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異界大戦記のようです
1
:
名無しさん
:2023/04/01(土) 23:39:57 ID:mfVt/ZZU0
世界の縮図が変わろうとしていた。
魔法を操り、自らを神の僕と信じるエルフ達が支配するこの星。
その中の3大大陸に存在する5つの列強と呼ばれる国が衝突する寸前にまでなっていた。
きっかけは列強最強の国家と名高いルナイファ帝国と、同じく列強のニータ王国との国境で起こった小さな事件であった。
それぞれがその犯行の責任は相手側にあると主張しあっていた。
互いに堂々と国として主張をしていたがその内情は全く異なるものであった。
ルナイファに関しては元から周辺国家を攻め落とし、支配する典型的な侵略国家であった。
列強クラスの国との戦いはなかったものの、同大陸に存在し隣接する小国はほぼすべて支配していると行っても過言ではない。
そして大陸統一のためにも同じ大陸で国境を接しているニータはいつかは落としたいと考えていたことから、この機会に攻め込むのが良いと言う意見で国が固まりつつあった。
83
:
名無しさん
:2023/04/15(土) 12:14:23 ID:N5F9bWIA0
(; `ー´)「なんだ、これは......」
一騎、そしてまた一騎とワイバーンが爆発し、なにもできぬまま消えていく。
空には守るはずものはいなくなり、代わりに謎の飛行物体が支配する。
そしてそれらは、赤い雨のお次と言わんばかりに、新たなものを降らせる。
それは、黒い複数の塊。
(; `ー´)「なんなんだ、これはぁ!!?」
黒い雨は、基地に降り注ぐ。
それは、凄まじい轟音と共に基地を炎で包み込んだ。
84
:
名無しさん
:2023/04/15(土) 12:14:46 ID:N5F9bWIA0
続く
85
:
名無しさん
:2023/04/15(土) 12:48:42 ID:cbpHkiFw0
乙
この量でこの更新ペースは凄い
召還された人達はどう思ってるのか気になるところ
86
:
名無しさん
:2023/04/15(土) 20:54:21 ID:GZf6d6AE0
乙です
87
:
名無しさん
:2023/04/17(月) 00:06:53 ID:rJ3Au5B60
期待!
88
:
名無しさん
:2023/04/22(土) 11:46:32 ID:6dVV0mEQ0
アリベシ法書国 旧国境付近
1463年7月13日
進軍は、滞りなく進んでいた。
これまでの苦戦が嘘かのようである。
ルナイファから送られてくる兵器の数々と大量の物資。
これによりアリベシは息を吹き返したかのように前線を押し上げていた。
これまで奪われる立場であったはずが気がつけば過去に奪われた土地を全て奪い返し、逆に奪い取らんとするほどの勢いである。
( ・∀・)「まさか、ここが取り返せるなんてな」
そう独り言を呟く。
戦火によりほとんどの面影は残っていないがそこは、彼にとって故郷であった。
それを、自らの手で取り返したのだ。
まさに歴史的に残る偉業であろうそれを、成し遂げたのだ。
その事実が彼を充実感で満たしていく。
89
:
名無しさん
:2023/04/22(土) 11:48:00 ID:6dVV0mEQ0
ルナイファには感謝してもしきれないだろう。
同じ列強と呼ばれていたこともあり、これまでは多少はあれどそこまでの差は無いのではないかと考えていた。
それがどうだ。
彼の国はとんでもない量、そして技術の物資をこちらへ送り込んできた。
その国力、にわかには信じがたい。
ただでさえニータと睨みあっていること、また弱敵とはいえ海を越えた先、召喚地への出兵もあるのだ。
それにも関わらず戦況を一変させるほどのものを簡単に送り込んできている。
今食べている、この携帯食料もそうである。
これまでのアリベシにおける携帯食料と言えば干し肉や燻製などが主であった。
だがルナイファから送られてきたそれは、保存魔法によりどんな環境でも半年という長期の間、腐らずに持ち運べるという調理済みの食べ物。
大量に生産しなくてはいけない食料に、魔法を使うことのできるその国力。
そして長期保存を可能にする高度な魔法。
自国では決して真似できないだろう。
90
:
名無しさん
:2023/04/22(土) 11:48:25 ID:6dVV0mEQ0
心強いを通り越し、恐怖すら覚えるほどの、異次元の味方である。
もはや、勝負の行方は決まったのではないかとすら思えるほどだ。
( ・∀・)「だけど、まだ終わりじゃないんだよなぁ」
だが、まだ戦いは終わらない。
むしろこれからと言ってもいいだろう。
ルナイファからの物資がある今ならば、法書で示された道標を辿ることができる。
法書の示す道、大陸統一へと。
そのとき、鐘の音が鳴り響いた。
休憩を終わり、進撃を再開する合図である。
( ・∀・)「......さて」
その音を聞き、まだ食べかけであった食料を腹に詰め込み、立ち上がる。
そうして、睨むように地平線を眺める。
まだまだこの土地の果ては見えそうもない。
だがしかし。
不安はない。
自分たちの後ろには神のごとき強さを誇る、味方がいるのだから。
モララーは希望共に、敵国へと足を踏み入れた。
91
:
名無しさん
:2023/04/22(土) 11:49:33 ID:6dVV0mEQ0
ムー国 統治局
1463年7月13日
最悪の目覚めである。
この日のデルタの目覚めはそうとしか言いようがなかった。
最近頻発した異常事態により、珍しく統治局に泊まり込みで仕事をしていたのが昨日のこと。
仕事が区切りがつき、仮眠を取ろうと少し寝ていたのが数時間前。
そして。
たった今、謎の爆発音により彼は目を覚ましたのである。
( "ゞ)「なっ......はっ?......え?」
いったい何事だと飛び起きた彼の目には信じられない光景が広がっていた。
窓の外に見えるのは燃え盛る、建物の崩れた基地であった。
倉庫も、兵舎も、ワイバーンを召喚する召喚陣地も。
全てが壊され、がらくたと化していた。
92
:
名無しさん
:2023/04/22(土) 11:50:18 ID:6dVV0mEQ0
ムーに駐在する軍はそこまで強力な軍ではない。
だがしかし、そこにいるのは世界最強のルナイファの兵であることには代わりはないのだ。
辺境の基地とはいえ、下位の列強とも張り合える力はあると、少なくともデルタは考えていた。
だが、その力は。
更なる圧倒的な力により、ねじ伏せられた。
(; "ゞ)「......」
だんだんと頭が冴え始め、これが夢ではないと理解すると身体中から汗が吹き出した。
あまりにも現実離れした光景に、受け入れるのにかなりの時間がかかっていた。
だが、ようやく現実を理解する。
死がそこまで、迫っているのだと。
(; "ゞ)「に、逃げ、ないと......」
有事の際の対処マニュアルがあったことは覚えている。
だが、そんなものを思いだし、実行できるほどの余裕が彼にはなかった。
ただひたすらに燃える炎から逃げるように彼は走り出した。
93
:
名無しさん
:2023/04/22(土) 11:50:43 ID:6dVV0mEQ0
そんなデルタが逃げようと走り出した頃。
川; ゚ -゚)「はっ......はっ......はっ......」
彼女、ソーサクの潜入諜報員であるクーは恐怖を押し殺すように短い呼吸を繰り返し、物陰に隠れていた。
そのすぐ近くでは猛烈な爆発音がなり響いている。
彼女が今いる場所。
それは基地の近くであった。
撤退してきた先遣隊の情報を得ようと、基地への潜入を試みていたのだ。
普段であれば簡単に潜り込めたはずであった。
しかし、最近の事情から警戒を強めていた基地に潜入するのはなかなかに困難であり、内部まで入り込めていなかった。
そしてそれが、彼女にとって幸運なことに、この地獄のような攻撃から逃れることができたのである。
とはいえ無傷ではない。
至るところで発生している火事で火傷を、そして衝撃で飛んできたガラスの破片が腕に突き刺さり、出血をしていた。
94
:
名無しさん
:2023/04/22(土) 11:51:27 ID:6dVV0mEQ0
だがもし、潜入が上手くいっていたならば。
こんな傷では済むはずがない。
すぐそこに転がる死体が、自分の姿であっただろう。
そんな嫌な考えが頭から離れず、火傷と傷の痛みと戦場特有の極度の緊張感から息が乱れ、変装魔法を使うどころではなくなってしまっている状態である。
さらには逃げなくてはと、頭では考えてはいても体が動かない。
ただただ呼吸をし、理解できない現実を眺めることしかできない。
そうしていると、気がつけば彼女は通信用の魔石を握りしめていた。
定時の報告に使うそれを、なぜ取り出したのか、いつ取り出したのか分からない。
だがそれに気がつくと彼女は、一人の男の顔を思いだし、すがるように魔石に魔力を込めた。
95
:
名無しさん
:2023/04/22(土) 11:52:01 ID:6dVV0mEQ0
『......んぁ?なんだこんな時間に......ふあ......』
すると、そこからは自分の望んだものの声が聞こえた。
自分の同僚であり、心を許すことのできる唯一無二の親友の声。
川; ゚ -゚)「ど......くお......」
震える声で彼女は彼の名前を呼んだ。
その声に、魔石の向こうの彼はなにかを感じたのだろう。
すぐに返事が返ってくる。
『......クー?どうした?なにがあった?』
川; ゚ -゚)「分からない......分からないんだ......」
『おいおい、落ち着けよ。な?落ち着いて話を』
川; ゚ -゚)「し、死にたくない。死にたくないよ、ドクオ......」
『く、クー!?お、落ち着け。一旦今の状況を教えてくれ。死ぬってなんだ?まさか......潜入がばれたのか!?』
川; ゚ -゚)「ちが......」
96
:
名無しさん
:2023/04/22(土) 11:52:32 ID:6dVV0mEQ0
ドクオの言葉を否定しようとしたとき、その声を遮るように再び、爆発音が辺りを包み込む。
どうやら音の方角から、基地の次は港にある施設や艦が狙われているようである。
『クー!なんだ今の音!?そっちでなにが起こっているんだ!?』
川; ゚ -゚)「あ、あ......」
伝えようにも言葉になら無い。
そもそも見ている彼女にも、なにが起こっているのか理解出来ていないのだから。
『くそっ、クー!なにがあったかわからんが逃げれるならそこから早く逃げろ!さっきの音はヤバい!逃げるんだ!』
川; ゚ -゚)「っ!」
だが、彼の逃げろと言う言葉だけは理解できた。
混乱していた頭に、まっすぐと向けられた命令は意外なほどすんなりと体が受け入れ、これまで動かなかった体が嘘のように動き出す。
そうして彼女もデルタと同じように、生き残るため、逃げるために走り出した。
97
:
名無しさん
:2023/04/22(土) 11:54:03 ID:6dVV0mEQ0
ムー国 統治軍基地 軍港
(; `ー´)「ぐっ......」
猛烈な攻撃であった。
基地が攻撃を受け、呆気にとられていたところに追撃とばかりにあの謎の飛行物体が襲ってきたのだ。
だが自分が死んでおらず、周りも全滅していないのは港を攻撃してきた敵が基地を攻撃したそれよりも少ない数であったからだろう。
改めて被害を確認するため、辺りを見渡すと停泊していたいくつもの艦は燃え盛り、敵が上陸しようと接近してきた場合を想定して用意していた魔方陣も叩き潰されている。
これが一瞬にして引き起こされたのだ。
絶望的な被害である。
悪魔か神かのごとき、攻撃。
こんな攻撃ができる存在は、そのどちらかしかないとネーノは感じていた。
そんな奴らが、なぜ我々の敵として現れたのか。
突如現れた強大な敵に恐怖を感じ、震えを抑えることができない。
98
:
名無しさん
:2023/04/22(土) 11:55:29 ID:6dVV0mEQ0
(# `ー´)「......くそっ!残った兵を集めろ!艦を出し、敵を迎え撃つぞ!何としても上陸を防ぐんだ!」
だがしかし、彼は軍人である。
どんな敵であろうと、立ち向かわなくてはならないのだ。
必死に指示をだし、人員を集める。
何とか生き残るために必死に行動をする。
だが、集まった人員は明らかに少ない。
これでは艦を出そうにも出せる数は少なそうである。
もっとも、先の攻撃で艦自体の数がかなり減っているのだが。
とはいえ、魔法は各個人の才能に左右され、それを補うには数が必要である。
ただでさえ練度が高くないのにさらに数まで少なければ出来ることは少ない。
敵が強大である以上、それなりの数を揃えなければ抵抗すら出来ない可能性すらあるのだ。
99
:
名無しさん
:2023/04/22(土) 11:56:28 ID:6dVV0mEQ0
(; `ー´)(兵舎がやられたのが痛すぎる......あれのせいで兵が足りん。くそ、初動の遅れがこんなにも響くとは。だがだからといって一般人を集めたところで役には......)
