[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
1-
101-
201-
301-
401-
501-
601-
701-
801-
901-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
レス数が900を超えています。1000を超えると投稿できなくなるよ。
異界大戦記のようです
1
:
名無しさん
:2023/04/01(土) 23:39:57 ID:mfVt/ZZU0
世界の縮図が変わろうとしていた。
魔法を操り、自らを神の僕と信じるエルフ達が支配するこの星。
その中の3大大陸に存在する5つの列強と呼ばれる国が衝突する寸前にまでなっていた。
きっかけは列強最強の国家と名高いルナイファ帝国と、同じく列強のニータ王国との国境で起こった小さな事件であった。
それぞれがその犯行の責任は相手側にあると主張しあっていた。
互いに堂々と国として主張をしていたがその内情は全く異なるものであった。
ルナイファに関しては元から周辺国家を攻め落とし、支配する典型的な侵略国家であった。
列強クラスの国との戦いはなかったものの、同大陸に存在し隣接する小国はほぼすべて支配していると行っても過言ではない。
そして大陸統一のためにも同じ大陸で国境を接しているニータはいつかは落としたいと考えていたことから、この機会に攻め込むのが良いと言う意見で国が固まりつつあった。
353
:
名無しさん
:2023/07/01(土) 17:16:53 ID:BeLF1mRU0
ごめん途中で送信しちゃった
召還して奴隷化しようとしなきゃこんなことも起こんなかっただろうに
354
:
名無しさん
:2023/07/08(土) 10:32:26 ID:mNrFmToc0
ニータ王国 王城
1464年1月23日
シラヒーゲはこの頃、慢性的に続く頭痛と腹痛に悩まされていた。
原因は分かっている。
ルナイファである。
いずれ来るであろう、彼の国との争い。
それを乗り越えるか、回避するかの方法を模索していたが一向にいい案が見つからない。
ただただ無為に時間だけが過ぎていく。
ルナイファが召喚地に取り組んでいる間にどうにか出来なければこの国の未来はない。
そもそもやろうと思えばあの国であれば、人間との戦争程度は朝飯前みたいなもの。
人間達を征服しつつ、片手間にニータと戦争することも問題なく出来る筈である。
つまり、もういつ攻めいられてもおかしくないはずなのだ。
355
:
名無しさん
:2023/07/08(土) 10:33:05 ID:mNrFmToc0
だというのに、全くの無策。
ソーサクとの同盟は予想通り進んでおらず、アリベシとヴィップは互いの争いで手一杯。
周辺の小国家などを巻き込むことは出来そうではあるが、それらが加わったところで焼け石に水であろう。
ルナイファの攻撃性から考えるに集められた同盟国連合も緩衝地帯としての働きも期待できそうもない。
そんなこんなで頭をいくら働かせても全く明るくならない未来に遂にはシラヒーゲの身体が限界を迎えていたのだ。
すっかり弱々しくなった顔に、配下たちも国の行く末を感じ、さらに王城は暗い雰囲気に包まれていた。
そんな王城にて、一つの足音が響きわたる。
ドタドタと慌てるようなその音。
その音が近づいてきたかと思えば、バタンと大きな音と共に扉が開き、一人の男が部屋に入ってくる。
(;‘_L’)「し、失礼します!!陛下!!」
( ´W`)「フィレンクト?どうしたそんなに慌てて、お前らしくない」
356
:
名無しさん
:2023/07/08(土) 10:33:48 ID:mNrFmToc0
(;‘_L’)「え、あ!も、申し訳ございません。とんだ失礼を!!」
( ´W`)「いや、構わんよ。それほど慌てているのだろう?気にせず続けてくれ」
(‘_L’)「は、はい......」
荒れる息を整えるように小さく深呼吸し、フィレンクトは話出す。
(‘_L’)「陛下、以前報告していたルナイファの大規模な軍事行動について、その後が判明しました」
( ´W`)「......その件か」
ついに来たか、とシラヒーゲは襟元を正す。
いずれ来るであろうと覚悟はしていたが、まだルナイファへの対策は影も形もない。
いや、まだというのは正しくないかもしれない。
そんな方法は、存在しないかもしれないのだから。
357
:
名無しさん
:2023/07/08(土) 10:34:11 ID:mNrFmToc0
( ´W`)「遂に、奴らの侵攻が完了したということかな?それで?奴らはいつ、こちらに」
(;‘_L’)「ち、違うのです、陛下」
( ´W`)「ん?何がだ?」
(;‘_L’)「負けたのです」
( ´W`)「負けた?何がだ?」
(;‘_L’)「ルナイファが、です」
( ´W`)「ん?んん?」
いまいち、フィレンクトが何を言っているかが分からないシラヒーゲはついおかしな声を出してしまう。
どういうことかと、そのまま頭で整理をしようとする。
だが、言葉の意味を理解してもどういうことなのかが余計に理解できない。
358
:
名無しさん
:2023/07/08(土) 10:35:18 ID:mNrFmToc0
( ´W`)「どういうことだ?負けたとは」
(;‘_L’)「そのままの意味です。あの大規模な艦隊が......負けたのです」
(; ´W`)「......いや、馬鹿な。そんなことがあり得るわけが......」
(;‘_L’)「私も信じられません。ですが、事実のようです」
(; ´W`)「あ、あの規模の軍勢だぞ?あの、ソーサクが相手でも痛みわけならまだしも敗北などあり得ないだろう?」
(;‘_L’)「繰り返しになりますが、確実に敗北した、とのことです」
(; ´W`)「......なぜ、そう言い切れるのだ」
(;‘_L’)「はい、それは南方海域の国々に潜んでいる諜報員からの情報を精査した結果......あの大規模艦隊がほぼ、全滅したと思われるからです」
(; ´W`)「全滅だと!?」
凄まじい驚愕が、シラヒーゲを襲う。
確かに、情報では属国から集めた艦など寄せ集めの艦もあった。
それらが全滅した、という一部分の部隊が、というのならば理解できる。
だが、ルナイファの圧倒的な力を集約した主力を含む艦隊が全滅など、どうすれば出来るというのか。
想像の世界でもシラヒーゲにはそれを作り出すことが出来ないというのにそれが現実で引き起こされたというのだ。
359
:
名無しさん
:2023/07/08(土) 10:36:02 ID:mNrFmToc0
(;‘_L’)「生き残りも確認されていますが、出撃した艦数から考えればごく一分であったとのことです」
(; ´W`)「本当、なのか?」
(‘_L’)「はい。複数の情報筋から同様の内容が来ており、確実かと」
(; ´W`)「なんという......」
(‘_L’)「また、この大規模艦隊についてなのですが」
( ´W`)「まだ何かあるのか?」
(‘_L’)「はい、どうやら攻撃目標は、ムーであったとのこと」
( ´W`)「......ん?ムーは奴らの属国だろう?なぜそこを......」
(‘_L’)「どうやらムーを制圧した謎の勢力があり......奪還のため、攻撃しようとしたとのことです」
(; ´W`)「......待て待て、ムーが制圧されただと?一体いつ......」
(‘_L’)「少なくとも7月の末には制圧されたとのことです」
(; ´W`)「その情報、なぜ今まで入って来てないのだ?」
(;‘_L’)「それなのですが......入ってきてはいたようなのです」
( ´W`)「それならばなぜ報告がない?」
(;‘_L’)「その情報が荒唐無稽であり、『一日と掛からずムーが制圧された』、とのことであり得ないと切り捨てられていたようです」
(; ´W`)「それは......う、うーむ......確かに信じられんが、せめて一言共有してほしいものだな」
360
:
名無しさん
:2023/07/08(土) 10:36:37 ID:mNrFmToc0
(;‘_L’)「ええ、今回の情報からこれも事実であった可能性が非常に高いと考えられます。そもそも、今回の大規模派遣についても理由が不明でしたが、ムーを一日で制圧するほど強力な勢力を潰すため、と考えれば納得がいきます」
( ´W`)「なるほど、な」
確かに、フィレンクトの言う通りに考えれば納得が出来る。
そしてムーを一日で制圧するほどの力を持つ勢力ならば、あの艦隊を叩き潰すことも可能なのかもしれない。
そして、シラヒーゲはある一つの可能性を思い付く。
ルナイファを圧倒する力を持ち、かつルナイファと敵対する国家。
それはまさに、自国が求めていたものではないだろうか?
