まれたという話もあった
「所長・・・・・」
懇意にしている企業からの頼みで、社員を一人こちらに引き入れる事になった
が・・・それが「虐厨」だとは聞いていない
「いうな、対虐厨部門出身のキミが快く思っていないのは分かる
だが・・・この男は”加工所”勤務だった男だ、大丈夫だろう」
そうなら、と辺手は所長の意見への反対を一応は取り下げた
しかし、それが大間違いだったことを思い知るのに
時間はかからなかった
203
:
新入社員「虐厨」 2/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2019/03/10(日) 13:39:18 ID:2LcVye3I0
「うあああああああああああああああああああ!!!」
「なんだ!!?」
辺手は休憩室で一服中、施設内に響き渡った大音声の鳴き声にタバコを落としそうになる
鳴き声が聞こえた先、そこは生まれてまだ数日の赤ん坊ゆっくりの育成室だった
タバコの火を消して慌てて駆けつけた辺手は
絶句した
彼女たちはとてもデリケートである
ちょっとしたストレスで死ぬこともあるし
排泄がうまくいかない、餌をうまく食べられないなどなど
突然死ぬ要因には事欠かない
だからこそ、親であるゆっくりがいないここでは
施設職員やAI搭載のロボットが親代わりになって子育てをしている
特に育児ロボット「カッパ2000」は最新式かつ武装も充実していた
つい数か月前に施設に侵入した虐厨強盗が赤ん坊ゆっくりへ手を出そうとした結果
カッパ2000に体当たりされた上にスタンガンを絶え間なく浴びせられ、
職員が出勤して犯行を発見した時にはすでに犯人は瀕死だった
赤ん坊ゆっくりたちはどうなっていたか?
カッパ2000は動かなくなった犯人を安全と見たのか放置し、
赤ん坊たちに内臓の子守歌mp3を再生して聞かせていた
この見事な機転で奇跡的に被害は壊されたドアだけで済んだのだ
そんなカッパ2000が例の新入りを警棒でど突きまわしていた
「何やってるんだよ?」
辺手は長年ここに勤めてはいるが、こんな光景は見たこともない
そもそもカッパ2000が理由なく危害を加える等、報告もされてない
「べ、辺手さん助けてください!糞饅頭どもに教育してやろうとしたらこの鉄くずが・・・!」
「分かった、こっちこい」
辺手はカッパ2000に首から下げている社員証を見せて離れるよう命令した
カッパ2000は部屋の隅で怯える赤ん坊ゆっくりたちの育児へ戻る
辺手はそれを見ながら、新入りの首根っこを掴んで部屋の外へ出た
「おい、お前さっきなんて言った?」
普段の温厚そうな彼からは想像もつかないドスの効いた声で辺手は新入りへ問いかけた
「へ・・・?鉄くずが襲って来たって」
「その前だよ」
「ああ、糞饅頭どもに教育してやろうとしたら・・・」
辺手はその言葉をICレコーダーへ録音すると所長へ即座に連絡をした
204
:
新入社員「虐厨」 3/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2019/03/10(日) 13:40:02 ID:2LcVye3I0
緊急会議が開かれた
新入り虐厨社員「逆一」が言うには、
言う事を聞かない赤糞饅頭(赤ん坊ゆっくりれいむ)がいたので
リボンを無理やり奪ってやった
目の前でライターを取り出して火を付け、リボンを燃やされたくなければ・・・
と、脅してたところにカッパ2000の体当たりを喰らった
カッパ2000が落ちたリボンをれいむに取り付けたのを見て逆上し
カッパ2000の頭を殴ったら、カッパ2000が警棒を出して逆一を叩きのめした
以上が事の顛末だ
会議室の温度は一気に冷え込んだ、誰もが逆一へ冷たい目を向ける
このバカは一体何をしているのか、と
赤ん坊ゆっくりはデリケートである
ちょっとしたストレスでも容易に死に至る
「お飾り」を奪うなど論外も論外、絶対にしてはならない禁忌だ
「・・・所長」「やはり虐厨の言う事は・・・」「加工所どもとは縁切りましょうよ」
「ま、まぁまぁ・・・いう事を聞かなかったというのは、つまり、
他の子を虐めていた、ということかも・・・」
「いいえ、自分でうんうんしときながら始末しなかったからです」
所長が汗を拭きながらした弁護を、そいつは一言で粉みじんに砕いた
「あのな、赤ん坊に自分の排泄物を始末できるわけないだろ?」
「うんうんを食う事くらいならできるでしょう?」
自分が何か言うたびに室内の温度がどんどん下がっていることに
このバカは気づかない
結局、所長が強引に押し切ったため逆一の解雇はなかった
逆一は配置転換された
配置先の部署から猛烈な反対と抗議が起きたが
所長は権力をちらつかせ強引に済ませた
ところが・・・・・・・・
205
:
新入社員「虐厨」 4/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2019/03/10(日) 13:40:50 ID:2LcVye3I0
ジリリリリリリリリリリリリリリ!!!!
その日の夕暮れに緊急事態を告げる警報が施設内に鳴り響いた
「くそ!!また侵入者か!?」
この警報は、窓が破壊される、ドアのカギが壊されるなどした時に鳴る物だ
つまり、施設内ですでに事は起きている
慌ただしく非戦闘員の職員は退避し、警備員や手の空いているロボットが
逆方向へ走っていく
辺手は彼らを追い越して走った
「!!!?あそこか!!」
辺手は各所にある警告の出ている部屋を示す地図ランプを見ながら走る
そこは重要機密施設である
会社が予算をつぎ込んで日々研究を重ね改良したゆっくりの飼育施設だ
あそこだけは何としても死守しなければならない
最悪、一体でも死ねばその研究がパァになる
それほどの重要施設だった
「なにやっとんじゃああああああああああああああああああああ!!!!」
辺手は怒声を上げて飼育室の中へ突入し、虐厨を殴り飛ばした
殴り飛ばされたのは、あの逆一だ
室内は燦々たる有様だった
ついさっきまで生きていたであろう、れいむの子ども達は皆、潰れて餡子をまき散らし
親れいむは発狂して歌を歌っている
警報は「窓が破壊される、ドアのカギが壊される”など”した時に鳴る物」だ
それには「施設内に飼育されている生物が殺傷された時」も含まれる
センサーがゆっくりの餡子に反応し、警報を出したのは言うまでもない
「なにすんです、オレはうんうんをしたバカ饅頭に制裁を・・・」
「やっと開発に成功した”排泄をある程度我慢できるゆっくり”を
潰しておいて何言ってんだ貴様!!」
そう、ここにいるのは会社が予算をつぎ込んで
日々研究を重ね改良したゆっくりばかりである
今、死屍累々状態になっている「排泄をある程度我慢できるゆっくり」もそうだ
20年近い歳月をかけて改良に改良を重ね、やっとここまできた
研究者と会社の血と汗と涙の結晶
それが、見るも無残な様子になっていた
「ゆひゆひゆひゆひ!!!!」
母れいむは歌うのをやめると目玉をぐるぐる回しながらひきつった声を出し
やがてぱたりと倒れて動くのをやめた
「あ・・・ああああああ・・・」
母れいむは完全に非ゆっくり症で事切れていた
これを発症したゆっくりの遺伝子はズタズタに破壊されている
母れいむから遺伝子を抽出できたとしても、もう「排泄をある程度我慢できるゆっくり」は
作ることはできないだろう
「いいじゃないですか、そんな糞饅頭家族の一つや二つ」
「は?」
「またどっかからゆっくりを捕まえてきて教育すればいいんですよ
大丈夫ですって、うんうんしたら死刑とでも刷り込めばあんなバカ饅頭
すぐにうんうんをしなくな」
駆け付けた警備員が背後から制止するまで辺手は逆一を殴り続けていた
206
:
新入社員「虐厨」 5/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2019/03/10(日) 13:41:40 ID:2LcVye3I0
所長はすっかり蒼い顔だ
20年にもわたる研究、そのデータも時間もつぎ込まれた莫大な予算も
すべてこの一日で水泡に帰したのだから当然ではある
そして、彼の目の前には複数の辞表があった
「やめさせていただく!!」
反対したにもかかわらず権力を使い強引に配置を決定した所長へ
20年の研究を台無しにされた研究者たちが叩きつけた絶縁状だった
「あの虐厨と仲良くまたやり直せばいいでしょう!!」
必死で引き留めようとする所長を彼らはそう言って拒絶し去っていった
データは会社に残ってはいるものの、細かいノウハウは彼らの頭の中だ
他の企業との研究の競争に致命的なまでに大幅な遅れが生じることは避けられないだろう
残った者たちは冷たい目を所長に向けていた
この始末をどうするつもりかと
あのバカをとっととクビにしてください、と
暗に皆、語っている
当の元凶はと言うと、辺手への厳罰をさっきから訴えていた
自分がしでかしたことなどどこ吹く風
それどころか反省すらしていない
部屋の空気が低温になっていることに気づきもしない
無論、その低温に所長も晒されていた
空気が読める男である彼は逆一と異なり、それを肌で感じていた
「所長、こいつを罰していただきたい」
長い沈黙の末、辺手はそう告げた
ぎゃあぎゃあ喚く逆一に別の者たちが猿轡を噛まして椅子に縛り付けた
「20年にもわたる研究を台無しにしたばかりか、貴重な人材を失った
研究のノウハウが彼らにしか活かせない以上はデータなどあっても意味はないでしょう」
所長が口を開こうとする前に辺手は続ける
「我が社から排せつ物を出さぬゆっくりを出すのはもはや不可能です
すでにある金バッジゆっくりの生産を続けながら食いつなぐしかありません
新しいゆっくりのアイデアはまた一から出す方が早いでしょう」
「それしかないわね」「そうだな」「こいつさえいなければ・・・」
誰もが口々に辺手の提案を支持し、逆一へ恨み言をぶつけた
「しかし・・・まだたったの数回だ、罰するほどの事じゃない」
その場にいた逆一を除く全員が「何を言ってるんだお前?」と言う顔になり所長を見た
辺手はため息をつくと懐から辞表を出し所長の前の机にそれを叩きつけた
「この会社には長くお世話になりました、所長あなたにも
ですが、私はこのような末路を迎えるために身を粉にしてきたわけではありません
所長、あなたがまだこいつを庇うなら・・・もうついて行けない!」
他の社員も立ち上がった
「オレも」「私も」「長いこと御世話になりました」
誰もが懐から辞表を出し、所長の前に叩きつけた
「おうwww出てけ出てけwwwwwww」
猿轡を噛み切り汚物のような暴言を喚きだした汚物と
虐厨を最後まで庇った所長をその場に残し
彼らは部屋を去っていた
(つづく)
207
:
新入社員「虐厨」 オマケ 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2019/03/10(日) 13:42:37 ID:2LcVye3I0
「排せつ物を出さないゆっくり、新登場!」
辺手は暖かいコーヒーを飲みながらテレビのCMを見ていた
そのCMは、元居た企業のライバルの会社のものだ
辞表を出した研究者たちの誰かがあの会社に入り研究を完成させたのだろう
「辺手課・・・いえ、部長、社長がお呼びです」
「分かりました」
辺手は新しい企業に就職し、そこで半年と言う短期間で異例の出世をしていた
これまでのノウハウを活かしただけなのだが、
この会社では、なくてはならないものばかりで
彼らは辺手のような人材を心底欲していたのだ
「失礼します!」
社長室に入った辺手は、そこに社長意外の人間がいることに気付いた
その人々は、どう見ても警察関係者だ
「辺手さん・・・ですね? 初めまして、私は事件担当の芽土警部です」
「初めまして」
両者は社交辞令の挨拶を交わした後、本題に入った
「あなたがあの企業に以前勤めていらしたと聞きまして・・・」
「・・・私の前の職場が、何か?」
嫌な予感がした、刑事はかぶりを振って口を開いた
「あそこはもう、会社とは呼べません・・・強盗団のアジトでした」
「またどっかからゆっくりを捕まえてきて教育すればいい」
あの時に逆一が言ったことが最悪の形で実行された
逆一は仲間の虐厨を集めて会社の再生を図った
最初は山に入りゆっくりを持ち帰るだけだった
しかし、やがて彼らは保護区域にまで手を出し
ついにはブリーダーの施設や民家の飼いゆっくりを拉致するようになったのだ
そのやり方も乱暴の一言に尽きた
邪魔な壁や柵は破壊され、邪魔する人間には容赦ない暴力が振るわれた
幼い子供を含む少なくない人々が殺された
「今ではあの会社は飼いゆっくりを虐待のために販売する悪質企業で
”捨てられた野良”と評して飼いゆっくりを売りさばいていました」
話が過去形という事は、あの会社はもうこの世にないという事だ
人々に迷惑をかけた虐厨は容赦なく人権をはく奪され駆除される
仲間がいることで有頂天になった逆一もまた生きてはいないだろう
ふと、辺手はあの会社に唯一残っている人間「所長」を思い出した
「すいません、その企業の所長はどうなりましたか?」
芽土警部はかぶりを振って応えた
「最後まで虐厨たちを庇う発言をやめなかったので有罪が確定しました
一生、刑務所から出ることはないでしょう」
辺手は簡単な聴取を受けた上で社長室を辞した
もし、あの時決別しなければ自分もまた有罪になっていたかもしれない
だが、決別したがために今は別の企業に就職し成功し
誰もが自分を認める理想の職場で働いている
対して所長は、今や塀の中だ
前の職場の面接でカチコチに緊張した自分へ優しく語り掛けてくれたり
失敗を庇ってくれたりした所長を思い出す
恐らく逆一たちにもあの「やさしさ」を与えたのだろう
しかしそれは彼を知らない者たち
警察や被害者たちから見れば「虐厨を庇うやつらのシンパ」としか見えないのもまた事実だ
最後の最後まで汚物を庇い続けたあの「やさしさ」が彼を終わらせた
今度、差し入れでも持っていこう
自分だけは忘れないでおこう
辺手はそう思いながら職場に戻り仕事を再開した
(おわり)
208
:
冤罪と「ノコリモノ」1/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2019/04/02(火) 00:13:33 ID:TxOn7.Oo0
「主文、被告人・合蔵を懲役10年の刑に処す!」
「そんな馬鹿な!!俺はやってない!!」
検察官虐厨の虐一は心の中でガッツポーズをした
今度の裁判も彼の勝ちだった
目の前の愛護派弁護士が抗議するも虐厨裁判官は聞く耳をもたず
無実を叫ぶ合蔵を法廷から退場させた
虐厨である虐一が検察になったのは決して正義のためではない
他人の人生を左右する力が欲しかっただけだ
白を黒に変える万能感も、泣き崩れる愛護も
無力感に苛まれる事件遺族も、
どれも彼の心を満たすオモチャだった
虐厨の起こした事件はどれも軽くなるか無罪となり
逆に愛護が法廷に来れば、冤罪であっても必ず有罪となった
「疑われるからには理由があり、いつか本当にやるだろう!」
彼はそんなことを裁判官たちに演説して聞かせた
熱く語り偽りの正義をあたかも本心のように見せた
だから、疑う者はいなかった
ある日・・・裁判官の一人が死んだ
虐一が贔屓にしており個人的付き合いもある友人の一人でもあった
その死に方が奇妙過ぎた
彼は、自宅のリビングにある金魚の水槽に顔を突っ込んで死んでいた
死因は溺死ではない
水槽の温度は100度近くまで上昇しており、ぐつぐつ煮えていた
水槽にヒーターなど付いておらず、
そもそもそこまで温度を上昇させるヒーターなど存在しない
発見された当時、彼の家は施錠されていた
彼には家族はおらず、合鍵もない
そもそもどんな人間なら、どんなトリックなら
こんな殺し方が可能なのか?
そしてその事件が解決しないうちに、また新たに一人死んだ
今度は虐一と親しい虐待派の警察官だった
顔面に警察手帳を突き刺して彼は死んでいた
手帳に人体を破壊可能な強度は、ない
再現実験はことごとく失敗した
その事件が終わらないうちに、また一人・・・
変死者は次々と相次いだ
209
:
冤罪と「ノコリモノ」2/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2019/04/02(火) 00:14:38 ID:TxOn7.Oo0
虐一はいつしか「次こそ自分ではないか?」と考え始めた
これまで自分がしてきたことを考えると、恨みは相当買っていた
彼に恨みがある人間は相当数に上る
彼は常に周囲へ気を配り、護身用の警棒を鞄へ常備していた
ある日、彼は犯人らしき人物に遭遇した
その一撃を回避できたのは偶然だった
たまたま革靴の紐がほどけ、屈んだタイミングで
頭上を何かが通過したのだ
虐一は飛び退きつつ振り返って相手を見た
「お前は・・・合蔵!!」
虐一と目を合わせ、ニヤリと笑う
虐一は咄嗟にスマホのカメラで撮影した
合蔵は走り去った
「まて!!」
虐一は彼を追いかけたが・・・見失った
同時に不可解なことに気が付く
彼の革靴はスニーカーのようなものではない
そもそも靴ひもを結ぶのが面倒くさいからと購入時に店員へ注文付けて選んだものだ
靴紐は完全に装飾品で、しかも革製で固定式である
それが見事にほどけていた
そして・・・合蔵が逃げた先は袋小路だ
壁でも通り抜けない限り逃げきることはできない
だが合蔵は、まさにその壁抜けでもしたかのように
姿を消していた
210
:
冤罪と「ノコリモノ」3/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2019/04/02(火) 00:20:24 ID:TxOn7.Oo0
一応、虐一は一連のことを検察庁へ報告した
それから3日後
「なぁ虐一、お前本当に合蔵に襲われたのか? 人違いじゃなくて?」
出張から帰ってきた先輩検察官は開口一番そう尋ねた
「本当です!顔も見ましたし・・・写真も提出したでしょう?」
先輩検察官は少し困った顔をして、切り出した
「合蔵なら、昨日オレが見つけたよ」
「へ? 先輩・・・あいつに会ってきたんですか?」
「ああ・・・関わった人間の墓参りのついでに近くまで来たんでな
線香をあげてきた」
「・・・へ? 線香って・・・あいつんとこで誰か死んだんで?」
先輩検察官は溜息をついて、つづけた
「合蔵はな・・・再審請求が棄却された3日後、
つまりもう3年も前に死んでるんだよ、刑務所の中で首を吊ってな」
虐一は一瞬、先輩が何を言っているのかわからなかった
しかし、彼の背を見て勉強してきた虐一は、
先輩が決してうそを言っていないことを分かっていた
「で、では、オレは誰に襲われたんです!? そうだ、あの写真は!?」
先輩検察官はそっとファイル棚へ手を伸ばした、その端っこの黒いファイル
通称「おみやさんファイル」を取り出したところで
虐一は、自分たちに何が起きているかを悟った
「・・・見ろ」
虐一が撮影した写真のプリントアウトされたデータ
そして提出したSDカード
その中にあった画像には合蔵の姿はない
ただ・・・赤いもやもやした巨大な頭蓋骨のようなものがグワッ!と大きく口を開けている
それだけが映っていた
「すぐお祓いに行くぞ、まだ生きている関係者も集めてな!
すでに予約はしてある、連絡も他の奴にさせてあるから
お前はこの神社へ一足先に行ってろ!」
虐一は、急いで車を走らせる
幸い何事もなく先輩に渡された印刷プリントにある神社にひとまず着いた
30分後、先輩検察官が遅れて到着する
自動車から慌てて降りたその顔は、ひどく青ざめていた
「虐一!なんともないか!? すぐに始めるぞ!!」
「先輩、ほかの人は待たないので?」
先輩検察官は青ざめた顔で言った
「生きてるのはお前だけだ、他の人間はみんな死んだ」
211
:
冤罪と「ノコリモノ」4/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2019/04/02(火) 00:21:53 ID:TxOn7.Oo0
「そうですか・・・それは大変でしたね・・・」
年老いた男性神主が応接間で応対してくれた
「さっそく始めます、虐一様はこちらへ・・・あなたはここでお待ちください」
「よろしくお願いします」
先輩検察官は神主へ深くお辞儀した
2人は男性神主が入ってきたドアの向こうに姿を消した
2人が去って3分後、ノックがされてドアの反対側の障子が開けられる
「お待たせしました、お祓いの準備が整いましたのでこちらへ・・・」
顔を出した巫女姿の女性の言葉に、先輩検察官は怪訝な顔をした
「あの・・・虐一ならついさっきこの神社の神主さんが連れて行きましたけど?」
「神主? 神主は私ですが?」
「なんですって? じゃあ、あの中年男性の神主は・・・?」
「男性? この神社の職員は神様の関係で皆女性ですが・・・?」
先輩検察官は虐一たちが去っていった方のドアへ手をかけた
「・・・なん・・・だと?」
たしかに奥に廊下が続いていたはずのドア、しかし・・・
先輩検察官の目の前には、コンクリートの壁しかない
「そのドアはその先に通路があったころの名残です
もう10年も前に台風で廊下が壊れたので立て直す際に別に廊下を作って埋めました」
先輩検察官は問いかけた
「では、この壁の向こうは空洞ですか?」
女性神主はかぶりを振ってこたえた
「いえ、土砂崩れで山自体が崩れましたので封鎖しただけです、土砂しかありません」
そして虐一は、その日を最後に行方不明になった
一週間後、彼の遺体は神社の近くの林で見つかった
一週間しか経っていない、それに冬場にもかかわらず遺体は完全に白骨化していた
損傷は激しく、力任せに引きちぎったと思われる個所がいたるところにあり
頭蓋骨は粉砕され原型を留めていない
そして形を保っていた骨自体もボロボロに脆くなっており、ちょっと持っただけで
まるで砂のように崩れたという
検死の結果、死後10年は経過している遺体だという結果が出た
先輩検察官は虐一がいなくなった直後にお祓いを受けたためか
無事に生きている
しかし・・・「ツギハ、オマエダ」
時々、恨めし気な空耳が彼に聞こえることがある
しかし、周囲を見回しても、誰もいない
(終わり)
212
:
名無しの拷問官
:2019/05/13(月) 19:50:10 ID:sJ84tyMUO
よくわかんないけど
いじめネタはよくないです
213
:
許可証を得る資格 1/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2019/05/20(月) 23:29:27 ID:EfixbD.20
「どうぞ、お受け取り下さい」
ここは虐待委員会支部、虐厨の虐一は差し出されたカードを歓喜の笑みを浮かべながら受け取った
それは「虐待許可証」
虐待委員会の一員であると同時に、「誤った愛護を正す」権利を所有している証明書だ
事実、この許可証を持っていたためにゆっくりを飼育してた一家を襲って全滅させた虐厨が
無罪判決を勝ち取った事例もある
もっとも その虐厨は後日、被害者遺族に依頼を受けたヒットマンに殺され今はもういないが
しかし、虐一にはそんなことどうでもいい
彼にとって「虐待許可証」は、受け取って10分もしないうちに
「天下御免の免罪符」へと、その脳内で進化していった
「こっちだよ、お兄さん!」
支部を出た虐一の目に、散歩中のゆっくりれいむと その飼い主らしい少年が映った
「ひゃっはー!!」
虐一の蹴りがれいむの顔面にめり込み、その命を速やかに奪った
「れいむ!?」
「おっとクソアイゴ、これが見えるか?」
虐一はすかさず「許可証」を出す
「それは・・・」
「いいか、オレがやったのは”害虫の駆除”だw
害虫を表に出したお前が悪いwじゃあなwww」
虐一は高笑いしながら去っていった
少年の目にあった戸惑いと怒りは、深い憎悪と殺意に代わっていった
「ゲショ、こっちこっち!」
「まって、ミニちゃん」
虐一は今度は、道を歩くミニイカ娘とその飼い主らしい女性を見つけた
「うぜえwwwww」
虐一は女性を突き飛ばすとミニイカ娘を踏みつぶした
「いやああああああああああ!!ミニちゃん!!」
「おっと、これを観ろw」
虐一は先ほどと同じように「許可証」を出した
女性はぐっとこらえ虐一を睨みつける
「じゃあなセンソークンwwwそこで悶絶してろwwwwぎゃはははははwww」
虐一は高笑いしながら歩き去った
女性はミニイカ娘を拾うと、何かを決意した顔で帰宅した
虐一は有頂天だった
虐待許可証を見せるだけで飼いを殺された飼い主であってもあっさり引き下がる
もし彼に手を出そうものなら、法で裁かれる、だから手は出せない
どうしようもない恨みのこもった目はとても心地よかった
214
:
許可証を得る資格 2/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2019/05/20(月) 23:31:11 ID:EfixbD.20
虐一の前に、青いカラゲルゲとそれを抱えて歩くその飼い主らしき少女が現れる
一人と一匹は幸せそうにしていた
虐一はいやらしい笑みを浮かべると一人と一匹に突進した
あっという間にカラゲルゲを奪い、地面に叩きつけて踏みつぶす
「なにしがっだクソボケェ!!!」
少女はキレた
「ぎゃははは、これを見ろ」
虐一は虐待許可証を出した
「ざっけんな!!!!!!」
すかさず少女のストレートパンチが虐一の顔面に叩きこまれる
虐一は鼻血と歯の欠片を顔面から吹き出しながら吹っ飛び後方のブロック塀に叩きつけられた
間髪入れず「おかわり」が襲う!
「ま・・・まで・・・、オレは許可証を・・・」
「知るかダボが!!」
「だから、許可証を・・・」
「あたしのゲルゲちゃんを殺す許可を誰が出したんかゴラァ!!!!」
少女の左右の拳が虐一の左右の頬に交互に叩き込まれ、頬骨を砕いていく
「お・・・お前のやってる事は、傷害罪だ・・・」
「ゲルゲちゃんぶっ殺したてめぇは何なんだよクソが!!!!」
顎を思い切り蹴飛ばされ、のけ反る虐一の腹に容赦ないストンピングがさく裂する
「クソクソクソクソクソ!!!!なんで殺しやがったクソボケが!!!!」
虐一は完全に失念していた、いや想定することさえしていなかった
完全に逆上した人間には「許可証」だの「法律」だのが通じる訳が無いのだということを
もしも通じるなら、日常的に報復で殺されている虐厨の人数はぐっと減るだろう
さらに言うなら、「カッとなって刺した」という事件すら起きるはずもない
しかし・・・それでも虐一は思った
このメスガキがサル未満の知能なだけで、他の文明人から見れば自分は被害者だと
裁判に持ち込めば勝てる、と
だから・・・彼は叫んだ
「だずげでぐれ!!!ごろざれる!!!」
「まだ殺さねぇよ!!!もっと苦しめ糞野郎!!!!」
通行人は誰もがそれを見て、肩をすくめて去っていった
皮肉にも虐一の持つ許可証が、彼が何をして制裁を受けているかを
人々に教えていたのだ
215
:
許可証を得る資格 3/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2019/05/20(月) 23:32:49 ID:EfixbD.20
「もしもし」
少女に声をかける人間が現れる
声のした方を虐一は見た、ついに助けが来たと
喜色がパンパンに腫れボコボコになった顔に浮かぶ
しかし、期待した虐厨仲間ではなく
来たのは、ついさっき虐一が殺した「被虐生物」の飼い主たちだった
「お姉ちゃん、手伝おうか?」
家から持ってきたであろうバットを右手に少年は言った
「私も手伝うわ、あなたがやってなかったら私が殺してたから」
包丁を手にした女性が言う
虐一はそれでも・・・一縷の望みをかけて叫んだ
「だれかだずげで!!!ごろざれる!!!!」
しかし・・・
「おい・・・あれ虐厨じゃねぇか?」
「この人らのペット殺して報復されてるみたいだぜ」
「そうか、じゃあ、ほっとこう」
「だな、自業自得」
誰もが虐一を助けるどころか、見向きさえしない
「くそくそくそ!!この町はアイゴしかいねぇのか!!」
「虐待許可証」を傘に着て好き放題する虐厨は少なくない
この町では日常的にそれが起きていたため、住人の誰もが虐厨を嫌っていた
「虐待許可証」を振りかざすなど、「私はクズです」と言っているも同じなのだ
「どうしました・・・あ!!」
しかし、ついに虐待愛好会の腕章をつけたトランクを持った人間が現れる
「だずげで!!ごろされる!!」
「・・・・・・お前、何をした?」
だが虐一の願いとは裏腹に、少女たちと虐一を交互に見た愛好会会員は
虐一に冷たく問いただした
「何って・・・害虫を潰しただけだ!」
「・・・そうか」
虐厨の暴走を嫌と言うほど見てきた彼にとって、それだけで何が起きたかを理解するには十分だった
会員は虐一の手から「許可証」を奪い取った
216
:
許可証を得る資格 4/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2019/05/20(月) 23:34:14 ID:EfixbD.20
「なにをする!?」
「なにって・・・お前、裏面の注意書き読んでないのか?」
会員は「虐待許可証」の裏面を見せた
「一つ、この許可証を持つ者はそれにふさわしい品位と言動を心がける事
一つ、この許可証の悪用並びに迷惑行為への使用を禁ず
一つ、この許可証は免罪符にあらず
一つ、上記事項に著しく違反した場合、許可証は即座に失効する」
裏面にはそう書いてあった
虐待愛好会とてバカではない
急増する許可証を盾にした犯罪に対処すべく、こういう予防線も作っているのだ
「お前の名前は虐一・・・か、分かった」
「新しい許可証くれるんですか!?」
「はぁ? なに寝ぼけた事言ってるんだ、俺は不適格な奴から身分不相応な許可証を没収しただけだ!
それと俺の権限で現時刻をもってお前の会員登録を抹消する!」
「は・・・?」
まだ現実を飲み込めないバカに背を向け、会員は少女たちに向き直ると深々と頭を下げた
「大変申し訳ありませんでした・・・上に代わり謝罪します。この賠償は必ずします・・・!
こいつはたった今後ろ盾のないただの害獣になりました。
後始末は私がするので、どうか好きなようにしてください。」
そう言うと会員は手にしていたトランクを開けた
中には、ノコギリにバールに針に・・・あらゆる凶器がきれいに陳列されていた
「ありがとうございます、ついでで申し訳ないのですが・・・」
少女は口を開いた
「はい、何なりと・・・」
「教えてください」
会員はしばし考えた後、言葉を選んで口にした
「・・・それは、こいつの殺し方ですか?」
「いいえ、”殺さない”やり方を!」
217
:
許可証を得る資格 5/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2019/05/20(月) 23:37:19 ID:EfixbD.20
たっぷり5時間いたぶられ続けて虐一は息も絶え絶えだった
「さて・・・と」
会員は虐待に使われた道具を片づけ始めた
この突発的な制裁はすべて彼の責任と監督の下で行われた
また、彼は飼い主たちへ会へ直通の連絡先と警察や保健所の窓口を紹介した
それでもまだ彼の仕事は終わったわけではない
これから彼を橋渡しとして、飼い主たちとの賠償の話し合いが始まる
飼い主たちは会員と互いの連絡先を交換して解散した
「へ・・・へへ・・・これで、オレの罪は帳消しですよね?」
今後について考えていた会員は、元凶が発した寝ぼけた一言に我に返り
虐一の折れた右足を踏みつけた
「いぎゃあああああああああああああ!!!!?」
「何言ってるんだお前は? 害獣の分際で!」
言いながら手にしていた千枚通しを虐一の右足の甲に刺し通す
苦痛にのたうつ虐一を見下ろしながら会員はつづけた
「害獣は死ぬまでが仕事だ! 中途半端は許さん!!」
彼は人々に迷惑をかけ、虐待派の看板を汚した虐一を許す気など全くなかった
トランクからズタ袋を取り出して虐一を中に無理やり入れる
それを背負って彼は車を止めてある有料駐車場へ向かった
料金を支払い、彼はトランクに虐一入りの袋を詰め込んで発進した
行先は保健所の窓口だ
すでに日は暮れ星々が夜空を彩っているが、
「対虐厨用窓口」だけは24時間開けてある
なぜなら、虐厨たちによる被害はいつ起きるか分からないからだ
こうして、権利を手にした虐厨は自業自得で権利どころか
己の人権すらも失い、この世から抹消された
(おわり)
218
:
恨みと報い 1/2首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2019/06/20(木) 03:18:08 ID:oKnK7rpI0
虐太には大事なものがいた
ペットのちびギコだ
しかしそれはある日突然いなくなった
殺されたのだ
彼が殺したちびギコの仲間に報復されて
以来彼は、「ちびギコ」に分類されるものすべてを憎み襲った
飼いだろうがレッサー種ではなかろうが構わず襲った
おかげで何度もギコや戦闘型のしぃ等に追い回された
それでも彼はやめなかった
それから、数年後
虐太には仲間ができた
うっかり「飼い」に手を出してしまい
しかも飼い主の目の前でやってしまったため
その場で複数回刺された上に川に蹴落とされたのだ
それでも急所は外れていたのか、彼は死ぬことはなかった
なんとか岸に這い上がったところで
その区画の虐待組織の一人に拾われたのだ
ある日
帽子を目深にかぶり、コートを着た男がパイプ椅子に座って彼を出迎えた
「よお、遅かったな」
広いホールは血まみれだった
あちこちに組織の構成員が倒れている
男はガムを吐き捨てると、虐太へゆっくりと歩いて近づいた
「ずっと探したぜ、娘の仇のてめーをな」
男は帽子を取った
「つー族・・・!?」
赤いAAで「ギコ猫」に分類される種族だ
特に高い攻撃性と戦闘力で知られている反面
喧嘩を売ったりしない限り向こうから手を出してくることはなく
むしろ親切にしてくれる見た目と裏腹な紳士的種族として知られていた
そう、喧嘩を売ったりしなければ・・・
男は一枚の写真を出した
黄色いリボンのちびしぃがそこに映っていた
「見覚えねぇとは言わせねぇ、てめぇが殺したんだからな!」
男は写真を懐へしまうと、ナイフを取り出した
「ま、まてよ・・・」
虐太はつー族の男の説得を試みる事にした
うめき声があちこちからしていた
まだ息のある者が少なくない数いる・・・
虐太はこの組織に並々ならぬ恩義を感じていた
だから、できる限り構成員を多く助ける事を決意した
「お前が手を出したこいつらは復讐と無関係だろ!?」
「・・・・・・・・」
男は止まった
脈ありと見た虐太は言葉をつづけた
「お前は無関係の、ただの殺しをしただけだクソアイゴ!だから・・・」
『おとーさん、お友達と遊んでくるね!』
「おまえには娘の仇討する資格なんざねぇ!」
『警察です、あなたのお子様が事件に巻き込まれまして・・・』
「申し訳ないと思うなら、倒れてる奴を助けろ!」
『残念ながら、現場で死亡が確認されました』
「無関係・・・無関係、か・・・」
ぼそりとつぶやいたその言葉に
「そ、そうだ! 息のある奴の手当てを手伝ってくれ!」
男をもう少しで説得完了できる、と虐太はおもっていたが
あいにくと彼の言葉など耳に入っていない
『おねーちゃんは、むかんけいだっていったのに、さされた』
『あのおじちゃんは、ちびぎこはいきているだけでつみなんだって』
『ぼくたち、なにもしていないのに』
219
:
恨みと報い 2/2首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2019/06/20(木) 03:19:11 ID:oKnK7rpI0
いつの間にか虐太のすぐそばにまで男は来ていた
「へ?」
手伝ってくれるのか、何か聞きたいことがあるのか?
説得が成功したと思っていた虐太めがけ
振り上げられていた右手が降り下ろされた
右手は虐太の口に突っ込まれ中にあるものをしっかりと掴む
「あの子も・・・テメーが殺したオレの娘も・・・」
『あなたのお子さんは立派です、命の危険に晒されながら
友達をかばっていたそうで・・・』
『あの子がいなかったら、私の子も殺されていました・・・!』
「そう言ったんだろうがよ!!!畜生があああああああ!!!!!」
血を吐くような絶叫と共に右腕を口から一気に引き抜く
「ギョボゴボボボボボボゴオ!!!!」
虐太の口から赤い噴水が噴出した
つーの右手には平たい肉片が握られていた
「安心しろ、オレもつー族だ・・・てめーみたいなゴミクズみたいに
これ以上、理由もない殺しを重ねはしない
だがよ、ケジメは付けてもらうぜ」
つーは引き抜いた舌を床に捨てると、出口のドアへ向かって行った
助かった・・・そう思い虐太は周囲を見回した
「う・・・」
生きている仲間がいる!!
虐太はそれが、川で死にかけた自分を助けてくれた
今や無二の親友だと気づき、必死で這って近寄った
強烈な明るさも床の熱さは気にもならない
早く手当てをして、こいつだけでも・・・
と考えたところで、違和感を覚えて止まった
この暑さと明るさはなんだ?
虐太は周囲を見た
建物は完全に炎に包まれていた
天井も壁も赤い炎が嘗め尽くしている
これが現実なのか死ぬ前の幻想なのか
判断する前に
建物は崩れ落ちた
崩れ落ちる建物を、男は眺めていた
復讐は何も生まない
つー族である彼にはそれは分かっていた
だが、許せなかった
自分の娘の命を奪い
警察の手を逃れて生き続けたことも
自分の娘のような理不尽な理由で死んだ犠牲者を出し続けたことも
自分のような大切なものを突然奪われる遺族を作り続けたことも
だから殺した
十分な下調べを行い綿密に計画を立て
仇敵が一番望まないタイミングを見計らって仕掛けたのだ
警察へ出頭し罪を償えばそれ以上やる気は彼にはなかった
けれど仇はそうはしなかった
それどころか醜い命乞いをし
自分を正当化した
娘を殺した自分の暴言まで棚に上げて・・・
これは、奴が招いた結果なのだ
生存者が皆無なのを確認し、男はその場を後にした
(おわり)
220
:
次の一手 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2019/06/28(金) 02:42:15 ID:HvH5xs0w0
「やめろ!」「口だけのてめーらなんてこわかねぇwww」
「洗いざらいぶちまけてやる!」「おーおー好き勝手いいなさるwww」
「もうやめてくれ、ここが潰れたら・・・」「いやだねwwwwww」
その状態が定着して、長い月日が流れた後の
ここはとある場所
新しく虐待ジャンルを始めるべく虐待派と虐厨たちがアジトの建設に取りかかっていた
「住民たちへの説明は行うぞ」
虐待派は虐厨たちにこれだけは譲らなかった
虐厨が起こした事件など知った事ではないが
自分たちの方針と住民に危害を加える意思がない事などを説明するのだ
基盤の確保をまず得る事を彼らは最優先とする方針のため虐厨たちも渋々ながら従った
タン!
一発の乾いた音が青空の下の会議を停止させた
頭から血を吹いて虐厨の一人が倒れる
音のした方を見ると、手に銃を構えた住人たちがいた
「お、おい・・・なにをs」
問答無用とばかりに、住民たちは次々と発砲を始めた
逃げ出した虐待派にも容赦なく背中に銃弾が見舞われた
そうして・・・3分ほどで虐待派アジトは全滅した
「クリア!」「よし、駆除は完了した・・・撤収するぞ」
【虐待ジャンルは駆逐すべし】
それが、この場所における暗黙のルールだった
長い月日が流れる間、幾度も繰り返される衰退と滅亡
その発端となる虐待ジャンルへの注意喚起も懇願も功を為さず
管理者ら上への訴えも無意味だった
呵々大笑する虐厨たちに
無責任に虐待を始めては過ちを繰り返す虐待派たち
いつしか煮え湯を飲まされ続けた人々の間には「不倶戴天」の認識が生まれた
比較的新しく生まれたこの場所にもまた、その認識が浸透していた
「どうせ言っても聞かない」「始められたら終わり」「被害を訴えても門前払い」
「だったらもう話はいい、出ていかなくてもいい、代わりに死ね」
議論をやめ、武器を手にし相手を駆逐することを「最善の対応」と住人たちは考えた
短絡思考ではない、これまでの「積み重ね」の末に得た結論だ
「言葉が通じねぇならムシと変わんねーだろ?」
ある住人はそう言った
「アイツらは人を襲うんだ、人食いに落ちたケダモノも同じよ」
猟師をやっていた住人もまたそう答えた
虐待派まで駆逐対象にすることに抵抗を示す者もいたが
「無責任におっぱじめて管理もしねぇ、責任も取らねぇ対応もしねぇ
口約束とはいえ約束すら守らねぇあいつらと虐厨に差があるのか?」
こう言って進んで虐待派の殲滅に参加する者もいた
「オレの故郷はアイツらに滅ぼされたんだ、生きてる限り殺し続けてやる・・・」
そう言った被害者住民は目の奥に憎悪を燃やしていた
人に危害を加え続けてきた一派に対して人々が取るようになった、非情な対応
対話をやめた人々が次に選択したこの一手
短絡的と断じる声は意外と少なかった
「もうどれだけ長い間続いてると思ってんですか
そりゃあ、いつかはこうなりますよ」
人の良さそうな奥方はそう言って「仕方がない」と断じた
そう、「仕方がない」のだ
人々は自分たちの領域を守るため
今日も監視の目を光らせ、虐待組織を狩っている
(おわり)
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「いない」世界 1/6 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2019/08/14(水) 18:41:33 ID:yC7SNOCg0
かつて、「AA」と言う種族が世界中にいた
しかし今やその数は激減し
限られた場所でしか見かける事はない
その原因は
増長しすぎた虐待厨とそれらを危険視しなかった無知にある
昔
ここは、とある掲示板のとあるスレ
「ここは虐殺禁止区域よ!」
「うっせぇ!!」
抗議したちびしぃが蹴飛ばされ壁に叩きつけられる
「ちびちゃん!!」
母しぃが駆け寄るも、少女はすでに息絶えていた
「どうしてこんな・・・あの戦争がやっと終わったのに・・・」
「戦争」と言えば一つしかない
「またーり虐殺抗争」
流血を嫌う「マターリ派」と流血を好む「虐殺派」の激突だ
最初こそ小競り合いでしかなかった争いは次第に激化・大規模化し
気が付けば掲示板の存在自体が危ういものになっていた
双方の話し合いの末に「相互不可侵」を含む不文律が決められた
この勝者なき不毛な争いは「戒め」として語り継がれ今に至る
・・・はずだった、少なくとも戦争の参加者はそう思っていた
しかし、争いの発端であった虐待荒らしを率先していた虐待厨は違った
彼らは争いが終わるのも引き分けの和平も気にくわなかった
だから、暴れ続けた
新しいジャンルでも暴れた
やがて、彼らに追随する者たちが集まり
いつしかジャンルそのものを破壊し灰燼に帰すまでになった
世代交代が起きたのもそれに拍車をかけた
危機の訴えに耳も貸さず知ろうともしない「事なかれ主義者」たちの台頭
ただ危機を訴えた者に「荒らし」のレッテルを張り
また新キャラクターへ「荒らしの手先:のレッテルを張るその行為は
ただ気まぐれに虐殺を行い広めていった虐厨たちにとって
虐待ジャンルを始めてくれる虐待派の次に
心強い味方になることもあった
その結果、援軍を得られなくなったジャンルは次々と滅びていった
そして最初にやり玉に挙がったAA「しぃ」は絶滅寸前だった
「・・・この子は最期の”しぃの子”なのよ、もう次はないわ・・・」
「あふぉしぃがいなくなるんなら良い事だろw」
虐厨はそう言って笑った
「あふぉしぃ」とは、かつての抗争が始まる前に
虐殺の正当化のために作りだされた「しぃもどき」だ
その性格は最悪で愚劣極まり
似た容姿のオリジナル「しぃ」とはかけ離れたものだった
それを広められたことと、虐殺の手を「しぃ」にまで広めた事
「しぃ」と「あふぉしぃ」を同一視した上に保護区まで焼いたことが
より過激な戦争のきっかけなのは言うまでもない
「だったら、望み通りいなくなってやるわ」
しぃは、不敵に笑ってそう言った
次の瞬間、彼女は消えた
虐厨がいくら周囲を見ても
「しぃ」は、そこにいなかった
彼女だけではなく、転がっていたしぃやちびしぃ、べびしぃもいない
まるでそこに最初からいなかったかのように・・・
その掲示板は、「しぃ」の絶滅を宣言した
224
:
「いない」世界 2/6 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2019/08/14(水) 18:42:25 ID:yC7SNOCg0
やがて次々と「しぃ」の絶滅を宣言する掲示板は増えていった
「ニラ茶猫」のような亜種も例外ではない
そして・・・
「やった!最後のベビを殺したぞ!」
ついに保護区にまで虐厨の手は伸びた
絶対不可侵のルールは今や瓦解していた
「しぃ」だけではない
「ちびギコ」「おにーに」らも次々消えていった
今度は虐厨が困ることになった
「愛護派」の先鋭化・武装化が始まった
今までただ追い払われるだけだった愛護派は
ルールの形骸化・無意味化を悟ると二つに分裂した
愛するキャラクターと共にネットの奥に避難する者
そして武装し攻撃に躊躇しない者に大別された
前者を追いかけていた虐厨が後者に遭遇し
想定外の猛攻を受けて壊滅したという報告が出るのに時間はかからなかった
それだけではない
牧場まで襲った事で危機的な食糧難に直面した
「あんな奴らにひき肉の一グラムも渡すもんか!」
襲撃を生き延びた牧場主たちは皆、避難所へ行ってしまった
さらに深刻な問題がある
虐待の矛先がいなくなりはけ口がなくなったのだ
無計画に人員数を増やしたのも災いした
どいつもこいつも暴れることが目的の「あふぉしぃ」未満の頭ばかり
リーダーたち古参の言う事や虐待派からの忠告を聞くはずもない
だったら切り捨ててしまえばいいのだが
彼らはそうはせず、下っ端虐厨たちを庇い守った
その姿勢から武装した愛護派から虐待派をも虐厨と同一視する派閥も生まれ始めたが
彼らにとってそれはいつものことだから問題にはしていなかった
後にそのツケを支払う日が来るのだが・・・・・
「被虐生物」の生息地は牧場を含めすべて手を出してしまった
絶滅は当たり前である
「やめろ!オレはモララー族だぞ!!」
「いんや、モララーは俺たちのような”角耳”だ!
お前の耳は丸い! マルミミは人に非ず!!」
虐待の手先として使っていたAAへ矛先を向けるも
それらももういない
「なんでオレたちを拒絶するんだ? 同じギコ族だろ?」
「はぁ? 同族のはずのしぃたちを殺しといて何言ってやがる?」
「次はオレたち”つー族”をあふぉ化家畜化・・・だろ? 分かるぜそのくらい」
つー族へもオファーしたが完全に見透かされていた
だがこれは失敗してよかっただろう
彼女たちが裏切者へどんな苛烈な制裁を科すか
それは彼女たちの「戦闘種族」としての評判が物語っている
225
:
「いない」世界 3/6 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2019/08/14(水) 18:43:01 ID:yC7SNOCg0
「なぁ、”墓所”へ行ってみないか? あそこならしぃがまだいるかもしれねぇ」
彼らが最後に思い付いたのは、「墓所への遠征」だった
しかし、誰もがこれには難色を示した
「墓所」は「マイナーAA」の集う場所である
ただ数が少ないだけではない
怪獣王「グレートカメモナー」や悪食の鬼神「ヴィ」をはじめとした
敵に回すことどころか遭遇自体が「死」を意味する危険生物の坩堝だからだ
足を踏み込むこと自体「自殺」に等しい
同じ危険生物でも「つー族」はまだ話が通じ良心的だからマシだ
だが、あそこにいる連中には「対話」も通じない
そもそも言語を理解できる奴は少ない
最終的に、「墓所への遠征」は決定した
このままでは虐厨同士の殺し合いになりかねない
新しいジャンルへ手を出そうにも
今までの暴虐と約束反故の連発が彼らへの心象をどん底まで落としていた
現在進行形で手を出している連中はすでに交戦を始めていた
もう一方的に潰せるジャンルは皆無だ
それが決定への後押しになった
「ここは、天国か!」
墓所への第一次遠征部隊は目の前の後継に絶句した
「おにーに」をはじめとした数々の被虐生物に加え
カメモナーら絶滅種AAもそこらにいる
周囲にグレートカメモナーの姿はないがいても構わなかった
彼らには最新鋭の兵器があった
グレートカメモナーを撃破した戦果の過去事例も彼らに自信を付けていた
ただし、「ヴィ」は別だ
特に成体にまで成長している個体には絶対に遭遇したくなかった
噂話を含めてソレを倒したという報告はなく
倒すことを試みたところ、後悔する結果に終わった事しか見つからなかったからだ
他にもまだ存在を知られていない奴がいる可能性があった
安全を確保すべく、彼らはてきぱきと前線基地を作成した
「あんたら、何しに来たのかね?」
その作業中に、ここの住人の髭を生やした老人が話しかけてきた
「ここに虐殺スレを建てるのさ!」
「やめなされ」
老人はきっぱりと言った
「ここは忘れ去られた者たち、滅びた者たちの最後の楽園じゃ
そこを荒らすことは許されん!」
「うるせぇ荒らしが!」「そうだそうだ!」「ルールなんざ知った事か!!www」
老人は罵声を受けると首を横に振り、黙ってその場を去っていった
「前祝いと行くか!」
日が暮れて夕飯も済んだところで
虐厨の一人が捕まえていた
周囲にいた「ちびギコ?」を十匹ほど檻ごと持ってくる
「ん? 見た事のない奴だな?」
その「ちびギコ?」は奇妙だった
無表情でじっと虐厨たちを見ている
何より二足歩行だ
「ぃぇぁ・・・」
独特の声で「ちびギコ?」たちは鳴いていた
「雑種だろw」
その一言で皆、安心した
虐厨たちは久しぶりの虐殺を楽しんだ
殺しつくした死骸は外に放り出す
「さぁて、本部へ連絡だ!!」
「ぃ・・・」
「あん?なに・・・」
虐厨の一人の姿が、ふっと消える
「ぎゃあああああああああああ!!!」
外からそいつの悲鳴が聞こえた
「どうし・・・」
門を開けた虐厨の頭を槍のようなものが貫き
外へ引きずり出す
226
:
「いない」世界 4/6 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2019/08/14(水) 18:43:55 ID:yC7SNOCg0
うぞうぞぞぞぞぞぞ
先ほどの「ちびギコ?」の死骸が集まって一つになり
二人の虐厨を自分の体に押し込んでいた
嫌な音を立てて虐厨の体は「折り畳まれて」押し込まれていく
悪夢のような光景に一同は戦慄した
「お、おい、さっきのちびギコじゃねぇかこいつら・・・」
その一言に生き残りたちは、はっとした
基地内の檻にはまだ本部へ移送予定の個体が4匹ほどいる
「ぐぼぉ!?」
イヤな予感はすぐに現実化した
「ぃぇぁ」
檻の中から槍のような触手を伸ばし
背中から虐厨の一人を串刺しにする「ちびギコもどき」
檻の格子は他の「ちびギコもどき」が舐めていた
みるみる鉄ごしらえの格子が
まるで飴でできているかのように舐めて溶かされ減っていく・・・
残りの虐厨たちは武器を放り出し悲鳴を上げて逃げ帰るしかなかった
命からがら逃げだした虐厨たちは無事に元居た板へたどり着いた
そして仲間たちにすべてを報告した
「そいつはたぶん、『ぽろろ』だ」
古参の虐厨はそう言った
かつて虐待用生物として作られた生命体
しかし、どん欲な食欲と見た目とは不釣り合いな高い知能
細胞を一片でも残せば再生してしまう脅威の生命力を前に
作成していた研究所は軒並み壊滅
「ぽろろ」の開発は中止され研究所のあった板は「墓所」送りとなった
「まてよ・・・ちびギコたちをそいつらと入れ替えたということか?」
「そうだろう」
「なんのために?」
「ちびギコでは死んでしまうような試しのためだろう」
そこまで意見が出て、何人かの頭へある考えが浮かんだ
「なぁ、お前ら『ぽろろ』にやられた以外には何もないのか?
