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異界大戦記のようです

1名無しさん:2023/04/01(土) 23:39:57 ID:mfVt/ZZU0
世界の縮図が変わろうとしていた。

魔法を操り、自らを神の僕と信じるエルフ達が支配するこの星。
その中の3大大陸に存在する5つの列強と呼ばれる国が衝突する寸前にまでなっていた。

きっかけは列強最強の国家と名高いルナイファ帝国と、同じく列強のニータ王国との国境で起こった小さな事件であった。
それぞれがその犯行の責任は相手側にあると主張しあっていた。
互いに堂々と国として主張をしていたがその内情は全く異なるものであった。

ルナイファに関しては元から周辺国家を攻め落とし、支配する典型的な侵略国家であった。
列強クラスの国との戦いはなかったものの、同大陸に存在し隣接する小国はほぼすべて支配していると行っても過言ではない。
そして大陸統一のためにも同じ大陸で国境を接しているニータはいつかは落としたいと考えていたことから、この機会に攻め込むのが良いと言う意見で国が固まりつつあった。

773名無しさん:2023/10/21(土) 21:03:44 ID:wVsEMc.M0
(;・∀ ・)「......総員、直ぐに甲板の清掃を行い、帰還するぞ!!急げ!」

だが気付くのが遅すぎた。
既に魔法は発動完了してしまい、破滅を運ぶ鳥は既に空に消えた。
そしてその破滅はこの艦にも降り注いでおり、下手をすればもう手遅れかもしれないのだ。

ー否、もう手遅れであった。

ボォオン!!

(;・∀ ・)「......は?」

凄まじい轟音と共に、艦が爆発する。
それも一度だけではない。
次々とその爆発は連鎖するように続いていく。

(;・∀ ・)「まさかっ!こんなところにまで敵が......!」

こんなときに敵襲かと、脳裏によぎるがそれは間違いであることに直ぐに気がついた。

774名無しさん:2023/10/21(土) 21:04:27 ID:wVsEMc.M0
その理由は単純であった。
目の前で、魔方陣が爆発を起こしたのだから。

(; ∀ )「がぁあああっ!!」

身体を吹き飛ばされ、壁に打ち付けられながらも何とか意識を保つ。
そうして思考する。
なぜ、魔方陣が爆発したのか。
まず考えられるのは、魔法の暴走。
魔法は便利だが上手くコントロールできなければその魔力のエネルギーはそのまま暴走し、爆発へと変換されるのだ。

ゆえにこの爆発も魔法の暴走かと考えたが、魔法の暴走とはすなわち魔力を目的への魔法へと変換できない、魔力のコントロールが出来ないから発生するのだ。
だが今回は召喚には成功した以上、魔力を魔法へと変換できていることからその可能性は低いであろう。

そもそも召喚を完了してからかなりの間が空いている。
魔法自体が完了している、つまり魔法への変換は完了しているのに、そこから暴走を起こすことなどあり得ないことである。

誰かが魔力をコントロールせずに垂れ流していれば起こりうるが、そんなことをすれば自分もろとも吹き飛ばされることは子供でも知っていることである。
そんな自殺行為を行うような者はまずいる筈ない。

775名無しさん:2023/10/21(土) 21:05:11 ID:wVsEMc.M0
ではなぜ、こんなことが起こっているのか。
マンタキの脳裏に一つの可能性が頭に浮かぶ。

ーこの爆発自体が、魔法として組み込まれていたのではないか、と。

(;#・∀ ・)「プ、プギャー......貴様!!」

『非常に残念だ。君達のような勇敢な戦士が自らを犠牲にし、敵を滅ぼすために魔法を完遂するとは。ただ、命令もしていないのに勝手にそのような魔法を使うとはいただけないがな』

(;#・∀ ・)「なっ!?」

すなわち、人為的な工作。
これはマタンキ等を確実に殺すための魔法なのだ。
なぜそんなことをするかなど考えるまでもない。
世界を破滅させるような魔法を使った責任をマタンキ達に擦り付け、口封じをする共に、感染源になりうる自分達を抹殺しようとしているのだ。

776名無しさん:2023/10/21(土) 21:05:36 ID:wVsEMc.M0
(;・∀ ・)「ふ、ふざけー」

『ただ、約束通り報奨は与えよう。君の望んでいた昇進だ。自らの死を持って敵を滅ぼそうという君の姿勢に免じて、二階級特進を適用しよう』

(;・∀ ・)「くそっ、くそっ、糞がぁああ!!!」

始めからこの悪魔はこうするつもりであったのだ。
沸き上がる怒りのまま、叫ぶがそれがもう届くことはない。

再度の、爆発。

灼熱の炎が全てを包み込み、海上から万物を消し去る。
その炎に包まれる直前、マタンキは笑い声を聞いた。

それは、間違いなく世界を滅ぼす悪魔の声であった。

777名無しさん:2023/10/21(土) 21:05:59 ID:wVsEMc.M0
続く

778名無しさん:2023/10/21(土) 21:47:22 ID:kxZhN/eo0
おつ!
気づいたらプギャーがラスボス級のことしてた
流石の人間も病気には勝てんかな…昨今の情勢的に

779名無しさん:2023/10/22(日) 03:58:20 ID:4XFVPjAQ0


780名無しさん:2023/10/28(土) 18:39:22 ID:SslklFAQ0
アリベシ法書国 牢獄
1463年4月15日

肉の潰れる音がなり響く。
その音に遅れてくぐもった叫びが狭い牢獄の中に木霊する。
その音の中心には鎖で繋がれ、血塗れになった一人のエルフがいた。

そのエルフはつい先日までこのアリベシにて法書と呼ばれる物を管理し、またその法書に記された神からの神託を民へ伝えるというこの国で最も重要な役割を担う、高貴な立場にいたはずであった。
だがそれが今ではカビ臭いこの狭い牢獄に繋がれ、拷問が繰り返し行われている。
どうしてこんなことにと涙を流すが、理由が分からないわけではない。

(# ・∀・)「さぁ吐け!!神に仇なす悪魔の仲間が何処にいるかをっ!!」

工作員であるそのエルフは、この国を実質的に支配できるようにと指令を受け、神の絶対の言葉とされる法書の内容をねじ曲げて伝え、国を操作していたのだ。
国が窮地へと追い詰めた原因の張本人であると同時に彼等の信じる神を汚してしまったのだ。
許されるはずが、ない。

781名無しさん:2023/10/28(土) 18:40:04 ID:SslklFAQ0
凄惨なる拷問はもう、どれほど続いただろうか。
狭い牢獄が赤く染まり、様々な部位が欠損してもなお、止まることはない。
そしてそのまま、まだ死ねれば救いがあると言えたかもしれない。

(# ・∀・)「......おい、そろそろ治療してやれ」

一度きり落とされた部位も、魔法により再生されていく。
身体の再生など、とてつもない技術と魔石が必要な魔法であるというのにそれを拷問に彼等はつぎ込んでいる。
それほどまでに彼等の怒りは強いのだ。
そしてその怒りは燃え尽きることがないであろう。

つまりこの地獄が永遠に続くということである。
絶望以外の何物でもない。

782名無しさん:2023/10/28(土) 18:41:14 ID:SslklFAQ0
( ・∀・)「よし、では続きを......ん?」

そのエルフにもプライドがあった。
このアリベシに潜入し、国を操るというとてつもないことを成し遂げたのだから、当然ともいえる。
そしてそれは全て祖国であるルナイファの為であった。
だからこそ、ルナイファに仇なすことなど出来るはずがない、はずであった。

しかしこの地獄を乗り越えるためには、それだけでは足りなかった。
否、足りるはずがないと言った方がいいかもしれない。
それほどまでにこの空間には狂気が満ちていた。

(; ・∀・)「......なんだと?ルナイファが!?」

そしてその狂気は、新たな矛先を見つけるのであった。

783名無しさん:2023/10/28(土) 18:41:55 ID:SslklFAQ0
ムー国 捕虜収容所

(゚、゚トソン「そ、そのお話は本当なのですか!?」

( ´_ゝ`)「あぁ、陛下は講和に動くらしい」

その言葉に捕虜たちは一斉にざわつき始める。
そのざわめきは喜びと困惑、そして悲しみが入り乱れたものであった。
もうあんな凶悪な敵と戦う必要も、そして国に残された家族たちも危険にさらす必要がなくなるという喜び。
これまでの政策から陛下が本当に講和を選ぶとは信じられないという困惑。
そして世界最強と信じてきた祖国が、本当に負けたのだという悲しみ。

本当に様々な感情が沸き上がり、心がぐちゃぐちゃにかき乱される。
だが皆どこかでこの結末を望んでいたのだろうか。
ざわめきは段々と歓喜へと変わりつつあった。

784名無しさん:2023/10/28(土) 18:42:36 ID:SslklFAQ0
( ´_ゝ`)「......ふむ」

その様子を眺めつつ、アニジャは若干の安堵を覚えていた。
降伏を受け入れられないもの、それこそ徹底抗戦を唱えるようなものが出てくれば混乱は免れない。
それどころか下手に暴れでもすれば危険と見なされ、容赦なく殺されてもおかしくない立場なのだ。

だがここにいる兵たちは降伏を受け入れ、そしてそれを素直に歓喜出来るものばかりである。
ルナイファの現状を考えれば非常に幸運であると言えるであろう。
そしてそれはアニジャも理解しており、負けたことを喜ぶ者が多くて良かったと感じるという、何ともおかしな自身の状況に苦笑していた

785名無しさん:2023/10/28(土) 18:43:34 ID:SslklFAQ0
(゚、゚トソン「それでその、アニジャ様。我々についてはどうなるのでしょうか?」

( ´_ゝ`)「その件か。それは今後の交渉次第とのことだ」

(゚、゚トソン「交渉......」

その言葉に、トソンの顔が一気に引き締まる。
交渉と言えば聞こえは良いが、要は人質と言うことであろうと考えたからであった。
いくら負けたからとはいえ、自身の命により国が不利になるというのは一兵士として耐え難いことである。

( ´_ゝ`)「ん?......あぁ、何か勘違いしているな」

(゚、゚トソン「は、勘違い、ですか?」

( ´_ゝ`)「別に俺達を使って脅しをしようってわけではないようだ。そもそもそんな価値は俺達になかろう」

(゚、゚;トソン「......」

その言葉に誰も何も言わないが心は一つであった。
ーアニジャにはその価値が十分すぎるほどにあるのではないか、と。

786名無しさん:2023/10/28(土) 18:44:46 ID:SslklFAQ0
そしてそれは、アニジャ自身も分かっていた。
アニジャを交渉材料にすれば、かなりの効力があるであろう。
さらにそれは、人間達も分かっていることも知っていた。

だがそれでも、彼は自身がそのような状況に陥ることはないと、特に心配はしていなかった。

( ´_ゝ`)(未だに人間に対する不安は消えず、か。今後ためにも、皆の人間に対する考えを改めなくてはならないな......)