( ´W`)「......フィレンクト」
(‘_L’)「は、なんでしょうか」
( ´W`)「して、その勢力、ムーを占領した国家はどこなのだ?」
(‘_L’)「それなのですが......現時点では不明です」
フィレンクトの言う通り現在、ニータの諜報員から上がってくる情報のなかには謎の勢力を特定できるようなものはなかった。
とはいえ、いくつか『あり得ない』情報はあるのだが、精査が完了しておらず、そんな状態ではとてもではないが陛下に言えるはずもなかった。
361
:
名無しさん
:2023/07/08(土) 10:37:07 ID:mNrFmToc0
( ´W`)「そうか......ならば全諜報員に通達せよ。この謎の勢力を調べ、接触せよ、と」
(‘_L’)「はっ、畏まりました」
( ´W`)「いいか?決して無礼のないようにとも付け加えてくれ。彼らは我が国の救世主になるやもしれんのだ」
(‘_L’)「......なるほど。間違いなくお伝えします」
( ´W`)「頼んだぞ」
そう言い、シラヒーゲはフッと息をつく。
気がつけば久しぶりに頭痛と腹痛が無くなっている。
思いもしないところから生まれた希望。
自国の救いの道が現れたのだ。
この道を踏み外せば、どうなるかは分かりきっている。
謎の勢力がどんな国か、まだ分からない。
だが、既に覚悟は決まっている。
例え悪魔の国でも構わない。
ルナイファを圧倒できる相手なのだ。
最悪の場合、服従を迫られるかもしれないが、それでもルナイファに滅ぼされるか支配されるよりは断然に良い結果になるはずである。
自国の民もルナイファを倒すためだと言えば、ある程度の納得をするであろう。
それほどにこの国のルナイファへの印象は最悪なのだ。
全てはこの国の存続のため。
シラヒーゲは王として、この国を守ることを決意した。
362
:
名無しさん
:2023/07/08(土) 10:37:49 ID:mNrFmToc0
ルナイファ帝国 海軍本部
1464 年2月8日
デミタスも、どこかの国の王と同じく頭痛と腹痛に悩まされていた。
さらには元から薄くなり始めていた頭部も、抜け毛が増えており、ストレスが加速している。
そんな彼の耳に入る情報はどれも良いものとは言いがたい。
また本土の防衛を行うとは言ってたものの、射程が大きく異なると思われる相手にどう戦えば良いかが全く思い浮かばない。
魔壁に頼った捨て身の特効による接近か、数に任せたごり押し。
あと出来ることとすれば大規模な魔方陣により、偽装魔法を使って艦を隠しての不意討ちくらいなものか。
どれも多少のダメージは与えられたとしても戦況を決めるようなものになるとは考えづらい。
363
:
名無しさん
:2023/07/08(土) 10:38:27 ID:mNrFmToc0
(;´・_ゝ・`)「はぁ......」
もう何度目か分からないため息をつきつつも、必死に頭を働かせる。
認めたくはないが、デミタスははっきりと敵の強さを理解している。
自国を上回り、単純な戦いでは勝ち目がないということも。
そんな相手に勝つためには、敵の戦意を挫くか、敵の慢心を誘うこと。
もしくは敵の物資枯渇を狙い、広大な土地を利用した焦土作戦か。
(´・_ゝ・`)「敵は一国なのだから我が国の領海、領土を制圧しきることは実質的に不可能なはず......敵を誘いこんで......だがそのためにはやはり、南部を捨てる必要があるか」
なんにせよ、敵の息切れを待つことが最も得策のように感じられる。
そのためにこれからどれだけの犠牲を払えば良いか。
そもそもこちらがそんなに体力が持つのか。
耐えきれたとして、国として立ち直れる余力を残すことが出来るのか。
考えるだけで頭痛が増してくる。
とはいえ、なにもしないわけにもいかない。
364
:
名無しさん
:2023/07/08(土) 10:38:53 ID:mNrFmToc0
どうしたものか―
そんな答えのでない考えを巡らせていると、不意に扉のノックする音が聞こえた。
(´・_ゝ・`)「ん?どうぞ」
( ФωФ)「すまんな、忙しいところ」
(´・_ゝ・`)「ロマネスク殿、どうかしましたか」
( ФωФ)「いやなに。ちょっとした報告と様子を見に......大丈夫であるか?」
(´・_ゝ・`)「え?」
( ФωФ)「顔色が優れんようだが」
(´・_ゝ・`)「良くは、ありませんな。朝から、いえ、もうずっとですね。嫌な情報ばかりで」
( ФωФ)「......そんなに悪いのか、戦況は」
(´・_ゝ・`)「......えぇ」
その言葉に、ロマネスクの表情も暗いものとなる。
ある程度、予測してはいたのだろうが一向に改善する気配のない現状に彼もまた、危機感を覚えているのだ。
365
:
名無しさん
:2023/07/08(土) 10:39:26 ID:mNrFmToc0
( ФωФ)「詳しく聞いても?」
(´・_ゝ・`)「......そうですね。口外しないということであれば」
( ФωФ)「約束しよう」
(´・_ゝ・`)「そうですか......では。まず、先月よりトウキュからの連絡が途絶えました」
(; ФωФ)「なっ!?」
(´・_ゝ・`)「恐らくですが、召喚地からの攻撃を受けたものと思われます」
(; ФωФ)「......全滅した、ということか?」
(´・_ゝ・`)「えぇ、念写にて確認したところ、全滅と言ってもいい状態でした。状況を見るに、敵への損害は与えられていないでしょう」
(; ФωФ)「それは、不味すぎるな。トウキュが攻撃を受けたというなら次は確実に我が国だ」
(´・_ゝ・`)「私もそう思います。南方の海域を全て掌握されたと言っても過言ではありませんから......あぁ、さらに南方についてですが」
(; ФωФ)「なんであるか」
366
:
名無しさん
:2023/07/08(土) 10:40:33 ID:mNrFmToc0
(´・_ゝ・`)「ムー南西にある我が国の支配下にあった国家群ですが、全て事実上の降伏をしております」
(; ФωФ)「......」
(´・_ゝ・`)「先の出撃で属国軍と共に参戦していましたが、全滅。さらにトウキュへの攻撃を見て、人間側に交渉を持ち掛けたようです」
(; ФωФ)「受け入れられたのか?」
(´・_ゝ・`)「そのようですね」
敵は理性的です、とデミタスは呟くように言う。
その心中では、自国ももしかすると交渉次第でなんとかなるのではないかと言う淡い期待があった。
もし交渉ができたとしても、それを受け入れられる自国の民はどれだけいるかが問題なのだが。
( ФωФ)「......降伏するにしても、一撃を与えんとどうにもならんだろう」
そんな心を見透かしたように、ロマネスクは言った。
彼自身もこのままいけば国がどうなるか、案じている。
だが、このまま降伏するとなればどんなことを要求されるか分かったものではない。
そんな状況で降伏するのは誰も納得などしないだろう。
367
:
名無しさん
:2023/07/08(土) 10:41:21 ID:mNrFmToc0
そもそも先の戦いに入る前に敵側からの要請を一方的に突っぱねるどころか不意打ち紛いのことまでしてしまったのだ。
敵が交渉のテーブルについてくれるかすら不明である。
そうなるとせめてなにか、敵を交渉の席に向かわせる、譲歩させるような材料がいるのだ。
―なお彼らが知らないだけで、プギャーの元には講和に向けた要請が届けられているのだが。
(´・_ゝ・`)「一撃なら......もう与えたでしょう。ムーにて、ダメージは与えています」
( ФωФ)「分かっている。が、その程度では厳しいであろう。せめて、局地的にでも勝利を納めなければ」
(´・_ゝ・`)「確かにそうですが......現実的に、何ができますかね?」
(; ФωФ)「......その事で、報告があったのだ」
(´・_ゝ・`)「え?あぁ、そういえば報告があると言ってましたね。それで、報告とは?」
( ФωФ)「あぁ。敵に対抗するための新魔法の開発を進めていた件である。まだ試作段階ではあるが使用できる形にはまとまった」
(´・_ゝ・`)「っ!し、新魔法、ですか!完成したのですか!?」
その言葉に、デミタスの顔は若干明るいものとなる。
戦争と技術革新は関係が深い。
敵に対して技術的優位を保つ必要があり、そのためには技術の発展が不可避だからである。
368
:
名無しさん
:2023/07/08(土) 10:42:32 ID:mNrFmToc0
そして特に今回に関しては、全くの思想も技術も違う相手、それもこれまでの戦いから察するに格上の相手である。
そんな相手を想定した場合、これまでとは全く異なる魔法が必要となることから急ピッチで開発が進められていたのだ。
それが出来上がったと言うならばもしかすればこの状況を覆すことも可能かもしれないのである。
(´・_ゝ・`)「そ、それでその新魔法というのは!?一体どのような......」
(; ФωФ)「......ここに纏めてある」
そう渡された書類にデミタスはすぐに目を通す。
だが、この局面である。
勘違いはしてはならないと、一言一句しっかりと脳内に叩き込んでいく。
そうして読み進めるうちに一変、段々と顔が暗いものとなっていた。
(;´・_ゝ・`)「......これは」
(; ФωФ)「すまぬ......それが、限界であった」
(;´・_ゝ・`)「そう、ですか」
互いにため息をつく。
確かに、この新魔法であれば敵に遠方から一方的にやられることなくこちらからも一撃、与えられるかもしれないものではある。
だが、それだけであった。
369
:
名無しさん
:2023/07/08(土) 10:43:01 ID:mNrFmToc0
戦況を覆しうる、彼の期待したものとは、かけ離れたものであったのだ。
つまり、もう手詰まりということか―
そんな考えにデミタスは思わずうつむきそうになったその時、ロマネスクの手にまだ書類が残されていたことに気がつく。
(´・_ゝ・`)「......それは?」
( ФωФ)「む?あぁ......これか」
デミタスの言葉にロマネスクは何か困ったように眉を寄せる。
その様子にデミタスは首をかしげつつ、言葉を続けた。
(´・_ゝ・`)「あぁ、いえ。別に無理に見せてほしいというわけではないんです。ただそれも、新魔法に関わるものかと思ったので」
(; ФωФ)「いや......うーむ、その、であるな、一応は......新魔法の、書類なのであるが......」
(´・_ゝ・`)「?」
370
:
名無しさん
:2023/07/08(土) 10:44:05 ID:mNrFmToc0
その答えにますますデミタスは頭に疑問符を浮かべる。
この局面、新魔法に関わることはどんなことでも共有するべきであろう。
それなのに見せようとしないロマネスクの態度は実に不可思議であった。
(´・_ゝ・`)「えっと、なにか、見せられない理由でも?」
(; ФωФ)「......いや、うむ。すまない。貴殿なら、問題ないであろう。これを」
(´・_ゝ・`)「はぁ......ん?召喚魔法の、応用?はて......」
一体何なのかと、デミタスは再び資料に目を落とす。
そうして読み進めていくうちに、資料を握る手が震え出す。
(;´・_ゝ・`)「こ、れは......」
―狂ってる。
それが、最初に浮かんできた感想であった。
ここに書かれていることが全て本当なのだとしたら、その効力は他のどんな魔法よりも恐ろしいことになる。
371
:
名無しさん
:2023/07/08(土) 10:44:56 ID:mNrFmToc0
(;´・_ゝ・`)「これは、本当、なのですか?」
(; ФωФ)「うむ......また開発者から即時の使用を促されている」
(;´・_ゝ・`)「馬鹿なっ!こ、こんな、こんな魔法を使ったら......」
(; ФωФ)「......敵だけでなく、我が国......いや、世界が崩壊しかねん。この魔法の開発者も、それは理解していた」
(;´・_ゝ・`)「そこまでわかっていてなぜこんな魔法を......」
( ФωФ)「我が国には......それだけ......世界が滅びようとも敵を滅ぼすことを選ぶものたちがいる、ということらしい」
(;´・_ゝ・`)「......」
絶句。
その事実は何と恐ろしいことか。
ただのプライドにより国だけでなく、世界までも滅ぼすことを厭わない。
それが国の上層部にいるとなれば、簡単に国の歯車は狂い、暴走する。
その暴走の先に待つものは破滅のみ。
それも、張本人だけでなく周りのもの全てが巻き添えとなるのだ。
372
:
名無しさん
:2023/07/08(土) 10:45:43 ID:mNrFmToc0
(;´・_ゝ・`)「こんな魔法を......使わないよう、どうにかしなくてはいけませんね」
(; ФωФ)「そう言ってもらえ安心したである。もし使用すると言われたら......」
(´・_ゝ・`)「あぁ......そういうことでしたか」
なるほどとデミタスは納得する。
この国の軍で海においてはトップである彼がこの魔法を使うなど言い出せば簡単に国は動いてしまう。
だからこそ、信頼する相手でもどうしてもこの魔法を伝えるのに躊躇ってしまっていたのだ。
(´・_ゝ・`)「......まぁ確かに、こんな魔法に頼らなくては最早戦況は覆せないとは思いますがね」
(; ФωФ)「っ!」
(´・_ゝ・`)「......すみません、冗談になりませんね。聞かなかったことにしてください」
( ФωФ)「......うむ」
(´・_ゝ・`)「ですが、少なくとも海では本当に手がないというのは冗談ではないんですよね......敵の数が少ないことを祈ることくらいしか出来ることがない」
( ФωФ)「あの、前に話していた通商破壊は?」
(;´・_ゝ・`)「むしろこっちがやられています。件の見えない攻撃によりどんな船も紙屑のごとく沈められます......ただ敵の輸送船舶に護衛を付けさせ、行動を制限することは成功しているようですが」
(; ФωФ)「......持久戦でも、不味いことになりそうだな」
373
:
名無しさん
:2023/07/08(土) 10:46:22 ID:mNrFmToc0
(;´・_ゝ・`)「ええ。ただでさえ冬で厳しいところに南方の属国を失ったわけですから物資がとてつもなく厳しい状況です。一方、敵はムーだけでなく南方国家からの補給ルートを確保したわけですから、もしかすると資源の余裕がないのは我が国だけになった可能性もあります」
(; ФωФ)「......」
(´・_ゝ・`)「そもそも......この戦いが長引けば、国内の不穏な連中が一体何をしでかすやら分かったものじゃありません」
(; ФωФ)「......確かにな」
(´・_ゝ・`)「私は海軍の人間なので海のことしか分かりませんが......我々の未来は明るくないでしょうな」
静かに首を横に振るデミタス。
窓の外をみると、夕日が沈もうとしている。
どんどんと暗くなるその景色はまるで、今の我々のようではないか―
遠くではまた艦が沈んでいるのであろう。
それらの艦は、ルナイファのものか、それに属するもの。
敵のものは恐らくない。
今はまだ、遠くで済んでいる。
だからこそ、まだルナイファの多くのものはその脅威に気付いていない。
だが奴らは一歩一歩、着実に近づいてきている。
南方の海域はもう、敵の手に落ちた。
となれば次の目標はここ、ルナイファ本土しかないだろう。
国に迫る影は、もうすぐそこまで、来ていた。
374
:
名無しさん
:2023/07/08(土) 10:46:46 ID:mNrFmToc0
続く
375
:
名無しさん
:2023/07/08(土) 12:09:46 ID:8baPWU0k0
乙
同盟が来る気配
世界が壊れる新魔法はやっぱ核かな?