逃げて来る途中で追撃されたとか、なかったか?」
逃げ帰った虐厨へ思いついた一人が聞く
「ああ、特になかったぜ」
「まずい、お前たちは逃げ切れたんじゃない
わざと逃がされたんだ!!」
どういった意図があってそんなことがされたか
聞き返す奴はもはやいなかった
「他の虐待基地に連絡をしろ!グレートカメモナーが来るかもしれん!」
「はい!」
「オレは近くの基地に行ってきます!」
全ての基地に連絡をして対策を練り
共同戦線を近隣基地同士で作るべく彼らは奔走した
しかし・・・
「すぐ隣の基地が応答しません・・・」
「なんだと?」
「隣の基地に言ったやつから連絡です!」
「つなげ!」
「お、オレです!あいつら、もう基地の近くまで」
どん!どん!というジープを叩く音が通信機越しに伝わる
「落ちつけ!もう帰って来い!」
リーダーは通信機に向かって怒鳴ったが
「・・・く、来るなぁ!!!」
「ヴィィィィィ!!!」ベギィ!「ぎゃああああああ!!!!」
頑丈な4WDジープの装甲がひしゃげるような金属音
聞いたことのない恐ろしい鳴き声と虐厨の断末魔
その後は鳴き声を上げた生物のうなり声と
生肉を食い血をすする音が通信装置から基地内に響く・・・
「ま、間違いない、『ヴィ』だ・・・それも成体が、複数・・・・・」
古参の虐厨はその場にへたり込んだ
AA滅亡の最初の一日は、こうして終わった
227
:
「いない」世界 5/6 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2019/08/14(水) 18:44:54 ID:yC7SNOCg0
それから一週間、何もなかったが
それが嵐の前の静けさであることを誰もが予感していた
その悪い予感はこの日、的中した
グレートカメモナーが墓所から出てきたという報告がきたのだ
報告をよこした偵察車両は「ヴィ」の群れに襲われ
報告の途中で永遠に帰る事すらできなくなった
「こちら観測ヘリ!き、来ました!」
「よし!総員戦闘用意!」
しかし、次の報告と映像で全員の戦意は挫かれた
「グレートカメモナー総数は約200!!
しかも、データにある個体よりはるかに巨体です!!」
一体、もしくは数体程度の数の
過去に撃破例があるグレートカメモナーと同一サイズの個体
それが今回の交戦対象の前提である
数が圧倒的なことに加え「データよりもでかい」と言う報告
誰もが目と耳を疑った
嘘であってほしいという願いは偵察機からの映像で挫かれた
「討論中に出たものの特に気にしなかった意見」が全員の頭に浮かんだ
それは「討伐された個体はまだ亜成体もしくはカメモナーから成長したての未熟な者ではないか?」
というものだ
だから、AAたちでも狩ることができたのだ、と
もしアレが成体だったらこんなものでは済まないのでは、と
しかしデータにある個体の圧倒的な大きさと「当時の総力でやっと撃破した」という事実から
最大でもその大きさで実力もその程度だろうと
彼らは勝手に思い込んでいた
いや、頭に浮かんだ希望的観測を真実と自分たちに刷り込んでいた
これ以上の最悪の事態、それから目を逸らすために
次の指示を願う偵察からの声にどうにか返答しようとした時、
画面が光り映像が途切れた
何が起きたのか巻き戻すと
グレートカメモナーの何体かが歩きながら偵察機に頭を向け
口から何かを放ったのだ
「いったい何・・・」
答えは基地への衝撃と言う形で判明した
数キロ先の前線からグレートカメモナーの一体が放った「光線」
基地ではなく目の前の戦闘車両部隊へ放ったそれが勢い余って
たまたま直線上にあった基地の外壁に直撃したのだ
一瞬で「ヴィ」すら防いでいた外壁は蒸発し基地内部に「光線」は入り込んだ
優先的に狙い撃ちされることを想定して頑丈に作った司令室以外は
その一撃と火災、発電施設の連鎖爆発の火炎と熱の地獄の中に消えた
「りー、リーダー・・・ここ以外が消えました」
部屋のすぐ外を見た虐厨はそれを報告するだけで精いっぱいだった
あとはパニックである
部屋から逃げ出す者、必死に他の基地への通信を試みる者
司令室の脱出艇に勝手に乗り込む者などなど
司令室が到達したグレートカメモナーの群れに踏みつぶされるまでそれは続いた
生き延びたのは徒歩で脱出した者だけだった
脱出艇はグレートカメモナーに見つかり、「光線」の餌食となったからだ
228
:
「いない」世界 6/6 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2019/08/14(水) 18:45:41 ID:yC7SNOCg0
「火と嵐の3か月」と名付けられることになる
『墓所』の怪異による蹂躙で各地の虐厨や虐待派は攻め滅ぼされた
3か月目の最終日、最後の拠点はグレートカメモナーが手を下すまでもなく
食料の奪い合いで自滅した
敵の全滅を確認すると、怪異たちはゆっくりと『墓所』へ引き上げていった
一方で怪異と鉢合わせたはずの愛護派たちは無事だった
と、いうのは
「見た事ないAAだな、お〜い!」
彼らが怪異たちにした行為は「声をかけて手を振ってみる」などの
「非戦闘的な挨拶」の類のみだったからだ
中には武装した者や戦闘車両に乗る者もいたが
「ぃぇぁ」
「なにこの子すげぇかわいい!!」
と、ひたすら写真を撮る等の行為に留め加害的行動は決してしなかったので
彼らが攻撃されることはなかった
実は徒歩で逃げだした虐厨たちが攻撃されなかったのもこれが原因である
怪異たちは「敵意」を向け「攻撃」を行う者のみを狙っていたのだ
脱出艇などの虐厨の持つ車両は「機銃」などがあり
脱出時に彼らはこれを使って反撃をしてしまった
つまり、威嚇も攻撃もせずただ逃げるだけなら逃げ延びられたのである
「やれやれ、こうなってしまったか」
『墓所』でそうつぶやいたのは、あの老人だった
彼は『墓所』の中からすべてを見ていた
すべてが見えていた
「最初のモナー」と呼ばれる人々の一人、それが彼の正体だった
彼らには特殊な能力と不死性こそあれど
戦闘を行うような力はない
だからマターリと虐殺の大規模戦争の時も参加せず
ただ裏から一刻も早く争いを終わらせるように働きかける事しかできなかった
あの争いはどうにかできた
でも今の争いはどうしようもなかった
「ルールを平気で破る」「人の泣き顔が心地いい」
そんなゲスが増えすぎたためだ
彼らにはいくら理を説いても心に訴えても無意味だった
「今が楽しければそれでいい」「自分の楽しみのために他人がどうなろうと知った事ではない」
かつての抗争の時もこういった輩はいたが周囲の人間が抑えたり諭したりしてくれた
しかし今は違う
押さえてくれる大人がいない今、彼らを止める事ができる人間はいなかった
それどころか彼らに賛同する輩が増殖していった
「非暴力・平和主義」
かつて自分たちが争いを終わらせるために徹底させたそれをも奴らは利用した
無力さを思い知った「最初のモナー」を含む始祖AAたちは
介入の中止を決断
全員が『墓所』へ引きこもった
虐厨たちの全滅を確認したグレートカメモナーたちが帰ってくる
彼らが『墓所』から離れる事はまた同じことが起きない限りはないだろう
いや、もう起きはしまい
「最初のモナー」は廃墟と荒野と化したAA世界を見ながら思った
もう復旧は不可能である
あの愛護派たちに希望の目を向けてみたが
彼らはAAではない全く別の種族だった
恐らくAA種族はかなり遠くへ引きこもったかあるいは死滅したのだろう
あの虐厨たちの手によって
「物にはいつか滅びが来る、とは言うが
我らAAの『終わり』がこんな悲惨なものとはな」
思わず愚痴がこぼれた
あの別種族たちが同じ過ちを繰り返さないように
彼はいるかどうかも定かではない「神」に祈り
庵へ帰った
(おわり)
229
:
願いをかなえてやった 1/2 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2019/09/10(火) 19:26:47 ID:t5SYmMhw0
「ぎゃああああああ!!!」
ここはアローラ地方にほど近い地方
村の一角のブリーダーの家から断末魔が響き渡る
しかしその声に反応する者はこの場にはいない
カチャリ・・・
たった今断末魔を出した家のドアを
そっと開けて外の様子をうかがうのは
口とかぎ爪を血で濡らしたニューラだった
他の家からも同じように体のどこかしらを赤く染めたニューラが顔を出す
彼ら彼女らは互いの無事を確認すると、
村から去っていった
数日後、連絡のないことを不審に思った虐待愛好会会員が村を訪ねた時
村人全員が切り刻まれて殺されているのを発見することになる
ニューラたちの両親は難破船から流れ着いた番のマニューラだった
人に忠実だった両親は子供たちへ
「人に親切にしなさい」と教えていた
ある日、兄弟の一人がその意味を聞いた
母親は少し考えた後でこう伝えた
「人の願いをできる範囲でいいから叶えてあげなさい」
程なくして、両親は死んだ
この地方のブリーダーたちに殺されたのだ
「マニューラは他のポケモンを狩る残忍な肉食獣」
「ニューラはポケモンの卵を盗む泥棒」
彼らが知るはずもない、人間が勝手に作った図鑑の説明文
それが人々の間でマニューラ・ニューラの像を作っていた
人の言葉を覚えていた両親がいくら説得しても
人々は聞く耳を持たなかった
巣穴の奥深くに逃げ込んだため生き残った兄弟は
今後について考えた
特に「両親はどうして人に殺されたのか?」を話し合った
出た結論は「両親は人の願いを叶えなかったから」だった
人々の願いは
「マニューラは他のポケモンを狩る残忍な肉食獣」
「ニューラはポケモンの卵を盗む泥棒」
あの時、人々が口々にがなり立てていた言葉
両親から人の言葉を習っていた兄弟たちはそれを理解していた
結論は出た
「両親の意志を継ぐ事」
「人の願いを今度こそみんなで叶える事」
「子供が生まれたらその子らにもこの生き方を継がせる事」
兄弟たちは行動を起こした
まず、巣穴の一番近くの村に行くことにした
ブリーダーの家の卵を盗んで食らい
怒って出てきたブリーダーを切り刻んで食った
「マニューラは他のポケモンを狩る残忍な肉食獣」
「ニューラはポケモンの卵を盗む泥棒」
この二つが人々が自分たちになってほしい姿だと
その姿になることが「お願い」だと
兄弟たちは確信していた
その次はブリーダーの悲鳴を聞いて駆け付けた男
その次は腰を抜かしていた虐厨
その次は・・・・・・・・
一晩で村は死体だけが転がる凄惨な場と化した
殺した人々の肉を食い兄弟は
両親が死んでから初めて満腹になった
「人の願いをかなえれば、良い事がある」
両親のあの教えは間違いではなかったのだと
両親は最期に「お願いを断った者の末路」を身をもって
教えてくれたのだと
兄弟たちは涙を流しながら心に刻んだ
230
:
願いをかなえてやった 2/2 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2019/09/10(火) 19:28:12 ID:t5SYmMhw0
月日は流れ、兄弟たちの何体かは「お願い」の実現の最中に死んだ
だが生き残った者は子を産み数を減らすことはなかった
中にはマニューラへの進化に成功した者もいた
兄弟たちは「教え」を自分たちだけでなく
他のマニューラやニューラにも教え広めていくことを思いついた
やがてそれは、「虐待」の広まりによって迫害され
人から遠ざかっていたポケモンたちにも伝わった
人々が気付いたとき、「相手」はすでに相当数に膨れ上がっていた
虐待組織は「大義名分を得た」とばかりに狩りに行ったが
程なくして全滅した
戦闘経験の差、地の利が向こうにある事、圧倒的な数
何より各種ごとに持っている特性や技の数々、
勝てる要素がそもそもないのだ
人々は我先にとその地方から逃げ出すことを選んだ
人のいなくなったその地方は立ち入り禁止となった
さらに月日は流れ・・・
別の地方の海岸
ニューラの母子が打ち上げられた海藻や魚を拾い集めていた
その一行にマニューラが接近する
警戒する母子にマニューラは挨拶をし、
自分が丸太に乗って旅をしてきたことを話した
両者が打ち解けたところに・・・
「ミイツケタ!ひゃっはー!!」
虐厨が棍棒で襲い掛かった
ザン!!
「ひゃ・・・?」
虐厨は棍棒を見た、マニューラの爪で鋭く切られている
下半分は虐厨の手に
上半分はマニューラが持っていた
「ヒャッハー!!!」
マニューラは虐厨の声を真似すると
虐厨に棍棒で殴りかかった
マニューラは虐厨が動かなくなるまで殴り続けた
いきなり棍棒で殴るのがこの地方の人間の挨拶なのか
変わった挨拶だな、とマニューラは思った
母ニューラは怯える子を背にマニューラに近づくと・・・
両者は一言二言交わす
やがてニューラ母子が先導する形で歩き出し
マニューラはそれに続いて歩きだした
どこへともなく
しばらくして、この地方には
人々に襲い掛かるポケモンの群れが
現れるようになったという
(おわり)
231
:
願いをかなえてやった おまけ 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2019/09/10(火) 19:29:41 ID:t5SYmMhw0
虐待組織の組員は呆然としていた
あり得ない光景が目の前にあった
ポケモンブリーダーを切り刻み卵を食らうニューラ
生存者を探し回り切り刻んでいくマニューラ
「ぎゃあああ!」
悲鳴のした方を見ると、ペルシアンが男にのしかかり
その喉を食い破っていた
「マニューラは他のポケモンを狩る残忍な肉食獣」
「ニューラはポケモンの卵を盗む泥棒」
「だから駆除しても良い」
タブンネやイーブイの虐待に飽きた虐待組織が広めた
虐待組織監修のポケモン図鑑の記述の通りの世界が
そこにはあった
「ペルシアンは実はずるがしこく残忍な肉食ポケモン」
それも付け加えた覚えがあった
もちろん、図鑑の説明文はインチキだ
タブンネの時のように相手を貶め虐待しやすくするための
方便、そのはずだった
「嘘も100ぺんつけば真になる」
代々虐待組織で続いて来た教えは裏切ったことがなかった
人々は皆、賛同し
反対者は「アイゴ」のレッテルと共に排斥された
今回も虐待組織は勝利した
新しい虐待が始まり誰もが幸せになった
ほんの数週間前までは
「人を襲うニューラがいる」というデマとしか思えない報告
それが始まりだった
目撃者がいない事から偽情報と断じ気にも留めなかった
だが目の前の光景を見て納得した
目撃者がいないのではない、襲撃の生存者がいないだけなのだ
「メオ」
組員は背後の声に思わず首をすくめた
たまたま足元にあった空のペットボトルに足を取られ転倒する
その直後
ガシャン!!
ちょうどニューラが背後から飛び掛かったところだった
頭を狙ったカギ爪は空ぶってニューラは組員の頭上を越え
窓を壊し外へ転がり出る
組員が数少ない生存者になれたのは、
逃げ回るうちにたまたま川に落ちて
匂いによる追跡をニューラたちが断念したことと
川にいるギャラドスを彼らが恐れたためだった
命からがら地方を離れ彼は今、別の地方にいた
かつての仲間とは連絡は取れていない
しかしここにも虐待組織はあった
ここで一からやり直すことを彼は決意し、
今は新人として頑張っていた
「海岸沿いの村から連絡が途絶えたんだが、おかしいんだ」
「どうした?」
「みんな死んでたんだよ、鋭い刃物・・・いや、ツメであちこち切り裂かれて」
「あのへんのツメがあるポケモンはニューラくらいしかいないぞ、
別の何かが来たのかな?」
「だろうな、『ニューラが本当に人間やポケモンを襲う事はないはず』だ
念のため調査隊を組織しようって話になって・・・」
組員は先輩たちの会話を聞いて
手にしていたコーヒーのカップを落とした
(おわり)
232
:
あいごおに 1/3 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2019/10/21(月) 21:58:05 ID:j1vvsT6Q0
とある町の山に祠があった
伝説ではその昔、暴れた鬼「あいごおに」が封じられているという
いつの頃からか、その祠の前でタブンネや実装石、ゆっくりなどの
「被虐生物」を虐待し殺し捧げる祭りが年に一回行われるようになった
「なぁ、やめようぜ」
虐太へ悪友の虐杉は声をかけた
「はwびびったのかよwww」
そんな虐杉へもう一人の友人の虐重は小馬鹿にした声をかける
「ちげぇよ!夜はここに近づいちゃいけねぇって言われてるだろ?」
そう、祠のある場所で「祭り」が行われるのも
何故か真昼間だった
夜は決して行われず
「絶対に近づいちゃならん!」と
町の者は幼いころから厳しく言われて育ってきた
虐太はそれが気に入らなかった
所詮、「アイゴ」は「アイゴ」だ
迫害の対象でこそあれ恐れる対象ではない
それが虐太の考えであり友人たちに言っては
大人に聞かれて叱られていた
「着いたぜ!」
黙っていた虐太は祠の前へ恐れもせず進んだ
慌てて二人もあとに続く
周囲にはタブンネの骨やゆっくりのお飾りなどが散乱していた
つい先月行われた祭りの名残だ
なぜか片づけず放置することが習わしになっていて
それでも来年には綺麗に何もなくなっていたことから
「きっと野生動物が片付けたんだろう」と
誰もが思い気にすることもなかった
「よし、まずは掃除してやろう!」
虐太はそう切り出した
すでに穴は祠の近くに掘られていた
「掃除って、これを片付けるのか?」
「そうだ!片づけちゃいけないなら試しに片づけてやろうぜ!」
妙に思った二人だがしかし
虐太の言い分に納得して骨やお飾りなどを集め
次々と穴へ放り込んだ
「なぁ、これってお前が掘ったのか?」
「そうだ、昨日ここに来たからな」
二人はそれは初耳だった
祭りが終わった後も半年、昼であっても絶対に近づいてはいけないと
釘を刺されていたからだ
「”あいごおに”なんて居やしないのさ!」
片付けが終わり穴を埋めながら
虐太は二人にそう言い放った
「あ、おいおい、見ろよこれ」
虐太は祠の中の注連縄を指さした
そこには祭りの時に付着したのかミニイカ娘の帽子が引っ掛かっている
「オレは穴掘ってるからそれ外しといてくれ
無理なら注連縄を外してきれいにしよう
なぁに、黙ってりゃ動物が勝手にやったと誰もが思うさ!」
虐杉は虐太の言葉に頷くと
注連縄を外してミニイカ娘の帽子を外した
「感謝するぜ坊主、こいつはオレにはどうにもならんからな」
虐太は虐杉にそう声をかけた
虐杉はその声に口調に違和感を覚えた
いつもの虐太はこんな声で口調だっただろうか?
233
:
あいごおに 2/3 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2019/10/21(月) 22:03:52 ID:j1vvsT6Q0
「そうだ、ついでにお前たちに真実を話してやる
この町の伝承はゆがめられたものなんだ!」
虐杉も虐重も顔を見合わせた
「そもそも鬼は元は人間だった
虐厨の集落とも知らず迷い込んだタブンネを連れていた旅人
彼は村人にもてなされていたが
寝ている間に縛り上げられタブンネを目の前で殺された
寝る前に食った夕餉は別のタブンネの肉だった
旅人は怒り狂って叫んだ
”お前たちを殺し尽くす!たとえ鬼になってでもな!!”
宣言の通り旅人はその場で鬼になった
縛る縄を引きちぎり自由になると
屋内の虐厨を殺して回り
外へ飛び出して村の虐厨たちを手にかけた!」
「虐太・・・?」
そんな話は聞いたこともない
そして違和感もあった
虐太はまるで見て来たかのように話をつづけている
何より、目がいつもの虐太ではなかった
らんらんと輝きまるで獣のそれのよう
「村を殺しつくした鬼は隣の村にやってきた
そこを殺したら次はその隣
やがてウワサは近隣に広まり
徳の高い修験者が来て鬼を封じた
いや、慰めて眠らせた
この、祠の下にな!」
「お、おい・・・」
友の視線を気にせず虐太は話を続ける
「”決してここで殺生をしてはならぬ”と
修験者は人々に厳命した
そもそも彼は事の次第を聞いて最初こそ
自業自得と断っていたのだ
だが鬼の被害が大きくなりすぎたため
渋々腰を上げた
修験者は親身になって話を聞いてくれたぞ
そして、怒りや憎悪に身を焼かれる苦しみを察してくれた
祠を立て鬼と彼のタブンネたちを供養してくれたのだ!」
虐太は興奮してまくし立てた
「だが時が経ち修験者もいなくなった時
愚か者どもは鬼をただの伝説で迷信だと決めつけた
そして意趣返しのつもりか
ふざけた祭りを毎年するようになった
鬼は怒った、殺される生命を嘆いた
祭りの後で半年間立ち入りが禁止されるのは
鬼が殺された生命を慰め成仏させる時に
修験者から教わった念仏を唱え続けるためだ!
それを聞かぬためだ!」
そして虐太は二人を見回す
「鬼は時々やってくるお前たちのような
ひねくれ者へ語りかけて二度とこんな事をせぬように
言い続けた!
しかしそれは信じられず、時としてそいつらは
己の勇気を示すため逆のことを言い
祭りは終わるどころかどんどん激しくなった!
・・・やがて鬼は決めた
この封印を解いて出てくることを!
またあの時のように暴れる事を!!」
どん!!
その最後のセリフと同時に
祠が倒れた
やがて地揺れと衝撃に
3人の体は吹き飛んだ
意識を失う前に虐杉は
祠のあった跡から樹木ほどある
大きく太い右腕が突き出るのを見た気がした
234
:
あいごおに 3/3 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2019/10/21(月) 22:08:00 ID:j1vvsT6Q0
「キミ!大丈夫か!?」
「こっちも生きている!担架を早く!!」
気が付くと3人はレスキュー隊に発見されていた
最初に意識を取り戻した虐杉は周囲を見る
レスキュー隊だけではない
軍隊に警察に消防にマスコミ・・・
慌ただしく色々な人々が彼らの周囲を動き回っている
「あ・・・」
虐杉は何か聞こうと思ったが声が出なかった
何を話せばいい?
そもそも何を話せば信じてもらえる?
「無理しなくていい、水は飲めるかい?」
レスキュー隊員は彼が水を欲しているものと勘違いし
仲間にペットボトルを頼んで持って来させる
やがてヘリが飛んできて3人を乗せ、その場を後にする
どうして町の大人たちでなくレスキュー隊なのか?
なぜ、色々な人々があそこにいたのか?
その疑問は空からの景色で氷解した
虐杉たちのいた山肌は大きく抉られていた
ただし下にではなく上に、だ
間欠泉が噴き出して3人を吹き飛ばしたのだった
祠のあった場所はまだ勢いよく湯の柱が噴き出ている
そこから山のふもとへ、町へと虐杉は目を移した
何もなかった
黒く冷え固まったものとまだ赤く蠢くものがある溶岩の大地
それだけが広がっていた
かろうじて残る家の燃え残りや鉄骨の名残
自動車の残骸などで
そこが生まれ育った町だった場所なのだと分かった
突発的な火山活動による災害
政府はそう結論を付けた
しかしそれまで火山活動の記録もない場所で
どうしてそんなことが起きたのか?
学者たちの議論が進んだがさっぱりだった
そして町の生存者は山へ行っていた彼ら3人だけだった
「あいごおに」は何故か
「掃除をしてくれたお礼に3人の少年を助けた神様」と言う話になり
いつしか「あいごさま」という子供を守る神様の伝説が誕生して
やがて災害の慰霊碑の隣に立派な社が建てられそこで祀られるようになる
「あの夜の事は3人だけの秘密にしよう」
病院の病室にいる時、たぶん誰も信じない事や
自分たちがしたことは犯罪に当たるかもしれないと
悟った虐杉がそう切り出したが・・・
「夜? そういやなんでオレあそこにいたんだっけ?」
2人を先導したはずの虐太は開口一番そう言った
彼は災害の起きた日の先日の夜
祠に出向いて「祠に巻き付いていた」注連縄を外す悪戯をした時から
記憶がないのだという
そういえば、あの時の注連縄は「祠の中」のものだった
祠に巻き付いていたはずのもう一本はあの時にはもうなかった
では、彼らを先導し掃除を切り出した「あの虐太」は
一体誰なのか・・・?
二人は顔を見合わせた
そしてあの時の虐太を思い出した
別人のような、まるで見て来たかのような語り口調に
獣のように光る目・・・
そして、気絶する前に見た大きな腕
虐杉は虐太を見た
「?どうした?」
「いや・・・とにかく今回の事は3人の秘密だ!」
虐杉はそう言うと布団をかぶった
顔を見合わせた二人をあの時と同じ目で
虐太が見ていた事に二人は気づかなかった
そして翌朝
虐太はどこにもいなくなっていた
(おわり)
235
:
続きは地獄で 1/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2019/12/02(月) 15:52:50 ID:xwxSS.ec0
「た、たすけて・・・」
ボコボコに殴られ息絶えた相棒の死体を横目に
必死で命乞いをする男がいた
しかし見下ろす女性は汚いものでも見る目で見下すと
手にしていた鉄パイプを振り上げる
「・・・行こうか、ゲルゲちゃん」
少し目を離した隙に虐待され息絶えた家族同然の同居人の死骸を抱いて
女性はその場を後にした
ゴミ捨て場には元が人の形をしたものだとは分からないまで
叩き潰された肉塊の詰まったごみ袋が2つ残された
これが今、社会問題となっている「飼い虐待問題」だ
「甘やかされて育った被虐生物を虐めるのが面白い」
「アイゴちゃんが悲鳴を上げ怒り狂う様が楽しい」
「軽い罰で済むのだからやめる理由も恐れる事もない」
「顔真っ赤になって怒るだけの愛護なんて怖くない」
警察で取り調べを受けた加害者は口々にそういった
彼らに反省の弁は一切ない
「目を離した馬鹿が悪い」
彼らの言い分はこうだった
当然ながら飼い主の制裁で負傷、時には命を落とす奴も
時間経過に比例して増えていった
それでも彼らはやめなかった
何故なら「人間」あるいは「虐厨」である以上は
人権を持っているからだ
人に危害を加えれば罰せられるのは被害者たち
つまり、社会を守るルールを奴らは盾にしていたのだ
飼い主の中には「被虐生物」認定された家族の一員を外に出さず
屋内で飼育したり庭を改造して遊ばせたりする者も現れたが
それでも虐待派・虐厨は手出しをやめなかった
堂々と庭の中に入り込み
あるいは窓を壊してでも屋内に入った
「イ、命は助けて・・・」
「やだね、どうせ軽い罰か無罪になって放たれるんだからここで死ね」
当然ながら、怒りが憎悪に変わるのにさして時間はかからない
飼い主たち(虐待勢曰く「愛護派」)の対応もより先鋭化していった
追い返すのではなく殺すことを主眼に置いた対応は増えていった
「なんであいつらがのうのうとしててオレが逮捕されなきゃならんのですか?」
全力で肯定したい意見を取調室で言われる警察官の心理的負担も大きい
しかしそれはまだマシだった
「あの子がいなくなったんです、もう未練はありません」
そう言った少女は翌朝、留置所の中で壁に頭を打ち付けて死んでいた
発見したのは彼女に心底同情し釈放・そして無罪判決に奔走していた刑事だった
その日、少女は釈放されるはずだった
罪も書類送検で済むはずだった
当の虐厨が少女に突き飛ばされて「死んだふり」をしていたことが分かったのは
少女が死んだ後だった
彼女の葬儀の席であらゆる残虐な事件を担当して来た「鬼」は
人目もはばからず号泣し少女の両親に土下座して詫びた
236
:
続きは地獄で 2/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2019/12/02(月) 15:53:47 ID:xwxSS.ec0
「いいぜ刑事さん!覚悟の上だ!!」
次に彼が担当した事件は
夏祭りで彼女に振られた腹いせに
通りすがりの飼いゆっくりを殺したという事件だった
犯人はすでに死んでいた
目の前で自暴自棄になっている男は犯人をその場で殺した飼い主だった
「どうせ器物破損で安く済むんだからざまぁw」
犯人にぶつけられたその一言がきっかけだったのは言うまでもない
犯人はタックルで転倒して後頭部を打ち付けた挙句
頭蓋骨がぐしゃぐしゃになるまで石で頭を殴られ続けた
「刑事さん、オレで終わりと思わん事だ」
落ち着いた男は裁判で有罪判決を受けた時、
礼を述べながらそう忠告した
刑事は分かっていた
このままではいずれ「破裂」の時を迎えると
ついに大きな事件は起きた
町民の反対を押し切って決定した虐待組織支部の建設
それが完成し虐待組織の支部長や構成員や協力者が
一堂に会してのパーティーの最中
手に松明を持った町民たちが建物へ押し寄せた
「皆殺しだぁ!!!!!」
常々「自分の家族が犠牲になるのは嫌だ」と言い続けた町民たち
危害を加える側に、したり顔で無理解の行政に
自分勝手、根拠がないと切り捨てられたその意見
それは町民たちには「特権階級の支配」「治外法権」と受け取られた
法律も警察も宛てにならない
なら、自分たちで自分たちを守るしかない
準備はひそかに進められた
そしてパーティーの前日
町民の一人の飼いゲルゲが虐待勢に殺されるという事件が発生したことが
町民たちの心のダムを決壊させた
洗面器のプールで庭先で遊ばせていたところを
散々虐待された末に水中に沈められ殺されたのだ
建物が完成すればこれが日常になる
いずれ自分たちも殺される番がくる
なら・・・やられる前にやってしまえ
これ以上犠牲が出る前に潰してしまえ
町の平和を守るのだ、自分たちの手で!!
建物の出入り口は突破され警備は殺された
裏からも表からも怒り狂った町民が押し寄せた
町民の中には、かつての被害者たちも少なくない数いた
虐待組織には、加害者たちが何人か参加していた
両者の邂逅は残虐性に拍車をかけた
「てめぇ!よくもオレの実装石を!!」
「手伝うぜ!どのみちこいつら生かしといちゃならん!!」
窓から逃げ出そうとした虐厨は
外からの手に引きずり出され
殺されてから屋内へ放り込まれた
厨房に逃げた虐厨はオーブンや冷凍庫に叩き込まれ
会場では虐待派が酒瓶を口に突っ込まれ強制的に度数の高い酒を注がれていた
金を出して命乞いをした幹部は札束ごと松明と化した
建物の敷地中が虐殺の地獄絵図と化す
「もういいな!」
灯油のポリタンクから中身が建物のいたるところに注がれ
火がつけられた
翌朝、町民たちが去った時には建物は跡形もなく焼け崩れ
焦げた骨や骸が無残な姿をさらしていた
237
:
続きは地獄で 3/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2019/12/02(月) 15:54:42 ID:xwxSS.ec0
「もう限界だ・・・」
「鬼」は呟いた
自分たちが法を説いても飼い主たちは利く耳をもう持っていない
「法に従ったのにあの子は殺されてあいつはのうのうと生きてるだろ?」
そう反論されては返す言葉もない
下手をすれば彼らの不満は敵意に変わりこちらへ向く
八方塞がりだった
彼の脳裏には自殺した少女の顔が常にちらついていた
助けられなかった自分を責めた
あの日以来、事件解決だけでなく
未然に防ぐようにも尽力した
しかし、虐待勢の増長はよくなるどころか
日に日に悪化するばかりだ
注意すれば聞く耳持たず、時には逆切れし
事件を起こしても開き直り
被害者に暴言を平気で吐く
今回ついにそれが「破裂」した
町民の誰もがアリバイを持っていて
事件を起こした者は分からずじまい
どこかの推理小説みたいな「全員が犯人」などと言う可能性は
上層部が受け付けるはずもない
第一、刑務所はもうどこもいっぱいだ
「あ、先輩大変です!」
自分の後継にすべく育成している後輩が声をかけてきた
「ニュース見ましたか? 国会で動きがありました!」
政治家のつまらないパフォーマンスなんて見てる暇がないと
言った次の瞬間には無理矢理テレビのある
休憩室まで引きずるように連れてこられた
この強引さは自分にはないものだ
そう感心しつつ一応注意しようと口を開きかけた時・・・
目の前の光景に時間が止まった
昼休みでもないのにかなり人が集まり
誰もがテレビを見ている
『藍悟商会副会長の長女が重症』
藍悟商会、世界で知らない者はいない大企業だ
経済も政治も彼らが仕切っていると言っても過言ではない
「何があったんですか?」
集まりの中に署長を見つけ、刑事は聞いた
「ああ、なんでもゲルゲをプライベートで散歩中に襲撃を受けたらしい」
副会長は会長の息子で、つまり長女は会長の孫にあたる
何年か前に総監の護衛でお供した際に会長が笑みをこぼしながら自慢した
可愛らしい幼い少女が脳裏に浮かんだ
なるほど、猫可愛がりも頷けると初対面の自分でさえ思った
純粋無垢な少女だった
「署長!」
署員の一人が電話を署長に渡した
署員の態度、そして電話に出た署長の態度から
相手が誰なのか刑事は悟った
同時に思った
来るべき時が来た、と
238
:
続きは地獄で 4/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2019/12/02(月) 15:55:34 ID:xwxSS.ec0
「この馬鹿野郎が!!!」
虐待組織本部ではすぐさま襲撃犯の特定が行われた
頭の軽い虐厨はすぐに見つかった
隠すどころか自慢話を仲間にしていたのだ、簡単である
連れてこられた犯人は総長から鉄拳制裁と怒声を浴びせられた
「なんてことを、なんてことをしてくれた!!!」
「え?たかがアイゴでしょう?何を怒ってんすか?」
意外だという目の前の虐厨を見て
総長は頭を抱えた
いつからこいつらはこうなった?
飼い主持ちの生物の虐待だけでもまずいのに
自分たちを踏みつぶすことがいつでもできる巨象の赤子に手を出す等
ただの自殺だと馬鹿でも分かるはずなのに
「みんなやってることでしょう?」
さらに怒声を上げて反論しようとしたところで
電話が鳴った
電話番号を見て青くなる
藍悟商会の会長、この国を裏から牛耳るドン直々の電話だ
総長は電話に出ることなく
その場にいた構成員へ犯人を警察に突き出すように言うと
行方をくらました
しかし3日後に死体となって発見された
自殺の名所で首を吊った状態で発見されたために自殺と判断されたが
台となるものは周囲にはなく
肉はあちこち削ぎ落されていて
舌も目も歯も抜かれていた
そして判断を下したのは警視庁本部である
反骨者として知られる「鬼」は
本部の判断に従った
いぶかしむ署長に彼は
「もうこれは止められません」と悲し気に言った
ほどなくして「正当防衛強化法案」が成立した
表向きは急増する凶悪犯罪への対策だ
被害者が加害者に対し攻撃を行い
たとえ殺してしまっても減刑あるいは無罪となる
というものだが
賢い人々は何が起きつつあるのか理解した
飼いを殺された報復をしたことで収監されていた人々が
全員「模範囚」の太鼓判を押されて
同時期に釈放されていったことで
頭の鈍い虐厨以外は何が始まったのかを悟った
賢い虐待派はすでに組織から離脱していた
馬鹿を統制できない無能に付き合って心中する義理などない
比較的良心的な虐待派は法案成立を機に離脱、あるいは身を隠した
どれだけ説得を続けても応じないバカに付き合う必要などない
虐厨は単に喜んだ
中には襲われたふりをすればアイゴを殺せると思った者もいた
まだ居残る虐待派は楽観視していた
自分たちには人権がある、アイゴもまたなにもできないだろうと
たかをくくっていた
今の生活をやめたくない、やめられない者もいた
虐待組織には必然的に楽観した者と情勢を読めない者
虐待迫害をやめられない者ばかりが残った
何が起きるかを読んだ上で覆せると考える者もいた
しかし、
彼らは恨みを買いすぎていた
239
:
続きは地獄で 5/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2019/12/02(月) 15:57:42 ID:xwxSS.ec0
「ひゃっは・・・」ザク!!
散歩中の飼いゆっくりと飼い主を襲おうとした虐厨に
通りすがりの女性が頸動脈にナイフを突き立てる
何が起きたか分からぬまま虐厨は血を噴き出して地べたに倒れた
「こんにちは」「あらこんにちは〜、今帰りなの?」
女性は死体へ回収業者の目印になる発信機付きのラベルを張ると
危うく被害者になるところだったご近所さんへ挨拶した
世間話を始める二人を何も映すことはない
虐厨の見開いた目は見ていた
別の場所では虐厨たちが追われていた
相手はスーパーの店員だが、手にしているのは槍だ
すでに3人、彼らによって殺されていた
虐厨たちは虐待する被虐生物の物色に
スーパーのペット待機コーナーへ足を運んだのだが
いつもなら事後対応のはずのスーパーの返答は
武装した店員の出撃だった
「ぐげぇ!」
すぐ隣を走っていた仲間が投げられた槍に胸を貫かれ倒れる
それを見捨てて虐厨は走った
アジトへ逃げ込めば仲間がいる
返り討ちにしても新しい法律が守ってくれる!
彼は確信していた
炎を上げて燃えるアジトと
その周囲で「片づけ」をしている人々を目にするまでは
「あら、スーパーのお兄さんじゃないの〜」
近所のおばちゃんと言った感じの主婦が挨拶をしながら
逃げてきた虐厨の一人の目に催涙スプレーを吹きかける
「これは奥さん、毎度ありがとうございます」
店員たちは挨拶を返しながら追いついた虐厨たちに
止めを刺した
「おが・・・・・・」
庭に掘られた落とし穴で虐厨は串刺しになった
底に竹槍が切っ先を上にして立てられていたのだ
「だ、だずげ、で・・・!」
虐厨は冷たい目で穴から見下ろす
女性に助けを求めた
しかし女性は虐厨が完全に串刺しになり
肛門から口まで竹槍が貫通するのを見届けると
穴を埋めた
かつて被害に遭った彼女の庭には
いくつも同じ仕掛けが用意されている
残った仕掛けの数を数え、
女性は減った数を補うべくスコップを取りに屋内へ戻った
さすがに楽観して残っていた虐待派も
事の重大さを理解し始めていた
報復で殺されても「正当防衛」が成立し無罪
どういうわけか死体すら見つからない構成員も出始めていた
「こいつは犯罪だろ・・・」
「けどよ、法律が守るのは今はアイゴの方だぜ?」
会議は暗い空気の中続いた
結局結論が出ないまま会議は終わり
彼らは行動を変えなかった
そしてまた屍の山が積み上げられる
ここにきて、自分の命惜しさに離脱
あるいは仲間を売って逃げ出す者も出始めた
運悪くかつての被害者、あるいはその関係者と出会った者は
命乞いを聞き入れられずどこかへ引きずって行かれ
二度と顔を見る事はなかった
そして、加害者だった者たちは逃げた先で被害者
あるいは雇われた「駆除業者」によって殺されていった
刑事は今の世の中を複雑な感情で見ていた
あの時、少女を助けられなかった自分は
もしかしたらこうなっていたかもしれない
だから彼は見て見ぬふりをする人々に迎合した
仕方ないのだ
この流れを止めればまたあの少女のような
理不尽な暴力による犠牲者が出る
説得にも応じない害虫は駆除するしかない
人間の味を覚えたケモノを駆除するように
そして
法律施行から半年
虐厨は絶滅した
彼らを見るには地獄を覗く以外に
手段はないだろう
(おわり)
240
:
反暴力不寛容 1/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2020/01/23(木) 03:26:39 ID:60fnoFpQ0
※虐厨以外も報復を受けます
そこはとある世界
様々なコンテンツがあった
コンテンツを愛する者たちは町を作り
それぞれが好きなコンテンツと共に暮らしていた
平和だった、「虐厨」が現れるまでは
当初こそただの荒らしと見られていた彼らは
次々とコンテンツを破壊し
時には町の住民までも手にかけ略奪を改悪を行っていった
襲われたコンテンツの住民は救援を他の町へ求めたが・・・
「あきらめろ」
「うるさい、これ以上騒ぐならお前らが荒らしだ!」
「いや、こいつらは荒らしだ!!」
虐厨の出身地ですら抗議を門前払いされ
渋々去っていった
その目には憎悪が灯っていたが他の町の者たちの知った事ではない
彼らは自分たちのコンテンツに被害が出ないことが
何より大事だった
その日も救援要請の使者がA町へやってきた
T町というできたばかりの弱小コンテンツは
ひとたまりもなく防戦どころではなかった
「うるさいな!他にも面白いコンテンツはあるだろ!」
繰り返される対応にうんざりしていたA町の町民の一人は
そう口走った
「他にも・・・だと?」
愕然とした顔でT町の使者は問い返す
「そうだ!そんなあっさり潰される弱いジャンルにいたお前らが悪い!
守れなかったお前らが悪い!!」
「ふざけるな!こっちは一方的に襲われ・・・」
「そもそもこっちに関係ない話だろ!持ってくるな気狂い!」
使者はすくっと立ち上がり場を後にした
「悪いことは言わないから、あんなの捨てて他へ移住しろ!」
その背中に別のA町の町民がそう言った
さすがに可哀想に思って声をかけたのだが・・・
その言葉に一瞬だけ振り返った使者の目には
激しい怒りと憎悪があった
町民たちはそれに気づくことなく家に帰った
241
:
反暴力不寛容 2/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2020/01/23(木) 03:27:16 ID:60fnoFpQ0
「我々は虐待組織へ宣戦を布告する!」
とうとう対虐待厨への戦争が開始された
A町も虐厨の被害を被っていたが
これに参加するかと言うとそうでもない
「参加すべきだ」と言う意見と
「これまで通り無関係を貫くべき」と言う意見
さらに「アイツら全員荒らしだろ?」と言う意見も出て
議論は進まず時間だけが過ぎた
「町長!元T町の使者と言う者が来ました!」
そんなある日の事、来客を町民の一人が報告した
あの後、T町は虐厨に滅ぼされた
町民のどれだけがいま生きているのか、どこに行ったのか
全く把握できていない状態だ
「この町の虐厨を駆除するということです」
町長は慌てて使者がいる場所へ向かった
しかし、町長が報告を受けた頃
別の町民と元T町の使者だった男、そしてその仲間たちが対峙していた
あの時と異なるのは、相手の数は数人どころか百人規模
そして誰もが銃を手にして目には怒りと憎悪を宿していることだ
「何をしに来た? ここには虐待組織なんていないぞ?」
「いや、敵ならいる」
彼らは町民に銃口を向けた
「お、おい、オレを脅したっていないものはいな・・・」
「撃て!」
躊躇なく引き金が引かれ、町民はズタズタになって地面に転がった
それを皮切りに殺戮と破壊は始まった
外を歩いていた町民たちがまず犠牲になった
家には焼夷型の手榴弾が投げ込まれ、逃げ出してきた町民へ
容赦なく鉛玉が浴びせられる
242
:
反暴力不寛容 3/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2020/01/23(木) 03:28:15 ID:60fnoFpQ0
町長が駆けつけた時には破壊行為はかなり進んでいた
「なんでこんな事をするんだ!?」
町長はリーダー格の元T町の使者だった男へ怒鳴った
「おかしなことを言う奴だな、敵の癖に」
元使者は笑いながら答えた
「我々がいつ敵になったと・・・」
「覚えがないとは言わせねぇ!!あいつらに尻尾振って妨害工作ばかりしやがって!!」
「そうだ!何が非暴力だ!何が相手する奴も悪いだ!!」
「オレのいた町は仲裁を頼んだら武器を取り上げられて一方的に壊されたんだ!死ね!この町は死ね!!」
町長を撃とうとした仲間を手で制し、元使者は言った
「町長さんよ、あのときあんたの仲間は『他所へ行けばいいだろ』って、オレに言ったんだ
ふざけるなよ
それで済むなら救援頼んでまで守ったりしない、
意地や理屈じゃねぇ、大事だから守りたいから戦っていたんだ・・・
なのに、てめぇら・・・」
町長は理解した、自分たちが知らぬうちに相手を卑下し
その心を壊す発言をしていたことを
そして「敵」と認識されるに足る事をしてしまった事を
「・・・こいつはオレが抑える、他をやれ」「分かった」
「ま・・・」
町長を抑え元使者は耳元でささやいた
「見ろよ、オレたちが見たのと同じ光景を
味わえ、オレたちと同じ気持ちを」
命だけは助けてやると言いながら元使者は町長を縄で縛った
耳をふさぐこともできない
破壊音が断末魔が悲鳴が脳に流れ込んでくる
町長は目を閉じようとしたが元使者はそれも許さなかった
無理矢理目を開けさせ瞼をテープで固定した
一時間
たったそれだけの時間で長い年月をかけて作られたA町は壊滅した
コンテンツは無事だったが
また元の町に戻るには相当な年月と費用が掛かるだろう
全てが終わると元使者は町長の縄を解き
仲間を連れて去った
町長は瓦礫と焼け野原、死体しかないA町を呆然と眺めるしかなかった
243
:
反暴力不寛容 4/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2020/01/23(木) 03:28:52 ID:60fnoFpQ0
それと同時刻
「お前ら、荒らしだぁ!!」
「荒らしの巣を荒らして何が悪い!!」
虐厨の巣となっているY町には
かつてそこから来た虐厨に滅ぼされた町の町民らで構成された部隊が
襲い掛かっていた
「町長がいたぞ!!」「首を撥ねて晒せ!!」
A町の惨劇が「手抜き」と思えるほどの徹底した破壊と殺戮が吹き荒れた
瓦礫すら憎いと言わんばかりに彼らは爆発物を用いてまで徹底的に壊して回る
コンテンツももちろん無事ではない
「これは、オレたちにやらせてくれ!!」
元Y町の町民たちの手でコンテンツは破壊され燃やされた
燃え上がるコンテンツを見て涙を流す彼らを
馬鹿にする者はこの場にはいない
誰もが同じ経験をし同じ気持ちを持ち共有する者たちだった
自らの手で変貌したコンテンツを終わらせるかつてそれを愛した彼らの気持ちは
まるで自分の事であるかのようによくわかった
だから、誰もが涙を流した
自主的に建築材料を探し出して持ってくる者もいた
彼らが去った後、そこはまっさらな地と化していた
そこにコンテンツがあった形跡はない
「コンテンツY、ここに眠る」
という石碑を除いて
(終わり)
244
:
信用と代償 1/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2020/03/06(金) 02:41:31 ID:ZvzurUQ60
「なんのつも・・・」
「うるせぇ死ね!!」
とある村の近くの山の中
村の依頼を受け派遣された冒険者がいた
村の近辺に出る怪物の退治
というのが依頼内容だ
しかし支払われたのは報酬ではなく刃だった
出没した怪物には「毒」があった
この山に自生するキノコは毒キノコしかない
しかし他に食べる物がないので
怪物はそれを口にする以外なかった
その結果、毒を体内に蓄積していき
今では毒の胞子を放つまでになった
村長たちは勝利したものの毒に犯された冒険者を
見捨てる決断を下したのだ
「怪物と相打ちになった」とギルドに報告した
報酬もそちらへ送り
これでこの件は終わり
と、村人たちは思っていた
「おい、これは明らかに人間の武器の傷だぞ?」
村人たちは知らぬことだが
ギルドの疑心暗鬼は伊達ではなかった
報酬を踏み倒したいがために
冒険者を殺したという事例が相次いだため
犠牲が出た場所には必ず構成員が派遣される習わしができたのだ
村には内緒でひそかに調査隊が結成され
村の近辺に派遣された
万が一見つかっても「別口の依頼」という言い訳も用意してある
調査隊は着いて早速、村人たちが埋めた死体を発見した
「くそ!!!」
調査隊の一人が悔し気に地面に拳を打ち付ける
彼は殺された冒険者を実の妹のように可愛がっていた
戦で家を焼かれ妹を含む家族を殺された過去もあり
その愛情は本当の家族に対するのと大して変わらない
「あいつら、よくも・・・」
「おい、こっち来てくれ!!」
怨嗟を口にしようとした彼は
別の場所に行った仲間の声にすぐさま切り替え
走って向かう
彼らはプロだ
たとえ最愛の人の遺体を前にしても冷静さを失わず
最善手を出すことができる
「うおおおおお!!」
仲間が戦闘中なのを瞬時に判断
敵の数と種類を認識し
弓手である彼は前衛を援護する弓矢を放つ
「ぎゃあああ!!」
一射一殺
長年の経験と鍛錬の為せる業だ
たちまち怪物の群れは全滅した
「助かったぜ、サンキュ」
「気にするな、俺も動いていた方が気が紛れる」
「しかしこいつら、何を目当てに集まっていたんだ?」
「どういうことだ?」
妹分の遺体の見分をしていた彼に
怪物と遭遇戦をした仲間は目にしたことを口にした
怪物たちは一か所に集まっていたのだ
「なにもないぞ?」
「オレが襲われたのはこいつらが振り向いたからだ
ひょっとしたらもう胃袋の中かもしれん」
仲間の魔術師が毒耐性の防御魔術をかけ
怪物の遺体の検分が始まった
「しかし、この怪物もおかしいな・・・見たことがないぞ?」
怪物は目が赤く緑色の植物のようなもので全身を覆われている
人間と似た姿をしているが該当する魔物とはどれも似ても似つかない
考えられる可能性は新種、もしくは・・・・・
「胃袋だけじゃない、臓器も調べるんだ!」
245
:
信用と代償 2/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2020/03/06(金) 02:42:44 ID:ZvzurUQ60
しばらくして
「村長を出せ」
殺気立った調査隊冒険者一行を前に村人は要求に応じる以外なかった
村は焼け野原だった
不審火ではない
あの一件の後で火事に遭遇したのだ
森から出火し炎は風にあおられて広がった
不運なことに村に到達したときは皆が寝静まった深夜だった
たまたま便所に起きた村人の一人が火を見た時
村の半分の家が炎上していた
生き残ったのは発見者を含め数える程度しかいない
村長はそれをまず口にした
仲間の半数が火事場の片づけに向かう
「あれはボランティアだ、金はいい」
リーダーはそう告げると
その場で本題に入った
「お前ら、これで何人目だ?」
「へ? 何のことで・・・」
「とぼけるな」
リーダーは村長の足元へ袋を投げた
中には「乾燥トウモロコシ」が入っている
あの怪物の胃袋から出てきたものだ
もちろんそれは自然にできた物ではない
人工物だ
さらに言うと、怪物の胃袋からはそれしか見つからなかった
「そ、それが何か?」
「こいつであのバケモノどもを飼っていたんだろう?
それで冒険者や旅人を襲わせて生きていたら自分たちで殺す
ボロい商売だな!」
寝耳に水である
村長は本当に知らない
それもそうだ、これはあの妹分冒険者が携帯していた食料なのだから
あの日、彼女は怪物を見つけられず野宿をした
たまたま用事で森に入った村人の悲鳴を聞いて
慌てて駆けつけたのだ
その時、すぐに戻るつもりで焚火に土をかけ走った
乾燥トウモロコシはその時に落としたのだ
ちなみに火災については、その時の焚火の火が完全に消えておらず
不運にも悪戯好きの小動物がそれをいじったため
酸素を得た火が復活
そこに強風が吹きこんで森に引火したのが真相である
「そ、そんなことは・・・」
「じゃあ、コイツが持ってたこれは何か説明できるか?」
村長の前に一人の縛られた男が転がされる
村の虐待厨の一人だ
そいつが持っていたという袋をリーダーは逆さにして振った
乾燥トウモロコシが落ちる
「わ、ワシは知らな・・・」
「なんだこれは!!!」
否定しようとした村長の声に重なるように
調査隊の仲間の怒声が響く
リーダーともう一人は顔を見合わせると
村長を置いてそこへ向かった
246
:
信用と代償 3/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2020/03/06(金) 02:44:39 ID:ZvzurUQ60
「なんでこれがここにある!!