ここで暮らし、そしてクーを通じて得た情報からおおよそではあるが召喚地の人間達が何を望み、どのように考え、行動しているかに察しがついていたのだ。
そしてその彼らの考え方、つまり倫理観を知り、その倫理の上に高度な文化を築いてきたことを知ったのだ。

国と共に、民も成長する。
言われてみれば当たり前のように感じられることではある。
だがルナイファは確かに大国ではあるが、その国の成長と共に倫理観が成長してきたかと問われれば、アニジャは首を捻るであろう。
そんな当たり前のことすら出来ていなかったのだ。
この戦争が仮に無かったとしてもいずれ、国としてまとまらなくなり、崩壊の時は訪れていたであろう。

787名無しさん:2023/10/28(土) 18:45:45 ID:SslklFAQ0
( ´_ゝ`)「国のため......彼らに学ばなくてはならないな」

(゚、゚トソン「は?アニジャ様、どうかされましたか?」

( ´_ゝ`)「あぁ、いや。一人言だよ」

そして歪に成長を続けてきた母国は今、土台から崩れ落ちようとしている。
それは確かに悲しむことではあるが、今までが異常であったのだと、アニジャは考えていた。

この戦争の敗北により、全ては一度、リセットされる。
それにより新たな国を作り上げる際には、もう二度と間違いを起こさぬよう、これまでに学んだことを注ぎ込むことができるだろう。
そうしていつかは、より良い国を作っていけるはずなのだ。

そう、これはそのための一歩なのである。
より良い国へ近づくための、非常に遠回りであったが、必要な一歩なのだ。
ーそう考えなくては、この戦争により散っていた命に顔向けが出来ない。

( ´_ゝ`)「......いや、流石にこれは言い訳だな」

そう呟き、アニジャは苦笑する。
多くのものを失った戦争であったが、今この手には未来がまだ残されている。
そう確信しアニジャはその希望を胸に、未来を思い描くのであった。

788名無しさん:2023/10/28(土) 18:46:19 ID:SslklFAQ0
ルナイファ帝国 帝国議事堂
1463年4月18日

(# ^Д^)「奴らが怯んだ今!!我々は攻めに転ずるべきなのだっ!!」

多くのものが集まった議事堂に、プギャーの声が響きわたる。
勇ましく叫ぶその言葉に何人ものエルフが賛同の声を挙げ、敵を倒せと叫び、熱量が上がっていく。

しかし一方で、声を挙げなかったエルフ達は絶対零度にまで冷えきっているのではないかというほど、冷たい視線を彼らに送っていた。
その視線には未だに現実を理解していないのかという呆れと侮蔑の感情が含まれていたが、それに気付く様子もなく、加熱された輩達は意気揚々と自らの主張を吠え続けていた。

789名無しさん:2023/10/28(土) 18:47:14 ID:SslklFAQ0
/ ,' 3「我から話がある......皆、静まれ」

しかし、そのアラマキの声は全ての雑音をかき消し、空間に静寂を取り戻す。
頭に血が昇っていた者達も、一応の冷静さを取り戻し、アラマキに対して頭を垂れる。
そうしてようやく話が出来る空気になったのを確認して、彼は一つ小さく頷き、話を始めた。

/ ,' 3「今日、ここに皆に集まって貰ったのはこの国の今後を決めるためである。皆が知っての通り、我が国は今、窮地に陥っていると言っても良いであろう」

ざわっと、静まり返っていた空間に音が産まれる。
アラマキの言葉は自国の劣勢を認めるどころか、追い詰められていると認めているのだ。
ここにいる多くのものも、それは理解していたが改めてそれを陛下が認め、そして口にするなどと考えていなかったのである。

790名無しさん:2023/10/28(土) 18:48:42 ID:SslklFAQ0
圧倒的な強者としてこれまで振る舞ってきた王が、自ら弱さを認める。
それは強さを武器とし、他国を支配してきたこの国にとってあり得ない姿であり、そんな姿を見せなくてはならないほどになっているということを示していることに他ならないのだ。

/ ,' 3「では、これから我等はどうするべきか。オトジャよ、貴様から提案があると聞いた。ここで述べよ」

(´<_` )「御意」

そうして静まり返り、異様な空気が漂う中、その中心にオトジャが歩み出す。
心音がこの静かな空間に聞こえるのではないかというほど凄まじい鼓動を感じながらも、それをどうにか表に出さぬよう堂々とした姿をなんとか作り出す。

これから発する言葉、一つ一つが国を動かしかねないのだ。
下手に弱い姿を見せ、ここで主張を通せなければ国が滅ぶ事に等しいであろう。
何せこの空間には先ほどまで妄想を語り、それを絶賛していたものがいるのだから。

弱みは見せられないと一度、強く目をつぶり、覚悟する。
ーアニジャ、俺に力を貸してくれ。
口の回る兄の姿を思い浮かべ、そう祈り目を開く。

その目は、覚悟を決めた男の目であった。

791名無しさん:2023/10/28(土) 18:50:02 ID:SslklFAQ0
(´<_` )「では私から提案を述べさせていただく前に、一度、現状を皆に共有させていただきたい。陛下、よろしいか」

/ ,' 3「うむ、許可しよう」

(´<_` )「感謝致します。さて、これまでこと、つまり我々が呼び出した人間のと戦いについてですが、まず最初に接触したは召喚地に送り込んだ先遣隊です」

/ ,' 3「昨年の、召喚直後のことであるな」

(´<_` )「その通りでございます。そして彼らの証言によれば、謎の飛行物体と接触し、攻撃に成功するも撃墜に至らず、その後に謎の攻撃により逆に部隊が壊滅。作戦は失敗し、撤退いたしました」

/ ,' 3「......」

(´<_` )「そしてその後、召喚地は我々の攻撃、及び強制的に召喚したこと、また外交官を処刑したことに対する報復として、ムーを強襲。結果は防衛に失敗し、わずか一日で陥落いたしました」

淡々と語られる敗北の歴史。
皆すでに知っていることとはいえ、最強と吟われた国の民なのだ。
その話を改めて聞いて決していい気分になるものなどいるはずがなく、皆が顔をしかめる。

792名無しさん:2023/10/28(土) 18:51:08 ID:SslklFAQ0
オトジャもそれは同じだが、それでも話を止めることはない。
ただ、淡々と話を続けていく。

(´<_` )「これを受け、我が国は召喚地との戦争を本格的に開始することを決断。また軍務省の判断により宣戦布告がされました」

( ^Д^)「......ふんっ」

(´<_` )「そしてムー奪還に向け、主力とも言える軍を多数派遣、また属国からも兵を集め、歴史上類を見ないほどの大戦力にて戦いを挑みました。我が国が全力で戦いを挑んだと言ってもいいでしょう」

( ФωФ)「......」

(´<_` )「ですが、結果は皆も知っての通り、敗北いたしました。言い訳のしようがないほどの、大敗北です」

話が続くごとに、多くの者の顔がより暗いものへと変わっていく。
改めて言葉で聞き、そうして正しく現実を見つめ直すことにより、現実がどれほど追い詰められているのかを嫌でも認識させられるのだから。

793名無しさん:2023/10/28(土) 18:52:38 ID:SslklFAQ0
(´<_` )「この敗北により敵の圧倒的な強さが共通の認識となった、そうここにいる皆様も間違いなく、ご理解いただけていると考えております。また多数の艦を一気に喪失したことにより、ムー奪還は実質不可能となりましたため、我が国は防衛に全力を尽くすこととなりました」

( ^Д^)「......」

オトジャが共通の認識と述べた際、わざと強調して話をする。
その言葉に継戦派のものたちは苦虫を噛み潰したかのような顔を浮かべるが、唸るのみで反論はなかった。
否、反論できなかったという方が正しい。
何故なら敗北は事実なのだから。

だが唯一、プギャーのみ涼しい顔のままその言葉を聞き流していた。
その様子に若干の不気味さを感じつつも、話を続けていく。

(´<_` )「ですがこの防衛も失敗に終わり、敵の上陸を許しました。もう海では打つ手がないと言える状態となったため、陸戦でどうにか巻き返しをと考えておりましたが......そこでニータから宣戦布告をされました」

/ ,' 3「......ふむ」

(´<_` )「兵が足りない北方は勿論ニータに対し劣勢であり、圧倒的な力を持つ人間達を相手に南方もまた敗北を重ねました。最早どの戦線においても我々は苦境に立たされているといえます」

( ^Д^)「......だが、勝ったではないか!!我々は、人間にっ!!」

(´<_` )「っ」

794名無しさん:2023/10/28(土) 18:55:18 ID:SslklFAQ0
まるで待っていたかのように言葉を放つプギャーにオトジャは内心舌打ちをする。
ただただ黙っていることはないとは考えていたものの、それでも最後まで黙って聞けないのかー
勿論内心でそう思うだけであり、言葉にはしない。
ただし視線ではそう伝えようと睨み付けるものの伝わる様子もなく、黙るどころかさらに畳み掛けようとしていた。

( ^Д^)「どうやらどうしても我が国が負けるといいたいらしいな、この敗北主義者が」

(´<_` )「......初めに述べた通り、事実を羅列しているだけです。それともなにか、異なるところがありましたか?」

( ^Д^)「まぁ、これまでは苦戦をしていたことは認めよう。だがしかしだ、こと南方の戦線について今語るべきは苦境などではなく我々が勝ち得た、勝利についてであろう!!」

(´<_` )「それについては、これから話をしようと......」

( ^Д^)「なぜあとにする必要があるというのだ!!現状を共有するというならば、南方は我々が勝利したという事実を伝えるだけで十分ではないか!!貴様はこの勝利の事実を無視し、我が国をあろうことか敗戦へと導こうとしているのかっ!!」

(´<_` #)(こいつ......!!)

沸き上がる怒りに歯が砕けんばかりに食いしばる。
よくもまあこのような場でいけしゃあしゃあとそこまで馬鹿げた妄言を披露し、そして相手を侮辱できるものだと逆に感心してしまうほどである。

795名無しさん:2023/10/28(土) 18:55:59 ID:SslklFAQ0
さらに付け加えるならば、彼の取り巻きもそうであろう。
先ほどで御通夜のように沈んでいた彼等が、まるで水を得た魚のように息を吹き返し騒ぎ始めているのだ。
つい先ほどまで少しでも現状を理解できていた頭は一体どこに消えたというのか。

(´<_` ;)(相手にしてられんぞ、こんな奴ら......)