(; `ー´)「......いや、待てよ?確か撤退してきた先遣隊の艦は別のところに停泊していたはず。それにそこの兵士も病院......」
そこではっと気がつく。
先ほどの二回の攻撃、そのどちらも基地や港と軍施設のみへの攻撃であった。
街への攻撃はなく、そして被害は無いように思われる。
であるならば、病院はまだ無事であり少なくとも撤退してきた4隻分の戦力は残っているはずである。
精神異常とのことだがそんなことを気にしている余裕はない。
(# `ー´)「病院にいる先遣隊員を召集!出撃するように連絡しろ!」
戦場は、動き続ける。
100
:
名無しさん
:2023/04/22(土) 11:57:06 ID:6dVV0mEQ0
ムー国 東沿岸
(,,//Д゚)「......」
まさかこんなにも早く、再び海に出ることになるとは考えてもなかった。
ほんの少し前に味わった死の恐怖。
あの恐怖に再び立ち向かわなくてはならなくなるとは。
包帯を巻いた右目を手で押さえ、海を睨む。
あのとき、海から現れたあの高速のなにか。
あれが突き刺さった艦は抵抗することすら出来ずに、沈んだ。
唯一、魔壁を使用した艦のみ生き残ったが、それも数発耐えたのみで完全に防ぎきることは出来なかった。
あのとき、攻撃を受け沈んだ艦から自分が助けられたのはほんの偶然であった。
旗艦であるギコが乗っていた艦は真っ先に叩き潰され、その後に続く攻撃の嵐に艦隊はもはや崩壊していたと言ってもいい状態であった。
101
:
名無しさん
:2023/04/22(土) 11:58:06 ID:6dVV0mEQ0
最早出来ることは撤退のみとなり、必死に逃げようとしていた一隻にたまたま拾われ生き延びることができた。
他にも何人かは助かったが、多くはあの海に沈んだのだろう。
(,,//Д )「......」
あの海戦、いや虐殺で死んだ仲間の顔を思い出す。
今彼が、ここに立っていられるのも彼らの死の復讐、無念を晴らしたいという感情からである。
もし、それがなければこの恐怖に耐えられなかった。
事実、命令により無理やり出撃させられた兵たちのなかには、先の攻撃からあの海で見た攻撃と同じものだと理解しており、すなわちこれから死地に向かうのだと発狂してしまうものもいた。
このままでは戦う前に、崩壊してしまう。
102
:
名無しさん
:2023/04/22(土) 11:59:14 ID:6dVV0mEQ0
(,,//Д゚)「......いや、すでにか」
そうギコは自嘲気味に呟く。
辺りを見渡せば先遣隊の生き残り4隻とムー国で運よく攻撃に当たらなかった18隻の計22隻が進んでいる。
艦隊としての連携の練度は即席であるためお察しの程度だが、艦数だけで言えば大部隊である。
だがこれを大きく上回る、そして運用法についての訓練は足りなかったものの最新鋭艦までいた艦隊が一方的にやられたのだ。
どうなるか、ギコたちには分かりきってしまっていた。
もう奴らの、どんなやつでどこの国のやつかは分からないが、攻撃を受けた時点で崩壊していたのだ。
103
:
名無しさん
:2023/04/22(土) 12:01:52 ID:6dVV0mEQ0
(,,//Д゚)「だが......」
それでもギコはキッと海を睨む。
敵がいるであろう方角を、強く。
ただではやられない。
せめて敵に一泡吹かせなくては死んでも死にきれない。
我々は最強のルナイファ帝国なのだから。
(,,//Д゚)「先に話した通り、4隻のみだが艦隊で防御陣を組み、突撃する」
『......よろしいのですか?』
他の艦から、確認の魔信が届く。
ワカッテマスがいなくなった今、4隻の艦隊についての指揮はギコが執っていた。
そして彼は先の戦い、虐殺から執れる限りの対策を行おうとしていた。
(,,//Д゚)「速度、射程、威力、燃費その他......すべて性能が落ちるがかまわん。魔壁に可能な限り魔力を回し、敵の遠距離攻撃を防ぎ、接近する。敵に近づかなくては話にならないからな」
『いえ、それはその通りだと思います。そうではなく......他の、ムーの艦についてです』
(,,//Д-)「......仕方ないだろう。信じてもらえなかったんだ。我らだけでも、やれることをやろう」
『......了解、いたしました。すぐに準備いたします』
(,,//Д゚)「あぁ」
104
:
名無しさん
:2023/04/22(土) 12:03:38 ID:6dVV0mEQ0
そうして、22隻の艦隊から4隻が離れていく。
その様子に驚いたのはムー国の艦隊である。
一緒に戦うはずが急に陣形を変えたかと思うと突然守りの体制に入り、さらにそのまま突撃しだしたのだから。
( `ー´)「何やっているんだ奴らは?」
これには思わず首を捻ってしまう。
敵からの攻撃が複数来ているであれば、守りを固めつつ進軍する必要があるため、あのような陣形になることも分かる。
だが、敵が見えないうちに守りの体制に入るとは何事か。
何もないところで急に防御を始め、まるで怯えるように進む4隻はあまりにみっともなく目に映る。
そうこうしているうちに4隻の艦はどんどんと離れていき、艦隊は二つへと別れていく。
( `ー´)「......くそっ、やはり精神病の奴らに頼るのは間違いだったか?」
確かに奴らは、敵は見えない距離から攻撃できるだの意味不明なことは言っていた。
だが、そんなことはあり得ない。
見えない位置まで攻撃を飛ばすなんてそんな魔法はないし、もしそんなものを飛ばせてもどうやって当てるというのか。
見えないものを当てるなど、不可能である。
105
:
名無しさん
:2023/04/22(土) 12:04:23 ID:6dVV0mEQ0
現に、今回攻撃してきた奴らは確かに信じられない速度ではあったが、すべて目視出来ていた。
単に早すぎて見落としていただけなのを奴らは考えすぎているのだ。
そして見落としについては召喚艦により、新たにワイバーンを召喚することが出来ており、上空の警戒も出来ていることからこの問題は解決できている。
( `ー´)「強敵ではあるが、見えるならば何とでもなるはずだ」
さらに運よく、生き残った艦には対ワイバーンに特化した艦が複数ある。
これさえあれば高速の飛行物体を攻撃しつつ、敵が見え次第に他の艦で魔壁を貼り、攻撃を軽減することで優位にことを進められるはずであると考えていたのだ。
そうして二つの艦隊は、海を進む。
その二つの艦隊を見つめる影が近づいていることに気づかないまま。
106
:
名無しさん
:2023/04/22(土) 12:04:47 ID:6dVV0mEQ0
続く
107
:
名無しさん
:2023/04/22(土) 14:35:11 ID:QLmRpcNw0
乙です
108
:
名無しさん
:2023/04/22(土) 23:17:12 ID:/jdv75Vs0
わくわく
109
:
名無しさん
:2023/04/29(土) 10:45:40 ID:Z3EUAgNQ0
雑な世界地図
https://i.imgur.com/W457DcP.jpg
110
:
名無しさん
:2023/04/29(土) 10:46:20 ID:Z3EUAgNQ0
ソーサク連邦 情報戦略室
1463年7月13日
一人の男が手に魔信を握りしめ、必死に叫んでいた。
(;'A`)「クー!返事をしろ!クー!!」
『......』
(;'A`)「......くそっ!」
だが、返事はない。
爆発音がした後、急に音が聞こえなくなった。
それが魔信の乱れなのか、もしくは。
死にたくない。
そう言ったクーの声が思い出される。
不吉な考えが頭を支配し、彼を苦しめる。
111
:
名無しさん
:2023/04/29(土) 10:47:04 ID:Z3EUAgNQ0
(;'A`)「......どうする?どうすればいい?」
何も情報などない。
あるのは、クーの周りでなにかとんでもないことが起きたであろうということと、何かしらの大爆発が発生したということ。
それが人為的なものなのか、自然的なものなのか。
助けようにもこれではどうにもならない。
(;'A`)「......そうだ!念写なら!」
ふと、以前クーが持ち込んだ念写の石板を思い出す。
あれならば座標を指定すれば現在の状況を写し出せるはずである。
とはいえ、距離が距離。
念写に優れた魔法使いでなければ写すことはできないだろう。
(;'A`)「早くしないと!」
何が起きているかはわからない。
だが、だからこそ行動しなくてはいけないのだ。
こうして彼も、何の偶然かクーと時を同じくして走り出したのであった。
112
:
名無しさん
:2023/04/29(土) 10:48:55 ID:Z3EUAgNQ0
ムー国 東沖
艦隊が二つに別れた後、ネーノ率いる18隻が対ワイバーン用に滞空陣形を構築する。
これにより、遠隔にて操作可能な火炎弾を複数打ち上げることができ、また艦隊全体を覆うように薄くではあるが魔壁を構築することができる、対ワイバーンにもっとも強力な布陣を敷いていた。
( `ー´)「割り振りは魔壁に2隻、火炎弾を10隻、残りは遠隔操作補助だ。リンクの準備は?」
『完了しております』
( `ー´)「よろしい」
そうネーノは言いつつ、心の中で舌打ちをする。
ムーにいる魔術師、さらに寄せ集めの艦隊では一隻の魔方陣だけで火炎弾を生成し、さらにそれを操作することはできない。
火炎弾と操作魔法の役割を分担し、補助のための艦を用意しなくてはならなかったのだ。
ただでさえ少ない艦を、このような形で使わざるを得ない状況にネーノは苛ついていた。
113
:
名無しさん
:2023/04/29(土) 10:49:21 ID:Z3EUAgNQ0
だが、話を聞けばあの狂った兵の中にいるギコという男はそんな大魔法を一人で行える凄腕だというではないか。
もし彼が狂わずにいたらそれだけで強力な味方となったというのに。
それがどうだ、いくら強大な敵だからといって敵に怯え、国ではなく自分たちを守るためだけに防御陣を組み、無駄な魔力を消耗している。
はっきり言って、デコイ程度の役割しか果たせないだろう。
( `ー´)「......くそっ」
しかし無い物ねだりをしても現実は変わらない。
彼らもルナイファの兵士なのだ。
精々国のために役立ってくれよと、囮ぐらいにはなればいいと考え、艦隊を進める。
114
:
名無しさん
:2023/04/29(土) 10:49:53 ID:Z3EUAgNQ0
不思議なほど、穏やかな海である。
先ほどまでの攻撃が嘘のように敵は見当たらない。
あの高速の飛行物体もどこかに消えてしまっていた。
( `ー´)(......どこからくる?)