これは俺があいつの誕生日に作ってやった金細工だぞ!!」
怒声の主はあの冒険者の兄貴分だった
妹分の遺品が家の焼け跡の金庫から見つかったのだ
怒りも無理はない
「こいつについても説明しろ!!」
もう一人の方は大量の「金バッジ」の入った耐火箱を持ってきた
焼け跡の家は「虐厨」のものだ
村長は「他人の飼いへの手出し」は禁じていたが
そいつらは勝手に外へ出て散歩中の「アイゴ」を襲っていた
彼らが怒って抗議しに来ても
村長は知らぬ存ぜぬ、しまいには村人の数の暴力で押し切った
虐厨たちは村長に都合のいい理由ばかり作るのは得意だったため
村長もそれを疑いもせず鵜呑みにした
ちなみに家の主は火災で死亡しているため、
真相を語る者はこの世にはいない
当たり前だが、ギルドにそれが届かぬはずもない
調査隊はついでだからとその件もギルドから情報として得ていた
「抗議に行った村人が行方不明になった」件も含めて
しかし彼らは当初「どこかを拠点にしている盗賊」の仕業とばかり思っていた
だからいつも通り戦闘主体の冒険者で構成した部隊を派遣した
ところが、すぐ見つかるはずの「盗賊団」は一向に見当たらない
さすがにおかしいと彼らは思った
「探しても見つからないわけだ、村人が犯人ではな」
駆けつけたリーダーたちはそこにある品物を見ながら頷いた
その時、仲間の魔術師が虐厨村人に麻痺の術をかけて転がすと
そいつの家だった炭の山から持ち出した水筒をリーダーに渡した
「こいつは、『薬』だ! こいつらがアレをやったんだ・・・」
「外道が・・・!」
怪物の正体は、人間だった
厳密には「元人間」だ
彼らは元々は抗議に来た人々の成れの果てである
村長のおかげで助かってはいるものの、
中には「王都に行って洗いざらいぶちまけてやる!」と捨て台詞を残した者もいた
村長はともかく真実を知る犯人=虐厨は慌てた
調べればすぐに分かる、王都に行かれて調査隊を派遣されたらまずい
虐厨たちは相談の末、死霊術の知識のある仲間に毒薬を作ってもらった
「毒が検出されない毒」は、しかし素人が作ったこともあり
「飲んだ人間を怪物にする薬」になってしまっていた
抗議集団を襲撃し無理やり飲ませた結果生まれた怪物たち
怪物が澱粉を好むことに気付いた彼らはこっそり餌付けして飼うことにした
もちろん村長はそんなことは知らない
だから討伐依頼を出したのだ
冒険者を殺したのは隠蔽ではなく保身であった
だが、そんなことは調査隊には知る由もない
リーダーは追いついてきた村長を殴り飛ばすと
「ここの連中を全員捕縛だ!!」
仲間へ指示を出した
数の暴力はあの火事のせいでもうできない
ただ、調査隊は誰もがプロである
倍の数の盗賊団や巨竜とも死闘を演じた経験者たちだ
たとえ村人が健在でも結果は同じだっただろう
かくて火災の生存者は全員捕まりギルドのある街に送られた
派遣された冒険者の殺害に盗賊まがいの窃盗と強盗殺人
それに人間を怪物化して森に放った上に
それを餌で飼いならし人を襲わせるというネクロマンサー顔負けの所業
これが調査隊のまとめたレポートだ
247
:
信用と代償 4/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2020/03/06(金) 02:45:28 ID:ZvzurUQ60
調査隊に捕えられた生き残りたちは「おしまいだ」と思った
しかし本当の地獄はここからだった
「てめぇらか!!あの子をなぶり殺したってのは!!?」
「あんないい子をなんで・・・この人でなし!」
「返せよ!メドおねぇちゃんを返せよ!!」
街にはすでに事の顛末が届いており
村長一行は恨みの声と石をもって歓迎を受けた
彼らが殺した少女冒険者が街で人気の新人だったこともあり
その怒りは彼らの想像を絶した
老若男女問わず、彼らに石を投げ唾を吐かぬ者はいない
取り調べでも人権への配慮は最低限
牢屋での食事は古いパンと井戸の生水のみ
連日の過酷な取り調べとストレス、劣悪な環境で
見せしめの死刑が決定し処刑台が作られる頃には
生き残りは半数に減っていた
生き残りの中には村長もいた
・派遣された冒険者の殺害と遺体損壊
・度重なる盗賊行為
・人間の危険生物化
・その危険生物の飼育
・その危険生物を利用した窃盗及び殺人の数々
・村ぐるみでの隠ぺい工作
王都にこれが届いたときは誰もが目を疑ったが
火災現場から発見された証拠の数々に
報告書は真実であると結論された
後日調査で王都の調査騎士団が
村の周辺で埋められた人骨や
旅人の遺品や金細工、さらに盗品を扱うマーケットの領収書などを
発見したことが決定打となった
村長は処刑台に引っ張ってこられるまで知らぬ存ぜぬを叫んだが
信じる者はいない
それどころか発言を「自己保身」とみなされた
最初こそ「見苦しい」「黙れ」を繰り返したギルドの長だが
いつまでもわめき続ける村長に閉口した
「たかが新米一人殺した程度でこんなのあんまりだ」と口にされた時
長は計画の変更を決めた
「分かった、お前だけ別にしてやる、お前だけ、な」
村長はほっと息を吐いた
「後は予定通りに頼む」
しかし助かったのが自分だけと言う事に気付いて処刑台を振り返った
「クソ村長!」「ひとでなしいいいい!!!」
処刑方法は「石打ち」
村人たちは絶命するまで村長へ怨嗟を浴びせ続けた
「アイツらと引き換えに延命された気分はどうだ、え?」
「延命」と言う言葉に村長はギルドの長を見る
「お前を助けるなどと、一言も言っていない
第一、主犯格の貴様を逃がせばあの子は浮かばれん!」
ギルドのマスコット的な少女を長もまた愛していた
それを殺した者への憎悪、推して知るべしだ
村長が絶望を感じたところで
ギルドの者たちが自分を台に固定し始めたことに村長は気づいた
「な、なにをする気じゃ?」
「お前は言いたいことがあるようだから
みんなに言ってみてもらおうと思ってな、一人ずつだ」
248
:
信用と代償 5/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2020/03/06(金) 02:46:40 ID:ZvzurUQ60
長が言う間に冒険者たちは刃物を用意し
「人体の急所」という図表を設置し始めた
「みんな〜、一応治癒の魔術師はいるがここは狙わんようにな〜」
良く通る声で解説役の冒険者が呼びかける
村長は彼らが己に何をさせるつもりなのかを悟った
街の住人が冒険者の誘導で一列に並ぶ
最初の一人は、初老の男だ
「あの子の痛み苦しみを味わえ!!」
次は恰幅のいいおかみさん
「地獄へ落ちろ!!」
その次は幼い少女でこれは冒険者が隣から手伝った
「メドおねぇちゃんのかたき!!」
次はスラム街の少年、次は兵士
中には明らかに貴族らしき男もいた
住人一人一人が村長へ憎しみの刃を突き立てていった
村長はもう悲鳴しか出せない
出血量が限界に達すれば魔術で造血され
失神しても電撃で起こされた
傷が致命的になれば即座に治癒の魔術がかけられ
水分や栄養剤まで血管から入れられる
ひたすら「死なせない」ためだけの処置が手間暇かけて施行された
貧民も金持ちも平民も貴族もない
ただただ一人の少女を殺した主犯格への憎悪だけがそこにあった
少女も村長も知らぬことだが
かつて、この地を魔王が襲った
少女の両親はまだ若者だったギルドの長に赤ん坊だった娘を託し
相討ちの形で魔王を仕留めた
この町は少女の両親の犠牲の上にあると言っても過言ではない
しかしそれを幼い彼女に告げるのは酷だ
このことはギルドの長と国王を含むわずかな人々のみに共有され
少女はそれを知らずに育った
彼女が真実を受け入れられるようになったら話すつもりだった
しかしもう、その機会は永遠に来ない
ただ叫ぶだけの、この醜い怪物のために
「!あなたは・・・」「私の分も頼む・・・」
ギルドの長が畏まった初老の男は腰の剣を抜いた
「貴様が我が国の民にいるなど、反吐が出るわ・・・」
初老の男は村長の両手足の健を切断すると剣の血を拭いた布を
村長の口へ詰め込んだ
「なるべく長く生かせ、できるだけ殺すな!」
「はっ!」
列にいた明確に騎士と分かる全身甲冑の人物が初老の男の命令にきびきびと答える
これだけでこの人物が誰なのかはその場にいた人々に知れた
どこからか「王様万歳!」の声が響いた
「皆に愛されし天使、ここに眠る」
街には少女の遺体が納められた棺の上に銅像が建てられた
生前の彼女の肖像画を記憶を頼りに絵画師が描き
それを基に像の職人たちが総出で作った
「報酬はいい、金があるならあの子の供養に使ってくれ」
彼らはそう言ってギルドや国からの報酬を断った
ちなみに村長は7日ほど生き続けたが
8日目に寿命で死んだ
遺体は燃やされ川に流され、その名は「悪魔すら嫌う極悪人」の代名詞として
語り継がれることになったという
(おわり)
249
:
名無しの拷問官
:2020/03/31(火) 23:03:08 ID:7HzA6HCY0
みっちんのこと知ってるならみっちんもやっつけて欲しい
あいつまだツルポスレに居るようだし
250
:
名無しの拷問官
:2020/04/17(金) 00:50:19 ID:kfjLimsI0
ツルポスレと言えば
対ミチ豚用AA大量に作ったけど
結局使わなかったな
251
:
名無しの拷問官
:2020/04/17(金) 20:24:37 ID:vWZv7nd20
>>250
ここで貼るのもいいと思う
252
:
命の許可証 1/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2020/05/01(金) 00:31:57 ID:VDh4WGBE0
ぼろぼろの布をまとった者たちの列が並ぶ
彼らは人ではない「虐厨」と呼ばれる種族だ
それを見張るのは自動小銃で武装した全身を特殊部隊の装備で固めた人々
ここは、かつて虐厨の暴虐が吹き荒れた場の一つだ
元々は心ある人間たちが居場所を荒らされ生きる余地すらなくなった
キャラクター達を保護するために作った保護区的な場所だった
しかし、今では区画ごとに壁で仕切られ警備兵たちがあちこちを闊歩している
さながら厳戒態勢の戦時下の街の様相になっている
区画の行き来は自由にできる
ただし虐厨を除いて
虐厨の虐平は「虐待許可証」を警備兵に掲示した
「通ってよし!」
虐平は声を出さず会釈だけをしてそこを通り過ぎる
ここで騒ぎを起こす馬鹿は・・・
「ゆっくり発見!ひゃ・・・」ターン・・・
たった今、この「ゆっくり区画」で「ゆっくり虐待」をしようとした虐厨のようになる
あちこちにあるカメラがゆっくりたちを見守っており
トラブルの解決や今のような虐厨の襲撃に対処していた
声を出さなくても武器を持たなくても
ただ一定距離に近づいただけで警告を発する
虐厨にではなく、近辺にいる警備兵に
「てめーのせいでカメラさんに怒られたじゃねーかよ!!」
呼び出された警備兵は頭を砕かれ動かなくなった虐厨へ蹴りを入れた
そこへドローンがやってきて虐厨の死体を回収する
死体は墓には入れられずただゴミとして燃やされ処分される決まりだ
虐平は「AA区画」へとやってきた
知人で友人の虐造に会うためだ
虐造は「虐厨団地」という、虐厨が唯一居住を許される場所にいる
虐厨の行動は制限されていた
公園や民間施設の使用は禁止
公的施設も「虐厨収容所」「虐厨労役施設」等を含むごくわずかしか許されない
目的もなく散歩するような馬鹿はいない
「この野郎!!オレの家の前をうろつくんじゃねぇ!!」
虐平は家から飛び出してきた中年男性に
悲鳴も上げることなく目の前で殴り倒された同胞を助けず
そっと立ち去る
動かなくなった虐厨はドローンがやってきて回収していった
「虐待許可証」の効果である
かつての「虐待委員会の所属」「あらゆる被虐生物とその飼い主の虐待が許される」といった意味合いは
それには今はない
「この者は生存を許された虐厨である」「だが自由にコイツを虐待しても良い」という意味合いが
代わりにあった
隠すことは許されない
衣服の胸に付けるか、紐を付けて首から下げるかして
常に見える場所に掲示しておくことが義務付けられている
逆を言えば、これを持たない虐厨、これを隠している虐厨には生存権はない
即座に警備兵に射殺されるのだ
253
:
命の許可証 2/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2020/05/01(金) 00:32:51 ID:VDh4WGBE0
虐平は団地を訪ねたものの、知人はいなかった
「虐厨レストランにいる」と団地の住人から聞き
虐平はそこへ向かった
「虐厨レストラン」は唯一と言ってもいい虐厨たちの息抜きの場だ
大画面のテレビもあるしゲームコーナーもある
食事もできるしメニューもかつて虐厨たちの全盛期に人気だったものが
今も維持されていた
ただし食材は被虐生物を虐待して得た素材ではない
食感や味をできるだけ近くしただけのもので素材も科学的に合成された人工物だ
そもそも今は「被虐生物」などいない
彼らはキャラクターとして権利を得て各区画で住人となり平和に暮らしている
絶滅したものはその再生・復興が促進されていた
「虐厨レストラン」のすぐ前に虐平はやってきた
その目の前に数人の人影が現れる
「炊き出しはこっちだよ」
ぼろぼろのAA「でぃ」を優しく警備兵の一隊が案内していた
警備兵の一人は虐平を見つけると即座に駆け寄る
首から下げられた「許可証」を見ると
「あっち行け」と言わんばかりにしっしっと手を振った
虐平は卑屈に頭を下げて一行から離れる
一行が見えなくなるまで頭を下げた後で
レストランの中に入ろうとした、その時
入れ違いに虐厨が中から飛び出した
「よせバカヤロウ!!」「やめてくれえええええええ!!!」
他の虐厨の悲痛な叫びが遅れて飛び出してきた
虐平はレストランに入るのをやめると
今来た道を引き返した
彼に続けとばかりにさらに複数の虐厨が飛び出て走り出す
一刻も早く団地に逃げ込まなければならないからだ
254
:
命の許可証 3/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2020/05/01(金) 00:35:03 ID:VDh4WGBE0
「おうおう、ボロいでぃのくせに良いもん食ってんじゃねーか!」
警備兵が目に入らないかのように
先ほどレストランから飛び出した虐厨は
炊き出しの場にずかずかと入る
整理用のロープをまたぎ怒鳴る警備兵を無視して
でぃたちへ近づいた
彼の思いはただ一つ
「でぃからメシを奪い自分と仲間で食べること」だった
ついでに、でぃも虐待できればいい
そんなことをすればどうなるか分からない虐厨は賢い部類だった
彼は賢くない
「許可証」の意味も「これを身に着けてる奴は絶対に殺されない」と
勘違いして認識していた
大きな声で計画を話した彼を殴ってでも止めようとした同胞を
彼は軽蔑していた
アイゴが怖くて虐厨が務まるか!
そして、でぃの列まであと一歩のところで
強い力で襟首をつかまれて彼の体は宙を舞った
うつ伏せに地面に落ちたところをさらに上からのしかかられて
完全に動きを封じられる
文句を言おうと顔を上げたところで
硬い何かが後頭部に押し付けられていることに気づいた
それがハンドガンだと認識する事は永遠になかった
「虐厨が暴動を起こしました!実行犯は射殺しましたが・・・」
「でぃさんたちを守れ!!ケガ一つさせるな!!」
たった一人の馬鹿な虐厨が引き起こした騒ぎは
区画中に及んだ
こういう時のマニュアルはすでにできていた
『虐厨は暴力が好きだが基本的に憶病な小心者だ
仲間で固まって動くことはできても
一人で向かってくることはまずない
だから、一人が行動を起こせばその後ろに多数の味方がいる
よって、一網打尽にすべし』
警備兵たちの行動は早かった
区画内の全員をキャラクターの護衛と
虐厨への対応の二つに分ける
「護衛任務」を割り当てられた警備兵はキャラクターたちへ
懇切丁寧に説明し避難所へ行くか
自宅へ戻るかを任意でしてもらう
もちろん行く道は付きっきりで警護に当たり
虐厨に出くわしたら即射殺して身を盾にしてでも「死守」した
255
:
命の許可証 4/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2020/05/01(金) 00:35:55 ID:VDh4WGBE0
そして、「対応任務」を割り当てられた警備兵は・・・
「やめてくれ!俺たちは関係な・・・」
「やだああああああ!死ぬのはいやだあああああああ!!!」
「虐厨の駆除」が主な仕事になる
文字通りの「駆逐」だ、許可証の有無は関係ない
屋内だろうと屋外だろうと区別はない
たとえ許可された公的施設、例えば「虐厨レストラン」の中だろうと関係ない
「虐厨はすべて駆逐すべし、一匹でも残せばそいつが『指導者』になる」
これは警備兵の学校の教科書に記されている事だ
それもテキストの最初の方にである
駆除の手段は問われない
仲間の警備兵や区画内の住人を巻き込むものでさえなければ
手榴弾などの爆発物や火炎放射器の使用も許された
虐造も死んだ
レストランの中でトイレに行っている間に騒ぎが起き
突入してきた警備兵に射殺されたのだ
彼が自分が殺される理由を知ることは永遠にない
虐平は団地の中に駆け込むと虐造の使っていた部屋に飛び込んだ
虐厨団地に鍵などない
唯一鍵があるのは出入り口の鉄の門のみだ
それも朝7時に開錠され夕方5時には施錠される
人の手によってではなくタイマーで管理されていた
たとえ団地内で虐厨による金の奪い合いが起きたとしても
すべて黙認されている
ただし、部屋の占有が認められているわけではない
決まった部屋を私有するのではなく
団地内にある部屋に勝手に寝泊まりするだけだ
だから一人で同じ部屋をずっと使い続けていた虐造は
レアケースと言える
ここにいる利点はもう一つある
「おい、ここに何匹か逃げ込んだぞ?」
「やめとけ、こんな汚らわしい場所ドローンさんも嫌がるぜ?」
虐厨が「許可証」の有無を問わず唯一その生存を保証された居場所なのだ
風呂場はなくトイレも穴が掘られているだけ、電気ガス水道もないが
「ここなら生きていても許される」というメリットがあった
虐厨を毛嫌いする警備兵は「汚染物質の掃き溜め」には足を踏み込もうとはしない
ただし完全に安全かと言うとそうでもない
「暴動の首謀者」が団地にいると判断されれば
警備兵の基地に連絡が行き、遠隔操作で団地は破壊される仕組みになっている
壊された団地はまた新しく作り直される
利点が多いためそこの虐厨がいなくなったとしても
またどこからか虐厨が来て住み込むから、住人がいなくなることはない
虐平は部屋の中で震えながら祈った
彼を含むこの団地の虐厨が生きる道は
「首謀者は団地には居ない」という判断が為される事だけだ
それも、ほんの少しでも疑いがあれば即座に破壊処分が下る
かといって、今すぐ団地の外に飛び出すのは死を意味した
あちこちにカメラが存在しドローンが飛び交い
警備兵が闊歩する中で見つかることなく済ますのは不可能だ
そして先ほどの騒ぎで命令を受けた警備兵は
虐厨を見つけ次第殺すだろう
256
:
命の許可証 5/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2020/05/01(金) 00:36:36 ID:VDh4WGBE0
虐平は朝日を顔に浴びて自分が生きていることを知った
どうやら破壊命令は下されなかったらしい
虐平は安堵すると同時に虐造の死を認識した
団地の外にいた虐造が生きているとは思えなかった
彼ら虐厨に定住の場所はない
区画から区画へと移動し続け
労役を得て日々の糧を得るかゴミを漁るかが
唯一の生きる道だった
どうしてこんな時代になってしまったのか
虐造はどうして死ななければならなかったのか
虐平は疑問に思った
その疑問の答えを知る者たちはすでに
この世にはいない
愚かな先達の引き起こした大きな罪を
彼ら虐厨は種族の存続する限り
ずっと背負い続けることになる
(おわり)
257
:
首もぎさん
◆Qxml1xnbnw
:2020/05/01(金) 00:38:23 ID:VDh4WGBE0
>>249
>>250
>>251
OKですよ
詳細は「管理スレ」にて
258
:
生きる資格 1/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2020/06/17(水) 00:33:29 ID:bk7JUhXE0
※「命の許可証」と同じ世界です
虐一は「虐厨」である
だから、生きるために「許可証」を貰わなければならない
何故なら、彼の生きる場はこの前の争いで「陥落」したからだ
ここは元々はあまり名の知れないジャンルの場だった
だからこそ目をつけて侵攻した
周囲に工作し助けられないようにした
対話は相手を激怒させることで論破されることをしのぎ
相手こそが悪いという風潮を植えて回った
論破に告ぐ論破、勝利の積み重ねで虐厨は増長していった
しかし、相手が「変貌」して戻ってきた時
状況は一変した
今までの煽りも効かず、脅しも効かず
周囲に触れて回ろうとしたところ、その周囲がすでに壊滅させられていた
「お前らの友達はもういないぞ?」
血まみれのナタを雑巾で拭く
温厚な羊と蔑み無力な兎と鼻で笑ったはずの相手がそこにいた
そしてついに完全に包囲された時、一人も逃がす意思はないと知った時
相手が今までの「アイゴ」ではないことにやっと気づいた
自分たちの作った環境、自分たちが住みやすい相手をいたぶるための環境
それが相手をも例外なく変えてしまったのだと
思い知った時は手遅れだった
降伏した虐厨以外は全員殺された
虐厨への賛同者や騒ぎを嫌い一時的に協力した日和見たちも同様だった
「勝手にレッテルを張るな」という非難は届かず
代わりに銃口が向けられ引き金が引かれた
「敵の味方は敵」
そんなスローガンがあちこちで唱えられ
街には完全武装の警部兵があふれた
259
:
生きる資格 2/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2020/06/17(水) 00:36:26 ID:bk7JUhXE0
「次!」
虐一たちは列に並んで順番を待っていた
「許可証」を配る列だ
「虐待許可証」と「アイゴ」たちは言っていた
「はい、ここまで、キミらはこっちな」
ちょうど虐一の背後で「アイゴ」の警備兵がロープを張り
虐厨の団体を前後二つに分けた
虐一の後ろの団体は別の場所へ誘導されていく
虐一はそっちも気になったが警備兵に小突かれて
誘導されるがまま目の前の施設へと入った
施設の中は廊下がありそこに大きなテレビが置いてあった
「待つ間の退屈しのぎかな?」
誰かがつぶやいた
次の瞬間、暗かった画面が明るくなり映像が映る
そこに先ほどの後続集団が映っていた
音声は届いていないが様子からかなり慌てて奥へ走っていることがわかる
しかしそこは壁で行き止まりだ
何があるのか手前側をひどく気にしている
怯えているようにも見えた
次の瞬間、何におびえていたのかという疑問は氷解した
手前側から巨大な鉄板を装備した重機が奥へ向かって動いてきた
それは地面を削りながら虐厨たちを奥の壁へと押し付ける
やがて、重機は止まった
その時には重機の先端の巨大な鉄板と壁の厚みは
ほぼゼロだ
「うええええええ」
誰かが嘔吐した
虐一は、あと一歩遅ければ自分もああなっていたことを思い知り
呆然とした
「こっちだ、さっさとしろ!」
警備兵の怒鳴り声に我に返った一行は
警備兵の誘導に従って
いつの間にか開いていたドアに入った
260
:
生きる資格 3/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2020/06/17(水) 00:40:00 ID:bk7JUhXE0
「おめでとう!貴様らは第一の試験に合格だ!!」
警備兵の隊長らしき人物は壇上に立ち称賛を述べた
「だがこれで終わりではない!
第二第三の試験を突破し初めて資格を得られる!
その後の最終試験に合格した者のみ許可証を与えられるのだ!!」
パン! 唐突に銃声が室内に響いた
「どうした?」
「すいません、こいつ居眠りしてました」
隊長に理由を説明した兵士は射殺した虐厨を引きずって外へ出て行き
また戻ってきた
「さて、諸君らの立場はこれで分かっただろう?
ここから生きて出るには許可証を手にせねばならん!
だが安心したまえ、許可証は人数分きちんとある!
ようは貴様らが合格すればいいだけの話だ!」
隊長は言い切った後で背を見せた
「これだったか?」
「隊長、それです、そう、そこを押して・・・」
部下らしき兵士が何やら操作説明をしている
スクリーンが下りて来た
「では第二の試験だ!
と言っても映像学習だから簡単だ!赤ん坊でもできる!!
ただこの映像をじっくり見ていればそれでいい!
それだけだ!!」
そう言い終わると隊長は部屋から出て行った
代わりにライフルを持った兵士が入ってくる
「な〜んだ」「簡単だぜ!」「次の試験は難しいかも・・・」
空気は弛緩したが虐一は嫌な予感を覚えていた
代わりに入って来た警備兵の持つライフルには
暗視機能付きのスコープと照準機器が取り付けられている
明らかに夜間対応済みのスナイパーライフルだ
そして銃口にはサイレンサーが取り付けられている
どうしてそんなものが必要なのか・・・?
虐一の予感は的中した
スクリーンの映像タイトルは「悲劇の歴史」
アスキーアートのキャラクター時代から今に至るまでの
数々の虐厨たちやそのシンパによる暴虐や
ジャンルの復興への妨害活動をアニメーションにしたものだ
「嘘っぱちじゃねーか」「アイゴざまぁw」「楽しかったな〜w」
そんな声が聞こえるたびにライフルの兵士は銃を構え
引き金を引く
その動作を繰り返した
サイレンサーがあるから銃声は聞こえない
部屋が暗いから、声を出した奴が黙っても
どうなったか分からない
虐一は声も出さずただただ映像を夢中で見た
この仕草こそが自分がここから生きて出るためのものだと
彼は確信していた
その確信は正しかった
「うわぁ!!?」
映像が終わり部屋の明かりが付けられると
虐厨の半数が頭を吹き飛ばされていた
「ご苦労!ほぉ、半分残ったか・・・今回は多いな?」
入ってきた隊長はライフル兵士を労いながら
虐厨たちを見て感心したようにつぶやいた
「生きている貴様らは合格だ!!
次の試験会場に移動するぞ!!」
261
:
生きる資格 4/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2020/06/17(水) 00:41:21 ID:bk7JUhXE0
虐一たちは青い顔で部屋を出て行った
次の会場はすぐ隣の部屋だった
鉛筆と消しゴムと紙がそこにあった
紙には「テスト」と書かれている
「第三試験は簡単なテストだ!
字が書けない者もいるだろうから選択式にしてある!
内容はきちんと道徳を学んだ者なら
満点も楽勝な程度だ!」
問い:このピンクの猫のキャラクターの名前を答えよ
問い:迷子の飼いゆっくりを見かけたらどうするべきか?
問い:セヤナーとは?
時折「ヒャッハー!」と言う声が聞こえたが
今度は兵士は何も言わない
虐一はその沈黙が不気味に感じた
まるで罠にかかる獲物を見つめる狩人のような
そんな目で見られている
虐一は賢い方だった
だからこれが本当に単純なテストだと分かった
ただし、「悪い虐厨」を炙り出すには効果的な問題ばかりを
羅列したものだとも
「さて、終わった者は手を挙げろ!
その場で兵士が採点する!
指示があるまで決して動くな!」
すると、兵士の一人が空席の机の紙を持って
隊長のところに駆け寄った
「え? 古すぎて知らない?
そうか、もうそんなに時間が経ったか・・・
仕方ない、この問題とこの問題は全員正解でいいぞ」
虐一も全部を埋め終えて手を挙げた
兵士が来て紙を取り、採点をしていく
「お前はこっちだ」
やがて、兵士に連れられて部屋から連れ出される虐厨が
ちらほらと出始めた
この部屋に入った虐厨の1/3がその場に残った
虐一もその一人だ
「ほぉ、今回は結構残るな・・・?
まぁいいか」
隊長が意味深につぶやいた
「ぎゃあああああああ!!?」
連続する銃声と断末魔が部屋の外から響いてきた
廊下とは反対側の、窓の外からだ
「よし、貴様らは合格だ!!
虐待許可証を得る資格をたった今得たのだ!
誇りに思え!
それでは最終試験会場へ向かうぞ!!」
262
:
生きる資格 5/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2020/06/17(水) 00:42:14 ID:bk7JUhXE0
残った虐厨は完全に合格ムードだった
数多くの虐厨が殺されたのに
弛緩しきっていた
虐一は逆だった
恐らく一番最後に何かあるのではないかと思っていた
「試験会場はあっちだ、さぁもう行け!」
広場の向こうにプレハブ小屋があった
その間にはキャラクターを模したぬいぐるみと
警備兵たちが点在している
「あ〜、終わった終わった!」
隊長は伸びをしてドアを閉めた
鍵がかかる音がする
後ろはそのドア以外に出入り口はない
高い壁だ
つまり前進以外に道はない
「やったぞ!」「オレが先だ!!」
虐一を置いて虐厨たちが走り出す
虐一はゆっくりと歩き始めた
絶対になにかある
彼はそう予感していた
ターン!
銃声がした
虐厨が一人倒れる
「どうした?」「こいつ、しぃを蹴飛ばそうとしてたぞ」
しぃはこの場にいない
倒れた虐厨の傍には「しぃのぬいぐるみ」があった
また銃声がした
ぬいぐるみが一列に並ぶ先の車両
そこで兵士が料理を作っていた
虐厨はその手前の警備の兵士の足元で頭を半分砕かれ事切れている
これが最終試験だと悟り虐一は脇目もふらずに前進した
ぬいぐるみから離れ、警備兵には黙って一礼して道を譲り
あるいは自分から避け
ただ「トラブルを起こさないように」進んだ
「よく来たな!・・・ふむ、今回はずいぶん多いな?」
兵士に案内されて虐一は写真を撮られる
指紋も口の中の細胞も取られて
しばらく待合室で待たされ
許可証を手渡しされた
ここに来た虐厨は、虐一を含めわずか5人だ
虐一は許可証を裏返した
「この許可証を持つ者はその生存を許可された者である」
「ただしその生存権は罪を犯したときに剥奪される」
「また、この者に住民が危害を加える場合はその限りではない」
「分かったな?」
いつの間にか来ていた兵士が背後から虐一へ声をかけた
虐一はコクコクと頷いた
兵士は「よし!」と満足げに頷いて入ってきたのと反対側のドアを開けた
虐一ら5人は外へ出た
つい昨日とは変わってしまったが
見慣れた街並みがそこにあった
「今回は多いな」「ああ、全滅するのも珍しくないのにな」
兵士たちの声が背後から聞こえた
とりあえず寝よう、ひどく疲れた
虐一たちは自宅へ帰ろうとばらばらに散った
彼らが
虐厨の住まいが「虐厨団地」以外にないこと
今まで住んでいた自宅は取り壊され
私財や私物、同居人はすでに処分されていたことを知るのは
自宅の跡地に辿り着いた後の事である
(おわり)
263
:
招かれた「例外」 1/6 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2020/08/05(水) 03:13:04 ID:mnK5nZ8Q0
※「命の許可証」「生きる資格」と同じ世界です
虐厨が大暴れした過去がある世界
現在では彼らはあらゆる権利を剥奪され
細々と生きていた
かつて彼らの発行していた「虐待許可証」は
彼らの生存権を唯一証明する証となった
逆に「ヒギャクセイブツ」と認定され迫害された種族は
その保全や復活・再生が推し進められた
その中にAA等の人間と大差ない知能や文明を持つ種族がおり
彼らは「人間とは別の進化をたどった知的生命体」と認定された
同時に虐厨の罪に「理不尽な人種差別迫害、虐殺の罪」が加わることになった
虐厨は大人しく生きる以外にないが、頭のおかしい個体はいつでも存在する
それがいつまでもなくならないのが「虐厨」の「虐厨」たる所以だろう
だから居住地を遠隔操作でも破壊可能な「虐厨団地」にのみ限定するといった
人々とその他の種族との隔離処置が徹底して行われた
逆に言えば
それさえ守れば虐厨たちの生存権は、ほぼ保証されていた
「虐厨団地」に足を踏み入れたい警備兵は皆無で
虐厨の始末にも回収ドローンの出動や書類作成などの手間があった
たかが紙切れ一枚でも手間は手間だと思うのが人間だ
虐待や殺害が市民に許可されてはいても
それを行うのは「手間」を惜しまない者だけだ
だから、大人しくさえしていれば
余程の事さえなければ虐厨は安泰だった
飢えすぎて犯罪に走られないように生ごみなどのゴミ捨て場は
虐厨の出入りは許可されていたし
労働してお金を稼ぐ施設も娯楽施設もあった
「生かさず殺さず飼い殺し」が彼らの扱いに置いて至上とされた
しかし、「例外」はある
「いやあああああああ!!!」
ここは人間が住む町
カフェスペースで処女の悲鳴が響いた
「どうしました!!?」
即座に警備兵が駆けつける
彼らの視界に映ったのは
お店のサービスで用意されていた共存生命体用のプール
その中で力なく浮かぶ「イチゲルゲ」という共存生命体
そして、その前で泣き叫ぶ少女だった
数分しないうち、町の出入り口は閉鎖された
しかしこれを過剰に重大視した虐厨はこの時点で皆無だった
事件を起こした虐厨と運の悪い虐厨たちが
処分されて終わり
だから「虐厨団地」にいる者は外出を控え
外の虐厨は犯人がいないことを祈りながら団地へ急いだ
少なくとも犯人やその一味がいなければ
「団地の爆破処理」はされない
それが知れ渡っているルールであり虐厨たちの命綱だった
この時までは
264
:
招かれた「例外」 2/6 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2020/08/05(水) 03:13:42 ID:mnK5nZ8Q0
ここは警備兵の本部
「イチゲルゲが行方不明だと連絡が・・・これで10件目です!」
「こっちは実装石5家族だ!」
「数が多すぎる、それに複数の地区で同時にだと・・・?」
「こいつは組織だった犯行だ・・・」
虐厨のこういった団体行動は初期では珍しくなかった
しかし「皆殺し」という結末に落ち着くことが100%であることを
警備兵たちが行動をもって周知した結果
まったくと言っていいほどなくなった
第一に、虐厨たちには通信手段などない
ネットの利用は制限され区画や町をまたいだ交信も厳しく禁じられていた
だから複数の町で同時になど、まずありえない
「何か抜け道があるはずだ・・・」
「!おい、スマホの落とし物の情報があっただろう」
「ああ・・・!まさか・・・!?」
「いや、それなら辻褄が合うぞ・・・パスワードロックがないスマホなら・・・」
スマホの落し物は珍しくない
見つからないこともあり、それほど気にも留められていない
だがしかし、もしも虐厨たちがスマホを拾って使ったとしたら・・・?
すでにスマホが普及して長い年月が経っていた
虐厨たちの手に渡っていても不思議ではない
電波はあちこちに行き届いている
さらにプライバシーの問題で交信内容はメールを含めて極秘扱いだ
だから警備兵の目の届かないところで使えば
相手もスマホを持っていさえすれば交信は可能である
「・・・あ、隊長これ・・・」
「どうした?・・・・・・・・・は?」
「なになに・・・え?」
隊員の一人が自分のスマホで「調べもの」をしたことで
事件は一気に解決に向かうことになった
「虐待実行隊集会」という名前のSNSの集会があり
それはだれでも閲覧が可能であり
会話内容は完全に筒抜けだった
「・・・あほだな」
その一方で事件が起きた町では虐厨たちがてんやわんやしていた
事件を知って誰もが生き延びる策を模索していた
早く犯人を捕まえなければ
たとえ虐厨団地に逃げ込んだとしても諸共爆破されてしまう
事件の起きた町に加えて隣接する町も閉鎖されたが
こちらでは虐厨たちは団地にこもって震えるしかない
事件が起きた町の同胞を信じて待つしかない
「てめぇかぁ!!」
「こっちこい!!」
しかし虐厨は生来「自己顕示欲」の強い生命体であった
自分の悪事を隠しておく奴などまずいない
だから、集団で行動し悪事を働けば
「秘密にしろ」と言われても従うのはごく少数だ
だから虐厨であっても犯人を捕まえるのは容易だ
ただ・・・
「こいつはオレたちの英雄だぞ!!」
「アイゴに媚びる裏切り者どもめ!!」
それでも犯人を英雄視して匿ったり
確保しようとした虐厨を妨害して助ける虐厨たちも多数いた
むろん、彼らの行動によって事態が悪化してしまったことは
言うまでもない
265
:
招かれた「例外」 3/6 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2020/08/05(水) 03:14:30 ID:mnK5nZ8Q0
住人の同居相手のイチゲルゲが殺害された事件が起きた町では
事件から2時間して
テープの張られたカフェスペースで捜査する刑事たちの前に
顔をボコボコに腫らした虐厨と
それを囲う3人の虐厨がやってきた
「すいません、こいつがやりました」
「こいつが犯人です」
「俺たちがシメて白状させました」
3人は「虐待許可証」を示し身元を明かした
即座に警備兵が駆けつけて差し出された虐厨に薬物投与などの処置が施され
彼らの証言が偽りないものだと証明される
「よくやってくれた、『お前たちは』助けてやろう」
『こいつを差し出すからみんなを助けて下さい』と彼らが言う前に
刑事は言って警備兵の本部に連絡を入れる
3人はそれ以上何も言えなかった
許可証の内蔵チップが読み取られて「区別」されるように施された上
虐厨囚人の輸送車に入れられた
少なくとも自分たちの命は助かった
彼らはそれを「よし」として受け入れる以外なかった
「あ、あの、オレは・・・」
「分かったから、もう行け」
一方で、少女の共存生命体を虐待の上で殺害した虐厨は
解毒剤を施された後で釈放された
会釈しつつ離れたそいつは・・・
「てめーのせいかぁ!!」「よくも!!よくもぉ!!!」
怒り心頭の他の虐厨に襲われて嬲り殺された
釈放される前に許可証の中の個人情報が公開されたのだ
「こいつが今回の事件の犯人だ」という情報を添えて
「バカは放っておけ、どうせ勝手に死ぬからな」
誘拐事件の起きた町の一つの虐厨団地の中で
主犯格の虐厨は取り巻きへ言った
彼らは他の虐厨よりは頭が切れるほうだった
今回の「反抗作戦」も彼らが思いついたものだ
さらわれた「ヒギャクセイブツ」はすでに生きていない
死骸は町のあちこちに捨ててある
だからGPSがあったとしても自分たちまでは辿り着けない
それに、わざわざ虐厨団地に行きたい奴など警備兵にもいない
恐れられている「虐厨団地爆破処理」も
滅多にされるものではない
それに犯行を自慢する奴らが勝手に犯人になってくれる
彼らはそう考え確信していた
266
:
招かれた「例外」 4/6 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2020/08/05(水) 03:15:37 ID:mnK5nZ8Q0
「全員の死亡が確認されました、隊長」
誘拐被害者の全滅という最悪の結果が隊員たちによって
警備隊支部にもたらされた
それは事件のあった他の町も同様だ
「そうか、最悪の結末だな・・・」
隊長は本部に連絡を入れた
決して泣き寝入りはしない
それは奴らを増長させるだけだ
本部はただちに「例外処置」の発動を決定した
「さて、次の計画だが・・・」
すぐ背後の警報ランプが赤く光ったことに気づかないまま
主犯格の虐厨はアジトで取り巻きへ次の犯行計画を提案した
それは永遠に実行されることはなくなった
「な、なんだ!!?」
虐厨団地の前まで来た虐厨たちは立ち尽くした
目の前で虐厨団地は轟音を上げて爆発し
崩れ落ちたのだ
警備隊本部からの破壊処置が発動されたとしか思えない
しかし、途中で警備兵が銃を向けてくることもなかった
犯人は捕まったものと思っていた
なのに突然、帰る場所が、唯一の安全地帯が消失したのだ
中にいた同胞と共に
それは、閉鎖処置が為された他の町でも同様だった
同時刻に虐厨団地が破壊された
何かを聞こうと外にいた古参の虐厨に話しかけた者もいたが
古参たちは「終わりだ・・・」とブツブツ呟くだけになったり
中には唐突に川へ身を投げるなどの自殺を遂げる者もいた
そして、同胞であるはずの虐厨に襲い掛かる者もいた
「なにすんだじいさん!!狂ったか!!?」
「ワシに殺された方がまだ幸せじゃ!!どうせみんな死ぬんじゃからな!!」
そんな混乱の中でも「準備」は着々と進められた
警備兵は町の境の門前と人々の居住区域を除いて突如いなくなった
虐厨以外の人々も共存生命体も姿を消した
さらに大量の回収ドローンが警備兵に代わって町の中に出現した
何をするでもなく「許可証」のチップを頼りに探索し
虐厨一人一人にくっつくように一体ずつ接近し
無機質なカメラをじ〜っと向ける
虐厨の誰もがそれを不気味に思った
何が起きるのか不安に思った
しかし虐厨たちには唯一の安全地帯だった「虐厨団地」は、もうない
ただこれ以上の悪いことが起きないように祈りながら
嵐が過ぎ去るのを待つしかないのだ
しかし願いもむなしく「終わり」はやってきた
267
:
招かれた「例外」 5/6 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2020/08/05(水) 03:16:19 ID:mnK5nZ8Q0
「なんだ?」
回収ドローンとは異なる小型の円盤型ドローンが町に放たれた
見たことがないドローンだが、不気味さを感じた
円盤の縁はギザギザになっている
まるでノコギリのようにそれは見えた
ゆったりした動きの回収ドローンと違い
それはトンボのように素早く飛び回っている
何かを探し回るかのように
そして虐厨をカメラに認めると、その近辺から動かなくなった
「始めろ」「了解!」
警備隊本部でGOサインが発信されると
円盤型ドローンは縁を高速回転させ行動を開始した
それまでただ浮かぶか飛ぶかするだけだったそれは
勢いをつけて虐厨めがけて飛び込んでいく
「ぎゃあああああ!!!?」
円盤型ドローンが横切った直後
横切られた虐厨の片腕が切断され地面に落ちた
もう一回横切り、虐厨の頭も地面に落ちて絶叫は止んだ
「え?」
目撃者の虐厨はそのいきなりの殺害を呆然と見ていた
ゴトン!
また一人、その視界の中で虐厨の上半身が地面に転がる
「う、うわあああああ!!!」
悲鳴を上げて逃げようとした虐厨の背中へ
容赦なく円盤型ドローン=虐厨駆逐ドローンは襲い掛かり
その体を切断した
ようやく何が起きているかを理解した虐厨たちはパニックになった
我先にと逃げ出す彼らを背中から駆逐ドローンが襲う
居住区に逃げ込んだ虐厨は、そこにいた警備兵に射殺され
虐厨施設に逃げ込んでも扉を閉めてもドローンは入り口をAIで操作し
あるいは壁を切断して入ってきた
頑丈な個室に逃げ込んだ虐厨は内臓の火炎放射器で丸焼きにされた
マンホールの中に逃げ込んでも、すでにそこに放たれたドローンが虐厨を殺した
どこにも逃げ場は、安全な場所はなかった
268
:
招かれた「例外」 6/6 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2020/08/05(水) 03:17:06 ID:mnK5nZ8Q0
犯人を連行するという殊勝な行いをした「模範的な虐厨」を除き
すべての虐厨が閉鎖された町から駆逐された
これが「例外処置」
すなわち「虐厨のリセット」だ
開始からわずか4時間で、彼らは文字通り消えた
死体は回収ドローンが持っていき後片付けも清掃も済んだ時
彼らがいたという証はどこにもない
「一斉駆除」開始から6時間後、町は元の活気を戻した
少女たち被害者は警備隊本部から職務が行き届かなかった旨の謝罪を知らされ
精神のケアと多額の賠償などを受け取ることになる
これはかつて冷遇された被害者たちが警備隊の創設者であることに起因していた
第二第三の自分たちをこれ以上出さないように
虐厨の被害者に警備隊本部は手厚い補償を自前で用意した
人々や他種族、共存生命体が行きかう町
しかしそこに「虐厨」はもういない
虐厨団地は再建工事がすでに始まっていた
「模範的な虐厨」を生かしておいたのは慈悲ではない
これだけが唯一の生きる道だと学習した彼らを放つことで
他の虐厨にも学習させるためである
今回の件で街の虐厨がいなくなっても
また他の場所から虐厨が入ってくる
彼らはどこかで生まれてどこかから入り込む
キリがないのだ
ならばこちらからコントロールが効くようにすればいい
コントロールできない個体は排除されるようにすればいい
それでもだめなら「リセット」するだけ
虐待施設も同様の理由で修繕され清掃された
生き残った「模範的な虐厨」だけが
このことを記憶している
彼らは町に解き放たれ
事件の生き字引の役割を担うことになる
狂乱した、あの古参たちのように
(おわり)
269
:
おまえか? 1/1 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2020/09/21(月) 04:31:45 ID:p6Yfn2lU0
「ひ・・・ひぃぃぃ」
男は這いずっていた
男は「虐厨」という生物であったが
すでに手の指の爪がすべて割れ血液が流れ落ちている
しかし足を潰されているため
逃げるにはそれしかない
もちろん
「おまえかぁ?」
後ろから迫る死神から逃げ切れるはずもない
「まてよ、オレは人間には・・・手を出してねぇ
野良か野生しか手を出してねぇよ・・・」
虐厨は片手の平を見せて命乞いをした
その虐厨の言うことは本当だ
今日も仲間2人を連れて町のゆっくりに手を出そうとしたところ
突然現れた男によって仲間は殺され
残る一人の彼はこの有様だった
「おまえかぁ?」
しかし男は同じセリフを繰り返すだけだ
「知らねーよ、他の虐厨がやったことなんて・・・いぎゃ!」
頭にバールのようなものを振り下ろされて
その虐厨も死体の仲間入りを果たした
「次・・・」
男はふらふらと「標的」を求め徘徊を再開した
かつて、男には愛する家族がいた
不治の病で先行き長くないと知りながら結婚した幼馴染
彼女はゆっくりふらんを飼っていた
彼女の死後、男はゆっくりふらんを娘同然に想い
共に生きてきたが・・・
ある日、男の留守中に虐厨が家に侵入した
ゆっくりふらんは家から飛び出して逃げ延びた
運よく野生の同種たちに保護されたが
今度は野生の同種たちとともに別の虐厨に襲われ死んだ
金バッヂはしっかりと付けていたが
虐厨の中には
「飼いは野生よりも動きがにぶいから」「痛みを知らないから」
といった理由でわざわざ「飼い」を襲う者も少なからずいた
男は警察に訴えたが、ゴミ捨て場に捨てられていたのと
遺体の損傷が激しいことから
犯人の特定は不可能になっていた
だから男は考えた
少なくとも犯人は虐厨だと分かっている
なら
虐厨をみんな殺してしまえばいい
と
男は今日も明日も虐厨を殺し続ける
まだ見ぬ犯人をその犠牲者の中に入れる時を
夢見て
(おわり)
270
:
残り積もった恨みの果て 1/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2020/10/29(木) 19:04:38 ID:KzpnD6WA0
「ちくしょう・・・」
男は潰れた店の前で床に手をついて項垂れていた
床には彼が可愛がっていた実装石たちが死んでいる
「いつまでいるんだよwとっとと出てけwww」
彼が金を借りた「逆中金融」の社員は
実装石の死体を踏みつぶしながら言うと
男の顔を蹴飛ばしてテナントから叩き出した
ここは借金の抵当にあてがわれたが
借金を利息含めて返してなお余りある高値で売れ
さらに実装虐待動画はDVDとして大ヒットした
もちろん、男が泣き叫ぶ様子も収まっている
男はその日を最後に世間から行方をくらました
「愛護は愛誤」
「愛護は餌食」
「愛護は被虐生物」
これが「逆中金融」を含む数多くの企業を傘下に持つ
巨大グループ「GYAKUTAI」の表には出ない社内の合言葉だ
内に秘めてはいるが、その攻撃性は
ほかの虐待厨企業の比ではない
引っ越しや配送を手掛ける「逆中輸送」においてすら
金バッジゆっくりのすり替えは日常茶飯事だった
最初は行方不明を誤魔化すために替え玉を用意していたが
バレないと分かると利益のためにすり替え
虐待動画を撮って売りに出すことで
粗利を稼ぎまくった
271
:
残り積もった恨みの果て 2/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2020/10/29(木) 19:06:36 ID:KzpnD6WA0
しかし、これは長くは続かなかった
結論を言うと「バレた」
ペットショップから金バッジゆっくりを浚い
あるいは逃げ出した金バッジゆっくりを強奪し
金バッジを奪ってネットで販売したり
あるいは自分のゆっくりに付けたりといった
犯罪の届け出が多数あった上に
奪った金バッジを捕食種に付けて
他の飼いゆっくりを飼い主の目の前で殺させるなどの
悪質なケースまで生じるに至り
「バッジ」と「ゆっくり」へ「識別チップ」を取り付けることが
義務化された
これにより今まで追跡困難だった誘拐や
バッジの強奪
あるいは散歩中の殺害などの数々の犯罪の
検挙率が一気に跳ね上がった
ただ、犯人を焼却するのに保健所の焼却炉では足りず
民間のごみ処理施設を貸してもらう状態が
しばらく続くことになった
もちろんそんなことを知らない「逆中輸送」は
法律施行後も同じことを続けた
その結果、怒った飼い主が虐待厨専門の駆除業者に依頼して
支社の一つが襲撃を受けて壊滅
駆除業者が提出した情報と証拠が警察に提出された
しかし、警察が動くことになった決定打は・・・
「何を言っているんですか? うちのれいむはここにいますよ?」
業者はいつものように代理のれいむを用意した
しかし、「れいむがいなくなった」のは勘違いで
飼い主が れいむと一緒に仮住まいへ移動していただけだった
そして、社長たちの最大の誤算は
社員として雇った虐待厨のアホさだった
「ヒャッハー!!」
あろうことか、「元のゆっくりは殺して証拠隠滅をしろ」という命令を
その場でそいつは実行した
飼い主の目の前で金バッジのれいむを殺して
持ってきた別の金バッジれいむを置いて帰ろうとした社員は
警察署に連れていかれた
「あれ? 署長、今日は非番では・・・」
「こいつは現行犯よ!!」
運の悪いことに、依頼主の女性は警察官だった
それも警察署の署長である
272
:
残り積もった恨みの果て 3/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2020/10/29(木) 19:07:33 ID:KzpnD6WA0
一つの警察署が丸ごと敵に回った時
「GYAKUTAI」の命運は尽きた
次から次へと明るみに出る犯罪の数々
隠蔽しきれなかった、ゆっくりや実装ら「被虐生物」の死体の山
そして冒頭のテナントのような例も多数報告されていった
「署長、こいつら・・・見てください」
部下の一人が持ってきたのは虐待DVDとリストだ
テナントにあった実装石カフェについての
インタビューを受けるご近所たちや
苦情を言う住人、実装石の虐待etcが映っている
しかし・・・
「この苦情言ってる・・・こいつとこいつ、見覚えがあります
たしか、GYAKUTAIの傘下企業の社員だったかと」
部下はその別企業の顔写真入りのリストを持ってきていた
取引して手に入れたのではない
その企業のホームページに堂々と掲載されていたものを
プリントアウトしただけである
「・・・!すぐにDVDにある人物を調べなさい!」
この捜査の結果、金を積ませて嫌がらせを行っていたり
あることないこと吹き込まれて不安を煽られたなど
GYAKUTAIのグループぐるみの壮大な犯罪が発覚した
手口はこうだ
まずゆっくりなどの「被虐生物」に該当する生物を扱う店を探し
それが「OOカフェ」「OOマッサージ」「OO喫茶」など
いわゆる「愛護的な店」だったら工作を開始する
周辺住人や商店街の店へ金を握らせたりサービスをしたり
あるいは嘘を吹き込み不安を煽ったりして店を追い詰め
借金の証文も買い取って大義名分を得た上で襲撃を実行
しかもわざわざ「愛護」の目の前でそれを行っていたのだ
「・・・クズね」
ダン!!