ただでさえ国が追い詰められているというのに、なぜこんなもの達のために時間を割かねばならないのか。
その思いはこの場にいる多くの者が持つ思いであったのだろう。
オトジャに向けられる視線の多くは同情の視線であった。

(´<_` )「......プギャー様」

( ^Д^)「なんだね?ようやく、自分の過ちにでも気が付いたか?」

(´<_` )「ここでの共有する事実についてですが、南方は潜地艦により勝利を納めた......こちらで問題はありませんね?」

( ^Д^)「......」

796名無しさん:2023/10/28(土) 18:57:20 ID:SslklFAQ0
プギャーの言葉など、無意味だと切り捨て強い口調で言葉を叩きつける。
流石のプギャーもその姿に面食らったのか、騒ぎ続けていた口も言葉に詰まっていた。

(´<_` )「問題ないようですので続けて質問致します。この勝利が、何だというのですか?」

( ^Д^)「......どういう意味だ?」

(´<_` )「確かに我々は南方の一部にて勝利を納めました。間違いなく、勝利です」

( ^Д^)「そうだ、だからこそ今度は我々から攻めて奴らを」

(´<_` )「どうやって勝つと言うのですか?潜地艦では、この戦いに勝てませんが」

( ^Д^)「......は?」

余程その言葉が意外であったのだろう。
先ほどまでの勢いはどこへ消えたのか、オトジャのその発言にプギャーはぽかんとした表情を浮かべていた。

797名無しさん:2023/10/28(土) 18:58:35 ID:SslklFAQ0
そんな様子のプギャーに攻め時と言わんばかりに言葉を畳み掛ける。

(´<_` )「まず大前提として陸で敵に勝つためには土地を奪還するだけでなく、確保できる力が必要となります」

( ^Д^)「それが何だと」

(´<_` )「ですが潜地艦は敵への奇襲は可能ですが、これのみで戦況を決めることなど出来ません。一時的な奪還は可能かもしれませんが、先ほど述べた通り、確保するためには他の戦力が必要となります。そのための戦力比がどれほどなのかはこれまでの説明でご理解いただけていると思います」

( ^Д^)「......む」

(´<_` )「それに先の戦いは敵が潜地艦を知らないがゆえに我々が勝利を納めましたが、もう二度も同じ手は通用しないでしょう」

(# ^Д^)「通用しないだと?それは貴様の想像に過ぎんだろう!奴らに潜地艦を対処する方法など、ありはしない!!」

(´<_` )「......確かに直接対処する方法は持っていないかもしれませんが、そんなことをする必要もないでしょう」

/ ,' 3「それは、どういうことか?」

(´<_` )「単純な話です。潜地艦は確かに地に潜っている間は無敵かもしれません。先の戦いを見るに、こちらを探知することが出来ていない可能性もあり、地中に潜む間は敵も対処できないかもしれません。しかし常に地の中に潜ることは不可能。艦も、また乗員も補給が必要ですから」

/ ,' 3「......あぁ、なるほどな」

798名無しさん:2023/10/28(土) 19:01:13 ID:SslklFAQ0
その言葉だけでアラマキは理解したのであろう、納得したと深く頷く。
だが周りは、特にプギャー達については理解も納得もしていないのか、未だ怒りを込めた視線をオトジャに送っていた。

(´<_` )「敵は『ひこうき』なる高速で空を飛び、また凄まじい攻撃が可能な兵器を持っております。これまで手に入った情報から行動半径も恐ろしく広いと考えられ」

(# ^Д^)「それがなんだというんだ?」

(´<_` )「......えー、つまりですね。潜地艦が行動できる範囲は敵が攻撃可能な範囲であると言えます。こうなると敵は空から基地をあらかじめ潰しておけば潜地艦は補給も整備もできなくなります。これを防ぐ手段を我々は持っていませんので。その後に陸上を侵攻するのみで潜地艦の対処が事実上可能となる、というわけです」

( ^Д^)「なっ......」

(´<_` )「そもそも敵の機動力を考えれば、潜地艦は地中を進む関係上、凄まじく速度が遅いために敵の攻撃を防ぎきることは困難でしょう。地上戦力では足止めも出来ないようですので部隊の展開が間に合いません。しかし奇襲をしようと、各地に潜伏させようにも潜地艦の数、また乗員となれる魔法使いの数からして、この広大な土地の全てを守りきれるほどありません」

( ^Д^)「......」

(´<_` )「確かに我々は敵に一撃を与える手段を持っています。ですが、あくまでも一撃なのです。この戦況を覆せるものではないことを、皆に理解していただきたい」

799名無しさん:2023/10/28(土) 19:02:44 ID:SslklFAQ0
オトジャの発言に、ようやく継戦派達も理解したのか、先ほどまで自信満々という表情であった顔がみるみる青くなっていく。
その様子に、オトジャもようやく一息つくことが出来た。

(´<_` )「......さて、では本題に入ります。私から一つ、提案をさせていただきます」

だがまだ気を抜くわけにはいかない。
ここからが、本番なのだ。

(´<_` )「提案は単純な話です。先日私のもとへ召喚地より講和に向けた話し合いの申し入れがありました」

(; ^Д^)「なっ!?」

(´<_` )「私はこの提案を受け入れ、講和......和平の道を探るべきと考えます」

大きなざわめきと共に議会が揺れる。
この場にいる多くの者が考えつつも言葉にすることができなかった降伏を提案したのだから当然であろう。

800名無しさん:2023/10/28(土) 19:03:42 ID:SslklFAQ0
(; ^Д^)(まさか別ルートで降伏勧告をしていたというのかっ!?クソッ、面倒なことをしおって......)

だが一人の男だけは別の理由で動揺をしていた。
自らが握り潰すことで、どうにか降伏の道から遠ざけたかったというのに、これではその努力も無駄になってしまうのだ。

(´<_` )「現状、潜地艦による勝利のおかげで、敵もこれ以上の侵攻は避けられるならば避けたいと考えているでしょう。交渉次第では譲歩を狙えます......今以上に好機はない、と考えます」

(# ^Д^)「ふざけるなっ!!降伏など、認められるわけなかろうっ!!」

(´<_` )「ふざけてなどいません。むしろ、このまま戦い続ける方がふざけた考えだと思いますが」

(# ^Д^)「なっ、き、貴様っ!」

(´<_` )「では、お聞きしますが敵に勝つ算段があるというのですか?海と空は既に敵の手に落ち、陸上も守ることすらままならない我々が、どうやって敵に勝てというのですか。奪われた領土を取り返す方法など、有りはしないでしょう?」

801名無しさん:2023/10/28(土) 19:04:16 ID:SslklFAQ0
そのオトジャの言葉に皆がなにも言うことが出来なかった。
これまでの戦いで戦力比は明らかであり、まともに戦って勝てる未来を想像すらできないのだ。
敵に唯一抵抗できる手段は潜地艦のみ。
だがそれだけでこの戦争が勝てることなどあり得ない。

それならば潜地艦を脅威だと敵が認識しているうちに交渉を行い、少しでも良い条件を引き出す。
現状で最も良い選択肢であると理解したのだろう、継戦を叫んでいたもの達も悔しそうな顔を浮かべながらも何事も反論できずにうつむいていた。

そうして静まり返り、全てはここに決着した。

(# ^Д^)「手ならば、ある!!」

ーはずだった。

802名無しさん:2023/10/28(土) 19:04:57 ID:SslklFAQ0
(´<_` )「......なんですと?」

( ^Д^)「手ならばある、そう言ったのだ」

/ ,' 3「な......」

プギャーの発言に、空間にざわめきが蘇る。
そして継戦派も再度顔を上げ、期待に満ちた視線をプギャーに送っていた。
確かに先ほどまでの話で全てが決着がつくはずであった。
だがプギャーのその一言によって全て変わってしまったのだ。

/ ,' 3「プギャーよ。今の発言、この国の未来を左右するものとなることが分かっての発言か?確かに、存在すると?」

( ^Д^)「えぇ、存在します。我々は、奴らを滅ぼすことができるのです!!」

(´<_` )「......そんな手があるわけが」

/ ,' 3「よい、オトジャよ。プギャー、ではその貴様の考えを話してみよ」

( ^Д^)「はっ!」

多くの視線がプギャーに送られる。
一体この状況で何を言うつもりなのか、そしてこんな現状を覆しうるものなど本当にあるというのかー
皆が同じ思いを持ち、言葉を待つ。

803名無しさん:2023/10/28(土) 19:05:42 ID:SslklFAQ0
( ^Д^)「手は、数だ。数の力で、奴らを潰す」

(´<_` )「......はぁ」

そうして出てきた回答は、何とも呆れさせるものであった。
数で敵を圧死させる狙いなどこの戦いが始まって何度も行っている。
さらにその全てで負けているのだ。
今更そんな手で国の方針が変えられるはずもない。

(´<_` )「確かに敵兵は我々よりも少ない......いえ、少なかったというべきでしょう。敵の総数は少ないものの、既に我々は兵を削られ過ぎました。数では勝てません」

( ^Д^)「何のために徴兵をしていると思っているのだ?志願兵も数多くいる。まだ、我々の方が優位だろう」

(´<_` )「一般人など、魔法の才が乏しいものがほとんどで、さらに訓練も積んでいないのです。正規兵が束になっても叶わない相手に、どう戦おうと言うのです?」

( ^Д^)「戦う必要などない。ただ突撃すればよい。それで奴らは終わりだ」

(´<_` )「何を言ってるのですか?そんなことをしても、ただ無駄死にをー」

( ^Д^)「死の呪い」

(´<_` ;)「......なに?」

804名無しさん:2023/10/28(土) 19:06:52 ID:SslklFAQ0
( ^Д^)「知らんわけではないだろう?殺したものに、死を与える魔法があるではないか」

(´<_` ;)「なっ!?」

瞬時、皆が絶句する。
敵を殺すために、国を守るために国民を特攻させる。
そんな、倫理観の欠片もないような作戦をこの男は堂々と言い放ったのだ。

確かに確実に敵を減らすことはできるであろう。
だが降伏派は勿論のこと、継戦派も非人道的過ぎるその考えには動揺を隠せなかった。

(´<_` ;)「そ、そんなことが許されるはずがないだろう!!」

( ^Д^)「許されるか許されないかという話ならば、人間に下ることの方が許されざることだ」

(´<_` ;)「......貴様とは、一生考えが合わんようだな」

( ^Д^)「ふん......貴様が理解する必要などない。全ては陛下が認めてくだされば、丸く収まるのだからな」

そんなこと認めるわけないだろうー
アラマキとオトジャを初めとして多くの者の思いが一致する。

805名無しさん:2023/10/28(土) 19:07:33 ID:SslklFAQ0
こんな提案がもし仮に実現し、敵を殲滅出来たとしてもその後に残るのは焦土のみ。
プライドを保つために民も富も全てを費やすことなど、馬鹿げているとしか言い様ない。
そんな状態で国として保てるはずがないのだ。

(´<_` )「......まあいいでしょう。もし、もし仮にですが認められたとして、その作戦ではこの国から敵を撤退させるに留まるでしょう。それだけでは勝ったとは言えませんが、どうするおつもりか?」

( ^Д^)「その件に関しても問題ない。どうやら私の部下が『勝手に』行動していたようでな。おかげで奴らが滅びるのも時間の問題だ」

(´<_` )「......なんですかそれは」

既に、嫌な予感がしていた。
先ほどの提案ですら最悪だというのに、まだなにかあるというのだ。
自信満々に語るその姿に比例するかのように、不安は増していく。

806名無しさん:2023/10/28(土) 19:09:32 ID:SslklFAQ0
( ^Д^)「なに、新魔法を使っただけだ」

/ ,' 3「......新魔法?確か......遠距離攻撃魔法と聞いたがそれでどうにかできる相手ではなかろう」

( ^Д^)「いえ、陛下。その魔法ではありません。別の、新魔法です」

/ ,' 3「別?別とは......」

(; ФωФ)「なんだとっ!?まさか、き、貴様!!あれを使ったというのかっ!!」

( ^Д^)「使った?話はちゃんと、聞いてほしいものですなぁ。先ほど言った通り、部下が『勝手に』使ってしまったのですよ」

(# ФωФ)「ふざけるなっ!!あれは極秘事項だっ!!そんなこと......あるわけがっ」

( ^Д^)「いえいえ、あるんですよ。どうやらデミタスから情報が漏れてしまったようでしてね」

(; ФωФ)「っ!やつが、そんなバカな......いや、そうだ、デミタス!!召喚艦を動かせば、あの男が気付かないはずがない!!そもそも奴から漏れるはずが......っ!貴様、デミタスをどうした!!」