ワイバーンが撃墜されたとき、艦隊を見たと報告があった。
敵の上陸はまず間違いないはず。
だが正確な距離は聞いていなかったため、どの程度接近されたかは不明なままであった。
また数も不明であり、相変わらず敵の情報は何もない。
( `ー´)(......)
耳を澄ませ、あの飛行物体が発していた音が聞こえないかとも思ったが聞こえるのは海を進む艦の音のみ。
115
:
名無しさん
:2023/04/29(土) 10:50:24 ID:Z3EUAgNQ0
てっきり艦に向かって奴らがくるのではないかと考えていたがまるで近づいてくる様子がない。
( `ー´)「不気味だな、一体なにをしてくるのか」
影すら掴めないその敵。
だが、掴めていないのは彼らのみであった。
ガアアァァァン!!
突如爆発、そして魔壁が叩き割られる音が響く。
驚いて音のした方角を見ると一隻の艦が燃え、沈もうとしていた。
(; `ー´)「なにっ!?」
警戒をし、魔壁を展開していたはずである。
防御に特化したときのものと比較すると、微弱ながらもワイバーンの火炎弾をある程度耐えるほどの効力はあるはずであった。
事実、これまで多くの戦場にて効果を発揮してきたのだ。
だが、全くと言っていいほど防げていない。
理解不能の、圧倒的な暴力。
116
:
名無しさん
:2023/04/29(土) 10:50:53 ID:Z3EUAgNQ0
そして、何より理解できないのは辺りを見渡してもその攻撃した主が見つからないことであった。
(; `ー´)「こ、今度の敵は透明だとでもいうのか!?」
必死に頭を捻り、一つの可能性として透明な敵が思い当たる。
だがもしそれが本当なのだとすればとんでもないことだ。
艦隊全体を隠すほどの魔法など、ギコの魔法技術とは比較にならない。
一体どれだけの凄腕な魔術師と魔石、そして巨大で複雑な魔方陣が必要になるか想像もつかない。
そもそもそんなことが可能な魔法使いを見たこともなければ聞いたことすらないのだ。
(; `ー´)「ぐ、ぐぅ......陣形を組み換え、魔壁を強化しろ!また周囲を警戒!近くにいるはずだ!魔力の痕跡と航跡波を探せ!」
だがもし透明でも艦が通ったあと、航跡波は隠せないはず。
またそれを偽装しようとすれば魔力の痕跡が残るはず。
その考えのもと、彼は艦隊に警戒と策敵をよびかける。
117
:
名無しさん
:2023/04/29(土) 10:51:38 ID:Z3EUAgNQ0
しかし。
(; `ー´)「まだ見つからないのか!?」
いくら探せども、目的のものは見つからない。
その間にも攻撃は続き、守りを固めようともがいている間にもはや戦力のほとんどを沈められている。
全く理解できない現実を前に彼は、ただただ絶望することしかできない。
そしてそんな犠牲が続く中で、彼は見た。
遥か彼方から迫る、光を。
ようやく、彼は一つの可能性に至る。
見えない位置からの長距離攻撃。
先遣隊の兵たちは狂ってなどいなかったのではないか、と。
だがもしそうなのだとしたら。
(; `ー´)「勝てるわけが......」
ない、そう呟く前に艦隊は炎に包まれる。
そうして何が起きたかもわからないまま。
18隻の艦はムーの海に消えた。
118
:
名無しさん
:2023/04/29(土) 10:52:37 ID:Z3EUAgNQ0
一方でギコたち4隻の艦はまだ、海の上に浮かんでいた。
(;,,//Д゚)「ぐ、ごぉ......」
こちらも凄まじい爆発に包まれるが、その攻撃を防ぎきることに成功していた。
防御に魔力を全部回していたこと、また残っていた4隻の艦が魔壁に特化した魔防艦であり、うち一隻は最新鋭艦であったこと。
そしてなにより優秀な魔術師であるギコがいたことで、少数の艦ながらも攻撃に耐えることに成功していた。
(;,,//Д゚)「こ、これほどなのか......敵は!!」
しかし、ギコの顔色はよくはない。
むしろ悪いと言ってもいいだろう。
ここまでギコの考え通り、攻撃を防ぎつつ、艦隊を進めることはできてはいる。
『ま、魔石の消耗が激しすぎます!このままでは!』
『魔方陣が衝撃により一部で不具合が発生!このままだと暴走する恐れが!!』
『魔術師が耐えきれません!!すでに複数名が魔法の使用限界により倒れています!』
(;,,//Д゚)「......」
119
:
名無しさん
:2023/04/29(土) 10:53:10 ID:Z3EUAgNQ0
相次ぐ絶望的な報告。
そして、ギコ自身もこれ以上の攻撃は長く耐えられないことが分かっていた。
しかし、だからと言ってどうすれば良いのか。
もう引くことはできない。
敵も逃がしてはくれないだろう。
だが、まだ見えぬ敵に接近し攻撃を叩き込めるとも思えない。
ならばどうするか。
(,,//Д゚)「......通信術士。本国、及び本隊へ連絡しろ」
『は......は!なにをでしょうか』
(,,//Д゚)「全てだ。今起きていること、我々が相手にしている敵のこと、分かる限りでいい。伝えるんだ」
『しかし、信じてもらえるとは......』
120
:
名無しさん
:2023/04/29(土) 10:54:33 ID:Z3EUAgNQ0
(,,//Д゚)「だろうな。だが、記憶の片隅にでもあれば、なにかが変わるかもしれん。ルナイファの軍人として、最後まで、国のために働こうではないか。未来を繋ぐために!」
『っ!りょ、了解しました!』
(,,//Д゚)「......さて」
次々と襲い来る爆発の雨。
あとどれだけ持ちこたえられるのか。
(#,,//Д゚)「ルナイファ帝国を舐めるなよ、化け物どもめ!」
これから数分後には自分達はこの世にいないだろう。
だがそれでも進む。
彼らは、軍人なのだ。
国から進めと言われたのならば、そこに道がなく、死に至ると知っていても進まねばならない。
(#,,//Д゚)「があああぁぁぁぁ!!!」
一際魔壁が強く光輝き、艦隊を包む。
ギコの意地、魔術師の誇りをかけた最後の魔法。
そんな魔法を嘲笑うかのごとく、高速で迫る十数発の光の点が流星のように降り注ぐ。
いくつかは防ぐものの、いつしかその数と威力の前にあっさりと叩き潰され。
そして、考える暇もなく。
彼らはこの世から去ることとなった。
121
:
名無しさん
:2023/04/29(土) 10:54:56 ID:Z3EUAgNQ0
トウキュ王国 港
ルナイファ帝国の南、そしてムーの北、ちょうど中間辺りに存在する小さな島国、トウキュ。
ムーのようにルナイファからの影響が大きい属国ではあるが人間国家ではなく、エルフの国である。
この国の特徴としてはルナイファとムーとの航路上にあることから、ムーで取れる様々な物品を運ぶための中継地として利用されている。
この他にも周辺の国家からルナイファへ向かう船が立ち寄る場所として利用されており、ルナイファの属国の中でも重要度が高い。
またルナイファの南方港に近い位置にあることから、防衛的にも非常に重要な拠点として扱われている国家であった。
そんなトウキュ、普段であれば港にいる人々は、様々な国から入る色とりどりの特産物に笑顔を浮かべるだろう。
事実、多くの人が商談などで盛り上がっている。
122
:
名無しさん
:2023/04/29(土) 10:55:33 ID:Z3EUAgNQ0
だが、そんななかで一際険しい顔を浮かべる集団があった。
从 ゚∀从「さっきの魔信......何だったんだ?」
( ´ー`)「知らねーよ、って言いたいが......そうも言ってられんなこりゃ」
二人揃って眉間に皺を寄せあい、話す軍服の男女。
彼らは召喚地制圧に向けて派遣された本隊一員であり、補給としてここに訪れていた。
何事もなければすぐにでも準備を進め、この国を離れるはずであったが、そうもいかない事態が起きたようである。
その話の中心は先ほど届けられた魔信からのメッセージであった。
( ´ー`)「ギコ様クラスの魔法ですら耐えきれない猛攻、恐ろしい速度で迎撃不能、さらには敵が見当たらないと来た......幻覚魔法か?」
从 ゚∀从「だとしてもそれはそれでやべぇぞ。艦隊全員が幻覚見るなんてとんでもないことだろ」
123
:
名無しさん
:2023/04/29(土) 10:55:55 ID:Z3EUAgNQ0
( ´ー`)「だよなぁ......妄言って可能性は」
从 ゚∀从「ないだろ。もしそうなら、今頃連絡があるはずだ」
そういい、彼女、ハインはそばに置いてある魔信を叩く。
从 ゚∀从「さっきから何度も連絡してるが艦隊から何一つ反応がねぇ。それどころかムーの国からもだ」
( ´ー`)「攻撃を受けている、って連絡はあったよな?」
从 ゚∀从「あぁ」
( ´ー`)「......まさか、全滅?」
从 ゚∀从「いやいや......まぁ、突然の奇襲だし、何らかのトラブルだろ」