376
:
名無しさん
:2023/07/08(土) 14:04:26 ID:rgCxujVA0
おつです
377
:
名無しさん
:2023/07/15(土) 16:44:52 ID:O.NHrrJk0
ルナイファ帝国 帝都
1464年2月12日
世界で最も栄えた場所であり、世界の全てが揃うとまで言われた帝都。
そんなこの地に異変が現れだしてから数ヶ月。
この異変は収まるどころか拡大を続けている。
流石の帝国の民も、何かがおかしいと感じるものが増えつつあった。
とはいえ、何があったかを知るものはいない。
若干の混乱はありつつも、なんとか普段と変わらない生活を送ろうとしていた。
378
:
名無しさん
:2023/07/15(土) 16:45:37 ID:O.NHrrJk0
( ^ω^)「おー......」
そんな人々の中を、ブーンは歩いていた。
友が皆、学徒動員でこの帝都を離れ、その寂しさを紛らわせようと人通りの多く賑やかなこの街を散歩することが日課となっていたのだ。
( ^ω^)「......」
だからこそ、彼は気づく。
街から段々と物がなくなっていることに。
初めは色とりどりのものに目移りし、様々な匂いに腹を空かせた物だ。
あれはツンに似合いそうだとか、この味ならショボンも好きだろうなとかそんなことを考えながら過ごす日々は寂しいながらも楽しいものであった。
だが、それが日を追う毎に少なくなっている。
多くの人は変わらずに生活をしているが、だからこそ違和感が出てくる。
沢山あったはずの屋台も気付けば何店も閉じている。
379
:
名無しさん
:2023/07/15(土) 16:47:04 ID:O.NHrrJk0
ブーンは商売のことが分からなかった。
だから、なぜこのようなことが起きているのか、皆目検討もついていない。
だが、妙な胸騒ぎがしてくるのだ。
楽しく胸が躍る散歩はいつしか、不安に胸が締め付けられるものに変わりつつあった。
( ^ω^)「......皆、どうしてるんだろう」
今どこで、何をしているか分からない友の姿を思い浮かべ、ポツリと呟く。
不安そうな彼の声は、辺りの楽しげな喧騒が掻き消す。
だが普段と比べれば小さくどこか寂しいそれは、彼の胸のうちの不安を消すには至らなかった。
380
:
名無しさん
:2023/07/15(土) 16:47:52 ID:O.NHrrJk0
ムー国 旧統治局
1464年2月24日
川 ゚ -゚)「......ふぅ」
かつてはこの国の人間を統治するために作られた統治局。
今では召喚地の人間達が、この国、また周囲の国とやり取りを行うための場となっていた。
その一室でクーは疲れたように息を吐く。
つい先ほどまで、召喚地とムー周辺国の会談のため、翻訳魔法を使用し、また人間達のフォローをしていたためだ。
彼女自身、政治に精通しているわけでもないためかなりの心労であったが、人間たちに恩を売りたい、という気持ち―
というよりも最早人間達の一員として彼女は仕事をし始めていた。
381
:
名無しさん
:2023/07/15(土) 16:48:36 ID:O.NHrrJk0
本国に帰る目処は立っておらず、さらには自分の報告も聞いてくれてはいるが、方針として友好的に関わろうとしていないことをドクオから聞いている。
確かに人間に対する不信感やあまりに違いすぎる技術ゆえに近づくことへの危険性がないわけではない。
だがそれでも自身の考えと違う国の立場を受け入れられるかと言えば別問題である。
それならばと、帰らずここで自分の知りたいことを知るために動いた方がいいのではないかと考え始めていたのだ。
川 ゚ -゚)「いっそのこと、亡命をしてもいいかもしれないな」
なんとなく呟いた独り言であったがいざ言葉にするとどうだろう。
物凄く素晴らしく、また正しい選択とすら思えてきていた。
382
:
名無しさん
:2023/07/15(土) 16:49:27 ID:O.NHrrJk0
少なくともソーサクは、よほどのことがない限り人間達との友好関係を築くことはないだろう。
なぜ、と思うと同時にやはりとも感じてしまう。
下手なプライドは身を滅ぼすだけと思いつつも、彼女もソーサクの民である。
その思いは理解できるものでもあった。
彼女もあの戦場にいなければ、こうも簡単に考えは変わらなかったであろう。
だからこそ、ほんの少し残念な気持ちもあるがこれはもうしょうがないのだという諦めの感情も生まれ始めていた。
川 ゚ -゚)「しかし......まさか、弱小国の方が正しい判断をするとはな」
ムー南西に位置する国家群。
ルナイファの属国や友好国であったが、一方的な敗北と制海権を失ったことにより、人間たちへの侮りの態度から一転し、許しを乞うように平伏した。
条件は色々と付けられたものの、全て受け入れられ、講和が成立することとなった。
手痛いダメージは負ってはいるものの、なんとも羨ましい限りであるとクーは考える。
383
:
名無しさん
:2023/07/15(土) 16:51:27 ID:O.NHrrJk0
仲間のいない、彼の国と初めてこの世界で国としての繋がりを持つことができたのだ。
出会いは最悪だが、そのアドバンテージは大きい。
属国になるにしろ、植民地になるにしろあれほどの力を持つ国が行うとなれば今とは比べ物にならないほど発展することだろう。
事実、既に資源の運び出しが始まっており、それに伴う港の改造など、発展に向けた動きが見られている。
その先に待つ未来、そこでも我が国は果たして列強と呼ばれているのか。
召喚地と敵対しなくても、彼らの持つ技術を受け入れるか受け入れないかで未来は大きく変わってくる。
そして、ソーサクがそれを受け入れられるかと言えば微妙なところである。
魔法を捨てることとなれば国の柱を失うようなものであり、簡単に捨てられるはずがないということはクーもよくわかっている。
もし捨てることになれば旧来の技術を元に仕事をしてきた者達は職を失い、国内の産業に混乱が訪れることは避けようがないだろう。
まさか強みであったはずの魔法のせいで、技術を受け入れづらい状況になるとは考えたこともなかった事態である。
384
:
名無しさん
:2023/07/15(土) 16:52:22 ID:O.NHrrJk0
川 ゚ -゚)「......うーむ」
あまり政治に詳しくない自分でも冷静になって考えてみると事がそう簡単ではないということがなんとなく分かり始めていた。
そうなると本気で亡命もありなのではないかと考えつつ窓の外を眺める。
遂に始まる本格的なルナイファへの反撃の準備が進められている眼前の基地には多くの人間が慌ただしく動いていた。
これまでに見たことのないほどの『ひこうき』が並ぶ姿に、彼等の本気度合いが伺える。
川 ゚ -゚)「......回答期限まで、あと少しか」
そんな破壊の化身が向かう先、ルナイファへは何度も講和に向けた話し合いの提案が行われていた。
だが、一切の回答はなくこちらが設定した期日に迫っている。
385
:
名無しさん
:2023/07/15(土) 16:52:59 ID:O.NHrrJk0
川 ゚ -゚)「ふむ、大国ゆえに動けず、か」
降伏した国々と相反するように、強気な姿勢を見せるルナイファにクーは若干呆れてしまう。
彼等はソーサクと違い、現に追い詰められているというのに動くことをしないのだ。
それがプライドのためなのか何なのかは分からないが、その先にあるものが分からないほどあの国は愚かなのか―
プルルル......