( ^Д^)「ですからちゃんと、話は聞いてほしいですな。奴なら、新魔法の情報を流出させた上に止められなかった責任から『自殺』しましたよ。遺書も残ってましてね」

(; ФωФ)「なっ!?」

807名無しさん:2023/10/28(土) 19:10:17 ID:SslklFAQ0
その言葉、そして薄ら笑いを浮かべるその男にロマネスクは確信する。
デミタスがこの男に消され、そしてあの魔法を使用させたのだと。
この国を、そしてこの世界を崩壊に導くといってもよい、最悪な事態である。

だがその事に今、気づいているものは少ない。
ほとんどの者が新魔法のことを知らず、話についていけていないのである。

/ ,' 3「ロマネスク、新魔法とはなんだ!?詳しく説明せよっ!!」

(; ФωФ)「......はっ。新魔法は以前お伝えしていた遠距離攻撃、長距離制圧魔法とほぼ同時に開発されたものになります」

/ ,' 3「......なに?そんなものがあるなど、聞いておらんぞっ!なぜ報告をしなかった!!」

(; ФωФ)「申し訳ございません。この魔法は、一度発動すれば世界を滅ぼしかねない魔法ゆえ......誰にも知られることなく、葬るつもりだったのです。ですが、隠していたのは事実。どのような罰も、受ける所存です」

808名無しさん:2023/10/28(土) 19:11:37 ID:SslklFAQ0
/ ,' 3「......待て、世界を滅ぼしかねないとは、一体どういうことだ?どんな魔法なのだ、それはっ!」

(; ФωФ)「......簡単に言えば、疫病を運ぶ海鳥を召喚し、敵地へ差し向ける魔法です。この疫病は古の大国を滅ぼしたと言われるもので、その致死率は一説では九割近くにも及びます。治療魔法も難易度が高いゆえ、現在の我が国で使えるものは......ほとんどおらぬでしょう」

/ ,' 3「な......なんだ、それは......」

(´<_` ;)「ろ、ロマネスク殿。海鳥が疫病を運ぶ、そうおっしゃいましたか?」

(; ФωФ)「うむ、そうだ。察しの通りであろう。召喚直後はある程度、進行方向は操れるため、敵国へ差し向けることが可能。だがその後は......」

(´<_` ;)「操作などできるはずもなく鳥たちは海を渡り、病は世界中に広まる......鳥の侵入を防ぐことなど、実質的に不可能だっ!」

皆が瞬時に顔を青ざめる。
今、この世界にとんでもないものが解き放たれてしまったのだ。

世界中を飛び回る、疫病。
もうこの世界に安息の地などなくなったと言えるかもしれない。
戦争と異なり、自分のいる場所、そして役職に関わらず皆に平等に死が降り注ぐ。
これまで安全な場所から命令するだけで良かったここにいる者たちも、いつ死んでもおかしくない世界へと変貌してしまったのだ。

809名無しさん:2023/10/28(土) 19:14:05 ID:SslklFAQ0
( ^Д^)「これでわかったでしょうか?奴らは既に戦争どころではない。これでこの大陸から奴らを消せば、それだけで我々の勝利となるのです。そして奴らをこの大陸から消すために、ここに国家総動員法を提案するっ!敵は少数!確実に勝利ができるのだっ!!」

(´<_` #)「貴様は馬鹿かっ!!我々にも、戦争などしている余裕なぞ、あるわけないだろう!対策にリソースを回さねば、将来どうなるかくらいわかるだろう!!それも、国家総動員法だと!?そんなことをすればたとえ敵を滅ぼしたところで、我々も滅びるのみだっ!!」

( ^Д^)「馬鹿は貴様だ。国家総動員法は、むしろ好都合なのだよ。考えてもみろ、病を治療できるものは少数なのだ。数が多くては感染源を増やすのみであろう?だがただ死ねと言うわけではない。エルフの、そして我が国ルナイファを守るという名誉ある死だ。そうして残された者たちにより、ルナイファは未来永劫、続いていくのだ。滅びることはない」

(´<_` #)「ふざけるなっ!!そんなことが、許されるはずがないだろうっ!」

(# ^Д^)「許されないだと?許されないのは貴様の言うようにエルフの誇りを捨て、人間の奴隷になることだろうがっ!我々はこの世界を神から与えられた、誇り高きエルフなのだっ!そんなことが許されるはずがないだろうっ!!奴らを滅ぼせるのは今しかないのだっ!まず必要なのは奴らを滅ぼすこと、ただそれのみ!その結果、どんな姿になろうともこの世界を守る、それが神から与えられた我々の使命であり、誇り高き我が国の正しい姿なのだっ!!」

(´<_` #)「っ!狂人がっ!!」

/# ,' 3「もうよいっ!!」

二人の会話に割ってはいる怒声。
その声に誰もが黙り込み、そして息を飲む。
この国の行く末を決めるのは、陛下なのだ。
もし仮に陛下が誤った道を進むというならば、それに従うしかないのだ。

それが例え、狂人が決めた道であり滅びに繋がる道だとしても。

810名無しさん:2023/10/28(土) 19:16:19 ID:SslklFAQ0
そう、陛下の一声で全てが決まってしまうのだ。
だから誰も声には出さないが、思いは一つであった。

ーどうか、正しい道を選んでくれ。

/ ,' 3「......オトジャよ」

(´<_` )「はっ」

/ ,' 3「人間達への連絡を頼む。我が国は、講和を望む......いや、降伏するとな」

( ^Д^)「っ!」

その言葉に、皆が安堵のため息をついた。
少なくとも、現時点で選べる最善の選択がなされたのだと。
問題は山積みであり、決して将来が明るいとは言えないが、少なくとも今の時点では、全てが終わったのだ。
そう考えていたのだ。

ーただ、一人を除いて。

( ^Д^)「......陛下、それが貴方の選択ですか」

/ ,' 3「そうだ」

( ^Д^)「そうですか、非常に残念です。陛下だけは、私の考えを分かってくれると信じていたのですがね」

811名無しさん:2023/10/28(土) 19:17:00 ID:SslklFAQ0
(# ФωФ)「陛下っ、この男はすぐに拘束すべきです!!命令をっ!」

( ^Д^)「一体なんの罪で拘束しようというのかね?先ほどから述べている通り、私はなにもしていないのだ。証拠だってないのだろう?」

(# ФωФ)「......」

( ^Д^)「まぁ、よい。なんにせよ、拘束などできるはずがない」

/ ,' 3「......どういう意味だ?」

( ^Д^)「簡単な理由ですよ」

そう言い、プギャーは右手を挙げる。
そしてそれを合図にし、議事堂の扉が強く開け放たれ、何十人もの兵士が雪崩れ込んでくる。

(; ФωФ)「なっ!?」

( ^Д^)「拘束されるのは、貴様らだからだ......全員、動かないでもらおうか。動けば、命はないと思え」

終わりの、始まりである。

812名無しさん:2023/10/28(土) 19:17:22 ID:SslklFAQ0
続く

813名無しさん:2023/10/28(土) 20:03:04 ID:i0291jOg0
乙!!

814名無しさん:2023/10/28(土) 21:41:07 ID:xBK4yX9c0
乙!プギャーお前はマジでどうしようもないな……。

815名無しさん:2023/10/28(土) 22:09:53 ID:Y2NgILtc0
王様迂闊すぎるぅ

816名無しさん:2023/10/28(土) 22:15:07 ID:95rpDSU60
おつ!
プギャーがここまで追い詰めてくるとは思わなかった…

817名無しさん:2023/10/29(日) 08:50:38 ID:rvaNCerQ0
乙です

818名無しさん:2023/11/04(土) 15:07:49 ID:e9mBbMOc0
ルナイファ帝国 帝国議事堂
1463年4月18日

/ ,' 3「これは、一体どういうつもりだ?」

多数の兵に取り囲まれつつも、アラマキは取り乱すことなく、静かにそう問う。
そう静かに、まるで氷のように冷たい声が響く。
通常であれば、彼のそのような声を聞いたこの国の者は誰しもが震え上がり、許しを乞うであろう。
だがプギャーを初めとして兵も誰一人として態度すら変えず、それどころか睨み返していた。

その目は明らかに正気のものとはいえず、狂気に染まっていた。

/ ,' 3「......狂ったか、貴様ら」

( ^Д^)「狂っているのは貴様らの方だ。あろうことかエルフの誇りを捨て、自ら召喚した奴隷に許しを乞うなど......それも、奴らを滅ぼす力がありながら」

/ ,' 3「その結果、何が得られるというのだ。何も、残らぬではないか」

( ^Д^)「何も残らない?それどころか、我々の輝かしい勝利が得られるではないか。むしろ、何も得られぬのはそちらの方だ。奴らに何もかも、奪い取られる......そんなことが、許されるはずがない」

/ ,' 3「......例え、死んだとしてもか」

819名無しさん:2023/11/04(土) 15:09:26 ID:e9mBbMOc0
言葉は同じであるはず。
だがまるで話が通じていない。
まるで異なる言葉を話しているのではないかとすら感じてしまう。
これならば、異界の人間の方が話が通じるであろう。
今目の前にいる男は同じ国の民であり、同じ種族であるはずだというのに。

そして、そんなものに権力を与えてしまっていたのだ。

/ ,' 3「つくづく、我は王として失格だな......」

( ^Д^)「今更、何を後悔しているか知らんが......あんたにはまだ、利用価値がある。おい、捕らえろ」

その合図に、複数の兵がアラマキを捕らえようと踏み出す。

そして、それと同時にその兵達を包むように光が現れた。

820名無しさん:2023/11/04(土) 15:10:28 ID:e9mBbMOc0
一瞬何事かと、皆が呆気にとられた、その刹那。

光は爆発し、兵達のみを吹き飛ばす。
まるでアラマキを守るかのように、その他一切に影響を与えず、である。

( ^Д^)「......ロマネスクか」

(# ФωФ)「貴様ら、陛下に手を挙げて無事で済むと思うなよ......」

( ^Д^)「ふん、流石だな。神業とも言えるような魔法だ。どうだ?今からでも遅くない、こちらにつく気はないかな?」

(# ФωФ)「あるわけがなかろう!」

( ^Д^)「それは残念だな。貴様ほどの魔法使いがいれば、多くの民を救うことが出来たろうに」

(# ФωФ)「っ!!」

民が死ぬ原因を作り出そうとしているは目の前にいるこの男のはずである。
そんな男の口から民を救うなどという言葉が出てきたことにロマネスクは思わず絶句する。
思考のさらに底、何かが根本的に異なっているのだ。
見た目は確かにエルフであるはず。
だがそこにいるのは、間違いなく道を外れた化け物である。

821名無しさん:2023/11/04(土) 15:12:21 ID:e9mBbMOc0
( ^Д^)「まあいい。それならば予定通りに進めるのみだ。しかしロマネスクよ。貴様がいくら凄腕だろうがこの数に勝てると思っているのか?魔石も多くは持ってないのだろう?」