( ´ー`)「まぁ......だな」
从 ゚∀从「......」
連絡がないことに、一つの可能性として浮かび上がったのはとても信じられるものではなかった。
だがしかし、否定できるものが何一つないのもまた事実であるのだ。
124
:
名無しさん
:2023/04/29(土) 10:56:25 ID:Z3EUAgNQ0
从 ゚∀从「とりあえず、だ」
( ´ー`)「うん?」
从 ゚∀从「本国に連絡しよう。召喚地への旅行は一旦保留ってな」
( ´ー`)「正気か?」
从 ゚∀从「勿論。むしろこの状況で進軍するとか正気の沙汰じゃねーぞ」
( ´ー`)「その正気じゃないやつが、俺たちのトップなんだぞ?」
もしこの発言が他人に聞かれていたら即刻、処罰されるであろう発言である。
だがこれもまた、事実なのだ。
その事を思い出したからか、ハインは再び眉間に皺を寄せる。
( ´ー`)「先遣隊が消滅、そしてムーすら攻撃を受けたとの報告。だというのにさっさとしろとの命令が届いてるぞ」
从; ゚∀从「マジかよ......俺たち揚陸艦がメインだぞ?もともと海岸沿いと制海権を抑えていることを前提とした作戦だったし。なのに艦隊を消滅させたやつがいるかもしれねぇ海域に向かうって......どうしろってんだ?」
( ´ー`)「艦種なんて知らねーんだろ。艦数が多いから何とかなると思ったんじゃねーの?」
从; ��刈椀此屬佑Г�......と言いきれねぇな」
( ´ー`)「まぁ揚陸艦なら魔壁を強めに張れるし......切り込みとかで何とかするしかねーな」
从; ゚∀从「おいおい」
125
:
名無しさん
:2023/04/29(土) 10:57:05 ID:Z3EUAgNQ0
ケラケラと笑いながら話すシラネーヨに対して冗談じゃねーぞと思いつつも、このままでは本当にそれをやるしかなくなる。
太古の昔に廃れたはずの攻撃を真面目に検討する羽目になるかもしれないのだ。
从 ゚∀从「ほんと、とんでもないことになったな」
( ´ー`)「だな......まぁ、なんだかんだ言ったがあれだ」
从 ゚∀从「うん?」
( ´ー`)「俺も責任は取る。情報を集めるため、理由をつけてできる限り出撃を遅らせよう。補給や何やでな」
从 ゚∀从「......助かる。はぁ、減給だけで済むかね?」
( ´ー`)「どうかな。下手すりゃ反逆者扱いか?」
从; ゚∀从「あり得るのがなぁ......ん?」
『......こえてるのか!?おい!』
从 ゚∀从「......っあー」
先ほどまで静かだった魔信が、急にうるさくなる。
その苛立ちを持って叫ぶ、その人物が分かるとシラネーヨとハインはお互いに顔を見合せ、さらに皺を深くした。
126
:
名無しさん
:2023/04/29(土) 10:57:32 ID:Z3EUAgNQ0
『おいっ!!どうした!?返事は!?』
从 ゚∀从「......はいプギャー閣下、申し訳ございません。現在立て混んでおり、反応に遅れました」
( ´ー`)「ご用件は何でしょうか」
『何でしょうか、だと!?ふざけてるのか貴様ら!どこまで無能なんだ!!』
( ´ー`)「申し訳ございません、閣下」
『ふん......まあいい。それで?制圧はいつになる?』
从 ゚∀从「現在、補給が手間取っております。艦数が多くまだしばらくかかるかと」
『バカな!一体どれだけの時間を掛ければ気がすむんだ貴様らは!』
( ´ー`)「まだ一週間はかかるかと」
『......』
沈黙。
だが言葉は無くても遠くで話すその人物が怒りに溢れていることが伝わってくる。
だが、そんなものに臆して無能の言うことを聞くなんてことをハインはしない。
なにも気づかないかのように、話を続ける。
127
:
名無しさん
:2023/04/29(土) 10:58:02 ID:Z3EUAgNQ0
从 ゚∀从「それに閣下もお聞きかと思いますがムーでの出来事が気になります。このまま進めば我々も相応の被害を受ける可能性が」
『それがどうした?』
从 ゚∀从「は?」
『それがどうしたというんだ!!勝てば良いだろう!!それがお前らの仕事だろうが!!最新鋭の艦まで渡したんだ!!どうにかしろ!!』
从 ゚∀从「......微力ながら尽力いたします」
『そんな言葉はどうでもいい。結果を出せ!いいなっ!?』
こちらの返事を待たず、魔信が切られる。
それと同時に大きなため息が出る。
なんでプギャーのような男が自分たちのトップなのか。
( ´ー`)「改めて、やべぇな」
从 ゚∀从「あぁ......」
ただでさえ、未知の敵という不安な要素があるというのにそれ以上の不安が身内にあるのだ。
そんな状況に、二人の顔がしばらく晴れることはなかった。
128
:
名無しさん
:2023/04/29(土) 10:58:25 ID:Z3EUAgNQ0
続く
129
:
修正
:2023/04/29(土) 11:00:11 ID:Z3EUAgNQ0
>>124
从 ゚∀从「とりあえず、だ」
( ´ー`)「うん?」
从 ゚∀从「本国に連絡しよう。召喚地への旅行は一旦保留ってな」
( ´ー`)「正気か?」
从 ゚∀从「勿論。むしろこの状況で進軍するとか正気の沙汰じゃねーぞ」
( ´ー`)「その正気じゃないやつが、俺たちのトップなんだぞ?」
もしこの発言が他人に聞かれていたら即刻、処罰されるであろう発言である。
だがこれもまた、事実なのだ。
その事を思い出したからか、ハインは再び眉間に皺を寄せる。
( ´ー`)「先遣隊が消滅、そしてムーすら攻撃を受けたとの報告。だというのにさっさとしろとの命令が届いてるぞ」
从; ゚∀从「マジかよ......俺たち揚陸艦がメインだぞ?もともと海岸沿いと制海権を抑えていることを前提とした作戦だったし。なのに艦隊を消滅させたやつがいるかもしれねぇ海域に向かうって......どうしろってんだ?」
( ´ー`)「艦種なんて知らねーんだろ。艦数が多いから何とかなると思ったんじゃねーの?」
从; -∀从Гねぇよ......と言いきれねぇな」
( ´ー`)「まぁ揚陸艦なら魔壁を強めに張れるし......切り込みとかで何とかするしかねーな」
从; ゚∀从「おいおい」
130
:
名無しさん
:2023/04/29(土) 11:20:28 ID:KmHknZic0
乙
131
:
名無しさん
:2023/04/29(土) 12:58:45 ID:gMdTjAqc0
乙
現場を理解しようとしない無能が上に立つと苦労するよね…
132
:
名無しさん
:2023/05/06(土) 11:31:43 ID:lPdbZp660
ムー国 基地跡
1463年7月13日
凄まじい爆発の跡。
元々基地があった場所にはもはや、瓦礫以外なにも残っていないと言ってもいい状態であった。
ムーを支配し、また守るために作られた大規模基地。
この国の守る全ての力を集結した、力の結晶であったはずであった。
だが、それはすべて破壊された。
一日前まで多くの人が働いていたとは到底思えない、まさに地獄である。
そんな瓦礫の中、ガラリと何かが動く影が一つ。
(; ゚д゚ )「ぐ......ぅ」
傷だらけになった一人の男、監視塔にいたミルナであった。
133
:
名無しさん
:2023/05/06(土) 11:32:36 ID:lPdbZp660
出血によりふらつく頭を抑えながら辺りを見渡し、改めて状況を把握する。
(; ゚д゚ )「酷すぎる......」
敵の攻撃を事前に察知できていたはずであった。
なのにこの被害。
もはやなにも抵抗できずに一方的にやられたといって間違いないだろう。
なぜ、これほどまでにやられたのか。
攻撃の詳細を思い出そうにもなにも思い出せない。
最初の爆発で頭を打ち、気絶していたようである。
なにも思い出せず、また理解できない現実にただ呆然としていると、彼の耳がある音を捉えた。
バタバタという、不思議な音。
その音はどんどんと近付いてきており、気がつけば不快なまでに大きな音となる。
134
:
名無しさん
:2023/05/06(土) 11:33:20 ID:lPdbZp660
(; ゚д゚ )「なに......が......ぁ?」
その音の正体。
確かに見た。
だがそれが、なんなのか、分からない。
それは、空飛ぶ箱であった。
箱の上には何かが高速で回っているのだろう、残像で円形に見える何かが付いている。
そんな、謎の物体がふわりと、基地の上空を監視するように飛び交っていた。
(; ゚д゚ )「......敵、なのか?」
ワイバーンより少し遅い程度で飛ぶそれ。
やつが、こんな惨状を産み出したのか?
なにも思い出せない彼にはそんな恐怖と共にただそれを眺める。
そう、ただなにも出来ずにぼんやりと眺めていると地上に動く影が見えた。
(; ゚д゚ )「っ!!」
―生き残り!