そんなとき、部屋の中に聞きなれない音が響きわたる。
川 ゚ -゚)「おっ、と......」
部屋に備え付けられ、なり響くそれは人間が作った魔力を使わない魔信、『でんわ』であった。
魔力を用いず、遠くのものと話せるというなんとも不思議な道具であり、初めて見たときは何度もいじくり回したものだが、如何せん話す相手もおらず実際に使われることはほとんどなかった。
それが、急に鳴り始めたのだ。
386
:
名無しさん
:2023/07/15(土) 16:53:28 ID:O.NHrrJk0
川 ゚ -゚)「はて?」
何事だろうと、受話器を手に取り、なれない手つきで耳に当てる。
川 ゚ -゚)「......うん?はい、えぇ......んん?見たことのない国章のエルフが、接触してきた、ですか?」
新たな国が接触してきたという報告と翻訳のために同席してほしいという依頼の連絡であった。
恐らく、また賢い国が一つ増えたのだろう。
はてさて、どんな国なのか。
だが近くにまだ、接触していない国はあっただろうか―
彼女はそんなことをぼんやり考えつつ、席から立ち上がり、仕事に向かった。
387
:
名無しさん
:2023/07/15(土) 16:54:22 ID:O.NHrrJk0
ルナイファ帝国 海軍本部
戦いに向けた準備が着々と進められる中、デミタスはあらんかぎりの知恵を絞り対策を練ろうとしていた。
そんな彼を助けようと、再び部屋を訪れていたロマネスクと共に寝る間も惜しんで話し合いが続けられていた。
( ФωФ)「やはり、南方から侵攻してくるとなるとこの港付近だろうな。敵からすれば真っ先に潰したい場所でもある。周辺から上陸することはほぼ不可能なはず」
(´・_ゝ・`)「えぇ。ですのでここに戦力を集中し......海岸線を氷魔法で凍結させることで艦を近づかせず、接岸を防ぐ。この方針でいこうかと」
( ФωФ)「港を凍らせるとなると......かなりの魔石が必要となるな」
(´・_ゝ・`)「はい。ですが温存して勝てる相手ではありません。この一戦に全てをぶつける必要があります」
( ФωФ)「この一戦で敵を叩き返し、陛下に講和を進言する......ということか」
(´・_ゝ・`)「そういうことです。敵も上陸が困難と分かれば交渉の席に呼び出すことができるはずです」
( ФωФ)「上手くいくだろうか......」
388
:
名無しさん
:2023/07/15(土) 16:55:46 ID:O.NHrrJk0
(´・_ゝ・`)「一戦だけであれば何とかなる、と思いたいですね。それだけの準備はしております。そもそも上手くいかなければ国が滅びかねません。どうにかするしかないでしょう」
( ФωФ)「......そうだな」
もしルナイファの者が彼らを見れば、弱気であり、また国に負けを認めろという敗北主義者と思われたであろう。
下手をすれば反逆罪として裁かれる可能性すらある。
だが、それでも彼らは今自分たちがしていることが正しく、真に国を守ることに繋がるのだと信じ、行動する。
( ФωФ)「仮にこの守りが突破されたらどうする?」
(´・_ゝ・`)「それについては......こちらの艦隊を使います」
そういい、デミタスは地図の一点を指差す。
その場所に最初ロマネスクは不思議そうな顔をしたが、以前に自分が赴き、何をし、そして今、そこに何があるかを思いだしなるほどと頷く。
389
:
名無しさん
:2023/07/15(土) 16:56:29 ID:O.NHrrJk0
( ФωФ)「そうか、特殊艦隊か!偽装魔法により隠された艦隊なら敵も流石に見つけられないはず......上手くすれば不意打ちの形になるやもしれんな」
(´・_ゝ・`)「えぇ。ただし偽装魔法を使用する関係上、こちらからは動けませんので敵が近づいてきてくれることが前提となりますが」
( ФωФ)「ふむ、射程の差が厳しい、というわけか。新魔法があるとはいえやはり、射程の差が最大の脅威であるな」
(´・_ゝ・`)「いえ、それは若干違いますね」
( ФωФ)「む?違うとは?」
(´・_ゝ・`)「敵で最も恐ろしいのは攻撃の射程ではない、ということです。仮に我々が敵と射程の魔法があったとしても勝てないでしょう」
( ФωФ)「なに?」
(´・_ゝ・`)「敵で最も恐ろしいのは、その射程を活かすことのできる能力です」
( ФωФ)「......うん?」
390
:
名無しさん
:2023/07/15(土) 16:57:32 ID:O.NHrrJk0
今一ピンと来ないロマネスクは小さく首をかしげる。
その様子にデミタスは小さく笑いながら話を続けた。
(´・_ゝ・`)「えぇとですね、敵の攻撃の射程は確かに長い。ですが、その長さが異常なのです」
( ФωФ)「ああ、目視の範囲外からと聞いているな」
(´・_ゝ・`)「そう、そこです」
( ФωФ)「む?」
(´・_ゝ・`)「つまりは、敵は目視出来ない範囲の対象を何かしらの方法で見つけだし、攻撃を加えている、というわけです」
(; ФωФ)「っ!それは」
(´・_ゝ・`)「はい、すなわち我々が敵が近くにいるか分からない間にも敵はこちらを発見しているのです」
(; ФωФ)「そうか......異様なのは射程だけでなく策敵範囲も、というわけだな」
(´・_ゝ・`)「えぇ、そういうことです。敵の位置情報という作戦を実施する上でこの上ないアドバンテージが敵にあるわけですから......勝てないのも道理でしょう」
391
:
名無しさん
:2023/07/15(土) 16:57:49 ID:.0GGiu5o0
おお!初遭遇!
乙です
392
:
名無しさん
:2023/07/15(土) 16:58:39 ID:O.NHrrJk0
戦場において、敵を如何に早く見つけるか。
それは古来より多くの戦いの結末を決定してきたものである。
作戦を立てることに役立つことはもちろんのこと、敵の作戦も位置から読み取ることができるのだから、当然のことである。
そんな策敵能力において、想像もつかないほど差があるというのだ。
未だに敵の規模も動向もまともに分からないまま、机上の空論を語るしかない自分達を見たら、敵はきっと笑うだろう―
(´・_ゝ・`)「さて、というわけで見えない敵を想像して作戦を立てることしか出来ないわけですが......」
( ФωФ)「......魔写はどうだ?あれなら超遠距離でも」
(´・_ゝ・`)「この広大な海の一区画だけを写してもどうにもなりませんから......とはいえ、予測される海路については定期的な魔写を行ってはいます。あとのカバー出来ない部分については近海のみですがワイバーンの物量でカバーですね」
( ФωФ)「ワイバーンか。敵はあっさりと墜とすことが可能と聞いたが」
(´・_ゝ・`)「えぇ、ですので撃墜された場所から敵を特定します」
(; ФωФ)「......」
393
:
名無しさん
:2023/07/15(土) 16:59:40 ID:DNP/yWuY0
リアタイ支援
394
:
名無しさん
:2023/07/15(土) 16:59:50 ID:O.NHrrJk0
あっけらかんと犠牲を前提に作戦を語るデミタスに思わず言葉が詰まる。
ワイバーンは遠隔操作が可能なため人的被害はないが、かといってただではない。
むしろ長期間の育成と調教が必要であり、コストは相当なものである。
( ФωФ)「......温存しては、勝てぬ、か」
(´・_ゝ・`)「えぇ、そういうことです」
先の会話で、全てをぶつけると言ったのが、嘘ではないということがひしひしと感じられる。
改めて、自国が急に追い詰められつつあるのだと再確認させられる。
まだ自国のほとんどのものが知らないかもしれないというのに―
( ФωФ)「なるほど、な。して、現場の指揮は?」
(´・_ゝ・`)「サスガ兄弟に任せています。能力に問題ないと思われます。敵への油断もありません。先程の策敵方法に関してもアニジャからの献策であり、また状況についても把握できております」
(; ФωФ)「あぁ、敵への油断......そうか。そこから心配せんといかんのか......」
395
:
名無しさん
:2023/07/15(土) 17:01:02 ID:O.NHrrJk0
(;´・_ゝ・`)「えぇ。それで、彼らについてはここの司令部から......」
そう地図を指差すデミタス。
海から少し離れた場所であり、手前には小さな港街が広がっている。
そこはルナイファでも有数の施設の揃う基地が存在していた。
巨大なその基地は、複雑な魔法陣が張り巡らされ、もし攻撃されてもある程度耐えることが期待されていた。
さらに大規模に物資の運び込みを行っていたために長期戦になったとしても戦えるように準備がされている。
また万が一、敵に上陸された際の事を考え、港街も入り組んだ構造となっており、遮蔽物が多く敵の迎撃するのに最適な場所と考えられていた。
だがそこで、デミタスは何かに気がついたかのように言葉が途中で止まり、ふと思考に耽る。
396
:
名無しさん
:2023/07/15(土) 17:02:28 ID:O.NHrrJk0
( ФωФ)「......どうした?」
(;´・_ゝ・`)「......っ!!不味い!!なぜ気がつかなかったんだ!!」
突然、ハッと顔を上げたかと思えば急に汗をかき始めた。
そして、慌てたように魔信に駆け寄り、叫びつける。
(;´・_ゝ・`)「緊急指令だ!!サスガ兄弟に繋いでくれ!!」
(; ФωФ)「一体なにを......」
(;´・_ゝ・`)「司令部を移す!」
(; ФωФ)「なっ!?いきなり何故......」
(;´・_ゝ・`)「敵の索敵能力、そして射程の長さを最も活かすとすれば......それは後方への攻撃!真っ先に後方を、頭と物資を潰すこと!」
(; ФωФ)「っ!」
(;´・_ゝ・`)「敵にこちらの配置が筒抜けである可能性がある以上、こんな目立つ位置に司令部を置いていては真っ先に狙われる!!」
(; ФωФ)「それは......だが、バレていない可能性もあるのではないか?」
(;´・_ゝ・`)「その可能性もあり得なくはありません。ですが大規模に物資の運び込みをしてしまった以上、敵の索敵能力を考えれば気付かない方が不自然と考えた方がいいはずです!」
(; ФωФ)「......なるほど」
397
:
名無しさん
:2023/07/15(土) 17:03:34 ID:O.NHrrJk0
確かに、その言葉は正しい。
もし敵の配置が全て分かり、かつそれを正確に遠方から攻撃できるとしてまず間違いなく基地が攻撃されるだろう。
現にこれまでの戦いの中で、ムーでは初撃で基地施設が襲われ、大打撃を受けて敗北している。
この世界に召喚されて間もないというのに、こちらの急所を確実に狙ってくるほどの能力を持っているのだ。
その事実を考えれば、決してあり得ない話ではない。
むしろなぜ、今までその可能性に気が付かなかったのかと二人は頭を抱える。
長距離攻撃などない、後方は安全であるという固定概念。
この世界の常識に未だ囚われていたのだと、このときになってようやく気が付くこととなったのだ。
とはいえ、二人が無能と言うわけではない。
むしろ、気がついただけ優秀と言えるかもしれない。
それほどまでに常識と言うものはときに思考の妨げとなり、どれだけ優秀なものでも殺しうるものとなるのだ。
398
:
名無しさん
:2023/07/15(土) 17:04:04 ID:O.NHrrJk0
とはいえ、気付けたからといって今から司令部を動かすには時間が足りなすぎる。
周囲にあの基地より優れた場所などあっただろうか。
そんな疑問を浮かべるロマネスクを他所にデミタスは叫び続ける。
万全ではないものの戦いの準備は進められ、激突の時が近づいていた。
399
:
名無しさん
:2023/07/15(土) 17:04:31 ID:O.NHrrJk0
続く
支援ありがとうございます
400
:
名無しさん
:2023/07/15(土) 17:44:25 ID:DNP/yWuY0
乙!現行でこれが一番好き
続きも楽しみにしてる!