(# ФωФ)「......」

( ^Д^)「ふん......やれ」

返答がないことに、心底つまらなさそうな顔をしつつ、簡潔に指示を出す。
複数のエルフが色とりどりの魔法を練り上げられる。

陛下を守れるものは、この場にはロマネスクとあとはオトジャくらいであろう。
他にいる者たちは皆、魔法こそ使えど戦闘用の訓練など受けているはずもなく、兵士相手に戦えるようなものなどいるはずがない。

対して相手は数十という軍人。
圧倒的な戦力比であり、またそれを狙ってプギャーはこの場を襲ったのだ。
仮にも軍のトップに立つ男である。
その才をこのような場で遺憾無く発揮し、全てがこの一瞬で片が付くー

822名無しさん:2023/11/04(土) 15:13:28 ID:e9mBbMOc0
(´<_` #)「全部隊、反撃しろぉっ!!」

はずであった。

オトジャのその掛け声と共に、議事堂に潜んでいた彼の部下が一斉に飛び出していく。
それは完全なる不意討ちとなった。
攻撃をしようとしていた者たちは攻撃を放つことも、そして自分等に襲い来る敵に対処することも出来ず、ただ固まってしまっていた。
そんな隙を許すはずもなく一気に雪崩れ込む。

(; ^Д^)「なっ!?こ、これは......ど、どういうことだっ!」

多少の抵抗こそあれどこちらは正規の兵であり、まともに対処できる相手などいないと想定してプギャーらは今回の作戦を練っていた。
しかし一体どういうわけなのか、明らかに敵の護衛に飛び出してきた者たちもまた正規の兵であり、なおかつ練度も高い。
軍の動きをある程度、把握しているはずの自分がなぜこれほどの兵たちの動きを察知できなかったのか。

プギャーには理解できなかった。

823名無しさん:2023/11/04(土) 15:14:55 ID:e9mBbMOc0
(;# ^Д^)「クソッ!一体どこから湧きやがった!!」

(´<_` ;)(まさか、本当に必要になるとはな......)

プギャーが動揺する一方で、オトジャも動揺を隠すことができなかった。
アニジャからの命で、もしものことがあればクーデターを起こしてでも国を動かせるようにと部下の兵は集めていた。
だが陛下であるアラマキの方針からその必要はなくなり、全ては丸く収まるであろうとどこか考えていた。
ただ何人かの反発をする恐れがあったため、その制圧のために兵はある程度の数を備えていたが、まさか逆にクーデターを起こされ、それを制圧することになるなど、全く想定していなかった。

しかしその準備が出来ていなかったことが逆に功を奏していた。
兵の規模が極端に小さいため、動きがバレにくくなっていたのだ。
そしてなによりオトジャを含む部下は全員、陛下直轄の特殊艦隊の兵士である。
国内でも秘匿とされる部隊に所属しているために、いくらプギャーであったとしてもその動きを見つけ出すことも困難となっていたのだ。

824名無しさん:2023/11/04(土) 15:15:56 ID:e9mBbMOc0
(# ^Д^)「くそっ、何をしている!!数はこちらの方が多いのだぞっ!!」

そしてなにより、彼らは選ばれしエリートの集まりなのだ。
少数精鋭という言葉を体現するかのごとく、圧倒的な数の差を才能の差により埋めていく。
さらにそこに世界でも有数の魔法使いであるロマネスクも加わり、戦況は一気に均衡していく。

(´<_` ;)「ぐ......」

ーそう、均衡しているのだ。

敵の不意をついた形となり、明らかに敵は動揺し多大なダメージを与えたはずであった。
しかし、それでも最悪の状況は脱すれど敵を押しきれるほどの力は無かったのだ。
いくら優れたものが揃っているとはいえ多勢に無勢。

さらにオトジャを初めとして集まっている兵は本来、特殊艦隊の配属、つまり海兵なのだ。
本来とは違う戦いにすぐに適用できるかと言われれば、そう簡単にいくはずもない。

825名無しさん:2023/11/04(土) 15:17:17 ID:e9mBbMOc0
またロマネスクも魔法の腕はこの場でもっとも優れているとはいえ、兵としての訓練など受けたことがない。
研究などが本分であるために、慣れない戦いでその力を存分に発揮できているかと言えば怪しいものがあるのだ。

(; ФωФ)(くそ、ここまで敵味方が入り乱れては思うように魔法が使えんっ!!)

さらにそんな状況でアラマキを守らなくてはならないというのだ。
むやみやたらに高威力の魔法を使えば巻き添えになりかねない。
それこそロマネスクが先ほどやったように魔法を巧みに操り、攻撃の衝撃を敵のみに与えることができれば全て解決する。

だがそんなことを皆が皆、出来るはずもなければ、繊細なコントロールの必要な魔法をこんな混戦の中、さらに入念な戦闘準備もしていないこの状況で行えるはずがない。

さらに魔法のコントロールを誤れば、魔法が暴走する恐れもある。
その被害が自身だけならばまだしも、この場には陛下もおり、巻き込みかねないということが、心理的に足枷となっていた。
ゆえに強力な魔法が使えずに敵を一気に制圧することが困難になっていた。

826名無しさん:2023/11/04(土) 15:19:04 ID:e9mBbMOc0
一方でプギャー側はといえば確かにアラマキは生きていれば利用価値があるものの、それは絶対条件ではない。
つまり攻撃を行い、生きていれば御の字といった風に何も気にすることないということである。
さらに彼らは狂気に陥っているのだ。
死すら恐れないその狂気に、オトジャ達は圧倒されていく。

(´<_` ;)「......不味いぞ、ロマネスク殿。このままでは押しきられるっ!兵の体力も、魔石ももうもたんぞ!」

(; ФωФ)「っ!ぐ、む、ぅ......」

ゆえに一旦均衡を保ったとはいえ、それは瞬時に破られる。
オトジャの部下達も、今のところは何とか持ちこたえているものの、形勢は悪化する一方である。

さらにそこに追い討ちをかけるように魔法の元ともいえる魔石が枯渇しかけていた。
魔石がなければどんな凄腕な魔法つかいも、魔法を使えず人間と何も変わらない。
むしろ魔法に依存していた分、それにすら劣るかもしれないのだ。
そのため魔石がなくなればどうなるかなど考える必要もないだろう。

さらに多くの兵が、その魔法を使うための体力も尽きかけていた。
最早精密なコントロールどころか、通常の魔法すら操れるか怪しいところまで到達しつつある。

827名無しさん:2023/11/04(土) 15:19:43 ID:e9mBbMOc0
元々反対派の者達を拘束する程度を考えており、大規模な戦闘など考慮していなかった。
そのため準備不足であったことは仕方のないことではあるが自分の命、そして国の運命がかかっているこの状況でそれを仕方ないと割りきれるはずもない。
だがどうすることもできないという絶望感に、ロマネスクもオトジャは顔を歪ませる。

(; ФωФ)(オトジャ殿の言う通り、こちらの兵力で敵を倒しきるのは無理だ。このままでは、陛下を守りきれん。そうなれば、この国は......)

(´<_` ;)「くそっ!!せめて、陛下だけでも逃げる隙だけでも作れれば......」

(; ФωФ)「......っ!!」

その言葉に、かつて自身が受け持った任務が脳裏をよぎる。
そして一つの可能性が、生まれた。
かなりの無茶をすることになるが、現状よりも遥かにマシであろう、その可能性。
それに全てをかける覚悟を、ロマネスクは固める。

ー少なくともそれならば、陛下のみは助けられるのだ。

828名無しさん:2023/11/04(土) 15:24:32 ID:e9mBbMOc0
(; ФωФ)「そうか、倒さずともそれならばっ......オトジャ殿っ!」

(´<_` ;)「っ!なにかっ!」

(; ФωФ)「すまぬ、説明している時間はない!皆が敵を押さえている今しか、魔法を構築する時間がないのだっ!早く陛下の側へっ!それと、持てるだけ魔石をっ!」

(´<_` ;)「何を......」

(; ФωФ)「オトジャ殿、後は任せましたぞ!」

一体何をするつもりなのかと、オトジャが口を開き尋ねようとしたのを遮るように、ロマネスクは自らのローブを脱ぎ、それをオトジャに渡した。
幾重にも魔方陣が書き込まれたそのローブに時間をかけ、魔力が込められていく。

暫くすると淡い輝きを放ち、魔法を使える者であればそこに注ぎ込まれた力のすさまじさを感じることであろう。
現に受け取ったオトジャもその肌から伝わるこれまで感じたことのないような凄まじい魔力に思わず身震いをしそうになるほどである。

829名無しさん:2023/11/04(土) 15:28:29 ID:e9mBbMOc0
/ ,' 3「これは......一体、どういう」

(; ФωФ)「っ!準備が出来たっ!!陛下、あとはこのオトジャに全てを託します。彼と共に、離脱をっ!」

困惑する二人を他所に、ロマネスクは魔法を完成させる。
ローブの淡い光は集まり、強い光となる。
その光もまた、集まり、束なりそして、光の柱となる。

(; ^Д^)「転移魔法っ!?」

それは、対象を任意の座標へ送る転移。
ようやく時間をかけ、何をやっているか気づいたもの達が妨害しようとするものの、その努力も空しくオトジャの部下達に押さえ込まれていた。
そして邪魔をすることすらできぬまま、オトジャとアラマキの二人を光が包みこみ、そして消える。
光も、二人の姿もである。

たった、一瞬の出来事であった。

その場にいた者のほとんどがただ呆然とその様子を眺めていることしかできなかった。
そもそも転移魔法など、いくら小規模でも超高等魔法なのだ。
通常であれば、大規模な魔方陣や複数の優秀な魔法使いがいてようやく使えるかどうかというレベルのもの。
それをたった一人の男がこの混沌とした戦いの中で発動させたというのだ。

830名無しさん:2023/11/04(土) 15:29:41 ID:e9mBbMOc0
( ^Д^)「全く、本当に信じられんな。流石は世界一の魔法使いというべきか。まさか逃げられるとは想定外だ......それも、二人もとは」

(; ФωФ)「はぁ......はぁ......」

( ^Д^)「大分無茶をしたようだな。しかしなぜだ?なぜお前ではなく、オトジャなどを生き残らせた?」

(; ФωФ)「......ふん、簡単な話だ。魔力がほとんど切れた我輩が陛下の側にいても守ることはできない。陛下を救うためには最善手が、これだ」

( ^Д^)「はん、なるほどな。しかし、これがあのロマネスクの最期とはな。魔力が尽き、魔法使いでありながら魔法も使えずに惨めに死ぬことになるとは何とも情けない最期だ。まあ安心しろ。すぐに殺しはせん。死の呪いを使われてはたまらんからな」

(; ФωФ)「ふ......」

( ^Д^)「......なにがおかしい?魔法もまともに制御出来ない状態のくせに」

(; ФωФ)「いや、貴様の言う通り、確かに我輩にはまともな魔法を使う力など残されておらん。転移魔法で限界が来ておる......まともな魔法は、確かに使えぬ。だが、知っているか?もう、巻き込む心配などしなくて良くなったのだ......もはや制御など、要らぬよ」

