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( ゚д゚ )絵描きとヴィオラのようですミセ*゚ー゚)リ

201 ◆gMoTB8ciTo:2024/05/01(水) 00:51:05 ID:yBkR092c0

窓から漏れた日の光が、テーブルの上の何かに反射した。

それは、出しっぱなしのヴィオラだった。
もう、演奏はおろか、クリーニングすら久しくしていない。
カーボンケースに入れて保管しなければいけない筈の楽器は、いつの間にか部屋の隅のガラクタと化している。
あれだけ大事にしていた楽器がそんな状態になってなお、私は全く動く気になれなかった。

ミルナは、大学の作業部屋で倒れていた。

彼が頻繁に出入りしていたらしい棟の隅にある、ほとんど誰も使わない、古びた作業部屋の一室。
ミルナはそこに、去年の秋頃からずっと籠っていた。まるで何かに憑りつかれたみたいに、一枚の絵を描くことに没頭していたようだった。

春休みに入り、学生はおろか教員すら大学を訪れなくなっても、彼はずっと部屋に籠って絵を描き続けていた。
食事も、睡眠も、まるで自分の人生そのものを焚火にくべるように。
私が軽はずみで彼に課した、詰まらない”お願い”のために。

倒れているミルナを発見したのは、偶然大学にいた、白髭先生とお父様。
お父様はすぐに救急車を呼び、ミルナがずっと手に持っていたスマホから、私に連絡したとのこと。
けれど、そんな過去の状況整理に意味はない。

病院に運び込まれる前に、私が呑気にカフェにいたあの時間にはもう、ミルナの息はなかったのだから。


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