401
:
名無しさん
:2023/07/15(土) 19:26:57 ID:xaC8J/1w0
乙
さてニータの使者っぽい人が来たけどどうなるのかな?
402
:
名無しさん
:2023/07/16(日) 03:12:48 ID:xIDVszl.0
乙です
403
:
名無しさん
:2023/07/22(土) 16:47:15 ID:iscSnTVA0
ルナイファ帝国 南方港
1464年3月1日
その日は、いつもと変わらない一日が始まるはずであった。
少し前から始まった防衛任務により、多くのもので溢れ返るこの港。
その多くが程よい緊張感を持って、防衛に当たっていた。
なぜ急に緊張感を持つようになったのか。
それは、ここまでの軍を動かすのに遂に情報を留めておくことが出来なくなったのだ。
さらに敵の本土侵攻が現実的となった今、適当に任務をこなされるのも不味いという考えもある。
そのような理由で自国に危機が迫っているということが末端まで知れ渡り、多大な衝撃を与える共に、強い責任感が生まれ、歴史上類を見ないほどの厳重な警戒体制となっていた。
404
:
名無しさん
:2023/07/22(土) 16:48:53 ID:iscSnTVA0
しかし、彼らがちゃんと現状を全て把握しているとは言いがたい。
南方の被害についてはムーのことだけが伝えられ、その他の国が攻撃を受けて降伏したことは知らないし、そもそも攻撃してきた国はソーサクであると伝えられているのだ。
まさか敵が、エルフではなく人間だとは夢にも思わないだろう。
だが逆に、敵が何であるかを知らないがゆえ、また敵が自国に次いで強いとされるソーサクであると勘違いしていることでより警戒感が増しているのは確かではある。
物資や兵器類についても万全の体制が整えられ、どんな敵が現れようとも打ち倒せる、そんな自信に満ち溢れていた。
事実、この港に集められた大戦力と上陸しようと近づいてきた場合に備え、港を封鎖できるように張り巡らされた氷魔法の陣、さらに陸上には多数のゴーレムと遠距離攻撃用の固定式魔法陣が隙間なく準備されている。
捨て身の特攻で上陸しようものなら、地に足がつく前に叩き潰せる体制である。
そして空には多数のワイバーン。
空中支援は勿論のこと、その数と圧倒的な範囲から敵を見落とすことはあり得ない。
405
:
名無しさん
:2023/07/22(土) 16:50:20 ID:iscSnTVA0
まさに磐石、まさに完璧、まさに最強。
ルナイファの総力と言っても過言ではない程の力が一箇所に集まっている。
もし、こんな場所に馬鹿正直に攻めてくる奴がいるならば、それは正真正銘の馬鹿だろう―
そう誰もが、同じ思いであった。
だから敵が見当たらない今、皆が予測していなかった。
いや、できるはずもなかった。
遥か天高く。
ワイバーンが飛ぶ高度の遥か上空。
そこに、敵が既にいることを。
雲よりも高く飛ぶそれ。
ルナイファ、いやこの世界のものでそんな高空を飛べる、存在できるものがあるということを、誰も知らなかった。
ゆえに、警戒など出来るはずがなかった。
406
:
名無しさん
:2023/07/22(土) 16:51:35 ID:iscSnTVA0
この世界の歴史上で最も厳重であったはずの守り、それはあっさりと意識の外、そして異界の常識によって、打ち破られる。
そして、その代償は大きい。
高速の光が降り注ぐ。
正確に港の施設、そして基地の施設へと。
複数の爆発が前線の遥か後方であるはずの基地に襲う。
突然の大破壊。
当然、守りなど間に合うはずもなく。
基地が壊滅する音と共に、戦いの火蓋は切られた。
407
:
名無しさん
:2023/07/22(土) 16:52:31 ID:iscSnTVA0
ルナイファ帝国 港町
開いた口が塞がらないとはこの事か。
確かに今、ショボンは何が起きたかを見ていた。
だというのに、一体何がどうして起きたのか、全く理解できなかった。
数分前まで、いつもと同じように慌ただしく軍人たちと働いていた。
近頃、何故か妙な緊張感が張り詰めており、違和感はあったものの、特に気にすることなく過ごしていた。
そう、いつも通りであったはずであった。
それが、どうか。
聞いたことがないほどの轟音と共に、基地が燃え盛り、崩れ落ちる。
多くの命が、何が起きたかを自覚する暇もなく散っていく。
明らかな異常。
日常から一変し、地獄。
戦争に参加していることは理解していた。
だが、こんな。
こんなことになるだなんて、聞いていない。
408
:
名無しさん
:2023/07/22(土) 16:53:56 ID:iscSnTVA0
周りの学徒も同じようで、パニックに陥り、泣き叫び逃げ回るか、足がすくんだのか動けなくなっている。
そしてそんな学徒達と同じく、ショボンも同様に理解できない現実に震え、もはや自分がなにを考えているかすら、分からなくなっていた。
爪;'ー`)「落ち着けぇ!!」
そんな時に、一喝する声が響く。
混乱する学徒とは対照的に、フォックスは兵士として職務を果たそうとしていた。
とはいえ、彼も内心はパニック寸前である。
だが、この場で自分以外に目の前の学徒達を救えるものはいないという責任が、彼を何とか支えていたのだ。
爪;'ー`)「いいかっ!これより、避難を開始する!落ち着いて、速やかに行動するように!!」
(;´・ω・`)「っ」
409
:
名無しさん
:2023/07/22(土) 16:54:56 ID:iscSnTVA0
避難。
その言葉に、その場にいる学徒の皆が反応し、救いを求めるように、早く助けてくれと言わんばかりに大勢が一気に駆け寄ってくる。
爪;'ー`)「あ、慌てるな!!落ち着け!!」
必死に宥めようにも、うまくいくはずもない。
ここにいるのは訓練を受けていない一般人、それもまだ子供なのだから。
逃げようにも、混乱のせいで無駄な時間が過ぎていく。
その間にもどんどんと死が近づいてくるような感覚―
果たして、自分は生き残ることが出来るのか。
そんな不安がフォックスの脳裏を横切ると同時に。
爪;'ー`)「トソン......」
既に海に出ている友は無事なのか。
脳裏には大丈夫と笑っていた彼女の姿。
だが、そんな言葉を簡単に否定するかのような攻撃が目の前で行われたのだ。
不安にならずにはいられない。
410
:
名無しさん
:2023/07/22(土) 16:55:41 ID:iscSnTVA0
そしてなにより。
爪;'ー`)「この国は......どうなるんだ」
南方の守りの要であり、今回の作戦において司令部のあった基地が真っ先に攻撃されるという、異例中の異例が起こってしまったのだ。
一目見ただけでも分かる、強大な敵。
それに対して、真っ先に頭が潰されていたならば―
何一つ、明るい未来など見えない。
だが、今、出来るのは。
ただひたすらに生き残ること。
どうにか学徒をまとめた彼は、町を離れ後方へと避難を開始した。
411
:
名無しさん
:2023/07/22(土) 16:56:21 ID:iscSnTVA0
ルナイファ帝国 南方沿岸部
多数の艦が浮かぶ沿岸部。
その中の一隻の上でトソンもまた、フォックス達と同じように唖然とした表情を浮かべていた。
(゚、゚;トソン「うっそでしょ......」
戦争の常識として、戦いは前線でのぶつかり合いであり、それを押しきったものが勝つ。
つまり死ぬのは前からであり、だからこそ比較的安全な後方に指揮するための陣地、司令部を作って軍を動かす。
確かに、奇襲や伏兵による後方への襲撃はないことはないが、司令部だって守りがないわけではない。
だからこそ歴史上それがうまくいくことなど多くはなく、成功した戦いは名を残すのだ。
412
:
名無しさん
:2023/07/22(土) 16:57:54 ID:iscSnTVA0
だが、今起こったことはその常識を簡単に覆す。
真っ先に大火力を後方の基地、司令部に打ち込み、頭を潰す。
言うのは簡単であるし、その効果も実現できれば確かに絶大ではあるが、そんなことは出来るはずもないし、考えたこともない。
そうだというのに、敵はさも当然かのようにそれを実現してきたのだ。
『な、なにが起こったか報告を!!』
『不明です!!敵影は確認されていません!!』
『お、俺は見たぞ!!光だっ!光が襲ってきていた!!』
(゚、゚;トソン「......」
当然、艦隊全体が混乱していた。
報告なのか、何なのかわからない叫び声が響きわたる。
413
:
名無しさん
:2023/07/22(土) 16:59:07 ID:iscSnTVA0
たった一瞬にして、最強を誇るはずの自軍がこうも情けない姿に変わるとは―
『......全部隊に連絡』
(゚、゚トソン「......え?」
そんな混乱する雑音の中、一際冷静な声が響く。
トソン以外にも聞こえたのか、全員が騒ぐのをやめ、先ほどまでの騒がしさが嘘のように静まる。
そうして、視線の先は一つに、声がした魔信に集まっていた。
『こちら、司令部。繰り返す、こちらは司令部だ』
(゚、゚;トソン「っ!!」
『先ほど、基地に奇襲を受けたが......奇跡的に司令部は無事だ。神の御加護というやつであろう。今後の指揮にも問題ない。よって引き続き指揮については我々が行う』
―あれだけの攻撃に、まさか無事とは何たる幸運か!!