( ^Д^)「あ?」

831名無しさん:2023/11/04(土) 15:30:32 ID:e9mBbMOc0
(; ФωФ)「制御など、要らぬのだっ!!貴様を殺すだけならば、魔法を暴走させるだけで、事足りる!!」

( ^Д^)「なにをー」

(; ФωФ)「全員、覚悟は出来ておるなっ!!息のあるものよ、我輩に続けっ!!敵を、道連れにするのだっ!!制御など不要っ、ただ残った魔力を垂れ流すだけでよいっ!命を削り、ありったけの魔力を込めろっ!!こいつらをここで止めねば国が、いや、世界が滅ぶっ!」

(; ^Д^)「っ、ま、まさかっ!貴様っ!」

プギャーがハッと周りを見渡せば、先ほどまで追い詰めていたはずのオトジャの部下達の目が明らかに変わっている。
それは、覚悟を決めたものの目であった。

命懸けで、こちらを殺すという、絶対的な覚悟ー

832名無しさん:2023/11/04(土) 15:31:10 ID:e9mBbMOc0
(; ^Д^)「やめろっ!ふざけるなっ!!そんなことをして何になる!!やめっー」

(; ФωФ)「さらばだっ!!」

ロマネスクを先頭に複数の影が、プギャー達へと最後の力を振り絞り、飛び込んでいく。
そしてその瞬間、カッ、という目映い光が放たれた。
制御など考えない魔力の奔流。
通常ではあり得ない、制御を失った魔法の力の渦が産み出される。

(; ФωФ)(デミタス......これで少しは貴様に顔向け出来るであろうか)

死の寸前、その時思い浮かんだのは、友の顔であった。
まさしくこの国を支えてきたといえるであろう偉大な友の顔。
対して自分はといえば世界一の魔法使いと言えば聞こえは良いが、結局何を残せたというのか。

少なくとも今回の戦いにおいてはまるでなにも出来ることはなく、むしろ自身が関わった魔法の開発により、世界が危機に陥ろうとしている。
さらに今ですらその力を満足に発揮できずに命を散らそうと言うのだ。

833名無しさん:2023/11/04(土) 15:31:44 ID:e9mBbMOc0
無念としか言いようがない。
だがそれでもアラマキを守りきり、そしてこの場から離脱させることに成功し、またこの国の暴走の根元を道連れにする。

( ФωФ)(貴様ならもっと上手くやれたのかもしれんが、我輩にはこれが限界である)

だが、自分にしては上手くやった方であろうー
そんな妙な満足感を得たのと同時に。

激しい爆発が、ロマネスクを包み込んだ。

834名無しさん:2023/11/04(土) 15:32:09 ID:e9mBbMOc0
ルナイファ帝国 帝都近郊

(´<_` ;)「へ、陛下っ!ご無事ですかっ!!」

/ ,' 3「ああ、平気だ......だが、ここは?」

(´<_` ;)「どうやら、帝都の外れに転移されたようですね」

/ ,' 3「......我らのみ、か」

(´<_` )「......えぇ、そのようです」

/ ,' 3「......」

それが意味することは理解できる。
ただ、理解したくなどないのだ。

自分達の命を救うために、多くの命を犠牲にしたなど。

835名無しさん:2023/11/04(土) 15:32:56 ID:e9mBbMOc0
(´<_` )「陛下、行きましょう。ここはまだ、帝都に近い。下手をすれば奴らの追手にやられるかもしれません。一刻も早く、移動すべきです」

しかしそれを嘆いたところでどうにもならない。
この状況を打破することができなければそれこそ命が無駄となってしまう。
アラマキもそれが分かっているのだろう、オトジャの言葉に頷き、同意を示す。

/ ,' 3「......うむ、そうだな。しかし、宛はあるのか?」

(´<_` )「テタレスに参りましょう。距離を考えると、そこしかありませぬ」

/ ,' 3「そうか。しかし、テタレスとなると前線が近い。敵からの攻撃があるのではないか?」

(´<_` )「予め講和に向けて、秘密裏にですが交渉を進めており、テタレスへの侵攻は行わない旨を確認しております。そこは問題ありません。むしろ問題なのは」

/ ,' 3「講和することを前提に交渉をしていたのにも関わらず、国がこのような状況になってしまったこと、か」

(´<_` )「......はい」

836名無しさん:2023/11/04(土) 15:33:57 ID:e9mBbMOc0
相手からすれば堪ったものではないだろう。
降伏するために内政をまとめる時間が欲しいと要求を受け、それを容認し遂に終戦かと思えばクーデターにより国家が混乱状態になったと言うのだから。

(´<_` )「こちらがもう交渉できないものと判断され......殲滅されてもおかしくないでしょう」

/ ,' 3「......うむ」

ルナイファは最早国家ではなく、制御不能の武装集団と見られてもおかしくない。
ただ怒りやプライド、自身の思想のためだけに他国を脅かすその危険性、またルナイファの他国からの印象から考えれば、殲滅も国際的に容認はされないかもしれないが、批判もされないだろう。
さらに追い討ちとして、使用した新魔法を考えれば、ルナイファは世界の敵になりうる立ち位置にいる。

状況は、限りなく最悪に近い。

(´<_` )「これから、一体どうすれば良いのやら......」

/ ,' 3「......いや、案外、どうにかなるやもしれぬ」

(´<_` )「え?」

837名無しさん:2023/11/04(土) 15:34:47 ID:e9mBbMOc0
/ ,' 3「確かにルナイファは愚かな輩により、政権が奪われた。戦いを望む愚か者にな。だが、民はどうか?」

(´<_` )「それは......北方はともかく、南方であれば降伏を望む声が大きいですが」

/ ,' 3「そうだ。つまり、我が声を挙げれば少なくとも南方は帝王である我に続くであろう。いや、恐らくは国の半分は我に続くはず。それをまとめ上げればそれを武器に十分に講和に向けて話はできる」

(´<_` )「......確かに降伏派のものをまとめ上げることは可能と思いますが、それだけの材料で交渉が上手く行くとはー」

/ ,' 3「上手くいくであろうよ」

そう、アラマキが断言する。
あまりにきっぱりと断言するその姿にオトジャは驚きを隠せなかった。

(´<_` ;)「そ、それは一体どういうことでしょう?」

/ ,' 3「まず前提として、人間達はこちらとの講和を望んでいる。これは分かるな?」

(´<_` )「えぇ。あちらからの働きかけがありますから、そこは間違いないかと」

838名無しさん:2023/11/04(土) 15:35:35 ID:e9mBbMOc0
/ ,' 3「そうだ。しかし、講和するにも相手が必要だろう。ゆえに国を纏められる力のあるもの、それも降伏に前向きともなればはあちらからすれば非常に重要。むしろ状況的には我の価値が上がったと見るべきかもしれんな」

(´<_` )「......確かに混乱した国を、それも我が国の広大な土地全てを殲滅し、統治して混乱を治めることは困難。それならば一部でも国を纏められる者を立てた方がコストも少なく済みますし、なによりスムーズに進む、というわけですか」

/ ,' 3「そうだ、あちらからしてもメリットが大きい。確かに我々の罪は相手からすれば非常に大きいだろうが、下手に断罪などすれば、それこそ国はさらに荒れ、制御出来なくなる。ゆえに、大きくは手を出せんはずだ」

(´<_` ;)「理屈は分かりましたが......相手の感情の問題もあります。上手くいくでしょうか?」

/ ,' 3「確かに全ての罪が許されることはないだろうが、多くは問題なかろう。なにせ、分かりやすい敵が出てきてくれたからな」

(´<_` ;)「っ!ぷ、プギャーに全ての罪を被せるおつもりですか?」

/ ,' 3「そうだ。この戦争の全てを、奴に被せる。奴が望んだ戦争なのだ、本望だろう」

839名無しさん:2023/11/04(土) 15:37:24 ID:e9mBbMOc0
(´<_` )「確かにそれができれば、なんとかなるやもしれませんが流石に、無茶があるのでは......」

/ ,' 3「そこは交渉次第であろうが、現実として奴らに政権を奪われているのだ。決してあり得ないことではない。それに、そういうことにした方が人間達も都合が良いだろう」

(´<_` )「......なるほど」

/ ,' 3「勿論、それで全て無罪放免となるとは考えていない。果たすべき責務は全て果たすつもりだ......それに、だ。これが帝王としての、最後の勤めだ。必ずや国民をまとめ上げ、話し合いを成功させると約束しよう。国を、民を守るためにな」

(´<_` ;)「!へ、陛下」

/ ,' 3「ゆくぞ、オトジャよ」

(´<_` )「......はっ!」

こうしてアラマキ達は歩き出す。
全てを、終わらせるために。

840名無しさん:2023/11/04(土) 15:37:47 ID:e9mBbMOc0
続く

841名無しさん:2023/11/04(土) 18:12:49 ID:0pcX8xDU0
乙・・・・・・!

842名無しさん:2023/11/11(土) 19:15:16 ID:ziesvxk.0
ルナイファ帝国 帝国議事堂
1463年4月18日

室内に砂煙が舞う。
凄まじい爆発の跡が、そこには残されていた。
その爆風に巻き込まれたのであろう、赤黒いものが辺りに散乱する。
世界最強の国家、その国の中枢であったとは思えないほどに、凄惨な光景がそこに広がっていた。

そしてその光景を眺めるもの達、この国の貴族や議員、そして生き残ったプギャーの兵士達は、ただ呆然と立ち尽くすことしかできなかった。
突如プギャーを初めとした徹底抗戦を叫ぶ者達にこの場を制圧されたかと思えば、オトジャとロマネスクが率いる兵により戦場と化すという異常事態。
理解が追い付くはずもなく、またどうすることも出来ずにその様子を眺めていれば、ロマネスクが陛下を逃がし、そして最後の力を振り絞り、自爆した。

843名無しさん:2023/11/11(土) 19:15:51 ID:ziesvxk.0
到底短時間で起こった出来事とは思えず、全てが終わった今ですら理解が追い付かないほどに衝撃的な出来事の連続であった。
自国の事実上の敗北、それを認められない者達の暴走、世界に迫る病の恐怖、そして偉大な魔法使いの死。

どれをとってもとてつもないニュースなのだ。
それも受け入れがたいものばかりである。

だがそれでもまだ救いはある。
暴走の根元たるプギャーもあの爆発に巻き込まれたのだ。
失ったものは大きすぎるものの、それでもまだ、何とかなるかもしれない。
問題は山積みではあるものの、問題の発生源は潰せたのだからー

爆風により、巻き上げられた砂埃。
それもいつしか収まり、ようやく室内の全貌が明らかになっていく。

844名無しさん:2023/11/11(土) 19:16:29 ID:ziesvxk.0
(; ^Д^)「......は、はっ、はっ!」

ーそうして現れた光景に、誰もが声を失った。

砂埃から現れたのは、傷つきながらも確かに息をし、立ち上がる一人の男。
今、この眼前に広がる光景の原因たるその男である。

ーなぜ、生きている!?