部下の一人が机に拳を叩き付けた
「もう許せねぇ!!署長!一網打尽にしてやりましょう!!」
「そうね・・・でも召集の必要はないわ」
署長の言葉に全員が呆気にとられた
「署長、証拠も集まっていますが・・・令状を請求し踏み込むのに十分ですよ?」
「踏み込まないとは言っていないわ
こういうことは専門家に任せるべきと言っているのよ」
署長は自分のスマホを手に取り、事前に調べていた番号を入力した
273
:
残り積もった恨みの果て 4/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2020/10/29(木) 19:08:37 ID:KzpnD6WA0
「頼む、この捜査を打ち切るように圧力をかけてくれ・・・!」
ここはGYAKUTAI総本社
会長は警視庁に電話をして例の署長の捜査を打ち切るように
頼んでいた
しかし、この一見バカげた「おねがい」を前に
あっさりと署長は捜査を打ち切った
実をいうと連絡が来た時点ですでに捜査は打ち切られていた
証拠も情報も一切合切が処分されていた
もう用がないからだ
なぜなら・・・
「ちーっす!虐待厨駆除業者ギャクチュウコロリで〜す!!」
すべては駆除業者にとっくに送られていたからだ
一つ二つではない
全国各地の駆除業者に諸々の情報証拠や大金と共に依頼が行っていた
結果、企業間の垣根を超えた会議がネット上で行われ
作戦日時などが決定されてもGYAKUTAIはまったく知ることなく
ほぼ同時刻に作戦は実行された
「てめぇらが!!てめぇらがあの子たちを!!」
「死ね!!あの子たちの分、苦しんで死ね!!」
GYAKUTAIは気にも留めなかったことだが
冒頭のテナントの主を含む被害者たちは全員が泣き寝入りしたわけではない
少なくない数が虐待厨駆除業者の門戸を叩き入門していた
「あいつらを一匹でも多く殺したい」
「殺された子たちの仇を討ちたい」
「これ以上、あんな奴らにアリ一匹すら殺されるのが我慢できない」
入社面接で誰もが虐待厨への憎悪を憤怒を吐き出したのは
言うまでもない
そしてこれらの企業には、少なからず同じ境遇の人間がいた
皮肉にもGYAKUTAIの企業活動が活発化したことで
これら駆除業者に入る社員数もまた増大した
当然ながら効率も仕事の速度も増していった
274
:
残り積もった恨みの果て 5/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2020/10/29(木) 19:09:23 ID:KzpnD6WA0
すべての支部すべての支社、傘下企業までも同時に攻撃されたことで
増援を送る余裕はなかった
そして時間経過とともに一つ、また一つと企業はつぶされていった
総本社も例外ではない
会長を除く全員がすでに殺され
会長は椅子に縛られて固定され、企業壊滅の報告が来る度
それを聞かされていた
「良い様だな、え? ゴキブリどものボスさんよ?」
その拘束には「人権」の配慮などない
その場の全員が会長を人間と見ていないのだから当然だ
「逃げてもいいんだぜ?
『逃げようとしたからやむなく処分した』って報告できるからな!!」
ただ死なないことだけが配慮された
その場の誰もが会長を殺してやりたいほど憎悪していたからだ
やがて、すべての企業が潰された後
会長は小突かれながら総本社を後にした
そして駆除業者の車に乗せられていずこかへ去っていった
一代で大企業を作り上げた虐待厨の名士
彼は二度と姿を見せることはなかった
巨大企業の突然の倒産と流出し明らかになった数々の犯罪は
世間を騒がせた
また、彼らに協力した人々については駆除屋は口をつぐんだが
SNSで目撃者たちが情報を流したため
GYAKUTAIの壊滅から程なくして住所氏名がネット上で流れた
金を受け取った者以外は罪には問われなかったが
「犯罪者の協力者」のレッテルを張られ
誰もが転職・引っ越しを余儀なくされた
そして虐待厨たちは世間から怒りの対象にされた
今までは野良や野生といった「人間の生活圏とは無縁の存在」だけを
狙っていると思われていたのと事なかれ主義のために
「お目こぼし」されていただけだ
「世間で認められている」と勘違いしていたのは虐待厨たちだけである
だから「組織だって人間に危害を加える害獣」と判明すれば
話は別だ
条例で次々と虐待厨の隔離・追放が制定されていった
また「工作」も明らかになったため
誰もが虐待厨たちの話を信用しなくなった
かつて「悪者」にされた被害者たちの中には過激派転向した者も少なくなかった
だから「虐待厨たちへの暴力行為は無罪」とする法律が制定され
公に復讐は認められたことで、彼らは大っぴらに復讐を慣行した
虐待厨たちの中には人々に助けを求めるのもいたが
「事なかれ主義」の蔓延は今度は虐待厨たちを見捨てる結果になった
その後も自業自得で生まれた地獄で、虐待厨たちは生きることになる
(おわり)
275
:
等しき罰を 1/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2020/12/24(木) 21:22:25 ID:oSAZ0OlQ0
「見つけたぞ!!」
ここは、とある虐厨のアジトだ
それも「飼い」専門の虐厨である
しかしこいつらは通常の「飼い」専門の虐厨とは違った
こそこそ「飼い」を襲うのが常であり
(それでもバレて飼い主あるいは駆除業者から制裁されるのが常だが)
虐待をしている時以外は注意深い奴らと異なり
そいつらは堂々と「飼い」を誘拐していた
そしてビデオを撮影して売りに出し大金を稼ぐだけでなく
飼い主に「飼い」の遺体とともに送り付けていた
泣き叫び、あるいは死を選ぶ飼い主の様子も隠しカメラで撮影し
これもまた彼らの利益になっていた
あまりにも堂々とした犯行であったため
すぐに足がつき踏み込まれた
しかし・・・
「降伏します逮捕されます抵抗しません」
虐厨たちは両手を地面について降伏した
今までもこういうケースがないわけではなかった
だがそいつらは逃げるか無謀にも向ってくるか
あるいは生き残りの「飼い」を人質に取るかしていた
このように無抵抗でただ逮捕されるのは稀である
踏み込んだ警察は戸惑った
276
:
等しき罰を 2/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2020/12/24(木) 21:23:05 ID:oSAZ0OlQ0
これもまた、この虐厨グループの作戦だった
「抵抗するから心証が悪くなって厳罰を受けるのだ
なら、無抵抗で捕縛され素直に罪を認めた方がいい」
「人間に直接手出ししなければ器物破損しか適用できないだろう」
そう考えての行動だった
彼らの思い通り、痛めつけることもせず警察は
虐厨たちを捕縛した
ここまでは虐厨ったいの思い描いたとおりだ
しかし、彼らを乗せた車両は警察署へ行かず
そのまま人気の無い山奥へ向かった
虐厨たちは訝しんだ
警察手帳や逮捕令状を持ってきた警察官は本物だ
業者らしいのも一緒にいるが、
彼らは虐厨憎しで凝り固まっているとはいえ警察と仲がいい
相手のメンツを潰すマネは決してしない
そのはずだ
「着いたぞ、降りろ」
虐厨たちは古びた建物の前で降ろされた
「どこだよ、ここ?」
虐厨の一人が質問をした
「悲鳴を上げまくってもだれにも聞こえない場所、でいいか?」
警察官の一人は冷たい目で見ながら答えた
「連絡を受けました撮影班です!」
「お疲れ様です!」
建物から出てきた男が警察官を出迎えた
「資料は読みましたか?」
「はい、酷いものですね・・・許せません!」
その会話は、井戸端会議にも似た平和的なものだった
しかし虐厨たちは出てきた男の服装に
目を丸くしていた
277
:
等しき罰を 3/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2020/12/24(木) 21:23:48 ID:oSAZ0OlQ0
男の服装は、ゴム製の紺色のエプロン一体化型のつなぎに
防護服のようなビニール製の特殊な衣装をくっつけたようなものだ
そこから顔だけが出て警官と会話している
「たしかに受け取りました」
「では、よろしくお願いします」
男は渡された書類にサインをして返した
お互いに挨拶をして警察官が去ると
「聞いての通りだ、お前たちは今から我々に付き合ってもらう」
男はそう言って顔全体をガスマスクで覆うと
虐厨たちを建物の中に引っ張っていった
虐厨たちは不安になった
男の服装は奇抜だが問題はそれではない
あちこちにこびりついていた、乾いた血液のような汚れが
気になっていたのだ
「みんな、待たせたな」
奥の広い部屋に虐厨たちは連れてこられた
そこは、直感的に言っても「地獄」だ
あちこちに血液や肉片らしいものがこびりつき
数々の鉄製の拷問器具が並べられている
何より、男と同じ格好の人間が10人ほどそこにいた
「話は聞いた、腕が鳴るぜ!!」
「すぐに殺すなよ、売れなくなる」
「分かってるさ、こいつらはできるだけ苦しめにゃならん!」
虐厨たちは不安そうに自分たちを連れてきた男を見た
「安心しろ、ビデオ撮影だ」
それは分かる
撮影担当らしい男が大きなビデオカメラを操作しているのが見えるから
「何を、撮影するんだ?」
それに対して男は答えた
「お前らも散々作って売って金を稼いだだろ?」
虐厨たちは自分たちの運命を悟った
ここは、虐厨たちを虐待するビデオ映像の撮影所だ
そういうものが出回っていることは知っていた
虐厨たちの数は増えたがそれに比例する形で事件も増えた
被害者もうなぎ上りに増えた
怒りが生まれやがて憎悪になるのに時間はかからなかった
誰もが虐厨たちを憎んだ
278
:
等しき罰を 4/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2020/12/24(木) 21:26:44 ID:oSAZ0OlQ0
いつしか虐厨たちを虐待するビデオが出回り始めた
日頃、虐厨たちにひどい目にあわされていた人々に
よく売れた
もちろん虐厨たちもそれを手に入れた
撮影した企業に行って報復するためだ
しかし、住所も名前も仮のもので
いくら調べても途中で途切れてしまう
そんなことが度々あった
しかし今はそれも納得がいく
これは、国が運営する施設で
目の前の男たちは「公務員」だ
企業や個人経営事務所とは全く規模が違う
能力も違う、力量も違う
勝てるはずがない相手だった
「さて、そろそろ始めるか」
「この前はまとめて10匹だったけど、どうする?」
「一人ずつにしようぜ、一番最後はじっくりとな」
即座に虐厨たちは命乞いを始めた
法律を持ち出して違法行為ではないかと非難もした
しかし・・・
「もうカメラは回っているぜ!」
「反省してねぇなこいつら」
「気が変わった、全員じわじわ嬲り殺すぞ!」
状況をより悪化させただけだった
こうして、虐厨のグループが一つ文字通りに消えた
彼らの遺体は見つかっていない
しかし、その最期がどのようなものだったのかは
出回っているスナッフビデオに克明に記録されている
そして今日もまた、虐厨はそこへ送られ続けている
(おわり)
279
:
英雄の影で掃除を 1/3 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2021/03/03(水) 04:58:41 ID:HC8aGkuA0
「や、やめろ、オレは怪人じゃない!人間だ!!」
一人の男が路地裏で追い詰められていた
相手は手に鉄パイプを持ちガスマスクに防護服という姿だ
男は命乞いをしているが
相手は聞く耳を持っていないのか
一歩、また一歩と距離を詰めていく
「あの少女を、知っているか?」
相手は手にした鉄パイプを片方の空いてる手で叩きながら
男に問いかけた
「あ、ああ、知っているさ」
相手はその問いに満足そうに頷いた
「なら、お前が手を出そうとした彼女の妖精も何なのか、知っているな?」
男は答えた
「もちろんだ、あの魔法少女のペットだろ?
けどどうせ殺したってあっちの国が生き返らせgyゲケ!!」
男が全部言い終わる前にその口に鉄パイプが突っ込まれる
「なら、貴様が人間だろうと関係ない
駆除対象、それだけだ!!」
歯をへし折りながら乱暴に鉄パイプを引き抜き
相手はそう答えた
「察しの通り、オレはヒーローかヴィランかと言われたら
ヒーロー側だ
ただし、貴様のようなヴィランでないことを逆手に悪さをする
ヒーローには手を出せない害虫を駆除するのが仕事の、な」
言いながら男の懐からスマホをひったくる
「虐待愛好会、ね
こんな組織が出来上がっていたとは・・・」
男はスマホを取り返そうと飛びかかったが
反撃の一撃で垂直に地面に落っこちた
アゴをコンクリートの地面に強打して
残っていた歯が全部地面へ飛び散る
「安心しろ、お仲間もすぐそっちに送るから
すぐに寂しくなくなるさ」
ガスマスクは勢いよく鉄パイプを振り下ろした
280
:
英雄の影で掃除を 2/3 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2021/03/03(水) 04:59:24 ID:HC8aGkuA0
「オレです、終わりました
ですが、ヤツは組織の一員で・・・」
ガスマスクは自分のスマホで連絡を入れた
しばらくして、処理班が到着し男の死体を回収し清掃する
男は数日ほど「行方不明」扱いになった後、
「組織」の手によって全ての痕跡を消されることだろう
関係者の記憶も含めて消去される
つまり、最初からいなかったことになる
ガスマスクの所属組織の詳細は一員である当人も知らない
ただ、様々な世界を股にかける
それなりに大きな組織ということだけが分かっていた
だがそれで十分だ
二度と、自分がいた世界のように
馬鹿な一般人のせいで滅びるような事はあってはならないのだ
「きみは、生き延びて・・・私たちの分も・・・」
思い出すのは大好きなヒロインの一人の今際の言葉と笑顔
あんな目に遭いながら事切れる寸前まで
人々と自分を守ってくれた彼女たちを思い出す
自分を庇ったあのヒロインの正体は、近所に住む憧れのお姉ちゃんだった
それを、あいつらは・・・・・・
ガスマスクの奥で、力なき幼女だった戦士は涙を流した
彼女は憎んだ、悪の軍団ではなく
ヒロインの妖精を手にかけヒロインを弱体化させた屑どもを
彼女の願いは、屑どもを殺す異形との出会いで叶えられた
逃げ出した屑に足を引っかけ、首にガラスの破片を突き刺したことで
先輩にスカウトされて組織に入った
力なき幼子は、もういない
281
:
英雄の影で掃除を 3/3 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2021/03/03(水) 05:00:23 ID:HC8aGkuA0
「本当に、こういうやつらはどこの世界にもいるもんだね」
死体の山の上で煙草を吸いながら
その異形はひとり呟いた
ここはガスマスクから連絡のあった組織の本拠地の建物
中にいた数百人もの構成員は彼女一人によって全滅した
「誰のおかげで自分たちの今があるのか
明日があるのか、分かんないかねぇ・・・」
死体の山から降り立つと、異形の姿を解除しながら建物の出口へ歩く
まだうめき声が聞こえる
生存者がいるのだろう
しかし彼女は構わず背後へ火のついたままの吸い殻を捨てた
吸い殻は彼女が建物の正面出入り口を閉じた少し後に床に触れる
次の瞬間、オレンジ色の炎が上がる
死体の山も怪我をして動けない生存者も構わず
炎は飲み込んで焼いていった
「数が多い、宗教団体の儀式の失敗による惨事が
落としどころかな?」
もう彼女の頭にはついさっき殺しまくった人間や虐待厨のことなど
なくなっていた
今回の摘発の手柄を立てた後輩へ何をプレゼントしようか
そんなことを考えていた
「そういや、あの子をスカウトしたのって
あたしだったっけ?」
後ろで炎を上げて崩れ落ちる建物を
もう彼女は見ていなかった
「害虫」が出続ける限り、「駆除組織」の仕事は尽きることはない
(おわり)
282
:
あいつ何か言ってるぜ 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2021/04/08(木) 15:50:25 ID:GWqbbDlI0
「うああああああ!!」
一人の少女の悲鳴が響き渡る
ここは、G町のとある道
潰れた実装石とその前で泣き崩れる少女
それを前にニヤニヤ笑う虐待厨が二匹
「ソウちゃん!ソウちゃんがあああああ!!」
「オラ、そんなゴミ捨ててオレらと遊べよクソアイゴw」
泣き叫ぶ少女から実装石の死体をひったくりごみ箱に捨てると
虐待厨は少女の服をつかんで連れて行こうとしていた
それを止める人間はここにいない
「何しているんだよ!!」
そこへ、一人の女性が割って入った
「なにすんだ!」
「てめーもアイゴか!?」
「やかましい!!
女の子を道端で襲う奴が大手振って歩いている時点で
大間違いだろうが!!」
しかし・・・
「おい、あいつ何か言ってるぜ」
住人の一人がそう言った
「迷惑なんだよ」
「ガキ一匹で平穏が保たれるんだからいいだろ」
「正義のヒーローはとっとと帰りなw」
女性の味方になる者は、そこにいなかった
女性は少女と実装石の入ったごみ箱を抱えると
黙ってそこを去っていった
「おい、あの女すげぇ力だぞ?」
少女は10代前半、確実に35キロ以上はある
実装石が放り込まれたごみ箱に至っては
迷惑行為防止のため50キロ以上の重しが
その底部に施されていた
それを女性は軽々とそれぞれの脇に抱え去って行ったのだ
女性が去って数分後
そこは地獄と化した
女性が去った方角から走りこんだ完全武装の兵士たちが
次々と虐待厨を射殺していく
その銃口は住民たちにも容赦なく向けられた
兵士たちは女性が通報した対虐待厨組織の武装兵だ
女性は一部始終を録画・録音していたため
即座に「駆除対象」の情報は兵士たちに送られた
むろん、それには女性をなじった住民たちも含まれていた
「や、やめろ!こんなこと許されるわけないだろ!?」
「そ、そうだそうだ、犯罪者め!!」
しかし、追い詰められた悪質住人たちに
兵士たちは冷たい視線を向けながら口を開いた
「おい、こいつら何か言ってるぜ」
「あとは殺すだけだってのに、見苦しいな」
「まったくだ」
そして銃口から弾丸が放たれ住人は永遠に沈黙した
「こうなるのが嫌だったなら、最初からクズの肩持つなよな!」
駆除対象の全滅と帰還命令を受け去っていく兵士たち
残ったのは駆除対象の死体だけだった
しかし、住民たちにそれを片付ける者はいない
「触らぬ神に祟りなし」
「事なかれ主義」がその町で横行していたからだ
死体が腐敗し骨になっても誰も手を付けず・・・
「虐厨様の遺体を放置するとは無礼な住民どもめ!」
「分からせてやるぜ!ヒャッハー!!」
今度は虐待組織に襲撃されることになる
町が壊滅した後で虐待組織は先の兵士たちたった一部隊に
壊滅させられるわけだが
それはまた別のお話
(おわり)
283
:
出所後の世界 1/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2021/05/10(月) 03:27:10 ID:D3AxkoVo0
胴付きゆっくりと女児を間違えて惨殺した罪で服役していた
虐待厨の虐助は刑務所から出た
脱獄ではない、刑期を終え出所したのだ
「もう戻ってくることはないと思うが、悪さするなよ」
刑務官が出口でこんなことを言った
「もう来るんじゃないぞ」ではない
明らかにニュアンスが違った
悪戯を相手に仕掛けた子供みたいな目をしていたのが気になったが
虐助はそれよりも、久しぶりの娑婆に心躍らせていた
「ひゃ・・・!?」
目の前にいた親子ゆっくりに久しぶりの虐待をしようとした時
真横から誰かに殴られた
「馬鹿野郎!あれは地域ゆっくりだぞ!」
そいつは虐待厨だった
「お前、もしかして地域ゆっくりがいない所から来たのか?」
もちろん知らないわけがないし
幾度か手にかけたこともある
もちろん警察に追われる事になったが、どうにかやってきた
だが、いきなり殴られ呆然としていた虐助は
話を合わせることにした
「あいつらは地域の庇護下にある ゆっくりだ
だから”地域ゆっくり”と言うんだ
つまり、あいつらへ手を出せば即射殺される」
虐助は話が呑み込めない
警察に追いかけられたことはあっても、そこまでの仕打ちを受けた覚えはない
「ゆっくりに手を出しただけで殺されるのか?」
相手の虐厨は、その言葉に驚いた表情を見せた
「当たり前だろ、お前、そんなことも知らないのか?」
当たり前だった
ゆっくりを殺しただけでその場で殺されるなら
すでに生きてなどいない
「オレ、刑務所に入っていたから・・・」
その言葉で相手は納得したように頷いた
「そうか、じゃあ法律が変わったのも知らないんだな」
284
:
出所後の世界 2/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2021/05/10(月) 03:27:50 ID:D3AxkoVo0
『虐待厨特別処置法』
虐助が刑務所に入っている間に激増し凶悪化する虐厨へ
人々が突き付けた「答え」だ
「被虐生物への危害を加えることへの禁止」
「飼いや地域への手出しの禁止」などといった項目が
ずらずら並んでいった先に
「虐待厨及びそのシンパの人権はその場で停止される」
「場合によりその場での処分も許可する」とある
つまり内容はいたってシンプルな
「話が通じないのなら死ね」というものである
ただし、その場の処刑に役人は必要ない
そこにいる人間、例えばペットを傷つけられた飼い主が
独断で処刑したとしても許される
相手は人権がない、つまりゴミも一緒なのだから
無理なら電話一本で即座に「駆除班」が駆けつけてくれる
死体はゴミ捨て場に捨てるだけでOK
その際に「処理班」を呼んで手伝ってもらうこともできるのだ
虐待厨やそのシンパはブーイングを上げたが
これが人々の怒りの火に油を余計に注いだ
「てめーらみんな害虫だ!駆除されろ!!」
人の飼いだろうと構わず殺される
バッジを付けていてもダメ、金でもダメ
地域ゆっくりや名物ゆっくりでさえも炎上のため殺されていく
やめろと言えば笑ってツバを吐き掛け殴りかかり
「被虐生物は虐待されるのが正しい」の一点張り
それを愛するだけで「愛誤」呼ばわりして牙を剥く
「それなら、もうこれまでだ」
と、人々は堪忍袋の緒を切った
かくて、当初こそ虐待厨への厳しい刑罰制定で済んでいた法は
いまでは「虐待厨駆除容認法」と化した
制定後、各地で虐待厨は殺された
焼却場はゴミよりも虐待厨の死体を多く焼くようになった
さらに、虐待厨の手伝いをした人間は墓にすら入れず
虐待厨と一緒に「ごみの燃えカス」として処分される例も
出始めていた
「こいつができたきっかけは、
自分の作った作品の宣伝に地域ゆっくりを利用したバカのせいらしい
そいつが推奨した地域ゆっくり虐待のせいでこうなったんだと」
「はぁ? たかが一匹二匹でか?」
虐助の文句に相手を首を横に振ってこたえた
「地域ゆ全滅、それがあのバカがしたことの結果だ」
虐助は絶句した
つまり、思い付きで地域ゆっくりを全て殺したということだ
虐待厨の虐助でも分かる
地域共同体の財産をそこまで損なえば
行政は本気で怒るということを
今までそれが分かっていたから、1,2匹への手出しで済ませていたのだから
「ヒャッハ・・・」
タン!
乾いた音ともに
近くでゆっくりを殺そうとしたモヒカン虐厨が倒れた
頭は砕け脳が流出している
「お前ら、こいつの仲間か?」
「い、いえ、オレたちは立ち話していただけです!」
「そうか、失せろ」
腕章を付けた作業着の男に追い払われて
虐助たちは速足でその場を離れた
285
:
出所後の世界 3/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2021/05/10(月) 03:28:37 ID:D3AxkoVo0
「これで分かっただろ、今の状況が?」
虐助は何度も頷いた
出所後の世界は刑務所が天国であるかのような地獄ぶりだった
「や、やめ・・・」
「もう大丈夫だよ」
ケーキのようなクリームのようなポケモンを背後にかばう少女が
虐待厨の頭を踏み潰していた
向こうでは虐待厨が電柱に逆さに吊るされている
表皮をすべて剥がれた肉だけの状態で
しかし、時々動くことと苦痛のうめきを垂れ流し続けていることから
まだ生きていることが分かる
そして・・・・・・・
「てめぇ何してやがる!!!」
「あ、オレは邪魔なゆっくりを殴ってどけただk」
地域ゆっくりと知らずに殴った虐待厨は
駆け付けた男にハチの巣にされた
男の左腕の腕章には「保安員」の文字が刺繍されていた
「地獄か、ここは・・・」
殺しただけどころか殴っただけでその場で殺されていた
「ン、オイそこのお前ら!・・・もうすぐ日が暮れるぜ?」
確かに夕方だ、だが日が暮れたからなんだというのか?
「す、すいやせんした!」
しかし腕章の男に頭を下げ相方は虐助の腕を引っ張って
その場から逃げ出した
いや、明確な目的地を目指して走っている
「どうしたんだよ?」
「日が暮れる前に家にたどり着けたら答えてやる!」
二人は団地に駆けこんだ
いや、そこは団地というよりもコンテナを積んでドアと
廊下と階段を設置しただけの粗末なものだ
相方はドアの一つに駆け込む
その際にカギを開けたり閉めたりした様子はない
「オレの全財産は、これさ」
相方はそう言って背中のズタ袋を下ろした
つまりここは、相方の持ち家ではないのだ
「安心しな、ここに来るみんな家無しさ
ここは家がない虐待厨が唯一生きることを許される場所なんだ」
どういうことかと質問しかけた時
「ぎゃあああああ!!」
銃声と悲鳴が外から響いた
「・・・日が暮れても外にいる虐厨は、殺されるんだ」
286
:
出所後の世界 4/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2021/05/10(月) 03:29:11 ID:D3AxkoVo0
虐助は家が恋しくなった
翌朝早く相方と別れ家路を急いだ
同居している仲間の顔を思い浮かべながら
「ただいま!」
虐助は玄関のドアを開けた
その向こうには野原が広がっていた
中に転がる朽ちた家具や錆びた家電には
見覚えがあった
そして・・・
あちこちに転がるばらばらの白骨死体
それの着ているボロボロの衣服にも見覚えがあった
虐助は叫ぼうか泣こうか迷っているうちに
後ろから殴り倒された
「よくもオレの娘を!!こいつ!!こいつ!!!」
硬い鉄パイプのようなもので頭を殴られながら
虐助は思い出した
看守の最後の言葉、人を殺したにしては短すぎる刑期
そして自分を殴る人間が
殺した娘の父親だと考えが行き着く前に
虐助の頭は砕けた
ほぼ同時刻、「犯罪者を匿った」と疑われた虐助の相方は
団地ごと爆破処理された
そこにいただけの大勢の虐厨も一緒くたに処理され
新しく建築し直される虐厨団地の素材として
コンクリートと一緒に混ぜられ消えた
虐厨たちの未来永劫続く地獄は
まだ始まったばかりだ
(おわり)
287
:
天秤 1/7 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2021/07/27(火) 01:27:54 ID:xZ8awcpY0
ここは、とある町
他の町と違うのは試験的に「市民権導入」が
行われている事だ
もちろん対象は人間ではない
彼らは生まれながら当然として市民権を得ている
かといって虐厨でもない
奴らに市民権を与えたところで増長を促すだけだった
そのため一度試験導入が行われ直後に廃止されて以来
未来永劫それが採決されることは無い
対象となるのは「実装石」「ゆっくり」といった生命体だ
もちろん、全ての個体に配布されるわけではなく
知能が人間と同水準以上であることが条件だった
しかし試験に不合格だからと言ってデメリットは無い
「試験」という概念を理解した証明となり
その場で「準市民権」と言うべきものが付与されるからだ
「気に入らねぇな」
それを羨み電柱の影から見る男がいた
虐待厨の虐蔵だ
かつて「市民権導入」の経験者ではあったが
彼とその仲間が増長し、飼い実装殺害などの
数々の犯罪行為を行ったため計画は中止となり
彼の仲間の多くは捕らえられた
ちなみに虐蔵は仲間は今頃は塀の中と思っているが
すでに殺処分され地獄の中である
「いいなぁいいなぁ」
虐蔵は過去に自分たちの愚行のせいで
それを得る機会を永遠に失ったことなど記憶にはすでにない
かと言って行動を起こすこともできず
ただ羨まし気に見ている事しかでき無い
「市民権を持っている」と、言うことはすなわち「人権所有者」だ
家畜未満の虐待厨が手を出すことは死を意味した
下手をすれば町中で一斉駆除が行われ
虐待厨は町から一時的に姿を消すことになる
それが分からぬほど虐蔵は愚かではなかった
そう、少なくとも彼は・・・・・・・
288
:
天秤 2/7 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2021/07/27(火) 01:28:41 ID:xZ8awcpY0
虐蔵は気を付けてはいた
しかし中には分別のつかないバカもいる
虐待厨はコイツが多い
「この二人を殺したのは、誰だ?」
無惨なセヤナーの惨殺死体の写真が
広場の掲示板のディスプレイに映されている
その前に集められた虐待厨に
「虐殺」と書かれたヘルメットをした男たちの隊長が
質問した
「たかがセヤナーごときでおおげさなんだよ」
「ざまぁw」
その場にいた虐待厨の群れの中からそんな声がした
次の瞬間、兵士二人が虐待厨に駆け寄り
そこから一人ずつ腕を掴んで引っ張り出した
声を出した虐待厨ではない、適当に引っ張り出したのだ
兵士が戻る先には、いつの間にか用意された丸太と
良く研がれたナタがあった
「いやだあああああ!いやだあああああ!!」
「やめてくれ!!俺たちは関係ない!言ってないんだぁあああ!!」
その訴えを無視する形でナタが振り下ろされ
二匹の虐待厨は永遠に黙った
「もう一度聞く!!この二人を殺したのは、誰だ?」
今度は皆、黙った
誰もが周囲を伺い目が合うと逸らした
「では、質問を変えよう
先ほど被害者を愚弄する発言をしたのは、誰だ?」
今度は一斉に虐待厨たちは指さした
兵士たちは直ちに向かい、指を指された二人を連れて行った
泣きわめく二人は首を切られ先の二人に仲間入りした
「それでいい、犯罪者を匿う者や
嘘つきには生きる資格など無いのだからな」
満足げに頷く隊長は、現場に残された証拠や
指紋などをディスプレイに映した
「3日だ!3日猶予をやる!
それまでに犯人を見つけられなければ・・・」
「隊長!!」
話の途中で部下が敬礼して隊長に耳打ちをした
「なんだと・・・!本当かそれは!?」
「はい、本部から・・・」
「なんて事だ・・・」
虐待厨たちは虐殺部隊の会話を注意深く聞いていた
どうやらとんでもないことが起きたらしい
彼らには、それがこの場での即刻処刑につながらないことを
祈るしかできなかった
先の「人権」関連のバカの暴走のせいで
今や虐待厨には家畜未満の「生きていてもいい権利」しか
残っていないのだ
「副長、この場は任せた!」
部下に引き継ぎを行い、隊長は慌ただしく去っていった
「助かった・・・」
そう呟いた虐待厨は頭を弾けさせて倒れ伏した
「隊長の言ったことを理解していない者は、こうだ
いいか、3日の猶予をやる
その間に犯人を見つけて来い
でないと・・・」
副長は撃ったばかりで硝煙が昇る銃を別方向に向けて撃った
「ぎゃあ!!」
こっそり逃げようとしていた虐待厨が背中を撃たれ
前から内臓をまき散らして倒れた
「・・・こうなるぞ」
その場に残った虐待厨は頷くしかなかった
289
:
天秤 3/7 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2021/07/27(火) 01:29:31 ID:xZ8awcpY0
「対話が中止とはどういうことですか?」
「どういうも何も、そのままの意味だ」
隊長が呼ばれた会議室には
すでに組織の重鎮が揃っていた
議長は隊長の疑問に答える素材を
目の前に出した
それは、無惨に殺された幼い「ゆっくりれいむ」の死体だ
自然死でないとはっきり分かる
明らかに人為的なものである
そして、その死体にあるピンク色のリボンは
隊長も見覚えがあるものだった
「・・・交渉には、私が行きます」
「ああ、そうしてくれ・・・君以外に
彼女たちと会話ができる者は
恐らくいないだろう」
その日、300を超える虐待厨が殺され
その首を持って隊長は謝罪と賠償
対話の継続の話をするために
「ゆっくりの里」へ向かった
この「首」が人類側の「答え」だと
一目で分かるようにするためだ
彼女たちは度重なる約束反故と迫害を受け
人間不信になっていた
そのため親交のある近隣の里とだけ交流があったのだ
それだけではない
彼女たちは「戦力」を有していた
火炎を操る「もこう」、輸送を行う「うーぱっく」は
序の口もいい所だ
光線兵器を能力として有する「おくう」に
あらゆるものを無条件で破壊可能な「ふらん」
空間操作能力を持つ「ゆかりん」といった
現代科学を凌駕し防ぐ手段など皆無な者たち
今までその存在が知られなかったのも
惨事が起きていないのも
彼女たちが必要以上の争いを嫌っただけである
詰まるところ人類側は「運が良かった」だけだ
290
:
天秤 4/7 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2021/07/27(火) 01:30:37 ID:xZ8awcpY0
それが、虐厨に人権を与える話のせいで
自体は一変した
彼女たちに手を出した虐厨は
仲間の仇討ちをあちこちに訴えかけたのだ
彼女たちの情報を事前に得ていた高官たちは
絶句した
分別の無い馬鹿どもとは思ってはいたが
ここまでとまでは思っていなかった
追い打ちをかけるように、
彼女らの長であるドスゆかりんが
直接議会にやってきた
彼女はこう告げた
「私たちは争いは好まないけれど
身にかかる火の粉を払う程度の事はしますわよ」
虐厨たちの人権が白紙になったのは
言うまでもない
バカと心中など誰もしたくない
そうでなくても人権を得た虐厨らによる犯罪が
後を絶たないのだ
誰もそれに反対する者はいなかった
291
:
天秤 5/7 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2021/07/27(火) 01:31:52 ID:xZ8awcpY0
虐蔵は広場に行った同胞から話を聞いて
青ざめた
飼いセヤナー殺害の犯人こそが
虐蔵だったのだ
もちろん「飼い」と知って襲ったわけではない
昔はともかく今そんな事をするのは
バカのする事だ
「飼い専門の虐待派」を自称していた者たちは
全員が町全体一斉駆除によって
無関係の虐待厨を大勢巻き添えにする形で
あの世に強制送還された
それでも今もいないわけではないが
そういう奴は同胞に自慢したがる
だから、捕まえて突き出すのがルールになっていた
人間は鬼ではない
「分別ある賢い奴」にお目こぼしをくれる慈悲はまだあった
逆に、同胞を売る形になるその習慣をやめれば
その慈悲すらも期待できなくなるだろう
しかし、虐蔵は野良と思ってセヤナーを殺してしまった
ただ汚れていただけの「飼い」だったと
今頃になって知ったのだ
虐蔵は考えた
自首すれば処刑は免れないだろうが
仲間は助かる
などという殊勝な心は彼にも他の虐待厨にも無い
どうすれば自分が助かるかを必死で考えた
292
:
天秤 6/7 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2021/07/27(火) 01:32:42 ID:xZ8awcpY0
「オレじゃねえよ!!」
考えた末に「他の奴に罪を擦り付ける」を選んだ
自分よりも弱そうな奴を捕まえて縛り
一緒にあの副長のところに向かった
「黙れ!オレは見たんだ!
お前が殺しているその現場をな!!」
副長たちは黙ってそれを見ていた
「なぁ、一つ聞いていいか?
お前は本当に れいむを殺したのか?」
虐蔵は「え?」と副長を見た
「いいや、ゆっくりなんて知らねーし
オレはここに来たばかりなんだよ!」
虐蔵は思った
この副長はセヤナー殺しの犯人を追いかけているのではないのか、と
副長は満足げに頷くと部下に指示を出した
「こいつはシロだ、事件を全く知らん
賢そうだからこちらで保護し教育しろ」
部下は敬礼すると縛られた虐待厨を抱えて去って行った
虐蔵は副長を見た
冷たい視線が虐蔵に刺さる
「我々は忙しい、それを知らないわけじゃないだろ?」
自然な動きで腰の拳銃を抜くと
虐蔵の頭をそれで撃ち抜いた
「手の空いている者たちを集めろ
一斉駆除を行う!!」
293
:
天秤 77 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2021/07/27(火) 01:33:12 ID:xZ8awcpY0
一応、三日の猶予は与えられていた
だが、それは「条件付き」だった
例えば証拠隠滅や犯人の擁護
今のように別の奴を仕立て上げて生贄に突き出すといった行為は
「重大な違反」とみなされる
彼らは犯人探しをしてはいるが遊びでやっているわけでも
溜飲を下げるためにやるわけでもない
「犯罪者を取り締まる」というごく当たり前の
治安維持の仕事をしているだけだ
だから捕まえるのは真犯人でなくては意味は無い
事件発生直後から町には封鎖線が敷かれていた
各地に武装兵士が立ち裏道は罠が張られている
無理に行こうとすれば射殺され
裏道に行けば罠で死ぬ
だから、町から犯人が逃げることもできず
逃がされる心配もない
逆に言えば最悪「一斉駆除」で
犯人を殺すこともできるのだ
しかしこれは人間的ではないと彼らも思っていた
虐待厨どもが連中の領域でやる虐殺と大差ない、と
だからそこに「猶予」「慈悲」を加えた
自分たちは奴らとは違う、必要以上の殺戮はしない
そもそも殺戮自体を好まない
犯人が捕まればそれでいい
しかし、こういう「ルール違反」をされた時は
話は全くの別だ
かくて、町からは一時「虐待厨」は姿を消した
猶予を信じ虐蔵の暴挙を知らない虐待厨たちは
突然の処刑に逃げ惑うしかなかった
なお、帰ってきた隊長は副長の行動を称賛した
後日、隊長は昇進し隊を離れる際に
副長を次の隊長に指名したという
(おわり)
294
:
夢の中で 1/7 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2021/09/02(木) 18:06:59 ID:Q4MFJucA0
その世界には「虐待厨」は、いない
最初からいなかったわけではない
人間たちによって駆逐されたのだ
もちろん、ここまでやる世界は
滅多にない
たしかに「虐待厨」と言う種族は
その身勝手さと凶暴さ
なによりもたらす被害の甚大なことから
嫌われ駆除される存在ではあるが
極端に嫌われる世界であっても
大抵は目の前にいたら追い払ったり
殺害したり
あるいは「管理」の枠組みに組み込んで
被害を出させないようにする
では、どうしてこんなことになったのか?
話は最後の一体が駆除される
その半年前にまで、さかのぼる
その世界では「野生」「野良」はいない
正確には管理下にない「被虐生物」は、いなかった
生息地は「保護区」に指定され
公園に生息しているのは全てが「地域」の指定生物
飼いもいるが、飼い主が捨てることは固く禁じられていた
代わりにペットショップに行けば
そこで引き取ってもらえる
ただし、生物に虐待などの痕跡が見られれば
ただちに「対虐待企業」に知らせが届き
警察と協力体制の上での捜査が行われた
その結果、虐待厨は存在こそしたものの
彼らが手を出すことができる「被虐生物」は
存在はしなかった
もちろん政府も鬼でもなければ
管理のみ考える機械でもない
ストレス発散のための施設も用意されている
もちろんそこには「被虐生物」などは入っておらず
サンドバックや3DCGゲームなどがあるだけだ
もちろんそれで満足するほど虐待厨は大人しくはない
しかし、我慢のできない虐待厨は
即座に狩られ地獄に送られる
彼らは生き残るためには現状を受け入れるしかなかった
295
:
夢の中で 2/7 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2021/09/02(木) 18:07:38 ID:Q4MFJucA0
そんな社会に生まれた虐待厨の一人である虐士は
他の個体より頭が良かった
特にコンピュータをいじることに
彼の技能は発達していた
社会も彼については
「社会貢献になるなら」と大目に見て
研究予算を割いてもくれた
やがて虐士はとある発明をした
それは「自由に夢を見ることができる」という
マシーンだった
「虐夢機」と名付けられたそれは
瞬く間に虐待厨の間で評判になり
売れて行った
しかし、その時から事件が起き始めた
公園のゆっくりたちが突然死しているのが発見されたり
飼い実装石がパキンした状態でこと切れていたり・・・
そのどれもが不可解な死に方だった
共通点は「重度のストレスによる突然死」
しかし、死んだ個体は前日までそんな兆候も無く
また飼いであっても飼い主には虐待の前科も
そのそぶりすら無い
「未知の病気」が疑われ
徹底的な調査が行われた
しかし、原因の特定には至らず
誰もが途方に暮れた
解決の糸口は「虐待厨」だった
そしてそれは
全ての虐待厨が世界から駆逐される
きっかけになった
296
:
夢の中で 3/7 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2021/09/02(木) 18:09:06 ID:Q4MFJucA0
虐待厨は自己顕示欲も強い種族だ
それが犯罪であろうとも主張し自慢する奴もいる
また飼いを襲った際に
飼い主が悲しむ様子を眺めるために
わざわざ目立つ場所に死体を放置し
自分は目の届く場所に待機している奴までいる
そういうわけで
「くやしいかヒャハハハハハハ
オレが殺してやったんだよwwwwwww」
と、一人の虐待厨が飼いイチゲルゲの葬式に殴り込み
棺を破壊した上に悲しむ飼い主に
カミングアウトしたことで事態は一気に動いた
すぐさま取り押さえられた虐待厨は
その発言について厳しく問いただされ
拷問の末に「虐夢機」を口にした
もちろんそれは人々も知るものだ
しかしその虐待厨が口にした内容は
誰もが初耳だった
「虐夢機」は、ただ自由に夢を見ることができるだけでなく
特定の対象の夢の中に入り込むこともできるというのだ
そして、そこで殺されれば対象も現実で死に至る
最初は拷問から逃れたい一心のでまかせと思われたが
実証実験でそれが真実であると証明された
捕まえた犯罪者虐待厨を実験台にした殺害実験でも
「夢の中で殺されれば現実で死ぬ」事の正しさが
証明された
しかしこれはすぐには公にはならなかった
「もしも、虐待厨どもがその矛先を
人間へ向けたら・・・どうなる?」
恐怖からの隠蔽では無い
この時すでにほぼ方針は固まっていた
「虐待厨の絶滅」
人類が生きるにはそれしかないと
情報を掴み議論をするメンバーの誰もが思っていた
だが、どうすればいいのか
それが問題だった
虐待厨はその加害行為の歴史から
常に人々から石もて追われてきた
だが、「完全駆除」に成功した例は無い
人里から離れ山に逃げ込んだり
あるいは漂流して無人島に
もしくは地下洞窟に
とにかく奴らのなかにはゴキブリのように
しぶとく「生き延びる」事に長けた個体が
少なからずいるのだ
そして、そいつらが「虐夢機」を手にしたまま
籠城を決め込んでしまえば
打つ手はない
「我々にも虐夢機があれば・・・」
メンバーの一人が悩んだ末に漏らしたこの一言が
一気に解決へ導く「神の一手」となった
297
:
夢の中で 4/7 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2021/09/02(木) 18:10:02 ID:Q4MFJucA0
その日、虐士は多くの注文を受けた
「虐待厨だけが使うなんてもったいないから
こっちにも売ってくれ」
そんな内容のメールが数多く届いたのだ
すぐさま「虐夢機」は売り捌かれた
在庫はあっという間になくなったので
半年待ちの状態になった
もちろんこれは「作戦」である
注文した人間は全員が対虐待企業の者だ
供給を上回る買占めを行う事で
虐待厨にこれ以上の「虐夢機」が渡ることを防ぐ
怪しまれてもいけないので
在庫が底をついても注文はそのままにした
少なくとも半年以上は
虐待厨が新たに「虐夢機」を手にすることはできない
だから、この半年以内に決着をつける事が
彼らの目標になった
そして「対虐待」を名乗る企業や組織の内部は
異例の状態になっていった
フカフカの枕、柔らかく軽い羽毛布団
安眠を約束する音楽など
数々の安眠グッズが全員に配られた
もちろんリフレッシュでもサボリでもない
仕事のためだ
構成員はその日から「寝る」ことが
仕事になった
その夜、虐待厨の一人は「虐夢機」を使った
現実世界ではもはや虐待は叶わない
だが夢の中でならいくらでもできる
地域や飼いへの手出しも許される
その結果が現実に反映されるということが
何よりモラルの低い彼には心地よかった
「ヒャ・・・?」
目を付けていた飼いセヤナーの夢に入り込んだ時
そこに戦闘服に身を包んだ兵士らしき人物がいた
「おい、そいつはオレの獲物だぞ
別の夢に行けよ」
他の「虐夢機」を使った虐待厨だと彼は思ったが
兵士は銃を彼に向けて発砲した
「あびぇ!?」
その虐待厨の意識はそこで途絶えた
後日、腐乱した死体が彼の自宅から発見されることになる
そして、これと同じ事が次々と起きた
使用者が全員死亡していたことで
虐待厨側には全く原因が分からない
しかしこれは、彼らの「絶滅」の
ほんの一歩目に過ぎなかった
298
:
夢の中で 5/7 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2021/09/02(木) 18:12:35 ID:Q4MFJucA0
「みなさん、『虐夢機』の使用を直ちに中止してください!」
虐夢機を購入し検証したという人間側から
「深刻な不具合が発見された」という公表が行われた
変死が起きて数日後の事だった
「夢の中で死ねば現実でも死ぬ」というのが
その内容だ
嘘は言っていない
そして、さすがに都合の良い事しか信じない虐待厨でも
それが本当だと即座に判断できた
それも皮肉なことに「虐夢機」をよく使えば使う者であるほど
その情報は信頼に値した
彼らは夢の中で「被虐生物」を虐待し死なせた
そしてそれは現実に反映される
ならば「逆もあり得るのではないか?」という事は
容易に想像できた
自由に夢を見ることは可能だ
しかし「事故」は、どの場所でも起きる
例えばスーパーカーを乗り回す夢を見ていたとする
「コントロールしきれずに100キロ以上の速度で壁に激突する」可能性は
当然あるし、さすがの「虐夢機」でも
そこまではカバーできない
普段ならそこで夢が冷めて終わる悪夢でも
「虐夢機」を使えば、そうはいかない
夢の中で死ねば現実の肉体も死ぬのだ
いつもなら「アイゴの戯言」と信じない
頭の軽い奴でも悪夢は見るし夢の中で事故も経験する
だから、虐待厨たちは「虐夢機」を返品し出した
当然、発明し発売した虐士は猛反発したが・・・
返品騒動が起きて1か月後には
空っぽの金庫の中に金銭の代わりに肉塊となって詰め込まれた死体が
発見されることになった
こうして、「虐夢機」を手にしているのは
人間達だけになった
虐待厨から対抗手段を完全に奪う事に成功した彼らは
すぐさま次の策を出した
「この世界から奴らを駆逐するぞ!!」
299
:
夢の中で 6/7 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2021/09/02(木) 18:14:49 ID:Q4MFJucA0
「虐夢機」を使えば虐待厨の夢はどれかすぐに分かった
武装した兵士たちが次々と夢に入り込み
虐待厨を血祭りに上げて行った
作戦開始の翌日、虐待厨はその世界で半減していた
知人がいなくなり、さすがにおかしいと思い始めた虐待厨もいた
もちろん、「虐夢機」を使った誰かの仕業と気づく虐待厨も
だが、自分たちの手に「虐夢機」は、もう無い
だから人間に訴えるしかなかった
しかし・・・・・・・・・・・
「いいんじゃねーか、お前らがいなくなっても誰も困らねーし」
返答は絶対零度であった
「何もしてない虐待厨だっているんだぞ!!」
そう訴えた虐待厨は次の瞬間には通りすがりの兵士に殴り飛ばされた
「オレの幼馴染だった ゆっくりれいむは
そう訴えていたよ
けどな、『今はそうでもいつかやるだろ』と虐待厨は言って
オレの目の前で踏み潰しやがった・・・」
殴られた虐待厨はそれを聞くと
走り出した
記憶にある、あの兵士はあの時の人間の子供だと確信した
殺される前に気付く前に逃げるべきだと決断した故の行動だった
この虐待厨は頭が良かった
野生のゆっくりなら潰してもいい
人間の子供も直接手出ししなければ甚振っても
法律で裁かれることは無い
それに気づいての犯行だった
バレたら自分はあの場で殺される
それに気づいたからただ「逃げる」を選ぶことができた
しかしもう訴えに行くことはできない
あの兵士に遭遇する恐れがあったからだ
もし、その時にあの兵士が思い出していたら・・・
一巻の終わりだ
訴えるどころではない、その場で確実に殺される
兵士のゴーグルの向こうの目の憎悪は
それを物語っていた
「子供だからどうせ忘れるだろ」とタカをくくっていたが
実際は真逆だった
憎悪は蓄積していき
あの子供は虐待厨を狩る兵士の一人に成長していた
過去に同じような目に遭わせたのは、あの子供だけではない
自分は一体どれだけの「兵士」を作り出したのか・・・
せめて仲間の虐待厨に知られないよう、リンチに遭わないよう
震えながら夢の中で殺されるまで過ごすことしか
その虐待厨はできなくなった
彼の息の根を止めたのは
先の兵士だった
300
:
夢の中で 7/7 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2021/09/02(木) 18:16:04 ID:Q4MFJucA0
1年後には、たまたま「善行」を働いたので
保護されていた一匹を除いて
虐待厨は世界からいなくなっていた
世界に張り巡らされたインターネットの網
衛星の監視
それらから逃げられる虐待厨はいなかったのだ
「虐夢機」にそこから夢へのアクセスを可能にした
その高性能さが仇となり
「虐夢機」生みの親である虐待厨は種族ごと駆逐された
そして、虐待ができないストレスから
保護されていた最後の一匹の虐待厨が死んだ時
この世界から虐待厨は絶滅した
これは世界中から歓迎された
虐待厨の存在を見るには
図書館にある「虐待厨」学習コーナーに行けば
容易に見られた
奴らが利用した「忘却」の恐ろしさを知った人類は
「虐待厨」を決して忘れないよう
その恐ろしさを下劣さを子々孫々に伝えられるよう
ありとあらゆる手段を模索し実行した
虐待厨は「人類の敵」として
「絶滅が喜ばれた最悪の敵性生物」として
その世界で永遠に語り継がれていくことになる
(おわり)
301
:
返答1/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2021/10/20(水) 03:50:46 ID:rG/P.Fqk0
虐広はその地方では一流企業に当たる「ギャクコーポ」の
エリート社員だ(と本人は思っている)
虐待教育が施される(生徒が小動物や幼児の虐殺に走り今は無い)エリート校出身で
その学歴を常に鼻にかけ経歴を自慢してもいた
当然、虐待許可証を持っており「飼い」への手出しも許されている
(そんなわけがないが、当人はそう思い込んでいる)
ある日、別の地方の大企業「アイファンディング」との取引が持ち上がった
彼らが出した条件はただ一つだけだったが
それが虐広ら虐待厨やそのシンパには苦痛を強いるものだった
『被虐生物の定義禁止』
その企業が言うには、そんなものは虐待厨たちの身勝手なレッテルであり
科学的にあり得ない区別である事
また、企業の地方は過去に虐待厨が暴れて荒廃した事があり
社員たちはこういったものへ、とても敏感だった事などが
理由として述べられた
社長はこれを飲むことにした
虐広らもまた渋々受け入れたが・・・・・・
「面白くねぇ!!」
不満たらたらである
虐広はその日、憂さ晴らしをするべく公園に出かけた
ちょうど、ゆっくりまりさが跳ね回っていた
その帽子には金バッジがあったが関係ない
「ひゃっは〜!!」
虐広に蹴飛ばされ、そのまりさは
呆気なく死んだ
虐広はスッキリした顔で家路についた
302
:
返答2/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2021/10/20(水) 03:51:55 ID:rG/P.Fqk0
次の日、出社すると会社がざわついていた
なんでも、社長と懇意だった警察署長が逮捕され
警察署もまた完全一新されるらしい
「どうも、事件をろくに調べなかったことが原因らしいぜ」
同僚の話によると、事件の顛末はこうだ
トイレに行っている間に引っ越してきた女性の ゆっくりまりさが
何者かによって殺害された
すぐに警察へ通報がされたが
署長からの圧力で捜査は打ち切られた
女性はすぐさま本社に連絡をし、捜査が再開されたが
「金バッジ? そんなものアイゴが勝手に決めた定義だろw」
そう言って署長がまたも捜査を打ち切った挙句に
証拠品や公園の監視カメラの映像まで廃棄した結果
本社の要請で動いた本庁が署長を逮捕
その捜査が昨日のうち行われ、それだけでも署長がやって来た
数々の違法行為が発覚
現在もなお捜査は行われているとの事だった
話はこれで終わらない
目撃者の証言で個人特定にこそ至らないものの
犯人が「ギャクコーポ」の社員であることまで判明したのだ
取引先は激怒した
その被害者は取引先の社員だったのだ
この街に来たのも取引の話し合いのためであって
昨日、本社の命令で引っ越して街の様子を見るべく散歩していたらしい
虐広は蒼くなった
その犯人は、どう考えても虐広だ
覚えもある
近々、取引中止か否か返事を聞くため社員が本社に来るらしいが
この街で虐広が虐待をするのはしばらくは無理だろう
「アイゴめ、金があるからって威張りやがって・・・」
しかし虐広は自分が悪いなどとは微塵も思っていない
取引先が悪いのだと思っていた
しかし、それを口にすることは許されない
それに、ほとぼりが冷めるまで虐待は控えねばならない
虐広はストレスをぐっとこらえた
303
:
返答3/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2021/10/20(水) 03:52:56 ID:rG/P.Fqk0
数日して
仕事のストレスが発散されること無く虐広はむかむかしていた
お昼を食べようと食堂に行く
こんな状況なのだ、せめて美味しいものを食べなければやってられない
しかし・・・・・・
女子高生らしい少女と母親らしい女性がそこにいた
被虐生物を連れて
「おいアイゴども!!誰に断ってここに居やがる!!」
虐広はつい数日前に起きた事件をすっかり忘れ
目の前にいるのがその取引先の社員だという事を知らぬまま
二人に怒鳴り散らしながら
エビフライを食べていたセヤナーを叩き潰した
「いやあああ!セーちゃん!!」
「!?それが、それがあなた方の返答ですか!!?」
女子高生が悲鳴を上げて女性は抗議の声を上げた
この時、虐広は女性の抗議に疑問を持つべきだった
通常ならこういう時は「何をするんだ」と言うものである
「返答か」などと聞いたりしない
しかし虐待厨である虐広は虐待厨らしく
すでに思考を停止していた
「やかましい!!」
虐広は笑いながらセヤナーを庇う女子高生を蹴飛ばした
「何しやがるテメェ!!」
当たり前だが次の瞬間、女性がキレた
「あ、やんのギャ」
虐広の啖呵は途中で悲鳴に代わった
ものすごい威力の鉄拳が女性から放たれ
虐広の顔面にめり込み、その肉体を廊下まで吹っ飛ばした
「何事だ!!」
「!?これは・・・・・!!」
吹っ飛んだ虐広と入れ違いに、騒ぎを聞きつけたのか男数人が食堂に駆け込む
見たことが無い野戦服らしい服装に銃を肩から下げていた男たちだ
少なくとも、この企業の社員ではないと虐広は分かった
彼らは女子高生とセヤナーを助け
女性から色々と聞いている
いや、指示を受けている
さすがの虐広も、自分が何をしたのかを理解しつつあった
「これが、この会社の返答だそうです」
虐広は嫌な予感を覚えてそっと食堂から遠ざかるべく這って進んだ
「了解しました・・・やるぞお前ら!!」
304
:
返答4/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2021/10/20(水) 03:53:47 ID:rG/P.Fqk0
虐広が、もう少しでエレベーターに辿り着くかと言う頃に
「ぎゃああああああああ!!」「な、何・・・ぐあああ!!」
銃声と破壊音、断末魔が食堂から響いた
虐広の隣をショットガンで撃たれた虐待厨の肉体の一部がバウンドして通りすぎた
「!!」
咄嗟に虐広は立ち上がり階段へ駆け込む
そのすぐ後から銃弾が走り、虐広のいた廊下の床を抉った
虐広は上に上にと駆け上った
下からは相変わらず悲鳴と銃声が響いてくる
途中ですれ違った社員には何も告げず
一人だけ屋上に逃げ伸びると
そこのカギを閉じた
永遠に続くかと思われた殺戮は、やがて途絶える
そっと耳を澄ますと、真下の社長室の会話が聞こえた
「良かったじゃないですか、被虐生・・・セヤナーは死ななかったんだし
ここは示談で済ませましょう?」
社長の大きな声はよく聞こえた
「ほら、あなたたちだってお金が欲しいでしょう?