艦隊全体が、先ほどとは異なる騒がしさに包まれる。
414
:
名無しさん
:2023/07/22(土) 17:01:30 ID:iscSnTVA0
『さて、これより戦いが始まるが......皆、安心したまえ。神は我々の味方だ!事実、我々は神の加護により守られている!神が、我々に勝てと言っているのだ!この戦い、必ず勝てる!!』
敵の強大さに恐れが生まれていたが、このような幸運に守られるとは、本当に神の加護があるとしか思えない。
その加護が、我々にある。
『皆、恐れるな!!敵は強い!確かに、認めなくてはならない!!だが、我々はルナイファ帝国!!神にこの世界を任された存在なのだ!!』
(゚、゚;トソン「......ぉぉ」
『敵は神に逆らう反逆者だ!!我らが正義であり、神の意思なのだ!!さあ、皆のもの、戦いを、いや、聖戦を始めようじゃないか!!』
「「「おおおおおぉぉぉおおおおお!!!」」」
多数の艦から、雄叫びが上がる。
皆の心の中に、光が灯る。
希望という名の光。
我々には神がついている。
つまり、正義である我々が負ける道理などないのだ―
希望と共に、彼らは海を進む。
敵影、未だ見えず。
415
:
名無しさん
:2023/07/22(土) 17:02:19 ID:iscSnTVA0
ルナイファ帝国 地下司令部
様々な物が焼け焦げる匂いが包み込む、崩壊した基地。
その地下には簡易的ではあるがいくつかの施設が存在していた。
元々、ワイバーンの大規模襲撃に備えて作られたものであり、かなりの堅牢性を誇る。
事実、今回の攻撃に関してもかなりの揺れはあったものの、崩壊することなく機能していた。
そんな地下深くの一室の中に先ほどまでの演説をしていた男である、アニジャがいた。
海図や様々な書類に囲まれたその男は、魔信を握りしめ、会話をしていた。
『......さっきの魔信はなんなんだ、アニジャ』
( ´_ゝ`)「なんだオトジャ、分からなかったか?これから戦地へ向かうものへの激励だよ」
416
:
名無しさん
:2023/07/22(土) 17:03:29 ID:iscSnTVA0
『いや、それは分かる。だが神の加護って......デミタス様の指示で地上から地下に慌てて場所を移しただけなのが、まるで奇跡的に攻撃が外れたみたいに......』
( ´_ゝ`)「いやいや、デミタス様は俺達からしたら雲の上、神様みたいなもんじゃないか。その神様の加護のおかげで俺は生き残れた。奇跡的な発想のおかげだ。なにも嘘は言っちゃいないよ」
『......まぁ、それで士気が上がるならいいんだがな。上手い手をやるもんだよ、本当に』
( ´_ゝ`)「そうだろう?」
この地下施設に司令部を移したのはつい先日のこと。
緊急連絡として慌てたような声で直接、デミタスより連絡があったのだ。
敵の策敵能力と長距離攻撃を想定した場合、もっとも効果的な使用方法はなにか。
それは敵後方を潰すことである、と。
これを聞いたアニジャは急いで行動を起こした。
周囲からは疑問に満ちた目で見られたもののそれを気にすることはない。
彼もこの連絡を聞いた瞬間、その危険性に気が付いたのだ。
417
:
名無しさん
:2023/07/22(土) 17:04:23 ID:iscSnTVA0
そして今日。
その判断を感謝することとなった。
もしあのとき、指令に反していたらどうなっていたかなど、地上の様子を見れば考えるまでもないだろう。
デミタスの気付きという幸運に、救われた形となったのだ。
だが、そんな幸運を素直に喜んでいられるほど、状況は良くない。
( ´_ゝ`)「......しかし、本当にここに攻撃を仕掛けてくるとはな」
『事前に話を聞いていたとはいえ、本当に信じられんな。想定以上の化け物と思った方がいいかもしれん』
( ´_ゝ`)「全くだ。攻撃の正体は分からないが......長距離攻撃で正確にここを攻撃してきた可能性がある以上、やはりこちらの陣形は全て筒抜けと考えた方が良さそうだ。さらに言うなら、それを防ぐ手立てがないことも敵は分かってるのだろうな」
『それは......不味いな。下手な奇襲は不可能、というわけか』
( ´_ゝ`)「あぁ。こうなると艦隊は分けず、密集させて数による圧死を狙うしかないだろうな」
『あぁ、それしかないだろう。しかし、敵の位置は分かるのか?遠距離攻撃で敵の位置が分からないまま......なんてのは御免だぞ』
( ´_ゝ`)「問題ない。特定できるよう、作戦は立ててある」
『そうか......となると、我々、特殊艦隊も動いた方がいいのか?』
( ´_ゝ`)「......」
418
:
名無しさん
:2023/07/22(土) 17:05:22 ID:iscSnTVA0
オトジャのその言葉に、アニジャは顎に手を当て、思考に耽る。
この国でもっとも強力な艦隊と言える特殊艦隊。
確かに、一隻でも多くの艦があった方が敵に圧を掛けられる。
それも特殊艦隊の魔壁ならば、先程の基地への攻撃と同様のものであっても数発を余裕で耐えられるはずである。
非常に強力な味方。
確かに、他の艦隊と共に動けば敵にかなりの負荷を与えられるはずである。
( ´_ゝ`)「......いや、ダメだ。そのまま偽装魔法で隠れたまま、待機だ」
だが、アニジャは艦隊を動かさない選択をする。
『理由を聞いても?』
( ´_ゝ`)「敵までの距離が分からん以上、数発耐えられても辿り着く前に沈む可能性がある。なら、敵が近づいてきてくれるまで待った方がいい」
『あぁ、なるほどな。では、敵が射程距離内に入り次第、行動することにしよう。それまでは偽装に徹する』
( ´_ゝ`)「そうしてくれ。それに港周りについてはこれより、氷魔法で封鎖するしな。今から出港ではどちらにせよ間に合わん」
419
:
名無しさん
:2023/07/22(土) 17:06:00 ID:iscSnTVA0
『確かにそれもそうか。しかし......そうなると逃げようにも逃げられないし、固定式魔方陣と変わらんな』
( ´_ゝ`)「いや、その艦隊を呼び寄せたときのように、転送陣がある。それで無理せず離脱してくれ。特殊艦隊が沈められたら、それこそ後がなくなってしまう」
『敵を前に、退けと?』
( ´_ゝ`)「まあ聞け。敵の立場になって考えてみろ。敵からしてみたら魔法は未知の技術だ。となると、今回の不意討ちも成功する確率が高い」
『ふむ、そうだろうな』
( ´_ゝ`)「そして、不意討ちを慣行してきた艦隊がもし逃げたのならば、また行われる可能性がどうしても敵からしたら捨てきれないだろう?それに......」
『それに?』
( ´_ゝ`)「オトジャ、今回の作戦で一番大切なことはなにか、分かるか?」
『何だ突然......上陸されないことか?』
( ´_ゝ`)「違う、いかにいい負け方をするか、だ」
『......は?』
420
:
名無しさん
:2023/07/22(土) 17:07:45 ID:iscSnTVA0
オトジャはその言葉を理解できなかったのだろう。
思わず、といった雰囲気でその言葉が漏れでた。
だがそんな様子を気にすることもなく、アニジャは話を続ける。
( ´_ゝ`)「この連絡は俺達しか聞こえてないからはっきり言おう。どう転ぼうともこの戦いも、この戦争も被害の大小は違えど最終的には負ける。これは、確実だ。オトジャもそう感じているだろう?」
『......否定はしない』
( ´_ゝ`)「ではありがたく肯定として受け取ろう。と、なるとだ。我々は戦後、敗戦国となるわけだが、周辺国は敵しかいないわけだ。するとどうなるか、分かるな?」
『......』
( ´_ゝ`)「ではそんな今後のためにどうする必要があるか。答えは一つ、周囲に対する抑止力が必要だ。だが我が国の海軍は今回の戦いで多大な消耗をすることになるだろう。その上で、抑止力を保つにはどうすれば良いか?」
『少数でも強力な......主力を残す。それが、いい負け方と言いたいわけか?』
( ´_ゝ`)「ああ。さらに付け加えるならこの戦争で兵を減らしすぎている。そこに主力艦隊に配属されている優秀な兵まで失ったら海軍として保つことすら不可能になる」
『......なるほど、な』
421
:
名無しさん
:2023/07/22(土) 17:09:20 ID:iscSnTVA0
( ´_ゝ`)「だからこそひとつ。オトジャ、お前に指令がある。なに、簡単だしたったひとつだけだ」
『なんだ?』
( ´_ゝ`)「死ぬな、以上だ」
『......尽力しよう』
そう答えると、魔信が途切れる。
それを確認したアニジャは一つ息を吐き、再び思考に耽る。
( ´_ゝ`)(基地が攻撃を受けたせいで地上戦力は激減、か。港の周囲を凍らせ、艦が侵入できないようにすることで上陸は防げるはずだが全て防げるかは不明だ......残りをどう配置すべきか)
( ´_ゝ`)(あの長距離攻撃を、下手に陣地を作れば察知され、打ち込んでくるだろう。だからといって分散させては守りきれん)
( ´_ゝ`)(そもそも、司令部を移すにも時間が無さすぎた。最低限のものしかない状況、か......)