混乱する頭の中で、皆の考えが一致する。
あってはならない光景のはずである。
あのロマネスクが命を懸け、最期に道連れにしたはずではなかったのか、と。
だがいくら目を擦ろうが、頬をつねろうが見えるものに変化はない。

確かな絶望が、広がっていた。

845名無しさん:2023/11/11(土) 19:17:08 ID:ziesvxk.0
(; ^Д^)「くそっ、バカがっ!!くそっ、くそぉっ!!この俺を、殺そうとしやがって!くそがぁっ!!」

そんな周りを無視し、プギャーは荒れ狂う。
自分の足元に広がる、無惨な死体。
自身を殺そうとした、その亡骸を足で踏み荒していく。
怒りのままにぐちゃり、ぐちゃりと冒涜する。

(; ^Д^)「はぁ、はぁ......はっ!見たかっ!ただの無駄死にだっ!愚か者の末路に、相応しい結末だなっ!!」

そのおぞましい光景を、誰も信じられなかった。
だが一つ、確実なことを皆が理解し始めていた。

この悪夢はまだ終わることなく、この男により続くのだと。

846名無しさん:2023/11/11(土) 19:18:03 ID:ziesvxk.0
(; ^Д^)(......こいつが役に立つとはな)

プギャーの命を救ったもの、それは彼が着込んでいた最高級品の鎧。
その役目を十二分に果たして魔壁により完全に爆風を防ぎきり、本来戦場で兵士の命を守るはずであったそれは、プギャーの命を救った。
流石のプギャーも臆病過ぎるのではないかと、自身に怒りを感じたこともあったが、その臆病さに感謝することになったのだ。

( ^Д^)「く、ははっ!」

そしてそれは、まさに天啓と言えるであろう。
天が自身を生き残らせようとしており、そして使命を成し遂げろと言っているのだと確信する。
そしてもう、彼を止める存在はここにはいない。

(# ^Д^)「聞け!!皆の者!!今、この時を持って悪しき王は、そしてエルフのプライドを捨てた愚か者達はこの国から消えたっ!!ここに残るは真のエルフのみであり、我々は真のルナイファ帝国を勝ち得たのだっ!!」

ゆえに、もう止まるはずがない。

847名無しさん:2023/11/11(土) 19:19:10 ID:ziesvxk.0
(# ^Д^)「では我らは何を成し遂げねばならないかっ、それは皆も分かるであろう!!そう、我々は戦い、勝たねばならないのだっ!!誇り高き、エルフとしてっ!!」

そのプギャーの演説に、議会を制圧した兵士達が歓声を挙げる。
この国は、これから彼の望む道を進むことになる。

彼らは信じている。
その道がきっと正しい道であり、その道の先に、未来に栄光が待っているのだと。

ー未来どころか、現在すらまともに見ないままに決めた道だというのに。

この後もプギャーの演説は続いていた。
後の歴史書において、『悪魔の演説』と呼ばれるそれは世界にも魔信により流され、各国に衝撃を与えるのであった。

848名無しさん:2023/11/11(土) 19:19:52 ID:ziesvxk.0
ルナイファ帝国 南方都市テタレス
1463年4月19日

魔信から流れるその演説は、まるで皆を洗脳するかのようにひたすらに繰り返し流されていた。
その放送にこの都市の多くの者が困惑し、そして強い怒りを感じていた。
まさか自国の崇めるべき陛下から政権を奪い取ったどころか、未だに敗けを認めず、さらには国家総動員で敵を滅ぼすと言い出したのだ。

今この放送を聞いている自分たちも戦地に送られかねないという事実に、それもあんな恐ろしい敵を相手に戦うなど最早処刑宣告に等しいとすら感じられる。

爪;'ー`)(おいおいおいおいっ!!どうなってんだこれっ!!)

その放送を聞いていたフォックスもまた、困惑していた。
当然であろう、まさか自分の信じてきた国がとんでもない暴走を起こし、崩壊が始まったとも言える状況なのだ。

849名無しさん:2023/11/11(土) 19:23:13 ID:ziesvxk.0
だがそんな状況であるにもかかわらず同時に若干の安堵もあった。
それはこのテタレスにまだ自身がいたことである。
避難のために帝都に向かおうと考えていたものの、準備が一向に進まず、テタレスで足止めを食らっていたところでこの放送である。

もし準備が間に合って帝都にたどり着いてしまっていたらどうなっていたか。

(;´・ω・`)「ぼ、僕達......どうなるんですか?」

爪'ー`)「......大丈夫だ、安心しろ。とりあえず今は休んどけ」

(;´・ω・`)「......はい」

爪'ー`)(俺だけじゃなくて......こいつらも、下手したら戦地に狩り出されたかもしれん)

国家総動員とは、そういうことなのだ。
子供であろうと関係ない。
むしろ怪我や病気もなく動ける子供こそ、必要とされるであろう。
安全な場所に向かうはずがむしろ、死地に向かわせることになったかもしれないのだ。

その点、ここテタレスは敵こそ近いが、それゆえにこの都市の民衆の多くが徴兵に対して、というよりも戦闘を継続することに強く反発している。
これを押さえ込まねば徴兵などろくに出来ない状態となっているため、少なくとも現時点では、すぐに戦地に向かわされることはないはずである。

850名無しさん:2023/11/11(土) 19:23:46 ID:ziesvxk.0
ただの偶然とはいえ、自身の判断をこれほど良かったと思えるのもそうないであろう。

爪'ー`)「でも、どうなるんだ......これから」

だがあくまでも現時点での話である。
この都市の多くの者が反対しているとはいえ、ここもルナイファなのだ。
本格的に国が動くことになれば、この場所も狂気ともいえるその流れに飲み込まれるかもしれない。
いや、その前に眼前まで迫っているであろう敵にここが潰されるのが先かー

多くの不安を抱えながらも、彼は生き残るため、そして子供達を守るために動き続ける。

851名無しさん:2023/11/11(土) 19:24:37 ID:ziesvxk.0
ルナイファ帝国 テタレス南方平野

(;`・ω・´)「......なんだ、これは」

テタレスの民たちが放送に困惑する中、その南方の平野で陣を構えるシャキン達もまた困惑していた。
降伏のために国が動いていると聞いていたはずなのに、陛下が帝都から追い出され、プギャーを始めとする暴走したもの達が国の主権を乗っ取り、そして人間達との無謀ともいえる戦いを続けると言い出したのだから。

理解できないし、したくもない。
あまりに酷すぎる現実に誰もが口を閉ざす。

奇跡ともいえる勝利を得て、死を乗り越え全てが終わったはずであった。
それがまた、あの死地に向かえと言われたのだ。
二度も奇跡が起こるほど、戦場は甘くはない。
つまり十中八九、死ぬ。
その事実に皆、一様にうつむき恐怖に身体を震わせていた。

852名無しさん:2023/11/11(土) 19:25:28 ID:ziesvxk.0
(; ,,^Д^)「シャキン様、軍務省より命令が届いております」

(;`・ω・´)「......読んでくれ」

(; ,,^Д^)「はっ。『テタレスの全戦力を持って敵を撃滅せよ。ルナイファ帝国民は皆、誇り高きエルフであると同時に、敵に屈することない神の尖兵である。ゆえにテタレスにある全てのエルフは最後の一兵までルナイファ帝国の、そして神の誇り高き軍人として戦い抜くことを願う。貴君等の活躍はエルフの繁栄と安寧により報いられ、未来永劫、英霊として栄誉ある歴史として語られるであろう』」

(;`・ω・´)「......我らに、死ねと言うのか」

(; ,,^Д^)「シャキン様......」

(;`・ω・´)「しかも民にも死ねと言うのか!?こんな、こんなふざけたものを命令と言うつもりなのか、奴らはっ!!」

どんなに言葉を取り繕っても、そこに書かれたものは今、ここにいるもの全てに死ねと言っていることに変わりない。
それも本来守るべき民すらも死地に追いやり、命を散らせと言うのだ。

そんなものに、従えるはずがない。

853名無しさん:2023/11/11(土) 19:27:46 ID:ziesvxk.0
(; ,,^Д^)「ですが、命令に逆らえばどうなるか」

(;`・ω・´)「......今の国ならば首が飛ぶ、か。だが......」

( ^ν^)「......なら命令に従えばいいじゃねーか。命令通り、敵を倒しましょうや」

(;`・ω・´)「なっ!?」

それまで言葉を発してこなかったニュッから信じられない言葉が飛び出す。
誰もが信じられないと言った視線を向け、驚愕の表情を浮かべ、視線を送る。
こんな命令に従おうというものがいるということ、そしてまさかニュッがその様な事を言い出すなど予測し得なかったのだ。

(;`・ω・´)「ニュッ、貴様っ!!何を言っているのか分かっているのか!?」

( ^ν^)「分かってますよ。うつむいててもどうにもならないし、命令されちまったもんは仕方ないでしょ。大人しく、敵を殲滅しましょう」

(; ,,^Д^)「そんなこと、出来るわけー」

( ^ν^)「南のは無理だが、北のは出来るかもしれねーぞ」

(; ,,^Д^)「......北の、敵?」

(;`・ω・´)「っ!」

854名無しさん:2023/11/11(土) 19:29:01 ID:ziesvxk.0
その言葉にまた、場がざわつく。
これまで敵は南方にしかいなかったはず。
否、正確には遠い北の果て、ニータとの国境近くには敵はいるがいくらなんでも遠すぎるため戦うことすらできないであろう。
一体何の事を言っているのか分からず皆が困惑する中、シャキンだけがその言葉の真意に気がつく。

北にあるのはこの国の中枢、帝都。
国に仇なす者達、すなわち敵と呼べる者達によって占拠された帝都が。

(;`・ω・´)「......国と、戦うつもりか?」

(# ^ν^)「むしろ戦わないつもりなのか!?奴らは陛下を、俺達の国をめちゃくちゃにしているんだぞっ!!俺達はなんだ!?国を守る軍人じゃねぇのか!?今、戦わずして何と戦うってんだっ!!」

(`・ω・´)「......」

(; ,,^Д^)「......ま、待ってください。く、国と戦うってまさか......プギャー様達と」

(# ^ν^)「おい、あいつは敵だぞ。様なんてつけんじゃねぇ」

(; ,,^Д^)「本気ですかっ!?そんなことすれば、国家反逆罪ー」

(# ^ν^)「んなもん、奴らが先だろうが!!」

(; ,,^Д^)「それは、そうですが......」

(`・ω・´)「......」

855名無しさん:2023/11/11(土) 19:31:34 ID:ziesvxk.0
ようやく、皆がニュッの真意に気がつく。
そして言われてようやく、気が付いたのだ。
敵は、確かに北にいる。
自分たちが愛し、そして守ると忠誠を誓った国を害する者達が。

(# ^ν^)「お前らは、許せるのかよ。俺達の守るべき国が、あんな奴らに乗っ取られてよ。こんな命令を送ってくるやつらにだぞっ!!許せるのかよ!?」

(; ,,^Д^)「......それは」

(# ^ν^)「俺は戦うぞ。糞ったれな野郎どもをぶっ潰さなきゃ気が済まねーからな。命令通り、敵をぶっ潰す」

(`・ω・´)「待て、ニュッ」

( ^ν^)「......なんすか」

(`・ω・´)「いくら貴様でも勝手な行動は許さん。命令だ」

(# ^ν^)「っ!じゃあ黙ってろって言うのかっ!?」

(`・ω・´)「落ち着け。もはや貴様一人でどうこうなる問題ではない。それに我々は貴様の言う通り、軍人なのだ。その責務は、一人にかかるものではないということくらい、分かるだろう」

