したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

( ^ω^)冒険者たちのようです

1名無しさん:2024/08/19(月) 00:43:58 ID:28mrGroE0

何物にも縛られることなく、自由の風に吹かれて生きる。
”冒険者”という生業に、そんな理想像を抱く者たちは多い。

だが実のところ、命と日銭を天秤にかける日々を送る、難儀な稼業だ。

英雄の冒険譚を聞いて育った腕自慢の中には、胸を躍らせて出立しては、
たった一人で名を上げようと、鼻息を荒くするものも後を絶たない。

この大陸では今、空前の<大冒険者時代>の世と謳われていた。

あらゆる病を打ち消すと噂される、奈落に一度だけ咲く花。
希代の彫刻家が残した、魔力さえも宿すと言われる天球儀。
その血によって不老不死を得るとも言われる、伝説の龍伝承。

そのどれもが、胡散臭い眉唾もののおとぎ話とも思われるだろう。
だが事実として、大陸各地で未曽有の大発見を齎したものたちは、
莫大な富を築いたり、人々の間に語り継がれるだけの栄誉を手にしてきた。
そんな果報者たちも、数える程度にはいるのが現実だ。

しかし、この大陸の未踏区域の厳しさたるや、そう甘いものではない。

自然発生的に現れては、村を襲う妖鬼。
人を食い物として、亡骸をも弄ぶ巨躯の人鬼。
血の通う肉体を求めて夜毎さまよう、屍鬼の類。
商隊を付け狙い、金品を奪うような野党の輩も絶えない。

冒険者とは、そのようなものたちと時に相対することもある。

2名無しさん:2024/08/19(月) 00:45:11 ID:28mrGroE0

更に、開拓区域に住み暮らす人々に問題が起こるのも、日常だ。
便利屋まがいの雑用や荒事に身を捧げては、幾ばくかの銀貨のために命を切り売りする。
彼らはいつも、日々の生をやり過ごすようにして生きている。

肉体や心も、いつしか少しずつ蝕まれては、疲弊していく。
老いか、病か、古傷の痛みか、あるいは心に負った傷か。
冒険者のまま死ぬか、生きるかを迫られる時は、やがて来る。

死に場所を定める、覚悟の猶予。
その時が与えられればまだ良いが、それは今日や明日になるかも知れない。
大きな栄光や富を志すものの多くが、道半ばで儚く命を散らせていく。

いかに鍛え上げられた強靭な肉体であろうとも、高位の魔術の使い手でも同じことだ。
冒険者稼業をしてみれば分かるが、孤高の英雄など、物語の中の話でしかあり得ない。

力無きものほど非力を補い合い、結び付き合い、より強くありたい。

そのために冒険者は、<パーティー>を組む。
互いに奮い立たせ、励まし、それらが持てる力をより以上に発揮する。
強い結束で結ばれた仲間同士ほど、それが顕著に見られるというのが経験談だ。

(金銭や異性がらみのトラブルで解散することもままあるのだが)

3名無しさん:2024/08/19(月) 00:48:19 ID:28mrGroE0

冒険者の資質として、最も大切な物。
それは、”何かを信じる事”なのだと思う。

仲間を信じ、自分を信じ、信念を貫くこと。
自らが信を置けなければ、他者もまた、それを映す水鏡となるだろう。

決して目には見えず、言葉で言っても陳腐になるだけの、不確かなもの。
だが、命を散らすか否かの瀬戸際の絶望の闇の中でこそ、強く光輝く。

信頼が紡ぐ絆は、そんな時こそ大きな力となるはずだ。

ただ一人で困難に抗い、打ち勝ち続ける事が出来るほど、人は強くない。
だからまずは、同好の士を募ってそれを育むといい。

せめて苦楽を共に分かつ事の出来る、信の置ける絆を。


――頁をめくると、少し崩した字でこう締めくくられていた。


冒険者連中には、酒浸りで金の無心ばかりのろくでなしもいれば、
仲間を庇って志半ばに命を落とすような、誰からも惜しまれる人物もいる。
色々な人間がいるから、人間観察が趣味の僕からすれば飽きないものさ。

僕自身、他の人には決して勧めない職業だけれどね。

夢を追い、殉ずる覚悟を決めたもの。
眩き栄光や富のために、野心を燃やすもの。
日銭を稼ぐために、仕方なく身をやつしているもの
あるいは、復讐の炎を心に宿すもの。

人の数だけ冒険があり、やがて終わりがやってくる。
自分で一歩目を踏み出すのは容易い。
けれどその道の先には、決して幸せだけが待ち受けているとは限らない。

だから、心して第一歩を歩むんだ。



<大陸歴 218年 ある冒険者の手記より>


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板