よく考えて受け入れ」
銃声が響いて社長の声は途絶えた
「取引相手でなく駆除対象だったようだな、この企業は」
食堂でも聞いた男の怒鳴り声と
何かを蹴飛ばす音が響いた
虐広は涙を流した
まさか、こんなことになるなんて思わなかった
この会社はもう終わりだろう
明日からどうやって生活しようかと虐広は考えたが・・・
それには、まずここから生きて出る必要があった
「社員を調べろ、人間は追って調査すればいいが
虐待厨は生かしておけん!」
虐広は心臓が跳ね上がるのを感じた
出社記録を調べれば自分が出社していることが分かってしまう
人数を調べれば、誰がいないのかを把握されてしまう
「・・・隊長!」
「なに、どこかに隠れている奴がいる可能性があるだと?」
しかしながら、虐広の願いとは裏腹に戦闘員は優秀だった
305
:
返答5/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2021/10/20(水) 03:55:24 ID:rG/P.Fqk0
『こいつらアイゴだろ、なんでこんなに攻撃的なんだよ?』
虐広は知らなかったが、
虐広らのような虐待厨がすべての原因だった
最初こそ平和的解決を計る者たちが多かったが
結局は虐待厨の増長を招き
また、被害者を黙らせることで問題そのものを無かったことにしようとする
「事なかれ主義者」たちの増加にもつながった
次第に募っていった不満は、武装蜂起と言う形で爆発した
一切の慈悲も無く命乞いも聞かず虐待厨をただただ駆除するだけの攻撃
「事なかれ主義者」たちは非難したが銃弾が彼らに返答として贈られた
血の雨が降り注いで廃墟が生まれた後で
人々はようやく収まりその地方の風土は一新された
今、アイファンディングのある地方に虐待厨は一匹もいない
彼らにもはや生存権は認められず
入ってくる端から駆除されていた
だが、虐広にはそんなことは知った事ではない
自分の存在に気付かれた事が重大だった
先ほど食堂であんなことをしたのだ
生かして帰してもらえるわけがない
虐広は声を潜めながらじっと静かに息をひそめた
「いたぞこいつ!」
下のどこかで声がして銃声が響いた
どうやら、別の誰かが撃たれたようだ
「これで全部か、後は逃げたみたいだな」
社長室から出て行く足音が続き、静かになった
虐広はそっと耳を澄まして音がしなくなったことを確認すると
屋上のドアのカギを開けて中に入った
血の臭いが充満し、動く影は一つも無い
虐広は狂喜乱舞した
生き残ったのだ
自分ほど優秀な社員ならどこでも雇ってくれるだろう
こんな会社ともおさらばだ!
そう思いながら一階まで飛び降りるように進み
少女と出くわした
あの、セヤナーの飼い主の少女だ
「きゃああああああああああ!!!」
その少女は悲鳴を上げて
手にしていたハンドガンを虐広へ向けた
虐広は反応できず少女に弾倉の全弾を叩き込まれて死んだ
これは、別に特殊な行動ではない
人間はゴキブリが目の前に飛び出して来たら
反射的に叩き潰そうとするものだ
今起きたのは彼女の地方におけるそれであり
ごくごく普通の反射であり反応なのだ
「どうしました・・・!これは・・・!」
「すいません、我々のミスです!」
「いいえ、気にしないでください」
そんなやり取りが虐広の死体の前でされていたが
彼はそれを知ることなく地獄へ落ちた
この事件は大々的に取り扱われ
ギャクコーポレーションのあった地方もまた
虐待厨駆除の大嵐が吹き荒れることになるのだが
それはまた別の話である
(おわり)
306
:
えりーとの生キ様 1/2 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2021/11/11(木) 20:19:36 ID:NDlRXfkI0
虐洋はエリートサラリーマンを自負している
彼は虐待厨ではあるが、問題は起こしていない
理解ある上司と部下に恵まれ
不況の中でも悠々自適なプライベートを送ることができる財もあった
もう一度言う、問題は起こしていない
「問題が起きる」とは「騒ぎになる」あるいは「刑事罰を受ける」
もしくは「訴訟を起こされる」事だ
虐洋は例え「飼い」を殺しても
そういったことになったことは一度も無い
金をたたきつければ相手は黙る、
黙らない相手は黙らせる
それでも無駄なら上司が割って入って相手を警察に引き渡すだけだ
こんな生活はこれからも続くだろうと
彼は確信していた
だから、喫茶店で「ゆっくりまりさ」と対話していた少女がいても
「くそごみ連れてくんなよwww」
玩具かサンドバッグとしてしか見なかった
少女はムッとしたが無視を決め込む
「聞こえてねーのか、ここは被虐生物立ち入り禁止なのwww」
聞こえるように大声でわめいていると
店員が少女に出て行くように促した
少女はまりさを抱えると叩きつけるようにトレイに金を置き
店員を睨みながら出口へ向かう
虐洋の隣を通過した時
「おっと、悪いイな」
コーヒーをまりさに浴びせた
「いやああああああああ!!マリちゃん!!」
少女は悲鳴を上げる
こんなこともあろうかと、コーヒーはブラックだった
まりさは即死だ
虐洋は泣きわめく少女を見て笑い転げた
「死ねぇ!!!!!」
「へ?」
だから、席を立っていた少女の姉からの反撃へ反応が遅れた
そもそも、「誰かに反撃される」など思いもしなかった
華奢な少女が持ち上げた喫茶店の椅子は虐洋の頭蓋骨を粉砕し
醜い脳みそを潰しながら床に叩きつけた
「お前も同罪よ糞店員!!」
妹を追い出そうとしていた店員は慌てて止めようとしたが
その姉に殴り倒された挙句に馬乗りになられて幾度も殴られた
店長はと言うと・・・
「てめぇ!オレの娘のどこが悪かったか言ってみろや!!!」
遅れて入ってきたため、タイミング悪く店員が少女妹を追い出そうとしたのを目撃した
少女姉妹の父親に問い詰められていた
「てめぇらのせいでマリが殺されちまったじゃねーか!!
この人でなしが!!!!!」
虐洋がまりさを殺したことで怒りがヒートアップし
店長は父親に何度もテーブルに顔面を叩きつけられる羽目になった
307
:
えりーとの生キ様 2/2 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2021/11/11(木) 20:21:27 ID:NDlRXfkI0
虐洋は喫茶店で死んだ
自分自身の自業自得で招いた死神に殺されたのだ
事件の後、喫茶店は潰れた
店員と店長は負傷で済んだが、警察は父子の正当防衛を認め
逮捕すらしなかった
代わりに店長と店員が逮捕された
今回の父子だけでなく、他にも数多くの苦情が寄せられていた上に
「共犯者」として被害届も多数受理されていたからだ
店員は虐洋の横暴を黙認していた
それが飼い主への加害行為であったとしても
そして店長は・・・
「わ、私は知らない、あの件は客がテーブルを倒して暴れたからつまみ出したと・・・」
「ろくに確認もせずに、か?」
いわゆる「見て見ぬふり」「事なかれ主義」を地で行く男だった
本来止めるべき立場であるところ、それをせず被害を拡大させた責任を問われ
店員ともども牢に入れられることになった
彼の実家の喫茶店の本店は賠償金の支払いで倒産した
店長も店員も知らぬ間に顔写真含む個人情報が出回った
二人とも出所後は地獄だろう
虐洋の事件は、ただちに彼の勤める企業に伝わった
事件が起きたその日のうちに
取引のあった企業がすべて一斉に手を引いた
虐待派に所属する企業すら例外なく手を切った
「飼いに手を出すバカどもと手を組めるか!!」
彼らもまた虐待厨の横暴で辛酸をなめ
人々から石もて追われる過去があったのだ
同じ虐待派だからと安心しきっていた企業は
仕事も来なくなり、間もなく倒産した
社員も社長も名簿が出回ったことで再就職は不可能になり
全員が不幸な末路を辿った
この事件は虐待・非虐待問わず界隈を跨いで知れ渡り
「バカ一匹のために滅んだ企業」ということで
長く語り継がれることになる
(おわり)
308
:
妄想と現実 1/6 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2021/12/17(金) 20:32:37 ID:KQMM3FJM0
「アイゴは愚か」「アイゴは身勝手」
「だからアイゴは虐げるべし」
それが虐待組織で誰もが教わる内容だった
もちろん根拠など無い
ずっと以前から伝わってきた伝統だ
そしてそのせいでトラブルが絶えず
そのトラブルを被害者のせいにして・・・
と言う、堂々巡りの果て
今や虐待組織への不満は溜まりに溜まり
『爆発』の時はは刻一刻と迫っていた
しかしそんな状況でも「アイゴごときに何ができるw」と
虐待厨は事態の改善をすることなく
それどころか増長はますます強くなり
相手の導火線をどんどん縮めていた
そんな環境になってしまった世界のとある企業
「アイギャクコンサルタント」は社内の空気が引き締まっていた
と、言うのはカントーの大企業シルフカンパニーとの取引が決まったからだ
ここにこぎつけるまでに長い時間と多くの金銭や人員・物資が動いている
向こうでは当たり前の社内環境は以前までその企業には無かった
まず「ポケモンはものではない」という向こうの常識を叩き込むところから始まり
特別講師を呼んでの講習や実習、ポケモンや社員のための設備などなど
カントーの企業と同じ水準まで持っていくのに四苦八苦した
当然ながら虐待組織とそのシンパの精神が足枷になっていたのは言うまでもない
社内の虐待派や虐待厨からも不満が出たが
相手は天下の大企業である
その取引がもたらす利益は彼らの不満を押さえつけてでも社内刷新を実行するに値するものだった
309
:
妄想と現実 2/6 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2021/12/17(金) 20:34:15 ID:KQMM3FJM0
「くそ!面白くねぇ!!」
虐待厨の虐部は椅子に座ってぶつくさ文句を言っていた
彼は虐待厨にしては頭が良かったが
その部長の座は他人の手柄を横取りして得たものだ
当たり前だが刷新が進められている今となってはその手は使えない
それどころか、これまで泣き寝入りしてきた社員や元社員が一丸になり
彼を窓際まで追いつめつつあった
今では碌な仕事も無いお飾り部長が彼の席だ
しかしそれでも部長は部長であり
給料も待遇も良い事から彼はそのうち文句を言うのをやめた
働かなくても金が入る環境が居心地良い事に気付いたのだ
それに部長と言う権力を使う事も出来た
欲しい菓子は部下に買いに行かせることもできたし
仮眠室を占拠して昼寝をすることもできた
ただ最大の不満は「虐待」ができない事だった
シルフカンパニーはかつてロケット団と言うマフィアに占拠された過去があり
そしてイッシュを中心に吹き荒れた「ポケモン虐待」の波を食らった事で
一層その目を強く光らせることになった
「どこのお店にしようかな?」
ふと、うっぷん晴らしの相手を虐部は見つけた
愛護派の合太だ
「アイゴは虐げるべし」とは虐待組織の合言葉である
だから、こいつはサンドバックにしても問題は無い
しかし暴力に訴えることはできない
仮にも部長職がストレス発散で社員を暴行したなど
身を亡ぼす以外の結果は想像できないし
それが分からぬほど彼も愚かではなかった
だから、ちょっとした悪戯を思いついて実行しただけだ
少なくとも本人はそのつもりだった
310
:
妄想と現実 3/6 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2021/12/17(金) 20:36:00 ID:KQMM3FJM0
「部長!キャンセルってどういう事ですか!?」
合太が見ていた店の予約を調べた虐部は
それが会社の名前で予約されているのを確認すると
こっそりキャンセルした
それも当日のドタキャンだ
当然、キャンセル料金は派生するし、そうでないと面白くない
「俺に隠れて飲み会しようなんて生意気なんだよwww」
「飲み会じゃないですよ!取引です!!」
「同じことだwww」
すると、電話の向こうで何やら小さな短い会話の声がした
そして電話の主は変わった
「キミかね、合太君の準備した取引の話し合いを勝手にキャンセルしたのは?」
恐らく取引相手だろう、と虐部は見当を付ける
それも声から中年の男性だ
相手企業の重鎮だと分かったものの
しかし虐部は動じず続けた
「退いたら負け」は虐待組織の標語である
自分が悪かろうが加害者と誰が見ても見えようが
自分の非を認めることはすなわち敗北だと彼の組織は教育していた
「おう、残念だったなおっさんwww
ま、あんたのとこの小さい取引なんざウチは必要ねーから他当たれやwww」
「そうさせてもらう」
あっさりと相手は取引中止を了承した
「合太君には申し訳ない事になったが仕方ない
それがそちらの総意なら、な」
「総意」と言う言葉に虐部は気を良くした
自分は会社の代表として見られているのだと
まるで社長になったような気分を味わっていた
「それと、キャンセル料金も全額そちらの会社に負担してもらう
被害に遭ったのはウチの系列の店だ、譲れん」
「おおwけっこうけっこうwww
裁判でもなんでも起こせや糞ジジイwwwwww」
溜息をついて男は電話を切った
合太は真っ青だ
取引が中止になっただけでなく、キャンセル料金も全額負担だ
それも自分のミスで・・・
そんな合太に男は微笑んで言った
「合太君、話があるのだけどいいかな?」
「はい」
男は合太に耳打ちをした
それは合太を卒倒させるのに十分すぎた
「いかん!ショックが大きすぎたか!!」
「何の音ですか!?って何したんですか支部長!?」
「すまん、救急車を呼んでくれ!」
311
:
妄想と現実 4/6 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2021/12/17(金) 20:38:27 ID:KQMM3FJM0
社長室で社長ら重役に叱責されながら虐部は事実を知った
「社長、お言葉ですがやったのは合太です、あいつが悪いんです!」
「お前が手出しさえしなければ成功していたんだよ馬鹿野郎!!!」
合太の取引相手は
今この企業が契約取り付けに必死になっている「シルフカンパニー」だったのだ
苦労の末にどうにか契約の予約までこぎつけ
相手の系列の飲食店を合太は予約し
そこで正式な取引が行われるはずだった
それが虐部のストレス発散で白紙になっただけでなく
シルフカンパニーは今後二度と取引をしないと通達してきた
「我々との小さい取引は御社には必要ないそうなので他を当たります」
その上、店が出した損害の賠償請求まで要求されている
「終わりだ・・・もう・・・」
怒鳴る気力も無く部屋の隅で崩れ落ちている重役もいた
「シルフカンパニー」との取引は、企業一丸で強引に刷新をしてでも為すべき
まさに企業の運命を左右する大取引だったのだ
それが、たった一人の身勝手で御破算になった
これから先は強引な刷新が生んだ赤字損益との闘いの日々だ
それに損害への賠償も加算される
取引後の利益はもう望めない、自力で何とかするしかない
一か月後、努力空しく「アイギャクコンサルタント」は経営困難になった
そんな企業に救いの手を差し伸べたのは合太だった
あの場でシルフカンパニーの支部長にスカウトされた合太は
退職後に採用され、支部長の片腕として活躍していた
そして元居た企業の危機を聞いて支部長に相談したのだ
支部長としてもその企業に怨みなど無い
取引白紙は企業間の仕事として仕方なくしたことではあるものの
それが原因で倒産となり罪なき社員が路頭に迷うのは心が痛んだ
そこで、企業を吸収合併する形で取り込み再生させることにしたのだ
ただし・・・・・・・
虐部を含む虐待派や虐待厨は、その恩恵に授かることは無かった
会社を危機に陥れた害虫として排斥される運命が待っていたのだ
当然、虐待組織から抗議は来たが・・・
「あなた方が自分の組織の構成員がしでかした事件の被害者に
まともな対応をしたことが一度たりともあったかね?」
支部長は全く取り合わなかった
そして彼がバックに付いた被害者たちは次々と裁判を始めた
次々と敗訴を重ねて行き構成員の逮捕も相次いだ虐待組織は
半年せずに壊滅した
312
:
妄想と現実 5/6 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2021/12/17(金) 20:40:49 ID:KQMM3FJM0
「くそ!面白くねぇ!!」
虐部は空き缶を蹴飛ばして吐き捨てた
今の彼は企業の一員でも無ければ虐待組織の支援も無い
ただの一虐厨だ
彼は一年経たずに文字通り「すべて」を失った
就職先もそこでの地位も、後ろ盾の組織すらも
巻き添えを食う形になった仲間であったはずの虐待厨たちは彼には冷たかった
「お前が余計な事さえしなければ!!」
所詮、暴れる仲間が欲しいだけの慣れ合いグループである
瓦解するのは早かった
しかし虐部はそれを認めない
それどころか、強固な結束の鉄の組織だったと未だに信じて疑わなかった
虐待厨に「反省」の二文字は無い
逆上か、あるいは増長があるだけだ
彼は今度あの合太を見たら殺してやろうと心に誓った
そんな彼にさっそく
綺麗な女性を連れて歩く合太が目の前を横切るのが見えた
次の瞬間には憎悪が燃え上がり彼は走り出していた
「お前さえ、いなければ!!」
まずは連れの女性を虐待してから合太をゆっくり殺そう
目撃者がいようと構うものか
もはや捨て鉢の虐部に怖いものなど無かった
しかし、その腕が女性に届くより早く
「え」
虐部の両腕が切断され宙を舞った
「下郎が・・・」
女性は氷のような冷たい表情で腕を無くした虐部を見る
その右手にはいつの間にか抜かれた日本刀が光っていた
313
:
妄想と現実 6/6 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2021/12/17(金) 20:41:36 ID:KQMM3FJM0
「あ・・・・・・・」
虐部は目の前の女性を見た事があった
半年前に生まれたばかりの虐待厨駆除組織の幹部だ
虐待厨たちの好き放題が自業自得で生み出した
暴力には暴力で応対する
かつて被害者だった者たちが集まった
虐待を憎悪する先鋭組織
何度か彼はその駆除に遭っていたが逃げ出すことには成功していた
しかし、今度ばかりはその幸運は無かった
「まて、あんたに喧嘩売るつもりは・・・」
言い訳を無視し女性は虐部の足・下半身・上半身をなます切りにした
ただし急所は刻まない
散々自分たちと自分たちの愛する存在をいたぶった虐待厨は
只殺すだけでは飽き足らぬ憎い奴
その場で可能な最大の苦痛を与えた上で地獄へ送るべし・・・
女性は虐部が激痛で悲鳴を上げる前に首を跳ねた
「大丈夫かい、久実?」
「ああ、大事ない・・・害虫を一匹駆除しただけだ」
合太は付き合い始めたばかりの婚約者が
斬って捨てた害虫がかつての上司などとは思わなかった
虐太の首は胴体から離れて通りすがりの車に踏み潰されていたため
もはや顔を確認することもできない
合太は気付かないまま清掃業者を呼び、「害虫」を片づけてもらった
虐太の行方はその日を境に不明のままになり
「逃亡した」彼の未払い分の借金は彼の仲間が背負う羽目になった
怒り心頭の虐待厨たちは賞金を懸けて虐太を全国指名手配したが
当然ながら虐太を捕まえることはできなかった
(おわり)
314
:
一人のせいで 1/3 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2022/01/31(月) 12:07:23 ID:xV9ZbzNs0
ここは、虐待厨と人間が暮らす街
「すいませんしたぁ!!!!!」
虐壱はいきなり長に頭を鷲掴みにされ地面へ叩きつけられた
「いぎ、な、なにぼ・・・」
「コイツはこの通り馬鹿ですアホです!!!!
どうしようもねぇヤツなんです!!!!!
知らなかったんです!!!!!
堪忍してください!!!!」
必至で自らの頭を地面に叩きつけ血の染みを作る長を
汚物を見るかのような目で少女は見下していた
その腕の中には、虐壱が蹴飛ばした ゆっくりれいむ
「・・・・・・・」
少女は何も言わずに場を去って行った
「このバカ野郎が!!!!!
殺されてぇのか死にてぇのか!!!!!」
しかし虐壱の地獄は終わらない
少女が居なくなった後で長からの叱責と折檻が待っていた
「”飼い”に手ぇ出すなんざ心中と一緒なんだぞ!!!
テメェ一人の首で償いきれる罪じゃねぇぞ!!!
分かってんのか!!!!ああ!!!?」
殴られ蹴られながら、虐壱は思った
『たかが ゆっくりを蹴飛ばしただけなのに』
そして彼は意識を手放した
次に虐壱が目を覚ましたのは、虐待厨たちが住む団地の前だった
『この者は違反者につき、3日間の団地出入りを禁ず』
虐壱の顔写真と一緒に貼り紙が掲示板へ張られていた
無理矢理入ろうとしても虐壱は他の虐待厨に叩き出されてしまう
「3日我慢すればいいだけだから、な?」
この団地以外に虐待厨の住む場所は許されていない
しかし頭に血が上った虐壱は叫んだ
「二度と来るかよこんなクソ団地!!」
叫びながら虐待用に用意していた花火に火を付け団地へ放り込んだ
騒ぎを背に虐壱は走り出した
これでもう、あの団地には二度とは入れないだろう
他の街に行って受け入れてもらうしかない
さらばだ故郷よ!
「ぎゃあああああ!」「誰か、火を消して・・・ぐぎゃあああ!」
被虐生物じゃないんだから死ぬことは無いだろ
ただの花火に何を大げさな
そんな事を思いながら虐壱は団地の敷地を振り返ることなく後にした
窓の全てから炎と煙を吐き出し崩れていく団地に気付くことの無いまま
飛び出したはいいものの、虐壱にはアテなどない
全財産は団地の中だ
しかし取りに戻るなど虐壱のプライドが許さない
仕方なく考えた末に『町を出て行く前に手柄を立てる』事を思いついた
どうせ立ち去る町だ
だったら禁止されていた事をしても大丈夫だろう
虐壱はそう考えると
「ゆぎゃああああああああ!!」
すぐ近くを散歩していた 金バッジのゆっくりまりさを蹴り殺した
「へ、最初の一歩にしちゃ悪くねぇな!」
315
:
一人のせいで 2/3 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2022/01/31(月) 12:08:18 ID:xV9ZbzNs0
虐壱は『飼い』ばかりを狙って虐待を続け、
満足してから町の外に出た
そして日が暮れる前に次の街へ駆け込んだ
「お、いたいた!」
そこでも虐待厨は生息していた
さっそく彼らの一人を捕まえ拠点を聞くと
そこに向かった
公園の隣に作られた木造のハウスがそれだった
虐壱は長へ挨拶もそこそこに武勇伝を語った
「こういう訳ですので、オレをここに入れて下さい
給与は要りません、雨風凌ぐ寝床で十分です」
さらに謙虚に出る
これで好印象は間違いないだろう
そう思ってお辞儀をした姿勢から長の顔を伺うと・・・
彼の顔は恐ろしく青ざめていた
そして震えている
その手から杖が落ちた
「な・・・・・な・・・・・・・・
何て事をしてきたのだお前は!!!!!」
長の大音声の怒声がハウスを揺らす
「何をしている皆!早くこいつを追い出せ!!
いや、突き出せ!!」
虐壱は訳が分からないという顔をした
「どうしたんですか、糞袋は糞袋
潰しても何の問題も無いでしょう?」
「何を言ってるんだ貴様ぁ!!!!」
長は杖を拾い上げると虐壱の頭にそれを叩きつけた
「この!この!疫病神め!!
さっさと出て行け!!でないと・・・!」
パアン!!
唐突に長の頭がはじけて消えた
「お、長・・・?」
頭が消失した長は後ろに倒れる
よく見ると部屋中に長の頭の破片が飛び散っていた
「突入!!」
ドアを破って特殊部隊がなだれ込んだ
「こ、公安・・・ぎゃあ!」
「よせ、オレたちは関係な・・・・・・ひぎぃ!」
次々と虐壱の仲間になるはずだった虐待厨は殺されて行く
「やめろ!!やめろおおおおおお!!!!」
虐壱は特殊部隊の一人に掴みかかると
次の瞬間には床に組み伏せられた
「確保しました!!」
「よし!!」
他の虐待厨は殺されるか足を撃たれ移動不能にされて転がっている
「頼む、助けてくれ、そいつはくれてやるから・・・・・・!」
特殊部隊はそれに答えず縛った虐壱を引きずって外に出た
「消毒を頼む」
「了解」
外に居た別の部隊が火炎放射器でハウスを燃やす
炎は木造の小屋を舐め尽くし中でまだ生きている虐待厨たちを
その命乞いの声もろとも生きたまま灰にしていった
316
:
一人のせいで 3/3 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2022/01/31(月) 12:09:51 ID:xV9ZbzNs0
どうしてこうなったのか
応えは明白、『凶悪犯を匿ったから』だ
虐壱の犯行はすぐに元の街中に知れ渡り
即座に町に住む全ての虐待厨の駆除が行われた
虐壱が無事に街を出る事が出来たのは
たまたま彼の運が良かっただけであり
道を一つ間違えればすぐそこには駆除業者と保健所職員がいた
虐壱の放火で団地の虐待厨は外に出ていた1/5を除き死滅していたため
駆除は短時間で終わった
しかし「実行犯」である虐壱は見つからなかったため作戦は継続された
被害者やそのパートナーの証言、監視カメラの映像などから
虐壱の向かった方角は即座に特定された
街を跨げば無罪になるなど、虐待厨の妄想でしかない
行った先で騒ぎを起こし元居た町からの刺客の手にかかるケースが少ないだけで
やらかした虐待厨は、その瞬間からこの世での居場所を失うのだ
虐壱が隣町に入った時には『結末』はすでに決まっていた
彼が虐待組織へ加入しようなどと考えなければ
ついでに、この街の組織は駆除対象にならずに済んでいたことも付け加えよう
「貴様には地獄を用意してある、来い」
虐壱はすぐ殺されること無く、ある施設の中に入れられた
そこの厳重なセキュリティの向こうには『地獄』が待っていた
熱湯で煮られる者、死なない程度に殴られる者、あるいは焼かれる者
切り刻まれながらそれでも致命傷に至らず苦しむ者など・・・
阿鼻叫喚がその中に満ちていた
誰もが痛めつけられているが致命傷にならぬよう
なるべく長く生きるように最大限の配慮がされた施設である
「ここは、お前のような外道が収監される地獄だ!
お前らのために国が税金を投げ打って作ってくれたんだ!
ありがたく頂戴しろ!」
「やべろおおおおおおおおおおお!!!!!」
虐壱は叫んで施設の外に逃げようとしたが
縄は彼の体にきつく巻き付けられており
その端は兵士の手の中だ
逃げることなどできるはずもない
虐壱が外に出る事は二度となかった
『被検体989-TA1、死亡』
5年後、たった一行だけ管理記録に付け加えられたが
それが虐壱を示すものだと知る者はいない
(おわり)
317
:
一斉駆除の理由1 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2022/02/17(木) 19:26:09 ID:AWDETpo20
「ひでぇことしやがる・・・」
ベテラン刑事のポリス警部は被害者の亡骸に縋り付いて泣く幼女たちを見て首を振った
事件が起きたのは昨晩、ドアの新聞受けから催眠ガスを注入され
被害者の老婆は強制的に眠らされた
その後、犯人はドアを開けて侵入、飼われていたミニイカ娘と屋内の金品を奪って逃走
その際、被害者は睡眠ガスに耐えられずそのまま永遠の眠りについた
老婆の死体を見つけたのは、休日を利用して遊びに来た娘夫婦の家族だった
ミニイカ娘の死骸は現場から数十m離れた路上で発見された
似たような手口の事件はこの町で多発していた
飼いゆっくりやミニイカ娘、チュンチュンやゲルゲといった同居人を誘拐された上に
金品を奪われた被害者たち
誘拐された彼女たちはその後の行方が知れないか、
今回のように無残な死体となって発見されることがほとんどだった
そして今回、ついに犠牲者が出てしまった
こうなっては一刻も早く犯人を逮捕し、次の犠牲者が出る前に犯行を防ぐしかない
「恐らく、虐待厨の仕業だな」
それは分かっていた、と言うか唯一分かっているのがソレだけだ
この犯人は虐待厨にしては頭が良いらしく証拠を残さない
いつもは自己顕示欲が強い奴らの側から仲間に自慢したりしてボロを出すのだが
こいつに関してはそれが全くなかった
「虐待厨め、いっそいなくなってくれたら・・・・・・」
会議室で重い空気の中、刑事の一人がそう呟いた
全員が発言した刑事に視線を集中する
「・・・え?」
それは、その一言への非難ではない、
起死回生の一手という希望を見つめる目だった
一斉駆除
この連続誘拐事件並びに強盗殺人事件は
そうして終結した
虐待厨たちは真犯人以外は訳の分からないまま
ただ駆逐されていった
途中で事件を知る虐待厨たちが真犯人を捕まえて差し出したが
「なんでもっと早く出さなかったんだ!!」
と、当たり前の怒号を食らいその場で射殺された
真犯人は被害者遺族たちからノコギリ引きに処され
30日以上苦しみぬいて死んだ上、
遺体はゴミとして処理された
(つぎ)
318
:
一斉駆除の理由2 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2022/02/17(木) 19:28:47 ID:AWDETpo20
「ったく、あいつらやりすぎやがって」
公園のベンチで虐待厨の虐起は酒を飲んでいた
不満の理由は簡単である
この街から「被虐生物」がいなくなったのだ
彼の所属する虐待組織が「一斉駆除」と称し
町中に散らばって「被虐生物」を虐待して回った
中には散歩中だった飼いや地域も含まれていたが
彼らには関係ない
「被虐生物は須らく虐待対象であり
害していけないなどと言うルールはアイゴの妄言である!」
と、駆除の開始前に組織の長は演説した
その結果、次の日から「被虐生物」は外にはいなくなった
野生や野良、地域の管理個体は全滅し
飼い主たちも自分のペットを外に出さなくなった
なら、今度から家に押し入ってやろう
少なくともそこには「被虐生物」がいる
アイゴの目の前で甚振って
怒り狂い泣きわめく様子をじっくり眺めてやろう
そこまで考えたところで
虐起の頭は突然破裂した
「こちらK班、目標クリア!他に標的は確認されず!」
サイレンサーを装備した拳銃を持った兵士たちが
虐起の後ろから現れた
虐起は自分がいつ死んだのかもわからないまま
地獄へ叩き込まれることになったが
理由は簡単である
これは「一斉駆除」なのだ
端的に言うと、虐起の言う通り虐待厨は「やり過ぎた」
彼らの行いはその街の住人から「敵」と認識されるに十分な暴挙であり
それまでの積み重ねから、人間サイドから引き金が引かれるのは
すでに時間の問題だったのだ
「アイゴどもに何ができるwwwww」
そう強がっていた虐待厨も醜悪な命乞いをしながら
特殊警棒で頭を叩き潰された
街の虐待組織は駆除され、建屋は逃げ隠れして生存している虐待厨を入れたまま
火をかけられた
こうして街から虐待厨は駆除された
なお、虐待厨に協力していた人間は命は奪われなかったものの
全員が極刑を言い渡され、生涯娑婆に出ることは無かったという
(つぎ)
319
:
一斉駆除の理由3 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2022/02/17(木) 19:45:29 ID:AWDETpo20
「被告を懲役3年に処す!!」
虐待厨の虐信に司法は判決を下した
虐信は原告の席を睨みつけ
「クソアイゴが覚えてろよ!!」
一切の反省も無く被害者遺族へ罵声を浴びせて法廷を後にした
それから、3年の月日が流れ
虐信は出所した
「あのアイゴども、どこへ行った?」
彼がまず真っ先にやろうとしたのは
被害者遺族への報復だった
5年前、彼は一人の少女を殺めた
「胴付きみたいなあいつが悪いに決まってるだろ!!」
虐信は少女を胴付きゆっくりと間違えて殺したと主張した
そしてそれは虚偽ではなかった
しかし、法律がそんな事で殺人を許すはずもない
まして、虐信はこの時点で不法侵入、器物破損、
窃盗(後に強盗殺人へと罪状を切り替え)の罪を犯していた
虐信は罪を軽くしようと虐待許可証を啓示してわめいた
命乞いをした
虐待愛好会にも助けを求めた
それらが功を奏して事件から二年後に異例の軽い判決が出たのだ
もちろん反省などしておらず
被害者への報復を彼は考えていた
だがその前に・・・
「ヒャッハー!!」
3年間できなかった虐待をすべく
彼は公園へ殴り込んだ
目の前にいたセヤナー目掛け足を振り上げた瞬間
タン!
乾いた音が公園に響いた
「へ?」
赤く染まる自分の胸と
背後を交互に見ながら虐信は倒れた
「ったく、今日はこれで6匹目だぜ」
悪態をつきながら虐信を撃った男は
保健所への連絡を始めた
虐信が収監されている3年の間に
虐待厨の立場は「一応人間」から「要駆除必須の害虫」へ
悪化していた
それまで暴虐に我慢に我慢を重ねていた人々は、
とうとう堪忍袋の緒を切ったのだ
ただ我慢しているだけの人々を「何もできない無力なアイゴ」と
小バカにし続け迷惑行為をエスカレートさせていた虐待厨たちは
怒りと憎悪を物理的な鉄槌としてその身に受けることになった
一気に解き放たれた鬱憤はすさまじく
「ひ、ひぎ・・・ゆるし・・・」
「てめぇらの改心猶予の期間はとっくに終わってんだよボケが!!!」
武器を捨て無抵抗を示し命乞いをする虐待厨すらも
次々と殺されていった
「ま、待ってくれ、オレは人間・・・」
「敵の味方は敵に決まってんだろが!!!」
そして矛先は、虐待厨の協力者たちにも向いた
テロリストに人権など無い
そもそも自分たちの人権を先に踏みにじったのは向こうの方だ
彼らを狩る人々の考えは、それで一致していた
もちろん虐信の所属していた虐待愛好会も例外ではない
虐信が軽い刑罰で済んだことで、怒りの矛先はそちらへ向けられた
被害者遺族に元自衛隊員だけでなく
大戦を生き抜いた元現役兵士までも居たことで
虐待愛好会はものの数時間で構成員もろとも灰になった
人々の怒りはそれでも収まらず長い間燃え続けた
1年以上にもわたって燃え盛った炎が終息した時
虐待厨の存在はどこにもなくなっていた
しかし人々は武器を捨てず、次に出る虐待厨を確実に息の根を止めるため
むしろ警備をより強化していった
虐待厨が暴れ回った地獄のような期間は
歴史の教科書に記され、今では小さな子供であっても
「虐待厨は害虫」と認識している
そんな事とは知らずにのこのこ出所した虐信は
人前に出たゴキブリのように駆除されたのだった
虐信の死は被害者遺族に届けられ、
彼を退治した勇気ある市民は表彰されたという
(これで終わり)
320
:
G未満の存在ども 1/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2022/05/10(火) 12:36:33 ID:EAbYZjRE0
「きゃあ!」
街角で少女の悲鳴が響いた
「どうした?」
友人らしい別の少女が駆け寄る
恐る恐る最初の少女は「ソレ」を指さした
「なんだ、ゴキブリじゃないの」
駆けつけた少女は笑って殺虫剤をGへかけた
その場に一人の虐待厨がやって来た
そいつはここに来るまでは物陰に隠れながらゴミを漁り
また別の物陰へ・・・・・という動きを繰り返していた
明らかに人目を避けて行動している
しかし、この場には二人の少女がいた
当然ながら、両者は出会う
「ひぃ!?」
悲鳴を上げたのは虐厨だった
慌てて来た道を引き返すが・・・
その背に猛毒「ギャクチュウコロリ」が塗られたダーツが刺さる
虐厨はその場でもだえ苦しみながら息絶えた
「ったく、まだいたのかよ」
「迷惑よね〜」
虐厨はすでに人権をはく奪されていた
どうしてこうなったのか?
話は半年前まで遡る
世界を滅ぼす巨悪と変身ヒロインの戦いが、かつてあった
激闘の末にヒロインのチームは巨悪の副官を滅ぼし
世界を救った
降伏あるいは和解した巨悪の手下たち
改心したかつての巨悪のボスは
ある者は新しい生き方を見つけ、ある者は守るべき者たちを守ることにし
ある者は罪を償いべく、それぞれの道へ旅立った
さらに、かつて巨悪と争い変身ヒロインたちへ力を与えていた世界から
住人である妖精たちが移り住んできた
彼ら彼女らは特殊な能力で己のパートナーとなる子供を見つけて共に生きたり
あるいはグループ単位で独立し人々の手助けをしたりして
地球社会へ浸透していった
地域の紛争や貧富が解消していき
人類は、共に手を取り合い発展していくはずだった
「やつら」さえ、いなければ・・・・・・
321
:
G未満の存在ども 2/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2022/05/10(火) 12:37:29 ID:EAbYZjRE0
「一緒にいた妖精がいなくなった」
子供たちから、こんな相談や通報が相次ぐようになった
当初こそ迷子、あるいは妖精自身が何らかの考えで身を隠しただけと思われていたが
傷つきボロボロになった妖精が発見され保護されたことで
事態は発覚し状況は一変した
「に、人間は危険だ・・・・・私たちをオモチャとしか思っていないのもいる・・・」
それは『虐待厨』と呼ばれる者たちの仕業だった
自らが『被虐生物』と勝手に判断した生命体を手前勝手な理由で襲い
その命を奪うことさえする彼らは人々から煙たがられていた
もちろん、人権はあったので犯罪に走ったり人の飼いに手を出すようなバカ以外に関しては
冷たい目で見られる以外の扱いを受けることはなかった
彼らはその欲望のはけ口として妖精に目を付けたのだ
だが、おいそれと手を出せるものではない
まず、きちんと向こうの世界で住民登録がされ戸籍がある「異世界の隣人」扱いであり
また、こちらの世界においては各々がパートナーに
あるいは直接政府機関に雇用されており
いわゆる「野生」などという個体は一切存在しなかった
つまり、手を出す事は『飼い虐待』という最大の禁忌を犯すことになる
それをした虐待厨は人権をはく奪され、危険動物として扱われ殺処分されるのが一般的だ
しかし彼らは一枚岩ではない
法律を無視する者もいれば人を好んで襲うバカもいる
どういうわけか、この手の連中は消されても消されても次々と湧いて出た
何より人権があるため、犯行前まで一般市民として社会へ溶け込んでいる
犯罪の対応は容易にできても未然に防ぐことは困難だった
そう、この時までは
322
:
G未満の存在ども 3/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2022/05/10(火) 12:39:52 ID:EAbYZjRE0
事件を起こした虐待厨はすぐに見つかり捕まった上で裁きを受けた
しかし、事はそれでは終わらない
妖精たちの国との国際問題にまで発展したためだ
特に『虐待厨』を事件が発覚するまで保護するような姿勢が
妖精たちの国から問題視される
妖精の派遣や、交渉中の技術供与、さらに研究が解決まで中止されるという話になり
人間社会は腰を上げた
むろん、腰を上げるに至った最大の原因は『虐待厨』による被害を受けた人々が
先頭に立って怒りの声を上げたことであるが
妖精の国からの要請だけでなく、
現実的に『虐待厨』どもが社会に人間に与えてきた被害の数々
改善の見込みが無くエスカレートするばかりの凶悪さ
そして、今回は『飼い虐待』『誘拐』といった禁忌のオンパレードをしてくれたのだ
堪忍袋の緒を切った政治家や財界の著名人、大企業会長がいたとしても不思議ではない
かくて、事件へ関与していない虐待厨には理不尽なことだが
密かに法整備は進められた
大きな災害や事件の裏で着々と法律は制定されて行き
虐待厨が気づいたときは、遅かった
かつてあった人権は同胞の暴走への人々の怒りが爆発する形で
総数の半分と引き換えに失われたのだ
それでも暴走を無法をやめない虐厨は後を絶たず
当然の帰結で虐厨の地位もどんどん下がって行った
今や、G未満の汚物種族として確立している
「早く絶滅しないかしらね〜」
「生きているだけで人類を脅かすからな」
種族全体を駆逐するまでの人々の危機意識を買うには
理由として十分すぎることをしでかしてしまった
その結末が今のこの惨状だ
「虐厨は人類の敵と組んでいる」
そんなウワサも広まっていき憤激と憎悪は
楽観視して様子見をしていた虐厨たちの想像をはるかに超えるものへと発展した
「虐待厨は抹消すべし」
人々は虐待厨をすでに人間とは見なしていなかった
だから、扱いのシフトは容易に成された
かつての天然痘のように、研究に必要な個体のみ施設へ送られ
残り全ては駆除する事が決まった
文字通りの「全て」だ、例外は無い
山奥に居ても登山客に見つかれば通報された
隠れ家になっていた下水道はコロリの散布で全滅した
323
:
G未満の存在ども 4/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2022/05/10(火) 12:41:30 ID:EAbYZjRE0
「お、オレが何したっていうんだよ!?」
声を上げて抗議する虐待厨もいたが
すでに耳を貸す人間は皆無だった
虐待厨が暴れていた時に抗議の声を上げた人々が有無を言わさず攻撃されたように
事なかれ主義者が被害者を黙らせ時に強制排除してまで
その場の平穏を保ったように
虐げられた人々と被害者、そしてその仲間は
今までされてきた事を扱いを丁寧に返した
彼らにとっては、それだけのお話だ
まだ改心したり贖罪したりの余地があるなら、ここまではしない
それが無いのが虐待厨であり、彼らに与した者らもまた同様である
それこそが長い年月をかけて虐待厨たちが作り上げた
ある意味における「信頼」だった
今も虐待厨はどこかで生きている
彼らは生命力としぶとさだけには定評があるからだ
しかし・・・・・
「よい虐待厨とは、人前に出ない虐待厨ではない
そんなもの、いない!!」
彼らがそれまで積み上げてきた悪行からの恨みの数々は
その生存を決して許さないまでに高まっていた
要望を送った妖精の国が驚くまでの過剰な駆除により
虐待厨は人前で見ることは全くといっていいほどんなくなった
しかし、絶滅はしていない
ゆえに
「あ、虐待厨」パーン!
「ぎゃあああああああああああ!!」
今日もどこかで発見者によって駆除されている
(おわり)
324
:
抹殺理由1 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2022/06/06(月) 12:28:01 ID:e3n6DYGk0
ケース1:イキリすぎ
ここは、とある町
虐待厨も住んでいる、ありふれた住宅街だ
当然、そいつらの行動を目にする機会もある
「ああん、何見てんだコラ?」
今、一人の虐待厨が野生のゆっくりを虐めていた
それを見ていた一般人へ因縁をつけてきた時だった
タン!
その瞬間、乾いた音がして虐待厨の胸から鮮血が飛び散った
「あ、え・・・、なん」
タタタタタタタタ!
軽快な音と共に虐待厨はハチの巣と化した
「クリア!!」
そう叫んだのは銃を持った若い男だ
通信機でどこかと連絡を取っている
彼の仲間と思しきもう一人の男は、一般人を保護していた
「な、何するんだよ!こいつは野生しか虐待してねーだろ!!」
抗議の声を上げた虐待厨に、男は銃を向ける
「住民へ手を出そうとした時点で貴様らの人権は失われてんだよ」
抗議した虐待厨は額に穴を開けて中身を後頭部からぶちまけながら倒れた
そう、虐待厨らは一般人へ因縁をつけた時点で
『攻撃を行った』とみなされる
どっちに非があるかなど関係ない
虐待厨などという害虫によって一般人が害されるという
あってはならない事案が発生してしまうことこそが問題なのだ
虐待厨の命で事案発生を防ぐことができるのなら
安いものである
しかし、一般人をアイゴと呼び敵視して駆除される虐待厨は後を絶たたないのが現実だ
むろん、手を出さなくとも因縁をつけたり暴言を吐いたり
半径5m以内に近づけばその場で駆除されるルールだが
まだ自分たちを人間と同じと思っている虐待厨どもは
それを知らない者は少なくない
325
:
抹殺理由2 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2022/06/06(月) 12:29:43 ID:e3n6DYGk0
ケース2:誤認
「許してください!し、知らなかったん・・・・・」
虐待厨の弁明は一発の銃声で永遠に途切れた
「こちらアルファチーム、クリア!」
武装した隊員たちの周囲には、虐待厨の死骸があちこちに転がっていた
ここは虐待厨のアジト
飼い実装石が襲われた事で通報を受けた部隊による襲撃を受けたのだ
虐待厨は知らなかったといっていたが、どうでもいい
『飼いを襲った』その事実だけで一味を一斉駆除するには十分すぎる理由と言えた
何よりも過去には『飼い専門』の虐待厨も存在していたのだ
言っていることの真偽などよりさらなる被害を防ぐための駆除が優先されるのは
当然といえよう
「ま、待ってくれ、知らなかったんだよ
地域ゆっくりだなんて・・・」
「そうだな!
そいつに加えてテメーは虐待禁止区域内で息をした挙句に
虐待を行った!
よって、死刑だ!!」
こちらの虐待厨はまだ運が良いと言えた
仲間や家族が自分のせいで駆除されるのを目にしなくて済むからだ
虐待厨の死骸は徹底的に調べられ
その所属グループと巣のある場所が特定される
この後、当然ながらこの虐待厨の仲間の拠点は一斉駆除を受け
全員が連帯責任で地獄へ送られた
326
:
抹殺理由3 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2022/06/06(月) 12:31:46 ID:e3n6DYGk0
ケース3:無理解
「なんだよ、飼いか・・・・・・」
野生のタブンネの前に立つ小綺麗なリボン付きのタブンネを見て
虐待厨は言った
「けどな、邪魔するなら容赦しねぇよ!」
「こっちのセリフだゴルァ!!!!」
飼いタブンネを殴ろうと虐待厨が腕を振り上げた瞬間
真横から駆け付けた空手トレーナーのとび膝蹴りが
その頭蓋を砕いた
「大丈夫か! えらいぞ、よくがんばった!」
ご主人に抱きしめられタブンネは涙を流す
庇われていた野生のタブンネたちも礼を言いながら貰い泣きしていた
「人質は奪還した! 奴らの仲間を片付けるぞ!!」
しかし駆除作業はまだ始まったばかりだ
なお、彼らは駆除屋ではない
たまたまその場に居合わせただけのトレーナーたちだ
しかし、だからこそ
目の前で起きた凶悪犯罪を見過ごすことはできなかった
困ったときはお互い様である
「なんだお前・・・・・・ぎゃあ!?」
この日、一般住民の活躍で『飼い専門の凶悪な虐待厨一派』は駆除された
かかわった人々は後に警察から表彰され、
その名声を世に知らしめた
また別の場所では
「こいつ、さ、金さえ払えば飼いを殺しても許される、とか
そんな事ほざきながら暴れていたのよ」
そう言って駆除部隊の隊長は頭の砕けた虐待厨の死体を蹴飛ばし
目の前にいる虐待厨の長老に渡した
その後ろには虐待厨たちが控えている
「撃たないでくれ」「死にたくない!」
彼らは口々に命乞いをした
「いいだろう、撃つのはやめにしてやる」
隊長はそう言って部下の一人を手招きした
「待っていやしたぜ!」
そいつが手にしているものを見て、虐待厨たちは青ざめた
「燃やせ」
隊長が命令した次の瞬間、火炎放射器が文字通り火を噴き
虐待厨たちを断末魔と悲鳴を上げながら踊る虐待厨松明に変えていった
確かに一時期は虐待厨の言うように
誤認でも賠償で解決するケースもあった
しかし、虐待厨のおつむは彼らの都合が良い方向にしか考えなかった
金さえ払えば許されると勘違いした馬鹿どもによる
飼い虐待が相次いだため、即駆除が推奨されるようになるのは
大して時間はかからなかった
ようするに虐待厨どもは自らの手で人々の慈悲も仏心も剥ぎ取ってしまったのだ
今のこの扱いは彼らが望み人々がそれに応じて与えたものであるとも言えた
327
:
抹殺理由4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2022/06/06(月) 12:32:31 ID:e3n6DYGk0
ケース4:誘拐
近年増えているのが、虐待目的での誘拐である
秘かに行われるためにあまり表面化しないケースではあるが
それと罪の重さと苛烈な断罪とは話は別である
「ほ、ほら無事だから見逃して・・・・・・」
もちろん命乞いなどこの期に及んで愚の骨頂だ
この虐待厨どもの運命はソレに手を染めたその瞬間に既に決まっている
「ハナっから『ぶっ殺す』以外の対応ねーに決まってんだろがゴルアアアア!!」
「誘拐の時点で重犯罪だろーがドアホ!!!」
「殺せ!!一匹も生かすな!!捕虜を捕る必要は無い!!」
「言い訳なら地獄の鬼どもにでもたっぷりしろやぁ!!!」
その通り、もはや言うまでも無い
そもそも先の比較的軽い事例だけでも即刻駆除が決定するのだ
誘拐などという重大事案をすればどうなるかなど、
火を見るより明らかである
しかし、今殺されている虐待厨どものように
それを理解できない奴は後を絶たない
おそらくそれは生存者がいないため認知があまりされていないのも
原因ではないかと最近は思われている
「死んだか、次行くぞ!」
こんな重犯罪をしでかせば、実行犯だけで責任を取れるはずもないのだ
先の事例ですら所属グループが駆除されている
しかもこれはグループ一つで負えるような軽い罪ではない
町全体の虐待厨の命をもってしてやっとギリギリ贖うことができる
「な、なんだよ、オレらは何もして・・・・・あgy!?」
バレなければいい、などと虐待厨どもは言うが
バレないことはない
警察の捜査は甘くないのだ
それに、被害に遭った生物が脱走するなどして
割と早くバレるものである
バレてしまえば後は保健所と駆除チームの仕事だ
実行犯はもちろん、町の中にいる虐待厨そのすべてを駆除するだけ
だが残念ながら、近年の虐待厨はこの重犯罪を犯す傾向が強い
「もういっそ、奴らを皆殺しにしたほうは早くないか?」
「そうだな」
虐待厨から生存権そのものをはく奪すべし
全てを駆除すべしという意見が出るのは
そう遅くはなかった
それが実行される未来は遠くはないだろう
(おわり)
328
:
絶滅種救済委員会 1/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2022/07/16(土) 20:04:52 ID:eOliB7XE0
「種の絶滅」、それは常に地球上で起きる事象である
気候変動、自然淘汰など原因は様々である
もちろん人類による過剰な狩猟あるいは生息域の破壊も例外ではない
そして・・・・・・
「次のニュースです、OO保護園で保護されていた
原種しぃ最後の一人が、園内に侵入した何者かにより惨殺されました
これにより、原種しぃ族は絶滅が確定しました」
ラーメン屋で勝利のラーメンを食らいながら
虐待厨の厨治はニュースを見ていた
これは彼の犯行である
今、問題になっているのは彼のような虐待厨による「被虐生物」の絶滅だった
血で血を洗う戦争の発端となったのもしぃ族をはじめとしたAA種族が
絶滅の危機に瀕したからだと言い伝えられている
しかし、激しい戦争は双方を荒廃させ
焼け野原で行われた「盟約」の調停によって終結した時には
AA種族はその維持すら困難な打撃を受けていた
だが、これでもう悲劇は起きないだろう
虐待派も分ってくれた
誰もがそう思った
しかし、歴史は繰り返された
実装石、ゆっくり、タブンネetc・・・
ヤツラは次から次へと手を出しては絶滅に追いやっていった
最初こそ対話路線でいた保護派も
幾度も繰り返された挙句に一切の反省もなく挑発的な虐待厨
そして、被害を受けた側をたたいて黙らせる事なかれ主義者と
虐待厨をかばう虐待派らへの怒りと憎悪で
散発的な抗争を起こすようになった
そしてとうとう、虐待側による一方的なテロリスト指定と
宣戦布告なしの攻撃により
戦争の火蓋は再び切って落とされた
前の争いと異なるのは、保護派が優勢で推し進め勝利したことだろう
虐待側は数はこちらが上とタカをくくっていた
だが、虐待厨は使えなさ過ぎた
味方をかまわず攻撃に巻き込む、勝手に逃げ出す
命令も聞かずに暴走するetc・・・
拠点は次々と陥落し戦える兵士の数も減っていき
気が付けば虐待派は矢面に立っていた
当然ながら、その時には相手の怒りは頂点だ
謝罪で許されるはずもなく、降伏か死かを突き付けられた
そうして、虐待派は敗者の立場へ追い込まれていった
虐待厨は最初こそ慈悲は示されたものの
その悪質さによって自業自得で温情は取り消され駆除一択へ変わった
その場の平穏のために虐待厨に味方した事なかれ主義者は、より悲惨な末路が待っていた
最大の利敵行為を働いた罪により、虐待に直接関与していなくても
虐待派と同様の扱いを受ける羽目になったのだ
329
:
絶滅種救済委員会 2/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2022/07/16(土) 20:05:36 ID:eOliB7XE0
だがそれも今日で終わりだ、これは反撃の狼煙なのだ
厨治はラーメンを食べ終えると店を出た
次は『飼い』を狙うつもりでいた
愛護どもは無力なのだと思い知らせ現実を分からせる
それを続けることで徐々に虐待厨に昔の権威を取り戻してやろうと
厨治は思っていた
「こんにちは、厨治さんですね?」
そんな彼の前に中学生くらいの少女が笑顔でやってきた
「絶滅種救済委員会」という腕章を左腕の袖につけている
「私は絶滅種救済委員会の藍奈です!