856名無しさん:2023/11/11(土) 19:33:29 ID:ziesvxk.0
怒りの抑えられないニュッから送られる視線を無視するかのように、シャキンは静かに語る。
そう、現実問題として軍は組織であり、たった一人の問題行動であったとしても集団として罰を受けることになるだろう。
それが軽い罪ならばまだしも、国家に立ち向かうとなるならばそれはもうたった一人の問題に収まるはずがないのだ。

( ^ν^)「......なら、ここで軍を辞めてやりますよ。それなら文句はないだろ」

(`・ω・´)「ふむ、それも一つの手だが......その前にやることがあるだろう。折角の名案なんだ。上官を置いて勝手に暴走するには勿体無かろう」

( ^ν^)「え?」

(`・ω・´)「今この場にいるもの、全員に聞く。この阿呆共からの命令に逆らい、反逆者としてでも国を救う覚悟が出来ている者はいるか?無い者は無理に従えとは言わん。むしろその方が賢い選択だろう。だが、格好つけたい馬鹿は私とニュッに続いてくれ」

( ^ν^)「っ!」

(; ,,^Д^)「っ!」

だからこそ、シャキンは皆で立ち向かうことを選択する。
彼もまた、国を守る軍人として最後まで戦うことを決意したのだ。

857名無しさん:2023/11/11(土) 19:35:38 ID:ziesvxk.0
そして、その決意は伝播する。
一人、また一人と決意の炎を燃やし、戦うことを覚悟する。

( ^ν^)「......タカラ、てめーはどうするんだ?」

(; ,,^Д^)「え?自分は......」

(`・ω・´)「何度も言うがこれは命令ではない。選択は自分自身で決めろ」

(; ,,^Д^)「......あぁもう!何かこれで戦うと言ってもまるで強制されたみたいじゃないですかっ!!」

(;`・ω・´)「いや、そんなつもりは無いのだが......」

(; ,,^Д^)「勿論戦いますっ!自分も、ルナイファを愛する、軍人ですからっ!!」

そうして皆の心は一つとなる。
ここにいる全員が、戦う道を選んだのだ。

(`・ω・´)「......ではニュッ。最初の任務だ」

( ^ν^)「はい?なんすか?」

(`・ω・´)「頭のおかしい命令を送ってきた阿呆共に返信してやれ。とびっきりのメッセージを頼む」

( ^ν^)「......任せてくれ。得意分野だ。ちゃんと馬鹿にも分かるようにしておくよ」

そう互いにニヤリと笑いあう。
そうして送られたメッセージは、シンプルに一言であった。

『くたばれ糞野郎』

858名無しさん:2023/11/11(土) 19:36:21 ID:ziesvxk.0
続く

859名無しさん:2023/11/11(土) 20:28:18 ID:E1p4bfdQ0
おつ!
やべぇニュッとシャキン最高にかっこいい
最高級鎧の性能えぐいな

860名無しさん:2023/11/11(土) 21:46:36 ID:7g/RYAbw0
乙です

861名無しさん:2023/11/12(日) 15:01:27 ID:.5pChRN20
乙!シャキンとニュッかっこいいわ!

862名無しさん:2023/11/12(日) 18:06:00 ID:Zgc9d90A0
乙!
しかし陛下の人望が凄いな
余程の名君なのかそういう風習なのかが気になる

863名無しさん:2023/11/12(日) 21:51:19 ID:DT8J7Hpo0
ニュッ株ストップ高

864名無しさん:2023/11/18(土) 20:35:09 ID:2EGBW4kM0
ルナイファ帝国 南方要塞
1463年4月20日

要塞は異様な空気に包まれていた。
つい先日起きた軍によるクーデター。
それによりこの国の王が失脚したという大事件は、ルナイファに留まらず世界中を驚愕させた。

ルナイファの民達も勿論動揺したがそれも束の間、政権を握った軍による放送は彼らを更なる戦いへと駆り立てた。
軍から流される情報の多くは、いかに敵が愚かであり、卑劣であるかということ。
そしてそんな敵に対し、誇りを捨て頭を垂れ、服従を選んだという帝王がいかに愚かであったかということ。
ルナイファのエルフがどれだけ優秀であり、そして世界で選ばれた民であるということである。

繰り返し流されるそれは、何も知らない民達のプライドを刺激する。
そうして生まれるのは更なる戦いを求める民の声であった。

865名無しさん:2023/11/18(土) 20:36:08 ID:2EGBW4kM0
勿論、この放送に違和感を覚える者や真実を知り、戦いに反対するものもいた。
だがそれらは兵により弾圧され、強制的にその声は無くなっていた。
完全なる軍による、力による統治。
既にブレーキは壊れ、もう止まることはない。
行くところまで行き、崩壊するまで止まれない暴走状態であった。

『我々は、ルナイファの民!真に神より選ばれた民である!!皆で戦うのだ!あの、卑劣なる悪魔の手先の人間を、滅ぼすのだっ!!』

(# ^ω^)「そうだおっ!奴らを滅ぼすんだおっ!!」

『そして、神は我らに味方している!奴ら、不浄の民である人間共は今、病に苦しめられている!!そう、これは天が我らを助けるため、奴らに与えた神罰なのだっ!!天は今こそ、奴らを滅ぼせと言っておられる!!さあ立ち上がるのだっ!誇り高きルナイファの戦士たちよっ!!』

(# ^ω^)「おおぉおおぉおおおお!!!」

866名無しさん:2023/11/18(土) 20:36:45 ID:2EGBW4kM0
そしてその異様な空気に当てられた者達は、自らが暴走していることにも気づかないまま雄叫びを挙げる。
なぜ戦うのか、どうしてこんなことになっているのか、国や世界の動きがどうなっているのか。
それらのことなど何も知らないし、知ったことではない。

ただ皆が怒り、そして自身に沸き上がるその感情のままに声を挙げ、闘争を求める。
子供も、老人も関係ない。
そこに高度な文明を営む生物はおらず、いるのは理性をなくした獣のみ。

獣は吠える。
吠え続ける。
手足を失い、満身創痍ということにも気づかないまま。

867名無しさん:2023/11/18(土) 20:38:06 ID:2EGBW4kM0
だがまだ、牙は折られていない。
数だけで言えばこの要塞の戦力は凄まじく、普通に攻め落とすのには多くのものと時間が必要となるであろう。
確かな力が、ここにあるのだ。

ーその事実が、そしてそこからくる自信がさらに彼ら自身を狂わせているのだが。

とはいえ、強力な戦力があるのは事実なのだ。

(# ^ω^)「滅ぼせっ!滅ぼせっ!滅ぼせっ!」

暴走する獣達。
そんな彼らこそ、この戦いを左右すると言っても過言ではないルナイファに残された最後であり、最大の力であった。

868名無しさん:2023/11/18(土) 20:38:51 ID:2EGBW4kM0
ムー国 捕虜収容所
1463年4月23日

( ´_ゝ`)「一体何なんだ......」

その日はいつもと同じように始まったはずであった。
特に暴れたりも、危険な行動などもしていない。
極めて模範的な捕虜として皆が行動していたはずであった。
事実、アニジャからの呼び掛けにより祖国であるルナイファが降伏に向けて動くはずという言葉を聞き、ようやくこの無謀な戦争が終わるのかと皆が歓喜し、少しでも相手に悪印象を与えないように行動しようという話になっていたはずである。

それが急に今日、人間達の行動が慌ただしくなったかと思えば一人ずつ別室に連れていかれては、何かをされているようなのだ。
今までにないその行動に、終戦前にこれまでの恨みを晴らすため、遂に自分達の処刑が始まったのではないかと一部では混乱が起こるほどであった。
それほどまでに、人間達の行動は急であったのだ。

869名無しさん:2023/11/18(土) 20:39:24 ID:2EGBW4kM0
極めつけはその格好である。
今までは軍服のような格好か、全身黒くきっちりとした服装に身を包んだ者がほとんどであったのに、今日現れたのは白い服に全身を覆われた、それも顔まで覆われているという異様な、見たことのない格好の者だったのだ。

(; ´_ゝ`)「......」

恐らくはその格好と今回の出来事に何かしらの関連があるのだろうと、アニジャは推測する。
だが流石に人間の、それも異界の民の風習など知るわけがない。
ただ彼らが行動しなくてはならない『なにか』があったのだろうということだけははっきりしていた。

そしてその『なにか』、その中で一番最悪な事に思い当たり、アニジャは顔を青くする。

(; ´_ゝ`)(......まさか、降伏させることに失敗したのかっ!?)

人間達の慌てたような行動から、ただならぬことであることは確かである。
とするならば、その可能性が全くあり得ない話ではないことなのもまた、確かであった。

870名無しさん:2023/11/18(土) 20:42:59 ID:2EGBW4kM0
(゚、゚;トソン「一体......何事なんでしょうか」

(; ´_ゝ`)「......」

とはいえ、そんなことを周りに言えるはずがない。
そんなことを言えば、更なる混乱を招くだけだからである。
またあくまでも可能性の話なのだ。
普通に考えれば降伏以外の選択肢など、ルナイファに残されていないはずなのだ。

(; ´_ゝ`)「......」

戦おうにも、敵に対して有効な手段などあるはずがない。
あのプギャーでも勝てないことくらいは把握しているはずである。
またもしそれを理解しながら降伏が出来ない阿呆であったとしても、オトジャという保険があるのだ。
だからこそこの話はそこで終わるはず、なのだが。

(; ´_ゝ`)(本当に、大丈夫なのだろうか)

思わずそう考えてしまう。
人間達の行動にアニジャもまた、どこか怯えに近い感情を抱え、それゆえに考えが負の方向へと向かっていた。

871名無しさん:2023/11/18(土) 20:43:25 ID:2EGBW4kM0
(゚、゚トソン「......アニジャ様?大丈夫ですか?」

( ´_ゝ`)「あ、あぁ。平気だ」

そんな様子を心配してか、トソンからそう声をかけられる。
その声にアニジャは考えを止め、返事をした。
もう、考えても仕方ないのだと。
考えようにも、ピースが足りないのだ。
そんな状態で真実になどたどり着けるはずもなく、得られるのは不安のみなのだと。
そう、自身に言い聞かせ浮かぶ悪い想像を振り払う。

( ´_ゝ`)「そう、大丈夫......な、はずなんだ」

(゚、゚トソン「......?」

そう自分に言い聞かせるように、アニジャは呟いたのだった。

872名無しさん:2023/11/18(土) 20:44:16 ID:2EGBW4kM0
ルナイファ帝国 軍務省

(;*゚ー゚)(どうしてこんなことに......)

国が軍に奪われて数日。
シィは変わらずここ、軍務省にて仕事をしていた。
だが望んでその仕事をしているわけではなかった。

それも当然であろう。
自国の国を混乱に貶めている張本人に手を貸すことになるのだから。
自身はこれまで国のためにとあの愚か者の下でどんな叱責を受けようとも我慢し、どうにか支えてきた。
そう、自国のために仕事をしてきたのだ。

それが気付けば国は軍に支配され、とんでもないことになってしまった。
逃げようにも、戦争に反対しようにも非国民と弾圧される恐ろしい国に、既に変わってしまっていたのだ。


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