思わず声を出し、呼び掛けようとしたそのとき。
その影は基地に残されていたのであろう魔道具を用いて、光る電撃の槍を空に放つ。
135
:
名無しさん
:2023/05/06(土) 11:34:17 ID:lPdbZp660
だが、たった一人で放つそれは弱々しく、また速度のある飛行物体には当たらない。
そして。
ババババッ!!
お返しとばかりに、轟音と共にそれは降り注ぐ。
光の雨のようだと、ミルナは感じた。
そしてそれは、地上に降り注ぐと大地を削り、肉を細切れにする。
(; ゚д゚ )「......」
見たことのない魔法であった。
一体、どれほど高名な魔術師であればあれほどの魔法を放てるのだろうか。
少なくともミルナと、あれを比べるとするならばドラゴンに蟻が挑むようなものだ。
とても、勝てる相手ではない。
気がつくと股の部分が温かいもので湿っていることに気がつく。
だが、そんなものを気にする余裕はない。
恐怖のあまり、ただ空中に浮かぶ死神を眺めることしか出来ない。
136
:
名無しさん
:2023/05/06(土) 11:35:14 ID:lPdbZp660
遠くでまた、爆発音や光の雨が降り注ぐ音がする。
その音に生き残りがまた一人、また一人と消えていくのだ。
もう逃げるしかない。
(; ゚д゚ )「っ!?......ぁ?」
そう、思ったときに初めて気がつく。
足が瓦礫に埋もれ、動くことが出来ない。
抵抗にしようにも魔法陣も魔石もないこの状況では、文字通り手も足も出ない。
つまり、このままだと、次は―――
(; д )「......嫌だ!イヤだぁ!!」
口から泡を吹き、狂ったように叫ぶ。
耳にはバタバタと、うるさい死神の羽音が鳴り響く。
塞いでも、聞こえてくる。
まるで付きまとう死神の足音のように。
どんどんと、どんどんと近づいてくるかのようだ。
(; д )「あぁぁあああああ!!」
その声は、爆音に掻き消され。
誰の耳にも届くことはなかった。
―そして、この爆音と共に。
ムー国統治軍はたったの一日で壊滅したのだった。
137
:
名無しさん
:2023/05/06(土) 11:36:02 ID:lPdbZp660
ルナイファ帝国 南方港
1463年7月19日
(;´・ω・`)「ふぅ......」
ルナイファの南に位置するこの港では、多くのエルフや奴隷である人間が働いていた。
通常であればムーなどから入る物資を運ぶところであるが今は多くの軍艦が並び、そこに物資を運び、整備が進められていた。
学徒動員で連れてこられたショボンも魔石などの物資を運んだり、魔法の補助をしたりと夏真っ盛りの中、多く走り回り汗だくになっていた。
辺りを見渡すと屈強な軍人たちも多くの汗を流し、そして奴隷たちの多くは顔色が悪く、さらに何人もが倒れている。
(;´・ω・`)「うーん......」
今回初めての学徒動員であるショボンにはこれが普通の光景なのか、判断ができなかった。
だがもしこれが普通であり、今後も続くのだとすれば自分の選択したことに後悔しそうになる。
138
:
名無しさん
:2023/05/06(土) 11:36:35 ID:lPdbZp660
(;´・ω・`)「......はぁ」
そして、同じく学徒動員に申し込んだツンを思い浮かべる。
彼女は一足先に、艦でこの国を離れていた。
なんでも、治癒魔法が使えることからその補佐役として向かうらしい。
初めは戦地近くまで向かうなんてついてないと考えていたが、今なら変わってほしいとすら思ってしまう。
それほどまでに、目を回しそうになるほど忙しい。
(;´・ω・`)「......ん?」
そうしてどうにか一段落、というか勝手に区切りをつけて休んでいると、港の端で軍人と、黒いローブのようなものを身につけた男がこそこそと話し合っているに気がつく。
どこかで見たことがある気もするその姿、だが誰なのか思い出せない。
はて、何をしているかと改めて見るとそこには海が広がって―――
「おい、そこ!休むな!」
(;´・ω・`)「ひぇぅ!は、はい!すみません!!」
急に遠くから、怒声が投げ掛けられ、思考が遮断される。
(;´・ω・`)(......うーん?)
何かが引っ掛かる。
だがそれがなにか。
ショボンにそれを考える余裕はなく。
この日はただひたすらに働き続けた。
139
:
名無しさん
:2023/05/06(土) 11:38:07 ID:lPdbZp660
そんなショボンのすぐそばの物陰に、二人の人影があった。
( ФωФ)「案内を頼んで済まなかったであるな......それで、準備のほどは?」
黒いローブに身を包む男、ロマネスクは軍人たちを連れて港を見て回っていた。
この国、いやもしかすれば世界の中でもトップかもしれない魔術師。
そんな男の前に、本来ならば話す機会もなかったであろう兵士が緊張に上ずりながらも報告をする。
爪;'ー`)「は、はいぃ!!準備は順調でありまぁす!!」
(; ФωФ)「そ、そうであるか。まあそれならばいいのだが......そんなに緊張する必要はないぞ?」
爪;'ー`)「は、ハ、は......はぃぃいい!!」
ビシィッ、と効果音がしそうな敬礼を繰り返す彼に、思わず苦笑いを浮かべながらも改めて周囲を見る。
140
:
名無しさん
:2023/05/06(土) 11:38:49 ID:lPdbZp660
急ピッチで進めた準備のおかげか、確かに報告通り順調なようであった。
辺りにはその準備のための人で溢れており、ものすごい活気である。
( ФωФ)「ふむ、まあこの程度の人数なら何とかなるか」
そんな人々を見てそうポツリと呟き、改めてフォックスへと向き直る。
( ФωФ)「フォックス君、よいかね?」
爪;'ー`)「な、なな、な......何なりとおぉォおお!!」
( ФωФ)「うむ、これから少し作業を行うのでな。一人にしてくれないかね?良いかな?」
爪;'ー`)「......は、はぁ......えっと、な、なぜ......」
( ФωФ)「詳しくは聞かん方が良い。まぁ......聞いてもよいが」
爪;'ー`)「よ、よいが......?」
( ФωФ)「記憶は消させてもらうことになるね。慣れんからどこまで消えるかは君次第だ」
爪;'ー`)「な、なにも聞きませぇん!!すぐに失礼いたしますぅ!!」
( ФωФ)「そうか、頼んだ」
141
:
名無しさん
:2023/05/06(土) 11:41:11 ID:lPdbZp660
フォックスは慌てた様子ですぐさま踵を返し、走り去る。
そんな様子を眺めながら改めてやれやれとロマネスクは首をふり、息を吐く。
( ФωФ)「難儀なものだ。我が儘は通るがここまで萎縮されるとな......まあいいが」
辺りに誰もいないことを確認して、港の倉庫に仕舞われていた大がかりな魔方陣を起動し、山のように積み上げられた魔法石が空気に溶け、消えていく。
すると、光の線が宙を舞い、そして模様を描き出す。
複雑で細かに刻まれたそれは、強い光を産み出し、巨大な複数の艦が海に現れるたかと思うとすぐさま溶け消え、その先には『何もない海のみ』が見える。
だがその景色に誰も違和感を抱くことはない。
複雑に辺り一面に敷き詰められた魔方陣が、その違和感を覚えることすら許さない。
142
:
名無しさん
:2023/05/06(土) 11:42:06 ID:lPdbZp660
(; ФωФ)「......ふぅ、さすがにこの量の艦隊を召喚し、隠すのは堪えるな。全く陛下も無茶なことを要求するである」
(; ФωФ)(しかし......陛下直轄の特殊艦隊を動かすことになるとは)
彼がここに来たのは皇帝からの極秘命令のためであった。
謎の勢力からの侵攻、それによる甚大な被害が発生したとの報告。
具体的な被害はまだ判明していないものの、これまで侵略する側であった彼らにとってそれはあまりに予想外な出来事であった。
多少の反抗ならまだしも、ここまでの大規模な攻撃を受けることを想定すらしたことがなかったのだ。
そこで急遽、対策として考えられたのが国で最強の艦隊である特殊艦隊を、最悪の場合に備えて国の南に配置することであった。
これまでの被害は油断していたこと、また最新鋭艦がいるものの蛮地制圧のための練度の低い艦隊や弱小の防衛力しかない属国かつ守りが甘いところへの不意打ちのようなものであった。
たまたま、こちらの弱点を突くような形になったというのが敗因である、そう結論付けられていたのだ。
143
:
名無しさん
:2023/05/06(土) 11:43:17 ID:lPdbZp660
しかし、これ以上の被害は到底容認できるものではない。
油断で許される段階を越えていたのだ。
そのためあり得ないことではあるが、万が一のために本土への侵攻を何が起こったとしても防げるよう、過剰とも言える今回の策が実行されたのである。
今回ここに配置された特殊艦隊、これはこの国でも機密とされている。
今後戦うことになるであろうソーサク。
情報収集を得意とする相手に、手の内を全て把握された状態で戦うことは避けたい。
そんな考えから存在自体が知られないよう、停泊中は姿が見えないよう偽装魔法を使い、配置転換については移動してる最中に見つからないよう召喚魔法が使われいる。
最も、何処かの馬鹿がその考えを理解せずに行動をしたせいで最新鋭艦を他国に見せつけ、かつ沈めるという失態を犯してしまったわけだが。
余談はさておき、今回も例に漏れず、ロマネスクがその任務を任されていたのだ。
( ФωФ)「何事もなければよいが」
次に戦いに出るのは、この国の主力。
それも、動員される数からこの世界で防ぐことの出来る国など存在しないはずである。
つまり普通に考えれば、すぐにも敵を葬りされる。
144
:
名無しさん
:2023/05/06(土) 11:44:28 ID:lPdbZp660
だが、思い出されるムーの様子を写した念写が警告を鳴らす。
あの破壊の痕跡、まるで自分のような魔術師が数えきれないほど襲いかかってきたのではないかとすら思える被害であった。
さらには、自分の後を継ぐはずであった優秀な魔術師であるギコも、この戦いにより消息を絶っている。
明らかに異様なこの状況、なのにこれを理解しているのは自分の他にどれだけこの国にいるのか。
( ФωФ)「陛下は動いてくださったが......末端は現状すら知らんのだろうな」
今回の被害については、全て現場の練度不足と油断として片付けられている。
また士気に関わるとしてこの情報自体が規制され、国のトップ以外は誰も知らないのである。
それが何を引き起こすか、それはまだ分からない。
だが、なんとも言えない不安が心の奥底に生まれ、かき消すことができない。
( ФωФ)「杞憂......であればいいんだが」
そう小さく呟き、仕事を終えた男もまた、魔法に包まれ、姿を消す。
そこに残されたのはいつもの港の風景のみであった。
145
:
名無しさん
:2023/05/06(土) 11:45:29 ID:lPdbZp660
ムー国 牢獄
1463年7月21日
一体、どこで何を間違えたのか。
もし悪夢ならばすぐに覚めてほしい。
あの日、爆音と共に目を覚ましたあの日から悪夢が終わらない。