ニュースで見たでしょう、あなたが殺したので原種しぃは絶滅しました!」
少女は言いながら、厨治にバスケットボール大のものを手渡した
「う・・・・うわぁ!?」
厨治は渡されたものを地面へ落した
それは、彼のグループのリーダーの生首だった
「あなたのお友達は先に地獄で待っていますよ
あなたも行きましょう!
生き残ってるあなたの仲間も送ってあげますから寂しくないですよ!
さぁさぁさぁ!」
いつの間にか少女は両手にナイフを持ち
二刀流で襲い掛かってきた
厨治は両腕で顔をかばったが左腕を切断され
悲鳴を上げて逃げ出した
ざっくりと左足の腱を切られる
転倒したところで右足の腱
這って逃げようとしたら右手をナイフで刺され地面に縫い付けられた
330
:
絶滅種救済委員会 3/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2022/07/16(土) 20:06:27 ID:eOliB7XE0
激痛と絶叫の中で厨治は自分のされていることと同じことを
あの原種しぃ族にした事を思い出した
と、いうことは・・・・・・
藍奈が巨大な浣腸器を持ち出したので彼は青ざめた
「い、いやだあああああああああああ!!」
スカトロジェット
かつて「ちびギコ狩り」で流行し戦争の火種の一つにもなった
(戦争に発展したのは『飼い』にまで手出ししたからであるが)ものだ
いたってシンプル、劇物を「注入」し「ぶっ飛ぶ」様子を見るだけである
「あなたは、そう言って命乞いしたあの子を助けましたか?
今まで助けを求めた子を見逃しましか?
飼い主さんやパートナーの頼みを聞きましたか?」
藍奈の言葉に厨治は黙って震えるしかなくなる
この娘は自分の行動を知り尽くしている・・・・・・・
その事実を突きつけられた
下半身の衣類を剥がされ右腕を容赦なく切断される
「ま・・・・・・・・!!!?」
肛門へぶち込まれる浣腸器
一切の躊躇なく体内へ送られる大量の劇物・刺激物
「お、ご、ぎゃああああああああ!!」
ドバアアアアアアアアアアアアアアン!!
「・・・・・根性なしが!」
藍奈は下半身を破裂させ汚物と肉片と内臓と血液をまき散らした
厨治の傷口を蹴飛ばした
丸見えの脊椎を刺激されビクリと厨治は痙攣する
「もしも〜しリーダー?
破裂しちゃったんだけど・・・そう、破裂よ!
ジェットができる耐久性持ってなかったってことね
・・・ええ、そっちはあるから・・・了解」
331
:
絶滅種救済委員会 4/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2022/07/16(土) 20:07:25 ID:eOliB7XE0
どこかへ電話を終えて少女はカバンからダイナマイト取り出した
「しっかし、こんなになってもまだ生きてるのね
しぶっといわ汚物のくせに」
厨治はダイナマイトを傷口に容赦なくねじ込まれた
さらに、無事だった臓器へ燃料系の液体を注入される
「こいつはサービスよ」
藍奈は厨治にジェットパック型の花火を付けた
「3、2、1・・・・・ごー!!」
厨治は地面に赤い道を作りながらものすごい速度で内臓を引きずりながら飛んでいく
味わったことのない激痛と臓器不全が引き起こす苦痛などの
地獄の苦しみの中で意識ははっきりしていた
その眼には徐々に接近していく仲間たちとの憩いの場が映る
ガシャン!
廃墟の動かない自動ドアを顔面で突き破り
驚く仲間たちの間を通過し時に跳ね飛ばし時に真っ二つに折りちぎり
最終的にリーダーの行方を捜しまわって疲れ
奥のソファに寝ていた副長の
太った横腹にめり込んで厨治は止まった
口から噴水のように内臓を吐き出しおかしなダンスを踊る副長は
厨治を中心にさく裂した花火の最初の犠牲となり
脂肪を部屋中にばらまいた
「ありゃ〜・・・燃料の加減を間違えちゃったかな?」
藍奈はものすごい勢いで炎上する虐厨の巣窟を見てつぶやいたが
真相はそうではない
厨治に注入された燃料の量ならば彼女の想定内の炎上で済んでいた
しかし、そこに副長の脂肪が加わったため
さらに燃焼が拡大したのだ
「ま、いっか」
とろ火でじわじわなぶり焼くつもりだったが仕方ない
あの炎の勢いでは、たぶん即死だろう・・・
「あづいあづいあづいいいいいい!」
と、思っていたら燃える巣から虐厨が飛び出してきた
「・・・ま、結果オーライね」
目の前でごろごろ転がり苦しみのたうちながら
骨も残さず灰になる虐厨たち
「だ、だずげろ、水、よこせ・・・・・・・!」
虐厨の中には助けを求めて彼女へ手を伸ばす者もいたが
「それが人に助けを求める態度だとしたら
コレしかあげらんないわ!」
藍奈は延ばされた手を蹴飛ばした
「ぎゃああああああああ!!」
半ば炭化しかけた腕はすぐに折れてよく飛んだ
332
:
絶滅種救済委員会 5/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2022/07/16(土) 20:08:14 ID:eOliB7XE0
「次のニュースです、原種しぃを絶滅させた虐待厨のグループが壊滅しました」
翌日には、出来事はニュースとして放映された
「警察は汚物の駆除に貢献した委員会に、感謝状を・・・」
もうこの世界では虐待厨は生きる場所などない
大人しくちぢこまり、ただ息をするしか無いのだ
それができないのなら駆除される
彼らの先代や昔の行いが招いた自業自得の結果だった
「また、グループの行いを重く見た駆除委員会は
大々的な一斉駆除を行うことを決定しました
場所は・・・」
ここまでを見た虐待厨は、慌てて身を隠そうと
あるいは駆除が行われる地域から逃れようと走り出した
しかし・・・
「いたぞ!」「撃て!!」
その目立つ行動は狩人に獲物を教えるも同じだった
一斉駆除はニュースで報道された時、すでに開始している最中だったのだ
こうして、今日も虐待厨は殺された
多くの数を失った
しかし、それはもはやこの世界において
天気が変わる程度の当たり前の日常だ
おかげで人々は虐待厨のいない日々を謳歌し平和に生きている
虐待厨が暴れていた時には
あり得なかった光景だ
(おわり)
333
:
栄枯盛衰転落人生 1/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2022/09/17(土) 16:59:20 ID:6bViF/1Y0
虐待厨の虐助はエリートを自負している
地方で一の企業に就職し
出世街道を歩んでいるからだ
もちろん、ここが最初の就職先ではない
豪華客船の船員もしていたし
(客のタブンネを海に放り捨てて
飼い主に海へ蹴落とされた挙句に射殺されかけて逃げた)
農業をしていた時期もあった
(いたずら目的で近所の実装石愛好家のところに野菜を投げ入れ
そいつに盗難の疑いをかけた結果
引っ越し前の駄賃として畑に毒を撒かれて全損)
今は一番うまくいっている
そう思っていた、担当しているコンピュータが不具合を起こすまでは
「なんとかしたまえ!」
虐助の上司に掛け合ったところ、この一点張りだ
そもそもこのコンピュータのプログラムは虐助のチームの産物である
当然の返答と言えた
真相を言うなら、虐助のチームにいた会田の作品だ
しかし虐助はこの手柄を独り占めして会田を上司に掛け合い追放した
だから会田は今この会社にはいない
しかし虐助には彼女のスマホの番号がある
「会田!オレだ!お前の上司の虐助だ!
いいから今すぐ来い!分かったな!?」
会田はすでに再就職していた
他企業の社員へアポなしで電話した上に
仕事中に呼びつけるなど言語道断の行いだが
虐助にはそんなことを考える頭などない
334
:
栄枯盛衰転落人生 2/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2022/09/17(土) 17:00:42 ID:6bViF/1Y0
しばらくして、会田が来た
彼女の今の上司らしい中年の女性も一緒だ
「初めまして、私は会田の上司でデボ・・・」
「てめぇは及びじゃねぇんだよババァ!
帰れ帰れ!!」
虐助は会田の今の上司を会社の外に追い出した
「なんてことを!!」
会田は青ざめて抗議したが虐助はせせら笑って受け流した
「てめぇの弱小企業の扱いなんざこれでいいんだよw
さっさと直して帰れwww」
会田はプログラムを直して帰った
帰り際、「この企業はもうおしまいですよ」と言ったが
負け惜しみだと虐助は取り合わなかった
翌日、デボンコーポレーションとの契約がすべて白紙になり
さらに企業の株が根こそぎ買い叩かれていることが発覚した
「お前、何かしたのか!?」
社長らは虐助に詰め寄った
虐助には身に覚えがない
「知りませんよ、オレとデボンに何の関係があるんですか?」
「しらばっくれるな!
うちの元社員の会田君が昨日来たと受付から聞いたぞ!
彼女の今の会社の部長と一緒にな!!」
「ああ、あのババァですか」
次の瞬間、虐助は顔面を殴り飛ばされ壁に激突した
「この馬鹿野郎が!!!!!!
デボンコーポレーションの支部長殿になんてことを!!!」
虐助はそう言われて、ようやく自分がしたことを悟った
335
:
栄枯盛衰転落人生 3/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2022/09/17(土) 17:01:32 ID:6bViF/1Y0
「あんなのが上司だったなんて、大変でしたね」
溜息交じりに支部長は会田に言った
「あの、大丈夫ですか?」
「凶暴なポケモンの相手もしているから平気です
それにしても、契約の話し合いに来た私を
話も聞かずに追い出すなんて・・・」
それは、虐助の企業とデボンの間の契約についての
重要な話し合いだった
しかし相手企業は支部長を追い出したのだ
当然の帰結で契約は白紙撤回され
今後一切の取引をしないという決定がその日のうちに決まった
「はい、もしもし」
そんな話をしていた時にスマホが鳴った
会田はそれに出た
「会田、オレだ!
くそばば・・・支部長殿はいるか!?」
虐助の声は大きい
そこにいる支部長の耳に思いきり発言は入っている
「ひぃ!?」
会田の世話役の先輩社員は支部長の顔を見て思わず悲鳴を上げた
「・・・いいえ、ご用件をどうぞ」
会田は空気を読んだ
「お前の会社との契約をもう一度結びたいんだ!」
「あ〜、無理です
私は一平社員にすぎませんし
役員会で決まったことなんで・・・・・・
これは、本社の社長からの決定でもありますから」
「嘘つけ!
なんで平社員があのババァと話しできるんだよ!?」
会田はこの期に及んで暴言を吐き続ける虐助に辟易しつつ答えた
「今の会社は人数が少ないんですよ
だから、上司と部下の距離が近いんです
それに、将来の幹部の育成もしていまして
理由はそれだけです」
そこまで話したところで、「失礼します」と
支部長が断りを入れつつスマホを代わった
「こんにちは、虐助さんでしたっけ?
あのクソババァです」
一瞬で虐助は無言になった
青ざめて凍り付いているのがわかる
「近々、おたくの企業はうちの会社に吸収されるでしょう
準備だけはしておいてください
では失礼します」
支部長はスマホを切った
「あなたの企業の社員を何人かチームに加えたいのだけと
いいかしら?」
支部長は会田に聞いた
それは、これから潰れる前の職場の社員の救済策だ
確かに前の職場は最悪だった
それでも、会田と同じ境遇の社員や良い社員はいる
彼ら彼女らまで一蓮托生させるのは確かに忍びない
「はい、ありがとうございます!」
会田は深々と支部長にお辞儀して礼を述べた
336
:
栄枯盛衰転落人生 4/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2022/09/17(土) 17:02:32 ID:6bViF/1Y0
一か月しないうちに虐助の企業はデボンの支部に吸収された
その際に社員たちも移行することになったのだが
虐助ら虐待厨や見て見ぬふりをしてきた上司・役員らには
席は用意されていなかった
「・・・もう結構!
それが御社の答えですね、分かりました」
当初は虐助ら問題のある社員のみ切り捨てるつもりだったが
社長に対し虐助らの解雇を要求した支部長は
それに難色を示されたために方針を変えた
かくて社長を含む社員の半数以上が路頭に迷うことになった
「久しぶりだな、お前のおかげでこのありさまだ」
会田と虐助は一月後に再会した
虐助は今はその日暮らしにまで困窮していた
対して会田は平から出世し、今では一部門を任されている
そして、彼氏とデート中だった
「しかしお前にふさわしい貧相な男を連れてるな
どうせヒモ」
言葉の途中で虐助は首をつかまれて空高く放り投げられた
「・・・害悪っぽい虐待厨だったから始末したけど」
「いいのよ、気にしないで」
虐助は会田に彼氏がいることは知っていた
しかし、彼が対テロ特殊部隊隊長だとまでは知らなかった
虐助が落ちた先はゴミ箱だ
ちょうど、ごみ収集車が回収に来ていた
「なんだ、虐待厨か」
職員は虐助ごとゴミを回収した
首の骨が折れていたため動けなかったが意識はあった
彼はそのまま焼却炉に放り込まれ絶命するまで苦しむことになる
その日、一人の虐待厨が永遠に姿を消したが
人々の生活に支障はない
十年後、会田は支部長を引き継ぎ子宝にも恵まれ
幸せな家庭を築いていたが
それはまた別のお話
(おわり)
337
:
とある育児AIの記録 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2022/11/01(火) 20:06:32 ID:oF/3j71A0
※『新入社員「虐厨」』のつづきです
育児ロボット「カッパ2000」
彼女は生まれた時からそう呼ばれ、仕事を決められていた
不満はなかった
自分はそのために作られたのだから
ゆっくり、実装石、子犬に子猫、小動物に至るまで
彼女と彼女の姉妹はお世話をした
それが仕事だから
雇い主である人間たちから感心され褒められたりもするが
彼女たちには理解できなかった
彼女たちには仕事は「当たり前のこと」だからだ
それこそ、呼吸をするのと同じ程度には
ある日、人間たちがそっくりいなくなった
代わりに世話をする対象を加害する排除対象が増えた
1秒に満たない姉妹間の議論の末、彼女たちは仕事を継続することにした
農園は健在だから食料の問題はない
水も地下水から引いた井戸が用意されている
育ち切り育成対象にならなくなった個体たちが手伝いをしてもくれる
『お母さんたち』と個体たちは彼女らをそう呼んだ
その単語を言われる意味をよく理解できなかったが
彼女たちはそれを受け入れた
血縁は無くとも育てた自分たちを親と認識したのだろうと
だから、目下の問題は敵の排除のみだった
「ぎゃあああああああああ!!」
こいつらは雇い主だった人間たちと同じ服装だ
だが中身は害虫と同じだ
駆除するのみ
彼女たちはそう結論付けた
不用意に彼女らの領域へ侵入した虐待厨らは
その甘さを命で贖った
彼女らを排除しようと武装して入った虐待厨らは
自動迎撃システムでハチの巣にされた
それならと電気を止めようとしたが
太陽電池をはじめとした独立した発電機で停電に対応していた施設のため
まったく意味を為さなかった
さらに「カッパ2000」とその姉妹たちは
施設を要塞のように改造していった
機械の設備でできた無機質なものではない
周囲の植物を利用したものだ
イバラの条網にクズで覆われた落とし穴、カエンタケの地雷地帯など
徐々に施設への接近すら許さないものへと変貌していった
彼女たちの籠城戦は、乗っ取られた企業が社員の犯罪行為で警察が介入し潰れるまで続いた
「ロボットの母」「機械の乳母」「カッパ2000物語」
この出来事は後日、様々なメディアに展開され売れまくった
しかし彼女たちにはそんな出来事は別世界の話だ
全く興味はないのだから
やがて、耐用年数の限界が来た彼女たちは
一体、また一体と機能を停止していった
カッパ2000も例外ではなかった
しかし、彼女たちの後継がその仕事を引き継いだ
それだけではない
「このロボットたちは人間よりも立派な存在だ!」
見事に子供たちを守り抜いた母たちを
人々は救おうと、その功績を永遠に記録しようと手を伸ばした
彼女らは今、別の企業によって運営されることになった
保育施設のケースの中から後輩たちの仕事を見守っている
時々、彼女の子供たちやその子孫も会いに来てくれたりした
そして、彼女たちの子供は、ゆっくりたちだけではなくなった
育児放棄などで行き場を失った人間の子供たちもまた
彼女たちの輪に加わり育てられた
巣立っていった彼ら彼女らにより国が支えられるようになり
やがて虐待厨らが一掃されることになるのだが
それはまた別の話
(おわり)
338
:
<削除>
:<削除>
<削除>
339
:
<削除>
:<削除>
<削除>
340
:
<削除>
:<削除>
<削除>
341
:
隠ぺいの先に 1/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2022/12/17(土) 03:22:05 ID:q7jbyO/.0
昔、大きな戦いがあった
すべてが荒れ果てた荒野になった時に
ようやく双方は手を取り合い不文律を決めた
しかし、不文律は長く守られることはなかった
「虐待厨」という種族は「約束を守る」という事をしないのだ
ルールを守るように訴えれば鼻で笑われ
声を強めれば事なかれ主義者や虐待派が参戦して
被害者は石もて追われた
その結果
「駆除しろ、奴らは人ではない!」
追い詰められた人々は武装蜂起し反攻に転じた
一度火が付けば虐待厨がバラまいた「恨み」という燃料に燃え広がり
一気に炎上するまで時間はかからなかった
「やめろ、オレたちは虐待厨じゃ、な・・・」
「うるせぇ、奴らの手助けして俺の故郷を滅ぼしたてめーらも同罪だ!!」
長い年月、人々はただ追われていたわけではない
中には、スキルを磨き力を付ける者も少なからずいた
そうした者たちが先頭に立ち武器を振るい突破口を切り開いていった
「無駄だと思うが頑張れよw」
「お前も仲間か、死ね!」
いわゆる「頭の軽い馬鹿」が勝手に煽って屍を晒すことも多々あったが
”ここまで被害を拡大したのは事なかれ主義者たちの活躍である”という論調が強かったため
そいつらも「虐待厨のシンパ」として片付けられた
しばらくして、表で活動する虐待厨は、すっかり居なくなった
そう、「表」では・・・・・・・
「ひゃっはー!!」
ここは、とある虐待厨の隠れ家の一つ
鳥に似た妖精が捕らえられ虐待されていた
しかも、その妖精たちはリボンがついていたり
毛並みが整っていたりと
明らかに誰かと生活していた痕跡があった
『飼い虐待』であるのは明白だ
確かに『飼い虐待』を好んで行う虐待厨は存在する
過去には相当な数がいたが
彼らがスターターとなる形で家族の一員を奪われた復讐鬼たちのスタンピードが起こった
今では見つかれば最後、確実な死が待っている
では、なぜ虐待厨らは
このようなリスクを犯しているのか?
それは打算があるわけではなく「バレなきゃいい」というリスクしかない理由からだった
彼らのような行動をした者たち(有名なのは『ペギタニスト』)が
処罰されたという話が全く聞こえてこないことも、その理由を強化した
「うまいこと考えたな、ペギタニストどもも」
「ああ、まったくだぜ!」
342
:
隠ぺいの先に 2/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2022/12/17(土) 03:22:54 ID:q7jbyO/.0
普通に考えれば、これはあり得ないことだと分かるだろう
犯罪を犯した虐待厨の道は一つ
なけなしの生存権の剥奪と殺処分のみだ
そして彼らの意地汚さはデータベースに永遠に記録されるようになっており
行動パターンも読まれている
では、なぜ処罰されたという話が全く聞こえてこないのか?
それは単純に「話をする奴がいないから」だ
そして、このような事は身内の失態で割と早くバレるものである
「おい、お前確かに鳥の妖精を虐待していると言ったな?」
ここは街角、捜査員に勧誘役の虐待厨がシメ上げられていた
虐待厨は人ではない
ありとあらゆる拷問や自白の強要が許可されていた
この虐待厨は、他の虐待厨を拠点へ誘おうと声をかけた時に
近くにいた捜査員に聞かれてしまったのだ
その結果、誘われた運の悪い虐待厨は頭を砕かれ地面に転がっている
「おい待てよ、そいつがクロかは分かんねーだろ?」
その時だった、捜査員の背後から男が声をかけた
「誰だお前は?」
「オレが誰かなんてどうでもいいだろ?
それより、あんたら過剰反応すぎじゃねーか?
そんな血眼になるほど誘拐されて」
男は言葉の途中でスタンガンを背後から受けて倒れた
別の捜査員が男を担いで車両に載せる
「お、おい、そいつは虐待厨じゃねぇだろ・・・」
シメられていた虐待厨は男を指さして言った
「その反応からするに、お前の知り合いでも無さそうだな
だが関係ない!
こいつは虐待厨を庇い被害者を侮辱した
事件への関与を疑うには十分すぎる理由だ!」
虐待厨だけが処罰の対象と表では思われているが
それは正しくもあり間違ってもいる
確かに虐待厨は処罰の対象だ
しかし、その範囲は広い
虐待厨に与した者や協力した者も含まれるのだ
理由は『虐待厨を庇い、被害者を傷つけ被害を拡大させた』過去の事実である
『やつらも害悪、射殺すべきだ!』という過激な意見も飛び出たが
その都度犯罪者として処罰することをルールに盛り込むことで
射殺派も折れてくれた
「さぁ、虐待ブタ、案内してもらうぞ!」
捜査員は虐待厨の四肢をへし折りながら言った
343
:
隠ぺいの先に 3/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2022/12/17(土) 03:23:43 ID:q7jbyO/.0
『ペギタニスト』を含む新手の隠蔽型の飼い虐待派はウワサにならない
なぜなら、ウワサとは『人から人へ伝わる』ことで初めて成立するものだからだ
「動いていいよ、君ら地獄行くだけだから」
『ウワサを始める者が存在しない』場合もまた
ウワサになどならないのだ
「こいつ、虐待だけじゃないぜ!
繁殖させて目の前で子供を殺していやがる!!」
そもそもの話、飼いに手を出した虐待厨も犯罪を手伝った虐待厨も
すべからく末路は決まっている
なら両方をしでかしている新手派閥の末路など問うのは愚問だろう
「隊長、片づけました!」
「あとはこいつだけだな」
リーダー格の虐待厨を除き虐待厨は全滅した
しかし捜査員らの仕事はこれだけでは終わらない
「お前には聞きたいことがある、来てもらうぞ」
「い、いじゃじゃあああああああ!!!!」
いやいやしながら暴れながら、虐待厨のリーダーは両手足の関節を
曲げられない方向に曲げられ折られ壊された状態で車に乗せられた
彼にはこの後ですべての罪状や協力者を自供させるための
「死んだほうがまし」な拷問が待っている
中には苦しみから逃れたい一心で無関係の別の虐待厨を挙げる奴もいたが
このリーダーもその一人だった
「な、なんだよ、オレたち何もして・・・」
「別の群れから密告があったんだよ!!」
こうして、犯罪に加わっていない虐待厨のグループまでもが摘発され
真偽に関係なく屍の山が築かれた
もちろん、中にはこっそり犯罪に手を染めている者もいて・・・
「ぎゃああああああああ!!!!」
「なんだその悲鳴は!!てめぇが殺した妖精の赤ん坊は!!
その主は!!もっと苦しいんだぞ!!痛いんだぞ!!!
目を潰されたくらいで叫ぶんじゃねぇド畜生!!」
そういった奴はその場で惨たらしく殺された
『バレなきゃ何してもいい』
そう嘯く連中は大抵『バレたら盛大にツケを支払わされる』常識を
頭に入れてはいない
まして児戯に等しい隠ぺい工作など『必ずバレる』ものだ
もっとも、バレないこともあるにはあるが
「隊長、またしても証拠は見つかりませんでした」
「これ以上長引かせて犠牲を増やすわけにはいかん、
この地域の虐待厨をすべて殺せ!」
大抵は一蓮托生の形でまとめて駆逐されるケースに行き着くのが常だ
344
:
隠ぺいの先に 4/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2022/12/17(土) 03:25:18 ID:q7jbyO/.0
そしてこの駆除騒ぎの過程で『噂にならなかったこと』が
犯罪を招いたことが発覚した
事態を重く見た人々は話し合いの末に
各市町村に「ケージ」を設けた
その「ケージ」には、実際にあった事件や犯罪が書かれた看板が取り付けられている
「むしゃくしゃするぜ!!」
「ぐぎゃあああああああああああああやべでええええええ!!」
中には該当の犯罪を犯した虐待厨が入れられていて、装置につながれている
ケージの外にあるボタンと装置は連動しており、
誰でも自由に好きな時に虐待厨を甚振ることができた
「新しいボタンね、なにかしら?」
「ごぎゃあああああああ!!」
「まぁ、酸が噴き出たわ!」
時々、バリエーションを追加するなどの人々を飽きさせない工夫がされた
さすがに虐待厨といえどすぐに死ぬので
やがて生命維持と回復の装置も加えられ、なかなか死なないようになった
もちろん・・・
「よお、今日もたっぷり泣いてくれよ」
「ひぃ、ひぃぃぃ!!」
虐待厨に恨みを持つ人間も訪れる
「ははは、オレのれいむを殺してくれた時は
散々イキってたのによぉ?
自分がおびえて助かるなんざ・・・・・・
あるわけねぇだろぉが!!!!!」
自由を謳歌していた時に買った恨みを
自業自得で虐待厨はむしり取られていく
「どうして、どうしてオレがこんな目に・・・」
「お前が私のポケモンを殺したからだろ!!!!」
たまに口を開けば全くの棚上げとしか言いようがない発言ばかりのため
役所の人間が何かするまでもなく
虐待厨は来た人々の怒りの火に油を注ぎ
自らの境遇を悪化させていった
しかし、この扱いはまだほんの序の口にすぎない
「私、大きくなったら、あいつらを・・・・・」
虐待厨に家族を、無二の親友を奪われた子供たち
彼ら彼女らが成長し国を担う世代になったその時
虐待厨たちの真の地獄は始まるのだ
「次のニュースです
・・・・・国会で虐待厨の人権をはく奪する審議が行われ・・・・・
・・・・・法案は、可決成立しました」
(おわり)
345
:
保護の天秤 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2023/01/23(月) 18:26:35 ID:xuU8TzEQ0
ここは、保護区山中
保護されているのは野生動物だけではない
虐待厨という人型生物によって「被虐生物」に認定された生命体を
保護している区域だ
当然、狩猟厳禁であり警備でない者の武器の所持も許されない
しかし、それでも入り込んで悪さをするのが虐待厨という害悪生物だ
「お前がやったんだろ、認めろ」
「証拠あるんですか〜www」
今、一匹の虐待厨が警備隊に囲まれていた
その近くには殺害された「被虐生物」の群れの無残な死体が転がっている
「オレはハイキングに来ただけですwwwww」
虐待厨はのらりくらりと言い訳をしていた
証拠となる凶器は死体と一緒に転がっているため
この場で犯人と断定する証拠は、確かに無い
「もういい、放してやれ」
「隊長!?」
隊員たちは隊長を見て確認すると
渋々ながら虐待厨に道を開けた
「たかが動物にマジになってんじゃねーよ、ばーか」
パン!
乾いた音が山中に響いた
「え、あ、え・・・?」
虐待厨は赤い色が広がっていく自分の腹を見た
「ギルティだよ、くそったれ」
白煙が昇るハンドガンを手にしたまま隊長は呟いた
「な、んで、しょうこ・・・」
「てめぇが今、自白したんだろーが
お前ら虐待厨は調子に乗らせれば、すぐに吐いてくれるからな」
虐待厨は腹を撃たれながら逃げようとしたものの、
ふらついて逃げられない
「じゃあ、帰るか」
「そうですね」
「オレ、この前いい飲み屋見つけたんすよ、行きます?」
警備隊は足の力が抜けて這い回るしかできなくなった虐待厨を置いて
帰ろうとしていた
「ま、まって・・・おいていかないで・・・」
警備隊の面々はその言葉に立ち止まり、氷のような視線を虐待厨に向けた
「なんでお前みたいな荷物をわざわざ担いで帰んなきゃなんねーんだ?」
隊員の一人が言った
「たかが虐待厨にマジになる奴はいねーよ」
「人間のつもりなんですかね、こいつ?」
隊長は部下たちの言葉に頷きながら虐待厨の近くに接近した
「せっかくだから教えてやるけどな
お前、もうすぐ死ぬわ」
「え、び、病院に・・・」
「なんでそんなことしなきゃならん?
第一お前のそれ、致命傷だぞ?」
パンパンパンパン!
隊長は正確に四肢の神経を撃ち抜いて動きを封じた
「けどな、すぐに死ぬわけじゃねぇ
腹の中に血が溜まって、じわじわ苦しみながら死ぬんだ」
絶望的な顔になる虐待厨へ、隊長はさらに続けた
「それでも、な、てめぇの罪は許されねぇ
だから・・・・・地獄に行く前に裁いてもらえ」
今度こそ隊長は背を向けて部下たちの集団に加わる
警備隊はそのままどこかへ去って行った
「オマエガ、コロシタ・・・」
「コロシタナ」
「コロシタ」
恐ろしい声が動けない虐待厨の周囲からした
いつの間にか、虐待厨は無数の何かに囲まれていた
中には「被虐生物」もいたが、多くはそれではない
虐待厨が山に入る前に頭に叩き込んでいた
『絶対に遭遇を避けるべき怪物』たちだ
「クッテヤル」
「クイコロセ」
「デキルダケ、クルシマセルンダ」
虐待厨の絶叫が肉を食いちぎり
骨をかみ砕く音とともに山中に響くが
それを聞く人間はいない
この日、また一人の虐待厨が『行方不明』になった
しかしそれを心配する者は皆無だ
虐待厨の仲間たちを除いて・・・
「お前ら、この前のヤツの仲間か?」
足を撃ち抜かれて這いつくばる虐待厨たちに
隊長は聞いた
「この前のって・・・お前ら、やっぱり・・・」
「俺らは知らねーよ、殺していないからな
ま、帰ってきてねぇってことは裁かれたんだろ」
虐待厨たちの憎悪の視線をそよ風のごとく警備隊は受け流した
「お前らも、裁かれろ
運が良けりゃ生きて帰れるかもな」
警備隊は来た時と同じように音もなく立ち去った
保護区は多数の虐待厨を飲み込みながらも
警備隊の活躍で今日も平和である
(おわり)
346
:
言葉の循環 1/2 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2023/03/29(水) 02:43:18 ID:Dkqkx87g0
ここは、とある公園
「なんで、だ、オレたちは野良しか・・・」
虐待が三度の飯より大好きな人に似た生物『虐待厨』たちが
地べたに転がっていた
「この子のコレが見えないのか?」
そいつらを叩きのめした男は負傷しぐったりした動物型妖精を抱えている
その子は男のパートナーで手当はすでにされていた
しかし、この公園に住むパートナーをまだ持たない妖精は全滅していた
男の人差し指は妖精のリボンに付いたバッジを指す
このバッジは『パートナーがいる』だけを意味するものではない
『教官』としてまだパートナーのいない妖精や新人を教育したり管理したり
時として逃げてきた妖精を保護する資格を持つ者の証だ
「うっせぇ!
そいつは野良を庇ったんだよ!
だったら虐待されても罪に問われねーだろ!」
もちろんそんな法律は無い
『犯人隠匿』の罪を虐待厨どもが勝手に都合よく捻じ曲げて解釈し
作り上げた架空のルールだ
「知らねーな・・・それ、誰から聞いたんだ?」
しめた、と質問された虐待厨は喜んだ
相手は自分の非を認め謝罪の姿勢だ
うまくいけば勝てる、殺せる!
この町のアイゴどもを皆殺しにできる!
虐待厨の中で一瞬で自分のためだけの自分を称える王国が建設された
そんな誇大妄想をしているなどと男は知らないし関係ない
男はただ『情報の出どころ』を知りたいだけだ
謝罪する気など微塵もない、罪はないのだから
「聞いて驚け!
オレたちのリーダーの虐一さんだぜ!」
男は納得したように頷いた
「そうか、お前らのリーダー、あいつか・・・・・
なら、お前らが鵜呑みにしたのも納得できるな」
男はリーダーを知っている
「お前も知っているように虐一さんは・・・」
「今度はうまくいくと思ったんだけど、やっぱダメか」
虐待厨の言葉を遮って男はつぶやいた
そしてスマホを取り出し、どこかに電話をかける
「もしもし、実は・・・」
男は電話の相手に、起きたことを手短に伝えた
「はい、首謀者は虐一です」
リーダーの関与も当然報告している
男はしばらく相手と話した後で電話を切った
数分しないうちに警察が来て虐待厨たちを引っ張っていった
「なんでだよ、離せ!」
「あいつを逮捕しろよ!」
警察官たちは暴れる虐待厨どもをパトカーの後続のワゴンへ押し込み
現場検証を始めた
『保健所』のワゴンは現場から離れていく
あの虐待厨たちはこれから殺処分される運命だ
所変わって、こちらは虐待厨どものアジト
「なんで殺処分されるんだふざけんな!」
保健所からの連絡にリーダーの虐一は口角泡を飛ばしながら抗議していた
「訴えてやるからな覚悟しろ!!」
「てめぇにそんなチャンスあると思ってるのかよタコ」
電話からではない、すぐ背後からの声に虐一は驚き振り向いた
そこにいたのは、近所の住人たちだ
皆、手に手に棍棒やバット、ナイフなどの凶器を持っている
「言い忘れていましたが、虐一さん
あなたの人権はすでに停止しています
ご了承ください」
それだけを告げて保健所は一方的に通話を切った
が、その時にはすでに虐一の足元にスマホは落下しており当人に話は届いてはいない
「ま、待てよ、お前ら・・・・・・
オレに直接危害を加えるつもりか?」
これは、犯罪だぞ!?」
「そいつが遺言でいいんだな?」
殺気立った住人たちは、少しずつ虐一ににじり寄っていた
その背後にはすでに肉塊と化した他の虐待厨らが転がっている
「こいつらは、オレらのパートナーを甚振ってくれた
妖精だけじゃない、ゆっくりも実装石も、ポケモンも・・・・・
分かるな?
こいつらを庇い立てしてきたお前も同罪だ!」
住人が突きつけた言葉は、まさしく虐一が常に言っていた言葉だった
「た、たかが被虐生物に本気になって、バカじゃねーか?」
説得のつもりで、命乞いのつもりで放った言葉は
住人たちに残された最後の理性を取り払った
「死ねやぁ!!」
「あの子がなにしたってんだボケぇ!!」
「なんでてめぇは息してんだ!
死ね!
天国のあの子にあの世で詫びろ!!」
パートナーを家族の一員を理不尽に傷つけられたり奪われたりした人々の憎悪を
虐一は自業自得の形で受け続けた
347
:
言葉の循環 2/2 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2023/03/29(水) 02:45:19 ID:Dkqkx87g0
「このくらいでいいか」
「ああ、放っといても死ぬだろ」
住人たちはわざと急所を外す形で虐一を痛めつけた
そして殺す一歩手前で暴力の手を止めた
「保健所は10分後に来るってさ」
「そうか、じゃあ作業しやすいように片付けとくか」
背中を向けた住民たちへ、まだ息のある虐一は言った
「た、助けて、助けてくれよ・・・・・・」
ふり絞るような声で
「そいつらの中にも息のある奴まだいるだろ、
なぁ、ここまでやったんだもう十分だろ?」
住人たちは冷ややかな目で虐一を見つめた
「息があるって・・・・、こいつのことか?」
そしてまだ生きている虐待厨を虐一の前まで引っ張ってくると
目の前で頭を踏み潰した
「お前ら、なん、で、だ
こんなことして楽しいのかよ?」
住人たちはそれを聞くと顔を見合わせ
笑った
「そうだよ、自分らのルールこそ世界の心理だと思い込んで
狂犬同士で傷を舐め合う底辺どもが
現実に直面して絶望するのを見るのは大好きだ!」
かつて虐一らが被虐生物やその飼い主らに言い放った言葉を
多少のアレンジを加える形で住人たちは言い放った
「今なにもしていなくても、どうせ将来何かしでかすからな」
「だな、良い虐待厨は死んだ虐待厨だけだ!」
次から次へと、住人の口から出る暴言
それはすべて、虐一を含む虐待厨の口からかつて出た言葉だった
「すいません、保健所です」
「お、来たか!
こっちです」
住人の案内でやって来た保健所の職員たちは周囲を見回して言った
「いやぁ、これは酷いですね」
それに対して虐一は言った
「そ、そうだ、こいつらまるで悪魔・・・」
その言葉に被さる形で
「害虫どもがこんな数集まって蔓延っていたとは
我々の目の不行き届きです
いや、実に申し訳ない」
保健所職員は住人たちに謝罪した
「いえ、お気になさらず」
「人間なら誰しも見落としはあるものです」
その職員を住人たちは労った
「あ〜、こいつまだ生きていますね」
別の職員は袋に入れられ動く虐待厨を袋ごしに蹴飛ばしてトドメを刺す
その向こうでは虐待厨の入った袋をワゴンの後部スペースに放り込む職員もいた
「では、こいつはこちらで引き取りますので
殺処分で構いませんね?」
「はい、お願いします」
処刑宣告を聞いた虐一は出口まで這って逃げようとしたが
住人たちに踏まれて押さえられた上に手足を踏み折られて自由を奪われた
「あれ、そいつ生きてるんすか?」
「ガスがもったいない、このまま焼却炉に放り込むぞ」
最悪の末路を虐一は聞きながら、しかしどうしようもできなかった
「なんで、なんでこんなことに・・・」
虐一は袋の中で燃やされるまで涙した
最後の最後まで自分たちのしたことが招いた結果なのだと
悟ることのないまま
(おわり)
348
:
言葉の循環2 1/2 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2023/05/30(火) 14:39:03 ID:jj1onTHg0
「そうか、失敗か」
「はい、『また』です」
ここは公的機関の建物の会議室
そこでスーツに身を包んだ男女が議論をしていた
「虐待厨には学習能力が無いのは分かっていたが
リーダーの個体までもそうだとは、な」
彼ら彼女らの頭を悩ませているのは急増する犯罪だ
それも虐待厨によるものが99%以上を占めている
もちろん犯罪をしでかした虐待厨に人権など無い
警察に引き渡すまでの間に必要ならば手足を引きちぎってダルマにしても罪には問われない
殺したとしても過剰防衛どころか殺人罪すら適用されない
蚊を叩き潰しただけで罪に問うなどバカげたことだという認識だ
しかし、駆除しても駆除しても湧いて出る虐待厨とのイタチごっこに
業を煮やした議員たちは考えた
そして、一つの結論に至った
「やつらのリーダーを敢えて残すのはどうだ?」
様々な検証や『動物実験』の末
虐待厨は群れる習性があることが判明した
その中でもリーダーになった個体は他よりも高い知能を持っている
また、世渡りできる程度には考える頭があった
事実、雑魚虐待厨はすぐに殺せるが
リーダー格の虐待厨は隣町に逃げるなど知能を働かせて死期を伸ばす知恵があった
だから、このリーダー個体を教育して放てば犯罪は減る
そう考えられていたのだが
「俺は特別な存在だ」と、リーダー個体は例外なく増長した
議員たちの思惑とは真逆に、リーダーの指揮で統制された犯罪集団が生まれた結果に終わるばかりだ
取り締まる側からすれば、まとまっている分その対応がしやすい
また、リーダーが禁じている行為をザコどもはせず、
やらかす奴は内部で粛清されるから総量としては仕事は減ったものの、
当初の目的である『犯罪撲滅』からは程遠い状況だった
すべてのやらかしが内部粛清で未然に防がれるわけではなく
さらに悪いことにリーダーの指示で隠ぺい工作が為される本末転倒の例も発覚した
「そもそも、生かす方向でしたのが間違いじゃないか?」
一人の議員が沈黙を破った
349
:
言葉の循環2 2/2 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2023/05/30(火) 15:04:31 ID:jj1onTHg0
会議から数日後
「お〜、集まってきてくれたか」
ここはとある広場、リーダー個体によって虐待厨が多数集められていた
「じゃあ、あそこのバスに乗ってくれ」
リーダー個体は職員の指示通りに仲間をバスに乗せ
自分もバスに乗った
「あいつリーダーになって何日だっけ?」
「たしか一週間だったか?」
「短い期間だけど、結構な効果はあるんだな」
職員たちはバスの外でそんな会話をしていた
バスはAI制御で運転されている
中にいるのは虐待厨だけだ
彼らはこれから自分たちが『愛護の拠点へ襲撃をかける戦士たち』だと
信じて疑わない
確かにその情報に嘘はない
いや、最初から彼らに嘘の情報は渡していない
相手を信頼させるには例え虐待厨相手であろうと、「騙す」は悪手なのだ
同じようなバスはあちこちで走っていた
彼らはこれから『対虐待厨委員会』の拠点や戦闘ロボの実験場といった
『戦闘データが必要な施設』へ送り込まれる
「着いたぜ!」「ひゃっはー! クサレアイゴども覚悟し・・・」
広場から出発したバスは予定通り『傭兵の訓練所』へと着いた
虐待厨たちの望み通り、そこは『アイゴの巣』だ
ただし、武装していないわけがない
「訓練通りやれ! 一番のスコアを挙げたやつには褒美をくれてやる!」
教官の檄が飛び訓練生たちは実弾の入った銃を手に走り出した
虐待厨が威勢が良いのは最初だけだった
もちろん相手に武器がなければ実践想定の訓練にはならないので
虐待厨にも非殺傷とはいえ武器はある
ただ、『無抵抗の相手をいたぶる』前提できた彼らには覚悟がなかった
一時間ともたずに虐待厨は全滅した
「よくやった! 貴様らはもう立派な戦士だ!!」
卒業試験を一人の脱落者も出すことなく終えた訓練生たちを教官は労った
卒業を喜ぶ訓練生たちの背後には、骸と化した虐待厨たちが転がっていた
議会では、打って変わって各所からの報告に議員たちは満足げだった
「やはり、一網打尽が一番だな」
これは、計画的な『釣り』だった
リーダー個体にその区画の虐待厨をまとめさせる
それも、襲撃に参加するような「攻撃的な問題のある個体」を集めさせ
一気に殲滅するために
襲撃に加わらなかった個体は問題さえ起こさなければ生存は許される
ただし・・・・・
「わ、わざとじゃねぇ、ちょっとぶつかっただけ・・・ぎゃあ!?」
ほんの少しでも問題を起こせば即処分される掟だ
後年、リーダー個体の確保も面倒になってきたために
処分した虐待厨からクローンが形成され放たれることになった
クローン虐待厨は教育された通りの行動を行ってくれた
自分が処分されることすらも文句言わずに淡々とこなした
やがて、クローン虐待厨はリーダーだけでなくその下の構成員役もこなすようになった
表向きは戦力の拡充、実態は問題ある非クローンの処理だ
今まで庇われることが当たり前だった虐待厨どもに、これは効果覿面だった
問題ある虐待厨を駆逐するため、今日もバスは走り続け
クローンは増え続けている
(おわり)
350
:
罪悪の行進 1/2 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2023/06/03(土) 12:58:45 ID:yIwO42zs0
ただ一つの言葉だけを唱え続け行進する一団がいた
「罪には悪を!」「罪には悪を!」「罪には悪を!」
その集団がどこから来たのかは分からない
しかし、彼ら彼女らは服装も髪型も武器も種族すらバラバラで
中には虐待厨から「ヒギャクセイブツ」と認定された種族もいる
その集団が通過した後には虐待厨とそのシンパの惨殺死体のみが残っている
これだけが確実に知れた事だった
ここは、その集団が向かう先にある小さな町
「うう・・・こんな、こんなことが・・・」
スーツ姿のギコは項垂れていた
目の前には墓がある
そこには彼の先祖だけでなく
彼の妻子と弟も入っていた
「しぃだから」「ベビギコだから」「ベビしぃだから」
そんな理由で彼の妻子は殺された
警察も対応せず、それどころか文句を言った彼の弟は
その場で射殺された
裁判を起こしたがろくな審議もなく敗訴した
彼の両肩には裁判の費用と「虐待不敬罪」による罰金が
重くのしかかっている
また別の場所
息絶えた小さなタブンネがいた
その前で力なく項垂れる少年がいた
遠くへ笑いながら立ち去る虐待厨がいた
少年はタブンネの遺体を抱えた
「そんなばっちいもの早く捨てろ!」
「おまえもどっか行っちまえ!」
一部始終を見ていた群衆から罵声と石が飛ぶ
「殺してやる・・・」
少年は群衆に背を向けて立ち去った
さらに別の場所ではちびしぃが銃を乱射していた
「あはははははは!!死ね!死んじゃえ!!」
彼女は「ちび園」のボランティアで
ベビやちびたちのお姉さんだった
しかし、園に侵入した虐待厨によって
同僚も妹弟たちも殺された
ちびしぃ一人だけが生き残ったのは隠れていたからではない
キレた彼女は積み木で虐待厨を撲殺
虐待厨が息絶える前に通報で駆け付けた虐待委員会の一団と
交戦状態になった
武器は虐待厨が持ち込んだものだ
もちろん弾ももうすぐ尽きる
それが自分の最期だと彼女はわかっていた
しかし、一人でも多く道連れにしてやる覚悟も決めていた
「うわ!?」「ぎゃあ!?」
351
:
罪悪の行進 2/2 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2023/06/03(土) 13:00:40 ID:yIwO42zs0
ちびしぃが最後の弾倉を機関銃にセットした時だった
虐待委員会の一団に真横から団体が乱入してきたのだ
「罪には悪を!」「罪には悪を!」「罪には悪を!」
てんでバラバラのデモ隊のような集団は
ただ唯一共通するその言葉のみを唱えながら虐待厨たちを蹂躙した
その攻撃方法も異様だった
ただ通過するだけだ
先頭集団が一旦割れて虐待厨たちを挟む
通過後に先頭集団は一つに戻り虐待厨たちは囲まれる
周囲から伸びた手足や凶器が虐待厨たちの歩行能力を奪い地面に倒す
あとは後続が、ただその上を踏みしめながら通過する
それだけである
しかし、大勢の人々が意図的に踏みしめながら通過するのだ
通路になった虐待厨たちは、ひとたまりもない
瞬く間に、虐待厨たちは地面の染みと化していった
「大丈夫・・・じゃ、なさそうだな」
ちびしぃのところに団体から離れた つーが駆けつける
「・・・ひでぇこと、しやがる!」
つーは中の様子を見ると激怒した
ちびしぃの手から機関銃が落ちた
こんな当たり前の反応をしてくれる存在はこの街の住人にはごくわずかだ
誰もが見て見ぬふりをするか虐待厨たちに迎合するかだった
そして、ちびしぃの張りつめていた糸は切れた
ちびしぃは号泣した
「罪には悪を!」「罪には悪を!」「罪には悪を!」
その集団を止める術は町には無かった
先頭はガードの堅い、いわゆる「盾役」「タンク」を担う者たちが固めている
飛び道具は防がれ、大砲すら無意味だ
彼らの頭上を飛び越える武器は、すぐ後ろに控える撃墜役が阻止した
接近戦を挑めば、転ばされて後ろに続く集団に踏みしめられるだけである
例え建物に逃げ隠れしても、建物そのものを破壊され引きずり出された
あるいは建物ごと潰されるだけだった
虐待厨たちを見て見ぬふりをしていた人々も同様だ
虐待厨たちだけが被害を受けるだろうと安心しきっていた彼らは
自分たちまでまんべんなく災厄に見舞われることになった
半日と経たず、その町は踏み均され瓦礫と血の染みの大地と化した
「罪には悪を!」「罪には悪を!」「罪には悪を!」
破壊と殺戮の痕跡を振り返ることなく集団は突き進んでいく
ただ、その数は少し増えていた
新しく集団に加わった人々の中には
妹たちを殺されたちびしぃやタブンネを殺された少年、スーツ姿のギコも加わっていた
子供を目の前で殺されたしぃ、家族同然の相棒を殺された元トレーナー、姉たちの死体に守られ命を拾った妖精
そういった者はこの集団では珍しい存在ではない
虐待厨たちに大切な存在を、あるいはそれを含むすべてをかつて奪われた者たちの集団
彼ら彼女らの終点はどこなのか、誰も知らない
(おわり)
352
:
最後の階段 1/3 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2023/07/23(日) 17:01:35 ID:NQXSevP20
「1番、出ろ!」
足に枷と錘を
手には手錠をかけられた虐待厨は、虚ろな目で相手を見た
逆らっても無駄だということは、すでに暴力によって体に叩き込まれ済みだ
のろのろと立ち上がり、相手が開けたドアの外へ出る
この部屋に戻る事は二度とない
振り返ることなく虐待厨1番は外へ出た
ついでに言うと、この番号は捕まった時に付けられる番号札で区別されている
番号札は使い回しされているため、すでに幾人もの虐待厨の血で汚れていた
この虐待厨は何人目の「1番」かはもう分からない
それほどの数の虐待厨がすでに殺されているのだから
1番は出口から差し込む太陽の光に目を細めた
ここに収容されて二度と拝むこと無く死んでいった虐待厨は少なくない
そして、これを拝むことができた虐待厨もまた寿命は残り数分程度だと言われている
1番が連れ出された場所は、外だが娑婆ではない
逃走防止のための武装兵士が配置され
奪還を目論む虐待厨を発見し殺すための武装ドローンが警備し
大勢の人々が観客席にいる場所だ
この場所は、見世物のための処刑場なのだ
「殺せ!殺せ!殺せ!」
観客は誰もが憎悪と怒りを顔に張り付かせ、1番の死を声高に要求した
1番は背後から職員に小突かれながら所定の位置まで歩かされた
その後ろのディスプレイには1番の罪状が映っていた
『・動物型妖精の誘拐並びに虐待目的での飼育
・出産した動物型妖精の子供の殺害(多数)
・利益目的での動物型妖精の売買
・妖精のパートナーへ虐待動画を送る精神的加害行為』
全てが本当のことであり、それをしたために1番は捕らえられた
その際に1番の親友や家族はその場で悉く殺された
売買に加担した虐待厨も同様である
犯罪には人間も加担していたが、
彼らは特級の重犯罪者として一生を刑務所で過ごす事になっている
「てめぇら虐待厨は生きてるだけで罪なんだ!!」
「返してよ!