( ´_ゝ`)「......やれやれ、一体何人を生き残らせることができるかね」
422
:
名無しさん
:2023/07/22(土) 17:09:44 ID:iscSnTVA0
背もたれに体を預け、空を仰ぐ。
地下であるため空など見えるはずもなく、そこにあるのは薄汚れた天井のみ。
強者であったはずの自分達が気付けば地下に逃げかくれなければならないのだと、嫌でも自覚させられる。
そんな光景に小さくため息をついて一言。
( ´_ゝ`)「ここでは......死にたくねぇなぁ」
そう、ポツリと呟いたのだった。
423
:
名無しさん
:2023/07/22(土) 17:10:08 ID:iscSnTVA0
続く
424
:
名無しさん
:2023/07/22(土) 19:03:21 ID:uK28qdIw0
乙です
425
:
名無しさん
:2023/07/29(土) 16:23:47 ID:MIIfyG.M0
ソーサク連邦 ドクオ自宅
1464年3月1日
('A`)「......それで、報告は本当なのか?」
その日、ドクオは自宅で一人、魔信を用いて連絡をしていた。
その相手は現在、ルナイファに潜伏中の諜報員の一人である。
『ほんとだよぅ。奴ら、遂に本国への攻撃を開始したんだ』
('A`)「......イヨウさんは、大丈夫なんですか?」
『なんとか無事だけど、やっぱり奴らは、とんでもない奴らだよぅ』
('A`)「と、いうと?」
『初撃でルナイファの基地が壊滅、って言えば分かる?』
(;'A`)「......分かりたくないですね」
『俺も同じ気持ちだよぅ』
426
:
名無しさん
:2023/07/29(土) 16:25:42 ID:MIIfyG.M0
あれだけ強力な国の、さらに守りを固めているところへ攻撃をできる能力ですら恐ろしいというのに、瞬時に壊滅させる能力まで持っている。
何度聞いても驚かされる召喚地の戦力に、底知れない恐ろしさを感じる。
('A`)「他の人への連絡は......」
『勿論、報告は済んでるよぅ。だけど、これから言うのはドクオだけだ』
('A`)「......」
『本国で、非戦派を集めてほしいんだよぅ。このまま行くと、あんな化け物と戦うことになりかねない......そんなの、ごめんだよぅ』
('A`)「それは......同意しますが」
『クーにも聞いてるだろう?あんな国と戦えば良くても国家がめちゃくちゃに』
('A`)「分かってはいるんです。ですが」
『......上は、やっぱりダメかよぅ』
('A`)「えぇ......」
427
:
名無しさん
:2023/07/29(土) 16:27:48 ID:MIIfyG.M0
これまでに多くの情報が集められ、一部ではルナイファ以上に召喚地の事を理解しつつある現在、ソーサクでは二つの派閥が出来つつある。
一つは魔法至上主義を掲げ、異物である召喚地の力を封じるべきという、すなわち敵対派。
もう一つは召喚地の力を認め、敵対しないよう刺激しない、もしくは友好的な関係を築こうという非戦派。
なお二つの派閥があるとはいえ、勢力の規模は全く異なるものであり敵対派が圧倒的に多数である。
もしこれがソーサクでなく他国であれば、召喚地の力への恐怖や魔法へのこだわりが比較的に小さいことから違っていたであろう。
だが、ここソーサクでは列強で最強クラスという自負と魔法技術で世界最高であるという、魔法の力を信じ築いてきた国家なのだ。
当然、そこに住むものは皆、魔法へのプライドも高く、魔法が価値観の基本であるため召喚地を簡単に受け入れられるはずもなかった。
428
:
名無しさん
:2023/07/29(土) 16:30:08 ID:MIIfyG.M0
また国で権力を持つものは、魔法により権力を得てきたものなのだ。
そこに魔法と異なる力などが入ってくるなど、それも下手をすれば魔法を超えるかもしれないともなれば、現在の権力層からすれば自らの立場を脅かすものになりうる。
そのため自分の立場を守るためにもどうにかして人間達を封じ込めたいと考えるのもある意味当然であったかもしれない。
さらに相手は人間であり話など通じるはずもなく、またどんな野蛮な行為に出るか分からないという先入観による恐怖もあることも、それに拍車をかけている。
それでも非戦派がいるのは、情報というソーサクのもう一つの武器を信じる者たちがいたからである。
非戦派の中にも魔法へのプライドから召喚地の情報に心が壊れるのではないかというほどの屈辱感を持つものもいた。
だがそれと同時に、その情報が持つ意味から目を反らさず、現実を見ることの重要性を理解することが出来たのだ。
しかし少数であるということに代わりはなく、また勢力を拡大できる見込みもない。
だからこそドクオは胃を痛めつつも、どうにかクーに提案された内容そのままでは到底受け入れられないということを遠回しながら伝え、なんとかいい着地点はないかと手探りながらも探している最中であった。
―なお、それを理解しつつある彼女が国のための選択肢を探すどころか亡命しようかと考えていることをまだ彼は知らないのだが、これはまた別の話である。
429
:
名無しさん
:2023/07/29(土) 16:31:52 ID:MIIfyG.M0
『情報は、武器だよう。それも我が国の重要な、武器。それを捨てようとする国は止めないと大変なことになるよぅ』
('A`)「そう、ですね......いや」
『?』
('A`)「もう、なってるかもしれません」
そう言いながらドクオの顔は暗いものとなる。
ドクオが自宅でこんな連絡をしている理由。
それは非戦派が異端者扱いされ、直接的ではないものの排除が行われているのだ。
理由は非戦派が人間達に国を売り飛ばそうとしている等という怪情報が出回ったことに起因する。
これを流したのは自分達の利権を守りたい権力層、すなわち敵対派ではないかと言われているが事実は不明であり、出所の怪しい情報であった。
しかし出所が不確定なことがむしろこの噂の効力を強くし、権力層から嫌われないため、捨てられないためには敵対するしかないという風潮が出来ていた。
これにより非戦派の意見は封じられていたのだ。
そもそも敵対しない態度自体が売国行為だと罵られる始末である。
反戦派が一般層に多いのに対し、敵対派が権力層であるため、単純に力の差が出ている構図となっているのだ。
430
:
名無しさん
:2023/07/29(土) 16:34:04 ID:MIIfyG.M0
さらにその混乱に乗じるようにルナイファと共闘して人間達を滅ぼすべきという意見が出始めていた。
これについては元から国内にいたルナイファとの同盟を進めたい一部の勢力、及び諜報員の工作とドクオは考えており、これまでと同様に大事にはならないと見ていたのだが、驚くべきことに受け入れる者も少数ではあるがいるのだ。
それほどまでに人間が受け入れられないのかと、その事実にドクオは強い衝撃を受けることとなった。
人間が持つ力を理解できていないわけではない。
むしろ集められた情報からそれを理解し、恐怖している者の方が多く、情報を頭から信じないで否定する者は比較的に少ない。
だからこそ真っ正面から戦おうと言うような、馬鹿丸出しな事を言うものはいない。
工作や、抑止力的な魔法の開発により召喚国家の行動を制限する。
そうして国家として動きを封じ込め、弱らせ、潰す。
勿論最悪の場合、直接戦うことも考慮はしているがルナイファの二の舞にはならないようにと、ちゃんと考えてはいるのだ。
431
:
名無しさん
:2023/07/29(土) 16:35:46 ID:MIIfyG.M0
まともに戦っても勝てない相手になぜ戦いを挑もうとするのかと、第三者から見れば酷く愚かに見えるであろう。
だが滅ぼされるかもしれないという恐怖。
捨てられない魔法と利権とエルフのプライド。
また人間に話が通じるわけがないという、この世界の常識。
これらによりたどり着く答えはひとつ。
―分かり合えないのだから、いつかは戦うしかないのだ、と。
最も重要な情報、真っ先に目を向けなければならなかったが常識であったがゆえに気づけなかった可能性、人間とは話し合えるのだということを見落としてしまったままの結論であった。
『そんなことに、なってるのかよぅ。予測はしていたけど、最悪だ......』
愕然としているのが、声だけで伝わってくる。
これまで情報を集め、正しく処理することを仕事にしてきただけにこうもおかしな考えに結び付いている現状が受け入れがたいのだろう。
432
:
名無しさん
:2023/07/29(土) 16:37:31 ID:MIIfyG.M0
('A`)「やはり......無理にでも動いて先に国同士の繋がりを作るべきでしょうか?」
『......それについてなんだけど、人間たちとの交流が我が国にとって有益かは分からないよぅ?鎖国の影響で我が国はお世辞にも外交がうまくないし......』
(;'A`)「交渉がうまくいかないと?」
『そうだよぅ。それにあれだけの力を持つ国となると国力も凄まじいだろうから、下手すると経済的に飲まれる可能性だってあるよぅ』
('A`)「......なるほど、確かに。そうなるととにかく動く、というのは悪手かもしれませんね」
『そうだよぅ。だけどそれ以上に少なくとも対立だけは避けないと』
(;'A`)「分かっては......いるんですが」
『こうなると、クーの誘いに乗るのも......考えなくちゃかもな』
('A`)「え?」
433
:
名無しさん
:2023/07/29(土) 16:39:18 ID:MIIfyG.M0
それはなんのことか―
そう聞こうとした瞬間、向こうの物音が騒がしくなる。
『っ!すまない、また避難しないと不味そうだよぅ!』
('A`)「あっ」
なにか返事をする前に、魔信は途切れる。
すっかり静かになった部屋のなか、ドクオは一人、考える。
同盟か、対立か、はたまた無関係を貫くのか。
これからのことを、どうするか。
そんな考え事をしているうちに疲れが溜まっていたのだろう、気付けば彼は眠りに落ちていた。
434
:
名無しさん
:2023/07/29(土) 16:41:15 ID:MIIfyG.M0
ルナイファ帝国 南方沖
海上に、多数の黒い点が現れる。
それらはまるで隙間なく敷き詰められたかのように密集し、進んでいた。
そしてその艦よりも多く、空にも黒い点、ワイバーンが広範囲に渡って飛び交っている。
今ここにある戦力だけで一体どれだけの国を滅ぼせるだろうか。
それほどの大戦力。
それがたった一国相手に向かおうとしていた。
(゚、゚トソン「......」
そんな艦隊から、敵を探そうとトソンは監視をしていた。
先程の基地への攻撃の件もあり、艦隊への攻撃も予測されたことから皆緊張感を持って仕事にあたっている。
だが、その誰もが顔に自信が満ち溢れていた。
先の激励が彼らの心を奮い起たせ、愛する国を守る重要な使命に燃えていたのだ。
さらに、この最強とも言える艦隊の規模。
その強さに疑問を持つものなどいるはずもなく、必ずや敵を討ち倒せると信じていたのだ。
絶対的な、自信であった。
435
:
名無しさん
:2023/07/29(土) 16:47:56 ID:MIIfyG.M0
(゚、゚トソン「......?」
だが不意に、空を飛んでいたワイバーン達が不規則に乱れ出す。
さらに遠くからはドンドンという、不穏な音が聞こえたかと思えば、遠くの空にいたはずの黒い塊に見紛うほどにいたはずのワイバーン達は気づけば姿を消している。
たった一瞬、視線を外しただけであったはず。
それにも関わらず、いくつもの艦隊を滅ぼしてきたはずのそれらが、強力な味方がいなくなったのだ。
なにかトラブルか―
『......全艦隊に告ぐ』
(゚、゚トソン「っ!」
心の奥底に隠していたはずの恐怖が溢れそうになった、そのときであった。
再び司令部からの連絡が入る。
『敵の位置を特定した。これより言う座標の位置へ向かえ』
(゚、゚トソン「......」
遂に、戦闘が始まる。
世界最強の力を見せつけるときが来たのだ。
恐怖を再度封印し、読み上げられた敵がいる座標の方角を睨み、呟く。
―今に見てろ、侵略者共め。