あの悪魔どもは最初、空からやって来た。
黒い雨を国に降らし、爆発と破壊の限りを尽くした。
そしてそれが終われば次は海からであった。
見たことがないほどの巨大な艦が近づいてきたかと思えば、その艦についた奇妙な筒のようなものが、猛烈な爆音を国中に鳴り響かせ、その数だけ破滅をもたらしたのだ。
いつしか抵抗できる力も、気力も尽きたそのとき、やつらはこの国へと足を踏み入れた。
薄汚れたような可笑しな服を着たそいつらが、初めはなんなのかは分からなかった。
どこの列強のものか、または夢物語に聞く悪魔や怪物か。
146
:
名無しさん
:2023/05/06(土) 11:46:23 ID:lPdbZp660
分からないまま、ただ捕まっては殺されると逃げ回っていた。
だが、いつしか空を轟音と共に飛ぶ奇妙な箱に見つかり、そこから降りてきた者たちに捉えられた。
そこで、初めて知ったのだ。
その奇妙な箱についた紋様。
そして、奇妙な服を纏うその兵士たち。
それが人間であり、それも我らが呼び出した者たちだということを。
( "ゞ)「......」
そして気がつけば、デルタは牢獄に放り込まれていた。
ここは反抗的な人間を叩き込む場所であったはず。
それがエルフであるはずの自分が人間により放り込まれるなど何という皮肉か。
それも、自分たちが奴隷にするために呼び出した存在に、だ。
147
:
名無しさん
:2023/05/06(土) 11:46:58 ID:lPdbZp660
( "ゞ)「......はは」
気が狂い始めたのか、現実を受け入れられないせいかは分からないが、デルタは笑った。
何もかもが、可笑しすぎる。
何をどうすればこんな未来を予測できうるか。
どれだけ考えても浮かぶことはないだろう。
今ですら信じられないものをどう予測しろというのか。
いや、そもそも。
神はなぜ、このような事を許すのか。
我々は、神にこの地を統べよと託されたはずではないのか。
( "ゞ)「......ははは」
また、可笑しくなり、笑う。
自分が狂っているのではない。
世界が狂っているのだ。
それを笑わずして、何を笑うのか。
148
:
名無しさん
:2023/05/06(土) 11:48:36 ID:lPdbZp660
そして、何よりおかしいのは人間たちであった。
彼らは翻訳魔法がないために言葉は通じないものの、拷問をしないどころか食事などを提供してくるのだ。
敵を捕らえ、なにもせず放置するならまだしもここまで手厚くするのは一体なぜなのか。
それも国の重要人物である人間だけでなく、降伏した一般の兵士たちも同様であった。
今さらエルフに歯向かう愚かさに気がついたのかとも思ったがそれならばなぜ捕らえられたままなのか。
( "ゞ)「......」
ひたすらに、不気味である。
別の生き物であることは理解していたつもりであった。
それでも、考えが分からないというのはここまで恐怖を産み出すのか。
それも、自分の命を握っているとなるとなおさらである。
鉄格子の外、そこにいる異界の者たち。
薄暗い牢獄では彼らの顔を見ることは叶わない。
それがさらに薄気味悪さを増幅させる。
果たして自分は生きてここから出ることができるのだろうか?
そんな思いと共に、デルタは目を閉じ、眠りについた。
149
:
名無しさん
:2023/05/06(土) 11:48:59 ID:lPdbZp660
続く
150
:
名無しさん
:2023/05/06(土) 15:29:05 ID:QUAohh2Q0
めちゃくちゃすげー!しえん
151
:
名無しさん
:2023/05/06(土) 16:33:21 ID:YX4Th3nk0
オツ
152
:
名無しさん
:2023/05/06(土) 23:47:19 ID:1RK2HBIU0
ギコ生㌔
153
:
名無しさん
:2023/05/13(土) 12:26:37 ID:aqAXcc1k0
トウキュ王国
1463年7月24日
从 ゚∀从「うーむ......」
( ´ー`)「どうした?」
从 ゚∀从「いや、本当に出撃がなくなるとはな。予想外だ」
つい一週間ほど前、あれだけ出撃させようとしていたのに、それが一転、待機するよう命令が出されたのだ。
突然の方向転換、猪突猛進のあのトップがこのような判断をするとは普通では考えられないことである。
( ´ー`)「まぁ......それほどムーでのことがヤバかったということだろ?」
从 ゚∀从「......やっぱりそういうことだよな?」
( ´ー`)「それしかないだろ。戦況に関する情報も回ってこなくなったとなると......まぁやべぇことが起こって隠蔽ってところかね。噂では本国が大慌てみたいだしな」
154
:
名無しさん
:2023/05/13(土) 12:29:49 ID:aqAXcc1k0
从 ゚∀从「そうか。そうなると......ここも危ないかもな」
( ´ー`)「かも、というより確実にやべぇだろ。本国に攻め込むなら距離と物資的にもここを潰さない理由がない」
从 ゚∀从「あぁ、物資......確かにそうか」
ルナイファ帝国は大国。
それは支配する面積的にもそうであるし、そこに住む数も他国を圧倒している。
つまり、それだけの物資が必要なのだ。
他国から様々な物資を運ぶ船、その中継地点であるこの場所が取られれば、安全な航路が確保できず、実質南方の交易がなくなることに等しい。
ただでさえムーという農産物と鉱物の生産拠点が潰されているのだ。
それに加えて他国からの物資も減ってしまえばどのような恐ろしいことになるか。
考えるまでもなく、その未来は暗いものであろう。
155
:
名無しさん
:2023/05/13(土) 12:30:59 ID:aqAXcc1k0
从 ゚∀从「とはいえ......ここにいるトウキュの軍で足りると思うか?質が悪いとはいえムーが連絡できなくなるほど被害を受けたんだろ?援軍が来るまで耐えられるのか?」
( ´ー`)「俺たちがいるだろ」
从 ゚∀从「なんだ?すでに陸にいる揚陸部隊がどうしろって?切り込みでもやれってか?」
( ´ー`)「分かってるじゃねーか」
よほどその冗談が気に入っていたのか、いつしかと同じようなことをいい、シラネーヨはクツクツと笑う。
そんな様子に呆れつつも、ハインは今後のことを考え、話を続ける。
从 ゚∀从「こうなると、無理にでも出港した方が良かったかもしれないな。召喚地にたどり着いてりゃ安全だったわけだし......このままだと周辺が戦闘海域になって身動きが取れなくなって巻き込まれるぞ」
( ´ー`)「......いやもう手遅れじゃねーか?南はもちろん敵だし、北にいるお偉いさんはある意味、より厄介な敵だぞ?」
从; -∀从「おまっ、いつかしょっぴかれても知らんぞ」
156
:
名無しさん
:2023/05/13(土) 12:32:02 ID:aqAXcc1k0
( ´ー`)「どうせ誰も聞いてねーし、事実だろ。なにもせず帰ってみろ。それこそ比喩じゃなく首が飛びかねない」
从; ゚∀从「......」
( ´ー`)「ま、そういうわけだ。少なくとも戦況が変わらない限りは俺たちは動けんよこれ。幸い、無茶な出兵はしなくてよくなったんだ。言葉に甘えてここに留まるしかないだろ」
从 ゚∀从「はぁ......だな」
未だに先が見えない。
そして身動きを取ろうにも取れないこのもどかしさ。
从 ゚∀从「一体どうなることやら」
( ´ー`)「さぁな......とりあえず、あれだ」
从 ゚∀从「ん?」
( ´ー`)「ヤバいと言うことくらいしか分からん」
从 ゚∀从「だよな......はぁ」
彼らのため息が尽きることは、暫く無さそうである。
157
:
名無しさん
:2023/05/13(土) 12:32:31 ID:aqAXcc1k0
ソーサク連邦 情報戦略室
1463年7月25日
(;'A`)「......」
数日前にムーの念写を行うよう上申してから約二週間。
無事に念写は実行され、ムーの様子を押さえることに成功した。
ここまでは良かった。
だが。
(; ´∀`)「いくらなんでも酷すぎるぞこれは」
思わずモナーの口から言葉に、ドクオも同じ思いを抱かずにはいられなかった。
基地のあったはずの座標を写した念写には、もはやそこに何があったか分からないほどの残骸と破壊痕しか残されていない。
攻撃を受けていたと予測はしていたがこれほどまでとは誰もが予想し得なかった。
というよりも自分たちの知る戦争からかけ離れた被害であった。
これがごく短時間で起こったとはどうにも信じがたい。
158
:
名無しさん
:2023/05/13(土) 12:33:16 ID:aqAXcc1k0
(; ´∀`)「......海上なら艦で大規模な魔方陣や魔道具を移動させることも可能だろうがこれほどとなると難しいはず。さらに陸上でこれほどの威力を出すためには......一体なにをすれば」
('A`)「大量の魔術師による連続的な攻撃か......もしくは歴史に名を残すほどの魔術師であればある程度の魔方陣でも可能、でしょうか?」
(; ´∀`)「うむぅ、微妙だな......あとは艦から異様に射程が長ければといったところか?だがそんな魔法......」
('A`)「......モナーさんでも、これほどは不可能ですか?」
( ´∀`)「......不可能、とは言わんがやるには相当な下準備が必要だな。あと一人では不可能だ。少なくとも数人は必要だろう」
('A`)「......」
この国でもトップクラスの魔術師ですら困難と言うほどの被害。
そんな中、死ぬかもしれないと伝えてきた彼女は、無事なのか。
頭に次々と嫌な想像が浮かんで来て、ドクオは思わず顔が暗くなる。
159
:
名無しさん
:2023/05/13(土) 12:33:54 ID:aqAXcc1k0
('A`)「......ムーへ、行くことは出来ないのでしょうか」
( ´∀`)「行って、どうする気だ?はっきり言わせてもらうが今、君一人行ったところで、なにもできることはない」
('A`)「......分かってます、けど」
(; ´∀`)「気持ちは分かるがね......そもそも、転移魔法を使おうにもあちら側の魔方陣が壊れてしまった以上、行けるとしたら海路だ。どうやったって一月近くかかるぞ」
('A`)「つまり......なにもできることはない、ということですか?」
( ´∀`)「そうは言っていない。君はこの情報室の職員だ。とにかく、調べたまえ。そうすればおのずと、やるべきことが分かるはずだ」
('A`)「......」
160
:
名無しさん
:2023/05/13(土) 12:35:42 ID:aqAXcc1k0
結局、どうすることもできないということではないか―
そんな思いが沸き上がるのと同時に、一つの音が室内に響く。
『......えるか?』
('A`)「え?」
二人しかいないはずの室内。
そこに、いるはずのない人物の声が聞こえた。
それは、女性の声。
そして、聞き覚えのある声である。
『聞こ......か?』
(; ´∀`)「......く、クー君か!?」
モナーもその声に気がつき、またその声の主に驚愕する。