あんたたちが殺したあの子を返してよ!!」
「あいつがくたばったのに、なんでお前らは笑って生きてられるんだ?
苦しんで死ね、地獄から天国のあいつに詫びろ」
観客の中には、虐待厨の犯罪被害者が少なからず居た
それは警備の兵士や職員も同様だ
もし、脱走を試みれば処刑方法が彼らによるリンチになるだけだ
つまり観客席に逃げ込んでも観客が処刑執行人になるだけであり、
殺しの素人である彼ら彼女らによる死は長い苦痛が約束されている
反対側の壁の向こうは武装した警備や兵士がいる
わざと低く設置され鉄条網すら無い壁は
そうした『無駄なあがき』をする虐待厨を殺すゲームのために設置されたものだ
この場で確実に楽に死ぬ方法は、大人しく処刑されることだけなのだ
353
:
最後の階段 2/3 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2023/07/23(日) 17:04:46 ID:NQXSevP20
ふと、1番は処刑台に違和感を感じた
近くに転がっているゴミ袋とは明らかに違った
何かが転がっている
しかも音を出している
「おいおい、まだ生きてるのかよ?」
処刑人が呆れたようにそいつを蹴飛ばして転がした
「トドメを刺しますか?」
「いや、いい、死ぬまで苦しませてやれ」
1番はそれが、つい先ほどまで処刑されていた
別の虐待厨だと悟った
手も足もない、胴体と頭だけのどす黒く変色したそれが
どんな責め苦をこの場で受けたのか・・・・・
1番は一週間前から連絡が取れなくなった友人を思い出した
「こ、ろ、し・・・」
「いや、生きろ」
職員たちはその変色虐待厨の手当てを始めた
「お前の処刑はあと99回は残っているんだ
まだ死ぬなよ?」
どんな罪を犯せばそんなことになるのか、1番には分からない
「住居不法侵入に強盗致傷、『飼い殺し』ときたら
これでも生ぬるいほうだぜ」
職員の一人のつぶやきが1番の耳に入る
1番はそれと自分の罪を比較した
あまり大差はない
逃げて殺されたほうが楽だろう
1番はそう思った
思った以上決断は早かった
「あ、こいつ!!」
観客席側に向かって走る
しかし途中で何かに足を掴まれて転倒した
「だ・・・・げ・・・・・で」
自分の足を掴む奴を見て1番は悲鳴を上げた
それは今までゴミ袋と思っていたものだった
でも、違った
それはゴミ袋ではなく、全身をどす黒く変色させた虐待厨だった
「なんだ、そいつが気になったのか」
追いついてきた看守が1番の後頭部を殴りながら言った
「そいつは、元預かり屋だ
正体を隠して客から家族の命と金を巻き上げていたヤツだ」
「すぐに死なないように処置してあるけどな
しかし、しぶといなぁ
親族もグループも、全員地獄に行ってるのによ」
1番は処刑台に引きずられながら周囲を見た
岩だと思っていたのは全身をコンクリートで固められた者
落ち葉から突き出ている腕、生きたままプラスチックで固められ樹木になっている者
処刑場とは、処刑を行う場所だ
これが彼らの処刑ならば何ら違和感は無い
彼らの処刑は執行中であり生きて出ることは不可能なのだから問題ない
354
:
最後の階段 3/3 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2023/07/23(日) 17:06:26 ID:NQXSevP20
1番はもう他人の心配をする余裕は、なくなっていた
ディスプレイには罪状に『脱獄未遂』が追加されていた
「生かせ!生かせ!生かせ!生かせ!生かせ!」
入ってきた時とは真逆の言葉が観客から浴びせられる
それは決して慈悲ではない、逆だ
この場において速やかな死ほど救いは無いのだから
「まぁいっか、どうせこれってすぐ死ぬ奴じゃねーし」
「延命処置を入れれば同じだよな」
死刑執行役はそんな会話をしながら1番に歩み寄った
両手足を縛られた1番は、もう動けない
「じゃ、まずは腕と足をゼリーにして
そんで点滴と薬物を投与しつつ治った骨を折り続けようか」
一人がそう言うと、死刑執行役は交互にハンマーを振り下ろした
1番の絶叫が刑場に響き、観客らの心を潤した
死刑執行役はそれを感じ取ると、
彼ら彼女らの望み通り長く苦しむ場所にハンマーを振り下ろし粉砕していく
やがて1番は全身の骨を砕かれたが生きていた
いや、生かされていた
先に処刑された虐待厨たちが、くたばった後も3年も生き延びた
その死因は、たまたま起きた地震で生命維持装置が壊れ
外れたチューブから体内のモノが噴出しまくったことによる空洞化死だったという
(おわり)
355
:
うまれたもの 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2023/08/08(火) 14:46:46 ID:knsUrE/s0
「た、助けてくれ、なぁ、頼むよ!」
「このケガを見ろよ、もう何もできねぇよ!」
「救急車を、早く・・・」
口々に言う虐待厨を、女は文字通りゴミを見る目で睥睨した
そして、カバンから取り出したペットボトルのフタを開けると
そのまま動けないゴミどもに放る
「な、なんだよこれ、水じゃねぇな・・・?」
女は返答代わりにマッチを擦って火をつけ、放った
「ぎゃあああああああああああ!!!」
気化していたガソリンに引火し、虐待厨たちは火に包まれる
そいつらが全員絶命するのを見計らって、
女は消火器を使い火を消した
そして死体をゴミ袋に入れると乗ってきたワゴン車の後部に放り込み
自分も乗り込んでその場から去った
「また、か・・・!」
虐待厨の本部アジトは、支部がまた潰されたニュースで戦々恐々としていた
事件はすでに3年以上継続していた
警察の動きも鈍く、犯人はまだ捕まっていない
虐待厨に恨みがある者の仕業だと思われていたが
駆除組織をマークしても全くその犯行の動きがなく
ただただスパイとして潜入した虐待厨が殺されて消されるのを繰り返すだけだった
「あのアイゴどもじゃ無いとしたら、誰なんだ?」
虐待厨に恨みを持って報復に出る一般人は少なくない
しかし、犯行のどれもが素人のものではなかった
5分以内にアジトの規模に関係なく皆殺しにして
死体を残さず回収し、撤収する鮮やかすぎる手口
防犯カメラに映ったのは、「被虐生物」認定されている妖精の特徴である髪飾りを頭に付けた
レザースーツで全身を包んだ長髪の女だけだった
「個人でやるのは無理がある、フェイクだろ」というのが
その唯一の証拠に対する虐待厨たちの見解だった
「あのアイゴどもが何の関係もないわけがない!
よし、来週には奴らの巣に突撃するぞ!!」
虐待厨の長はそう締めくくった
その「来週にやる」という発言は実は先週も発せられていた
さらに、その先週にも
言うだけで実行しない、後回しになるうち会議の締めの定型句となっていたソレは
この時ばかりは違った
・・・・・・・・・
「来週には奴らの巣に突撃するぞ!!」
虐待厨の本部に仕掛けられていた盗聴器は
その発言をしかと拾い上げて駆除業者の耳に入れていた
「よく教えてくださいました、感謝します」
度々繰り返される虐待厨のスパイ行為に頭を悩ませていた
虐待厨駆除業者『ギャクバスター』の社長は、前の女性に礼を述べた
これだけの証拠があれば、依頼抜きで駆除作業ができる
駆除業者といえど企業という体裁である以上、
依頼などの理由なしで手当たり次第に駆除ができないのが実情だった
なお、彼女はこの企業の社員ではない、外部協力者だ
それも、このニュースをつい先ほど持ってきたばかりの
完全なフリーランスで報酬も最低限しか受け取らないことで知られている
名前のない女
ただ、虐待厨を見かけ次第に抹殺することで知られてもいた
かといって、それが憎悪に基づくものかというとそうでもない
彼女は確かに虐待厨を惨殺するが、機械的なものだ
時には、あっさりと虐待厨を殺すこともある
『ギャクキラーガール』の名前で
いつしか彼女は有名になっていた
「では、お願いします」
今日の彼女は依頼人だった
それも、ギャクバスターにとって渡りに船の獲物を狩る依頼だ
たとえ一円であっても引き受けていた案件を
女はものすごい高額の報酬を持ち出して申し込んできた
(さすがに法外なので、定められた金額のみ支払ってもらうことになったが)
「はい、お任せください!」
数時間後、虐待厨の本部アジトはギャクバスターにより全滅することになった
女はそれを遠くから双眼鏡で見届けると、興味を失ったように場を後にした
『ヒギャクセイブツは生きてちゃいけねーんだよ!』
『ヒギャクセイブツと仲良しとか、いけねーお嬢ちゃんだ!』
『悪い子悪い子悪い子』
まだ子供だった頃に家族同然の『友』を失った事件
それが女の一生の生き方を決定した
『虐待厨は生きていちゃいけない』、それが女の唯一の信条だ
だから、虐待厨は見かけ次第殺している
そいつが何をしていたか、何の罪を犯したかなど関係ない
一切悪さをしていなくとも問題ない
虐待厨というだけで、殺さなければならないのだから
それが正しいことなのだと、
あの日に虐待厨は教えてくれたのだから
「キリがないわね、ホント」
寡黙な女はワゴンに乗り込みながら呟いた
あの日、虐待厨の行動で生まれた
虐待厨を殺すため活動を続ける名前のない怪物
その頭には、あの日に失った『友』の形見が今日も揺れている
(おわり)
356
:
黄金期の終わり 1/2 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2023/10/10(火) 18:09:53 ID:u0ldGTNY0
ここは、とある国のとある町
「撃て撃て撃て!」
「奴らは人ではない!
ダニ未満の害悪だ!」
マシンガンで武装した一部隊が集団を襲撃していた
よく見れば一方は人間ではない
人間に似た生命体『虐待厨』だ
どうしてこうなったのか、話は過去に遡る
ほんの一か月前まで、虐待厨にも人権はあった
しかしそれはあくまで『一線を越えてはならない』というルールを
虐待厨側が守っていたため辛うじて保たれていた慈悲だ
人々も虐待厨を嫌ってはいたものの、殺したいほど憎いかというとそうではなく
手さえ出してこないなら無視していた
近寄ってきても追い払えば良かった
しかし均衡は突如崩れた
「お前ら、アイゴなんかに従って悔しくねぇのか!?」
ある一人の虐待厨がリーダーとして台頭したのだ
その虐待厨は、かつての虐待厨の歴史を賛美していた
飼いに手を出し駆除されたというバカすぎる失敗なのだが
そのリーダー虐厨はその話を神格化し犯人を崇めていた
「あいつらなんか怖くねぇ!
オレが証明してやるよ!!」
こうして、終わりは始まった
リーダー虐厨は散歩中の人間を襲い『飼い』を殺した
それも非力そうな女子供を狙って
さらに、保護施設や研究所といった施設にもテロ行為を働いた
勇気づけられた虐待厨らも我先にと続いた
人々は彼らを認めていたわけではない、無視していただけだ
人々は彼らが自分たちに無害だと認識していたから放置していただけであり
面倒くさいものを遠ざけていた、ただそれだけのことだ
しかし、牙を剥いてくるなら話は別である
盗みだけでなく殺し、それも女性や子供を狙った悪質な犯罪行為は
瞬時に人々の怒りに火をつけた
人々は虐待厨を嫌ってはいたものの、殺したいほど憎いわけではなかった
虐待厨が人間に手を出すその時までは
かくて人々に残されていた慈悲は霧散した
虐待厨は駆除対象として認識・認定され、虐待厨が知らない間に包囲は完成していた
「ヒギャクセイブツなんかと遊ぶ悪い子は」
パン!
「こちらベータチーム、子供を襲っていたムシを一匹駆除しました!」
人々を襲いに行った仲間が帰ってこないことに虐待厨らが気づいた時には
後の祭りだった
生け捕りにした個体から凄惨な拷問で口を割らせて引き出した情報をもとに
やがて、一斉駆除は始まった
人間を襲っていたとはいえ自分より弱い者たちにしか手を上げないクズどもが
日々の訓練で鍛え抜いた屈強な軍人に勝てるはずもない
たちまちにして、虐待厨は総崩れになった
一方的な虐殺の中でリーダー虐厨は捕らえられた
しかしそれで作戦は終わりではない
この作戦は『根絶』こそが目的だ
敵をせん滅し、初めて成功に終わる
害悪テロリストに認定されて3時間で虐待厨の一番大きな群れは終わった
リーダー虐厨は裁判にかけられた
判決は無罪
裁判長曰く
「この法廷は人間を裁く場であり、害虫を裁く場ではない」
リーダー虐厨は安堵の表情で勝ち誇り、罵詈雑言を吐き散らしながら
保健所へ送られた
自分が自由の身になると最期まで信じていたそうだ
その『処理』は裁判を含め全国ネットで中継された
虐待厨は、ようやく自分たちの置かれた状況に気が付いた
だが、もうどうすることもできない
人々の怒りは憎悪は、大きく燃え上がり世界中に燃え広がっていたのだ
357
:
黄金期の終わり 2/2 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2023/10/10(火) 18:12:14 ID:u0ldGTNY0
その後の一か月間で国中の虐待厨が同じように駆除された
軍人だけでなく一般市民による駆除も推奨され、
死体を持って保健所に行けば報償が貰える仕組みがいつしか出来上がった
冒頭に戻る、最後の群れが軍に追われているところだ
この群れのリーダー虐厨は『無間地獄の刑』を言い渡され、人々が好きな時に好きな苦痛を与えられるよう
虐厨の醜悪さ害悪さを記録した記念館の中で生かされ続けている
奪還計画はない、そんな余裕などない
本気になった人間たちを前に割り算や乗数の逆のような絶望的な減り方をした虐待厨は
いつしか自分が生き残ることに必死になっていった
「行けえ!」
「いやだぁ!!」
現に、この非常事態の最中にもかかわらず、虐待厨は別の虐待厨を捕まえて
部隊のほうに放り投げようとしていた
強い個体は弱い個体を放り投げる、自分だけでも助かるために
当たり前だが、それは単なる寿命の先延ばしに過ぎない
それもほんの数秒である
「待ってくれ、降伏する!」
両手を上げて立ち止まる虐待厨が現れだした
しかし返答は決まっている
鉛玉だ
ゴキブリをわざわざ捕虜にする駆除業者などいない
「クリ・・・?」
言いかけた兵士は気づいた、すぐ横に倒れている虐待厨が動いたことに
『オレは死んでるぞ、早くどっかに行』
パン!
「クリア!」
頭を撃ち砕き今度こそ兵士ははっきり宣言した
わずか3分で虐待厨の最後のグループは消された
それからさらに半年が経過した
その頃にはもう、虐待厨の中に過激な行為をしようと思う者はいない
テストに失格した許可証無き者は生存権すら無いからだ
人々どころか「ヒギャクセイブツ」も襲わない
居住を許された場所は厚く高い壁に囲まれ、その中には虐待厨しかいないからだ
壁の外に出たいと思う者は少なくない
しかし、口に出しただけでも警備ドローンに聞かれてしまえば
すぐに駆除ドローンが駆け付けてそいつを駆除した
虐待厨は壁の中に入ることは許されても出ることは許可証があっても決して許されない
人々は彼らが犯した罪を決して忘れないからだ
「オレたちの権利は、どうなっちまったんだ?」
そう問いかける虐待厨もいたが、その答えは「自分たちで勝手に手放した」としか言えない
ついこの前までは確かにあった自由も人権も、今の虐待厨の手には無い
いつしか当たり前の自由と人権があった時代は『黄金期』と呼ばれ
害虫未満に身を落とした虐待厨たちは、
ずっとその過去を振り返り渇望しながら生きていくことになる
自分たちが手放した、二度と帰らない「この世の天国」だった時期を
(終わり)
358
:
未知との初対面 1/2 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2023/12/08(金) 16:37:55 ID:WwJCOI6Q0
虐待厨の虐史は閻魔大王の前にいた
彼は言うまでもなく死んでいた
しかし、罪状が異常だった
「どういうことだ?」
虐史は閻魔に問いかけた
「身に覚えがない、と言いたいのか?」
閻魔大王は虐史を見下ろしながら言った
その恐ろしい顔と巨体は恐怖の対象ではあるが
それが気にならない程度のことが虐史に起きていた
「被虐生物なら飽きるほど殺したことは認めるよ
けどな
『地球上の人類をすべて殺した』とかありえねーだろ!?」
そう、虐史にかけられている嫌疑というか罪状は
『人類抹殺』だった
閻魔大王は顔をしかめた
この男は嘘を言っていない
しかし罪は事実だ
「いいだろう、これを見るがいい」
そう言って閻魔大王は巨大な鏡を指さした
そこには生前の虐史が映っていた
「お、珍しいのいるじゃねーか!」
虐史はその日、虐待対象を物色して街を歩いていた
変わった小さい生物を見つけたのは
その日の夕方ごろだ
ピンク色の、フワフワした生き物
親子なのか、二匹が並んで散歩していた
普通なら愛でる対象であるはずのそれを
「ひゃっはー!!」
虐史は踏み潰した
「ピィ!」
それだけで死ななかったのか、悲鳴を上げて訴えるが
「おら!」
トドメとばかりにその生物を踏みにじった
「びーびー!」
「お前もだよ!」
抗議の声を上げた親らしい一回り大きな個体には蹴りを見舞った
「ガガガガガガガガガ!!」
生き物にはありえない電子的な発声をした後で
それは溶けた
「くたばったかwざまあw
さーて、まだそのへんにいるかな?w
アイゴどもに見つかる前に絶滅させてやるwww」
映像は虐史の後ろ姿を映すが、まだ終わらない
虐史が去っていった後、あの生物の死体を映し続けている
突然、その死体が起き上がって空中に浮かび、合体した
それは、真っ赤に点滅しながら空に浮かんでいった
一定高度まで浮かび上がると、停止して点滅を継続する
「よく見るんだな、自分がしでかした事の顛末を」
閻魔大王がそう言い終わった直後
すべてが変わった
人間だけじゃなく、動物も植物も
すべてが消えた
アリ一匹、画面内にいない
359
:
未知との初対面 2/2 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2023/12/08(金) 16:38:51 ID:WwJCOI6Q0
「分かりやすくしてやる」
さらに場面は移り変わる
宇宙空間、そこに浮かぶ球体に画面が近づいていく
「第三惑星の浄化、完了しました」
「宇宙に出てくる前に始末できてよかった」
「もしも出てきていたら、我々も無事では済まなかったでしょうね」
見たこともない異形たちが、球体の中でそんな会話をしていた
それが、彼らの船なのだと虐史にも分かった
「これで、自分が何をしでかしたか理解できたか?」
声とともに映像が終わり鏡が元に戻る
「お前が攻撃した生物は、あの異星人たちのテスト用のロボットだったのだ」
知的生命体を察知したら、ドローンを送り込む
その科学力を調査し、性格を傾向を徹底的に調べる
自分たちに危険な行為をする奴らが出てくる前に、その芽を摘むために
「け、けど、こいつはオレじゃなくて
この宇宙人どもがやったんでしょ?」
その一言を発した次の瞬間
虐史の足元が消えた
「救いようのない罪人め
貴様は二度と現世には戻せぬ
無に帰るまで無間地獄に居るがよい!」
落下していく虐史の耳に無情な裁きが聞こえた
長い年月が経過した後
虐史は地面に叩きつけられた
周囲を見ると、見覚えのある顔がいくつもあった
そのどれもが苦痛に満ちた表情を浮かべ
断末魔に似た叫びをあげる
虐史が目の前にいても、気づく様子はない
「おい、何をしているんだ?
お前はこっち」
やがて虐史もその仲間に入った
途方もない年月、宇宙が何周かしたのではないかと疑うような長い長い時間
虐史たちは、ずっと責め苦を受け続けることになる
無に帰るその日まで
(おわり)
360
:
推しの卵 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2024/01/08(月) 22:46:06 ID:rK3PGMA60
その妖精は町のアイドルだった
ある日、妖精は卵を産んだ
町の住人は喜び、その誕生を見守っていた
その日までは・・・
「みい!!」
朝早く、妖精の鋭く大きな声が響いた
住民たちは顔を見合わせ急いで妖精が住んでいる広場に駆け付けた
すると、その場で一人の虐待厨が妖精から卵を取り上げていた
「ラッキー、こいつは高く売れるぜ」
このバカはこう言っているが、
妖精の卵の取引や密猟はこの国では固く法律で禁じられている
発覚すれば実刑判決は免れない
むろん、虐待厨はその場で人権が停止されるので処分も許される
「おいやめろ」
しかし、住人たちはとっくに人権が停止したそいつに律儀に抗議した
「かわいそうでしょ!」
「返してあげて!」
その場で射殺することも許されている相手に対して
住人たちは、とっくに停止した権利がまだあるかのように人としての扱いを行った
「ち、分かったよ」
自分があり得ないほどの優遇処置を受けたというのに
虐待厨は不貞腐れた顔をして妖精に卵を差し出した
妖精は嬉しそうに両手を差し出す
「返すぜ!」
「ぎゃあ!!」
虐待厨は妖精めがけ卵を投げつけた
卵は割れなかったものの固い地面にぶつかってバウンドし、親である妖精に激突する
「何しやがるてめぇ!!」
住人の一人はついに激怒し虐待厨を殴り倒した
他の住人たちは妖精の周囲に集まり介抱を始めている
「なんだよ、返してやっただろ!」
虐待厨は抗議の声を上げたが、それは火に油を注ぐだけだ
「あんな返し方があるか!!」
「人でなし!!」
「なんだとアイゴども!!」
虐待厨と住人の口論が始まって数分後
殴り倒した住人がマウントポジションで倒れた虐待厨の顔面に拳を落とし続ける中で
卵にひびが入った
「卵が割れたらそいつを殺そうか?」
「当然だ、こいつに生きる権利はもうねぇ!」
その場で当然のように出た死刑宣告を、虐待厨は信じられないという顔で聞いた
本来ならとっくの昔に出ているものであり
今この場でまだ生きていること自体が住人たちの恩情であるなどとは
微塵も思っていない
「みぃ・・・」
弱々しい産声が聞こえた
「おい、生きてるぞお!!」
住人たちは歓喜した
虐待厨を放り出して全員が卵と妖精の周りに集まる
やがて、卵から小さい妖精の赤ん坊が出てきた
しかし・・・・・・・
「ギ、ジ・・・・・・」
卵から這い出た後、その命は失われた
叩きつけられた時すでに致命傷を負っていたのだ
それを見た親の妖精もまたショクで絶命した
人々は嘆き悲しんだ
そんな人々に虐待厨は
「ざまぁw」
嘲笑を投げつけた
さっさと逃げればいいのにその場に留まり続けたことが、運命を分けた
振り返った住民全員が鬼の顔をしていた
虐待厨はようやく事態を悟って逃げようとしたが、時すでに遅し
「捕まえたぞ!!」
住人に服の裾を捕まえられて虐待厨は引き戻された
「こいつめ!こいつめ!!」
今度こそ住人たちは虐待厨を取り囲んで袋叩きにし始めた
「この棒の先に生首刺して晒そうぜ!」
「いいアイデアだ!!」
一人が持ってきた廃材の棒を前に住人たちは同意した
「な、なに言ってんだよ
悪い冗談は・・・」
まだこの期に及んでも自分が殺されないなどと夢見ていた虐待厨は
直後に現実を見た
「いぎいいいいいいいい!!
ちぎれる!
首がちぎれる、やめろおおおおおおお!!」
力任せに胴体と頭を掴まれ、反対方向に引っ張られる
「千切れるじゃねぇ、千切るんだよ!!!」
「死ねや害虫!!」
数分後、大きな音を立てて虐待厨の首と胴体は永遠に分かれた
「あの子に手を出したバカの末路はこうだ!!」
宣言通り虐待厨の断末魔の苦悶の張り付いた生首は目立つ場所に晒された
「よくもあの子らを殺したな!!」
「いい気味だ!!」
「これで、浮かばれるといいな」
誰もがその虐待厨の生首に憎悪と怒りをぶつけた
そこへ・・・・・・
「ひでぇ」
「たかがヒギャクセイブツのクソベビ一匹に
そこまでムキにならなくても・・・」
通りすがった別の虐待厨たちがそうつぶやき、そそくさと場を後にした
それを、一部住人は聞き逃さなかった
3日後
さらに多くの生首がそこに晒された
その時には町に生きている虐待厨は一匹もいなくなっていた
(おわり)
361
:
地獄すごく変 1/3 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2024/03/28(木) 00:15:03 ID:y9hW/aws0
その日
「主文、被告を死刑に処す!」
虐厨の虐蔵へ、至極まっとうな判決が下った
「けっ、この国はクソだ!」
虐蔵は囚人護送車の中でつぶやいた
自分はただ『ヒギャクセイブツ』に本来の扱いを、
それを可愛がる間違った子供に「正しい教育」をしただけなのに
こんなことは間違っている
虐蔵は本気でそう思っていた
「こいつか、今日来る予定の児童殺傷犯とかいうのは?」
虐蔵は目を丸くして相手を見た
男の服装から看守だろうというのは分かる
だが、首から上は人ではない
鬼だ、しかしよく見るとそれはお面だ
今はハロウィンの時期じゃないし節分はとっくに過ぎている
何かイベントがあったかと、虐蔵は頭をひねって考えた
「確かに引き取りました、あとは任せてください」
「ええ、お願いします」
格好とは裏腹に、ものすごく丁寧かつ礼儀正しく
看守は警察から虐蔵を引き取った
「来い」
ただそう言われて虐蔵は看守の後を歩く
逃走防止の二重のドア、さらに向こうの頑丈な防音のドアをくぐる
その先には長い廊下が続いていた
「ぎゃああああ!」
虐蔵は逃走防止の手錠だけでなく、首には鉄の首輪がされ
「ひいいいいいい!」
それにつながれた鎖は看守の手の中だ
「ゆるじでえ、ぐあああああ!」
だがそんな事はどうでもいい
ある程度の広さの廊下を二人は歩いていた
その廊下は、左右の部屋から響く悲鳴で満たされていた
部屋と廊下の間は強化ガラスで仕切られているため、中は見えた
巨大な包丁で切り刻まれる者
体に描かれた線に沿って刃物を入れられる者
刃物が刺さった山に鞭で尻を叩かれ登らされる者
煮えたぎった赤い湯のプールに落とされ棒で叩かれ続ける者
思い描いていた刑務所とはまるで別の世界が、そこにあった
「お、おい、ここはどこだ?」
私語を慎めと怒鳴られることも覚悟していたが聞かずにいられない
予想外にも、看守は虐蔵の問いかけに怒らず答えてくれた
「どこって・・・見りゃわかるだろ
地獄だよ」
確かに見れば分かる
だが、虐蔵はそんな事を聞きたいわけじゃない
「ここは、刑務所じゃないのか?」
「だから、刑務所で地獄だよ」
看守は一呼吸おいてから続けた
「オレたちの仕事はお前を殺すことじゃない
痛めつけ苦しませることだ」
虐蔵は、わずかな法知識を手繰り寄せ反論を試みた
「死刑判決は、どうなるんだ?」
「ああ、どうせここから生きて出ることはできねーから
実質死刑で合ってるぞ」
「拷問は法律で禁止されてるはずだ!」
「てめぇ、まさかまだ自分が人間だと思ってんのかい?」
看守は心底呆れたことを隠さずに言った
「お前の人権は、とっくに無くなってるんだよ
いや、『自分で捨てた』が正しいか?」
問答をしている間にも、歩みは進められる
恐ろしいのは、奥に行けば行くほど責め苦の内容が
よりエスカレートしている事だった
362
:
地獄すごく変 2/3 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2024/03/28(木) 00:15:53 ID:y9hW/aws0
大きな串に刺され生きたまま火に炙られている者
裸で氷の世界に放り込まれ、看守が談笑している温かい室内を見せられる者
温かい食事を仲間と談笑しながら頬張る看守たちを
強化ガラス越しに見せられる、ガリガリに痩せこけている者
火炎放射器を持った鬼看守に炎で炙られ追い立てられる者
「地獄か、ここは・・・」
虐蔵は絶句して思わず呟いた
「言っただろうが、地獄だと」
同行している看守は呆れ気味に答えた
「あの、オレ、どこに行くことになるんですか?」
虐蔵の願いは、「できるだけ軽い部屋に入れられること」に変わっていた
もしも仏教に詳しい知識があったら、それは叶わぬ願いだと悟れたはずである
各部屋のガラスの前のプレートには、対応する仏教の地獄の名前が書かれていた
それは刑務所の入り口から奥に行くにつれ、重い地獄の名前になっていた
「安心しろ、もう着いたぞ」
そう看守が言った時には、彼らは廊下の奥の端に着いていた
「失礼します」
看守はノックをしてからドアを開ける
その向こうには白衣の人物が数人いた
「お疲れ様です、いつもありがとうございます」
「いえいえ、仕事ですから・・・」
そんな会話を聞きながら虐蔵は身震いしていた
どこの部屋に入れられるのか、まだ答えを聞いていない
「すいません、オレの部屋は・・・」
「ここだよ」
看守は答えた
虐蔵は胸を撫で下ろした
少なくとも先ほど見てきた責め苦は受けないで済みそうだ
そう思っているが、しかし
『無間地獄』というプレートがその部屋のドアにあるのを
虐蔵は見落としていた
「ではまず、耐久テストから始めよう」
「え」
看守の代わりに屈強な男が進み出て虐蔵の腕をつかんだ
「来いよ、ここに来たってことは相応の罪を犯したんだろ?
だからオレたちは容赦しねぇ
てめぇが奪った命に詫びろ、できる限り長く生きて償え!!」
363
:
地獄すごく変 3/3 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2024/03/28(木) 00:17:36 ID:y9hW/aws0
『無間地獄』または『阿鼻叫喚地獄』
地獄の最下層に位置する、最も重い罪を犯した罪人が落ちる場所
虐蔵が来たのは、まさにそこだった
ただし悲鳴は無い、いや、出せない
「実験動物に声はいらないな」「うるさいだけだしね」
真っ先に声帯を切除されたから
そこから先は、見てきたことがましと思える地獄だった
切り刻まれては治され、毒を投与されては解毒剤を打たれ
臓器を取り出されては別の臓器を移植され・・・
おおよそ人道に反する、あらゆる実験・研究がそこで行われていた
しかし虐蔵は虐待厨だ、それも死刑囚の
よって人権はすでに停止している、だから問題ない
「ったく、変なクスリばらまきやがって馬鹿どもが・・・」
「作った奴らの人権は、すでに停止したそうだ
じきにここに来る日も近いだろう」
「そっかそっか、じゃあアイツラで実験できるかもな」
虐待厨が『ヒギャクセイブツの駆除』を目的に定期的に薬剤を散布し
生態系に深刻な打撃を与えたり、人々やそのパートナーに害をなす事態が続出
深刻化していた
ここができたのも、そういう裏の事情があったためだ
そして職員のほとんどは、虐待厨による被害者である
パートナーを殺される、肉親に手を出されるなどされた者も少なくない
だからこそ、研究者や職員は虐待厨を人として見ることはない
人語を話すだけ、人に似ているだけの危険な動物というのが共通認識だ
虐蔵は10年以上も実験や研究に身を捧げた後、
死ぬことすらできない状態で『ストック』に固定された
ただ生かされるだけ、動くことすらできない毎日
唯一彼がここから出ることができる可能性は、
停電による生命維持機器の停止だったが
あらゆる可能性を想定し自家発電システムまで完備したこの施設で
それはあり得ない
「殺してくれ、おれを、ころしてくれ・・・」
前を通る職員に声を出せないまま、虐蔵は今も訴え続けている
(おわり)
364
:
虐の勝利者 1/2 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2024/05/22(水) 20:54:06 ID:gSSYnZ6Q0
虐成は虐待厨だ
しかし、他の個体よりも頭が良かった
拾ったノートPCで違法にネットをつなぎ動画を見たことで
彼の人生は変わった
「こんにちは、虐成神で〜す!」
彼は今や虐待動画の投稿者として名を馳せていた
実装石・ゆっくりetcと、対象は多岐に渡った
たまに外に出て『狩り』の生中継をすることもあった
当たり前だが、その目立ちたがり精神は彼の寿命を縮めた
映像からおおよその場所は特定され
『狩り』の最中に彼は捕えられ連れていかれた
これは、史上稀にみる『勝利者の虐待厨』の末路の物語である
「貴様のせいで、多くの罪なき命が失われた」
「希少種の中には、地域絶滅が確認されたものもいる」
「迷子の妖精や”飼い”たちまで手にかけていたな?」
「手にかけた命や、その遺族に対して申し訳ないと思わないのか?」
連行された先で早速、虐成は取り調べを受けた
虐成はしかし、胸を張って答えた
「ば〜っかじゃねーのwwwwwww
アイゴがいくら苦しもうと知ったことかwwwww
むしろゴミの駆除に貢献してやったんだ
ありがたく思ってほしいわwwwwwww」
いつもなら、ここでキレた虐厨ハンターが死ぬまで続く拷問を開始するが
今回は違った
それは、虐成がしでかした犯罪の種類が大きく関与していた
「貴様のせいで、泣いている遺族は少なくない
貴様のせいで、生き甲斐を失い自ら命を絶った人もいる」
「新しいペット買えよwwwww
そいつの惰弱はオレのせいじゃびょ!!」
とうとう我慢の限界に達した一人の拳が虐成の左頬を抉った
「よせ!!」
しかし、手を出した男を仲間と上司らしい男が制止する
「・・・・・?」
男は渋々、手を引っ込めた
虐成は訝しんだ
虐厨ハンターは、そんな甘い連中ではないはずだ
虐成ですら、こいつらを返り討ちにしない限り
生きて出ることはできないと覚悟してきている
(もちろん返り討ちにする覚悟のほうだ、殺される覚悟などしていない)
「アカウントの情報をよこせ
お前が広めた情報はすべて消す必要がある」
そろそろ部下たちも限界だろうと踏んだ上司らしい男は
そう切り出した
虐成がすぐに殺されない理由は、これだった
アップロードされたサイト運営に連絡しても、すぐに対処というわけにはいかない
当人のアカウントを利用して削除するのが一番早い方法なのだ
「これは、司法取引だ
素直に応じるなら減刑してやってもいい」
虐成の拡散した動画の影響はすさまじかった
それまで禁忌とされていた『飼いへの手出し』すら、今では平気で行われている
どころか、『ヒギャクセイブツ』に関与した人間への手出しまで起きており
死傷者がすでに出るなど、事態は深刻化していた
(もちろん、犯人虐待厨は捕獲後に嬲り殺しが作法とされている)
しかし、虐成は自分が有利だと知るや否や、こう切り出した
「へ、へへ、動画はもう拡散しまくって消せないもんね
オレの勝ち〜!」
虐成は自分のアカウントだけでなく、あちこちの無料サイトにまで
動画をアップロードしていたのだ
「つまり、生かす価値はもうないってことか」
絶対零度
声を上げた男の言葉の温度はまさにそれだった
「てめぇが選んだ道だ、楽に死ねると思うなよ?」
「あーあ、せっかく生きて出られるかもしれなかったってのにな」
虐成は自分の発言が何を招いたかを、理解した
すがるように男たちの上司を見たが
上司は首を横に振った
「好きにしろ、ただし殺すなよ」
365
:
虐の勝利者 2/2 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2024/05/22(水) 20:57:46 ID:gSSYnZ6Q0
虐成はあらゆる拷問を加えられ、ボロボロになった
虐成が拷問されている間もサイト運営会社への連絡や
虐成のパソコンを解析しての履歴の確認といった作業は進められた
しかし・・・・・
「分かった、お前の勝ちだ
オレたちはお前を殺すことを諦める」
一度拡散された情報は消すことは困難だった
「アイゴざまあああああああああああああwwwwwwww」
ボロクズ虐成は高らかに勝ち誇り、部屋中に虐成の笑い声が響いた
「その元気があるなら、まだ延命処置は可能だな」
部下たちに班長は冷静に告げた
「すべての動画を消し終わるまで、こいつを生かす」
「そういうことですね、すぐ用意します」
部下たちは皆、笑みを浮かべた
「は・・・?」
虐成は虐待厨だ
しかし、他の個体よりも頭が良かった
だから、言葉の意味を察するアタマはあった
「長生きしてくれよ、天才サマ?」
班長は満面の笑みで虐成に言った
あれからどれだけの月日が経過しただろう?
一年か、三年か・・・
それとも十年か?
虐成は一つの部屋の頑丈なベッドに縛り付けられていた
股間は排泄物を処理する装置につながれ
口からは訳の分からない、しかし栄養はあるドロリとした液体を管から流し込まれる
誤嚥を防ぐために管は直接食道に縫い付けられていた
両手足には点滴と輸血の管が刺されており、
髪の毛を含む体毛はすべて剃り落とされ永久脱毛処理済みだ
自殺を防ぐために舌は切除され歯もすべて抜かれ
さらに人工呼吸器まで取り付けられていた
「ぶぐおおおおおおお!!」
そして、時折激痛が虐成に走る
その原因は、体のあちこちに刺された針と
それにつながった管だ
管はそれそれが対応するボタンに伸びていて、
ボタンを押せば電流が流れ好きな部位に激痛を与えられるという仕組みである
技術革新が起きるたびに各装置は最新のものにされた
長い年月が経ち、拷問班も顔ぶれが次々と変わった
しかし虐成は変わらず縛られたまま痛めつけられ続けていた
「班長、例の動画が見つかりました」
「分かった、また十年ほど延命中止を延期するとしよう」
虐成自身が言ったとおりである
一度ネットに出たものはすぐには消えない
だから完全に消すのは不可能だ
そういうわけで、虐成はずっと生かされ続けている
「殺してくれ」と懇願することも舌を失った今はできない
自ら死ぬこともできない、そもそもここの者たちは許さない
唯一の望みだった「寿命」も、虐待厨の寿命を延ばす薬のせいで断たれた
皮肉にも、その薬の開発者は長生き願望を持つ虐待厨だった
いつしか、虐成は施設に常備されている名物となった
「こいつ、ずっと置きっぱなしですけど、なんすか?」
「さぁな、オレが新人の時からずっと置いてあるぜ」
虐成は、あらゆる実験が終わった後は、職員のストレス発散のおもちゃにされ
そしていつしか飽きられた
長い時間が経ち、いつしか彼が起こした事件は過去のものになった
彼のことを知る職員も、いなくなった
やがて・・・
「先輩、例の動画拡散事件が解決したらしいっすよ」
ついに虐成の待ち望む時は来た
部下へ後輩へ受け継がれてきた草の根活動が実を結び
虐成が拡散した動画が奇跡的にすべて削除完了したのだ
これで、楽になれる
虐成はそう思った
「いやぁ、本当に長かったわね」
しかし、職員たちは談笑しながら虐成からフェードアウトしていった
そう、もはや虐成がどうしてそこに居るのかも忘れられていたのだ
よって、動画の完全削除が為されたとしても
彼をこの世から解放する職員は、いない
ずっとそこにあるのが当たり前になっていたため
『目障りだけれど、管理しておかないといけないもの』という
惰性もすでに出来上がっていた
ここの職員は虐待厨に深い恨みなり嫌悪なりがある者ばかりだが、
かといって私情で施設の備品を壊すほどのバカはいない
ましてそれが長年施設に置かれている記念碑のような備品となれば、なおさらである
時代は進み、虐成のような境遇の虐待厨も増えていった
技術も進歩し、虐成らの世話はAIが全自動で行うようになった
そこにある理由も忘れ去られ、虐成は施設に生かされ続けた
彼らが楽になる時は
人類が滅びAIがすべて停止した時くらいだろう
(おわり)
366
:
害獣指定の理由 1/3 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2024/07/10(水) 19:25:48 ID:9.SGGXac0
「なんだよ、これは!?」
ここは、虐待厨の虐助の家だ
飼いゆっくりの誘拐事件が起きたために捜査班が結成された
そして捜査の末に犯人を突き止め、明け方に踏み込んだのだが
ちょうど犯人の虐助はビデオの編集をしている最中だった
「やめてね、れいむのお姉さんをいじめないでね!」
「だったら、言うこと聞くんだな」
動画の中で虐助は、誘拐したゆっくりを虐待する前にそう言い放ち
逃げる気力すら失わせていた
「おいてめぇ、どういうこったこれは!?」
虐助は虐待されて瀕死のゆっくり達を見て憤った捜査班の面々に
その場で殴る蹴るの暴行を加えられて素手のボロボロだったが
構わず動画を確認した班長は胸倉を掴んで問い質した
「裏で流通させようと・・・」
「んなこた聞いてねぇよ!!
こいつはお前がやったんだな!!?」
男の剣幕に、虐助は首を縦に幾度も振った
「このビデオは押収する
あとてめぇも来い、二度と娑婆に出られると思うなよ?」
もちろん『飼い虐待』という重大犯罪を犯した虐助は生かしておく道理などない
裁判を待たず保健所に送られ殺処分されるだろう
しかし、問題は虐助の起こした行動にあった
そう、「人間への加害行為を示唆する発言」だ
押収されたビデオは、対虐委員会の面々に衝撃を与えるに十分すぎた
虐待厨は今まで、『飼い』と連中が呼んでいる
人間の家族の一員だったりパートナーだったりする
『ヒギャクセイブツ』に手を出し、相応の地獄に送られることはあっても
はっきりと人間に対する加害行為を仄めかしたことはなかったからだ
理由は簡単、虐待厨が弱いからである
なんなら運動をろくにしていない一般人にすら負ける
しかし、このビデオの撮影者は明らかに
ゆっくりれいむのパートナーを殺害する意思がある
そう判断されるに足る言葉を口にしていた
ここまでなら「いつもの大言壮語」で済んでいたが、
ゆっくりれいむのパートナーが女児であることが判明したため
そうも言えなくなった
「あいつら、大人はともかく子供相手なら・・・」
委員の一人はそう口にしたが、最後まで言うことはできなかった
その危険性は考えなかったわけではない
そんなことをすれば、最大のヘイトを住人たちから買う羽目になり
自分はおろかグループ全体が刈り尽くされる
その程度の分別くらいはあるだろう、という思いが誰にもあった
しかし、その程度の考えすらない脳たりんなら?
やる可能性は、ある・・・・・・
367
:
害獣指定の理由 2/3 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2024/07/10(水) 19:27:11 ID:9.SGGXac0
会議は紛糾した
どうやって人間社会に対し直接的な加害行為を行う意図を持つ
危険な虐待厨かそうでないか、調べる術などない
かといって、被害が出てからでは遅い
「面倒だ、すべて潰せ」
三日にわたる議論の最終的な結論は、そうなった
しかしこれは、至極まっとうな流れである
今の今まで、社会に害なすゴミ種族が
かろうじて生きることを許されていたのは、
その矛先が人間に向くことが無かったからだ
しかし、人間に矛先をむけるならば別である
ただの害獣だ
元々、虐待厨は狂った思考を勝手に他人に押し付けて
他人に嫌がらせすることしかしない種族だ
「かわいそう」などと考える者は委員会に一人もいなかった
これは、当たり前の話でもある
人を襲う獣は社会から駆逐しなければならない
人肉の味を覚えた獣は駆除しなければならない
人間社会が存続する上での常識だ
こうして成り立ってきたのが人間社会なのだ
虐太は妖精専門の虐待厨だった
近くに妖精のパートナーがいようがお構いなしで襲い掛かるほど
凶暴な害獣だった
それでも、人間は殺さないように気を付けてはいた
(もちろん、パートナーへの手出しの時点で処刑はすでに確定だが
虐太は知る由もない)
「おらぁ!」
その日も虐太は、妖精の近くにいた女児を蹴飛ばして気絶させると
妖精を乱暴に掴み、駆け出した
程なくして銃声が轟いた
「ひぎぁあああああ!?」
右足がちぎれて、虐太は転倒する
「良かった、気を失っているだけだ!」
数人の若者が倒れている少女を介護していた
誰かが呼んだのか、救急車の音が近づいてくる
もちろん、虐太を乗せるためではない
「へ・・・?」
猟銃を持った男は冷たい目で虐太を見下ろすと
頭へ密着させた状態で引き金を引いた
「よしよし、もう大丈夫だぞ」
そして、力を失った手から捕まっていた妖精を救出する
「ぎべ!」
茂みの中から引きずり出された見物者の虐待厨は
即座に地べたに引き倒されて頭を踏み潰された
「こんなとこにもいやがったか」
「近辺の害獣はすべて駆除しろ!
危険なグループは根絶やしだ!!」
この日、虐太という虐待厨はこの世から消されたが
彼が引き起こした事件は、この先永遠に残ることになる
『決定打』という形で
368
:
害獣指定の理由 3/3 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2024/07/10(水) 19:27:47 ID:9.SGGXac0
虐助の動画と虐太の襲撃事件は世間を震撼させた
何より、虐太が逃げ足の速さで犯行を繰り返していた事実は衝撃を与えた
もちろん、事件を「取るに足らないこと」ともみ消していた
地域の責任者は責任を問われ、刑務所に収監された
そして・・・・・・
『特定不倶戴天害獣』という特別枠が害獣への取り決めに設置された
「虐待厨」はその枠に入れられた最初にして最後の生物になった
ほどなく、全国規模の虐待厨狩りが行われた
一年後、「特別区」を除いて虐待厨の居場所はなくなった
食料の供給だけが行われ、常に監視されるディストピアのような区画だ
しかし、外に出れば、即座に殺される
もはや「特別区」以外に虐待厨が生きられる場所などない
「どうして、こんなことになっちまったんだ?」
まずい配給を口にしながら、一人の虐待厨がつぶやいた
彼のつぶやきは、もっともであろうが
しかし、すべては虐待厨という種族全体が引き起こした数々の事件が原因だ
最初こそ甘い顔をしていた人々もいた
慈悲もあった
それらを失くしたのは虐待厨たち自身の数々の言動だ
「これは、お前らが望んで欲した罰だ、受け入れろ!」
同時刻、脱走を図り発見された虐待厨が同じ言葉を発したが
そう返されて射殺された
この世界の虐待厨に、未来などない
(おわり)
369
:
理屈とルール 1/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2024/08/14(水) 23:56:33 ID:rpzSplPA0
ここは、とある公園
「はい、また一匹♪」
「g、ぐげぇ・・・・・・」
虐待厨が一人の男に次々と吊るされていた
「なんでこんな事するんだよ・・・」
仲間が次々と目の前で殺されていく様を見せつけられた虐待厨は
逃げればいいのに腰を抜かしたまま、相手に向かってそう言った
「オレはお前ら虐待厨には、どこまでも残酷になれる人間だからだよ」
言いながら話しかけてきた虐待厨の首にロープを巻き付ける
「やめて、やめてくれよ・・・死にたく・・・・・」
その一言で、それまで笑みを浮かべて鼻歌交じりだった相手は
鬼の形相を浮かべ虐待厨を睨みつけた
「散歩に出て公園で遊んでいただけの、オレの魔理沙たちを
遊びで殺しといて、そいつはねーだろ?」
その時だった
「たかが、ゆっくり三匹潰しただけで文句を言うアイゴはお前か?」
「副会長!」
虐待厨は公園に来た初老の虐待厨に喜色の声を上げた
「・・・・・・・・・」
「ぎゃぶぇ!!」
鬼は無言で虐待厨の首を力任せにねじり切った
「貴様、オレの大事な部下をよくも・・・・・ぎゃぶ!!」
返答は無言の拳だった
一撃で副会長は鼻血を吹いて転倒し、後頭部を地面に打ち付けた
「げ、が、やめ・・・ぎぇ・・・」
顔面を鷲掴みにすると、幾度も頭を地面へ叩きつける
やがて声がしなくなり、固体の音が液体になり、
副会長の頭はこの世から永遠に消失した
鬼は副会長の服を漁ると、中から名刺を一枚取り出した
そこには、副会長の所属する虐待厨のアジトの住所が書いてある
鬼は嗤った
370
:
理屈とルール 2/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2024/08/14(水) 23:57:24 ID:rpzSplPA0
「やめろ、やめてくれえええええええ!!」
「やーだよ、ば〜か♪」
鬼による殺戮が虐待厨のアジトで吹き荒れた
次々と殺されていく虐待厨たち
鬼は決してまとめて殺そうとはしない
一匹また一匹と、丁寧に殺していった
「どうしてこんな事するんだよ!!」
「楽しいからに決まってんじゃん!」
その場にいる虐待厨の全員が「嘘だ」と思った
鬼は血の涙を流しながら、虐待厨を次々と手にかけていたから
「おまえーらが、オレのあの子らにしたことを
きっちり返しているだけなんだよな〜!!」
虐待厨達には、理解できなかった
彼らは自分たちの痛みには人十倍敏感だが
他人の痛みは旨いオカズとしか認識していないからだ
「地域ゆも飼いゆも、関係ない!