436
:
名無しさん
:2023/07/29(土) 16:51:11 ID:MIIfyG.M0
ルナイファ帝国 地下司令部
( ´_ゝ`)「......ふむ、ここまでは作戦通りか」
次々に入ってくる情報を元に、机に置かれた海図の上の模型がひとりでに動く。
それらの動きを見て、アニジャは小さく頷いた。
( ´_ゝ`)「幾つか最悪の想定をしていたが、その中でも本当に最悪なやつだなこれは。まあ想定内なだけまだマシな方か......」
彼は今回の戦いに当たり、様々な想定をして望んでいた。
それはこれまでに集められた様々な情報をどこまで信頼するかから始まった。
信じられない情報が数多くあり、多くの者が欺瞞情報であるとし切り捨てていたが、彼にはそれが出来なかった。
ギコやハインといった、先の戦いに参加し、行方が分からなくなった者たちから上げられていた情報が、彼の脳内に残り続けていたのだ。
普通に考えればあり得ないことばかりではあったものの、現状がそもそもあり得ないことの連続である。
だからこそ彼はあり得ない情報を全て受け入れると同時に、そんな相手と戦うにはあり得ない発想が必要であると結論を出したのだ。
437
:
名無しさん
:2023/07/29(土) 16:53:33 ID:MIIfyG.M0
( ´_ゝ`)「ワイバーンは......この位置だな。ここから撃墜が始まったわけだ」
ボロボロと崩れたワイバーン型の模型、それが存在する海域に印を付けていく。
最早形すら分からなくなったその模型が示すことは、既に動きを連動する相手が同じように砕け散ったこと。
ワイバーンを広範囲に突撃させ、その撃墜された位置から敵の位置の特定を試みる。
彼が考えた、苦肉の作戦であった。
本来であれば勿論、あり得ない作戦である。
ワイバーンが潤沢にいるルナイファといえども、貴重な生物であることに変わりはない。
一度失えば、再び戦場で飛び回れるようなものを育てるまでに長い月日が必要になる。
さらに戦力として考えるならば訓練も必要になるのだ。
そうして育て上げたとしても、個体差によっては望むようなワイバーンが得られない場合もある。
このような理由と唯一と言ってもよい航空戦力なため、どの国においても重要な資源として数えられている。
438
:
名無しさん
:2023/07/29(土) 16:54:47 ID:MIIfyG.M0
だが、それを使い捨ての駒として扱う選択をしたのだ。
力と技術と時間、そして資金を費やし産み出されたそれをである。
被害を受けることを前提とした屈辱的な判断。
だがしかし。
その判断が敵の進行ルートを明らかにする。
これまで捉えることの出来なかった敵を、おおよそではあるが捉えることに成功したのだ。
( ´_ゝ`)「......うむ。やはり、このルートか。となると......全魔術師に連絡。敵の予測される侵攻ルートを共有する。このルートを防ぐよう、港の凍結封鎖を急げ」
( ´_ゝ`)(しかし、撃墜ペースが異常すぎるな。やはり、敵はこちらの動きを把握しているとしか思えない。本当にとんでもない策敵能力だなこりゃ)
そして、敵を捕捉したからこそ分かる、敵の異常性。
こちらは犠牲覚悟でどうにか位置の当たりをつけるのに精一杯だというのに、敵は一定距離に近づいたものを次々と攻撃しているようである。
439
:
名無しさん
:2023/07/29(土) 16:56:01 ID:MIIfyG.M0
( ´_ゝ`)「それにこの距離は、こちらの射程距離に気付いてる可能性が高いな......」
さらに敵から撃墜地点までの距離を推定するに、明らかにこちらの射程範囲を超えるように行動していることがわかる。
つまり敵は、こちらの戦力の分析を行っており慢心はない、と言えるだろう。
だが逆にいえばそれは、敵はこれまでのこちらの情報を知らないことを意味している。
つまり、この国に生まれた二つの新しい魔法であれば、通用するかもしれないのだ。
( ´_ゝ`)(......まあそのうちの一つがあんな魔法じゃ、結局残された手札は一つだけと変わらんな。まぁ、まだ手があるだけマシと考えるべきか)
( ´_ゝ`)「やれやれ......油断してくれてれば、他にもやりようがあったんだがな」
作戦通りに進行しているとはいえ、決して良いとは言えない戦況である。
さらにこれから行う作戦についても、敵には通用しないかもしれないのだ。
440
:
名無しさん
:2023/07/29(土) 16:57:45 ID:MIIfyG.M0
自信を持って指示できるほどの、作戦等ないのに、それに命を懸けろと言わざる負えないという苦痛―
だがこの任務を請け負った以上、その責任は全て背負わなくてはならないのだ。
彼は決意し、指令を出す。
( ´_ゝ`)「......念写艦は今から言う地点を3分後より等間隔で念写してくれ。その他の艦については」
そこで一呼吸をおき、告げる。
( ´_ゝ`)「新魔法を使用する。魔法陣の構築準備を進めろ」
441
:
名無しさん
:2023/07/29(土) 16:59:05 ID:MIIfyG.M0
ルナイファ帝国 南方沖
『新魔法を使用する。魔法陣の構築準備を進めろ』
その言葉が艦内に響くと、多くの者が驚愕する。
新魔法と言えば、つい先日にロマネスクをはじめとした著名な魔術師が集まり作り出したと言うこれまでにない攻撃であるとのことだったはずである。
まだ試作段階という話ではあったが、間違いなく切り札となるものである。
それを真っ先に使うことになるとは―
だが同時に、敵の命運はここで尽きることを意味するであろう。
そう考えた者たちは敵を少しだけ憐れむ。
これから敵は、何が起こったかも分からぬままに死ぬのだから。
442
:
名無しさん
:2023/07/29(土) 17:00:59 ID:MIIfyG.M0
(゚、゚トソン「......まぁ、これも報いよ」
しかし、敵はこちらを一方的に侵略してきた憎むべき者たち、我々の宿敵であるソーサクという話であり、さらに現在もワイバーンに被害を与えているという。
罪としては充分どころか、もはや死を与えるだけでは物足りないとすらトソンは考える。
だからこれから行うことに、罪悪感などはありはしない。
『敵部隊、ポイントを通過した!!魔法陣を起動しろ!!』
(゚、゚トソン「......っ」
司令部より、再び指令が入る。
それは敵を念写で捉えたという報告。
すなわち、敵の位置を完全に捉えたということである。
ならば、どうするか。
答えは簡単である。
―敵がやってきたように、こちらも遠距離から攻撃を叩き込むのだ。
443
:
名無しさん
:2023/07/29(土) 17:02:16 ID:MIIfyG.M0
艦上の魔法陣が紅く輝き、一つの光となる。
その光は爛々と輝く焔。
魔力が籠められる度に、大きく、力強く輝くそれは艦の船員を照らす光となる。
救いの光だ―
そう、トソンは感じた。
敵からの攻撃以降、陰りが見えていたルナイファに救いをもたらす奇跡の光。
まだどこかで敵の強大さに怯えていた自分がいた。
だがこの光を見て、確信する。
(゚、゚トソン「約束は、守れそうね」
『攻撃、開始っ!!』
トソンの小さな呟きは、号令にかき消される。
救いの光はその号令と共に、天高く舞い上がり、真っ直ぐ進んでいく。
無数の光が、敵に向けて放たれた。
444
:
名無しさん
:2023/07/29(土) 17:02:39 ID:MIIfyG.M0
続く
445
:
名無しさん
:2023/07/29(土) 19:26:42 ID:rOKWiwr20
乙
イヨウも亡命しようとしてる…
ドクオも一緒に逃げちゃえばいいのに
446
:
名無しさん
:2023/07/29(土) 22:14:06 ID:rV035ctI0
流石兄弟が流石すぎる
447
:
名無しさん
:2023/07/31(月) 15:20:19 ID:pdau8Cns0
乙です
448
:
名無しさん
:2023/08/05(土) 19:08:10 ID:STw8idWQ0
ルナイファ帝国 地下司令部
1464年3月1日
『発動完了!!異常は見られず、敵に向けて、飛翔中!!』
艦隊より、新魔法が不具合なく発動した報告が入ってくる。
その報告にひとまずアニジャは胸を撫で下ろす。
テストすらままならず、急な実践配備となり、そのまま使用することになったのだ。
下手をすれば暴走し、自滅していた未来もあり得たかもしれない。
だが、少なくともそれは回避された。
となれば、残りの願いはあと一つ。
この攻撃が敵に通用することを願うだけ。
449
:
名無しさん
:2023/08/05(土) 19:08:47 ID:STw8idWQ0
( ´_ゝ`)「頼むぞ......」
人間達との戦いにおいて様々な問題があったが、その中の一つに射程がある。
元より魔法は操作魔法により如何に命中率よく敵に当てるかが重視されており、このためこの操作魔法の範囲、すなわち目視圏内での戦いが常識であった。
目視圏外からの攻撃などあり得るはずもなく、もしそれを実行したところで操作魔法がない、無誘導の攻撃など当たるはずもなく、それが当然であった。
しかし、その世界の常識は異界の常識により打ち破られる。
目視圏外から、ほぼ必中の攻撃を打ち込む。
あり得てはいけないほどの、高性能の攻撃。
これまでの戦い方では犠牲覚悟の突撃しか、出来ることはなかった。
450
:
名無しさん
:2023/08/05(土) 19:10:18 ID:STw8idWQ0
( ´_ゝ`)「長距離制圧魔法、これが通じなければ......」
そこで新たに作られたのが、新魔法。
―長距離制圧魔法。
そう名付けられた魔法は名前の通り、これまでの魔法の常識を打ち破る射程を持つ。
ただひたすら遠くに飛ばすことのみに着目され作り出されたそれは、優れた術者が使えばおよそ80kmにも及ぶ長射程を実現することに成功していた。
さらに距離の問題により操作魔法よる誘導が出来ず、そもそも見えない敵に対して誘導する方法など無いことから、少しでも命中率を上げようと空中にて複数の火炎球に分離し、広範囲に拡散、攻撃ができるように調整がされている。
だがこれで敵に対抗できるかと言えば問題は山積みであった。
まずは策敵能力。
射程を活かすためにはまず敵を見つけなければならないが、ワイバーン位しかまともに敵を探す術がないこと。
次にそもそも攻撃が行えたところで、拡散しある程度の範囲の攻撃が可能とはいえ無誘導で攻撃を当てることなどほぼ不可能に近い。
451
:
名無しさん
:2023/08/05(土) 19:12:00 ID:STw8idWQ0
―では、どうするか。
答えは単純であり、二つの課題両方とも同じ方法での解決を試みた。
答えは、物量。
ルナイファ最大の武器を用いたのである。
ワイバーンの大量投入による範囲のカバーと撃墜覚悟で、その位置からの推定による策敵。
一撃では当たらなくても大量の艦から一定範囲を同時攻撃することで命中率をカバー。
勿論、これで完璧だとはアニジャは考えていない。
むしろ、問題しかない。
被害が大きすぎる上に、広範囲を完全にカバーしきることなど不可能。
結局のところ、勝算が全くないわけではないが当たるかは運に任せるしかないというわけである。
だが現状でこれ以上に良い方法は思い付かなかったのだ。
452
:
名無しさん
:2023/08/05(土) 19:14:02 ID:STw8idWQ0
そしてこの作戦は、まだワイバーンも艦も大量にあり、かつ敵がこちらの射程を短く考えている今くらいしか、通用しないだろう。
最初の攻撃だが、これほどの条件が揃うのは、敵に大打撃を与えられるのはこれがラストチャンスに近いのだ。
だから、彼は祈った。
この状況を変えるような、何かが起こることを。
『効果確認念写カウント、5、4、3、2、1......』
( ´_ゝ`)「......」
『......っ!こ、これ、は......』
魔信の向こうから驚愕の声が響く。
その声にアニジャは固唾を呑む。
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板