魔法の調子が悪いのか、ノイズが混じり声が非常に聞き取りにくいが、間違えるはずがない。
その声はまさに今、話をしていた女性、クーのものであったのだ。
161
:
名無しさん
:2023/05/13(土) 12:36:42 ID:aqAXcc1k0
(;'A`)「も、モナーさん!こ、これ......どうにかもう少し聞きやすくは」
(; ´∀`)「向こうの環境の問題だから難しいが......どうにかして、魔法陣を安定化させてみよう」
魔石を片手で覆い、モナーが魔力を籠める。
そして空いたもう片方の手で、空中を指でなぞるように模様を描き、魔法陣を作り出す。
即席で作られたそれは、何もなかった空中に、淡い光を作り出し、通信魔石と光の線を繋げる。
『この声......ドクオ?それに、モナーさん、か?』
(;'A`)「クー!やっぱり、クーなんだな!?」
(; ´∀`)「よ、よし......何とか安定したか」
『あぁ......良かった。有り合わせのものでの通信で繋がるか心配だったが、モナーさんがいてくれて良かった。これでようやく話せます』
その線が繋がると同時に、魔信から聞こえる声がはっきりと聞こえるようになる。
急にこんな芸当が出来る者は、この世界広しといえどもそうそういない。
そんな幸運に恵まれた魔信の先の声の主、クーの安堵したような声が伝わってくる。
162
:
名無しさん
:2023/05/13(土) 12:37:25 ID:aqAXcc1k0
(; ´∀`)「そういってもらえるとありがたいが長くは持たんぞ。かなり無理やり繋いでいる状態だからな」
『なるほど、分かりました。では手短に』
('A`)「それでクー!今お前はどうしてるんだ!?」
『それは......ムーで、保護されているよ』
( ´∀`)「保護?それは、ルナイファにということか?」
『いえ。ムーに攻め込んできた軍勢に、です』
(;'A`)「それは......だ、大丈夫なのか?」
『あぁ。怪我をしていたが治療......もしてくれている。今のところ、問題はなさそうだ』
('A`)「そうか......」
とりあえずは一安心だと、ほっと息をつく。
だが、これで全て解決したわけではない。
むしろ、新たな疑問が生まれていた。
( ´∀`)「ふむ、保護......ということはその勢力と接触しているわけだな?」
『はい、実際に会話もしています』
( ´∀`)「なるほど。では、教えてくれ。そいつらは、一体何者なんだ?」
『......』
163
:
名無しさん
:2023/05/13(土) 12:38:21 ID:aqAXcc1k0
ごく短期間に国を攻め滅ぼすほどの力を持つ勢力。
だというのに、その動きも正体も悟らせない謎に満ちた存在。
それは、一体何なのか。
緊張の面持ちで、モナーは魔信に問いかける。
( ´∀`)「何処の国の者なんだ?ニータか?ヴィップか?はたまたルナイファの内乱なのか?」
『いえ、そのどの国でもありません』
( ´∀`)「なに?では一体どこが?」
『......そもそも、エルフではありません』
('A`)「ん?どういうことだ?」
『そのままの意味、だ。エルフじゃないんだ、彼らは』
('A`)「......はぁ?じゃあなんだ?悪魔か、はたまた神様の仕業だとでも言うのか?」
確かに悪魔か神様かの所業に感じるほどの被害ではあったがまさかそんなことはないだろう。
よく分からない回答にドクオは思わず首をかしげる。
164
:
名無しさん
:2023/05/13(土) 12:38:47 ID:aqAXcc1k0
だがクーから得られた回答に、さらにドクオたちは困惑することとなった。
『人間、です』
( ´∀`)「......は?」
『ですから、人間なんです。彼らは』
(;'A`)「人間、て、はぁ?」
『ムーを滅ぼしたのも、私を保護しているのも、人間です』
(; ´∀`)「え、と、これは、何の冗談だ?」
『冗談ではありません。本当のことなんです』
『彼らは、ルナイファが新たに召喚した、人間たちなんです』
(;'A`)「......はぁぁあ??」
脳が、理解を拒んだ。
165
:
名無しさん
:2023/05/13(土) 12:40:27 ID:aqAXcc1k0
ムー国 仮設治療施設
信じられない事態が続いていた。
通信を終えた魔信を傍らに置き、自身に起きたことを思い返す。
あの攻撃を生き延びた後。
彼女、クーは攻め込んできた勢力に保護されたらしい。
らしい、というのは逃げ回っている内に気絶をしていたようで、気がついたときにはここ、仮設された治療施設にて治療を受けていた。
人間による治療、ということで魔法による治療はなく、よく分からない針やらを打ち込まれ、傷を縫うという非常に野蛮なものであった。
だがそれでも体の調子が回復していることから、それなりに効果のあるもの、なのだろう。
というよりもそうであると思い込もうとしていた。
そうでなくては、もう慣れてしまった今では問題ないが、少し前までならただでさえ人間に体を自由に弄られているという摩訶不思議な現実に耐えられそうになかった。
166
:
名無しさん
:2023/05/13(土) 12:42:48 ID:aqAXcc1k0
川 ゚ -゚)「......」
ただ、目が覚めてから数日。
人間たちを見ていて気づいたことがある。
それは少なくともクーの知る、いや世界の常識たる人間のイメージと、ここにいる人間はかけ離れた存在であるということであった。
人間とは粗雑で常識がなく、野蛮。
魔法が使えず、そもそも魔法というものを理解すらできない愚か者。
それが、人間であるはずだった。
だがここにいる人間たちはどうか。
クーを初めとして複数のエルフに―信じられない方法ではあるものの―治療を行い、また暴力やレイプといった戦地で当たり前にあるものが、彼女が認識できる範囲では明らかに少なく、さらには拷問をするわけでもなく、敵を保護する。
野蛮とはまるで異なるように感じられる。
その姿勢はこの世界の常識に当てはめるならば緩いといわざる負えない。
その事を人間達に聞き、要約すれば『恨みはあるができる限り早く、戦いを辞めたいため。また虐殺等はなるべくしたくない』とのことであった。
167
:
名無しさん
:2023/05/13(土) 12:44:11 ID:aqAXcc1k0
よくは分からないがつまりは人質を取り、有利に話を進める為の材料にしよう、と言うことであろうとクーは納得した。
上手く行くかは別として、この話を聞いたときはなるほど、そういう考え方もあるのかと感心したものである。
召喚という前代未聞の災害にあっておきながらこのようなある意味、敵側を気に掛けるような作戦に出るとは何とも不思議な国である、がその一方でなるべく被害を少なくしようという、野蛮とは真逆のなんとも理性的だという事実に驚愕に近い感情が生まれていた。
( °д゚ )「あぅぅ......ぁ......」
彼らが野蛮ではない証拠に、兵士の生き残りであろう、どこか目の焦点の合わない、虚ろな目をした男が保護されている。
明らかにおかしいその兵士すら、彼らはしっかりと保護しているのだ。
話を聞くと、『しぇるしょっく』というもので、人間達が持つ武器で引き起こされたらしい。
川 ゚ -゚)(よく分からないが恐らくは洗脳魔法に近いものだろう。しかし、強力な威力の武器だけでなく、あのような精神汚染を起こせるとは。精神防護魔法でどうにかなるのだろうか......)
情報を集めれば集めるほど、人間達のことが分からなくなってくる。
知っていた人間と、違いすぎるのだ。
168
:
名無しさん
:2023/05/13(土) 12:45:33 ID:aqAXcc1k0
そしてなにより。
川 ゚ -゚)「......あれが、『くるま』」
施設の外に見える、動く箱。
多くの物や人を載せて、ゴーレムとは比較にならないほど高速で動くことのできるという、化け物である。
これを初めて見たときは我々が発見したことのない遺物を彼らが見つけ、それにより身を過ぎる力を人間が手にしたのかと考えた。
しかし翻訳魔法を使い話を聞いてみるとこれらは人間が作った、魔法を使っていない道具だという。
ではこれは、どんな無茶をして作り出した物なのかと思えば彼らの国では誰でも持てるような物だという―
川 ゚ -゚)「......あれが、『ひこうき』」
そして、その『くるま』なる動く箱よりも速く飛ぶ、『ひこうき』なる乗り物。
これもまた、人間達の手で作り出された道具だという。
この世ならざる速度で飛び回るそれは、この世界に捉えられるものはいないのではないか。
169
:
名無しさん
:2023/05/13(土) 12:46:36 ID:aqAXcc1k0
ガラガラという音をたて、常識が崩壊していく。
だが、あまりに現実離れしたそれに逆に頭は冷静になっている。
川 ゚ -゚)「なんて......素晴らしい力なんだ」
そうして、彼女は魅了された。
その力。
何度も何度も、忘れようとしても脳内にこびりついたかのように思い返されるそれに、気がつけば完全に心が奪われていた。
目をつぶれば思い出す、あの圧倒的な破壊。
それをもたらすものに。
何としてでも、どんな手を使ってでも手に入れたいと。
だからこそ、伝えなくてはと彼女は慌てて本国へ連絡をしたのだが。
川 ゚ -゚)「やはり、伝わらなかったか」
魔信の向こうから伝わってくるのは困惑。
そして、気遣われるような声から恐らく気が狂ったとでも思われたのだろう。
あまりに予想通り過ぎる反応に思わずクーは笑ってしまう。
だが、笑って終わらせることもできない。
現実はここにあるのだ。
理解しなくては、この現実にいつ犯されてもおかしくはないのだ。
170
:
名無しさん
:2023/05/13(土) 12:47:33 ID:aqAXcc1k0
川 ゚ -゚)「......まあ、そのうち分かるか」
この戦いが続けば嫌でも分かるだろう。
世界の常識が、世界の縮図が変わるということを。
恐らくは、ルナイファの敗北で―
川 ゚ -゚)「あぁ......そういえば」
そこでふと、彼女は思い出す。
翻訳魔法を使えるからと人間たちから頼まれた仕事があったのだ。
だからこそ、ここまで待遇も良かった、という面もあるのかもしれない。
川 ゚ -゚)「......うまくいくとは思えんけどな」
そう思いつつも保護をされ、さらには魔信が使えるよう配慮もしてもらっているのだ。
もう、侮りはないもののやはり心のどこかで人間に借りを作るのは癪であると感じてしまう。
だからこそ、借りを返すためにも頼まれた仕事はやろうと、彼女は再び魔信に向き合った。
171
:
名無しさん
:2023/05/13(土) 12:47:56 ID:aqAXcc1k0
続く
172
:
名無しさん
:2023/05/13(土) 17:09:55 ID:5.4Vo2eM0
乙
何だかんだ言って人間を御せると思ってるあたりクーはまだ人間を舐めてると思う
173
:
名無しさん
:2023/05/13(土) 17:51:25 ID:H23.OGfE0
乙です
174
:
名無しさん
:2023/05/13(土) 17:53:49 ID:YtdzC0fQ0
おつ!