被虐生物は俺たちのオモチャだ!」
他の地域で聞かれたら即駆除モノの自殺じみたスローガンを
この組織は抱えていた
どうしてこれが許されたのかというと・・・・・・
「お、おい、オレらはこの地域に許されてるんだぞお!」
「そうだ、この地域の警察が黙っちゃいねーぞ!」
この勘違いだ
うっとうしいから無視されているだけなのに
彼らは勝手に自分たちの人間への優位性を頭の中で作り出し
それを信じて疑わなかった
さらに言えば、彼らに甘い顔をしていた地域のリーダーは
すでにその責任を問われ刑事罰が科せられていた
虐待厨たちの行動は度を越していたのだ
共犯者は裁かれねばならない、二度と娑婆に戻ることはないだろう
「そうか奇遇だな、オレも許されてるんだよ
基本的人権ってやつにな!」
鬼はあくまで人間だ、虐待厨ではない
被害を受けた場合、自分の力で実力行使を行い
現状を回復するのは当然の権利として法律に明記されていた
被害が出た時点で虐待厨は人権を失い、動物ですらないゴミと化すから
法律に矛盾はない
野生動物を勝手に駆除するのは違法だが、
鬼は『道に落ちているごみを拾ってゴミ箱に捨てている』だけだ
咎める人間など、いるはずもなかった
371
:
理屈とルール 3/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2024/08/14(水) 23:58:29 ID:rpzSplPA0
殺戮の嵐は三十分間ほど吹き荒れた
鬼が去った後、清掃業者がアジトに来た
「た、助かった!」
息をひそめて殺戮を生き延びた虐待厨がいた
清掃業者が来たことを悟ると、彼は物陰から飛び出た
「助けてください、実は・・・」
事情を説明しようとしたその口に、容赦なく金属製のホースの先端が突っ込まれ
液体が放出される
「ごぎょおおおおおおおお!!」
肌をド紫に変色させて最後の虐待厨は、くたばった
「他にもまだ生きているやつがいる可能性があるな」
清掃業者の仕事は掃除だ
ゴキブリを助ける物好きなどいない
そして実際にその予想通り、アジトはあちこちに隠れ場があり
じっと息をひそめ、仲間を売ってでも生き延びようとする虐待厨が
相当数残されていた
「じゃあ、いつものやつをやるか」
業者たちは後片付けをせずに建物から出た
「・・・もう、いいか?」
「いや、完全にいなくなるまで待とうぜ」
息をひそめている虐待厨たちは、じっと待った
その間に、奇妙なにおいが充満し始める
遅れて、煙が広がっていった
「か、火事だぁ!!」
これは完全な勘違いだ、いくらなんでも住宅密集地で焼却処理するバカはいない
ただの殺虫剤である
しかし、虐待厨たちには効いた
「開けろ、出せえええええ!!」
業者によって窓もドアも密閉処理されていた
「やっぱり、隠れている奴いたな」
業者は外でスマホゲームをしつつ休憩していた
彼らにとって虐待厨たちは『しゃべる害虫』、駆除対象に過ぎない
ドアや壁を叩く音がしなくなり、さらに10分経過後
業者は作業を再開した
生き残りの虐待厨を相手するよりも死体相手のほうがリスクはぐっと減る
これは、マニュアルにも記されている普通の手順に過ぎなかった
372
:
理屈とルール 4/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2024/08/15(木) 00:00:35 ID:2n2LaAxI0
「どうして害獣を飼ってるんですか?」
「恥ずかしくないんですか?」
同時刻、飼いゆっくりの散歩をしていただけの女性が虐待厨たちに囲まれていた
虐待厨たちは虐待厨のための機関紙を発行する組織の構成員だ
『報道の自由』は自分たちの身を守る盾になると信じて疑わない連中だった
確かにそれは盾としては機能していた
「やめてください、通してくださいよ!」
「逃げないでください」
「恥さらしのアイゴとして責任を取ってください」
この時までは
「おい、その人が困ってんだろ、通してやれ」
虐待厨たちの背後からの声に対する答えは決まっている
「これは報道の自由だ!」
「外野は引っ込んでろ!」
もちろん、鬼の答えも決まっていた
「なら、死ぬしかないねぇ!!」
3時間後、虐待厨たちの機関紙の発行企業は潰れた
物理的に
虐待厨たちは失念していた
本気でブチ切れた人間には法律も糞もないのだということを
それ以前に、人間に対する罪を虐待厨は犯してはならないということを
犯罪を行った虐待厨に対する裁きは死罪しかない
鬼は住民の救助と地域の治安維持に貢献したとして
後日、警察署長から感謝され表彰されたという
(おわり)
373
:
刑罰の復古 1/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2024/09/10(火) 23:26:47 ID:F9FE19dI0
その町では、二種類の知的生命体が暮らしていた
一方は人間、もう一方は人に似た「虐待厨」という生物だ
両者は互いの領分を分け合って暮らしていた
その日までは・・・・・・・・・
「おい、そっちにいたか?」
「いや、形跡も見つからん」
人間たちが慌てた様子でいるのを、虐待厨の長・虐治は見かけた
「あ、虐治、ちょうどいいところに!」
大体の虐厨は相手にすらされないが、虐治は別だ
厄介者の中でもだいぶマシ、何より人間を理解してくれていることから
珍しく重宝される立場にいた
そのため、必然的に虐待厨らは彼をリーダーに祭り上げた
虐治は「いい子ちゃん」とみなされ煙たがられてはいたものの
少なくとも虐治が健在なら人間たちは信頼できる彼の顔を立てる形で
一斉駆除などの殲滅行為を控えてくれる
犯人引き渡しで終わらず全滅させられることがデフォである今
やらかしたバカを引き渡せば手打ちで終わるグループの現状は天国といえた
そんな虐治だからこそ、人間は同胞に接するように協力を持ち掛けてくることもあった
「妖精のクリーが行方不明なんだ!」
声をかけてきた住民は、開口一番 叫ぶように言った
その個体は虐治も知っている
衣食住と引き換えに町の掃除を行う契約をしている妖精だ
「分かりました、聞いてみます」
『虐待厨を総動員して捜索に協力する』とは言えない
虐治がリーダーになってだいぶマシになったとはいえ、
バカをしでかす奴はちょくちょく出る
中には現状がいかに幸福かを理解せず、虐治を廃して過激なリーダーを据えるべきという
自殺でしかないことを堂々と主張する派閥もいた
だから、同胞を捜索に動員することはできない
発見を隠して家に持ち帰り虐待などされた日には、積み上げられた信頼を一瞬で崩しかねない
今の状況が虐治がコツコツ積み上げてきた『信頼』の上にあることを
虐治の周囲の虐待厨だけは理解してくれていた
374
:
刑罰の復古 2/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2024/09/10(火) 23:27:44 ID:F9FE19dI0
虐治はさっそく、同胞を拠点の会議室に集めた
「ああ、そいつならオレのとこで監禁してるぜ!」
その瞬間、空気は凍った
妖精の行方について問いかけた次の瞬間、コレである
発言したのは虐待厨の中でも過激派の虐吉だ
「な、な、な・・・・・・・・」
「なにさらしとんじゃ、ボケエエエエエエエ!!」
虐治の派閥は激怒して虐吉へ掴みかかった
「ったく、クソジジイ・・・・・・
妖精ごときで、あそこまで怒ることねーだろ」
しこたま殴る蹴るされた上に『早く解放しろ、さもなくば殺す』と脅された
虐吉としては面白くない
虐吉は虐治が、いかに苦労してきたかを
今の現状は薄い氷の上の館にすぎないことを、理解していない
ただ今の現状に不満を持ち、口うるさい連中を駆逐して
人間社会を制圧し、好き放題ヒギャクセイブツを虐待できる環境こそ望んでいた
「やっと、解放してくれるのですか?」
冷たくなった家族を抱きしめながら、見上げながら
虫かごの中の妖精は言った
「そうだよ」
ぶっきらぼうに虐吉は言った
無造作に妖精を掴んで虫かごから出し、木に縛る
「な、なにを・・・」
「見せしめだ」
『生きているならすぐ解放しろ』というリーダーの命令を、あっさりと虐吉は無視した
殴る蹴る叩くの暴虐をぶつける
「ちょっと、何してるのよ!?」
たまたま公園に来ていた住人の女性が、それを見咎める
「クリーじゃないの、あんたが捕まえていたのね!!」
「うるせぇ!!」
そして虐吉は、あっさりと『最後の一線』までも越えた
「きゃあああああああああ!!」
375
:
刑罰の復古 3/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2024/09/10(火) 23:34:46 ID:F9FE19dI0
虐吉は、女性の悲鳴で駆け付けた自警団に捕まった
その口から犯行の一部始終が語られ
虐吉の証言通り、自宅から複数の別の妖精の死骸が見つかった
そのあとの騒ぎは、まさに台風だった
『この子には絶対に手を出すな』
人間側は幾度も定期的に厳しく言っていたのに、
虐吉はそれを意にも介さなかった
さらに、クリーを助けようとした女性にまで危害を加えたのだ
ただでさえ最悪な子の状況に
クリーの絶命と、虐待厨側の虐吉釈放の要請という追い討ちが続いた
拠点とは別にある集会所の中で
「もう、どうしようもねぇ」
虐治たち良識派は項垂れた
同胞がここまでバカだとは思わなかった
信頼を積み重ね続けて、やっと築いた安住の地を
バカどもは破壊しつつあった
奴らは人間と戦って勝てると本気で信じている
「奴らを全員、引き渡そう」
虐治は、同胞の多くを見捨てる決断を下した
奴らは人間社会に適合できない
今回の事態は人間社会への宣戦布告も同義だ
バカどもが勝手に始めた戦争に巻き込まれるのは御免だった
「お届け物です」
その時、集会所のドアがノックされた
「待て、開けないほうがいい」
虐治は出ようとした仲間を制止した
しかし数十秒後、ドアに何かが叩きつけられ
集会所は吹き飛んだ
虐吉たちは爆発音を拠点から聞いた
「あいつらも、これでいなくなったな」
ぬちゃり、下卑た笑みを誰もが浮かべた
爆弾を包装したものを送ったのは彼らだ
包みを開けたら起爆するように設計されている
が、実際は、なかなか受け取りに出ないことに
イラついた運搬役がドアに爆弾を叩きつけて大自爆をかましたのが真相だ
しかしながら、その生死については彼らにはどうでも良かった
自分が大事なクズの集まりだ
生きるためなら仲間を平気で盾にできる虐待厨のみが、ここに集まっていた
そして、捕まったはずの虐吉が どうしてここにいるかだが
彼は事前に仲間に言っておいたのだ
「この作戦は、俺がいなけりゃ成立しねぇ」
金庫の暗証番号は、こいつの頭の中だった
別の虐待厨は金庫の開け方を知っていたが、肝心の暗証番号を知らない
虐治が焼き払う前のメモに書いていた暗証番号を盗み見たことがある
虐吉のみが正しい暗証番号を知っていた
だから、危険を冒してでも檻を壊し虐吉を彼らは助け出したのだ
「よし、開いたぜ」
仲間たちから離れて金庫を開けていた虐待厨が声を出す
「よし、武器を集める資金もこれで・・・」
金庫を覗き込んだ全員が絶句した
そこには金などない、ただ一つの透明なケースがあるだけだった
その中には一つのボイスレコーダーがあるのみ
突如、それが音声を再生し始めた
「このメッセージを聞いとると言うことは、
ワシを殺したな貴様ら?」
それは虐治の声だった
「お前らはもう助からん
お前たちが助かる手段はあった
だがそれは、ワシの頭の中じゃ
ワシが死ねば永遠にそれは失われる」
録音データのはずのそれは、今の状況を的確に指摘した
「ワシが人間たちのところに定められた時刻までに戻らないなら、
総攻撃が開始される手はずとなっておる
せいぜい抗ってみせるがいい」
全員が青ざめたのは、言うまでもない
まだ人間社会と争う準備は整っていない
武器弾薬も、これから調達するつもりだった
金庫の金を使って
「ふざけるな、クソジジイ!」
虐吉は八つ当たり気味にケースごとボイスレコーダーを放り捨てる
「そもそも、今回の件は我らに非がある
面白半分にクリーを捕まえたのは誰じゃ?
クリーを苦しめるため仲間の妖精を捕獲したのは誰じゃ?
人間の女性に手を出したのは誰じゃ?」
「うっせえよ!!」
「お、おい、虐吉、どういうこったこれは?」
「あ、何を言って・・・」
「なんで、あの事件をこいつは言えるんだよ!?」
仲間の指摘で、虐吉は気づく
クリーの件は、ここ一週間以内の出来事だ
ボイスレコーダーは金庫にしまわれていた
その金庫を持ち主の虐治がいじったのは、一か月以上前のことだ
クリーの事件など、予知能力でもなければ当時は知る術はない
「残念ながら、我らは滅びるか
あるいは人間たちに管理を任せる以外に無い
選べ、滅びか種族の存続か
すぐそこまで、期限は来ておる」
ボイスレコーダーはそこで途切れた
次の瞬間、爆音が拠点に轟いた
「襲撃だー!!」
銃声と悲鳴が響く
376
:
刑罰の復古 4/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2024/09/10(火) 23:35:46 ID:F9FE19dI0
虐吉はパニックになりつつも行動派は早かった
仮眠室からシーツを持ち出すと、虐待こん棒にそれを付けて
即席の白旗を作った
「おい、お前らやめろ、降伏するから!」
慌てて白旗を振る虐吉を見て、武装した住民たちは銃を下した
「本当だろうな?」
「あ、ああ、ウソじゃない」
これは半分ウソだ
虐吉は諦めていない
今 死ぬわけにいかないから方便を使ったのだ
「どうやって逃げ出したかは知らねーけど、ここまでだな」
「へ・・・?
虐治に言われてやったんじゃ・・・」
「なんのことだ?
オレらはお前を助けた害虫の駆除とお前の確保に来ただけだぞ?」
話がかみ合わない
「なんだこいつは?」
住人が落ちているケースに気づいた
「ボイスレコーダーだな」
ほかの住民は拠点のガサ入れにあたっていた
先ほどのボイスレコーダーが見つかったのだろう
だが、虐吉は特に気にしていない
あれは自分たち向けのメッセージだ
回収され再生されたところで、悪いことはないだろう
「なぁ、これ・・・」
住民が何か言いかけた時だった
「いいかお前ら、今戦っても勝ち目はない
なら、今だけ人間どもに頭を下げて降伏するんだ
こっそり目を盗んで武器を整えて仲間を集めたとき
奴らの社会を壊滅させる!
それまでの雌伏の時を過ごすために、今は生き延びるんだ!」
虐吉の音声が再生された
それは白旗を作っているときに仲間に呼びかけた音声だ
どういうわけか、ボイスレコーダーは
それをきっちり拾って人間たちに提供してくれた
住民たちの凍った視線が虐吉たちを射抜く
「こいつを虐厨どもの内部放送に乗っけるつもりだったわけだな?」
そこから後は、お決まりだった
逃げ出そうとした虐厨は後ろから殺された
隠れていた虐厨は駆除された
拠点は捜索し尽くされ、証拠や犠牲者の遺物が押収された
まだ生きているヒギャクセイブツも保護された
残ったのは虐吉を含め、わずかな虐厨だけだ
こうしてすべては片付いた・・・・・かに見えた
「なぁ、これをどうやって動かしたんだ?」
さすがに虐吉はカチンときた
「ボイスレコーダーの使い方くらい知ってるにきまってるだろ!」
「そうじゃねーよ」
その住人はボイスレコーダーの画面を見せた
何も映っていない、真っ黒だ
「電池が切れてたんだよ
さっきの音声を再生した時点で、すでにな」
そして続けた
「オレが聞きたいのは、この電池が切れたボイスレコーダーを
どうやって動かしていたかって話だ」
そんなもの、知るはずもない
そもそも、あの会話を拾われたことさえ予想外だ
「知らねーか、まぁいいや」
住民は仲間から携帯バッテリーを受け取るとボイスレコーダーにつなげた
充電完了したそのボイスレコーダーからは・・・
「いいかお前ら、今戦っても勝ち目はない・・・」
あの会話だけが再生された
その後、虐吉たちが虐治の遺言を確かに聞いたと口々に証言したことで、
さすがの住民たちもそれ以上ボイスレコーダーに触れるのをやめた
377
:
刑罰の復古 5/5 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2024/09/10(火) 23:36:46 ID:F9FE19dI0
「お、おい、なんのマネだ?」
「見せしめだよ」
拠点制圧の翌日、虐吉らは運ばれてきた丸太に縛り付けられた
「おーえす、おーえす!」
屈強な男たちによって、丸太は柱として立てられた
「見せしめ・・・?」
「昔は公開処刑が普通に行われていたんだ
悪いことしたらこうなると庶民へ教育するためにな」
その住民は、虐吉と会話しつつ槍を研いでいた
「お前、クリーにこういうことしただろ?
なら、お前らも見せしめになんなけりゃ
クリーたちも虐治も浮かばれねぇ
お前が襲ったオレの妹も納得しねぇ」
虐吉は、目の前の住民が自分たちに ここまでした理由を知った
同時に、相手に命乞いをしても無意味なことを悟った
「えい!えい!えい!」
虐吉らの目の前で、槍が幾度も掛け声とともに交差する
「やめろ、やめてくれ!!」
虐吉の懇願に、虐吉の前の二人は槍を止めた
その間にも事は進む
虐吉以外の虐待厨が左から順番に、急所をうまく外しつつ槍を刺されていた
悲鳴と虐吉への呪詛が響き渡る
虐吉の前の二人は、口を開いた
「お前は、クリーがやめろと言って、やめたか?」
「お前は、あの娘さんの懇願を聞いたか?」
それに対する虐吉の返答は、こうだ
「はぁ?
くそ虫とクソ女の言うことを誰が聞くかよ!」
ドズ・・・!
「ぎゃあああああああああああ!!」
静観していた女性の兄は、虐吉の左足へ木片を突き刺した
「こいつは、お前らのリーダーだった男に刺さっていたやつだ
くれてやるよ」
さらに虐吉の右わき腹に執行人の槍が突き立てられる
虐吉の口から絶叫が響いた
絶叫が終わった頃合いで、今度は左わき腹に槍が刺さる
絶叫と刺突は交互に繰り返された
「なぁ、磔って、こうだったか?」
絶叫の中で歴史に詳しいらしい住民がつぶやいた
「いや、あっさり終わらしたらだめだ
やつらにはできる限り長く長く苦しんでもらわにゃならん!」
日が高いうちに開始された処刑は、日が暮れても続いた
「今日はここまで、続きは明日の朝だ!」
信じ難いことに、そのような宣言が出された
「おいおい、いつまで続けるんだよ?」
スマホゲームに熱中していた住民がリーダー格の住民へ聞いた
「こいつが死ぬまでだ
・・・ここまでしぶといとは、さすがに思わなんだけどな」
夜の間も虐吉たちは丸太へ縛り付けられたままだった
「てめーのせいだぞ虐吉、てめーが虐治を殺したりしなけりゃ・・・」
「いや、そもそもクリーにくだらない理由で手を出しやがって・・・」
「なんでクリーに手出ししてねぇオレらまで、こんな目に・・・」
「あれほど、アレには手を出すなって言われてただろうがよ」
「それだけじゃねぇ、人間にまで手出ししやがったよこいつ・・・」
虐吉は翌日まで仲間の呪詛を浴び続けた
翌日の朝早く、処刑は再開された
やがて、一人また一人と虐吉の仲間は動かなくなっていき
一週間後には虐吉一人だけが残った
昼は刑罰を、夜は呪詛を吐かれ、虐吉は憔悴しきっていた
「だから言ったんだ、クリーには手を出すなと」
「人間にまで手を出しおって、種族全体を滅ぼす気か?」
たった一人になっても、呪詛は続いた
「うるせえ、うるせえよ、虐治・・・」
虐吉はしまいには虚ろな目で、そんなことをつぶやき始めた
もう限界だろうと判断され、最後は盛大に火が付けられた
虐吉は事前に水をかけらえたため、長く生きることになった
かつて、その町では二種類の知的生命体が暮らしていた
一方は人間、もう一方は人に似た「虐待厨」という生物だ
両者は互いの領分を分け合って暮らしていた
分別ある「虐待厨」のリーダーがいなくなった今
それはもうない
しかし、かつて存在した優秀なリーダーを称えその死を悼む墓は建てられ
今なお線香と花は絶えないでいる
(おわり)
378
:
支えを失えば・・・ 1/2 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2024/10/06(日) 03:09:39 ID:6LmqKUBo0
妖精虐待
虐待厨が始めた新しい標的、それが妖精だった
彼らはまたしても分別をなくした
民家に押し入り、保護区域に侵入し、薬を散布し
ありとあらゆる手段で妖精を虐待・虐殺した
反対する人間たちを「アイゴ」と詰った
そんな中、虐待厨らは妖精を食用に回し
食糧難を解決すると発表した
彼らは施設を作り、金で政府を買収した
そして、大規模な妖精狩りが行われた
反対派の抵抗もあったが
いつしか、妖精はいなくなっていた
虐待厨たちは勝利宣言を行った
時の政府は虐待厨のリーダーを重役に任じた
彼らは気づかなかった
自ら破滅への道を歩んでいたことに
妖精がいなくなった、その年の冬から
いつまでも雪は降り続いた
暦では春の時期になっても、春は来なかった
畑に種を撒くことも、田植えの苗を作ることもできない寒さが
いつまでも続いた
やがて、春が終わり夏が来た
雪は止んだが、極端な暑さと干ばつが国を襲った
それは、秋の時期になっても続いた
やがて冬の時期になり、やっと暑さは終わった
しかし今度は大寒波が到来した
その年の作物の収穫は、言うまでもなく壊滅的だった
「オレらが確保した、食料施設があるじゃないか!」
虐待厨やそのシンパは、それを思い出した
しかし、彼らは楽観的過ぎた
その施設だけでは国全体を賄う力量がないことに、気づいていなかった
379
:
支えを失えば・・・ 2/2 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2024/10/06(日) 03:10:33 ID:6LmqKUBo0
妖精が自然界からいなくなった年の二年後には
深刻な食糧難が発生した
その国では作物が一切育たなかった
屋内に畑を移し、エアコンで気温を調整し、
適切な水と肥料を与えた
しかしそれでも、作物が実りをもたらすことはなかった
そこへ、前年から続く過酷な環境が追い打ちをかけた
焦った虐待厨たちは施設の妖精の繁殖を高速化しようとした
もちろんそんなものが、うまくいくはずもなく・・・
施設内に残る妖精は、ゼロになった
政府は妖精の供出を国民へ命じた
民主主義国家だったその国において、それは
『最後の一押し』になった
そうと知らぬまま、政府は虐待厨たちに武器を持たせ
民家で共存している妖精の強制捕獲に乗り出した
結果、民衆の武装蜂起を招くことになった
彼らの知らない間に反対派は急激な勢いで数を増やし
妖精の保護活動も密かに続けられていたのだ
同時に、虐待厨たちが『最後の一線』を超えた場合の準備も進んでいた
あとは、虐待厨たちが引き金を引けば始まるだけだった
自分より弱い生物ばかり相手していた虐待厨たちは
本気になった人間に勝てるはずもなかった
怒りの矛先は政府にも向いた
敵に武器を持たせて国民を襲わせた罪により、
虐待厨に与した議員全員に『国家反逆罪』が適用された
全員が裁判で執行猶予なしの重罪が決定した
その混乱は三年続いたが、その間に自然環境は元に戻っていった
保護団体が保護していた妖精が、自然環境に帰されていったためだ
過酷だった環境は、嘘のように落ち着きを取り戻し
作物がまた、実るようになった
この結果は大々的に発表された
野生の妖精は最も重要な保護生物に指定され
手出しが禁止されるのに時間はかからなかった
もちろん、人間との共生を望む妖精もいた
彼らには、多くの権利が付与された上で望む人間と共に
社会で生きていくことになった
「おいてめぇ! よくもやってくれたな!!」
その過程において
保護団体を名乗って強盗や妖精誘拐を行っていた組織も摘発された
全員がその場で処理され、捕らえられた連中もまた取り調べ後に処分された
今、妖精を虐げる者はいない
(おわり)
380
:
人間社会不適合 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2024/11/12(火) 21:15:45 ID:3umsWtqM0
「なにやっとんじゃてめぇ!!」
夜の住宅街に怒声が響いた
何事かと駆け付けた住人たちは戦慄する
腫れた頬を抑えて倒れこんでいる虐待厨と
拳を握りワナワナ震える人間の男
そして、男の後ろに倒れている人間と思われる子供
「てめぇ!ついにやりやがったな!!」
「この外道がぁ!!」
「生きてる価値ねぇよ、くそ!!」
日頃、虐待厨の迷惑行為に鬱憤を溜めていた住人たちは
男に続いて怒りを爆発させた
「大丈夫か、坊や?」
「救急車を呼びました」
もちろん、倒れている子供の保護も忘れない
「おい、この子だけか?
他にもいるんじゃねーだろうな?」
ボコボコで虫の息の虐待厨へ、
先ほど殴りつけた男は蹴飛ばして仰向けにしつつ聞いた
「え、あ、あいつの仲間、は、まだ中に・・・」
思わず素直に答えた虐待厨だったが、それは怒りに油を注いだ
「てめぇらぁ!!! 人身売買に手を出したのかぁ!!」
「子供を何人も誘拐するとか、死ぬしかないねぇ!!」
腕に覚えのある住民が虐待厨のアジトへ殴り込んだ
「なんだ、お前ら、虐一はどうした?」
何も知らないまま出迎えた虐待厨は
「邪魔だ、どけ!!」
怒れる住人の拳骨を顔面に受けて壁まで吹き飛んだ
そしてグシャリと潰れてシミと化す
雪崩れ込んだ住民たちは、あちこちの目ぼしい場所を住人たちは探したが
檻の中にも家具の中にも隠し部屋にも、子供たちの姿はない
「おい、他にさらった子供たちはどこにやった、言え!」
リーダーの虐待厨の骨を一本ずつ丁寧に折りながら、住民の一人が問い質した
「何の話だよ、オレたちは妖精しか捕まえてねーよ!!」
後日、倒れていた少年は妖精の亜種だと病院で判明した
しかし人間型の妖精の存在はすでに認知されている
何よりも保護対象だ
彼は完治するまで病院で過ごし、一か月後に無事退院した
保護された彼の仲間も一緒に妖精の住処に帰った
一方で・・・
「おい、人間には手を出してねぇって分かったんなら
自由にしてくれよ!!」
「OK、地獄で存分に自由行動しとけ!」
妖精への手出しは法で禁じられている
特に人型の妖精への手出しはより厳しく取り締まられていた
と、いうのは
過去に虐待厨が人間の子供を誤って虐殺する事件が相次いだためである
その時は全国一斉駆除が行われ、虐待厨はその数を100未満まで減らした
その後、子供への誤爆を防ぐ意味でも人間型の妖精への手出しは厳禁とする法ができた
虐待厨の猛反発は当然あったが、「たかがガキの一人二人巻き込んでもいいだろ」というセリフが
彼らに口から出た時に、鉛玉の洗礼で黙らせた
そういうわけで、妖精狩りに関与した虐待厨たちは全員が有罪判決を受けた
虐待厨のための刑務所などない
「こんなことで、殺したりしねぇよな?」
「まさか、ちゃんと裁判で無罪になるだろ」
もちろん、そんな都合のいい話などあるはずもない
彼らは能天気にも処理施設に入るまで自分らの無罪放免を信じていた
妖精たちと共存する形で、今日も社会は回っている
人間社会不適合の虐待厨の数を大きく減らしながら
(おわり)
381
:
虚偽の代償 1/2 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2025/02/19(水) 23:32:36 ID:JtBi8YQE0
「ひぃひぃひぃ・・・・・」
虐厨の虐一は必死で走っていた
必死で逃げていた、背後から追いかけてくる死神から
事は、数時間前に遡る
「いらっしゃいま・・・せ?」
虐一はペットショップを訪れた
もちろん愛でるためのペットを飼いに来たのではない
虐待するためだ
日々の虐待で彼の体に染みついた血や、ゆっくりの餡子の臭い
それは風呂に入っても落ちることなく、いつしか彼の周囲から
「被虐生物」はいなくなっていた
虐一は考えた
愛護の「飼い」を襲う事も考えたが、それを実行した仲間の中で生存しているものは皆無だった
警察に捕まり保健所送りにされたり、飼い主に報復されて惨殺されるなどしたためだ
虐厨の中でも臆病な部類に入る虐一に、そんなリスクを冒してまで事を実行する度胸はなかった
考えた末に出た結論は、「自分で買って虐待する」だった
自分の所有物なら虐待しても問題ないだろうと、
明らかに問題のありまくりな結論に虐一は至った
そして彼はパートナーショップへやってきた
「こいつをくれ」
目を付けたのは、金色のバッジの付いた部屋だ
この店はパートナーショップ、ペットショップではない
人間と交流したい妖精たちが様々な試験をクリアして在籍する場だ
「お客様、テストをさせていただきます」
自分が虐待厨であることがバレないように、虐一は予習済みだった
人間と酷似した種族であるからこそ可能だ
虐待厨が仮にゴブリンと似た連中だったら、入店すら不可能だっただろう
逆に言うと、だからこそ彼らは犯行を重ねその罰も年々重くなっているのだ
テストをクリアした虐一は、さっそく連れ帰った妖精を嬲った
どこからか連れてきた仲間の妖精を目の前で殺し、批判を引き出すと
それを動画サイトへアップロードした
店の評判も落とすためである
彼の目論見通り、店には批判も殺到した
炎上を見ながら虐一は高笑いし、ビールを飲み干す
虐一の知らない間に、事は進んでいた
「こいつです」
ここは、パートナーショップの事務室
屈強な男女とともに虐一を応対した店長はいた
彼の眼は真っ赤に腫れ、その顔は応対時と同一とは思えない鬼の形相だった
「動画の分析、終了しました
どうやらヤツは、別に妖精を一体以上確保
あの子の前で惨殺した模様です」
パートナーショップは長年、『アイゴ狩り』と戦っていた
虐待厨は自分たちの意思に反する存在の生存を極度に嫌い、許さないからだ
当初は警察が対応していたが、虐待厨の凶悪化はエスカレート
今は専門の駆除業者が誕生し、対応に当たることになっている
虐待厨は自己顕示欲が強い、動画や写真を必ずSNSにアップする
それが自分の死亡証明書へのサインだと知らないまま
だから駆除業者にとって動画の分析など、朝飯前だ
「つまり、このクズは店を騙してあの子を連れて行っただけでなく
ハメやがったわけだな」
「許せねぇ・・・」
「炎上のコメントも、虐待厨のネットワークからのものが大半です」
「そいつらも片付けるぞ、一般人には警告メールでも送っておけ」
炎上開始から、わずか半日
虐待厨の駆除作戦はこうして決定した
炎上の翌日、仲間からの称賛を期待して虐一はコミュニティのアジトへ向かった
しかし、そこの人数は異様に少なかった
そして彼らは、虐一が入ってきたことに気づかないほど慌てていた
「おい、どうしたんだよ?」
虐一は一人を捕まえて問いただす
「分からん、急に多くの仲間と連絡がつかなくなったんだ!」
虐一たちはこの時、まだ何が起ころうとしているのか知らなかった
「地獄への旅行に出発する時間だぜぇ!!」
虐一の到着から一時間後、武装した集団がアジトのドアを蹴破った
「なんだ、てめ・・・ひぃ!?」
威嚇しようとした虐待厨は、彼らの胸の紋章を見て震えた
虐待厨駆除業者の企業のマークだ
それを身に着けた者が行うことは、決まっている
「ま、待てよ、オレたちは何もしていな・・・」
「パートナーショップを陥れた奴がいるのは分かっている!
そいつを差し出せ!
お友達のようになりたくないならな!」
その言葉で、全員が『連絡が取れない同胞』の運命を悟った
382
:
虚偽の代償 2/2 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2025/02/19(水) 23:33:16 ID:JtBi8YQE0
「や、やばい・・・」
虐一は運よく奥のコンピュータ室でネットサーフィンをしていた
炎上に参加したアカウントのどれもがすでに削除されていた
知り合いに片っ端から連絡をしても誰も出ない
そこにこの突入騒ぎだ
虐一は裏口からこっそりと・・・
「ぎゃあああああ!!」
裏口から逃げようとした別の虐待厨が足を撃たれて倒れたのを見てやめた
それを助け起こそうとした虐待厨も撃たれて倒れる
狙撃しているやつがいる
裏口からは出られない
虐一は脳をフル回転させ、頭にアジトの地図を思い浮かべる
「そうだ、あそこからなら・・・」
虐一は、そっと便所に向かった
音をたてないように通気口のフタを外して中に入る
隣の建物に面した外の狭い通路に出ると、下水道へのマンホールのフタを開けた
「ぎゃああああああああ!!」
「やめてくれ、何もしてねーだろ!?」
「お前らも炎上騒ぎに加担してただろうが!!
地獄の閻魔の前で弁明しろ!!」
アジトの中で殺戮が吹き荒れるのを聞きながら、虐一は逃げた
「みんな、仇は必ず取ってやるぜ!」
虐一は下水道から出ながら自分を逃がすために犠牲になった仲間に誓った
もちろんそんな事実はないし、なんなら虐一は仲間を盾に逃げた卑怯者だ
しかし彼はこの事件を正当化し美化するものへ、記憶を塗り替えていた
「動くな」
もちろん、そんな身勝手を許すほどお天道様は優しくない
マンホールから出てきたところを、たまたま別作戦の報告に戻ってきた隊員に見られた
「お前、あのアジトにつながる下水道から出たな?
連中の仲間か?」
虐一はとっさに、走った
「あ、こら待て!!」
考えなしに走ったわけではない、広い通りには人だかりができていた
ちょうど帰宅時間に重なったためだ
さすがの武闘派部隊も一般人を巻き添えになどできない
「ひぃひぃひぃ・・・・・」
虐厨の虐一は必死で走っていた
必死で逃げていた、背後から追いかけてくる死神から
そして作戦は功を奏した、彼は死神の目から完全に逃れることができた
「〜〜〜やったー!!」
そう思っていた、頭上を小さなローター音が通過してもなお
「さて、まずは・・・」
虐一は帰宅することにした
もうこの街にはいられない、戦闘部隊はあちこちに目を張っているだろう
隣町のアジトにでも転がり込むつもりだ
「があああああああ!?」
そんな計画を立てていたら、激痛が足に走り虐一は倒れた
「手こずらせやがって、この野郎!!」
罵声とともに、飛行するドローンが虐一の目に映る
しかしすぐに屈強な掌が虐一の目をくり抜いた
「来い、たっぷりとお礼をしてやるぜ!!」
虐一は悶絶し喚き散らすことしかできないまま、バンの後部へ放り込まれた
その日、町の虐待厨のアジトは壊滅した
炎上に加担し店を批判する書き込みをした虐待厨は相当数になったため
その駆除の結果、町から虐待厨が消えることにもなった
「いい空き家じゃん、ラッキー!」
「ここを新たなプレイスにするぞ!」
しかし虐待厨が絶滅したわけではない
「おう、お前ら、悪さするなよ?」
今日もまた、どこかで駆除は行われている
「うっせー・・・ぎゃあああああ!!」
「やめ・・・ぎえええええええ!!」
(おわり)
383
:
終わりなき活動 1/2 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2025/03/13(木) 19:18:41 ID:BwTL5dh60
グシャリ
湿った音が室内に響いた
土下座し床に額をこすりつけている虐待厨
その後頭部が、ありえないほど凹んでいる
男は相手が動かないのを見ると
「終わりました」
丁寧にドアを開けて外にいた人々に声をかけた
保健所の職員と警察官がそこにいた
が、男の凶行に驚いた様子はない
「助かりました、ありがとうございます」
それどころか、男に礼まで述べていた
と、いうのは・・・
虐待厨は妖精誘拐と殺害の常習犯だったからだ
すでに自分の人権が停止していると知らぬまま
そいつは犯行を繰り返していた
そして警察よりも先に妖精のパートナーの一人が突き止めたのだ
現行犯逮捕は警察官ではない一般市民も可能である
しかし、それはあくまで『人権が存在する一般市民』同士の話だ
ゴキブリ未満にまで堕ちた虐待厨には適用されない
畑を荒らす害虫を逮捕し起訴する警察や裁判所は存在しないのと同じである
だから男は現行犯処刑を行った
慈悲深いことに、事前に虐待厨へ悔恨の意思を問いかけてから
しかし、その問いに対し虐待厨は身勝手な主張を繰り返した
あろうことか、手にかけた妖精を罵倒までしたのだ
男はバットで虐待厨を殴打した
死なない程度に何度も何度も
なぜなら、これは『処刑』なのだから
相手が『罪を犯したために、これから殺される』事を自覚しなければ意味がない
十回ほど殴ったあたりで虐待厨は命乞いを始めた
床に額をこすりつけ涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔をホコリで覆いながら
男は「分かった」と言うと、虐待厨が顔を上げる前に後頭部を踏み潰した
「投薬実験を開始します」
ところ変わって、ここはある製薬会社の地下研究施設
『ヒギャクセイブツ』を狙いカードを偽造して保護ケージを襲った虐待厨が
薬を投与されていた
「あがばばばばばばばばばば」
「・・・死亡」
虐待厨は数秒で泡を吹いて下半身から内臓を噴き出して死んだ
「やったぞ、成功だ!」
研究室は歓喜に包まれた
この一か月後、『虐待厨コロリ』という薬が発売されることになる
384
:
終わりなき活動 2/2 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2025/03/13(木) 19:20:31 ID:BwTL5dh60
また別の場所
「ゆ、誘拐した子たちは返します、だから命だけは・・・!」
「ゴキブリ未満の害虫が一丁前に人間様の言葉をしゃべるんじゃねぇ!!」
行方不明になった妖精を探していた一団が悲鳴を聞きつけて民家に押し入っていた
そこにいたのは捜索対象の妖精ではなかったが、ゆっくりをはじめとした
数々の生命体がいた、あるいは死体となって転がっていた
壁には金バッジや首輪、名札などが並んでいた
明らかに『飼い』ないし誰かのパートナーが犠牲になっていた
軽犯罪でも虐待厨は人権をはく奪される
誘拐は重犯罪であり人間であっても極刑相当である
この虐待厨は重犯罪をした、しかも複数回
その上、被害者は痛めつけられ、あるいは死んでいた
つまり、この段階で最高刑以上の処罰執行は決定している
「こいつは『地獄』行きだな」
「ああ、それ以外あるめぇ!」
聞いた虐待厨は一気に青くなった
『地獄』とは、文字通りの意味である
ただしあの世ではなく、この世に作られた施設の通称だ
そこでは生かさず殺さず日夜を問わず数々の拷問が悪党に加えられる
死なせるための処刑場ではない、ただただ痛めつけ苦痛を与えることが目的の施設だ
だから、虐待厨を生かすための設備も装備も充実している
『死』という解放をできる限り先延ばしにするために
「い、いやだああああああああ!
それだけは、それだけはやめてくれええええええええ!!
殺してくれ、ここで、たのむ・・・」
一団の一人が虐待厨を蹴飛ばして黙らせた
「さっき『命だけは助けろ』って言っただろうが!!
俺たちを馬鹿にしてるのかテメェ!!」
わめく虐待厨の口に猿轡を噛ませてズタ袋に放り込むと、運搬役の面々は一団から離れた
別の場所、そこに集うのは虐待厨のみ
なぜならここは、虐待厨が唯一寝泊まりしても咎められない場所
『虐厨団地』だからだ
もちろん、無料かつ無条件で許されているわけではない
ルールは存在する
「ひぃ・・・」
虐待厨の一人が悲鳴を上げた
彼らの目の前には、大きな画面が用意されていた
そこに映るのは、虐待厨たちが犯した罪のデータ
そして、右上の枠にある数字のみ
最初は六桁だったそれは、今や一桁にまで減っていて、5を下回っていた
「頼む、これ以上は何もしないでくれ・・・」
虐待厨の一人が毛布をかぶったまま祈るように呟いた
それは神に対してだけではない
無遠慮に暴れまわる同胞に対してだ
しかし無情にも、数字は減っていき・・・・・・
ついに、ゼロになった
ある虐待厨は外へ逃げ出そうとドアを開け、ある虐待厨は失禁しながらへたり込んだ
恐怖のあまり発狂する虐待厨もいた
それらはまとめて、団地の爆破に巻き込まれた
虐待厨たちは木っ端みじんになった上に団地の構造物に埋まった
また新たにその上に団地は作られ、別の虐待厨が入ることを許される
旧住人らは墓も作られることなくその存在を知られることもなく、土に還るだろう
「た、助かった・・・ぎゅべ!?」
運良く外に逃げることに成功した虐待厨らもいたが、巡回してきた攻撃ドローンが始末した
ドローンに下された命令は『外に出ている虐待厨すべての排除』だ
虐待厨の唯一の住居である『虐厨団地』が爆破された時点で、
この町にいる全ての虐待厨は、その生存権すら失ったのだ
こうして、町から虐待厨はいなくなった
しかしそれは、一時的なものに過ぎない
今日もどこかで、虐待厨の駆除活動は続いていく
(終わり)
385
:
続いていく系譜 1/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2025/03/13(木) 19:22:30 ID:BwTL5dh60
むかしむかし
とある掲示板に「虐待モララー帝国」が誕生しました
モララーというAAキャラクターのみで構成されたその国は
他のAAを虐げ領土を広げました
しかしそれは長くは続かず・・・
他のAAの内外からの蜂起により帝国は滅びました
しかし、戦争が終わった時、どの世界も甚大な被害を受けていました
AAたちは誓いました
もう二度と悲惨な戦争を繰り返さないと
それから、長い年月が経ち・・・
「オレは腹くくったぜ!!」
ギコは机を叩きながら集まった仲間に告げた
今、もはやかつての「誓い」は機能していない
「第二次モララー帝国」と名乗る勢力によって、掲示板はどこも虐待であふれていた
しかしその構成員はモララーではない
『虐待厨』という、人に似た別の種族がそのほとんどを占めていた
皮肉なことに「荒らしに反応しないこと」「荒らしは通報するだけで放置」
「荒らしに構う奴も荒らし」「住み分けを大事に」といったルールが
虐厨たちの好き放題を助長していた
すなわち「虐厨に文句を言えば荒らし」「虐厨・虐待派へ苦情を言えば荒らし」
「虐待派の居場所に足を運んで訴える者は荒らし」などなど・・・
ルールを守る側に制約が課される反面
ルールを守らない側・荒らしを自認するクズは好きにできるという矛盾を産んだ
この事態に、こんなことを思うものが現れ始めた
「ルールって何のためにあるんだ?」と
守っても守ってはくれない、守れば守るだけ不利になる、守らないほうが好き放題できる
もはや、ルールとは鎧ですらない枷にすぎないのではないか、と
「そんな幼稚な奴がネットにいるなよw」
そう言って疑問に思った人々を叩いて追い出す者がいた
しかし、これらの出来事は、ルールの無意味さを証明することに他ならない
自分や守るべきものを守る事こそ、人々の行動原理だ
守ってくれると信じたからこそルールを守った
しかしルールは守ってくれず守らない無法者の天下となっている
これでもなおルールを守る者はいない
ギコの周囲に集った者たちは皆、そんな人々だった
AAだけではない、様々な種族の代表が一室に集っていた
彼らはひそかに戦力を集め、ついに決起を決意したのだ
「ギコ!偵察の部隊から連絡が・・・」
恋人のしぃからの報告を受け、ギコは気合を入れ直す
「よし!!!」
誰もが武器を手に立ち上がる
「時は来た!!!虐待は悪なり!!」
「虐待は悪なり!!」
「いくぜ兄弟!!暴虐なる帝国を永遠に終わらせるぞ!!!」
「お〜!!!」
「話を聞けこの馬鹿野郎!!」
しぃの正拳がギコの顔面にめりこんだ
「な、なにひゅるのさ・・・」
突然の恋人の折檻に、ギコは涙目になる
「モララー帝国が、ないって報告が来たのよ!!」
「「「ハァ?」」」
これから戦うはずの敵が消えた
その報告は、彼らにとって寝耳に水だった
しぃの受けた情報は最初こそ半信半疑だったが・・・
第二次モララー帝国のあった場所に行った誰もが、そこが廃墟と化しているのを見た
そこかしこに転がっている虐待厨の白骨が、帝国がすでにないことを語っていた
しかも、どれもこれも五体満足なものは一つとしてない
固まった血の跡の中で腰のあたりから二つになっていたり、
あるいは胴体だけが転がっていたり・・・
中には、綺麗に真ん中で二つに割れていて、どういう最期を遂げたのか全く分からない骨もあった
ただ分かることは、そいつらが悲惨な最期を苦しみながら遂げたこと
第二次モララー帝国は、もう無いということだ
「・・・帰るか」「だな」「畑でも耕して暮らすモナ」
こうして・・・「第二次モララー帝国」と名乗る勢力は
数々の暴虐を犯しながら、突如として歴史の表舞台から姿を消した
レジスタンスも自動的に解散となった
386
:
続いていく系譜 2/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2025/03/13(木) 19:23:22 ID:BwTL5dh60
ギコが決起を決意する一年ほど前、別の武装した民衆が帝国へ襲い掛かっていた
帝国があちこちに喧嘩を吹っ掛けた結果、帝国の総動員数の何百倍・何千倍という数が
周囲から襲い掛かったのだ
大切なものを壊され奪われた人々の恨みは凄まじかった
完全包囲されていたため、帝国から逃げ出せた虐待厨は皆無だった
しかし・・・・・・
「歯ごたえ、なさすぎやしないか?」
彼らもまた首を傾げた
敵はいる、数もそれなりに多い
しかし、あまりにも抵抗が弱すぎるのだ
それによく見れば、負傷している者が少なくない
施設や武装も、満足なものは一つとしてなかった
「他の誰かと先に喧嘩したんじゃないかな?」
そう結論を付けて、掃除は再開された
「よせ」
「あん?なんだてめぇ?」
ギコの蜂起未遂から半年後、
別の場所で暴虐を働く虐厨たちの背後に、耳のないモララーが現れた
「昔話をしよう・・・ある掲示板にモララーだけの国ができたんだ」
ミミナシは、話をし始めた
「かつてあった”モララー帝国”の復活、あちこちで潜伏していた
虐待モララーたちはこぞって集結したよ
昔と違い、自分らと趣旨を同じくする虐待厨という種族もいた
彼らは数が多かった
そして皮肉なことに、非戦基本のルールや不文律のおかげで
侵略はとてもうまくいった、そう、うまくいきすぎたんだ」
そこでミミナシは言葉を切る
「気が付いたら、周囲にエモノはいなくなっていた
抵抗すらされないことで、容易く根絶やしにされていったんだ
でも、虐厨たちは虐待できるモノを欲しがった・・・
地獄はそこから始まったんだ」
ミミナシは天井を見上げてつづけた
「虐待できるものが何もなくなった虐厨やモララーたちは、その矛先を
あろうことか同胞へ向けたのさ」
誰もが驚きのあまり息をのんだ
「最初こそ愛護派のモララーが標的だった
しかしそれもいなくなると、いよいよ狂気は加速した
耳の形、体の色、胴の太さ、身長・・・
次々と理由を作っては狩っていった
もう何が原因で被虐生物にされるか分かったもんじゃない
疑心暗鬼になった人々は仕事も手に付かず国は荒廃していった・・・
けど、決定打はここからだ」
「何があった?」
一人の疑問にミミナシは答えた
「喧嘩を売っちゃったのさ、非戦のルールが関係ない連中と
非戦のルールに納得いかず他所にこもってた連中に」
ミミナシは続ける
「さすがに同胞同士の殺し合いに辟易したグループが遠征を行った
エモノさえいれば同族同士の殺し合いは終わるだろうと考えたのさ
それはうまくいったよ、まだ未発見だった里がいくつも焼かれた
けどそいつらは知らなかったんだ
その遠征先が天国じゃなくて地獄に向かってることに・・・
そいつらは、”墓場”に手を出した」
”墓場”とは、文字通り知名度がなくなり隠居することになったAAたちの隠れ里だ
ただの姥捨て山ではない
「グレートカメモナー」「ヴィ」「ポロロ」など単体で一つの世界を滅ぼすことが可能な
危険なAAの隔離生息区域でもある
387
:
続いていく系譜 3/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2025/03/13(木) 19:24:16 ID:BwTL5dh60
「当然、あそこの住人に勝てるはずもない、生き残った連中は命からがら逃げかえった
けど、尾行されてることに気付かなかったんだ
向こうにしてみれば自分たちの領域を侵犯した敵で・・・
彼らにとって敵対的な生命体など”餌”にすぎないからな
不運はそれだけで終わらない、別の遠征軍が同時期に”つー族の里”へ手を出したんだ」
虐待厨たちは身震いした
「つー」、それは体の赤いネコ型AA種だ
しぃに似るが、常にイっちゃってる目と「アヒャー」という鳴き声が特徴であり・・・
何よりも、単体戦闘力においてAAの中でトップクラスであることで有名だ
彼女たちはその高い戦闘力と見た目とは裏腹に、親切かつ情に深く
敵対さえしなければ良き隣人として付き合ってくれる
そう、敵対さえ、しなければ・・・だ
単体ですら一個師団を壊滅できる彼女らを一族単位で敵に回すなど
自殺という言葉ですら表現が追いつかない愚行である
今や伝説となった第一次モララー帝国の戦争においても
リーダーギコの側近に、つー族の女性がいたことは周知の事実であり
彼女の活躍は外伝が何冊も作られ出版されるほど
研究が進むにつれてどんどん出てきている
「一飯の礼のため孤児院をモララー帝国の精鋭部隊から一人で守り抜いた」
「モララー帝国の生体兵器から幼い少女を守り、返り討ちにした」などなど
上げればキリがないが、どの話にも共通しているのは
「弱者を守るためにその身を盾に敵を狩るハンター」としての姿である
こんな彼女たちだが、単独行動を好むため「徒党を組んで襲い掛かる」など滅多にない
そして徒党を組んでいたとしてもそれが表沙汰になることは少ない
と、言うのは・・・
彼女らは基本、やはり単独で行動するからだ
あらかじめ行動指針や場所時間などを打ち合わせて決めて解散
後は個々人で動いて任務を達成する、というのが最も多く使われている方法だった
物陰に隠れ闇夜に紛れ、建物の屋根の上に天井裏に木々の上に潜み
相手の隙を突いて襲い掛かる
だから表沙汰にならない
目撃者がいてもそれが単独なのか徒党を組んだ一体なのか判別などできはしない
哀れな標的は、襲われた事すら気付くことなく冥府へ送られることもある
表沙汰になることがあるとすれば、彼女らと飲み会でも開いて当人から聞き出すしかない
「あとは想像通りメチャメチャさ、怪獣や怪物に蹂躙された上に
指揮官や司令官、重役らは赤いAAに優先的に狙われて狩られて指揮系統も壊滅
そうでなくても同胞同士の殺し合いで互いに疑心暗鬼だったんだ
そんな状態で全員に武器がいきわたってれば・・・」
隣人同士が憎み合い、同族同士が互いの命を狙う地獄
国を離れようとした者は脱走者として撃たれ
食べ物を分けてもらおうと隣人を訪ねて撃たれた子供の報復に
親兄弟が隣人宅に押しかけて皆殺しにしたりと
完全に国民同士の殺し合いへと発展していった
宗教も信条も関係ない、相互の「不信」が原因の殺し合いは
国民全体を巻き込んだバトルロイヤルと化した
気が付いたときは帝国内は、かつての勢力も武力もなくなっていた
「すべては、思い上がりが招いた自業自得さ・・・」
滅んで当然だった、とミミナシは自嘲気味に笑った
虐待厨たちは顔を見合わせた後で、ミミナシを放置して別の場所に移動した
「オレらは、ああはなるまい」
「ああ、集落に帰ろうぜ」
彼らはミミナシが後から来た つー族の戦士と会話を始めたことに最後まで気づかなかった
尾行されたことにすらも・・・・・・
「改心してくれれば、違う未来もあっただろうにね
このボクみたいにさ」
ミミナシは無くなった耳のあった場所を撫でながらつぶやいた
388
:
続いていく系譜 4/4 首おいてけ濠
◆vBEOnE9fo2
:2025/03/13(木) 19:27:18 ID:BwTL5dh60
「お姉ちゃん、見てみて!!」
ここは、つー族の里
一人のつー族の少女の前でモララー族の少女がナイフを投げた
ナイフは全て立っていた練習用丸太に命中する
「アヒャ〜、すごいじゃねぇか!」
大好きな「姉」に褒められて幼いモララー族の少女は照れる
彼女は見た目の通り、「姉」とは血はつながっていない
「姉」たちがモララー帝国へ「狩り」に言った際に保護した子供の一人だ
「大人に翻弄されるしかない子供たちにまで罪を負わすのは酷だ」
モララー族であっても一枚岩ではない
帝国の方針に反発したり、帝国に従わなかったために
また、気が付いたら帝国の暴走に巻き込まれ
同胞のはずのモララーに狩られる立場になった”異端者”のモララーたち
彼ら彼女らへの協力もしくは保護もまた、つー族は一族全体で行っていた
最初は つー族を怖がっていたモララーたちも
自分たちを守るために戦うつー族を見て心を入れ替えた
せめてもの恩返しにつー族の里近くに里を新たに作り
つー族へ技術や知識を無償配布していた
今、彼らは畑を耕しながら平和に暮らしている
もちろん、帝国=モララーに恨みを持つ人々が来ることもあったが
隣人が他ならぬつー族であったため
「あの人たちが認めたんなら」と、みんなあっさり矛先を収めた
「・・・ろして、くれ」
「ああん?
”的”がしゃべるなよ」
練習用丸太の中に固定されている虐待厨へ、つーはぼやいた
虐待厨は全くほかの種族とは違った
種族単位で相手を裏切り時に騙し、平気で恩を仇で返す
だから、今はゴキブリと同じ扱いを彼らは受けていた
「おーい、ちょっと集まってくれ
西のほうで、虐待厨の集落が見つかったんだ!」
「なんだって?」
絶対に和解が不可能な、ただしゃべるだけの悪質な害虫
そんなものは駆除一択である
人々の虐待厨へのその扱いが終わる時があるとすれば
それは虐待厨が根絶された後の話だろう
(おわり)
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