175
:
名無しさん
:2023/05/20(土) 10:44:31 ID:iPNrCCQg0
ルナイファ帝国 軍務省
1463年7月24日
(# ^Д^)「一体どういうことだこれはぁ!!」
ガンッ、と机の叩く音が響きわたる。
最近ではこの音が鳴り響くのはもはや日常茶飯事になりつつある。
彼が怒り狂うだけの理由は勿論ある。
始まりは先遣隊の全滅。
それだけですらとんでもない事態である。
だが本隊を召喚地へ送り込み、遅れを取り戻し全て丸く収まるはずであった。
そしてもう、そのようなことは起こらないはずであった。
だが、本隊が出撃する前にムーへの攻撃の報告が入る。
再びの謎の攻撃報告。
さらには敵を追い返すどころか、かなりの被害が出ているとの報告であった。
そしてそれを最後に、連絡は途切れる。
もはや失態どころの騒ぎではない。
ムーを守るどころか、状況すらまともに把握できなくなってしまったのだ。
176
:
名無しさん
:2023/05/20(土) 10:45:21 ID:iPNrCCQg0
それと同時に彼の怒りはピークに達し、部屋中ありとあらゆるものに当たり続けた。
そんな彼を見つめる職員たちはどうにかこの嵐が過ぎ去るよう、祈ることしか出来なかった。
そんな日々が数日過ぎた今日。
ようやく待ちに待ったムーからの連絡が入る。
やっと敵を追い返し、連絡できるようになったのかと話をしてみるとその相手は自国の者ではなかった。
(# ^Д^)「......それで?やつらは、なんと?」
(;*゚ー゚)「は、はい......わ、我々に対して講和を求めると......またその条件として召喚したことに対する謝罪と賠償。また外交官を処刑したことに対する賠償と責任者、及び実行者の引き渡しを要求......」
(# ^Д^)「っざけるなぁ!!」
(;* ー )「ひっ!!」
177
:
名無しさん
:2023/05/20(土) 10:46:06 ID:iPNrCCQg0
再び、木の机に拳が振り下ろされる。
怒号と共に凄まじい音が鳴り響き、周りの者たちを萎縮させる。
(# ^Д^)「なんだそれは!召喚された奴隷どもが我らに要求だと!?いや、そもそも、そもそもだ!!」
(# ^Д^)「なぜ、なぜ人間ごときに我々が敗れた!!」
(;*゚ー゚)「そ、それは......現在調査中、です」
(# ^Д^)「このっ、無能どもが!!何度俺を怒らせれば気が済むんだ!!くそっ!くそっ!」
(;*゚ー゚)「申し訳ありません......」
(# ^Д^)「それで?」
(;*゚ー゚)「は、はい?」
(# ^Д^)「他には何かあるのか?奴らからの要求とやらは」
(;*゚ー゚)「あ、そちらについては、その、どうやら話し合いの用意があるため、その、会談の機会を設けたいと」
(# ^Д^)「なめくさりやがって......人間ごときが我々と話し合いたいだと!?知能もないくせに我々の真似事のつもりか?くそっ!!」
178
:
名無しさん
:2023/05/20(土) 10:48:51 ID:iPNrCCQg0
(;*゚ー゚)「それで今後のことですが......ていあ」
(# ^Д^)「聞くまでもないだろう!即刻拒否だ!!」
報告が途中で、ついに彼の我慢が限界を迎えたのだろう。
怒りのままにプギャーは吐き捨てる。
(;*゚ー゚)「え、あ、あの」
(# ^Д^)「聞こえなかったか!!ここまでこけにされた以上、生かしておけん!!奴らを殲滅する!!すぐに軍を動かせ!」
(;*゚ー゚)「お、お待ちください!!」
(# ^Д^)「......なんだ?」
(*゚ー゚)「提案があるのです。ここは、一旦返事を遅らせてはどうでしょうか」
( ^Д^)「なに?」
その言葉に、プギャーは片眉を上げる。
彼が不機嫌な時の癖の一つである。
だがそんな様子に気づかないのか、シィはそのまま話を続けた。
179
:
名無しさん
:2023/05/20(土) 10:49:39 ID:iPNrCCQg0
(*゚ー゚)「現在、南方に艦隊を集めておりますがまだ準備が完了していません。わざわざ相手が待つと言っているのです。これを利用しない手はないでしょう」
(# ^Д^)「人間ごときにそこまでする必要があると?このルナイファが!?」
(;*゚ー゚)「いえ、人間だけであれば問題ないと思います......が」
( ^Д^)「が、なんだ?」
(*゚ー゚)「問題は今回送られてきた魔信の送り主です。使われている魔法の形式から恐らくはソーサク製のものが使われていました」
( ^Д^)「なんだと?」
(*゚ー゚)「そもそも、人間には使えないはずの魔信での連絡です。無理やり従わされている可能性がないわけではありませんが、少なくとも敵側にエルフがいるのは間違いありません」
( ^Д^)「っ!」
ソーサクが関与するかもしれないという話に、怒り狂っていたプギャーも思わず正気に戻る。
確かに可能性としては考えられたことではあったがそのような兆候はなく、杞憂であろうと考えていたからである。
180
:
名無しさん
:2023/05/20(土) 10:50:56 ID:iPNrCCQg0
だが、その証拠となり得るものが見つかったとなれば、話は別である。
流石に無能と呼ばれる彼でもこの事の重大さは理解しており、話を続けるように促す。
(*゚ー゚)「また今回の被害なども考えると......やはりソーサクが裏にいると見るべきではないでしょうか?それならば色々と説明がつきます」
( ^Д^)「......確かにその可能性はあるとは考えられていたが、断定は出来ないだろう?」
(*゚ー゚)「はい。先ほどお話しした通り、被害の原因についてはまだ調査中のため確定ではありません。が、可能性がある以上、それを想定するべきかと」
( ^Д^)「ふん、それで?ソーサクが裏にいると仮定するとして、今後はどのように動く?」
(*゚ー゚)「はい、出来る限り返事を送らせるべきです。時間さえあればトウキュへの艦隊の派遣も行えます。これが完了すれば召喚地へ向かわせる予定であった揚陸部隊もありますため、ソーサク相手でもムー奪還をスムーズに行えるかと」
( ^Д^)「......」
いつも本能のままに意見する彼が珍しく口を手で覆い、静かに考える。
その結果、艦隊の派遣、物資の輸送などを考えるとこの手を使わない理由が見つからなかったのだろう、大袈裟に頷き、提案を受け入れる。
( ^Д^)「......ふん、まぁいいだろう。俺から陛下に話を通しておこう」
(*゚ー゚)「は、はい。ありがとうございます」
こうして突如始まった人間との戦争は一月も経たずに一時的に休戦となる。
だがそれは平和に繋がるものではなく。
再び地獄が訪れるまでの、短い休息であった。
181
:
名無しさん
:2023/05/20(土) 10:52:27 ID:iPNrCCQg0
ルナイファ帝国 帝城
プギャーからの報告を受け、帝城ではアラマキとロマネスク、そしてこの国の海軍将であるデミタスが会話をしていた。
この世界の国々であるならば、彼らが望むだけで滅ぼすことが可能であるといっても過言ではない面子である。
そんな三人が、当面の敵になるであろう、召喚地に関してどうするべきかを決めていた。
/ ,' 3「ふむ、返事を引き延ばして準備をする、か」
( ФωФ)「あの男の提案にしてはまともなものかと」
(´・_ゝ・`)「大方、部下の提案だと思うがな」
( ФωФ)「あぁ......なるほど」
/ ,' 3「だがこれは良い案であるな。至急お前達も対応をしてくれ」
( ФωФ)「はっ、承知いたしました」
(´・_ゝ・`)「私もムー奪還に向けて艦隊の準備を進めております。どんな国が出てこようとも押し潰せることでしょう」
182
:
名無しさん
:2023/05/20(土) 10:53:39 ID:iPNrCCQg0
/ ,' 3「ふむ、攻めるのはそれで良いとして防衛はどうだ?特殊艦隊は動かしたが......他は必要と思うか?」
( ФωФ)「それは......なんともですな。このあと、奴らがどう動くか」
/ ,' 3「ふむ。ソーサクも裏にいるかもしれないとの話もあるが?」
( ФωФ)「確かにそうですが、ソーサクからの諜報員からなにも情報が入ってこないのです」
(´・_ゝ・`)「......不気味だな」
今回の被害はあまりに大きすぎるため、軍だけでなくアラマキ自らロマネスク等に命じ、独自に調査を進めていた。
先のムーから寄せられた情報と状況から真っ先にソーサクが関与しているのではないかと現地の諜報員に探りを入れさせていたのだ。
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